【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について、
図1〜
図5を参照して説明する。同図に示すように、防護体である防護柵1は、設置面であるほぼ水平でほぼ平坦な地面2に所定間隔を置いて複数の支柱3,3・・・を設け、この支柱3の支柱下部3Kを地面2の地中に挿入し、その支柱3の支柱上部3Jを地上に立設している。この支柱上部3Jの下部には壁体4を設け、この壁体4は複数の支柱3,3を連結するように設けられている。また、支柱3の位置に対応して、前記地面2に掘削孔5を形成し、この掘削孔5内に支柱下部3Kを挿入した状態で、掘削孔5内に固化性の充填材6を充填し、充填材6が固化することにより掘削孔5に支柱下部3Kを固定しており、前記充填材6としてはモルタルなどが例示される。尚、この例では、支柱下部3Kは支柱上部3Jより長い。
【0019】
この例では前記壁体4はプレキャストコンクリート製からなるものであって、2本の支柱3,3を連結する。また、壁体4は前面部4F,後面部4B,左右の側面部4S,4S,上面部4U及び下面部4Kとを備え、壁体4には、支柱3の位置、即ち前記掘削孔5の位置に上下方向の貫通孔11を形成し、この貫通孔11は、掘削案内孔であって、複数(この例では2個)設けられている。そして、この貫通孔11の直径は前記掘削孔5の直径より大きく形成されており、貫通孔11が掘削孔5を掘削する際のドリルなどの掘削装置(図示せず)の案内部となる。
【0020】
また、前記壁体4には鉄筋12,12Aが内蔵され、前面部4F,後面部4B,上面部4U及び下面部4Kの内側に沿うように配置した枠状の前記鉄筋12と、左右方向に配置された長さ方向の鉄筋12Aとがそれぞれ複数配筋されている。尚、枠状の鉄筋12はスターラップと称されるものである。
【0021】
尚、地面2にはベース部13が設けられ、このベース部13はプレキャストコンクリートや現場打ちコンクリートからなり、その上面部13Jがほぼ水平な平坦面に形成されている。そして、この例では、上面部13Jを地面2とほぼ面一になるように配置している。このように、ベース部13は、壁体4を載置する載置面である上面部13Jをほぼ平坦で水平にするために設けられている。また、ベース部13には前記貫通孔11に連通する貫通部13Sが形成されている。尚、この貫通部13Sは孔に形成しているが、前記貫通孔11より大きければ孔に形成する必要はなく、前記貫通孔11箇所のベース部13を設けないようにして構成してもよい。
【0022】
さらに、左右方向に隣り合う壁体4,4の側面部4S,4Sには目地部14が設けられ、この目地部14に置いて隣り合う壁体4,4の縁が切られている。また、隣り合う側面部4S,4Sに対向して遊挿孔15,15を複数穿設し、これら遊挿孔15,15に、連結材である鋼棒16の両側がそれぞれ挿入されている。この場合、鋼棒16の少なくとも一端は壁体4に固定せずに設けることが好ましい。このように隣り合う壁体4,4の目地部14に複数の鋼棒16を配置することにより、隣り合う壁体4,4は、左右方向には互いに拘束されず、前後方向において一体化される。
【0023】
また、前記支柱上部3J,3J・・・間には、壁体4の上部に、防護面たる網体17が張設されている。尚、網体17に図示しない横ロープ材を組み合わせて防護面を構成してもよい。
【0024】
さらに、防護柵1は山の斜面M側に前面部4Fが位置し、前記網体17は支柱3の反山側に配置されている。
【0025】
そして、前記壁体4の上面部4Jの地面2からの高さHは、前記斜面Mにおける予想された崩壊土砂の厚さに対応した高さに設定されている。尚、上面部4Jからの支柱上部3Jの高さは、前記高さHはより高い。
【0026】
前記高さHは、前記斜面Mにおける予想された崩壊土砂の厚さと同厚かそれ以上である。
【0027】
次に、前記防護柵1の構築する際の施工方法の一例について説明する。先ず、現場打ちコンクリートにより上面部13Jが水平になるようにベース部13を形成し、このベース部13は防護柵1の左右方向ほぼ全長に形成され、そのベース部13の上に壁体4,4・・・を載置して並べ、隣り合う壁体4,4同士を複数の鋼棒16,16・・・により連結する。この場合、壁体4の貫通孔11,11を掘削孔5,5の予定位置に合わせて壁体4を配置する。
【0028】
尚、現場打ちコンクリートにより貫通孔11を有する壁体4を構築してもよく、この場合、鋼棒16は後述する
参考例3のように施工すればよい。
【0029】
このようにして壁体4を据え付けた後、掘削装置の先端を貫通孔11に合わせ、貫通孔11の下方の地中を掘削し、
図5(A)に示すように、貫通孔11より小径な掘削孔5を形成する。そして、地上に置いて吊り上げた支柱3の支柱下部3Kを、貫通孔11,貫通部13Sを通して掘削孔5に挿入し、挿入状態で支柱3を位置決めし、
図5(B)に示すように、掘削孔5,貫通部13S及び貫通孔11に充填材6を充填する。
【0030】
そして、充填材6が固化することにより、支柱下部3Kが地中に固定され、支柱上部3Jの下部が壁体4に固定されると共に、壁体4において支柱3が挿通孔11Aに挿通され、壁体4の上部に支柱上部3Jが立設された支柱構造が得られる。それら支柱上部3J,3J間に網体17を張設する。
【0031】
このようにして構築された防護柵1にあっては、防護柵1の地上部の下部が壁体4により構成されているから、防護柵1の下部に崩壊土砂を受けても、これを確実に捕捉することができる。また、壁体4は複数の支柱3,3により支持されると共に、隣り合う壁体4,4が鋼棒16により連結されているから、壁体4の前面部4Fに加わる土砂の衝撃力に対して複数の壁体4,4・・・と複数の支柱3,3・・・により対抗することができるから、土砂の衝撃力を分散させることができる。この場合、支柱3は支柱下部3Kを地中に固定しているから、支持杭として作用する。
【0032】
また、落石は壁体4及び上部の網体17により捕捉することができ、その落石の衝撃力も土砂と同様に防護柵1において分散させることができ、構造的に優れた衝撃力分散構造が得られる。
【0033】
このように本実施例では
、請求項
1に対応して、
左右方向に間隔を置いて支柱下部3Kを設置面たる地面2の地中に挿入すると共に地上に支柱上部3Jを立設した支柱3と、それら支柱3,3間に設けた防護面たる網体17と、を備えた防護体において、隣
り合う支柱上部3J,3Jの下部に硬質材料であるコンクリート製の壁体4を設け
ると共に、この壁体4により隣り合う2本の支柱3,3を連結し、壁体4に
2個設けられ支柱3,3を挿通した貫通孔11と、この貫通孔11に連通して地中に形成され支柱下部3Kを挿入した掘削孔5と、支柱下部3Kと掘削孔5及び挿通孔11Aとの間に充填した充填材6と、を備え、
隣り合う壁体4,4の側面部4S,4S間にこれら隣り合う壁体4,4の縁を切る目地部14を設けると共に、隣り合う壁体4,4間に複数の連結材たる鋼棒16を設け、隣り合う壁体4,4の側面部4S,4Sに対向して遊挿孔15,15を複数穿設し、隣り合う壁体4,4が左右方向に拘束されないように、それら遊挿孔15,15に鋼棒16の両側をそれぞれ挿入し、支柱下部3Kが支柱上部3Jより長く、壁体4の上面部4Jからの支柱上部3Jの高さが、該壁体4の上面部4Jの地面2からの高さより高いから、防護柵1の下部に崩壊土砂を受けても、これを確実に捕捉することができる。また、支柱下部3Kを地中に固定した支柱3によって壁体4が支持され、壁体4に加わる土砂の衝撃力に対抗することができるから、土砂の衝撃力を分散させることができる。この場合、支柱3は支柱下部3Kを地中に固定しているから、支持杭として作用する。
【0034】
また、このように本実施例では、請求項1及び2に対応して、壁体4に支柱3を挿通したから、壁体4に支柱3を挿通して一体化することができる。
【0035】
また、このように本実施例では、請求項
1に対応して、防護柵1の下部に崩壊土砂を受けても、これを確実に捕捉することができる。また、壁体4は複数の支柱3,3により支持され、壁体4に加わる土砂の衝撃力に対して、壁体4と複数の支柱3,3により対抗することができるから、土砂の衝撃力を分散させることができる。
【0036】
また、このように本実施例では、請求項
1に対応して、隣り合う壁体4,4間に目地部14を設けると共に、隣り合う壁体4,4間に連結材たる鋼棒16を設けたから、隣り合う壁体4,4を鋼棒16により連結したから、壁体4に加わる土砂の衝撃力に対して、複数の壁体4,4と複数の支柱3,3により対抗することができる。
【0037】
また、このように本実施例では、請求項
2に対応して、請求項
1記載の防護体たる防護柵1を構築する防護体の施工方法において、設置面たる地面2に壁体4を設置し、壁体4に支柱3より大径な掘削案内孔たる貫通孔11を設け、この貫通孔11に連続して地中に掘削孔5を形成し、この掘削孔5内に支柱下部3Kを挿入し、この支柱下部3Kと掘削孔5及び貫通孔11との間に支柱3を固定するための充填材6を充填するから、壁体4の貫通孔11を基準にして掘削孔5を簡便に形成することができ、支柱下部3Kと掘削孔5及び貫通孔11との間に充填材6を充填して、掘削孔5に支柱下部3Kを固定すると共に、支柱3と壁体4とを一体化することができる。
【0038】
また、請求項
1に対応して、壁体4がプレキャストコンクリート製であるから、現場での据え付け作業が容易となる。また、支柱下部3Kは支柱上部3Jより長いから、支柱3が支持杭と大きな耐力を有する。さらに、実施例上の効果として、前記壁体4の上面部4Jの地面2からの高さHは、前記斜面Mにおける予想された崩壊土砂の厚さに対応した高さに設定したから、崩壊土砂を確実に捕捉することができる。
[参考例1]
【0039】
図6は本発明の参考例1を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。同図に示すように、実施例1に比べて支柱下部3Kが短い例を用い、前記掘削孔5に、該掘削孔5より小径で前記支柱下部3Kより大径な基礎管21を挿入し、この基礎管21としては鋼管などが用いられ、それら掘削孔5,基礎管21及び支柱下部3Kは同心円状に配置される。
【0040】
次に、前記防護柵1の構築する際の施工方法の一例について説明する。
【0041】
まず、先ず、ベース部13を形成し、そのベース部13の上に壁体4,4・・・を載置して並べ、隣り合う壁体4,4同士を複数の鋼棒16,16・・・により連結する。
【0042】
尚、現場打ちコンクリートにより貫通孔11を有する壁体4を構築してもよく、この場合、鋼棒16は後述する実施例4のように施工すればよい。
【0043】
壁体4を据え付けた後、掘削装置の先端を貫通孔11に合わせ、貫通孔11の下方の地中を掘削し、該貫通孔11より小径な掘削孔5を形成し、掘削孔5内に基礎管21を配置する。そして、地上に置いて吊り上げた支柱3の支柱下部3Kを、貫通孔11,遊挿孔15を通して基礎管21に挿入し、挿入状態で支柱3を位置決めし、掘削孔5,基礎管21,遊挿孔15及び貫通孔11に充填材6を充填する。
【0044】
そして、充填材6が固化することにより、支柱下部3Kが地中に固定され、支柱上部3Jの下部が壁体4に固定されると共に、壁体4の上部に支柱上部3Jが立設された支柱構造が得られる。それら支柱上部3J,3J間に網体17を張設する。
【0045】
このように本参考例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0046】
また、本参考例では、掘削孔5に基礎管21を挿入し、この基礎管21内に支柱下部3Kを挿入し、この支柱下部3Kと掘削孔5及び貫通孔11との間に支柱3を固定するための充填材6を充填するから、充填材6により支柱下部3Kと基礎管21とが一体化されることにより、使用する支柱3の長さを抑えることができ、運搬・据付作業が容易となる。
【0047】
また、参考例上の効果として、前記掘削孔5に、該掘削孔5より小径で前記支柱下部3Kより大径な基礎管21を挿入し、この基礎管21内に支柱下部3Kを挿入配置したから、支柱3の長さ寸法を抑えることができ、支柱3の運搬・据付が容易となる。
[参考例2
]
【0048】
図7は本発明の
参考例2を示し、上記実施例及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。同図は、壁体4を現場打ちコンクリートにより構築する例を示し、型枠を組み、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートが固化した後、型枠を取り外して壁体4を構築する。また、型枠には、型枠板22として鉄板やプレキャストコンクリート版を用い、前面部4Fと後面部4Bに型枠板22を一体に設けている。
【0049】
次に、前記防護柵1の構築する際の施工方法の一例について説明する。
【0050】
まず、掘削装置により前記掘削孔5を形成し、この掘削孔5内に前記支柱下部3Kを挿入した後、掘削孔5内に充填材6を充填し、充填材6が硬化した後、地上で壁体4用の型枠板22,22を組み、この型枠板22,22内に鉄筋12,12Aを配筋し、型枠板22,22間に現場打ちコンクリートなどの充填材6Aを充填することにより、型枠板22,22を設けた壁体4を構築する。この場合、目地部14を設けないで壁体4を構築してもよいし、壁体4,4間に目地部14を設けてもよい。この場合、隣り合う壁体4,4の一方を先に構築すると共に、この壁体4に遊挿孔15を設け、この遊挿孔15に鋼棒16の一端を否固定状態で挿入し、この後、隣り合う壁体4,4の他方を構築することにより、隣り合う壁体4,4間に鋼棒16を配置する。
【0051】
このように本
参考例では、上記実施例及び参考例と同様な作用・効果を奏する。
【0052】
また、本
参考例では、現場打ちコンクリートなどの充填材6Aにより、型枠板22と一体になった壁体4を構築することができる。さらに、目地部を設けずに壁体4を連続して形成することできる。
[参考例
3]
【0053】
図8は本発明の参考例
3を示し、上記実施例及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。同図は、壁体4を現場打ちコンクリートにより構築し、また、実施例1に比べて支柱下部3Kが短い例を示し、前記掘削孔5に、該掘削孔5より小径で前記支柱下部3Kより大径な基礎管21を挿入し、この基礎管21としては鋼管などが用いられ、それら掘削孔5,基礎管21及び支柱下部3Kは同心円状に配置される。
【0054】
次に、前記防護柵1の構築する際の施工方法の一例について説明する。
【0055】
まず、掘削装置により前記掘削孔5を形成し、この掘削孔5内に基礎管21を挿入配置すると共に、この基礎管21内に前記支柱下部3Kを挿入した後、掘削孔5と基礎管21内に充填材6を充填し、充填材6が硬化した後、地上で壁体4用の型枠板22,22を組み、この型枠板22,22内に鉄筋12,12Aを配筋し、現場打ちコンクリートなどの充填材6Aを充填することにより、型枠板22,22が一体となった壁体4を構築する。この場合、目地部14を設けないで壁体4を構築してもよいし、壁体4,4間に目地部14を設けてもよい。この場合、隣り合う壁体4,4の一方を先に構築すると共に、この壁体4に遊挿孔15を設け、この遊挿孔15に鋼棒16の一端を否固定状態で挿入し、この後、隣り合う壁体4,4の他方を構築することにより、隣り合う壁体4,4間に鋼棒16を配置する。
【0056】
このように本
参考例では、上記実施例及び参考例と同様な作用・効果を奏する。
【0057】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、
参考例では、現場打ちコンクリートと一体に設ける型枠板を用いたが、現場打ちコンクリートの硬化後に取り外す型枠板を用いてもよい。