(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<1:オーディオ信号処理システムの構成>
図1に、第1実施形態に係るオーディオ信号処理システムの構成例を示す。オーディオ信号処理システム1Aは、スマートフォンなどの端末装置10と、オーディオ信号処理装置20と、スピーカSP1〜SP5とを備える。端末装置10は、例えば、スマートフォンなどの通信機器であり、オーディオ信号処理装置20と通信可能である。通信の形態は無線又は有線のいずれであってもよいが、例えば、無線LAN(Local Area Network)を介して通信が可能である。また、端末装置10は、インターネット上の所定のサイトからアプリケーションプログラムをダウンロードすることができる。そのようなアプリケーションプログラムには、例えば、複数のスピーカSP1〜SP5と視聴位置との距離を測定するために用いるプログラムが含まれる。
【0012】
オーディオ信号処理装置20は、いわゆるマルチチャネルアンプである。オーディオ信号処理装置20は、入力オーディオ信号IN1〜IN5に音響効果を付与した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成し、OUT1〜OUT5をスピーカSP1〜SP5に供給する。スピーカSP1〜SP5は、オーディオ信号処理装置20と有線又は無線にて接続されている。
【0013】
図2に、オーディオ信号処理システム1Aのリスニングルーム内のスピーカSP1〜SP5の配置例を示す。この例では、5つのスピーカSP1〜SP5がリスニングルーム内に配置されているが、スピーカの数は、5つに限らず、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。例えば、サブウーハのスピーカを追加することによって、いわゆる5.1サラウンドシステムとしてもよい。
【0014】
利用者Bは、あらかじめ定められた位置(以下「基準位置Pref」と称する。)で、スピーカSP1〜SP5から放音された音を視聴する。この例では、スピーカSP5は利用者Bの正面に配置され、スピーカSP1は利用者Bの左斜め前方に配置され、スピーカSP2は利用者Bの右斜め前方に配置され、スピーカSP3は利用者Bの右斜め後方に配置され、スピーカSP4は利用者Bの左斜め後方に配置される。利用者Bは、スピーカSP1〜SP5から放音された音を同時に聞くことにより、特定の位置に音源があるかのように利用者Bには聞こえる。
【0015】
オーディオ信号処理装置20は、複数のスピーカSP1〜SP5が配置された位置に基づいて、所望の位置から音が出ているように聞こえる出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成し、出力する。複数のスピーカSP1〜SP5の各位置は、あらかじめ測定しておく。
【0016】
図3にオーディオ信号処理装置20は、装置全体の制御中枢として機能する制御部210、外部と通信を実行する通信インターフェース220、プログラムやデータを記憶するとともに制御部210の作業領域として機能するメモリ230、マイクロフォンなどの外部装置からの信号を入力して制御部210に供給する外部インターフェース240、及び処理ユニット250を備える。処理ユニット250及び制御部210は、複数のスピーカSP1〜SP4の各位置に基づいて、入力オーディオ信号IN1〜IN4に後述する補正処理を施した出力オーディオ信号OUT1〜OUT4を複数のスピーカSP1〜SP4の各々について生成する。なお、本実施形態では、スピーカSP5用の入力オーディオ信号IN5には後述する補正処理を行わず、出力オーディオ信号OUT5としてスピーカSP5に供給するようになっている。なお、処理ユニット250及び制御部210は、CPUがプログラムを実行することにより実現される機能ブロックである。処理ユニット250及び制御部210は、複数のスピーカSP1、SP2、SP3、SP4から所定の視聴位置までの距離を取得する距離取得部と、全体の音量を取得する音量取得部と、音量取得部により取得した音量が所定音量以下であり、前記所定の視聴位置が、前記複数のスピーカに対して所定距離の位置にある基準位置から移動している場合、前記所定の視聴位置に対して遠い側のスピーカについての出力オーディオ信号の出力音量についての補正分を、当該出力音量と、前記距離取得部により取得した前記所定の視聴位置に対して近い側のスピーカから前記所定の視聴位置までの距離とに基づいて算出する算出部と、補正分を出力対象スピーカの出力オーディオ信号に加算する加算部として機能する。
【0017】
処理ユニット250は、加算部331〜334、係数部400〜411、及びディレイ部500〜511を有する。制御部210は、視聴位置及び全体の音量に応じて、係数部400〜411及びディレイ部500〜511のうちのいずれかを適宜選択し、駆動させるようになっている。係数部400〜411及びディレイ部500〜511の選択の具体例については後述する。
【0018】
係数部400は、スピーカSP4用の入力オーディオ信号IN4に係数K41を掛けたオーディオ信号A1をディレイ部500に出力する。係数部401は、スピーカSP3用の入力オーディオ信号IN3に係数K31を掛けたオーディオ信号A2をディレイ部501に出力する。係数部402は、スピーカSP2用の入力オーディオ信号IN2に係数K21を掛けたオーディオ信号A3をディレイ部502に出力する。
【0019】
係数部403は、スピーカSP1用の入力オーディオ信号IN1に係数K12を掛けたオーディオ信号A4をディレイ部503に出力する。係数部404は、スピーカSP3用の入力オーディオ信号IN3に係数K32を掛けたオーディオ信号A5をディレイ部504に出力する。係数部405は、スピーカSP4用の入力オーディオ信号IN4に係数K42を掛けたオーディオ信号A6をディレイ部505に出力する。
【0020】
係数部406は、スピーカSP2用の入力オーディオ信号IN2に係数K23を掛けたオーディオ信号A7をディレイ部506に出力する。係数部407は、スピーカSP1用の入力オーディオ信号IN1に係数K13を掛けたオーディオ信号A8をディレイ部507に出力する。係数部408は、スピーカSP4用の入力オーディオ信号IN4に係数K43を掛けたオーディオ信号A9をディレイ部508に出力する。
【0021】
係数部409は、スピーカSP1用の入力オーディオ信号IN1に係数K14を掛けたオーディオ信号A10をディレイ部509に出力する。係数部410は、スピーカSP2用の入力オーディオ信号IN2に係数K24を掛けたオーディオ信号A11をディレイ部510に出力する。係数部411は、スピーカSP3用の入力オーディオ信号IN3に係数K34を掛けたオーディオ信号A12をディレイ部511に出力する。
【0022】
ディレイ部500〜511は、ハース効果を得るために、係数部400〜411から出力されたオーディオ信号A1〜A12を所定時間遅延させ、加算部331〜334に出力する。なお、ハース効果の詳細については後述する。
【0023】
加算部331〜334は、スピーカSP1〜SP4用の入力オーディオ信号IN1〜IN4と、ディレイ部500〜511から出力されるオーディオ信号A1〜A12とを加算して、オーディオ信号OUT1〜OUT4を出力する。
【0024】
メモリ230は、
図4に示すテーブルTBL1をあらかじめ記憶している。テーブルTBL1は、視聴位置と選択する係数部との関係を表すデータが格納されたテーブルである。また、メモリ230は、各係数部の係数K12、K13、K14、K21、K23、K24、K31、K32、K34、K41、K42、K43を算出するための数式をあらかじめ記憶している。数式の詳細については後述する。
【0025】
<2:オーディオ信号処理システムの動作>
次に、オーディオ信号処理システムの動作を、係数部における係数の算出と、係数部及び加算部を用いた信号処理と、ハース効果処理とに分けて説明する。
<2−1:係数部における係数の算出>
一例として、
図6に示すようにリスニングルーム30が正方形の場合について説明する。スピーカSP1、スピーカSP2、スピーカSP3、及びスピーカSP4は、リスニングルーム30の四隅に配置されているものとする。スピーカSP1とスピーカSP4との中間点、リスニングルーム30の中心点、及びスピーカSP2とスピーカSP3との中間点を通る直線をX軸とし、リスニングルーム30の中心点を通り、X軸に直交する軸をY軸とする。スピーカSP1とスピーカSP4との中間点から、スピーカSP2とスピーカSP3との中間点に向かう方向をX軸の正方向とし、スピーカSP4とスピーカSP3との中間点から、スピーカSP1とスピーカSP2との中間点に向かう方向がY軸の正方向とする。
【0026】
まず、視聴位置Plpが、
図6に示すSP2に最も近い場合を考える。この場合、スピーカSP1から視聴位置Plpまでの距離をx
1、スピーカSP2から視聴位置Plpまでの距離をx
2、スピーカSP3から視聴位置Plpまでの距離をx
3、及びスピーカSP4から視聴位置Plpまでの距離をx
4とする。
【0027】
視聴位置が基準位置Prefにある場合、つまり、
図6に示すXY座標の原点にある場合には、各スピーカから視聴位置までの距離が等しいので、各スピーカから同じ音量の信号を出力すれば、視聴位置においてはどのスピーカからの信号も同じ音量で聞くことができる。
【0028】
しかしながら、
図6に示すように、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合には、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離が異なるため、各スピーカから同じ音量の信号を出力すると、視聴位置Plpにおいては各スピーカからの信号の音量バランスが崩れてしまう。例えば、スピーカSP3の信号の出力音量vo3を0db(1.0)、スピーカSP3から基準位置Prefまでの距離d3を1mとすると、音量は距離の2乗に反比例するため、基準位置Prefでの音量vr3は以下のようになる。
【0029】
(数1)
vr3=vo3/d3
2=1.0/1=1.0
【0030】
一方、スピーカSP3の信号の出力音量vo3を0db(1.0)、スピーカSP3から視聴位置Plpまでの距離x
3を1.2mとすると、視聴位置Plpでの音量vp3は以下のようになる。
【0031】
(数2)
vp3=vo3/x
32=1.0/1.44=0.69
【0032】
つまり、視聴位置PlpでのスピーカSP3の信号の音量は、−3.2db(0.69)まで小さくなってしまう。したがって、視聴位置Plpにおいて、スピーカSP3の信号の音量は、−10.2db(0.31)だけ不足していることになる。
【0033】
そこで、本実施形態においては、この不足分の音量の信号を補うように、スピーカSP3の信号の出力音量vo3を調整している。つまり、スピーカSP3から視聴位置Plpまでの距離x
3が1.2mのとき、視聴位置Plpでの音量vp3が0db(1.0)となるためには、スピーカSP3の信号の出力音量vo3を以下のように調整すればよい。
【0034】
(数3)
vo3=vp3*x
32=1.0*1.44=1.44
【0035】
スピーカSP3の信号の出力音量vo3を、3.2dB(1.44)に調整することにより、距離x
3が1.2mのときの視聴位置Plpでの音量vp3は0db(1.0)となる。本実施形態では、他のスピーカの出力音量についても同様にして調整が行われており、視聴位置Plpが基準位置Prefから移動した場合でも、各スピーカの出力音量差の発生を防いでいる。
【0036】
しかしながら、このように各スピーカの出力音量を行った場合であっても、全体の音量レベルを−40dBあたりまで下げると、
図5に示すように、スピーカSP3からの信号が部屋全体のノイズに埋もれたり、あるいは、部屋の反射などの影響により、聞こえにくくなることがある。この現象は、スピーカからの距離が遠いスピーカ程顕著になる。
【0037】
そこで、本実施形態では、以上のように各スピーカから視聴位置Plpまでの距離が異なる場合、つまり、視聴位置Plpが基準位置Prefから移動した位置にある場合であって、全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりもり低くなった場合には視聴位置Plpからの距離が基準位置Prefからの距離よりも遠いスピーカからの距離減衰による出力不足が発生したと考え、当該不足分を、視聴位置Plpに近いスピーカから出力する補正を行う。上述の例では、全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりも低くなった場合における、その時点でのスピーカSP1、SP4、及びSP3からの出力信号の視聴位置Plpにおける不足分を、視聴位置Plpに近いスピーカSP2から出力するように構成する。これは、全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりも低くなることにより聞こえにくくなる出力信号を補うように、視聴位置Plpから遠いスピーカSP1、SP4、及びSP3からの出力信号を大きくしてしまうと、全体の音量を下げているにも拘わらずスピーカSP1、SP4、及びSP3からの音量が下がらなくなってしまい、周りへの騒音となってしまう可能性があるためである。
【0038】
全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりも低くなった場合におけるスピーカSP3からの出力音量vo3の視聴位置Plpにおける不足分を、視聴位置から最も近い位置にあるスピーカSP2から出力する場合には、次のようになる。この例では、スピーカSP2から出力させるスピーカSP3用信号の出力音量をvo2_3としている。
【0039】
まず、スピーカSP3からの出力音量vo3の視聴位置Plpにおける不足分は次のようになる。
(数4)
不足分=vo3−(vo3/x
32)=[1−(1/x
32)]*vo3
スピーカSP2から出力を行うことにより、この不足分を補うためには、スピーカSP2から出力させるスピーカSP3用信号の出力音量vo2_3は以下のようになる。
(数5) vo2_3=[1−(1/x
32)]*vo3*x
22
但し、x
3が1.0よりも小さい場合には、(数5)に示す式では正しい値が得られないので、距離をx
2で正規化する。
(数6)
vo2_3=[1−(1/(x
3/x
2)
2)]*vo3*(x
2/x
2)
2
=[1−(1/(x
3/x
2)
2)]*vo3
ここで、[1−(1/x
32)]または[1−(1/(x
3/x
2)
2)]を係数K32として表すと、スピーカSP2から出力するスピーカSP3用の信号の音量vo2_3は、以下のように表すことができる。
【0040】
(数7)
vo2_3=K32*vo3
K32=[1−(1/x
32)]*x
22または[1−(1/(x
3/x
2)
2)]
【0041】
図6に示す例では、スピーカSP1から視聴位置Plpまでの距離x
1についても、スピーカSP1から基準位置Prefまでの距離よりも長くなっており、スピーカSP3の場合と同様に、全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりも低くなると、スピーカSP1からの信号が聞こえにくくなる。そこで、本実施形態では、スピーカSP1からの信号についても、スピーカSP3の場合と同様にスピーカSP1用の信号の出力音量vo1に係数K12を掛けて、スピーカSP2から出力するように構成している。スピーカSP2から出力するスピーカSP1用の信号vo2_1は以下のように求められる。
【0042】
まず、スピーカSP1からの出力音量vo1の視聴位置Plpにおける不足分は次のようになる。
(数8)
不足分=vo1−(vo1/x
12)=[1−(1/x
12)]*vo1
スピーカSP2から出力を行うことにより、この不足分を補うためには、スピーカSP2から出力させるスピーカSP1用信号の出力音量vo2_1は以下のようになる。 (数9)
vo2_1=[1−(1/x
12)]*vo3*x
12
但し、x
1が1.0よりも小さい場合には、(数9)に示す式では正しい値が得られないので、距離をx
2で正規化する。
(数10)
vo2_1=[1−(1/(x
1/x
2)
2)]*vo3*(x
2/x
2)
2
=[1−(1/(x
1/x
2)
2)]*vo3
ここで、[1−(1/x
12)]または[1−(1/(x
1/x
2)
2)]を係数K12として表すと、スピーカSP2から出力するスピーカSP1用の信号の音量vo2_1は、以下のように表すことができる。
(数11)
vo2_1=K12*vo1
K12=[1−(1/x
12)]*x
22または[1−(1/(x
1/x
2)
2)]
【0043】
図6に示す例では、スピーカSP4から視聴位置Plpまでの距離x
4についても、スピーカSP4から基準位置Prefまでの距離よりも長くなっており、スピーカSP3の場合と同様に、全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりも低くなると、スピーカSP4からの信号が聞こえにくくなる。そこで、本実施形態では、スピーカSP4からの信号についても、スピーカSP3の場合と同様にスピーカSP4用の信号の出力音量vo4に係数K42を掛けて、スピーカSP2から出力するように構成している。スピーカSP2から出力するスピーカSP4用の信号vo2_4は以下のように求められる。
まず、スピーカSP4からの出力音量vo4の視聴位置Plpにおける不足分は次のようになる。
(数12)
不足分=vo4−(vo4/x
42)=[1−(1/x
42)]*vo4
スピーカSP2から出力を行うことにより、この不足分を補うためには、スピーカSP2から出力させるスピーカSP4用信号の出力音量vo2_4は以下のようになる。
(数13)
vo2_4=[1−(1/x
42)]*vo4*x
42
但し、x
4が1.0よりも小さい場合には、(数13)に示す式では正しい値が得られないので、距離をx
2で正規化する。
(数14)
vo2_4=[1−(1/(x
4/x
2)
2)]*vo4*(x
4/x
2)
2
=[1−(1/(x
4/x
2)
2)]*vo4
ここで、[1−(1/x
42)]または[1−(1/(x
4/x
2)
2)]を係数K42として表すと、スピーカSP2から出力するスピーカSP4用の信号の音量vo2_4は、以下のように表すことができる。
【0044】
(数15)
vo2_4=K42*vo4
K42=[1−(1/x
42)]*x
22または[1−(1/(x
4/x
2)
2)]
【0045】
<2−2:信号補正処理>
以上のように、本実施形態においては、全体の音量レベルが所定レベル(例えば−40dB)よりも低くなり、かつ、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離が異なる場合、つまり、視聴位置Plpが基準位置Prefから移動した位置にある場合には、視聴位置Plpまでの距離が、基準位置Prefからの距離よりも長くなった各スピーカの出力信号を、視聴位置Plpに最も近いスピーカから出力するように構成した。この処理を
図3の回路図、及び
図14のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明においては、
図4、
図6乃至
図13についても適宜参照する。
【0046】
<2−2−1:SP2が最も近い場合>
図3に示す制御部210は、まず、全体の音量レベルが変更されたかどうかを判断する(
図14:ステップS1)。この判断は、所定時間ごとに行われるか、レベルが変更されたことを検出するたびに行われる。判断の結果、全体の音量レベルが変更されていない場合には(
図14:ステップS1;NO)、処理を終了する。しかし、判断の結果、全体の音量レベルが変更された場合には(
図14:ステップS1;YES)、制御部210は、全体の音量レベルが所定レベル以下かどうかを判断する(
図14:ステップS2)。判断の結果、全体の音量レベルが所定レベルを超えている場合には(
図14:ステップS2;NO)、処理を終了する。
【0047】
しかし、判断の結果、全体の音量レベルが所定レベル以下の場合には(
図14:ステップS2;YES)、制御部210は、既知の方法により、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を取得する(
図14:ステップS3)。本実施形態では、制御部210は、各スピーカと視聴位置Plpとの距離を測定し、視聴位置Plpが基準位置から移動しているかどうかを判断する(
図14:ステップS4)。制御部210は、判断の結果、視聴位置Plpが基準位置から移動していない場合には(
図14:ステップS4;NO)、処理を終了する。
【0048】
制御部210は、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。
図6に示す例の場合には、制御部210は、スピーカSP2が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断し、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP2が視聴位置Plpに最も近い場合に選択する係数部は、係数部403、404、405となる。
【0049】
係数部403において用いられる係数はK12、係数部404において用いられる係数はK32、係数部405において用いられる係数はK42であり、これらの係数を算出するための数式は、あらかじめメモリ230に記憶されている。
【0050】
(数16)
K12=[1−(1/x
12)]*x
22
K32=[1−(1/x
32)]*x
22
K42=[1−(1/x
42)]*x
22
但し、x
1、x
3、x
4が1.0以下の場合には、
K12=[1−(1/(x
1/x
2)
2)]
K32=[1−(1/(x
3/x
2)
2)]
K42=[1−(1/(x
4/x
2)
2)]
となる。
【0051】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部403、404、405を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部403にはディレイ部503が対応し、係数部404にはディレイ部504が対応し、係数部405にはディレイ部505が対応する。また、加算部としては加算部332が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部503、ディレイ部504、ディレイ部505、及び、加算部332を選択する(
図14:ステップS6)。
【0052】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K12、K32、K42を、係数部403、404、405にそれぞれ受け渡し、係数部403、404、405においては、入力オーディオ信号に係数K12、K32、K42を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部403は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K12を掛けた補正信号をディレイ部503に出力する。係数部404は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K32を掛けた補正信号をディレイ部504に出力する。係数部405は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K42を掛けた補正信号をディレイ部505に出力する。
【0053】
ディレイ部503、504、505は、係数部403、404、405から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部332に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部503は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K12を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A4として加算部332に出力する。ディレイ部504は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K32を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A5として加算部332に出力する。ディレイ部505は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K42を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A6として加算部332に出力する。
【0054】
加算部332は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に、上述したオーディオ信号A4、A5、A6を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP2に供給する出力オーディオ信号OUT2として出力する。
【0055】
<2−2−2:SP1が最も近い場合>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図7に示すようにスピーカSP1が視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカと判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP1が視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカである場合に選択する係数部は、係数部400、401、402となる。
【0056】
係数部400において用いられる係数はK41、係数部401において用いられる係数はK31、係数部402において用いられる係数はK21であり、これらの係数を算出するための数式は、あらかじめメモリ230に記憶されている。
【0057】
(数17)
K41=[1−(1/x
42)]*x
12
K31=[1−(1/x
32)]*x
12
K21=[1−(1/x
22)]*x
12
但し、x
4、x
3、x
2が1.0以下の場合には、
K41=[1−(1/(x
4/x
1)
2)]
K31=[1−(1/(x
3/x
1)
2)]
K21=[1−(1/(x
2/x
1)
2)]
となる。
【0058】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部400、401、402を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部400にはディレイ部500が対応し、係数部401にはディレイ部501が対応し、係数部402にはディレイ部502が対応する。また、加算部としては加算部331が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部500、ディレイ部501、ディレイ部502、及び、加算部331を選択する(
図13:ステップS6)。
【0059】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K41、K31、K21を、係数部400、401、402にそれぞれ受け渡し、係数部400、401、402においては、入力オーディオ信号に係数K41、K31、K21を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部400は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K41を掛けた補正信号をディレイ部500に出力する。係数部401は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K31を掛けた補正信号をディレイ部501に出力する。係数部402は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K21を掛けた補正信号をディレイ部502に出力する。
【0060】
ディレイ部500、501、502は、係数部400、401、402から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部331に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部500は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K41を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A1として加算部331に出力する。ディレイ部501は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K31を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A2として加算部331に出力する。ディレイ部502は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K21を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A3として加算部331に出力する。
【0061】
加算部331は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に、上述したオーディオ信号A1、A2、A3を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP1に供給する出力オーディオ信号OUT1として出力する。
【0062】
<2−2−3:SP4が最も近い場合>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図8に示すようにスピーカSP4が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数器を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP4が視聴位置Plpに最も近いスピーカである場合に選択する係数部は、係数部409、410、411となる。
【0063】
係数部409において用いられる係数はK14、係数部410において用いられる係数はK24、係数部411において用いられる係数はK34であり、これらの係数を算出するための数式は、あらかじめメモリ230に記憶されている。
【0064】
(数18)
K14=[1−(1/x
12)]*x
42
K24=[1−(1/x
22)]*x
42
K34=[1−(1/x
32)]*x
42
但し、x
1、x
2、x
3が1.0以下の場合には、
K14=[1−(1/(x
1/x
4)
2)]
K24=[1−(1/(x
2/x
4)
2)]
K34=[1−(1/(x
3/x
4)
2)]
となる。
【0065】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部409、410、411を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部409にはディレイ部509が対応し、係数部410にはディレイ部510が対応し、係数部411にはディレイ部511が対応する。また、加算部としては加算部334が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部509、ディレイ部510、ディレイ部511、及び、加算部334を選択する(
図14:ステップS6)。
【0066】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K14、K24、K34を、係数部409、410、411にそれぞれ受け渡し、係数部409、410、411においては、入力オーディオ信号に係数K14、K24、K34を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部409は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K14を掛けた補正信号をディレイ部509に出力する。係数部410は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K24を掛けた補正信号をディレイ部510に出力する。係数部411は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K34を掛けた補正信号をディレイ部511に出力する。
【0067】
ディレイ部509、510、511は、係数部409、410、411から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部334に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS7)。具体的には、ディレイ部509は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K14を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A10として加算部334に出力する。ディレイ部510は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K24を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A11として加算部334に出力する。ディレイ部511は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K34を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A12として加算部334に出力する。
【0068】
加算部334は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に、上述したオーディオ信号A10、A11、A12を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP4に供給する出力オーディオ信号OUT4として出力する。
【0069】
<2−2−4:SP3が最も近い場合>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図9に示すようにスピーカSP3が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP3が視聴位置Plpに最も近いスピーカである場合に選択する係数部は、係数部406、407、408となる。
【0070】
係数部406において用いられる係数はK23、係数部407において用いられる係数はK13、係数部408において用いられる係数はK43であり、これらの係数を算出するための数式は、あらかじめメモリ230に記憶されている。
【0071】
(数19)
K23=[1−(1/x
22)]*x
32
K13=[1−(1/x
12)]*x
32
K43=[1−(1/x
42)]*x
32
但し、x
2、x
1、x
4が1.0以下の場合には、
K23=[1−(1/(x
2/x
3)
2)]
K13=[1−(1/(x
1/x
3)
2)]
K43=[1−(1/(x
4/x
3)
2)]
となる。
【0072】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部406、407、408を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部406にはディレイ部506が対応し、係数部407にはディレイ部507が対応し、係数部408にはディレイ部508が対応する。また、加算部としては加算部333が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部506、ディレイ部507、ディレイ部508、及び、加算部333を選択する(
図14:ステップS6)。
【0073】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K23、K13、K43を、係数部406、407、408にそれぞれ受け渡し、係数部406、407、408においては、入力オーディオ信号に係数K23、K13、K43を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部406は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K23を掛けた補正信号をディレイ部506に出力する。係数部407は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K13を掛けた補正信号をディレイ部507に出力する。係数部408は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K43を掛けた補正信号をディレイ部508に出力する。
【0074】
ディレイ部506、507、508は、係数部406、407、408から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部333に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部506は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K23を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A7として加算部333に出力する。ディレイ部507は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K13を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A8として加算部333に出力する。ディレイ部508は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K43を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A9として加算部333に出力する。
【0075】
加算部333は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に、上述したオーディオ信号A7、A8、A9を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP3に供給する出力オーディオ信号OUT3として出力する。
【0076】
<2−2−5:Y軸上の正の位置>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図10に示すようにスピーカSP1とスピーカSP2が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP1とスピーカSP2が視聴位置Plpに最も近いスピーカである場合に選択する係数部は、係数部400、404となる。
【0077】
係数部400において用いられる係数は上述したようにK41であり、係数部404において用いられる係数は上述したようにK32である。
【0078】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部400、404を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部400にはディレイ部500が対応し、係数部404にはディレイ部504が対応する。また、加算部としては加算部331と加算部332が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部500、ディレイ部504、加算部331、及び加算部332を選択する(
図14:ステップS6)。
【0079】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K41、K32を、係数部400、404にそれぞれ受け渡し、係数部400、404においては、入力オーディオ信号に係数K41、K32を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部400は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K41を掛けた補正信号をディレイ部500に出力する。係数部404は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K32を掛けた補正信号をディレイ部504に出力する。
【0080】
ディレイ部500、504は、係数部400、404から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部331、332に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部500は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K41を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A1として加算部331に出力する。ディレイ部504は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K32を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A5として加算部332に出力する。
【0081】
加算部331は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に、上述したオーディオ信号A1を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP1に供給する出力オーディオ信号OUT1として出力する。加算部332は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に、上述したオーディオ信号A5を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP2に供給する出力オーディオ信号OUT2として出力する。
【0082】
<2−2−6:Y軸上の負の位置>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図11に示すようにスピーカSP4とスピーカSP3が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP4とスピーカSP3が視聴位置Plpに最も近いスピーカである場合に選択する係数部は、係数部406、409となる。
【0083】
係数部406において用いられる係数は上述したようにK23であり、係数部409において用いられる係数は上述したようにK14である。
【0084】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部406、409を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部406にはディレイ部506が対応し、係数部409にはディレイ部509が対応する。また、加算部としては加算部333と加算部334が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部506、ディレイ部509、加算部333、及び加算部334を選択する(
図14:ステップS6)。
【0085】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K23、K14を、係数部406、409にそれぞれ受け渡し、係数部406、409においては、入力オーディオ信号に係数K23、K14を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部406は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K23を掛けた補正信号をディレイ部506に出力する。係数部409は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K14を掛けた補正信号をディレイ部509に出力する。
【0086】
ディレイ部506、509は、係数部406、409から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部333、334に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部506は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K23を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A7として加算部333に出力する。ディレイ部509は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K14を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A10として加算部334に出力する。
【0087】
加算部333は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に、上述したオーディオ信号A7を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP3に供給する出力オーディオ信号OUT3として出力する。加算部334は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に、上述したオーディオ信号A10を加算する加算部処理を行い(
図13:ステップS6)、スピーカSP4に供給する出力オーディオ信号OUT4として出力する。
【0088】
<2−2−7:X軸上の負の位置>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図12に示すようにスピーカSP1とスピーカSP4が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP1とスピーカSP4が視聴位置Plpに最も近いスピーカである場合に選択する係数部は、係数部402、411となる。
【0089】
係数部402において用いられる係数は上述したようにK21であり、係数器411において用いられる係数は上述したようにK34である。
【0090】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部402、411を選択する(
図14:ステップS6)。
図3に示すように、係数部402にはディレイ部502が対応し、係数部411にはディレイ部511が対応する。また、加算部としては加算部331と加算部334が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部502、ディレイ部511、加算部331、及び加算部334を選択する(
図14:ステップS6)。
【0091】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K21、K34を、係数部402、411にそれぞれ受け渡し、係数部402、411においては、入力オーディオ信号に係数K21、K34を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部402は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K21を掛けた補正信号をディレイ部502に出力する。係数部411は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K34を掛けた補正信号をディレイ部511に出力する。
【0092】
ディレイ部502、511は、係数部402、411から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部331、334に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部502は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に係数K21を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A3として加算部331に出力する。ディレイ部511は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に係数K34を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A12として加算部334に出力する。
【0093】
加算部331は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に、上述したオーディオ信号A3を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP1に供給する出力オーディオ信号OUT1として出力する。加算部334は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に、上述したオーディオ信号A12を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP4に供給する出力オーディオ信号OUT4として出力する。
【0094】
<2−2−8:X軸上の正の位置>
ステップS1からステップS4までの処理は、視聴位置PlpがSP2に最も近い場合と同様なので説明を省略する。制御部210は、ステップS4において、視聴位置Plpが基準位置から移動していると判断した場合には(
図14:ステップS4;YES)、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離を算出し、視聴位置Plpに最も近い位置にあるスピーカを特定する。制御部210は、
図13に示すようにスピーカSP2とスピーカSP3が視聴位置Plpに最も近いスピーカであると判断した場合には、制御部210は、メモリ230に記憶されたテーブルTBL1を参照して、選択する係数部を決定する。
図4に示すテーブルTBL1において、スピーカSP2とスピーカSP3が視聴位置Plpに最も近いスピーカである場合に選択する係数部は、係数部403、408となる。
【0095】
係数部403において用いられる係数は上述したようにK12であり、係数部408において用いられる係数は上述したようにK43である。
【0096】
制御部210は、これらの係数を上記の各式により算出し(
図14:ステップS5)、係数部403、408を選択する(
図13:ステップS3)。
図3に示すように、係数部403にはディレイ部503が対応し、係数部408にはディレイ部508が対応する。また、加算部としては加算部332と加算部333が対応する。そこで、制御部210は、ディレイ部503、ディレイ部508、加算部332、及び加算部333を選択する(
図14:ステップS6)。
【0097】
次に、制御部210は、上述のように算出した係数K12、K43を、係数部403、408にそれぞれ受け渡し、係数部403、408においては、入力オーディオ信号に係数K12、K43を掛けて補正信号をディレイ部に出力する係数部処理が行われる(
図14:ステップS7)。具体的には、係数部403は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K12を掛けた補正信号をディレイ部503に出力する。係数部408は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K43を掛けた補正信号をディレイ部508に出力する。
【0098】
ディレイ部503、508は、係数部403、408から出力される補正信号を所定時間遅延させ、加算部332、333に出力するディレイ部処理を行う(
図14:ステップS8)。具体的には、ディレイ部503は、スピーカSP1への入力オーディオ信号IN1に係数K12を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A4として加算部332に出力する。ディレイ部508は、スピーカSP4への入力オーディオ信号IN4に係数K43を掛けた補正信号を所定時間遅延させ、オーディオ信号A9として加算部333に出力する。
【0099】
加算部332は、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に、上述したオーディオ信号A4を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP2に供給する出力オーディオ信号OUT2として出力する。加算部333は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に、上述したオーディオ信号A9を加算する加算部処理を行い(
図14:ステップS9)、スピーカSP3に供給する出力オーディオ信号OUT3として出力する。
【0100】
<2−3:ハース効果処理>
本実施形態は、全体の音量レベルが所定レベルより低くなり、かつ、各スピーカから視聴位置Plpまでの距離が異なる場合、つまり、視聴位置Plpが基準位置Prefから移動した位置にある場合には、視聴位置Plpまでの距離が、基準位置Prefからの距離よりも長くなった各スピーカの出力信号を、視聴位置Plpに最も近いスピーカから出力する。したがって、例えば
図6の場合には、本来はリアスピーカであるスピーカSP3から出力される信号が、フロントスピーカSP2からも出力されるので、あらかじめ設定された音響効果とは異なる可能性がある。そこで、本実施形態では、先行音効果であるハース効果を利用して、音量の不足分を補う信号として出力される補正信号を、ディレイ部500〜511を用いて所定時間だけ遅延させる。
【0101】
例えば
図6の場合には、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3に、係数部404により係数K32を掛ける際、ディレイ部504によりこの信号を10〜20ms遅延させて、オーディオ信号A5として加算部332に出力する。その結果、スピーカSP2への入力オーディオ信号IN2に、上述したオーディオ信号A5が加算され、スピーカSP2からの出力オーディオ信号OUT2として出力されるが、加算されたオーディオ信号A5は、スピーカSP3から出力される信号よりも10〜20ms遅れてスピーカSP2から出力される。つまり、スピーカSP3から出力される信号は、スピーカSP2から出力される加算されたオーディオ信号A5よりも10〜20ms早く出力されることになる。スピーカSP3から出力される信号は、スピーカSP3への入力オーディオ信号IN3がそのまま出力される出力オーディオ信号OUT3であり、オーディオ信号A5は、入力オーディオ信号IN3に係数K32を掛けた信号である。つまり、どちらの信号も、ソースを入力オーディオ信号IN3とする信号であり、このようにソースが共通の信号を、一方のスピーカでは他方のスピーカよりも所定時間だけ早く出力すると、視聴者は、当該信号が当該一方のスピーカから出力されているように感じる。本実施形態では、このようなハース効果を利用して、本来出力されるスピーカとは異なるスピーカから出力される場合でも、本来出力されるスピーカから出力されたように感じさせるように構成している。
【0102】
本実施形態では、
図3に示すように、係数部400〜411とディレイ部500〜511は一対に設けられており、制御部210が上述のように何れかの係数部を選択する場合には、制御部210は、当該選択した係数部と一対になっているディレイ部を選択するようになっている。また、本実施形態では、ディレイ部による遅延時間として10〜20ms程度を採用している。これは、これ以上の遅延差があると、別の音源に聞こえてしまうためである。
【0103】
以上のように、本実施形態によれば、全体の音量レベルが所定レベルよりも低くなり、かつ、スピーカから視聴位置までの距離が所定距離よりも長くなった場合であっても、バランスの取れた音響効果を得ることができる。
【0104】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例と上述した実施形態は適宜組み合わせることができる。
【0105】
(1)上述した実施形態では、視聴位置に対する各スピーカからの距離を取得して、視聴位置に最も近いスピーカーを判断する例について説明したが、視聴位置の座標を取得して、視聴位置に最も近いスピーカーを判断するようにしてもよい。
【0106】
(2)上述した各実施形態では、リスニングルームの形状が正方形である場合について説明したが、本発明はこのような例に限定されるものではなく、例えば、リスニングルームの形状は長方形であってもよい。また、リスニングルームの形状は、台形、あるいは非対称の形状であってもよい。この場合には、所定の位置を視聴位置の基準位置として設定し、当該基準位置において各スピーカからの音量が所望のバランスとなるように各スピーカからの出力オーディオ信号の音量を設定する。そして、この設定した音量を、各スピーカの基準の音量として、実際の視聴位置が基準位置から変位した場合の各係数部の係数を算出するようにすればよい。