特許第6268901号(P6268901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268901
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20180122BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20180122BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20180122BHJP
   H01R 13/71 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   H01R24/38
   H01R12/71
   H01R13/648
   H01R13/71
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-214384(P2013-214384)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-79567(P2015-79567A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093034
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】平川 猛
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−176611(JP,A)
【文献】 特開2003−151689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/38 − 24/56
H01R 12/70 − 12/91
H01R 13/64
H01R 13/648
H01R 13/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷配線基板上に実装された信号処理集積回路に接続した状態で相手コネクタが上方から下方に向かって嵌合され、または下方から上方に向かって抜去されるものであって、
前記相手コネクタの嵌合または抜去が行われる際に、絶縁ハウジングに取り付けられた円環状のグランドコンタクト部材に対して前記相手コネクタの一部が接続または離間されるように構成された電気コネクタにおいて、
前記グランドコンタクト部材には、当該グランドコンタクト部材を円周方向に分断して径方向および周方向の弾性を付与する分割スリットが設けられているとともに、
前記グランドコンタクト部材に対して電気的に隔離された状態で前記信号処理集積回路またはグランド回路に接続されるスイッチングコンタクトが付設され、
前記スイッチングコンタクトが、前記相手コネクタの嵌合または抜去に伴って、前記相手コネクタの一部に接続または離間される構成になされたものであって、
前記相手コネクタの嵌合時には、前記グランドコンタクト部材に対して前記スイッチングコンタクトが前記相手コネクタの一部を介して導通状態に維持される一方、
前記相手コネクタの抜去時には、前記グランドコンタクト部材に対して前記スイッチングコンタクトが電気的に離隔されて非導通状態に維持される構成を備え、
前記分割スリットが、前記グランドコンタクト部材の上方の端縁部から下方に向かって溝状をなして延出しているとともに、
前記分割スリットの下端部から周方向に拡張された空隙部からなるコンタクト収容部が前記グランドコンタクト部材の円周方向の一部に設けられ、当該コンタクト収容部の内方領域に前記スイッチングコンタクトが配置されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記コンタクト部材およびスイッチングコンタクトが、前記信号処理集積回路またはグランド回路に接続される接続脚部を有していることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記信号処理集積回路は、前記コンタクト部材に対する前記スイッチングコンタクトの導通および非導通の切り替えに基づいて発せられる信号に対応して、電源供給のオン・オフのスイッチング動作を行うように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線基板上に実装された信号処理集積回路に接続した状態で相手コネクタが嵌合または抜去される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器において、細線同軸ケーブルやフレキシブル配線基板等の各種信号伝送媒体、あるいは一対の配線基板同士(基板対基板)を、互いに嵌合接続可能に構成された一対の電気コネクタを使用することによって印刷配線基板側に電気的に接続することが広く行われている。そのような一対の電気コネクタは、例えば、信号伝送媒体や配線基板が連結されるプラグコネクタ(第1のコネクタ)と、印刷配線基板上に実装されたリセプタクルコネクタ(第2のコネクタ)とから構成され、これら両コネクタ同士が嵌合されることによって電気的な接続が行われる構成になされている。下記の特許文献1に記載されている同軸型電気コネクタにおいては、絶縁ハウジングに取り付けられた単芯の信号コンタクトの外方側を、円環状のグランドコンタクトが環状に取り囲む配置関係になされている。
【0003】
上述したような一対の電気コネクタのうちの一方(リセプタクルコネクタ)は、通常、印刷配線基板上に実装されて使用されるが、その印刷配線基板上には、必要な処理機能を備えた信号処理集積回路(IC/LSIチップ)が、例えばモジュールカードとして実装されている。そして、その信号処理集積回路に対しては、印刷配線基板上に形成された信号伝送用導電路および接地用グランド導電路を介してリセプタクルコネクタが接続される。例えば、携帯電話においては、アンテナ構成部分に同軸ケーブルを介してプラグコネクタが接続されるとともに、そのプラグコネクタが、アンテナ信号処理集積回路を実装する印刷配線基板上のリセプタクルコネクタに嵌合され、それによって必要なアンテナ信号処理動作が実行されるようになっている。
【0004】
特に、近年の携帯電話等においては、Wi−Fi、3G、bluetooth等の複数のアンテナ構成が備えられているが、生産性を考慮すると、各アンテナ構成にあわせたモジュールカードをそれぞれに準備するのではなく、全てのアンテナ構成を備えた標準のモジュールカードが使用されることがある。この場合、機器側の仕様に設定されていないアンテナ構成があれば、それに対応したリセプタクルコネクタにプラグコネクタを嵌合しない未嵌合状態のままでリセプタクルコネクタが使用される。ただ、このようなリセプタクルコネクタに対するプラグコネクタの未嵌合状態は、基本的に信号処理集積回路(IC/LSIチップ)により認識されることがないので、何らの対策を採らないと、プラグコネクタの未嵌合で非動作状態になっている信号処理集積回路に対して、本来不要な電力が供給され続けることとなる。
【0005】
そのため従来においては、例えばプラグコネクタの抜去時に、信号処理集積回路への電力供給を停止させるためのスイッチ回路を別個に準備して印刷配線基板上に実装する手段や、信号処理集積回路を排除するなどの対策が採られることがある。その結果、従来では、搭載部品および作業工程数が増大する傾向となっており、生産性低下の原因にもなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−93083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構成で、プラグコネクタの抜去状態を表す信号を信号処理集積回路に発し、当該信号処理集積回路の電力消費を低減させることができ、生産性にも優れた電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明では、印刷配線基板上に実装された信号処理集積回路に接続した状態で相手コネクタが上方から下方に向かって嵌合され、または下方から上方に向かって抜去されるものであって、前記相手コネクタの嵌合または抜去が行われる際に、絶縁ハウジングに取り付けられた円環状のグランドコンタクト部材に対して前記相手コネクタの一部が接続または離間されるように構成された電気コネクタにおいて、前記グランドコンタクト部材には、当該グランドコンタクト部材を円周方向に分断して径方向および周方向の弾性を付与する分割スリットが設けられているとともに、前記グランドコンタクト部材に対して電気的に隔離された状態で前記信号処理集積回路またはグランド回路に接続されるスイッチングコンタクトが付設され、前記スイッチングコンタクトが、前記相手コネクタの嵌合または抜去に伴って、前記相手コネクタの一部に接続または離間される構成になされたものであって、前記相手コネクタの嵌合時には、前記グランドコンタクト部材に対して前記スイッチングコンタクトが前記相手コネクタの一部を介して導通状態に維持される一方、前記相手コネクタの抜去時には、前記グランドコンタクト部材に対して前記スイッチングコンタクトが電気的に離隔されて非導通状態に維持される構成を備え、前記分割スリットが、前記グランドコンタクト部材の上方の端縁部から下方に向かって溝状をなして延出しているとともに、前記分割スリットの下端部から周方向に拡張された空隙部からなるコンタクト収容部が前記グランドコンタクト部材の円周方向の一部に設けられ、当該コンタクト収容部の内方領域に前記スイッチングコンタクトが配置された構成になされている。
【0009】
このような構成からなる電気コネクタによれば、相手コネクタの嵌合・抜去に伴い、コンタクト部材に対してスイッチングコンタクトが導通・非導通となるように切り替えられ、その切り替えに基づく信号を信号処理集積回路(IC/LSIチップ)が受けることで、相手コネクタの抜去時における電力供給の停止のスイッチング動作など、必要な動作を行わせることが可能となる。
【0010】
このとき、本発明においては、前記コンタクト部材およびスイッチングコンタクトが、前記信号処理集積回路またはグランド回路に接続される接続脚部を有していることが望ましい。
【0011】
このような構成を備えた電気コネクタによれば、信号処理集積回路に対する接続が容易かつ確実に行われる。
【0013】
さらにまた、本発明における前記信号処理集積回路は、前記コンタクト部材に対する前記スイッチングコンタクトの導通および非導通の切り替えに基づいて発せられる信号に対応して、電源供給のオン・オフのスイッチング動作を行うように構成されていることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように本発明にかかる同軸型電気コネクタは、相手コネクタの嵌合または抜去が行われる際に当該相手コネクタの一部が接続または離間される分割スリットを備えたグランドコンタクト部材に、当該グランドコンタクト部材に対して電気的に離隔された状態で信号処理集積回路(IC/LSIチップ)またはグランド回路に接続されるスイッチングコンタクトを付設する一方グランドコンタクト部材に、分割スリットの下端部から拡張した空隙部からなるコンタクト収容部を設け、そのコンタクト収容部にスイッチングコンタクトを配置することによって、相手コネクタの嵌合時にはコンタクト部材に対してスイッチングコンタクトを導通状態に維持する一方、相手コネクタの抜去時にはコンタクト部材に対してスイッチングコンタクトを電気的に離隔させて非導通状態に維持する構成を採用したことで、相手コネクタの嵌合・抜去に伴いコンタクト部材に対してスイッチングコンタクトを導通・非導通に切り替え、その切り替えに基づいて発せられた信号を信号処理集積回路が受けることにより電力供給の停止のスイッチング動作などの必要な動作を行わせることを可能としたものであるから、信号処理集積回路への電力供給を停止させるためのスイッチ回路を別個に準備することなく、簡易な構成によって、電気コネクタと接続される信号処理集積回路の電力消費を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる同軸型電気コネクタを斜め上方から表した外観斜視説明図である。
図2図1に示された本発明にかかる同軸型電気コネクタの平面説明図である。
図3図1に示された本発明にかかる同軸型電気コネクタの底面説明図である。
図4図2中のIV−IV線に沿った縦断面説明図である。
図5図1図4に示された本発明の一実施形態にかかる同軸型電気コネクタに用いられているグランドコンタクトの単品構造を表した外観斜視説明図である。
図6図5に示された本発明の一実施形態にかかるグランドコンタクトの平面説明図である。
図7図5に示された本発明の一実施形態にかかるグランドコンタクトに付設されるスイッチングコンタクトの単品構造を表したものであって、(a)はコネクタ外方側から見たときの外観斜視説明図、(b)はコネクタ内方側から見たときの外観斜視説明図である。
図8図1図7に示された本発明の一実施形態にかかる同軸型電気コネクタと信号処理集積回路(IC/LSIチップ)との印刷配線基板上における接続配置関係を表した外観斜視説明図である。
図9図1図7に示された本発明の一実施形態にかかる同軸型電気コネクタに対し、相手コネクタであるプラグコネクタを嵌合した状態を表した外観斜視説明図である。
図10図1図7に示された本発明一実施形態にかかる同軸型電気コネクタに対し、相手コネクタであるプラグコネクタを嵌合した状態を表した径方向における横断面説明図である。
図11図1図7に示された本発明一実施形態にかかる同軸型電気コネクタに対し、相手コネクタであるプラグコネクタを嵌合した状態を表した径方向垂直方向における水平断面説明図である。
図12】本発明の一実施形態にかかる同軸型電気コネクタの製造工程を表したものであって、キャリア部材が連結されたグランドコンタクトおよび信号コンタクトを、インサート型内に配置した状態を表した平面説明図である。
図13図12に示されたグランドコンタクトおよび信号コンタクトを用いて絶縁ハウジングのインサート成形を行った後の状態を表した平面説明図である。
図14図13に示されたインサート成形後の絶縁ハウジングにスイッチングコンタクトを圧入する状態を表した平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、印刷配線基板に接続する同軸型電気コネクタに適用した実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
[全体構造について]
図1図9に示された本発明の一実施形態にかかる同軸型電気コネクタ10は、例えば携帯電話等の電子機器内に配置された印刷配線基板P上に半田付けにより実装されるリセプタクルコネクタからなるものであって、相手コネクタとしての他の同軸型電気コネクタであるプラグコネクタ20が、例えば作業者の手で把持されながら、本発明にかかるリセプタクルコネクタ10に対して図示上方側に同軸状に配置され(図8参照)、その後に、相手側のプラグコネクタ20が適宜の力で下方に押し込まれることによって、両コネクタ10,20同士が嵌合された状態になされる(図9図11参照)。また、それらの両コネクタ10,20同士の嵌合状態から、相手コネクタとしてのプラグコネクタ20が図示上方側に適宜の力で引き上げられることによって、本発明にかかる同軸型電気コネクタであるリセプタクルコネクタ10から相手側のプラグコネクタ20が図示上方側に離脱されるようにして抜去が行われる。
【0018】
なお、上述したように、本発明にかかるリセプタクルコネクタ10に対して相手側のプラグコネクタ20を嵌合または抜去する操作は、作業者の手で行われることに限られることはなく、所定の治具や機械によって自動的に行うようにしても良い。以下において、相手側のプラグコネクタ20の嵌合方向および抜出方向を、それぞれ「下方向」および「上方向」とする。
【0019】
[絶縁ハウジングの構成について]
本発明の一実施形態にかかるリセプタクルコネクタ10の本体部を構成している絶縁ハウジング11は、プラスチック等の樹脂材を用いて例えばモールド成形されたものであって、印刷配線基板P上に載置される平面略矩形状をなすベース状枠体から形成されている。その絶縁ハウジング11の中心部分には、後述する信号伝送用の信号コンタクト12が装着されているとともに、その信号コンタクト12に対して半径方向の外方側を環状に取り囲むようにして接地用のグランドコンタクト13が装着されている。このグランドコンタクト13は、本発明にかかるコンタクト部材に相当する部材であって、平面略円環形状をなす薄厚金属部材から形成されたものであるが、詳細な構造については後段において説明する。
【0020】
[信号コンタクトの構成について]
信号コンタクト12も、所定の薄厚金属部材から形成されたものであるが、上述した絶縁ハウジング11の略中心に相当する位置に、中空のピン形状をなす嵌合接触部12aが上方に立ち上がるように配置されているとともに、その嵌合接触部12aの下端部から外方側に向かって接続脚部12bが延出している。絶縁ハウジング11の略中心部分に配置された嵌合接触部12aは、後述する相手側のプラグコネクタ20において二股状をなすように設けられた信号コンタクト22の内方に嵌め込まれ、それによって電気的な接続を行う構成になされている(図10参照)。
【0021】
また、上述したように嵌合接触部12aから延出している接続脚部12bは、絶縁ハウジング11の底面に沿って延在する帯板状部材から形成されており、絶縁ハウジング11の一端縁から外方側に向かって突出している。この接続脚部12bの外方側突出部分または当該接続脚部12bの全体は、印刷配線基板P上に形成された信号伝送用の信号導電路P1に対して半田接合される。
【0022】
[グランドコンタクトの構成について]
一方、本発明におけるコンタクト部材を構成しているグランドコンタクト13も、例えば所定の薄厚金属板の折り曲げ部材から形成されており、略円筒状の中空形状をなすように形成されたグランド本体部13aを有しているとともに、当該円環状をなすグランド本体部13aの外周部分における下縁には、複数(2体)の接続脚部13b,13bが半径方向の外方側に向かって一体的に延出するように設けられている。これらの両接続脚部13b,13bは、直径方向に対称的な位置関係となるように配置されており、印刷配線基板P上に形成されたグランド接続用のグランド導電路P2に対してそれぞれ半田接合される。
【0023】
また、そのグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13のグランド本体部13aにおける外周面部分には、半径方向の内方側に向かって窪む円環状係合部13cが絞り成形されている。このグランドコンタクト13の円環状係合部13cには、後述する相手コネクタとしてのプラグコネクタ20に設けられた円環状係止部23cが、弾性的な嵌合状態(図9参照)になされる。
【0024】
ここで、上述したような構成を有するグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13の全体は、基本的に一体のグランド部材から形成されたものであるが、グランド本体部13aが径方向および周方向の弾性可撓性を備えるために当該グランド本体部13aには、円周方向に分断する1カ所の分割スリット13a1が、グランド本体部13aの上端縁部から下方に向かって軸方向に延在するように形成されている。そして、相手側のプラグコネクタ20が嵌合された際に、分割スリット13a1を形成している細溝状の空隙部分を介して、グランド本体部13aが径方向および周方向に弾性的に縮小または拡張(復元)されるようになっている。
【0025】
このとき、上述したグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13に設けられた分割スリット13a1は、前述したようにグランド本体部13aの上端縁部から下方に向かって細溝状をなして延出するように形成されているが、その分割スリット13a1は、グランド本体部13aの軸方向途中部分まで延出しており、当該割スリット13a1の下端部分は、周方向に拡張された空隙部を有するコンタクト収容部13a2に対して上方側から連通するように繋げられている。そのコンタクト収容部13a2は、グランド本体部13aの下半部分において周方向の一部を正面略矩形状をなすように切り欠いた形状をなしており、当該コンタクト収容部13a2の内方側に形成されている空間部分には、所定の薄厚金属板からなるスイッチングコンタクト14が、グランド本体部13aと非接触状態となるように配置されている。
【0026】
そのスイッチングコンタクト14は、絶縁ハウジング11に形成された取付け溝の内部に略水平状態で固定された底部基板14aの内方側端部から上方に向かって片持ち状に立ち上がるように配置されており、底部基板14aとの接続部分を中心として径方向に弾性的な可撓性を有している。このときの底部基板14aの両側縁部には、固定片14b,14bが羽根状をなすように連設されており、それらの両固定片14b,14bが、上述した絶縁ハウジング11の取付け溝内に圧入されることによって、スイッチングコンタクト14の全体が保持されるようになっている。
【0027】
そして、このスイッチングコンタクト14は、相手側のプラグコネクタ20が嵌合される前においては、上述したようにグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13に対して非接触状態にあり、電気的に隔離された状態になされているが、相手側のプラグコネクタ20が嵌合された後にあっては、後述するように相手側のプラグコネクタ20の一部が、スイッチングコンタクト14とグランド本体部13aとの双方に接触することによって、両部材14,13a同士が電気的に接続されるようになっている。
【0028】
また、上述したスイッチングコンタクト14の底部基板14aには、印刷配線基板Pに向かって延出する接続脚部14cが設けられており、その接続脚部14cが、印刷配線基板P上に形成されたグランド接続用のグランド導電路P2´に対して半田接合される。このグランド導電路P2´は、印刷配線基板P上に実装された信号処理集積回路(IC/LSIチップ)30側に接続されている。
【0029】
すなわち、上述したように印刷配線基板P上に形成されている信号導電路P1およびグランド導電路P2´は、当該印刷配線基板P上に実装された信号処理集積回路(IC/LSIチップ)30の内部回路部分(図示省略)から延出しているものであって、このときの信号処理集積回路30としては、例えば携帯電話におけるアンテナ信号用の処理機能チップが採用されており、略直線状に延在する信号導電路P1に対して、前述した信号コンタクト12の接続脚部12bが半田付けにより接続される。また、グランド導電路P2に対して、スイッチングコンタクト14に設けられた各接続脚部14cが半田付けによりそれぞれ接続される。
【0030】
そして、図8図11に示されているように、リセプタクルコネクタ10に相手側のプラグコネクタ20が嵌合された際には、リセプタクルコネクタ10の信号コンタクト12に対し、後述するプラグコネクタ20の信号コンタクト22が接触して導通状態となり、それによって信号処理集積回路(IC/LSIチップ)30との間に信号回路が形成されるようになっている。また、それと同時に、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13、およびスイッチングコンタクト14の各々に対し、後述するプラグコネクタ20のグランドコンタクト23が接触して導通状態となり、信号処理集積回路30との間にグランド回路が形成される。このような接続が行われた状態において、信号処理集積回路30は、アンテナ信号に関する所定の処理動作が実行可能となる。
【0031】
一方、上述した相手側のプラグコネクタ20の嵌合状態から、当該プラグコネクタ20が上方に抜去された際には、リセプタクルコネクタ10の信号コンタクト12から、後述するプラグコネクタ20の信号コンタクト22が離間して非導通状態となり、信号処理集積回路(IC/LSIチップ)30の信号回路が切断される。またそれと同時に、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13、およびスイッチングコンタクト14の双方から、後述するプラグコネクタ20のグランドコンタクト23が離間し、それによってグランドコンタクト13とスイッチングコンタクト14とが互いに非導通状態となり、信号処理集積回路30のグランド回路が切断される。すなわち、プラグコネクタ20の抜去に伴い、リセプタクルコネクタ10でグランド回路の切断動作が行われ、そのグランド回路の切断動作が、信号処理集積回路30において検知されるようになっている。
【0032】
なお、前述したようにグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13に設けられた分割スリット13a1およびコンタクト収容部13a2は、プラグコネクタ20の嵌合・抜去の方向である円環形状の軸方向(上下方向)に沿って溝状の空隙部分を有していることから、相手側のプラグコネクタ20の嵌合・抜去時に、分割スリット13a1を介してグランド本体部13aが円周方向または径方向に拡大または縮小するように弾性変形される構成になされている。
【0033】
ここで、上述したリセプタクルコネクタ10は、以下のようなインサート成型によって形成される。
【0034】
まず、図12に示されているように、所定の薄厚金属板を用いたプレス成形によってグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13が形成されるが、形成当初におけるグランドコンタクト13は、一方の接続脚部13bがキャリア部材13Cに連結された状態になされている。このようなキャリア部材13Cに連結されたグランドコンタクト13は、同じくキャリア部材12Cに連結された信号コンタクト12とともにインサート成型の金型内にセットされるが、その際、図12に示されているように、グランドコンタクト13の中心部分に信号コンタクト12の嵌合接触部12aが配置される。
【0035】
そして、図12の配置関係においてインサート成型が行われると、図13に示されているように、グランドコンタクト13および信号コンタクト12が、キャリア部材13C,12Cにより連結された状態のリセプタクルコネクタ10が形成されることとなるが、そのキャリア部材13C,12Cは、図中の一点鎖線で示されたカット位置で切断される。そして、図14に示すようにスイッチングコンタクト14を絶縁ハウジング11に圧入することによって最終製品としてのリセプタクルコネクタ10が得られる。
【0036】
[相手コネクタ(プラグコネクタ)の全体構成について]
前述したような構成を有する本発明の一実施形態にかかるリセプタクルコネクタ10に対しては、図8図11に示されている相手側の同軸型電気コネクタであるプラグコネクタ20が軸方向の上方側から嵌合され、または軸方向の上方側に向かって抜出される構成になされている。その相手コネクタであるプラグコネクタ20の構成を以下において説明するが、前述したリセプタクルコネクタ10と同様な構成を有する部材については、各部材を示す符号中の十の位の「1」を「2」に代えて詳細な説明は省略し、異なる構成についての説明を主として行うこととする。
【0037】
相手コネクタであるプラグコネクタ20は、ケーブル状信号伝送媒体としての細線同軸ケーブルSCの端末部分が連結される構成になされており、前述したリセプタクルコネクタ10に上方から差し込むようにして嵌合または抜去される構成になされているが、そのリセプタクルコネクタ10に対するプラグコネクタ20の嵌合・抜去作業は、印刷配線基板Pの表面に対して略直交する方向に行われる。
【0038】
より具体的には、プラグコネクタ20のコネクタ本体部は、略円筒形状をなすように形成されており、その略円筒形状をなすプラグコネクタ20のコネクタ本体部に対して、径方向外方側から細線同軸ケーブルSCの端末部が連結され、その細線同軸ケーブルSCが連結された状態で、リセプタクルコネクタ20の上方位置に対面するようにプラグコネクタ20が配置される(図8参照)。次いで、当該プラグコネクタ20の全体が、印刷配線基板Pの表面に対して略直交する方向に下降されていき、それによってプラグコネクタ20の下端部分が、リセプタクルコネクタ10の上端部分に対して嵌合状態になされる(図9及び図10参照)。このようにプラグコネクタ20が上方から差し込まれた嵌合状態においては、細線同軸ケーブルSCの端末部が、プラグコネクタ20およびリセプタクルコネクタ10から印刷配線基板P上の配線パターン導電路P1,P2を介して信号処理集積回路(IC/LSIチップ)30に接続されることとなる。
【0039】
[同軸ケーブルについて]
ケーブル状信号伝送媒体としての細線同軸ケーブルSCの端末部分は、外周被覆材が皮剥きされることによって、ケーブル内部導体(信号線)およびケーブル外部導体(シールド線)が同軸状をなすように露出されており、当該細線同軸ケーブルSCの中心軸に沿うようにして配置されたケーブル内部導体が、絶縁ハウジング21に取り付けられた信号コンタクト22に接続されることによって信号回路が構成される。また、ケーブル内部導体SCaの外周側を取り囲むように配置されたケーブル外部導体はシールドシェル23に接続され、そのシールドシェル23がグランドコンタクトとして機能することによってグランド回路が構成されるようになっている。
【0040】
[絶縁ハウジングについて]
ここで、上述した絶縁ハウジング21は、コネクタ本体部を構成するように略円板形状に形成された絶縁本体部21aを有しており、その絶縁本体部の下方部分が、リセプタクルコネクタ10の内方側に挿入される絶縁挿入部になされている。その絶縁本体部21aの略中央部分には、上述した細線同軸ケーブルSCの端末部分が載置されるようにしてセットされるが、当該細線同軸ケーブルSCのケーブル内部導体(信号線)を受ける信号コンタクト22が絶縁ハウジング21に取り付けられている。また、その信号コンタクト22の周囲を取り囲むようにして、グランドコンタクトとしてのシールドシェル23が、上述した絶縁本体部21aに取り付けられている。
【0041】
このようにコネクタ本体部を構成している絶縁ハウジング21の絶縁本体部21aには、当該絶縁本体部21aから下方に向かって突出する絶縁挿入部が中空円筒状をなすように一体的に形成されている。この絶縁挿入部は、上述したように嵌合相手であるリセプタクルコネクタ10の内方に向かって下端側から挿入される構成になされている。
【0042】
[シールドシェルについて]
さらに、上述した絶縁ハウジング21の外側表面は、薄板金属状部材からなるシールドシェル23によって覆われている。このシールドシェル23は、絶縁ハウジング21の絶縁本体部を径方向外方側から環状に覆うシェル本体部23aと、絶縁本体部の上面側を覆う蓋状部材としてのシェル蓋部23bとを有しており、シェル本体部23aの下端部分には、絶縁ハウジング21の絶縁挿入部を径方向外方側から環状に覆うシェル挿入部が設けられている。
【0043】
このとき、細線同軸ケーブルSCの端末部分を接続して固定する前の初期状態においては、上述したシールドシェル23のシェル蓋部23bはシェル本体部23aに対して連結部を介して略垂直方向に起き上がった上方開放状態になされていて、細線同軸ケーブルSCの端末部分が載置されてセットされた後、略直角下方に折り曲げられるようにしてシールドシェル23のシェル蓋部23bが略水平状態まで押し倒される。これによって、絶縁ハウジング21の絶縁本体部21aの全体が、シェル蓋部23bにより上方側から覆われ、シールドシェル23が閉塞状態になされる。
【0044】
このときのシェル蓋部23bは、上述したように略水平状態まで押し倒された際に、シェル本体部23aの上方側部分および外周側部分を覆うように被せられる構造になされているが、その略水平状態まで押し倒されたシェル蓋部23bにおける連結部と反対側となる正面側部分には、細線同軸ケーブルSCの上方を覆うように突出カバー部23b1が設けられている。このシェル蓋部23bは、細線同軸ケーブルSCを覆ってカシメ固定され、それによってシェル本体部23aに対するシェル蓋部23bの固定が、ケーブル外部導体に接触した状態で行われることにより、シールドシェル23によるグランド回路が構成されるようになっている。
【0045】
一方、前述したようにシールドシェル23におけるシェル本体部23aの下方側部分を構成しているシェル挿入部は、リセプタクルコネクタ10の径方向外方側部分に外嵌される構成になされており、リセプタクルコネクタ10の径方向内方側に挿入される絶縁ハウジング21の絶縁挿入部とともにコネクタ連結部分を構成している。より具体的には、このシェル挿入部は、略円筒形状を有するように形成されており、当該シェル挿入部の挿入側の下端部分に、径方向内方側に向かって突出する環状凹溝からなる円環状係止部23cが形成されている。そして、前述したようにシェル蓋部23bが略水平状態まで押し倒された後に、当該円環状係止部23cが、リセプタクルコネクタ10に設けられた円環状係合部13cに対して弾性的な嵌合関係になされるようになっている。
【0046】
[シグナル導電コンタクトについて]
また、本実施形態において採用されている信号コンタクト22は、前述した絶縁ハウジング21の絶縁本体部21aに圧入又はインサート成形等により取り付けられているが、細線同軸ケーブルSCのケーブル内部導体(信号線)に接続されるケーブル挟持部22aを有しているとともに、そのケーブル挟持部22aから下方側に向かって延出するように設けられた一対の弾性バネ部22b,22b同士の間部分に、リセプタクルコネクタ10に設けられた信号コンタクト12の嵌合接触部12aが、圧接状態で挿入されて弾性的に接触する構成になされている。
【0047】
この信号コンタクト22は、クリップビーム構造を有しており、細線同軸ケーブルSCのケーブル内部導体(信号線)をクリップ状に挟む構造になされている。より具体的には、細線同軸ケーブルSCの端末部分がセットされた後に、シールドシェル23のシェル蓋部23bが略水平状態まで押し倒されることによって、細線同軸ケーブルSCのケーブル内部導体(信号線)を挟持する構成になされている。
【0048】
このような構成からなる同軸型電気コネクタとしてのリセプタクルコネクタ10においては、相手コネクタとしてのプラグコネクタ20が嵌合・抜去されるに伴って、グランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13とスイッチングコンタクト14とが、導通・非導通に切り替えられることとなり、その切り替えに基づく信号を信号処理集積回路(IC/LSIチップ)30が受けることによって、プラグコネクタ20の抜去時における電力供給の停止のスイッチング動作など、必要な動作を行わせることが可能となっている。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0050】
例えば、上述した実施形態においては、スイッチングコンタクト14の接続脚部14cが印刷配線基板P上のグランド導電路P2´に接続されているが、そのスイッチングコンタクト14の接続相手である導電回路P2´を、グランド回路ではなく信号回路の導電路とすることも可能である。
【0051】
また、上述した実施形態は、相手コネクタ(プラグコネクタ20)の嵌合・抜去に伴ってグランドコンタクト(円環状コンタクト部材)13をスイッチングコンタクト14により導通・非導通に切り替える構成としたものであるが、信号コンタクト12にスイッチングコンタクトを付設することによって導通・非導通に切り替える構成とすることも可能である。
【0052】
さらに、上述した実施形態は、垂直嵌合型の電気コネクタに本発明を適用したものであるが、水平嵌合型の電気コネクタに対しても同様に適用することができる。
【0053】
さらにまた、本発明は、上述した実施形態のような単芯の細線同軸ケーブル用コネクタに限定されることはなく、多極状に配置された同軸ケーブル用コネクタや、同軸ケーブルと絶縁ケーブルとが複数混合したタイプの電気コネクタ等についても同様に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように本発明は、各種電子・電気機器に使用される多種多様な同軸型電気コネクタに対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 リセプタクルコネクタ(同軸型電気コネクタ)
11 絶縁ハウジング
12 信号コンタクト
12a 嵌合接触部
12b 接続脚部
12C キャリア部材
13 グランドコンタクト(円環状コンタクト部材)
13a グランド本体部
13a1 分割スリット
13a2 コンタクト収容部
13b 接続脚部
13c 円環状係合部
13C キャリア部材
14 スイッチングコンタクト
14a 底部基板
14b 固定片
14c 接続脚部
P 印刷配線基板
P1 信号導電路
P2,P2´ グランド導電路
20 プラグコネクタ(相手コネクタ)
21 絶縁ハウジング
21a 絶縁本体部
22 信号コンタクト
22a ケーブル挟持部
22b 弾性バネ部
23 シールドシェル
23a シェル本体部
23b シェル蓋部
23b1 突出カバー部
23c 円環状係止部
30 信号処理集積回路(IC/LSIチップ)
SC 細線同軸ケーブル
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