特許第6268802号(P6268802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268802
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20180122BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20180122BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180122BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20180122BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20180122BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20180122BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20180122BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180122BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20180122BHJP
   F16H 9/12 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   B60W10/06 900
   B60W10/10 900
   B60W10/08 900
   B60W10/26 900
   B60K6/543ZHV
   B60W10/30 900
   B60W20/16
   F01N3/24 R
   F01N3/24 L
   F01N3/20 K
   F16H9/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-165685(P2013-165685)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33911(P2015-33911A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
(72)【発明者】
【氏名】大倉 由喜路
(72)【発明者】
【氏名】赤木 貴
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−245135(JP,A)
【文献】 特開2007−331632(JP,A)
【文献】 特開平10−023603(JP,A)
【文献】 特開2000−236601(JP,A)
【文献】 米国特許第06278915(US,B1)
【文献】 特開2012−111381(JP,A)
【文献】 特開平08−251708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0160455(US,A1)
【文献】 特開2010−168927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続する電動発電機及び内燃機関を有するハイブリッドシステムと、前記内燃機関の排気管に介設された触媒を有する排ガス浄化システムとを備えたハイブリッド車両において、
前記ハイブリッドシステム及び前記排ガス浄化システムを制御する制御手段を設置するとともに、前記バッテリに接続する電熱体を、前記排ガス浄化システムに配置し、
前記内燃機関のクランク軸に無段変速機構の第1動力伝達部を直結する一方で、前記電動発電機に前記無段変速機構の第2動力伝達部を直結し、前記第1動力伝達部と前記第2動力伝達部との間に無端状の動力伝達部材を掛け回し、
前記制御手段は、前記ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつ前記バッテリの充電容量が予め設定されたしきい値超であるときにおいて、前記触媒が予め設定された温度範囲の下限値未満である場合には、前記第1動力伝達部の径に対する前記第2動力伝達部の径の比を小さくすることで前記電動発電機が発電する電力を増加させ、この電力を前記電熱体に供給させて前記電熱体を発熱させることで、前記触媒の温度を上昇させて前記触媒を前記温度範囲内に維持することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつ前記バッテリの充電容量が前記しきい値超であるときにおいて、前記触媒が前記温度範囲の上限値超になった場合には、前記第1動力伝達部の径に対する前記第2動力伝達部の径の比を大きくすることで前記電動発電機が発電する電力を低下させ、この電力を前記電熱体に供給させて前記電熱体を発熱させることで、前記触媒の温度を低下させて前記触媒を前記温度範囲内に維持する請求項1に記載のイブリッド車両。
【請求項3】
バッテリに接続する電動発電機及び内燃機関を有するハイブリッドシステムと、前記内燃機関の排気管に介設された触媒を有する排ガス浄化システムとを備えたハイブリッド車両の制御方法において、
前記バッテリに接続する電熱体を、前記排ガス浄化システムに配置し、
前記内燃機関のクランク軸に無段変速機構の第1動力伝達部を直結する一方で、前記電動発電機に前記無段変速機構の第2動力伝達部を直結し、前記第1動力伝達部と前記第2動力伝達部との間に無端状の動力伝達部材を掛け回し、
前記ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつ前記バッテリの充電容量が予め設定されたしきい値超であるときにおいて、前記触媒が予め設定された温度範囲の下限値未満である場合には、前記第1動力伝達部の径に対する前記第2動力伝達部の径の比を小さくすることで前記電動発電機が発電する電力を増加させ、この電力を前記電熱体に供給させて前記電熱体を発熱させることで、前記触媒の温度を上昇させて前記触媒を前記温度範囲内に維持することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法
【請求項4】
前記ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつ前記バッテリの充電容量が前記しきい値超であるときにおいて、前記触媒が前記温度範囲の上限値超になった場合には、前記第1動力伝達部の径に対する前記第2動力伝達部の径の比を大きくすることで前記電動発電機が発電する電力を低下させ、この電力を前記電熱体に供給させて前記電熱体を発熱させることで、前記触媒の温度を低下させて前記触媒を前記温度範囲内に維持する請求項3に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両及びその制御方法に関し、更に詳しくは、ハイブリッド車両のエネルギー回生時において、排ガスの浄化率を低下させることなく燃費を向上させることができるハイブリッド車両及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上と環境対策などの観点から、バッテリに接続する電動発電機により、エンジンの駆動力のアシストやエネルギー回生を行うハイブリッド車両が注目されている。
【0003】
このハイブリッド車両にディーゼルエンジンを用いる場合には、従来と同じく、ディーゼルエンジンの排ガスに含有される有害物質を除去するための排ガス浄化システムが必要となる。そのような排ガス浄化システムとしては、未燃炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化する酸化触媒(DOC)、窒素酸化物(NOx)を浄化するNOx吸蔵還元型触媒(LNT)や選択還元型触媒(SCR)、粒子状物質(PM)を浄化するPM捕集フィルター(DPF)などが実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、ハイブリッド車両がエネルギー回生を行う減速状態が長く続くと、ディーゼルエンジンにおいて燃焼が行われないため、排ガス浄化システムの温度が低下する。このように排ガス浄化システムの温度が低下すると、DOCやLNTの触媒温度が活性化温度領域よりも低くなったり、PM捕集フィルターでPMが燃焼しなくなったりするため、排ガスの浄化率の低下を招くことになる。
【0005】
一方で、ハイブリッド車両に搭載できるバッテリの大きさや性能には制限があるため、バッテリの充電容量が上限に達した後は、エネルギー回生により発電された電力を廃棄せざるえないため、回生エネルギーを有効活用して燃費を向上させるには限りがあるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−168927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ハイブリッド車両のエネルギー回生時において、排ガスの浄化率を低下させることなく燃費を向上させることができるハイブリッド車両及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明のハイブリッド車両は、バッテリに接続する電動発電機及び内燃機関を有するハイブリッドシステムと、前記内燃機関の排気管に介設された触媒を有する排ガス浄化システムとを備えたハイブリッド車両において、前記ハイブリッドシステム及び前記排ガス浄化システムを制御する制御手段を設置するとともに、前記バッテリに接続する電熱体を、前記排ガス浄化システムに配置し、前記内燃機関のクランク軸に無段変速機構の第1動力伝達部を直結する一方で、前記電動発電機に前記無段変速機構の第2動力伝達部を直結し、前記第1動力伝達部と前記第2動力伝達部との間に無端状の動力伝達部材を掛け回し、前記制御手段は、前記ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつ前記バッテリの充電容量が予め設定されたしきい値超であるときにおいて、前記触媒が予め設定された温度範囲の下限値未満である場合には、前記第1動力伝達部の径に対する前記第2動力伝達部の径の比を小さくすることで前記電動発電機が発電する電力を増加させ、この電力を前記電熱体に供給させて前記電熱体を発熱させることで、前記触媒の温度を上昇させて前記触媒を前記温度範囲内に維持することを特徴とするものである。
【0009】
上記の目的を達成する本発明のハイブリッド車両の制御方法は、バッテリに接続する電動発電機及び内燃機関を有するハイブリッドシステムと、前記内燃機関の排気管に介設された触媒を有する排ガス浄化システムとを備えたハイブリッド車両の制御方法において、前記バッテリに接続する電熱体を、前記排ガス浄化システムに配置し、前記内燃機関のクランク軸に無段変速機構の第1動力伝達部を直結する一方で、前記電動発電機に前記無段変速機構の第2動力伝達部を直結し、前記第1動力伝達部と前記第2動力伝達部との間に無端状の動力伝達部材を掛け回し、前記ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつ前記バッテリの充電容量が予め設定されたしきい値超であるときにおいて、前記触媒が予め設定された温度範囲の下限値未満である場合には、前記第1動力伝達部の径に対する前記第2動力伝達部の径の比を小さくすることで前記電動発電機が発電する電力を増加
させ、この電力を前記電熱体に供給させて前記電熱体を発熱させることで、前記触媒の温度を上昇させて前記触媒を前記温度範囲内に維持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハイブリッド車両及びその制御方法によれば、ハイブリッド車両がエネルギー回生時であって、かつバッテリがあらかじめ設定されたしきい値超になったときに、そのバッテリから電力を供給して電熱体を加熱することで排気ガス浄化装置の触媒が予め設定された温度範囲内に維持されるようにしたので、ハイブリッド車両のエネルギー回生時における排気ガス浄化装置の温度低下を防止することができるため、排ガスの浄化率が低下することはない。また、バッテリの充電容量に余裕が生じて、エネルギー回生により発電された電力を充電して有効活用できるため、燃費を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態からなるハイブリッド車両の構成を示す図である。
図2】電熱体の構造の例を示す平面図である。
図3】電熱体の構造の他の例を示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態からなるハイブリッド車両の制御方法を説明するフロー図である。
図5】本発明の第2の実施の形態からなるハイブリッド車両の構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施の形態からなるハイブリッド車両の制御方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態からなるハイブリッド車両の例を示す。
【0013】
このハイブリッド車両1Aは、エンジン(内燃機関)10と電動発電機(M/G)21を有するハイブリッドシステム2を備えている。ハイブリッド車両1Aのエンジン10は、エンジン本体(ENG)11と排気通路12とターボ過給器13と、排気通路12に設けられた排気ガス浄化装置(後処理装置)14を備えている。
【0014】
エンジン本体11のクランク軸15に連結してCVT16を設けるとともに、このCVT16に電動発電機21を連結する。つまり、エンジン10のクランク軸15にCVT16の第1プーリー16aを直結するとともに、電動発電機21にCVT16の第2プーリー16bを設けて構成し、第1プーリー16aと第2プーリー16bとを介してクランク軸15と電動発電機21との間の動力伝達を行うように構成する。
【0015】
これらの第1プーリー16aと第2プーリー16bとの間には無端状のベルト又はチェーン(動力伝達部材)16cが掛け回されており、クランク軸15から第1プーリー16aと動力伝達部材16cと第2プーリー16bを経由して電動発電機21に、また逆に、電動発電機21から第2プーリー16bと動力伝達部材16cと第1プーリー16aを経由してクランク軸15に、それぞれ動力が伝達される。
【0016】
このCVT16では、第1プーリー16aと第2プーリー16bの幅をそれぞれ変化させることにより、プーリー16a、16bと動力伝達部材16cの接する径方向位置を変えるようにしており、動力伝達部材16cの接する位置が内側になればプーリー径が小さくなり、逆に外側になればプーリー径が大きくなるように構成されている。そして、電子制御による油圧又は電動機構(図示しない)で2個のプーリー16a、16bの幅の拡縮が互いに逆になるように変化させる制御をすることにより、動力伝達部材16cをたるませることなく、変速を連続的に行うことができる。
【0017】
排気ガス浄化装置14は、排気通路12に介設された触媒コンバータ42を備えており、その内部には触媒43が格納されている。この触媒43としては、DOC、LNT、SCR及びDPFのうちのいずれか1つ又は組み合わされた複数が例示される。
【0018】
DOCは、排ガスの混合機能を有する構造に成形した金属製の担持体に、ロジウム、酸化セリウム、白金、酸化アルミニウム等を担持して形成される。
【0019】
LNTは、γアルミナ等で形成されたモノリスハニカムのセルの担持体の表面に、触媒金属及びNOx吸蔵材を担持させて構成される。この触媒金属としてはPtやPdが用いられる。またNOx吸蔵材としては、K、Na、Li、Cs等のアルカリ金属や、Ba、Ca等のアルカリ土類金属などが用いられる。
【0020】
SCRは、鉄イオン交換アルミノシリケートや銅イオン交換アルミノシリケート(又はアルミノホスフェート)などのゼオライト系触媒を含むスラリーをセラミックハニカムなどの担体に塗布したもの、あるいはその成型体として形成される。
【0021】
DPFは、多孔質セラミック製のハニカムのチャンネル(セル)の入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型のウオールフロータイプのフィルターから形成される。なお、このフィルターに、白金、パラジウム及びロジウムなどの貴金属からなる酸化触媒と、酸化セリウム等からなるPM酸化触媒とを担持させる場合もある。
【0022】
電力システム20の一部である電動発電機21は、発電機として、エンジン10の駆動力を受けて発電をしたり、又は、ハイブリッド車両1Aのブレーキ力等の回生力発生による回生発電をしたり、モータとして駆動して、その駆動力をエンジン10のクランク軸15に伝達して、エンジン10の駆動力をアシストしたりする。
【0023】
なお、発電して得た電力は、配線22を経由してインバータ(INV)23で変換して第1バッテリ(充電器:B1)24Aに充電される。また、電動発電機21を駆動するときは、第1バッテリ24Aに充電された電力をインバータ23で変換して電動発電機21に供給する。
【0024】
図1の構成では、更に、DC−DCコンバータ(CON)25と第2バッテリ(B2)24Bを第1バッテリ24Aに直列に設けて、第1バッテリ24Aの、例えば、一般的な12Vや24V以上の高い電圧の電力を、DC−DCコンバータ25で、例えば、12Vに電圧降下させて、第2バッテリ24Bに充電して、この第2バッテリ24Bから補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26C等に電力を供給するように構成している。
【0025】
ハイブリッド車両1Aにおいては、エンジン10の動力は、動力伝達システム30の変速機(トランスミッション)31に伝達され、さらに、変速機31より推進軸(プロペラシャフト)32を介して作動装置(デファレンシャルギア)33に伝達され、作動装置33より駆動軸(ドライブシャフト)34を介して車輪35に伝達される。これにより、エンジン10の動力が車輪35に伝達され、ハイブリッド車両1Aが走行する。なお、エンジン10の搭載方式によっては、動力伝達システムの伝達経路は異なっていてもよい。
【0026】
一方、電動発電機21の動力に関しては、第1バッテリ24Aに充電された電力がインバータ23を介して電動発電機21に供給され、この電力により電動発電機21が駆動され動力を発生する。この電動発電機21の動力は、CVT16を介してクランク軸15に伝達されて、エンジン10の動力伝達経路を伝達して、車輪35に伝達される。
【0027】
これにより、電動発電機21の動力がエンジン10の動力と共に車輪35に伝達され、ハイブリッド車両1Aが走行する。なお、回生時には、逆の経路で、車輪35の回生力、又はエンジン10の回生力が電動発電機21に伝達されて、電動発電機21での発電が可能となる。
【0028】
また、ハイブリッドシステム用制御装置41が設けられ、エンジン10の回転数Neや負荷Q等の運転状態や電動発電機21の回転数Na等の運転状態や第1バッテリ24A,第2バッテリ24Bの充電容量(SOC)の状態をモニターしながら、CVT16や電動発電機21、インバータ23、DC−DCコンバータ25等を制御する。このハイブリッドシステム用制御装置41は、通常は、エンジン10やハイブリッド車両1Aを制御する全体制御装置40に組み込まれて構成される。この全体制御装置40は、エンジン10の制御では、シリンダ内燃焼やターボ過給器13や排気ガス浄化装置14や補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26Cなどを制御している。
【0029】
このようなハイブリッド車両1Aの排気ガス浄化装置14において、バッテリ24Bに電気的に接続された電熱体44が、触媒43の上流側の面に対向するように配置されている。この電熱体44の形状は特に限定するものではないが、電熱線45を円状に複数巻き回した形状(図2を参照)や、円板46に排ガスの通気孔47を複数設けた形状(図3を参照)などが好ましく例示される。
【0030】
なお、上記のように電熱体44を触媒43の前面に対向して配置する代わりに、触媒43に直接に接触するように配置してもよい。
【0031】
また、触媒コンバータ42の入口近傍には、排ガスの温度を測定する温度センサ48が設置されている。この温度センサ48により、直接的な測定が困難である触媒43の温度を推定することが可能となる。
【0032】
更に、バッテリ24Bと電熱体44との間には、遠隔操作可能なスイッチ49が設けられている。
【0033】
このようなハイブリッド車両1Aにおける制御方法を図4に基づいて以下に説明する。
【0034】
ハイブリッドシステム用制御装置41は、ハイブリッド車両1Aがエネルギー回生の状態にあるかを判定し(S10)、エネルギー回生の状態にあるときには、第1バッテリ24Aの充電容量(SOC)が予め設定された上限しきい値超であるかを判定する(S11)。
【0035】
なお、ハイブリッド車両1Aがエネルギー回生の状態となるのは、緩やかな制動時や減速時などが例示される。また、第1バッテリ24AのSOCの上限しきい値としては、80〜90%の範囲の値が例示される。
【0036】
次に、第1バッテリ24AのSOCが上限しきい値超である場合には、温度センサ48の測定値Tを入力し(S12)、触媒43が予め設定された温度範囲の下限値未満であるかを判定する(S13)。
【0037】
触媒43における予め設定された温度範囲としては、DOCでは活性化温度領域(例えば、300〜500℃)、LNT及びSCRでは活性化温度領域(例えば、200〜500℃)、DPFではPMがフィルター内部で燃焼する温度領域(例えば、500℃〜600℃)などが例示される。
【0038】
次に、触媒43が下限値未満である場合には、スイッチ49をオンにして(S14)、第2バッテリ24Bから電力を供給して電熱体44を発熱させる(S15)。この電熱体44の発熱により、触媒43が排ガスを通じて間接的に加熱されて温度が上昇する(S16)。
【0039】
そして、触媒43が予め設定された温度範囲の上限値超であるかを判定し(S17)、上限値超である場合にはスイッチ49をオフにする(S18)。これらのステップS12〜S18を繰り返すことで、触媒43を予め設定された温度範囲内に維持する。
【0040】
このような制御を行うことにより、ハイブリッド車両1Aのエネルギー回生時における排気ガス浄化装置14の温度低下を防止することができるので、排ガスの浄化率が低下することはない。また、第1バッテリ24Aの充電容量に余裕が生じて、エネルギー回生により発電された電力を充電して有効活用できるため、燃費を向上することができる。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施形態からなるハイブリッド車両を示す。なお、図1と同じ部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
このハイブリッド車両1Bにおいては、電熱体44を電動発電機21に電気的に接続している。
【0043】
このようなハイブリッド車両1Bにおける制御方法を図6に基づいて以下に説明する。
【0044】
ハイブリッドシステム用制御装置41は、ハイブリッド車両1Bがエネルギー回生の状態にあるかを判定し(S20)、エネルギー回生の状態にあるときには、第1バッテリ24Aの充電容量(SOC)が予め設定された上限しきい値超であるかを判定する(S21)。
【0045】
次に、第1バッテリ24AのSOCが上限しきい値超である場合には、温度センサ48の測定値Tを入力し(S22)、触媒43が予め設定された温度範囲の下限値未満であるかを判定する(S23)。
【0046】
次に、触媒43が下限値未満である場合には、第1プーリー16aのプーリー径に対する第2プーリー16bのプーリー径の比(プーリー比)を小さくする(S24)ことで第2プーリー16b側を低トルクかつ高回転にして、電動発電機21が発電する電力を増加させて電熱体44を発熱させる(S25)。この電熱体44の発熱により、触媒43が排ガスを通じて間接的に加熱されて温度が上昇する(S26)。
【0047】
そして、触媒43が予め設定された温度範囲の上限値超であるかを判定し(S27)、上限値超である場合には、プーリー比を大きくする(S28)ことで第2プーリー16b側を高トルクかつ低回転にして、電動発電機21が発電する電力を低下させて電熱体44の発熱量を小さくすることで触媒43の温度を降下させる(S29)。これらのステップS22〜S29を繰り返すことで、触媒43を予め設定された温度範囲内に維持する。
【0048】
このような制御を行うことにより、ハイブリッド車両1Bのエネルギー回生時における排気ガス浄化装置14の温度低下を防止することができるので、排ガスの浄化率が低下することはない。また、第1バッテリ24Aに充電しきれなかった電力を排気ガス浄化装置14の温度制御に使用する一方で、既に充電された電力を有効活用できるため、燃費を向上することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ハイブリッド車両
2 ハイブリッドシステム
10 エンジン
11 エンジン本体
15 クランク軸
16 CVT
16a 第1プーリー
16b 第2プーリー
21 電動発電機
24A 第1バッテリ
24B 第2バッテリ
41 ハイブリッドシステム用制御装置
43 触媒
44 電熱体
48 温度センサ
49 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6