特許第6268833号(P6268833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268833非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268833
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20180122BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20180122BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20180122BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   H01M10/054
   H01M10/0568
   H01M4/46
   H01M4/42
   H01M4/48
   H01M4/13
   H01M4/134
   H01M4/139
   H01M4/60
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-188121(P2013-188121)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-139917(P2014-139917A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-274561(P2012-274561)
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志賀 亨
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−327326(JP,A)
【文献】 特開2007−280627(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/055172(WO,A1)
【文献】 特開2009−242401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/054、10/0568
H01M 4/13−4/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質として五酸化二バナジウム及びポリメタクリレート骨格を有するポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)のうち少なくとも1以上を含む正極と、
負極と、
支持塩とイオン液体とを含み、前記支持塩のアニオンと前記イオン液体のアニオンとの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている非水電解液と、
を備え、
前記負極表面には、前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されている、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記被膜は、前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンを吸蔵、放出する、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO22-)とを含み、前記アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれている、請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、前記支持塩及び前記イオン液体の分解物が前記負極上に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載に非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記負極は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛のいずれか1以上からなる金属又は合金を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記支持塩は、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、セリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩のいずれか1以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記負極は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能なものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
正極と、
負極と、
支持塩とイオン液体とを含み、前記支持塩のアニオンと前記イオン液体のアニオンとの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている非水電解液と、
を備えた非水電解液二次電池に対し、50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、前記支持塩及び前記イオン液体の分解物を被膜として前記負極上に形成させる工程、
を含む、非水電解液二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池及び非水電解液マグネシウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの携帯型情報機器の市場が急速に拡大しつつある。また、環境問題やエネルギー危機の観点からハイブリッド車や電気自動車への期待が高まっている。こうした背景を踏まえ、高エネルギーの蓄電デバイスが求められている。その主流派はリチウム電池であるが、資源量が極めて少ない(クラーク数で0.006)という問題が懸念されている。そうした中で、資源量の豊富なマグネシウム(クラーク数1.93)が注目されている。非水電解液マグネシウム電池については、マグネシウム金属、マグネシウム合金を負極とし、非水電解液を用いるものであるが、非水電解液にリチウム電池で公知の汎用有機溶媒を用いると、マグネシウム負極表面にSEI(ソリッド・エレクトロライト・インターフェース)と呼ばれる、支持塩及び有機溶媒の分解物で形成された被膜が直ちに生成される。このSEI被膜は、マグネシウムイオン伝導性に乏しく、放電すると大きな電圧降下が生じてしまう。また、充電反応ではマグネシウムイオンが負極上に電析して充電されることになるが、SEI膜の存在により電析できないか(一次電池)、充電できたとしても充電電圧が極めて高いものとなる。即ち、放電と充電でのエネルギー効率が極めて低いという課題が知られている。
【0003】
こうした中で、SEI被膜を形成しない電解液としてグリニヤール型電解液が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これは、主にアルキル塩化アルミニウムマグネシウムとテトラヒドロフランの錯体溶液を用いるものであるが、放電と充電の電圧差が大きいといわれている。例えば、非特許文献1ではα−MnO2を正極活物質とする電池が報告されているが、放電と充電の電圧差は1.2V程度ある。また、非特許文献2では三酸化コバルトを正極活物質に用いる電池が提案されているが、放電と充電の電圧差は1.5V程度ある。
【0004】
一方、非水電解液電池の溶媒としてイオン液体を用いることが提案されている(例えば、特許文献4〜5参照)。このイオン液体を用いてもSEI被膜をつくることが知られている。例えば、ブチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートとマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートからなる電解液中ではマグネシウムの電析・溶解が可能であるとの報告がある(例えば、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−280627号公報
【特許文献2】特開2009−21085号公報
【特許文献3】特開2010−15979号公報
【特許文献4】特開2006−253081号公報
【特許文献5】特開2009−167108号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】エレクトロケミストリー コミュニケイション、23巻、ページ110−113、2012年
【非特許文献2】ジャーナルオブエレクトロケミカルソサエティ、137巻、ページ775−780、1990年
【非特許文献3】エレクトロケミストリー コミュニケイション、7巻、ページ1105−1110、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1〜5では、放電と充電の電圧差が大きく、エネルギー効率をより高めることが求められていた。更に、上述の非特許文献3のように、上述した電解液を用いて電池を作製すると、充電過程で電解液が分解して二次電池にならないという問題があった。また、充放電の際に負極上にマグネシウムイオン(カチオン)が電析することによって不具合が生じることがあった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、マグネシウムをキャリアとするものにおいて、エネルギー効率をより高めることができる非水電解液マグネシウム二次電池を提供することを主目的とする。あるいは、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)を少なくとも所定の範囲で含み、更に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO22-)を含むマグネシウム支持塩とイオン液体とを含有した非水電解液を用いるものとすると、マグネシウム二次電池において、エネルギー効率をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。また、所定の負極と、支持塩とイオン液体とを含みトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)を少なくとも所定の範囲で含有した非水電解液と、を用いるものとすると、負極側でトリフルオロメタンスルホネートアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の非水電解液二次電池は、
正極と、
アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な負極と、
支持塩とイオン液体とを含み、前記支持塩のアニオンと前記イオン液体のアニオンとの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている非水電解液と、
を備えたものである。
【0011】
あるいは、本発明の非水電解液二次電池は、
正極と、
負極と、
支持塩とイオン液体とを含み、前記支持塩のアニオンと前記イオン液体のアニオンとの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている非水電解液と、
を備え、
前記負極表面には、前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されているものである。
【0012】
また、本発明の非水電解液マグネシウム二次電池は、正極と、マグネシウムを吸蔵、放出する負極と、マグネシウム支持塩とイオン液体とを含み、前記マグネシウム支持塩のアニオンと前記イオン液体のアニオンとの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている非水電解液とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の非水電解液二次電池では、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる非水電解液二次電池を提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。すなわち、所定の負極と、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを少なくとも含む所定の電解液とを備える非水電解液二次電池では、負極の表面にイオン伝導性の高いSEI被膜が形成され、これが負極活物質として働くためと推察される。また、このとき、負極活物質として働くSEI被膜が、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応するためと推察される。
【0014】
また、本発明の非水電解液マグネシウム二次電池は、エネルギー効率をより高めることができる。このような効果が得られる理由は以下のように推測される。例えば、マグネシウム二次電池において、従来の非水電解液を用いた場合には、マグネシウム表面に生成するSEIは、マグネシウムイオンの伝導性に乏しく、充放電を行なおうとすれば、大きなIRドロップが生じるものであった。これに対して、このマグネシウム支持塩及びイオン液体の組み合わせによりマグネシウム表面に形成されるSEI被膜は、マグネシウムイオンの伝導性が高いため、放電と充電の電圧差が小さくなり、エネルギー効率が向上するものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の非水電解液二次電池20の一例を示す模式図。
図2】評価セル30の一例を示す模式図。
図3】実験例1の充放電結果。
図4】実験例1のPt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果。
図5】実験例1のPt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果。
図6】実験例2の充放電測定結果。
図7】実験例3の充放電測定結果。
図8】実験例4の充放電測定結果。
図9】実験例5の充放電測定結果。
図10】実験例6の充放電測定結果。
図11】実験例7の充放電測定結果。
図12】実験例8の充放電測定結果。
図13】実験例9の充放電結果。
図14】実験例9のSIMSデータ。
図15】実験例10〜12の充放電測定結果
図16】実験例10〜12のサイクル測定結果。
図17】実験例13の充放電測定結果。
図18】実験例14の充放電測定結果。
図19】実験例13,14のサイクル測定結果。
図20】実験例15の充放電測定結果。
図21】実験例16の充放電測定結果。
図22】実験例16のサイクル測定結果。
図23】実験例17の充放電測定結果。
図24】実験例18の充放電測定結果。
図25】実験例19の充放電測定結果。
図26】実験例20の充放電測定結果。
図27】実験例21の充放電測定結果。
図28】実験例21のサイクル測定結果。
図29】実験例22の充放電測定結果。
図30】実験例23の充放電測定結果。
図31】実験例24の充放電測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の非水電解液二次電池は、正極と、負極と、支持塩とイオン液体とを含む非水電解液とを備えている。本発明の非水電解液二次電池の非水電解液は、支持塩のアニオンとイオン液体を構成するアニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている。このモル比が4%以上では、負極の表面に好適なSEI被膜が形成され、SEI被膜の抵抗をより低下させ、放電容量を高めたり、放電と充電の電圧差を十分に小さくすることができ、好ましい。また、非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO22-)とを含み、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれていることがより好ましい。このモル比は、4.5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましい。また、このモル比は、50%以下としてもよい。
【0017】
この非水電解液に含まれる支持塩としては、(CF3SO22-アニオンを含む支持塩、CF3SO3-アニオンを含む支持塩、PF6-アニオンを含む支持塩、ClO4-アニオンを含む支持塩、BF4-アニオンを含む支持塩などが挙げられる。このうち、(CF3SO22-アニオンを含む支持塩やCF3SO3-アニオンを含む支持塩が好適であり、CF3SO3-アニオンを含む支持塩がより好適である。この支持塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、セリウム塩などとすることができる。このうち、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、セリウム塩、カルシウム塩などが好ましい。これらの支持塩においては、微量の水和物であってもよい。イオン液体としては、トリフルオロメタンスルホネートアニオンまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンで構成されるイオン液体が好ましく、カチオンの種類は特に限定されない。カチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、アルキルピペリジウムカチオン、アルキルピロジリウムカチオンなどを用いることができる。具体的には、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物式1)や、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物式2)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(化合物式3)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートなどを挙げることができる。また、支持塩を含むゲル電解質を用いることができる。ゲル電解質としては、公知のゲル電解質を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子、アミノ酸誘導体、ソルビトール誘導体などの糖類に、上記の電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
本発明の非水電解液二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、特に限定されないが、支持塩を構成するカチオン、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、マグネシウムカチオン、亜鉛カチオン、カルシウムカチオン、アルミニウムカチオン、セリウムカチオンなどが関わる酸化還元反応(カチオンの吸蔵、放出など)を行なうことのできる活物質であることが好ましい。このように、カチオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる正極活物質を用いると、正極側でカチオンが、負極側でアニオンが、キャリアとして電気化学反応に関わる双方向型電池が得られる。なお、リチウムイオン電池などは、正極側、負極側の両方においてリチウムイオンすなわちカチオンがキャリアとして電気化学反応に関わるものである一方向型電池である。また、電気二重層キャパシタなどは、負極側でカチオンが、正極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わる双方向型電池である。正極活物質としては、具体的には、例えば、四酸化三コバルト、五酸化二バナジウム、α二酸化マンガン、二酸化ルテニウムなどの金属酸化物が挙げられる。また、正極活物質としては、二硫化モリブデン、二硫化チタンなどの金属硫化物も用いることができる。また、ポリメタクリレート骨格を有するポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)(化合物式4)などの有機ラジカルポリマーを金属酸化物、金属硫化物の代わりに用いてもよい。導電材としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭など公知のカーボン粉末が挙げられる。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリニトリルなどの高分子が挙げられる。結着剤の混合量は、例えば、導電材の100質量部に対し、3〜25質量部とすることが好ましい。混合方法としては、N−メチルピロリドンなどの溶媒下で、導電材、結着材とともに湿式混合してもよい。また、乳鉢などを使って乾式混合してもよい。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
【0022】
【化4】
【0023】
本発明の非水電解液二次電池の負極は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料であることが好ましい。こうした負極では、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる非水電解液二次電池を容易に提供することができる。アニオンがキャリアとして電気化学反応に関わるとは、例えば、アニオンが負極側で酸化還元反応をすることによって充放電が進行したり、アニオンが負極表面などに吸蔵放出されることによって充放電が進行したりすることなどを含む。ここで、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料は、これらを金属の状態で吸蔵したり放出したりすることが可能なものとしてもよいし、イオンの状態で吸蔵したり放出したりすることが可能なものとしてもよい。アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれかの金属や、これらの金属のうちの1以上を有する合金などが挙げられる。合金は、上述した金属の他に、ビスマスや、シリコンなどを含むものとしてもよい。合金は、例えば、マグネシウムアルミニウム、マグネシウムアルミニウム亜鉛、マグネシウムビスマス、マグネシウムシリコンなどとしてもよい。なお、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料は、必ずしも、充放電時に、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出する必要はない。本発明の負極は、上述したアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料の微粉末を導電材のカーボン、結着材などを含む負極合材を用いることもできる。
【0024】
本発明の非水電解液二次電池の負極は、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されたものとしてもよい。トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜は、例えば、充放電時に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを酸化還元するものとしてもよい。また例えば、充放電時にトリフルオロメタンスルホネートアニオンを吸蔵、放出するものとしてもよい。このとき、負極は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料であることが好ましい。こうした負極では、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されやすい。なお、負極は、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されたものであれば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料でなくてもよい。
【0025】
本発明の非水電解液二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0026】
本発明の非水電解液二次電池は、50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、非水電解液中に含まれる支持塩及びイオン液体の分解物が負極上に形成されているものとしてもよい。この分解物(SEI被膜)は、イオン伝導性が高く、これにより、充放電のエネルギー効率をより高めることができる。この分解物(SEI被膜)は、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する負極活物質としての機能を有するものとしてもよい。分解物を形成する際の充放電を行う温度は、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。また、分解物を形成したあとの充放電は、50℃以上70℃以下の温度範囲で行うことが好ましく、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。充放電温度は、高い方がエネルギー効率を高めやすい。
【0027】
本発明の非水電解液二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明の非水電解液二次電池20の一例を示す模式図である。図1に示すように、非水電解液二次電池20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この非水電解液二次電池20は、正極22と負極23との間の空間に非水電解液27を備えている。この非水電解液27は、支持塩とイオン液体とを含み、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている。負極は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能なものとしてもよいし、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されているものとしてもよい。
【0028】
以上詳述した本発明の非水電解液二次電池は、例えば、所定の負極を用い、非水電解液には、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている。そして、この負極や、支持塩及びイオン液体の組み合わせなどによりイオン伝導性が高く、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応するSEI被膜が負極表面に形成され、これが負極活物質として働くと考えられる。このため、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる非水電解液二次電池を提供することができる。このように、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる非水電解液二次電池では、負極側で金属カチオンなどのカチオンがキャリアとして電気化学反応に関わるものに比して、金属の電析などによって生じる体積変化などの不具合の発生を抑制でき、好ましい。
【0029】
次に、本発明の非水電解液マグネシウム二次電池について説明する。本発明の非水電解液マグネシウム二次電池は、正極と、マグネシウムを吸蔵、放出する負極と、マグネシウム支持塩とイオン液体とを含む非水電解液とを備えている。本発明の非水電解液マグネシウム二次電池の非水電解液は、マグネシウム支持塩のアニオンとイオン液体を構成するアニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている。このモル比が4%以上では、負極の表面に好適なSEI被膜が形成され、SEI被膜の抵抗をより低下させ、放電と充電の電圧差を十分に小さくすることができ、好ましい。また、非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO22-)とを含み、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれていることがより好ましい。このモル比は、4.5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましい。また、このモル比は、50%以下としてもよい。
【0030】
この非水電解液に含まれる支持塩としては、Mg[(CF3SO22N]2、Mg(CF3SO32のいずれかが好適であり、Mg(PF62、Mg(ClO42、Mg(BF42などの公知の支持塩は好適ではない。特に、テトラフルオロボレートや、ヘキサフルオロリン酸は含まないものとすることが好ましい。イオン液体としては、トリフルオロメタンスルホネートアニオンまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンで構成されるイオン液体が好ましく、カチオンの種類は特に限定されない。カチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、アルキルピペリジウムカチオン、アルキルピロジリウムカチオンなどを用いることができる。具体的には、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(上記化合物式1)や、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(上記化合物式2)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(上記化合物式3)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートなどを挙げることができる。また、支持塩を含むゲル電解質を用いることができる。ゲル電解質としては、公知のゲル電解質を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子、アミノ酸誘導体、ソルビトール誘導体などの糖類に、上記の電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。
【0031】
本発明の非水電解液マグネシウム二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、マグネシウムイオンがかかわる酸化還元反応を行なうことのできる活物質であれば特に限定されない。例えば、四酸化三コバルト、五酸化二バナジウム、α二酸化マンガン、二酸化ルテニウムなど、マグネシウムイオンを挿入、脱離できる金属酸化物が挙げられる。また、正極活物質としては、二硫化モリブデン、二硫化チタンなどのマグネシウムイオンを挿入、脱離できる金属硫化物も用いることができる。また、ポリメタクリレート骨格を有するポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)(上記化合物式4)などの有機ラジカルポリマーを金属酸化物、金属硫化物の代わりに用いてもよい。導電材としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭など公知のカーボン粉末が挙げられる。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリニトリルなどの高分子が挙げられる。結着剤の混合量は、例えば、導電材の100質量部に対し、3〜25質量部とすることが好ましい。混合方法としては、N−メチルピロリドンなどの溶媒下で、導電材、結着材とともに湿式混合してもよい。また、乳鉢などを使って乾式混合してもよい。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
【0032】
本発明の非水電解液マグネシウム二次電池の負極は、マグネシウム金属又はマグネシウムイオンを吸蔵し、マグネシウムイオンを放出する材料であればよく、マグネシウム金属のほかに、マグネシウム合金、例えば、マグネシウムアルミニウム、マグネシウムアルミニウム亜鉛、マグネシウムビスマス、マグネシウムシリコンなどを用いることができる。また、これらの金属、合金の微粉末を導電材のカーボン、結着材などを含む負極合材を用いることもできる。また、本発明の負極は、マグネシウムイオンを吸蔵、放出することができる化合物を負極活物質として用い、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。このとき、導電材、結着材、溶剤及び集電体は、正極で挙げたものを適宜利用することができる。
【0033】
本発明の非水電解液マグネシウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の非水電解液マグネシウム二次電池は、50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、非水電解液中に含まれるマグネシウム支持塩及びイオン液体の分解物が負極上に形成されているものとしてもよい。この分解物(SEI被膜)は、マグネシウム伝導性が高く、これにより、充放電のエネルギー効率をより高めることができる。この分解物(SEI被膜)は、マグネシウムを吸蔵、放出する活物質としての機能を有するものとしてもよい。分解物を形成する際の充放電を行う温度は、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。また、分解物を形成したあとの充放電は、50℃以上70℃以下の温度範囲で行うことが好ましく、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。充放電温度は、高い方がエネルギー効率を高めやすい。
【0035】
本発明の非水電解液マグネシウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明の非水電解液マグネシウム二次電池20の一例を示す模式図である。図1に示すように、非水電解液マグネシウム二次電池20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この非水電解液マグネシウム二次電池20は、正極22と負極23との間の空間に非水電解液27を備えている。この非水電解液27は、マグネシウム支持塩とイオン液体とを含み、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれている。
【0036】
以上詳述した本発明の非水電解液マグネシウム二次電池は、例えば、非水電解液には、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)がモル比で4%以上含まれており、このマグネシウム支持塩及びイオン液体の組み合わせなどによりマグネシウムイオンの伝導性が高いSEI被膜がマグネシウム表面に形成されるため、放電と充電の電圧差が小さくなり、エネルギー効率をより高めることができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0038】
以下には、本発明の非水電解液二次電池や、非水電解液マグネシウム二次電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、充放電は全て60℃で行った。表1に実験例2〜8,10〜24の正極、負極、非水電解液の構成をまとめた。なお、実験例1,2,5〜7,9〜14,16,21〜24が本発明の実施例に相当し、実験例3,4,8,15,17〜20が本発明の比較例に相当する。
【0039】
【表1】
【0040】
[実験例1]
SEI被膜について検証するため以下の実験を実施した。図2は、評価セル30の一例を示す模式図である。図2に示す評価セル30(例えば北斗電工製の三極式F型セル)において、作用極32と対極34としてPt板(田中貴金属製)、参照極36としてAg線(ニラコ製)をセットした。マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(Mg(CF3SO32、アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、上記化合物式1)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、F型セル内に注液した。この電解液ではトリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。F型セルを60℃の恒温器に置き、掃引速度5mV/secの速さで、Mg基準で−0.3Vから+2.3Vの間で電位を繰り返し掃引させた。図3は、実験例1の充放電結果である。図3に示すように、1サイクル目で、作用極電位が0V付近にまで下がるとMgが作用極(Pt)上に析出する。このとき、析出したMgには支持塩及びイオン液体の分解物などによりSEI被膜が形成されたと考えられる。電位が上昇に転じると、1.2V付近でMgの溶解が始まった。2サイクル目以降、1V付近で新しい酸化還元ピークが観測され、SEI被膜がMgを吸蔵、放出し、活物質として働くことが明らかになった。したがって、実験例1のSEI被膜は、マグネシウムイオンの伝導性が高いものと推察された。図4,5は、Pt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果である。この測定結果により、SEI被膜は、支持塩及びイオン液体の分解物であることがわかった。
【0041】
[実験例2]
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を13質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.4mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式1)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(図1参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.3mLをコインセルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
【0042】
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.010mAの電流を流して0.4Vまで放電し、その後0.010mAで2.35Vまで充電した。図6は、実験例2の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.27V、充電電圧は1.89Vであって、両者の差は0.62Vであった。
【0043】
[実験例3]
実験例2のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3Vまで充電した以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例3とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。図7は、実験例3の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.02V、充電電圧は2.64Vであって、両者の差は1.62Vであった。
【0044】
[実験例4]
実験例2のN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドの代わりに、ブチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(関東化学、化合物式5)をイオン液体として用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例4とした。図8は、実験例4の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.16V、充電電圧は1.37Vであって、両者の差は0.21Vと低かったが、1.7Vのところでテトラフルオロボレートアニオンの酸化分解が生じたため、充電が完了しなかった。
【0045】
【化5】
【0046】
[実験例5]
以下に説明する電解液を用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例5とした。まず、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式1)を用い、支持塩濃度0.20mol/Lの電解液を調製した。この電解液1mLに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、化合物式3)1mLを混合して、実験例5の電解液として用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンはモル比で47%であった。図9は、実験例5の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.91V、充電電圧は1.71Vであって、両者の差は0.80Vであった。
【0047】
[実験例6]
実験例2の電解液にマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、化合物式3)を用いて、支持塩濃度0.08mol/Lに調製した電解液を用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例6とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが全アニオンである。図10は、実験例6の充放電測定結果である。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.95V、充電電圧は2.15Vであって、両者の差は1.20Vであった。
【0048】
[実験例7]
実験例2の五酸化二バナジウム合材の代わりに、有機ラジカルポリマー合材を用いた以外は実験例2と同様に作製したコインセルを実験例7とした。有機ラジカルポリマーとしてポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)(化合物式4)を用いた。なお、同ラジカルポリマーは既報に従って合成した。例えば、Chem.Phys.Lett.Vol.359,p351(2002)に従い、2、2’−アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーの重合を行い、続いて、3−クロロパーベンゾイックアシッドで酸化することにより得られた。このラジカルポリマーは数平均分子量9.2万、重量平均分子量22.9万であった。このラジカルポリマーは、ラジカル骨格として2,2,6,6−テトラメチルピペリドキシルラジカル(TEMPOラジカル)を有しているが、TEMPOラジカルは安定なラジカル骨格として知られている(例えば特開2002−151084参照)。有機ラジカルポリマーの正極は、次のようにして作製した。上記ラジカルポリマーを44質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を35質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を21質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、薄膜状に成形した。この正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、真空乾燥を行い、非水電解液マグネシウム二次電池の正極とした。また、イオン液体には、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式2)を用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で5.8%含まれる。コインセルを実験例2と同様に作製し、60℃にて正極と負極の間で0.020mAの電流を流して2.30Vまで充電し、その後0.020mAで1.0Vまで充電した。図11は、実験例7の充放電測定結果である。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.05V、放電電圧は1.82Vであって、両者の差は0.23Vであった。
【0049】
[実験例8]
実験例7のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3.2Vまで充電した以外は実験例7と同様に作製したコインセルを実験例8とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。図12は、実験例8の充放電測定結果である。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.59V、放電電圧は1.48Vであって、両者の差は1.11Vであった。
【0050】
以上の測定結果より、少なくともトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)を含み、好ましくは更にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO22-)を含み、テトラフルオロボレートを含まないものとすることが好ましいことがわかった。また、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれている非水電解液を用いたコインセルは、充電時と放電時の電圧の差がより小さく、エネルギー効率が高いことがわかった。また、60℃のような比較的高温で充放電することがより好ましいことがわかった。
【0051】
ところで、本発明者らは、実験例1より、負極に形成されるSEI被膜がMgを吸蔵、放出し、活物質として働くと考えており、非水電解液マグネシウム二次電池について検討していた。しかしながら、さらなる研究の結果、負極に形成されるSEI被膜は、主にトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応して、活物質として働くことを見出した。そして、負極に形成されるSEI被膜がトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する場合、支持塩はマグネシウム支持塩でなくてもよいし、負極はマグネシウムを吸蔵、放出するものでなくてもよいと推察した。そこで、以下では、支持塩の種類を変更したり、負極の種類を変更したりしたセルについて、電池として作動することを確認するための実験を行った。
【0052】
[実験例9]
実験例9では、CF3SO3-が電荷のキャリアであることの検証を行った。図13は、実験例9の充放電結果である。まず、Mg(CF3SO32−PP13TFSA系電解液と加圧型のコインセル(Mg板とPt板、およびポリエチレンセパレータ)を用いて、60℃の恒温槽に10時間放置した後(図13、点A)、10μAの電流で1時間Pt方向に電流を流し(点B)、続いて逆電流を印加した(点C)。図13から分かるように、A→Bへ電流を流したときには電圧が+0.5Vである。通常、Mgの電析が起こるためには電圧が−側に振れないといけないため、電位的にみてMgのPt上への電析は起こっていないと思われた。そこで、次に、各点において、Mg電極とPt電極の二次イオン質量分析(SIMS分析)を実施した。図14に、各点におけるMg電極からの負イオンに関するSIMSデータを示すが、CF3SO3-の存在を示す質量数(横軸)M/Z=149のシグナルはAよりもBで増加し、Cで減少した。このことから、CF3SO3-がMg板上で挿入と脱離していると推察された。次に、具体的な電池の充放電特性について検討した。
【0053】
[実験例10]
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57重量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30重量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製F−104)を13重量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.25mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、化合物式2)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(図1参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.6mLをコインセルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
【0054】
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.015mAの電流を流して0.6Vまで放電し、その後0.015mAで2.35Vまで充電した。またこの放電と充電を1サイクルとして繰り返し、サイクル測定を行った。
【0055】
[実験例11,12]
実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(キシダ化学)を支持塩に用い、支持塩濃度0.3mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例11とした。また、実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、アルミニウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例12とした。図15は、実験例10〜12の充放電測定結果である。実験例10では、五酸化二バナジウム質量あたり141mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.29V、充電電圧は1.97Vであって、両者の差は0.68Vであった。実験例11では、五酸化二バナジウム質量あたり160mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.22V、充電電圧は1.61Vであって、両者の差は0.39Vであった。実験例12では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.23V、充電電圧は2.10Vであって、両者の差は0.87Vであった。図16は、実験例10〜12のサイクル測定結果である。実験例10では、5サイクル目の放電容量が159mAh/gであった。実験例11では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。実験例12では、5サイクル目の放電容量が125mAh/gであった。
【0056】
[実験例13,14]
実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、カルシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例13とした。また、実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、セリウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例14とした。図17は、実験例13の充放電測定結果である。実験例13では、五酸化二バナジウム質量あたり27.2mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり10mAh/gでの放電電圧は0.97V、充電電圧は1.68Vであって、両者の差は0.71Vであった。図18は、実験例14の充放電測定結果である。実験例14では、五酸化二バナジウム質量あたり59mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり20mAh/gでの放電電圧は1.05V、充電電圧は1.92Vであって、両者の差は0.87Vであった。図19は、実験例13,14のサイクル測定結果である。実験例13では、5サイクル目の放電容量が19.7mAh/gであった。実験例14では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。
【0057】
[実験例15]
実験例10のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、LiPF6を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例15とした。図20は、実験例15の充放電測定結果である。実験例15では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.1mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0058】
[実験例16]
実験例11の負極のマグネシウムの代わりに、亜鉛を用いた以外は実験例10と同様に実験例16のコインセルを作製し、0.3Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図21は、実験例16の充放電測定結果である。実験例16では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は0.71V、充電電圧は0.93Vであって、両者の差は0.22Vであった。図22は、実験例16のサイクル測定結果である。実験例16では、5サイクル目の放電容量が70mAh/gであった。
【0059】
[実験例17]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、銀を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例17とした。図23は、実験例17の充放電測定結果である。セルの開放電圧は、0.47Vであった。実験例17では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が0.07mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0060】
[実験例18]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、銅を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例18とした。図24は、実験例18の充放電測定結果である。セルの開放電圧は、0.52Vであった。実験例18では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が1.8mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0061】
[実験例19]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、ニッケルを用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例19とした。図25は、実験例19の充放電測定結果である。セルの開放電圧は1.03Vであった。放電をスタートすると電圧が0.6V程度上昇し、その後一定となった。セルを解体して調べたところ、Ni表面での分解反応が生じていた。
【0062】
[実験例20]
実験例10の負極のマグネシウムの代わりに、錫を用いた以外は実験例10と同様に実験例20のコインセル作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図26は、実験例20の1〜3サイクル目の充放電測定結果である。セルの開放電圧は、0.57Vであった。実験例20では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.9mAh/gと、極めて小さい値であった。
【0063】
[実験例21]
実験例12の負極のマグネシウムの代わりに、アルミニウムを用いた以外は実験例12と同様に実験例21のコインセルを作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図27は、実験例21の充放電測定結果である。実験例21では、五酸化二バナジウム質量あたり79mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり40mAh/gでの放電電圧は0.36V、充電電圧は0.80Vであって、両者の差は0.44Vであった。図28は、実験例21のサイクル測定結果である。実験例21では、5サイクル目の放電容量が42mAh/gであった。
【0064】
[実験例22]
実験例10のN,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製,化合物式1)を用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例22とした。図29は、実験例22の1〜4サイクル目の充放電測定結果である。実験例22では、五酸化二バナジウム質量あたり52mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.35V、充電電圧は1.86Vであって、両者の差は0.51Vであった。
【0065】
[実験例23]
実験例22の負極のマグネシウムの代わりに、マグネシウム・アルミニウム・亜鉛合金(AZ31)を用いた以外は実験例22と同様に作製したコインセルを実験例23とした。図30は、実験例23の1〜3サイクル目の充放電測定結果である。実験例23では、五酸化二バナジウム質量あたり86mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.36V、充電電圧は1.85Vであって、両者の差は0.49Vであった。
【0066】
[実験例24]
実験例10において、電解液溶媒としてイオン液体にプロピレンカーボネートを体積比で80:20の割合で混合して用いた以外は実験例10と同様に作製したコインセルを実験例24とした。図31は、実験例24の充放電測定結果である。実験例24では、五酸化二バナジウム質量あたり118mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.14V、充電電圧は1.87Vであって、両者の差は0.73Vであった。
【0067】
実験例9〜24の測定結果より、少なくともトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)を含み、負極がMg,Zn,Alやこれらの合金など、所定の金属であれば、五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gなどの放電容量が得られ、充放電可能であることがわかった。ここで、実験例9の結果を考慮すると、こうしたものでは、負極の表面において、アニオンが電気化学反応をすることにより、充放電反応が進行すると推察された。このことから、負極は、Mg,Zn,Alやこれらの合金など、所定の金属であればよいことがわかった。一方で、負極が銀や銅、錫などでは、容量が小さく好ましくないことがわかった。また、負極がニッケルの場合、ニッケルが激しく反応してしまい、好ましくないことがわかった。また、支持塩がマグネシウム塩やリチウム塩、アルミニウム塩のものでは、120mAh/gなどのより高い放電容量が得られ、好ましいことがわかった。また、支持塩は、サイクル劣化を抑制する観点からは、リチウム支持塩以外が好ましいことがわかった。また、非水電解液は、プロピレンカーボネートなどの非水溶媒を含んでもよいことがわかった。
【符号の説明】
【0068】
20 非水電解液二次電池(非水電解液マグネシウム二次電池)、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 非水電解液、30 評価セル、32 作用極、34 対極、36 参照極、38 非水電解液。
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