(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3の構成では、3値を表す2つのデジタル信号、すなわち正側の信号と負側の信号をいずれも負帰還しなければならず、回路構成が複雑化する問題もある。
【0007】
本発明の目的は、入力信号をデルタシグマ変調して出力する際に、負帰還経路を1つにして回路構成を簡易化するとともに、負荷からの帰還経路とは独立して変調回路単独で負帰還できる回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、クロック信号に同期して入力信号をデルタシグマ変調して出力する信号変調回路であって、入力信号と帰還信号との差分を算出する減算器と、前記減算器からの出力信号を積分する積分器と、前記積分器で積分された信号の位相を反転する位相反転回路と、前記積分器で積分された信号に対し、前記クロック信号に同期したタイミングでゼロレベルを挿入する第1ゼロレベル挿入回路と、前記第1ゼロレベル挿入回路から出力された信号を遅延して量子化する第1量子化器と、前記位相反転回路で位相反転された信号に対し、前記クロック信号に同期したタイミングでゼロレベルを挿入する第2ゼロレベル挿入回路と、前記第2ゼロレベル挿入回路から出力された信号を遅延して量子化する第2量子化器と、前記第1量子化器から出力された信号と前記第2量子化器から出力された信号を合成するパルス合成回路と、前記パルス合成回路で合成された信号を入力信号に負帰還させる帰還回路と、前記帰還回路とは独立に、
前記第1量子化器から出力された信号及び前記第2量子化器から出力された信号を用いて、単電源に接続されたスピーカを正電流オン、負電流オン、及びオフの3値の通電状態で選択的に駆動するための信号を生成する生成回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、パルス合成回路で2つの信号を合成し、合成後の信号を負帰還するので帰還経路が1つとなり、回路構成が簡易化される。また、負荷からの帰還経路とは独立して変調回路単独で負帰還できるので、変調器単独で、高性能化が図れると共に安定動作が可能となり、電源投入及び遮断時のミュート処理も簡易化できる。ここで、帰還回路と「独立」とは、帰還回路で負帰還される信号を用いることなく、スピーカを駆動する信号を生成することを意味する。なお、減算器は、帰還される信号が入力信号に対して正相の信号である場合に用いられる。減算器は、帰還される信号が入力信号に対して逆相の信号である場合には、加算器で代用することができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記スピーカは、互いに直列接続された第1スイッチ及び第2スイッチの接続節点にその一端が接続されるとともに、互いに直列接続された第3スイッチ及び第4スイッチの接続節点にその他端が接続され、前記第1スイッチ及び前記第3スイッチは前記単電源の正極側に接続され、前記第2スイッチ及び前記第4スイッチは前記単電源の負極側に接続され、前記生成回路は、
前記第1量子化器から出力された信号及び前記第2量子化器から出力された信号に基づき、前記第1スイッチをオンし前記第2スイッチをオフするためのスイッチング信号と、前記第3スイッチをオフし前記第4スイッチをオンするためのスイッチング信号を生成することで前記正電流オン状態で前記スピーカを駆動し、前記第1スイッチをオフし前記第2スイッチをオンするためのスイッチング信号と、前記第3スイッチをオンし前記第4スイッチをオフするためのスイッチング信号を生成することで前記負電流オン状態で前記スピーカを駆動し、前記第1スイッチ及び前記第3スイッチをオフし前記第2スイッチ及び前記第4スイッチをオンするためのスイッチング信号を生成する、または、前記第2スイッチ及び前記第4スイッチをオフし前記第1スイッチ及び前記第3スイッチをオンするためのスイッチング信号を生成することで前記スピーカをオフ状態とすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の実施形態では、前記第1スイッチと前記第2スイッチをともにオフし、前記第3スイッチと前記第4スイッチをともにオフすべく、
前記第1量子化器から出力された信号及び前記第2量子化器から出力された信号の立ち上がりタイミング及び立下りタイミングを調整するデッドタイム生成回路を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記パルス合成回路は、論理ゲート群及びスイッチ群を備え、前記スイッチ群は、第1電位に接続された第1電位スイッチと、前記第1電位よりも低い第2電位に接続された第2電位スイッチと、前記第1電位と前記第2電位の間の第3電位に接続された第3電位スイッチとを備え、前記論理ゲート群は、前記第1量子化器の反転出力信号及び前記第2量子化器の出力信号が入力され、論理演算を行って前記第1電位スイッチを制御する信号を出力する第1NORゲートと、前記第1量子化器の出力信号及び前記第2量子化器の反転出力信号が入力され、論理演算を行って前記第2電位スイッチを制御する信号を出力する第2NORゲートと、前記第1NORゲートからの信号及び前記第2NORゲートからの信号が入力され、論理演算を行って前記第3電位スイッチを制御する信号を出力する第3NORゲートとを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、前記生成回路は、前記パルス合成回路の前記第1NORゲートの出力信号及び前記第2NORゲートの出力信号を用いて、前記スピーカを前記3値の通電状態で選択的に駆動するための信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、負帰還経路を1つにして回路構成を簡易化するとともに、出力段に接続される負荷の影響を受けずに負帰還できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
本実施形態の信号変調回路は、入力信号をデルタシグマ変調するものであり、減算器と積分器と遅延器と量子化器を備える。本実施形態における回路では、帰還経路に遅延器が存在せず、量子化器の前段、すなわち積分器と量子化器の間に遅延器が設けられている。従って、本実施形態の回路では、出力の状態をリアルタイムで補正することが可能である。
【0018】
また、本実施形態における遅延器は、単に入力信号を遅延するだけでなく、入力信号にゼロレベルを挿入する機能を有しており、これにより確実なパルス密度変調(PDM)を実現している。入力信号にゼロレベルを挿入する回路は任意であるが、例えば一端が接地されたチョッパ回路で構成され得る。また、遅延機能及び量子化機能は、D型フリップフロップで構成され得る。
【0019】
さらに、本実施形態では、正側のデジタル信号と負側のデジタル信号を合成して3値の単一のデジタル信号を生成し、合成後の1つのデジタル信号を負帰還する。
【0020】
図1に、本実施形態の回路構成図を示す。本実施形態の信号変調回路は、減算器16と、積分器20と、位相反転回路21と、チョッパ回路22,23と、D型フリップフロップ(DFF)26,27と、パルス合成回路32を備える。さらに、パルス合成回路32には、1価3値波形生成回路40と、ドライバ回路42と、スピーカ44とが接続される。
【0021】
減算器16は、入力信号とパルス合成回路32から帰還された信号の差分を演算(負帰還)して積分器20に出力する。
【0022】
積分器20は、差分信号を積分してチョッパ回路22に出力する。また、積分器20は、差分信号を積分して位相反転回路21に出力し、位相反転回路21は、積分して得られた信号の位相を反転してチョッパ回路23に出力する。
【0023】
チョッパ回路22,23は、それぞれクロック信号に同期して積分信号及びその反転信号にゼロレベル(ゼロ電圧)を挿入し、DFF26,27に出力する。
【0024】
DFF26,27は、それぞれ入力信号をクロック信号に同期して遅延しつつ量子化し、それぞれ1ビットデジタル信号を生成して出力する。
【0025】
パルス合成回路32は、DFF26からの1ビットデジタル信号と、DFF27からの1ビットデジタル信号を合成して出力する。DFF26は、積分信号を1ビットデジタル信号に変換して出力するので、+1,0の2値信号である。他方、DFF27は、積分信号を位相反転回路21で反転して得られる反転信号を1ビットデジタル信号に変換して出力するので、−1,0の2値信号である。パルス合成回路32は、これら2つの2値信号を合成して、+1,0,−1の3値信号を生成して出力する。パルス合成回路32の出力信号は、減算器16に負帰還される。
【0026】
本実施形態では、従来技術のように2つのデジタル信号を負帰還するのではなく、パルス合成回路32で合成した後に、合成後の1つの3値信号を負帰還してノイズシェープしている。従って、2つのデジタル信号を負帰還する場合に比べて回路構成が簡易化される。また、
図1に示すように、負荷としてのスピーカ44は、パルス合成回路32からの負帰還経路とは別の経路に接続されており、いわばスピーカ44は負帰還経路とは独立に接続されているため、変調器単独で、高性能化が図れると共に安定動作が可能となり、電源投入及び遮断時のミュート処理も簡易化できる。負荷変位の影響を負帰還によって打ち消すことなくスピーカ駆動ができる。
【0027】
図2に、
図1における積分器20、チョッパ回路22、DFF26の具体的な回路構成を示す。なお、チョッパ回路23及びDFF27も基本的にチョッパ回路22及びDFF26と同一構成である。
【0028】
チョッパ回路22は、積分器として機能するアンプ20の出力端にその一端が接続され、他端が接地されたスイッチから構成される。スイッチの開閉は、1/2分周器24からの出力信号により制御される。チョッパ回路22の出力信号は、DFF26のD端子に供給される。
【0029】
1/2分周器24は、クロック信号が供給され、クロック信号の周波数を1/2に分周する回路である。1/2分周器24は、クロック信号を分周してチョッパ回路22のスイッチを制御する。従って、チョッパ回路22のスイッチは、クロック信号の2倍の周期でオン/オフする。スイッチがオンするタイミングにおいて、アンプ20の出力端はスイッチを介して接地されるためゼロレベルとなる。従って、チョッパ回路22は、DFF26の入力信号にゼロレベルを挿入する回路として機能する。
【0030】
DFF26のD端子には、上記のようにアンプ20の出力信号であって、チョッパ回路22でクロック信号に同期してゼロレベルが挿入される信号が供給される。また、DFF26のクロック端子には、反転器28で反転されたクロック信号が供給される。DFF28は、入力されたクロック信号の立ち上がりエッジで信号を出力する。従って、本実施形態では、反転されたクロック信号の立ち上がりエッジで信号を出力する。
【0031】
図3に、
図2の回路のタイミングチャートを示す。正信号が入力された場合のタイミングチャートである。図において、上から順に、クロック信号(CLK)、クロック信号の1/2分周信号、クロック信号の反転信号、DFF26のD端子に供給される信号、DFF26のQ出力端子から出力される信号の波形を示す。
【0032】
チョッパ回路22は、クロック信号の1/2分周信号のタイミングでスイッチがオンされるので、DFF26のD端子に供給される信号は、クロック信号の1/2分周信号に同期してゼロレベルとなる信号である。そして、この信号がクロック信号の反転信号に同期して、クロック信号の反転信号の立ち上がりエッジのタイミングまで遅延されて出力される。以上のようにして、
図2の回路により、入力信号の積分、ゼロレベル挿入、遅延、及び量子化が実行される。すなわち、チョッパ回路22とDFF26でゼロレベル、遅延及び量子化を実現し、フィードバック経路で遅延器を挿入することなくノイズシェープが実現される。さらに、チョッパ回路22によりクロック信号のタイミングでは常に一度はゼロレベルが出力されることになる。
【0033】
図4に、パルス合成回路32の回路構成を示す。パルス合成回路32は、DFF26,27からの2つの2値信号を合成して、+1,0,−1の3値信号を生成して出力する。パルス合成回路32は、論理ゲートと、3つのスイッチSW1〜SW3から構成される。論理ゲートは、3つのNORゲート33a,33b,33cを備える。スイッチSW1は、入力端子が第1電位(例えば5V)に接続されたスリーステートバッファから構成され、スイッチSW2は、入力端子が第2電位(例えば0V)に接続されたスリーステートバッファから構成され、スイッチSW3は、入力端子が第3電位(例えば2.5V)に接続されたアナログスイッチから構成される。ここで、第1電位>第3電位>第2電位である。
【0034】
NORゲート(第1NORゲート)33aの一方の入力端子には、DFF26の反転出力端子(Qバー)からの出力信号が供給される。また、NORゲート33aの他方の入力端子には、DFF27の出力端子(Q)からの出力信号V2が供給される。NORゲート33aは、両信号の否定論理和を演算して信号V3を生成する。信号V3は、SW1に供給されるとともに、NORゲート33cの一方の入力端子にも供給される。
【0035】
NORゲート(第2NORゲート)33bの一方の入力端子には、DFF26の出力端子(Q)からの出力信号V1が供給される。また、NORゲート33bの他方の入力端子には、DFF27の反転出力端子(Qバー)からの出力信号が供給される。NORゲート33bは、両信号の否定論理和を演算して信号V4を生成する。信号V4は、SW2に供給されるとともに、NORゲート33cの他方の入力端子にも供給される。
【0036】
NORゲート(第3NORゲート)33cの一方の入力端子には、NORゲート33aからの信号V3が供給される。また、NORゲート33cの他方の入力端子には、NORゲート33bからの信号V4が供給される。NORゲート33cは、信号V3及び信号V4の否定論理和を演算して信号V5を生成する。信号V5は、SW3に供給される。
【0037】
このような構成において、各論理ゲート33a,33b,33cの出力信号である信号V3〜V5は、SW1〜SW3のそれぞれの制御信号として機能し、SW1〜SW3の状態は以下のように変化する。
【0038】
DFF26の反転出力端子の信号が「1」(論理値)でDFF27の出力端子の信号が「0」の場合、NORゲート33aからの出力信号V3は「0」となり、SW1はオフとなる。また、NORゲート33bからの出力信号V4も「0」となり、SW2はオフとなる。さらに、NORゲート33cからの出力信号V5は「1」となり、SW3はオンとなる。従って、SW1:オフ、SW2:オフ、SW3:オンとなり、出力電位はSW3がオンすることで第3電位に設定される。
【0039】
DFF26の反転出力端子の信号が「1」でDFF27の出力端子の信号が「1」の場合、NORゲート33aからの出力信号V3は「0」となり、SW1はオフとなる。また、NORゲート33bからの出力信号V4は「1」となり、SW2はオンとなる。さらに、NORゲート33cからの出力信号V5は「0」となり、SW3はオフとなる。従って、SW1:オフ、SW2:オン、SW3:オフとなり、出力電位はSW2がオンすることで第2電位に設定される。
【0040】
DFF26の反転出力端子の信号が「0」でDFF27の出力端子の信号が「0」の場合、NORゲート33aからの出力信号V3は「1」となり、SW1はオンとなる。また、NORゲート33bからの出力信号V4は「0」となり、SW2はオフとなる。さらに、NORゲート33cからの出力信号V5は「0」となり、SW3はオフとなる。従って、SW1:オン、SW2:オフ、SW3:オフとなり、出力電位はSW1がオンすることで第1電位に設定される。
【0041】
DFF26の反転出力端子の信号が「0」でDFF27の出力端子の信号が「1」の場合、NORゲート33aからの出力信号V3は「0」となり、SW1はオフとなる。また、NORゲート33bからの出力信号V4は「0」となり、SW2はオフとなる。さらに、NORゲート33cからの出力信号V5は「1」となり、SW3はオンとなる。従って、SW1:オフ、SW2:オフ、SW3:オンとなり、出力電位はSW3がオンすることで第3電位に設定される。
【0042】
図5に、
図4の構成における各部のタイミングチャートを示す。信号V1〜V6のタイミングチャートであり、信号V1はDFF26の出力端子(Q)の信号、信号V2はDFF27の出力端子(Q)の信号、信号V3はNORゲート33aの出力信号、信号V4はNORゲート33bの出力信号、信号V5はNORゲート33cの出力信号、信号V6はパルス合成回路32の出力信号である。
【0043】
信号V1が「0」で信号V2が「0」の場合、第1NORゲート33aの一方の入力端子には信号V1の反転出力(Qバー)が入力されるから「1」であり、第1NORゲート33aの他方の入力端子には信号V2が入力されるから「0」であり、第1NORゲート33aの出力は「0」となる。また、第2NORゲート33bの一方の入力端子には信号V1が入力されるから「0」であり、第2NORゲート33bの他方の入力端子には信号V2の反転出力(Qバー)が入力されるから「1」であり、第2NORゲート33bの出力は「0」となる。すると、第3NORゲート33cの入力端子にはともに「0」が入力され、第3NORゲート33cの出力は「1」となる。その結果、信号V3が「0」、信号V4が「0」、信号V5が「1」となるため、
SW1:オフ
SW2:オフ
SW3:オン
となり、回路の出力信号V6は第3電位に設定される。
【0044】
信号V1が「1」で信号V2が「0」の場合、第1NORゲート33aの一方の入力端子には信号V1の反転出力(Qバー)が入力されるから「0」であり、第1NORゲート33aの他方の入力端子には信号V2が入力されるから「0」であり、第1NORゲート33aの出力は「1」となる。また、第2NORゲート33bの一方の入力端子には信号V1が入力されるから「1」であり、第2NORゲート33bの他方の入力端子には信号V2の反転出力(Qバー)が入力されるから「1」であり、第2NORゲート33bの出力は「0」となる。すると、第3NORゲート33cの入力端子には「1」と「0」が入力され、第3NORゲート33cの出力は「0」となる。その結果、信号V3が「1」、信号V4が「0」、信号V5が「0」となるため、
SW1:オン
SW2:オフ
SW3:オフ
となり、回路の出力信号V6は第1電位に設定される。
【0045】
信号V1が「0」で信号V2が「1」の場合、第1NORゲート33aの一方の入力端子には信号V1の反転出力(Qバー)が入力されるから「1」であり、第1NORゲート33aの他方の入力端子には信号V2が入力されるから「1」であり、第1NORゲート33aの出力は「0」となる。また、第2NORゲート33bの一方の入力端子には信号V1が入力されるから「0」であり、第2NORゲート33bの他方の入力端子には信号V2の反転出力(Qバー)が入力されるから「0」であり、第2NORゲート33bの出力は「1」となる。すると、第3NORゲート33cの入力端子には「0」と「1」が入力され、第3NORゲート33cの出力は「0」となる。その結果、信号V3が「0」、信号V4が「1」、信号V5が「0」となるため、
SW1:オフ
SW2:オン
SW3:オフ
となり、回路の出力信号V6は第2電位に設定される。第1電位が+1、第2電位が−1、第3電位が0に対応する。以上のようにして、パルス合成回路32でDFF26,27からの2つのパルスが合成され、+1,0,−1の3値信号が生成される。
【0046】
次に、1価3値波形生成回路40、ドライバ回路42及びスピーカ44について説明する。
【0047】
本実施形態では、+1,0,−1の3値信号を生成して出力しているが、3値パルス密度変調信号を用いて高出力を得るためには、変調器電源Vddより高い電圧VBでスピーカを駆動する必要がある。但し、3値パルス密度変調信号のままスピーカを駆動すると、高電圧VBだけでなく、これとは別に中点電圧源(VB/2)と中点電圧保持回路を設ける必要があり、回路規模が増大してしまう。そこで、3値パルス密度変調信号から単電源3状態スピーカ駆動回路に最適な信号を生成する。
【0048】
1価3値波形生成回路40は、単電源3状態スピーカ駆動回路であるドライバ42に対し、パルス合成回路32からの信号に基づき、1価3値波形信号に変換する回路である。ここで、「1価3値」とは、単電源で駆動されるスピーカに対し、正電流で駆動する状態(正オン)、負電流で駆動する状態(負オン)、及びオフ状態の3つの駆動状態を実現することを意味する。正電流及び負電流は、スピーカ44を流れる電流の向きが互いに逆であることを意味する。
【0049】
図6及び
図7に、単電源でのスピーカ駆動の原理を示す。
図6は、3値波形であり、+1,0,−1の3値それぞれに、正オン、オフ、負オンの3つの状態を対応させたものである。
図7は、これら3つの状態におけるスピーカ44の通電状態を示すものであり、
図7(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ正オン、負オン、オフ、オフに対応するものである。
【0050】
図7(a)において、正オンでは4つのスイッチS11〜S14のうち、S11及びS14がオン、D12及びS13がオフし、
電源→S11→スピーカ44→スイッチS14
と電流が流れてスピーカ44を駆動する。
【0051】
また、
図7(b)において、負オンでは4つのスイッチS11〜S14のうち、S13及びS12がオン、S11及びS14がオフし、
電源→S13→スピーカ44→S12
と電流が流れてスピーカ44を駆動する。
【0052】
さらに、
図7(c)において、オフでは4つのスイッチS11〜S14のうち、S11及びS13がオフし、S12及びS14がオンしてスピーカ44の両端が同電位となるため電流が流れずスピーカ44は駆動されない。
図7(d)においても、オフでは4つのスイッチS11〜S14のうち、S12及びS14がオフし、S11及びS13がオンしてスピーカ44の両端が同電位となるため電流が流れずスピーカ44は駆動されない。
【0053】
図8に、1価3値波形生成回路40の回路構成を示す。なお、同図には、ドライバ42の回路構成も併せて示す。
【0054】
1価3値波形生成回路40は、4つのNOTゲート40a〜40dから構成される。これらのNOTゲート40a〜40dを図中上から順にG11,G12,G13,G14と称する、つまりNOTゲート40aをG11、NOTゲート40bをG12、NOTゲート40cをG13、NOTゲート40dをG14と称すると、G11及びG12にはパルス合成回路32を構成するNORゲート33aの出力信号が供給され、G13及びG14にはパルス合成回路32を構成するNORゲート33bの出力信号が供給される。G11〜G14はそれぞれの入力信号を反転し、出力信号をそれぞれドライバ42に供給する。
パルス合成回路32を構成するNORゲート33a,33bを含めて1価3値波形生成回路40を構成するといえる。
【0055】
ドライバ42は、レベルシフト回路42a1,42a2、ゲート駆動回路42b1〜42b4及びスイッチングFET42c1〜42c4から構成される。4つのスイッチングFET42c1〜42c4は、
図7における4つのスイッチS11〜S14にそれぞれ対応する。スイッチングFET42c1及び42c4はPチャンネルFET,スイッチングFET42c2及び42c4はNチャンネルFETである。
【0056】
スピーカ44は、互いに直列接続されたスイッチングFET42c1及びスイッチングFET42c2の接続節点にその一端が接続されるとともに、互いに直列接続されたスイッチングFET42c3及びスイッチングFET42c4の接続節点にその他端が接続される。スイッチングFET42c1及びスイッチングFET42c3は単電源の正極側に接続され、スイッチングFET42c2及びスイッチングFET42c4は単電源の負極側に接続される。従って、スイッチングFET42c1がオンしスイッチングFET42c2がオフし、かつ、スイッチングFET42c3がオフし、スイッチングFET42c4がオンすると、スイッチングFET42c1→スピーカ44→スイッチング42c4
の如く電流が流れ、正電流オン状態となる。また、スイッチングFET42c1がオフしスイッチングFET42c2がオンし、かつ、スイッチングFET42c3がオンしスイッチングFET42c4がオフすると、スイッチングFET42c3→スピーカ→スイッチングFET42c2の如く電流が流れ、負電流オン状態となる。さらに、スイッチンFET42c1,42c3がオフし、スイッチングFET42c2,42c4がオンすると、スピーカ44には電流は流れずオフ状態となる。
【0057】
1価3値波形生成回路40の4つの論理ゲートの出力信号は、4つのスイッチングFET42c1〜42c4を駆動するためのそれぞれのゲート駆動回路42b1〜42b4に供給される。すなわち、G11の出力信号は、レベルシフト回路42a1を介してゲート駆動回路42b1に供給され、スイッチングFET42c1を駆動する。G12の出力信号は、ゲート駆動回路42b2に供給され、スイッチングFET42c2を駆動する。G14の出力信号は、レベルシフト回路42a2を介してゲート駆動回路42b3に供給され、スイッチングFET42c3を駆動する。G13の出力信号は、ゲート駆動回路42b4に供給され、スイッチングFET42c4を駆動する。
【0058】
従って、DFF26,27からの信号に応じて、以下のようにスイッチングFET42c1〜42c4がオン、オフし、スピーカ44を駆動する。
【0059】
NORゲート33a,33bの出力がそれぞれ「1」、「0」である場合、G11及びG12の出力は「1」を反転した「0」となり、G13及びG14の出力は「0」を反転した「1」となる。すると、スイッチングFET42c1はオン、スイッチングFET42c2はオフ、スイッチングFET42c3はオフ、スイッチングFETc4はオンとなり、電流は、
スイッチングFET42c1→スピーカ44→スイッチングFET42c4
と流れる(+ON状態)。
【0060】
NORゲート33a、33bの出力がそれぞれ「0」、「1」である場合、G11及びG12の出力は「0」を反転した「1」となり、G13及びG14の出力は「1」を反転した「0」となる。すると、スイッチングFET42c1はオフ、スイッチングFET42c2はオン、スイッチングFET42c3はオン、スイッチングFET42c4はオフとなり、電流は
スイッチングFET42c3→スピーカ44→スイッチングFET42c2
と流れる(−ON状態)。
【0061】
NORゲート33a,33bの出力がそれぞれ「1」である場合、G11〜G14の出力は「1」を反転した「0」となる。すると、スイッチングFET42c1はオン、スイッチングFET42c2はオフ、スイッチングFET42c3はオン、スイッチングFETc4はオフとなり、スピーカ44に電流は流れない(OFF状態)。
【0062】
さらに、NORゲート33a,33bの出力が「0」である場合、G11〜G14の出力は「0」を反転した「1」となる。すると、スイッチングFET42c1はオフ、スイッチングFET42c2はオン、スイッチングFET42c3はオフ、スイッチングFETc4はオンとなり、スピーカ44に電流は流れない(OFF状態)。
【0063】
図9に、
図8各部の信号のタイミングチャートを示す。
図9(a)はパルス合成回路32で合成される3値信号(3値パルス密度変調信号)、
図9(b)は
図8のVo1の電圧信号、
図9(c)は
図8のVo2の電圧信号、
図9(d)はスピーカ44に流れる電流信号である。
図9(d)に示すように、スピーカ44に流れる電流が正、負、オフの3値になっていることが分かる。
【0064】
以上のように、本実施形態では、パルス合成回路32で合成された信号を負帰還するとともに、負帰還される信号系統とは別に、1価3値波形生成回路40及びドライバ42でスピーカ44を3値で駆動するため、変調器単独で安定動作が可能となる。従って、変調段が安定した後に、1価3値波形生成回路40及びドライバ回路42を動作させることで、電源オン時に「ボツ」音が生じる、あるいは動作が不安定となる事態を防止できる。
【0065】
<第2実施形態>
第1実施形態では、パルス合成回路32で合成した3値信号を負帰還しているが、積分器20とチョッパ回路22との間、及び位相反転回路21とチョッパ回路23との間に、ゼロレベルを調整するためにバイアス電圧を印加するバイアス生成回路を設けてもよい。また、1価3値波形生成回路40及びドライバ42でスピーカ44を3値駆動する際に、ドライバ42の上下一対のスイッチングFET、すなわち、スイッチングFET42c1とスイッチングFET42c2、あるいはスイッチングFET42c3とスイッチングFET42c4が同時にオンとなって短絡しないように、1価3値波形生成回路の前段にデッドタイム生成回路を設けてもよい。
【0066】
図10に、本実施形態の全体構成図を示す。
図1に示す構成に、さらにバイアス生成回路30及びデッドタイム生成回路38を付加した構成である。
【0067】
図11に、デッドタイム生成回路38の回路構成を示す。デッドタイム生成回路38は、公知のように抵抗R及びコンデンサCで構成され、抵抗と並列にダイオードが逆接続される。1価3値波形生成回路40の各論理ゲートの前段に設けられたデッドタイム生成回路38の時定数RCを調整することで、ドライバ回路42の上下のスイッチングFETがともにオフとなる時間を生成することができる。
【0068】
図12及び
図13に、ドライバ回路42の上下のスイッチングFETに印加されるゲート電圧信号V1〜V4のタイミングチャートを示す。
図12において、電圧信号V1はゲート駆動回路42b1からスイッチングFET42c1のゲート端子に供給される信号であり、電圧信号V2はゲート駆動回路42b2からスイッチングFET42c2のゲート端子に印加される信号である。電圧信号V1と電圧信号V2の立ち下がりタイミングのデッドタイムをΔt1、立ち上がりタイミングのデッドタイムをΔt2とすると、デッドタイム生成回路38のうち、1価3値波形成形回路40のNOTゲート40a,40bの前段に設けられた回路の時定数RCを調整することで所望の値に設定できる。例えば、デッドタイム生成回路38の時定数をそれぞれτ1、τ2とし、ドライバ回路42の電源電圧をVdd、閾電圧をVthとして、
Δt1=−τ1・ln(1−Vth/Vdd)
Δt2=−τ2・ln(1−(Vcc−Vth)/Vdd)
により調整される。電圧信号V1が論理値1でスイッチングFET42c1はオフ、電圧信号V2が論理値0でスイッチングFET42c2はオフとなるので、Δt1、Δt2を生成することで上下のスイッチングFET42c1、42c2がともにオフとなる期間が生成される。
【0069】
また、
図13において、電圧信号V3はゲート駆動回路42b3からスイッチングFET42c3のゲート端子に供給される信号であり、電圧信号V4はゲート駆動回路42b4からスイッチングFET42c4のゲート端子に印加される信号である。電圧信号V3と電圧信号V4の立ち下がりタイミングのデッドタイムをΔt3、立ち上がりタイミングのデッドタイムをΔt4とすると、デッドタイム生成回路38のうち、1価3値波形成形回路40の非NOTゲート40c,40dの前段に設けられた回路の時定数RCを調整することで所望の値に設定できる。例えば、デッドタイム生成回路38の時定数をそれぞれτ3、τ4とし、ドライバ回路42の電源電圧をVdd、閾電圧をVthとして、
Δt3=−τ3・ln(1−(Vcc−Vth/Vdd)
Δt4=−τ4・ln(1−Vth/Vdd)
により調整される。電圧信号V3が論理値1でスイッチングFET42c3はオフ、電圧信号V4が論理値0でスイッチングFET42c4はオフとなるので、Δt3、Δt4を生成することで上下のスイッチングFET42c3、42c4がともにオフとなる期間が生成される。
【0070】
なお、単電源に接続されたスピーカを正状態、負状態、オフ状態の3状態で駆動する構成自体は、例えば特表平6−504658号公報等に記載されており公知であるが、これはPWM信号を前提とした構成であって本実施形態におけるようなパルス密度変調信号を前提とした構成ではなく、しかも、DFF26,27からの信号を用いて負帰還経路とは別に1価3値信号を生成する生成回路40は開示されていない点に留意すべきである。