【実施例】
【0038】
以下には、本発明の非水電解液二次電池や、非水電解液マグネシウム二次電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、充放電は全て60℃で行った。表1に実験例2〜8,10〜24の正極、負極、非水電解液の構成をまとめた。なお、実験例1,2,5〜7,9〜14,16,21〜24が本発明の実施例に相当し、実験例3,4,8,15,17〜20が本発明の比較例に相当する。
【0039】
【表1】
【0040】
[実験例1]
SEI被膜について検証するため以下の実験を実施した。
図2は、評価セル30の一例を示す模式図である。
図2に示す評価セル30(例えば北斗電工製の三極式F型セル)において、作用極32と対極34としてPt板(田中貴金属製)、参照極36としてAg線(ニラコ製)をセットした。マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(Mg(CF
3SO
3)
2、アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、上記化合物式1)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、F型セル内に注液した。この電解液ではトリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。F型セルを60℃の恒温器に置き、掃引速度5mV/secの速さで、Mg基準で−0.3Vから+2.3Vの間で電位を繰り返し掃引させた。
図3は、実験例1の充放電結果である。
図3に示すように、1サイクル目で、作用極電位が0V付近にまで下がるとMgが作用極(Pt)上に析出する。このとき、析出したMgには支持塩及びイオン液体の分解物などによりSEI被膜が形成されたと考えられる。電位が上昇に転じると、1.2V付近でMgの溶解が始まった。2サイクル目以降、1V付近で新しい酸化還元ピークが観測され、SEI被膜がMgを吸蔵、放出し、活物質として働くことが明らかになった。したがって、実験例1のSEI被膜は、マグネシウムイオンの伝導性が高いものと推察された。
図4,5は、Pt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果である。この測定結果により、SEI被膜は、支持塩及びイオン液体の分解物であることがわかった。
【0041】
[実験例2]
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を13質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.4mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式1)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(
図1参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.3mLをコインセルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
【0042】
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.010mAの電流を流して0.4Vまで放電し、その後0.010mAで2.35Vまで充電した。
図6は、実験例2の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.27V、充電電圧は1.89Vであって、両者の差は0.62Vであった。
【0043】
[実験例3]
実験例2のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3Vまで充電した以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例3とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。
図7は、実験例3の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.02V、充電電圧は2.64Vであって、両者の差は1.62Vであった。
【0044】
[実験例4]
実験例2のN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドの代わりに、ブチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(関東化学、化合物式5)をイオン液体として用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例4とした。
図8は、実験例4の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.16V、充電電圧は1.37Vであって、両者の差は0.21Vと低かったが、1.7Vのところでテトラフルオロボレートアニオンの酸化分解が生じたため、充電が完了しなかった。
【0045】
【化5】
【0046】
[実験例5]
以下に説明する電解液を用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例5とした。まず、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式1)を用い、支持塩濃度0.20mol/Lの電解液を調製した。この電解液1mLに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、化合物式3)1mLを混合して、実験例5の電解液として用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンはモル比で47%であった。
図9は、実験例5の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.91V、充電電圧は1.71Vであって、両者の差は0.80Vであった。
【0047】
[実験例6]
実験例2の電解液にマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、化合物式3)を用いて、支持塩濃度0.08mol/Lに調製した電解液を用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例6とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが全アニオンである。
図10は、実験例6の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.95V、充電電圧は2.15Vであって、両者の差は1.20Vであった。
【0048】
[実験例7]
実験例2の五酸化二バナジウム合材の代わりに、有機ラジカルポリマー合材を用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例7とした。有機ラジカルポリマーとしてポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)(化合物式4)を用いた。なお、同ラジカルポリマーは既報に従って合成した。例えば、Chem.Phys.Lett.Vol.359,p351(2002)に従い、2、2’−アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーの重合を行い、続いて、3−クロロパーベンゾイックアシッドで酸化することにより得られた。このラジカルポリマーは数平均分子量9.2万、重量平均分子量22.9万であった。このラジカルポリマーは、ラジカル骨格として2,2,6,6−テトラメチルピペリドキシルラジカル(TEMPOラジカル)を有しているが、TEMPOラジカルは安定なラジカル骨格として知られている(例えば特開2002−151084参照)。有機ラジカルポリマーの正極は、次のようにして作製した。上記ラジカルポリマーを44質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を35質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を21質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、薄膜状に成形した。この正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、真空乾燥を行い、非水電解液マグネシウム二次電池の正極とした。また、イオン液体には、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式2)を用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で5.8%含まれる。コインセルを実験例2と同様に作製し、60℃にて正極と負極の間で0.020mAの電流を流して2.30Vまで充電し、その後0.020mAで1.0Vまで充電した。
図11は、実験例7の充放電測定結果である。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.05V、放電電圧は1.82Vであって、両者の差は0.23Vであった。
【0049】
[実験例8]
実験例7のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3.2Vまで充電した以外は実験例7と同様に作製したコインセルを実験例8とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。
図12は、実験例8の充放電測定結果である。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.59V、放電電圧は1.48Vであって、両者の差は1.11Vであった。
【0050】
以上の測定結果より、少なくともトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF
3SO
3-)を含み、好ましくは更にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF
3SO
2)
2N
-)を含み、テトラフルオロボレートを含まないものとすることが好ましいことがわかった。また、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれている非水電解液を用いたコインセルは、充電時と放電時の電圧の差がより小さく、エネルギー効率が高いことがわかった。また、60℃のような比較的高温で充放電することがより好ましいことがわかった。
【0051】
ところで、本発明者らは、実験例1より、負極に形成されるSEI被膜がMgを吸蔵、放出し、活物質として働くと考えており、非水電解液マグネシウム二次電池について検討していた。しかしながら、さらなる研究の結果、負極に形成されるSEI被膜は、主にトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応して、活物質として働くことを見出した。そして、負極に形成されるSEI被膜がトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する場合、支持塩はマグネシウム支持塩でなくてもよいし、負極はマグネシウムを吸蔵、放出するものでなくてもよいと推察した。そこで、以下では、支持塩の種類を変更したり、負極の種類を変更したりしたセルについて、電池として作動することを確認するための実験を行った。
【0052】
[実験例9]
実験例9では、CF
3SO
3-が電荷のキャリアであることの検証を行った。
図13は、実験例9の充放電結果である。まず、Mg(CF
3SO
3)
2−PP13TFSA系電解液と加圧型のコインセル(Mg板とPt板、およびポリエチレンセパレータ)を用いて、60℃の恒温槽に10時間放置した後(
図13、点A)、10μAの電流で1時間Pt方向に電流を流し(点B)、続いて逆電流を印加した(点C)。
図13から分かるように、A→Bへ電流を流したときには電圧が+0.5Vである。通常、Mgの電析が起こるためには電圧が−側に振れないといけないため、電位的にみてMgのPt上への電析は起こっていないと思われた。そこで、次に、各点において、Mg電極とPt電極の二次イオン質量分析(SIMS分析)を実施した。
図14に、各点におけるMg電極からの負イオンに関するSIMSデータを示すが、CF
3SO
3-の存在を示す質量数(横軸)M/Z=149のシグナルはAよりもBで増加し、Cで減少した。このことから、CF
3SO
3-がMg板上で挿入と脱離していると推察された。次に、具体的な電池の充放電特性について検討した。
【0053】
[実験例10]
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57重量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30重量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製F−104)を13重量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.25mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、化合物式2)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(
図1参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.6mLをコインセルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
【0054】
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.015mAの電流を流して0.6Vまで放電し、その後0.015mAで2.35Vまで充電した。またこの放電と充電を1サイクルとして繰り返し、サイクル測定を行った。
【0055】
[実験例11,12]
実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(キシダ化学)を支持塩に用い、支持塩濃度0.3mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例11とした。また、実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、アルミニウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例12とした。
図15は、実験例10〜12の充放電測定結果である。実験例10では、五酸化二バナジウム質量あたり141mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.29V、充電電圧は1.97Vであって、両者の差は0.68Vであった。実験例11では、五酸化二バナジウム質量あたり160mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.22V、充電電圧は1.61Vであって、両者の差は0.39Vであった。実験例12では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.23V、充電電圧は2.10Vであって、両者の差は0.87Vであった。
図16は、実験例10〜12のサイクル測定結果である。実験例10では、5サイクル目の放電容量が159mAh/gであった。実験例11では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。実験例12では、5サイクル目の放電容量が125mAh/gであった。
【0056】
[実験例13,14]
実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、カルシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例13とした。また、実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、セリウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例14とした。
図17は、実験例13の充放電測定結果である。実験例13では、五酸化二バナジウム質量あたり27.2mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり10mAh/gでの放電電圧は0.97V、充電電圧は1.68Vであって、両者の差は0.71Vであった。
図18は、実験例14の充放電測定結果である。実験例14では、五酸化二バナジウム質量あたり59mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり20mAh/gでの放電電圧は1.05V、充電電圧は1.92Vであって、両者の差は0.87Vであった。
図19は、実験例13,14のサイクル測定結果である。実験例13では、5サイクル目の放電容量が19.7mAh/gであった。実験例14では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。
【0057】
[実験例15]
実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、LiPF
6を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例15とした。
図20は、実験例15の充放電測定結果である。実験例15では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.1mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0058】
[実験例16]
実験例11の負極のマグネシウムの代わりに、亜鉛を用いた以外は実験例10と同様に実験例16のコインセルを作製し、0.3Vまで放電し、1.05Vまで充電した。
図21は、実験例16の充放電測定結果である。実験例16では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は0.71V、充電電圧は0.93Vであって、両者の差は0.22Vであった。
図22は、実験例16のサイクル測定結果である。実験例16では、5サイクル目の放電容量が70mAh/gであった。
【0059】
[実験例17]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、銀を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例17とした。
図23は、実験例17の充放電測定結果である。セルの開放電圧は、0.47Vであった。実験例17では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が0.07mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0060】
[実験例18]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、銅を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例18とした。
図24は、実験例18の充放電測定結果である。セルの開放電圧は、0.52Vであった。実験例18では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が1.8mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0061】
[実験例19]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、ニッケルを用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例19とした。
図25は、実験例19の充放電測定結果である。セルの開放電圧は1.03Vであった。放電をスタートすると電圧が0.6V程度上昇し、その後一定となった。セルを解体して調べたところ、Ni表面での分解反応が生じていた。
【0062】
[実験例20]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、錫を用いた以外は実験例10と同様に実験例20のコインセル作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。
図26は、実験例20の1〜3サイクル目の充放電測定結果である。セルの開放電圧は、0.57Vであった。実験例20では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.9mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0063】
[実験例21]
実験例12の負極のマグネシウムの代わりに、アルミニウムを用いた以外は実験例12と同様に実験例21のコインセルを作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。
図27は、実験例21の充放電測定結果である。実験例21では、五酸化二バナジウム質量あたり79mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり40mAh/gでの放電電圧は0.36V、充電電圧は0.80Vであって、両者の差は0.44Vであった。
図28は、実験例21のサイクル測定結果である。実験例21では、5サイクル目の放電容量が42mAh/gであった。
【0064】
[実験例22]
実験例10のN,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製,化合物式1)を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例22とした。
図29は、実験例22の1〜4サイクル目の充放電測定結果である。実験例22では、五酸化二バナジウム質量あたり52mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.35V、充電電圧は1.86Vであって、両者の差は0.51Vであった。
【0065】
[実験例23]
実験例22の負極のマグネシウムの代わりに、マグネシウム・アルミニウム・亜鉛合金(AZ31)を用いた以外は実験例22と同様に作製したコインセルを実験例23とした。
図30は、実験例23の1〜3サイクル目の充放電測定結果である。実験例23では、五酸化二バナジウム質量あたり86mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.36V、充電電圧は1.85Vであって、両者の差は0.49Vであった。
【0066】
[実験例24]
実験例10において、電解液溶媒としてイオン液体にプロピレンカーボネートを体積比で80:20の割合で混合して用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例24とした。
図31は、実験例24の充放電測定結果である。実験例24では、五酸化二バナジウム質量あたり118mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.14V、充電電圧は1.87Vであって、両者の差は0.73Vであった。
【0067】
実験例9〜24の測定結果より、少なくともトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF
3SO
3-)を含み、負極がMg,Zn,Alやこれらの合金など、所定の金属であれば、五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gなどの放電容量が得られ、充放電可能であることがわかった。ここで、実験例9の結果を考慮すると、こうしたものでは、負極の表面において、アニオンが電気化学反応をすることにより、充放電反応が進行すると推察された。このことから、負極は、Mg,Zn,Alやこれらの合金など、所定の金属であればよいことがわかった。一方で、負極が銀や銅、錫などでは、容量が小さく好ましくないことがわかった。また、負極がニッケルの場合、ニッケルが激しく反応してしまい、好ましくないことがわかった。また、支持塩がマグネシウム塩やリチウム塩、アルミニウム塩のものでは、120mAh/gなどのより高い放電容量が得られ、好ましいことがわかった。また、支持塩は、サイクル劣化を抑制する観点からは、リチウム支持塩以外が好ましいことがわかった。また、非水電解液は、プロピレンカーボネートなどの非水溶媒を含んでもよいことがわかった。