(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ブロー成形に用いられるブローピンの形状に関し、各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載される技術を説明する図であり、
図10(a)に示すように、ブローニードル100は、中空成形用金型101に保持されたパリソン102に突き刺すものである。ブローニードル100は、筒状の本体103と、この本体103の先端側に形成され一対の鋭角の切裂エッジ105を有する切裂部106と、この切裂部106と本体103とを結ぶ一対の稜線107および一対の切裂エッジ105に対して角度位置が略90度ずれた四角錐部108とを備える。
【0004】
また、特許文献2には、略円柱状の先端部を軸方向に対して傾斜させて切断した傾斜面部を備える中空成形用ブローピンが開示される。この中空成形用ブローピンでは、傾斜面部の長手方向に沿った中心線を稜線とし、この稜線の両側において側方に傾斜する略同一勾配の分割面部が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10(b)に示すように、特許文献1のブローニードル100においては、先端111が点状であるため、パリソン102に突き刺さり易いが、パリソン102に刺し込むに従って、刺し込まれて行く部分112の外形が急激に大きくなる。このため、ブローニードル100を刺し込む過程において、ブローニードル100がパリソン102に引っ掛かってしまう不具合が生じ易い。また、ブローニードル100では、一対の稜線107を突出させて設けているため、この一対の稜線107もパリソン102に引っ掛かり易い。このように、ブローニードル100では、パリソン102に引っ掛かり易いため、パリソン102が延びてしまい、
図10(c)に示すように、ブローニードル100を完全に刺し込むには、長いストロークSが必要であった。したがって、従来は、ストロークSが長く確保できる位置にしかブローニードル100を配置できない、あるいは、パリソン102が延びにくい硬い成形材料を用いるなど、成形条件が制約を受けていた。
【0007】
また、特許文献2の中空成形用ブローピンにおいても、傾斜面部の先端(頂点)をパリソンに突き刺した後、パリソンに刺し込まれて行く部分の外形が急激に大きくなるため、特許文献1のブローニードル100と同様に、中空成形用ブローピンがパリソンに引っ掛かり易いという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パリソンに円滑に刺し込むことができるブローピンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、ブロー成形金型に保持されたパリソンに突き刺し、前記パリソンの内側に加圧流体を吹き込むブローピンであって、筒状のピン本体と、前記ピン本体に連なる突き刺し部と、を有し、前記突き刺し部は、先方に行くに従って厚みが薄くなり、且つ、先端が線状に形成される、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、突き刺し部では、先方に行くに従って厚みが薄くなり、且つ、先端が線状に形成されるため、線状の先端でパリソンを切り裂くことにより、パリソンに突き刺し部を容易に突き刺すことができる。そして、先端が点状である従来の形状に比べて、パリソンに刺し込まれて行く部分の外形の変化が緩やかであるため、パリソンに引っ掛かりにくくなる。したがって、ブローピンをパリソンに円滑に刺し込むことができる。
【0011】
(2)本発明では、(1)の構成において、前記突き刺し部は、前記突き刺し部の厚みを前記先端に向けて緩やかに変化させる凹面状の側面を有する、ことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、凹面状の側面によって、突き刺し部の厚みが線状の先端に向けて緩やかに変化するので、パリソンに刺し込まれて行く部分の外形も、さらに緩やかに変化する。したがって、突き刺し部をパリソンに対して、より円滑に刺し込むことができる。
【0013】
(3)本発明では、(2)の構成において、前記凹面状の側面は、前記先端を挟む両側に設けられることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、突き刺し部の厚みを緩やかに変化させる凹面状の側面を、線状の先端を挟む両側に設けたので、パリソンに刺し込まれて行く部分の外形も、より一層緩やかに変化する。したがって、突き刺し部をパリソンに対して、より一層円滑に刺し込むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パリソンに円滑に刺し込むことができるブローピンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のブローピンを備えるブロー成形金型の断面図である。
【
図3】(a)は
図2のA矢視図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC−C断面図である。
【
図4】成形方法を説明するブロー成形金型の断面図である。
【
図5】突き刺し部の作用図であり、(a)はブローピンを突き刺すときの作用図、(b)はブローピンを刺し込む過程の作用図、(c)はブローピンの刺し込みが終了した状態を示す図である。
【
図6】突き刺し部の変形例を示す図であり、(a)は
図2に対応させて描いた図、(b)は(a)のD矢視図である。
【
図7】突き刺し部の他の変形例を示す図であり、(a)は
図2に対応させて描いた図、(b)は(a)のE矢視図である。
【
図8】ブローピンの他の使用例を示す図であり、
図4に対応させて描いた図である。
【
図9】ブローピンのさらに他の使用例を示す図であり、
図4に対応させて描いた図である。
【
図10】従来の技術を説明する図であり、(a)はブローニードルを突き刺す前の状態を示す図、(b)はブローニードルを刺し込む過程の作用図、(c)はブローニードルの刺し込みが終了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0018】
(ブロー成形金型20の構成)
まず、実施形態に係るブローピン10を備えるブロー成形金型(以下、単に「成形金型」と称する)20の構成を
図1に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、成形金型20は、互いに合わさる複数(この例では、2個)の第1分割型21および第2分割型22で構成され、中空成形体11(
図4参照)を成形する金型である。これら第1分割型21および第2分割型22は、押出機23より押し出されたパリソン25を挟む両側に配置され、それぞれ、第1成形面21aおよび第2成形面22aを有する。第1成形面21aの外周部には、第1ピンチオフ部21bが突出して設けられ、第2成形面22aの外周部には、第1ピンチオフ部21bに突き合わさる第2ピンチオフ部22bが突出して設けられる。
【0020】
また、成形金型20の所定位置(ここでは、第2分割型22を貫通するピン孔22c)には、ブローピン10が移動可能に設けられる。このブローピン10は、ピン動作手段(図示省略)により第2成形面22aに対して出没可能であり、第2成形面22aから突出して、成形金型20に保持されたパリソン25に突き刺さり、パリソン25の内側に加圧空気(本発明にいう「加圧流体」に相当)を吹き込む。この成形金型20では、第1成形面21aおよび第2成形面22aで囲われる空間(いわゆるキャビティ)においてブローピン10のストロークSが確保しにくい位置にブローピン10を配置した例を示している。ここで、ストロークSは、加圧空気を吹き込み可能な位置までパリソン25に刺し込んだときのブローピン10の移動量であり、この例では、30mm以下である。
【0021】
(ブローピン10の構成)
次に、ブローピン10を
図2、
図3に基づいて説明する。
図2に示すように、ブローピン10は、筒状のピン本体12と、このピン本体12に連なる突き刺し部13とを有する。
【0022】
図3(a)〜(c)に示すように、ピン本体12は、円筒状の基軸部15と、この基軸部15に嵌合される円筒状の先軸部16とからなる。先軸部16の周壁には、長円状の吹き出し口16aが設けられる。
【0023】
突き刺し部13は、先軸部16の先端部に一体形成される部分であって、先方に行くに従って厚みtが薄くなり、且つ、先端17が線状に形成される。すなわち、突き刺し部13は、先軸部16の径方向一側から見たとき(
図3(b)参照)は、先方に向けて尖鋭する形状に形成される一方、先軸部16の径方向一側に対して直交する側から見たとき(
図3(c)参照)は、ピン本体12の外径と同程度の幅Wで形成される刃状部である。
【0024】
この例では、突き刺し部13の厚みtを線状の先端17に向けて緩やかに薄く変化させる凹面状の側面18を、線状の先端17を挟む両側に一対設ける。また、先軸部16の径方向一側に対して直交する側から見たとき(
図3(c)参照)、線状の先端17は、凸状に湾曲する形状を呈する。
【0025】
(中空成形体11の成形方法)
続いて、成形金型20を用いた中空成形体11の成形方法を
図4、
図5に基づいて説明する。
【0026】
図4に示すように、押し出されたパリソン25を第1分割型21および第2分割型22の間に垂下させた後、第1分割型21および第2分割型22を型締めし、第1分割型21および第2分割型22でパリソン25を挟んで第1ピンチオフ部21bおよび第2ピンチオフ部22bを突き合わせる。そして、ブローピン10をパリソン25に突き刺し、ブローピン10を通じてパリソン25の内側に加圧空気を吹き込む。これにより、第1分割型21および第2分割型22によって閉じられた空間で、パリソン25を膨らませて第1成形面21aおよび第2成形面22aに押し付け、第1成形面21aおよび第2成形面22aに沿って、中空成形体11をブロー成形する。
【0027】
ここで、成形金型20におけるブローピン10の動作を詳しく説明する。
図5(a)に示すように、ブローピン10は、まず、線状の先端17でパリソン25の周壁を切り裂くようにして、パリソン25に突き刺さる。次に、
図5(b)に示すように、線状の先端17によって開口した突き刺し穴26を一対の側面18で徐々に押し広げるようにして、パリソン25の周壁に突き刺し部13を刺し込んで行く。そして、
図5(c)に示すように、吹き出し口16aがパリソン25の周壁の内側に臨むまで、突き刺し部13をパリソン25に刺し込んだ後、吹き出し口16aから加圧空気を噴射する。
【0028】
(実施形態の効果)
以上、説明したブローピン10の効果について述べる。
ブローピン10によれば、線状の先端17でパリソン25を切り裂くことにより、パリソン25に突き刺し部13を容易に突き刺すことができる。そして、先端が点状である従来の形状に比べて、パリソン25に刺し込まれて行く部分18a(
図5(b)参照)の外形の変化が緩やかであるため、ブローピン10がパリソン25に引っ掛かりにくくなる。その結果、例えば、30mm以下の短いストロークSであっても、ブローピン10をパリソン25にしっかりと刺し込むことができる。
【0029】
また、凹面状の側面18によって、突き刺し部13の厚みtが先端17に向けて緩やかに変化するので、パリソン25に刺し込まれて行く部分18a(
図5(b)参照)の外形も、さらに緩やかに変化する。したがって、突き刺し部13をパリソン25に、より円滑に刺し込むことができる。加えて、先端17を挟む両側に凹面状の側面18を設けたので、パリソン25に刺し込まれて行く部分18a(
図5(b)参照)の外形も、より一層緩やかに変化する。したがって、突き刺し部13をパリソン25に対して、より一層円滑に刺し込むことができる。
【0030】
(突き刺し部13の変形例)
次に、突き刺し部13の変形例を
図6、
図7に基づいて説明する。
前述した突き刺し部13では、線状の先端17を凸状に湾曲する形状に形成したが、本発明にいう「先端」は、線状であれば任意であり、1つ以上の曲線、1つ以上の直線またはこれらの組み合わせから選択可能である。
【0031】
例えば、
図6(a)および(b)に示すように、突き刺し部13Bにおいて、凸状に湾曲する凸状部17B1と、凹状に湾曲する凹状部17B2とによって、線状の先端17Bを構成してもよい。この例では、線状の先端17Bの左右両端に凸状部17B1を設け、これら左右の凸状部17B1の間に凹状部17B2を設ける。
【0032】
また、
図7(a)および(b)に示すように、突き刺し部13Cにおいて、線状の先端17Cを直線状に形成してもよい。この例では、直線状の先端17Cを先軸部16の軸方向および径方向に対して傾斜させて設ける。
【0033】
これらの変形例に係る突き刺し部13B,13Cを有するブローピン10B,10Cにおいても、前述したブローピン10と同様の効果を得ることができる。
【0034】
(ブローピン10の他の使用例)
次に、ブローピン10の他の使用例を
図8、
図9に基づいて説明する。なお、ここでは、ブローピン10を用いた他の使用例を説明するが、ブローピン10の代わりに、ブローピン10B(
図6参照),ブローピン10C(
図7参照)を用いてもよい。
【0035】
前述した成形金型20(
図4参照)では、ストロークSが確保しにくい位置にブローピン10を設けた例を示したが、ブローピン10を設ける位置は、格別に限定されるものでなく、任意に変更可能である。
【0036】
例えば、
図8に示すように、成形金型20Bにおいて、第1ピンチオフ部21b、第2ピンチオフ部22bから離れた中空成形体11の中央部(金型分割位置であるパーティングラインPLから大きく外れた位置)にブローピン10に設けてもよい。また、
図9に示すように、成形金型20Cにおいて、パーティングラインPL上にブローピン10を設けてもよい。
【0037】
このように、ブローピン10は、成形金型20Bおよび成形金型20Cのいずれにおいても使用可能であるが、パーティングラインPLから外れた位置にブローピン10を設ける場合において、特に有効である。以下、その理由について述べる。
【0038】
例えば、成形金型20C(
図9参照)では、ブローピン10をパーティングラインPL上に設けている。この場合、パリソン25においてブローピン10を突き刺す部分は、第1ピンチオフ部21b、第2ピンチオフ部22bに挟まれて拘束されており、動きにくい(逃げにくい)。このため、パリソン25に対してブローピン10を比較的容易に刺し込むことができる。
【0039】
しかし、成形金型20B(
図8参照)では、パーティングラインPLから外れ、第1ピンチオフ部21b、第2ピンチオフ部22bから離れた位置にブローピン10を設けているため、パリソン25においてブローピン10を突き刺す部分は、は、拘束されていない。すななち、パリソン25は、成形金型20B(この例では、第2成形面22a)から離れ易い状態にある。このため、例えば、パリソン25に引っ掛かり易い従来のブローニードル100(
図10参照)を用いると、刺し込む際にパリソン25が逃げて延びてしまい、しっかりとパリソン25に刺し込むことができない。この点、ブローピン10は、パリソン25に引っ掛かりにくいので、パリソン25の拘束されていない部分に対しても円滑に刺し込むことができる。したがって、ブローピン10は、パーティングラインPLから外れた位置にブローピン10を設ける場合において、特に有効であると言える。
【0040】
また、ブローピン10は、中空成形体11が軟らかく剛性が低い場合において、有効である。例えば、減容化が容易な機能部品(例えば、押し潰し可能な各種チャンバ)を中空成形体11で構成する場合に、ポリプロピレンや高密度ポリエチレンに比べて軟らかい樹脂(例えば、気相法等で製造されたリニア低密度ポリエチレン)を成形材料としたとき、ブローピン10を用いてブロー成形を行うことが有効である。また、JIS K6922−2に準拠して測定された曲げ弾性率が600MPa以下となる中空成形体11を成形する場合においても、ブローピン10を用いてブロー成形を行うことが有効である。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。