(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、単一(共通)の電磁駆動機構を介してイメージセンサを光軸直交平面内で駆動することで、被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正するとともに、光学的なローパスフィルタ効果を得る撮影装置において、イメージセンサを高精度に駆動制御するとともに、駆動信号を生成するための回路構成を小規模かつ簡易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮影装置は、撮影光学系により形成された被写体像を電気的な画素信号に変換するイメージセンサと、前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを前記撮影光学系の光軸と直交する平面内で駆動することで、前記イメージセンサ上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正し、
且つ、被写体光束を前記イメージセンサの検出色の異なる複数の画素に入射させて光学的なローパスフィルタ効果を得ることが可能な電磁駆動機構と、前記撮影光学系を搭載したボディ本体の光軸直交平面内の振れを検出する振れ検出部と、前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサの光軸直交平面内の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した位置検出信号と、前記電磁駆動機構による光学的なローパスフィルタ効果を得るための変調信号とを重畳合成して変調位置信号を生成する生成部と、前記振れ検出部が検出した振れ検出信号と、前記生成部が生成した変調位置信号とに基づいて、前記電磁駆動機構を介して前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを光軸直交平面内で駆動する駆動制御部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
前記駆動制御部は、前記振れ検出部が検出した振れ検出信号から導かれる目標位置と、前記生成部が生成した変調位置信号から導かれる仮想位置との差分を算出し、この差分を相殺して目標位置に追従させるように、前記電磁駆動機構を介して前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを光軸直交平面内で駆動することで、
前記電磁駆動機構による光学的なローパスフィルタ効果を得ることができる。
【0009】
前記イメージセンサは、露光と信号読出が順次に行われる検出色の異なる複数の画素を含み、露光期間中に、前記撮影光学系により形成された被写体像を電気的な画素信号に変換し、信号読出期間中に、前記画素信号を読み出すものであり、前記駆動制御部は、前記イメージセンサの露光期間中は、前記振れ検出部が検出した振れ検出信号から導かれる目標位置と、前記生成部が生成した変調位置信号から導かれる仮想位置との差分を算出し、この差分を相殺して目標位置に追従させるように、前記電磁駆動機構を介して前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを光軸直交平面内で駆動する一方、前記イメージセンサの信号読出期間中は、前記振れ検出部が検出した振れ検出信号から導かれる目標位置と、前記位置検出部が検出した位置検出信号から導かれる実測位置との差分を算出し、この差分を相殺して目標位置に追従させるように、前記電磁駆動機構を介して前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを光軸直交平面内で駆動することができる。
【0010】
前記電磁駆動機構は、固定支持基板と、前記固定支持基板に対してスライド可能で前記イメージセンサが固定された可動ステージと、前記固定支持基板と前記可動ステージの一方に固定された磁石と、前記固定支持基板と前記可動ステージの他方に固定された駆動用コイルと、を備え、前記駆動用コイルに交流駆動信号を流すことにより、前記可動ステージを前記固定支持基板に対して光軸直交平面内で駆動することができる。
【0011】
前記振れ検出部は、前記ボディ本体に加わる移動角速度を検出するジャイロセンサから構成し、前記位置検出部は、前記磁石の磁力を検出するホールセンサから構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単一(共通)の電磁駆動機構を介してイメージセンサを光軸直交平面内で駆動することで、被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正するとともに、光学的なローパスフィルタ効果を得る撮影装置において、イメージセンサを高精度に駆動制御するとともに、駆動信号を生成するための回路構成を小規模かつ簡易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし
図9を参照して、本発明によるデジタルカメラ(撮影装置)10の一実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、そのカメラボディ(ボディ本体)20に着脱自在に装着された撮影レンズ11を備えており、撮影レンズ11は、被写体側(図の左側)から順に、撮影光学系としての撮影レンズ群L及び絞り13を備え、カメラボディ20は、シャッタ(撮影光学系)15及びイメージセンサ(撮像素子)17を備えている。撮影レンズ群Lから入射し、絞り13及び開放されたシャッタ15を通った被写体光束による被写体像が、イメージセンサ17の受光面上に形成され、露光される。イメージセンサ17上に形成された被写体像は、マトリックス状に配置された多数の画素によって、電気的な画素信号に変換され、画像データ(画像信号)としてDSP21に出力される。より具体的にイメージセンサ17は、露光と信号読出が順次に行われる検出色の異なる複数の画素を含み、露光期間中に、撮影光学系により形成された被写体像を電気的な画素信号に変換し、信号読出期間中に、画素信号を読み出してDSP21に出力する。またDSP21は、画像データに所定の画像処理を施して、これを表示部材(LCDモニタ)23に表示し、着脱可能なメモリカード25に書き込む。DSP21は、電源スイッチ、レリーズスイッチなどの操作部材27、後述するローパスフィルタ動作をオン/オフするスイッチ、ローパスフィルタ効果を調整する調整スイッチ、ローパスフィルタ動作時のイメージセンサの駆動方向(振動方向)を選択する方向選択スイッチなどを含むローパスフィルタ操作部29、絞り13とシャッタ15を駆動制御する絞り/シャッタ駆動回路31、及びカメラ機能に関するプログラム、ローパスフィルタに関するデータなどが書き込まれたメモリ35と接続されている。撮影レンズ11は、絞り13の開口径(絞り値)情報、撮影レンズ群Lの解像力(MTF)情報を記憶したメモリ19を搭載していて、これらの情報がDSP21に読み込まれる。撮影レンズ群Lは、通常、絞り13を光軸方向に挟んで複数のレンズ群を有する。
【0016】
デジタルカメラ10はジャイロセンサ(振れ検出部)30を備えている。このジャイロセンサ30は、カメラボディ(ボディ本体)20に加わる移動角速度(X軸とY軸周り)を検出することで、該カメラボディ(ボディ本体)20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号を検出する。
【0017】
図1ないし
図3に示すように、イメージセンサ17は、撮影レンズ11の光軸Zと直交するX軸方向とY軸方向(直交二方向)に移動可能に像振れ補正装置(電磁駆動機構)40に搭載されている。像振れ補正装置40は、カメラボディ20のシャーシなどの構造物に固定される固定支持基板41と、イメージセンサ17を固定した、固定支持基板41に対してスライド可能な可動ステージ42と、固定支持基板41の可動ステージ42との対向面に固定した磁石M1、M2、M3と、固定支持基板41に可動ステージ42を挟んで各磁石M1、M2、M3と対向させて固定した、各磁石M1、M2、M3との間に磁気回路を構成する磁性体からなるヨーク431、432、433と、可動ステージ42に固定した、前記磁気回路の磁界内において電流を受けることにより駆動力を発生する駆動用コイルC1、C2、C3を有し、駆動用コイルC1、C2、C3に交流駆動信号(交流電圧)を流す(印加する)ことにより、固定支持基板41に対して可動ステージ42(イメージセンサ17)が光軸直交平面内で駆動するようになっている。駆動用コイルC1、C2、C3に流す交流駆動信号は、後述するイメージセンサ駆動回路50によって生成される。イメージセンサ駆動回路50の構成及び該イメージセンサ駆動回路50が生成する交流駆動信号の詳細については後述する。
【0018】
この実施形態では、磁石M1、ヨーク431及び駆動用コイルC1からなる磁気駆動手段と、磁石M2、ヨーク432及び駆動用コイルC2からなる磁気駆動手段(2組の磁気駆動手段)とがイメージセンサ17の長手方向(水平方向、X軸方向)に所定間隔で配置され、磁石M3、ヨーク433及び駆動用コイルC3からなる磁気駆動手段(1組の磁気駆動手段)が長手方向と直交する短手方向(鉛直(垂直)方向、Y軸方向)に配置されている。
【0019】
さらに固定支持基板41には、各駆動用コイルC1ないしC3の近傍(中央空間部)に、磁石M1、M2、M3の磁力を検出して可動ステージ42(イメージセンサ17)の光軸直交平面内の位置を示す位置検出信号を検出するホールセンサ(位置検出部)H1、H2、H3が配置されている。ホールセンサH1、H2により可動ステージ42(イメージセンサ17)のY軸方向位置及び傾き(回転)を検出し、ホールセンサH3により可動ステージ42(イメージセンサ17)のX軸方向位置を検出する。DSP21は、後述するイメージセンサ駆動回路50を介して、ジャイロセンサ(振れ検出部)30が検出したカメラボディ(ボディ本体)20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号と、ホールセンサ(位置検出部)H1、H2、H3が検出したイメージセンサ17の光軸直交平面内の位置を示す位置検出信号とに基づいて、像振れ補正装置(電磁駆動機構)40によってイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動する。これにより、イメージセンサ17上への被写体像の結像位置を変位させて、手振れに起因する像振れを補正することができる。本実施形態ではこの動作を「イメージセンサ17の像振れ補正動作」と呼ぶ。この動作については後に詳細に説明する。
【0020】
本実施形態の像振れ補正装置40は、撮影光学系の光軸Zと直交する平面内において所定軌跡を描くようにイメージセンサ17を駆動して、被写体光束をイメージセンサ17の検出色の異なる複数の画素に入射させることで、光学的なローパスフィルタ効果(以下、LPF効果ということがある)を与える。本実施形態ではこの動作を「イメージセンサ17のLPF動作」と呼ぶ。
【0021】
図4(A)、(B)を参照して、像振れ補正装置(電磁駆動機構)40が、所定軌跡を描くようにイメージセンサ17を駆動して、該イメージセンサ17によってLPF効果を与えるローパスフィルタ動作について説明する。同図において、イメージセンサ17は、受光面にマトリックス状に所定の画素ピッチPで配置された多数の画素17aを備え、各画素17aの前面にベイヤ配列のカラーフィルタR、G、Bのいずれかが配置されている。各画素17aは、前面のいずれかのカラーフィルタR、G、Bを透過して入射した被写体光線の色を検出、つまり、色成分(色帯域)の光を光電変換し、その強さ(輝度)に応じた電荷を蓄積する。
【0022】
図4(A)は、イメージセンサ17を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な円形軌跡を描くように駆動する場合を示している。この円形軌跡は、イメージセンサ17の画素ピッチPの2
1/2/2倍を半径rとする円形の閉じた経路である。
図4(B)は、イメージセンサ17を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な正方形軌跡を描くように駆動する場合を示している。この正方形軌跡は、イメージセンサ17の画素ピッチPを一辺とした正方形の閉じた経路である。
図4(B)では、イメージセンサ17を、画素17aの互いに直交する並び方向の一方(鉛直方向)と平行なY軸方向、他方(水平方向)と平行なX軸方向に1画素ピッチP単位で交互にかつ正方形経路となるように移動させている。
【0023】
図4(A)、(B)のように、露光中にイメージセンサ17を円形または正方形の所定軌跡を描くように駆動すると、各カラーフィルタR、G、B(画素17a)の中央に入射した被写体光線(光束)が、4個のカラーフィルタR、G、B、Gに均等に入射するので、光学ローパスフィルタと同等の効果が得られる。つまり、どのカラーフィルタR、G、B、G(画素17a)に入射した光線も、必ずその周辺のカラーフィルタR、G、B、G(画素17a)に入射するので、恰も光学ローパスフィルタを光線が通過したのと同等の効果(LPF効果)が得られる。
【0024】
さらに、イメージセンサ17の駆動範囲を段階的に切り替える(円形軌跡の場合は半径rを異ならせ、正方形軌跡の場合は一辺の長さを異ならせる)ことで、イメージセンサ17によるLPF効果の強弱を段階的に切り替えることができる。つまり、円形軌跡の半径rまたは正方形軌跡の一辺を長くする(被写体光線が入射するイメージセンサ17の検出色の異なる画素17a(カラーフィルタR、G、B、G)に入射する画素17aの範囲を拡大する)に連れてLPF効果が強くなり、一方、同半径rまたは一辺を短くする(被写体光線が入射するイメージセンサ17の検出色の異なる画素17a(カラーフィルタR、G、B、G)に入射する画素17aの範囲を縮小する)に連れてLPF効果が弱くなる。
【0025】
図1、
図2、
図5に示すように、デジタルカメラ10は、駆動用コイルC1、C2、C3に交流駆動信号(交流電圧)を流す(印加する)ことで、像振れ補正装置(電磁駆動機構)40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動するイメージセンサ駆動回路50を備えている。このイメージセンサ駆動回路50の動作全般はDSP21によって制御される。
【0026】
図5に示すように、イメージセンサ駆動回路50は、積分回路51、変調信号発振部(LPF発振回路)52、D/A変換部53、変調位置信号生成部(生成部)54、サーボ演算ブロック(駆動制御部、イメージセンサ駆動制御部)55、PWM部56、及びHブリッジ57を備えている。
【0027】
積分回路51は、DSP21を介して、ジャイロセンサ30が検出したカメラボディ20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号(角速度)を取得する。積分回路51は、取得した振れ検出信号(角速度)を時間積分して移動角度を求め、この移動角度から焦点面(イメージセンサ17の撮像面)上でのX軸方向及びY軸方向の像の移動量を演算するとともに、この像振れをキャンセルするための可動ステージ42(イメージセンサ17)の駆動量及び駆動方向である目標移動量を演算する。積分回路51は演算した目標移動量をサーボ演算ブロック55に出力する。
【0028】
変調信号発振部52は、イメージセンサ17にLPF動作を実行させるための変調信号(LPF用発振信号)を発振する。この変調信号は、微細な高周波成分を含み、例えば、イメージセンサ17が水平方向の1ライン分の画素信号を読み出すための水平同期信号(HD)と同期していない(させることができない)ものである。
【0029】
D/A変換部53は、変調信号発振部52が発振した変調信号をD/A変換し、D/A変換した変調信号を変調位置信号生成部54に出力する。
【0030】
変調位置信号生成部(生成部)54は、ホールセンサ(位置検出部)H1、H2、H3が検出した位置検出信号(位置情報)と、D/A変換部53がD/A変換した変調信号(LPF用発振信号)とを取得する。変調位置信号生成部54は、これら互いに独立した位置検出信号と変調信号とを重畳合成して、変調位置信号(変調位置情報)を生成する。変調位置信号生成部54は、生成した変調位置信号をサーボ演算ブロック55に出力する。この変調位置信号は、ホールセンサH1、H2、H3が検出した実際のイメージセンサ17の位置(実測位置)ではなく、イメージセンサ17にLPF動作を実行させるための微振動成分をいわば外乱成分として重畳した位置(仮想位置)を示している。
【0031】
なお、水平方向と垂直方向の複数のホールセンサH1、H2、H3のうち、基本的には上記重畳のための検出をホールセンサH1、H3で行うようにし、高精度な位置検出を行うとき且つイメージセンサ17の駆動周期が長いときにだけ、全てのホールセンサH1、H2、H3の検出結果を利用して制御してもよい。また、
図2の構成であれば、全てのホールセンサH1、H2、H3による検出のタイミングは、ホールセンサH3に合わせて行うようにしてもよい。さらに、カメラ保持(例えば縦位置撮影)の傾斜角度に応じて、基準となるホールセンサや使用するホールセンサを決めるようにしてもよい。
【0032】
サーボ演算ブロック(イメージセンサ駆動制御部)55は、ジャイロセンサ(振れ検出部)30が検出した振れ検出信号と、変調位置信号生成部(生成部)54が生成した変調位置信号とに基づいて、像振れ補正装置(電磁駆動機構)40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動する。より具体的にサーボ演算ブロック55は、積分回路51が演算した目標移動量から導かれるイメージセンサ17の目標位置と、変調位置信号生成部54が生成した変調位置信号から導かれるイメージセンサ17の仮想位置との差分を算出し、この差分を相殺して目標位置に追従させるような交流駆動信号(交流電圧)を生成する。サーボ演算ブロック55が生成した交流駆動信号(交流電圧)は、PWM部56によってパルス幅変調処理(PWM処理)が施され、Hブリッジ57によって電力増幅されて、像振れ補正装置40の駆動用コイルC1、C2、C3に流される(印加される)。これにより、像振れ補正装置40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動することで、イメージセンサ17上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正するとともに、被写体光束をイメージセンサ17の検出色の異なる複数の画素に入射させてLPF効果を得ることができる。
【0033】
すなわち、サーボ演算ブロック55は、ジャイロセンサ30が検出した振れ検出信号から導かれる目標位置にイメージセンサ17を追従させようとするが、変調位置信号生成部54が生成した変調位置信号から導かれるのは、イメージセンサ17の実測位置ではなく、イメージセンサ17にLPF動作を実行させるための微振動成分を外乱成分として重畳した仮想位置である。このため、たとえ実際にはホールセンサH1、H2、H3が検出したイメージセンサ17の実測位置が目標位置に追従していたとしても、必ず、サーボ演算ブロック55が生成する交流駆動信号に含まれる外乱成分によって、イメージセンサ17がLPF動作を実行することになる。またイメージセンサ17の像振れ補正動作を行っていないとき(つまりイメージセンサ17を光軸直交平面内で定位置を維持するように駆動しているとき)は、ホールセンサH1、H2、H3が検出した位置検出信号がゼロ(イメージセンサ17の実測位置が定位置)となるが、同様に、サーボ演算ブロック55が生成する交流駆動信号に含まれる外乱成分によって、イメージセンサ17がLPF動作を実行することになる。
【0034】
図6は、イメージセンサ17がLPF動作のみを実行している場合におけるイメージセンサ17の目標位置、移動量、微振動成分及び位置情報の変化を段階的に示している。同図の例では、イメージセンサ17の目標位置が中心位置と一致しておりその座標をp(100,150)で示している。また状態(2)〜状態(5)がイメージセンサ17のLPF動作の1周期に対応している。
状態(1)では、イメージセンサ17が目標位置(中心位置)p(100,150)に位置している。
状態(2)では、微振動成分v(10,0)が加算されて、位置情報がp(110,150)になったのと等価となり、目標位置p(100,150)に移動するための移動量m(−10,0)が発生する。
状態(3)では、位置情報がp(90,150)となり、目標位置p(100,150)への移動量m(10,0)が発生する。
状態(4)では、位置情報がp(100,150)となるが、微振動成分v(−10,0)が加えられるため、目標位置p(100,150)への移動量m(10,0)が発生する。
状態(5)では、位置情報がp(110,150)となり、目標位置p(100,150)への移動量m(−10,0)が発生する。
状態(6)では、位置情報がp(100,150)となるが、微振動成分v(10,0)が加えられるため、目標位置p(100,150)への移動量m(−10,0)が発生する。
状態(7)では、位置情報がp(90,150)となり、目標位置p(100,150)への移動量m(10,0)が発生する。
【0035】
図7は、イメージセンサ17が像振れ補正動作のみを実行している場合における振れ移動量、振れ相殺移動量、目標位置、移動量及び位置情報の変化を段階的に示している。同図の例では、イメージセンサ17の目標位置が中心位置と一致しておりその座標をp(100,150)で示している。また状態(2)〜状態(5)がイメージセンサ17のLPF動作の1周期に対応している。
状態(1)では、イメージセンサ17が目標位置(中心位置)p(100,150)に位置している。
状態(2)では、振れ相殺のための移動量bi(−30,0)により、目標位置がp(70,150)となり、位置情報p(100,150)からの差分である移動量m(−30,0)が発生する。
状態(3)では、位置情報がp(70,150)となり、振れ相殺後の目標位置p(90,150)からの差分である移動量m(20,0)が発生する。
状態(4)では、位置情報がp(90,150)となり、振れ相殺後の目標位置p(110,150)からの差分である移動量m(20,0)が発生する。
状態(5)では、位置情報がp(110,150)となり、振れ相殺後の目標位置p(120,150)からの差分である移動量m(10,0)が発生する。
状態(6)では、位置情報がp(120,150)となり、振れ相殺後の目標位置p(150,150)からの差分である移動量m(30,0)が発生する。
状態(7)では、位置情報がp(150,150)となり、振れ相殺後の目標位置p(160,150)からの差分である移動量m(10,0)が発生する。
【0036】
図8は、イメージセンサ17がLPF動作と像振れ補正動作を実行している場合における振れ移動量、振れ相殺移動量、目標位置、移動量、微振動成分及び位置情報の変化を段階的に示している。同図の例では、イメージセンサ17の目標位置が中心位置と一致しておりその座標をp(100,150)で示している。また状態(2)〜状態(5)がイメージセンサ17のLPF動作の1周期に対応している。
図8の状態(1)〜(7)は、
図6の状態(1)〜(7)と
図7の状態(1)〜(7)を合成したものであるため、その詳細な説明を省略する。
図8における位置情報の差分(
図8の位置情報(LPF動作+像振れ補正動作)から
図7の位置情報(像振れ補正動作)を減じたもの)は、
図6の位置情報(LPF動作)の振れ変化量と等しくなっている。したがって、像振れ補正装置40の駆動用コイルC1、C2、C3に流す交流駆動信号に、像振れ補正成分に加えてLPF成分(微振動成分)が正しく重畳されていることが判る。
【0037】
サーボ演算ブロック55は、イメージセンサ17が露光期間中と信号読出期間中のいずれの状態に滞在しているかに応じて、イメージセンサ17を異なる態様で駆動制御する。
図9を参照して、イメージセンサ17の露光期間中と信号読出期間中におけるサーボ演算ブロック55による像振れ補正制御とLPF制御を説明する。
【0038】
サーボ演算ブロック55は、イメージセンサ17の露光期間中は、変調信号生成部52、D/A変換部53及び変調位置信号生成部54の動作をオンにした上で、ジャイロセンサ30が検出した振れ検出信号から導かれるイメージセンサ17の目標位置と、変調位置信号生成部54が生成した変調位置信号から導かれるイメージセンサ17の仮想位置との差分を算出し、この差分を相殺して目標位置に追従させるように、像振れ補正装置40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動する。これにより、像振れ補正動作とLPF動作の双方を実行する。
【0039】
サーボ演算ブロック55は、イメージセンサ17の信号読出期間中は、変調信号生成部52、D/A変換部53及び変調位置信号生成部54の動作をオフにした上で、ジャイロセンサ30が検出した振れ検出信号から導かれるイメージセンサ17の目標位置と、ホールセンサH1、H2、H3が検出した位置検出信号から導かれるイメージセンサ17の実測位置との差分を算出し、この差分を相殺して目標位置に追従させるように、像振れ補正装置40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動する。これにより、像振れ補正動作のみを実行して、LPF動作を実行しない。
【0040】
図9に示すように、イメージセンサ17によって1枚の撮影画像を得るために、露光と信号読出が順次に行われる。各露光期間と各信号読出期間において、垂直同期信号(CIS−VD)の出力が含まれており、各露光期間において、CIS−グローバルリセットの出力が含まれている。各露光期間においてシャッタ15の開閉による露光が行われ、各信号読出期間においてイメージセンサ17による信号読出が行われる。そして、イメージセンサ17の露光期間中は、ジャイロセンサ30が検出した振れ検出信号から導かれるイメージセンサ17の目標位置と、変調位置信号生成部54が生成した変調位置信号から導かれるイメージセンサ17の仮想位置との差分を相殺して目標位置に追従させるような交流駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、像振れ補正動作とLPF動作の双方が実行される。一方、イメージセンサ17の信号読出期間中は、ジャイロセンサ30が検出した振れ検出信号から導かれるイメージセンサ17の目標位置と、ホールセンサH1、H2、H3が検出した位置検出信号から導かれるイメージセンサ17の実測位置との差分を相殺して目標位置に追従させるような交流駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、像振れ補正動作のみを実行して、LPF動作を実行しない。なお、連写時にはイメージセンサ17による露光と信号読出がさらに続けて行われる。
【0041】
イメージセンサ17の露光期間中に、像振れ補正動作とLPF動作の双方を実行することで、手ぶれに起因する画像のずれを補正するとともに、モアレ縞や偽色などの偽解像を防止して、高品質な画像データを得ることができる。またイメージセンサ17の露光期間中は、イメージセンサ17を光軸直交方向に駆動しても、磁気被りに起因する画像品質の劣化は生じない。
【0042】
イメージセンサ17の信号読出期間中に、像振れ補正動作のみを実行して、LPF動作を実行しないことで、イメージセンサ17の信号読出期間中に磁気被り現象が起きるのを防止して高品質な画像データを得ることができる。
【0043】
このように本実施形態のデジタルカメラ(撮影装置)10によれば、変調位置信号生成部(生成部)54が、ホールセンサ(位置検出部)H1、H2、H3が検出した位置検出信号と、この位置検出信号とは独立した変調信号とを重畳合成して変調位置信号を生成し、サーボ演算ブロック(駆動制御部)55が、ジャイロセンサ(振れ検出部)30が検出した振れ検出信号と、変調位置信号生成部54が生成した変調位置信号とに基づいて、像振れ補正機構(電磁駆動機構)40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動する。これにより、イメージセンサ17を高精度に駆動制御するとともに、駆動信号を生成するための回路構成を小規模かつ簡易にすることができる。
【0044】
以上の実施形態では、イメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動することでLPF効果を得る態様を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮影レンズ群(撮影光学系)Lの一部をなすレンズをボイスコイルモータなどの電磁駆動機構によって光軸直交平面内で駆動することで、被写体光束をイメージセンサ17の検出色の異なる複数の画素に入射させてLPF効果を得る態様も可能である。この態様では、撮影レンズ群(撮影光学系)Lの一部をなすレンズの光軸直交平面内の位置を検出する位置検出部を設け、サーボ演算ブロック(駆動制御部)55が、ジャイロセンサ(振れ検出部)30が検出した振れ検出信号と、変調位置信号生成部(生成部)54が生成した変調位置信号とに基づいて、撮影レンズ群(撮影光学系)Lの一部をなすレンズを光軸直交平面内で駆動する。
【0045】
以上の実施形態では、単一(共通)の像振れ補正機構(電磁駆動機構)40を介してイメージセンサ17を光軸直交平面内で駆動することで、イメージセンサ17による像振れ補正動作とLPF動作を実行する場合を例示して説明したが、LPF動作を実行させるための駆動系をピエゾ駆動装置などによって独立して設ける態様も可能である。
【0046】
以上の実施形態では、DSP21及びイメージセンサ駆動回路50を別々の構成要素(ブロック)として描いているが、これらを単一の構成要素(ブロック)として実現する態様も可能である。
【0047】
以上の実施形態では、像振れ補正装置(電磁駆動機構)40の構成として、固定支持基板41に磁石M1、M2、M3及びヨーク431、432、433を固定し、可動ステージ42に駆動用コイルC1、C2、C3を固定した場合を例示して説明したが、この位置関係を逆にして、可動ステージに磁石及びヨークを固定し、固定支持基板に駆動用コイルを固定する態様も可能である。
【0048】
以上の実施形態では、イメージセンサ17が描く所定軌跡を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な円形軌跡または正方形軌跡とした場合を例示して説明したが、これに限定されず、例えば、撮影光学系の光軸Zと直交する平面内における直線往復移動軌跡としてもよい。