(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属材でできた封口板の透孔に電極端子を熱可塑性樹脂材のガスケットで一体に成形して前記ガスケットを介して前記電極端子と封口板とが電気絶縁され密着接合された密閉型電気化学デバイス用封口体において、前記封口板および前記電極端子を保持させるように熱硬化性樹脂でできた絶縁体を前記ガスケットに内蔵させて、ガスケットが熱溶融もしくは熱溶解して発生する封口板の透孔における電極端子との電気的短絡を前記絶縁体により阻止するようにしたことを特徴とする密閉型電気化学デバイス用封口体。
前記絶縁体は、前記電極端子の部位を包囲するように熱硬化性樹脂で筒状に成形された筒状壁を有し、前記筒状壁にて前記封口板および前記電極端子を保持させたことを特徴とする請求項1に記載の密閉型電気化学デバイス用封口体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1から
図4は、絶縁体5
で電極端子2および封口板1
を保持させて、金属材でできた封口板1の透孔11に電極端子2を熱可塑性合成樹脂材のガスケット4で一体に成形してできたガスケット部3を有する密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。封口板1はアルミニウムやステンレスなどの金属材でできており、透孔11が形成されている。この透孔11の形状は円形または矩形で、図においてはほぼ真円形を示す。また、電極端子2は、上端に外部電気接続子との接続部を有し、正極また負極となるように、アルミニウムまたは銅でできた円柱または角柱の棒状となっており、封口板1の透孔11の部位において封口板1の上面および下面から突出できる大きさで形成されており、外周面21
の下方に環状の凹所23が形成されている。この電極端子2の外周面21は封口板1の透孔11の部位においてガスケット部3により封口板1と電気的に絶縁され密着接合されている。このガスケット部3は、熱可塑性合成樹脂材のガスケット4と、電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない環状の絶縁体5とからなり、この絶縁体5はガスケット4に内蔵されている。ガスケット4は上端と下端と周壁とで円柱形または角柱形で、その熱可塑性樹脂材としては、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂が例示できる。
【0014】
絶縁体5
には、
図3および
図4に示すように、両端が開口して中空部511を有する筒状壁51が形成されている。この絶縁体5の筒状壁51の形状は封口板1の透孔11の形状に対応して円筒形または角筒形で、その外周面は封口板1の透孔11の内周面に接触し、電極端子2と離間してその外周面21を包囲しており、中空部511の大きさは電極端子2の外周面21よりも大きい。また、この絶縁体5の筒状壁51の下端には外側方向に突き出した環状の外側突片52が形成されており、この外側突片52は封口板1の透孔11の部位よりも外方に配置するとともに、中空部511内に環状に突出した内方端521が電極端子2の凹所23に挿入できるように環状の保持手段が形成されている。さらに、筒状壁51の上端には外側方向に突き出した環状の
突き出し片512が形成されており、この
突き出し片512は封口板1の透孔11の部位よりも少し外方に配置しており、その突き出し長さは、筒状壁51の下端に形成した外側突片52よりも短く、
突き出し片512の端縁を内側方向に押圧させることにより封口板1の透孔11の大きさよりも小さくなるように設定されることにより、
突き出し片512の端縁は外側突片52の内方端521と同様に環状の保持手段となる。このような構成により絶縁体5は、
図1に示すように、その筒状壁51が封口板1の透孔11と電極端子2の外周面21との間で、電極端子2の外周面21を包囲しており、下端の外側突片52はその内方端521がガスケット4の下端で電極端子2の凹所23に保持され、さらに上端の
突き出し片512はその端縁が封口板1の上面に保持されている。この絶縁体5の素材は電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない環状の素材であり、フェノール系樹脂およびエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材およびセラミック材などが例示できる。なお、外側突片52は筒状壁51の下端に形成されているが、上端に形成してもよい。
【0015】
次に、ガスケット4と絶縁体5とからなるガスケット部3が金属材でできた封口板1および電極端子2に一体に成形する方法を説明する。先ず、射出成形型(図示せず)の下型に封口板1と封口板1の透孔11の部位で絶縁体5の筒状壁51の上端の
突き出し片512を内側方向に押圧しながら筒状壁51の外周面を封口板1の透孔11の内周面に当接させて
突き出し片512の端縁(保持手段)は封口板1の上面に保持させるようにするとともに、この絶縁体5の下端の外側突片52の内方端521(保持手段)を電極端子2の凹所23に挿入させる。次に、上型と下型とを閉じて、上型に設けたゲートから溶融した熱可塑性樹脂材を注入して後、冷却し、上型と下型とを開いて、封口板1にガスケット部3が一体に成形された封口体を取り出す。このようにして、絶縁体5は封口板1の透孔11において電極端子2の外周面21から離間して封口板1の透孔11に接触され、封口板1の上面に保持されるとともに電極端子2の凹所23に保持させた密閉型電気化学デバイス用封口体が得られ。このようにしてできた封口体にはガスケット4が電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない絶縁体5を内蔵しているガスケット部3を有するので、封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても、熱溶融もしくは熱溶解せずに絶縁体5が残りその保持手段(外側突片52の内方端521および
突き出し片512の端縁)により電極端子2と封口板1とを接触させにくく保持して電気的短絡を阻止することができる。なお、筒状壁51はその外周面は閉じた環状壁を図示しているが、複数個の板材を接触させないように環状に離間して配列する筒状とすることにより、上記一体成形する際に射出成形型内で溶融した熱可塑性合成樹脂材の流動性が向上する。
【0016】
図5は、封口板1に2個の透孔11が離間して形成され、それぞれの透孔11に実施形態1のガスケット部3を有する封口体を設け、透孔11の間に防爆弁9が設けられている密閉型電気化学デバイスを示す。10は、一端が開口した角筒状または円筒状の本体で、アルミニウムやステンレスなどの金属材でできている。この本体10の開口端は前記封口体を有する封口板1で閉蓋されて、本体10の開口端と封口板1の外周縁とはレーザなどの接合部材Aにより接合されて本体10は封口板1で密閉されている。この封口板1で密閉された本体10の内部には電解液6および電極体7が収納されている。この電極体7は、リード板81、82により各封口体の電極端子2、2の下端と電気接続されている。なお、この実施形態1においては、封口板1に2個の透孔11が形成されて2個の電極端子2で正極および負極となる密閉型電気化学デバイスを示すが、封口板1に1個の透孔11が形成されて1個の電極端子2を正極または負極とする密閉型電気化学デバイスでもよい。密閉型電気化学デバイスの電極端子2が2個のタイプであろうと1個のタイプであろうと、それぞれの透孔11に形成されている封口体は、長年の使用によるガスケット部3と封口板1および電極端子2との間の気密性の劣化を防ぎ、電解液6が外部へ漏れ出にくくすることができるとともに、封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても、残された絶縁体5により電極端子2と封口板1とを接触させにくく保持して電気的短絡を阻止することができる。
【0017】
(実施形態2)
図6から
図9は、絶縁体5の異なる実施形態を示し、絶縁体5
で電極端子2および封口板1
を保持させて、金属材でできた封口板1の透孔11に電極端子2を熱可塑性合成樹脂材のガスケット4で一体に成形してできたガスケット部3を有する密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。
【0018】
絶縁体5
には、
図8および
図9に示すように、上端が開口して中空部511を有する筒状壁51が形成されている。この絶縁体5の筒状壁51の形状は封口板1の透孔11の形状に対応して円筒形または角筒形で、電極端子2の外周面21を包囲しており、その高さは封口板1の厚さよりも大きく、外周面の形状は封口板1の透孔11の内周面よりも小さい。絶縁体5の下端には、筒状壁51の内周面から内側方向に突出した端面を有するように環状の内側突片53が形成されており、この内側突片53
は連続した環状でもよいが、ガスケット5の熱可塑性樹脂
を充填しやすくなるように複数個(
図7においては4個)が空間部581を介して離間して環状に配置されている。この内側突片53の上面および端面にはそれぞれ複数個の小突起54および小突起55が形成されて保持手段となる。これら保持手段となる小突起54、55の形状は円錐形または球形で先端が点接触のような部分接触させる形状であればよい。この絶縁体5の筒状壁51の内周面で囲まれた中空部511の大きさは電極端子2の外周面21よりも大きい。また、絶縁体5の環状の内側突片53の厚さは筒状壁51の厚さと同等で、この内側突片53の突出量はその端面に形成された小突起55が電極端子2の段部22の外周面に部分接触するに至る長さである。さらに、筒状壁51の上端には、筒状壁51から外側方向に突出するように環状の外側突片56が形成されている。この外側突片56は複数個(
図7においては4個)が空間部582を介して離間して環状に配置されているが、連続した環状でもよい。また、外側突片56の下面には下方に突出する複数個の小突起57が形成されて保持手段となる。この保持手段となる小突起57の形状は円錐形または球形で先端が点接触のような部分接触させる形状であればよい。この絶縁体5の素材は実施形態1と同じでフェノール系樹脂およびエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材およびセラミック材などが例示する電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない素材である。
【0019】
このように形成された絶縁体5は、
図6および
図7に示すように、筒状壁51の内側突片53の小突起54および55を電極端子2の外周面21で下側の段部22に部分接触させ、外側突片56の小突起57を封口板1の上面の凹所12に部分接触させて
なり、実施形態1と同様に合成樹脂材のガスケット4にて封口板1および電極端子2と一体に成形して絶縁体5を内蔵したガスケット部3を有する封口体が形成されている。このように、ガスケット4は絶縁体5を
内蔵しているので、封口体が高熱の熱的応力を受けることによりガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても熱溶融もしくは熱溶解せずに残されている絶縁体5の保持手段(小突起54、55、57)により、電極端子2と封口板1とを接触させにくく保持して電気的短絡を阻止している。また、内側突片53および外側突片56は連続していない環状で、空間部581、582を介して離間して環状に配置されているので、ガスケット4の熱可塑性樹脂材が封口板1および電極端子2に充填されやすく熱可塑性樹脂材の成形時の流動性が向上して、密着性が向上する。さらに
、小突起54、55、57は、保持手段となって接触面積を少なくするように電極端子2と部分接触されているので、電極端子2から封口体が高熱の熱的応力を受けても絶縁体5の受熱を少なくすることができ、絶縁体5が部分接触されている部位にガスケット4の熱可塑性樹脂利が充填されやすく熱可塑性樹脂材の成形時の流動性が向上する。この場合、封口板1の上面には透孔11と連通し透孔11よりも大きな凹所12が形成されており、この凹所12に外側突片56の小突起57が部分接触されてガスケット4の熱可塑性樹脂材が充填されているが、凹所12は形成されていなくてもよい。このように形成された封口体は実施形態1と同様に
図5に示す密閉型電気化学デバイスにもちいられる。なお、内側突片53は電極端子2の下方の部位に形成されているが、上方の部位でもよい。また、外側突片54は電極端子2の上方の部位に形成されているが下方の部位でもよい。さらには内側突片53および外側突片5は同一平面上に形成されるようにしてもよい。
【0020】
(実施形態3)
図10から
図12は、絶縁体5の異なる実施形態を示し、絶縁体5が電極端子2に保持され封口板1の下面に接触されて、金属材でできた封口板1の透孔11に電極端子2を熱可塑性合成樹脂材のガスケット4で一体に成形してできたガスケット部3を有する密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。
【0021】
絶縁体5はその
筒状壁61が実施形態1および2に示すような封口板1の透孔11と電極端子2の外周面21との間の部位にはなく、電極端子2の外周面21で下方側の段部22の部位にある。この絶縁体5は、
図11および
図12に示すように、円板状または角板状の突片59とこの突片59の外周面から上方に突出する円筒状または角筒状の筒状壁61とを有し、突片59は電極端子2の段部22の部位を
取り囲むことができるようにして電極端子2の部位を包囲している。この突片59の中央には端子挿通孔591が形成されており、この端子挿通孔591の周辺には複数個(図では4個)の樹脂埋め込み孔60が形成されている。この樹脂埋め込み孔60は下側が大きな孔で上側が小さな孔となった段状の孔形状である。また、実施形態2のように、端子挿通孔591の内周面には複数個の小突起55が形成されて保持手段となり、端子挿通孔591の近傍位置で突片59の上面には複数個の小突起54が形成されて保持手段となる。また、筒状壁61の上端には上方に突出した複数個の小突起62が形成されて保持手段となる。この保持手段となる小突起54、55、62の形状は円錐形または球形で先端が点接触のような部分接触させる形状であればよい。
【0022】
次に、封口板1は実施形態1と同様に透孔11が形成されているが、さらに封口板1の下面で透孔11の周辺に環状の凹溝13が形成されており、電極端子2を封口板1の透孔11に配置した状態で、絶縁体5の突片59の小突起54、55を電極端子2の段部22に部分接触させて、絶縁体5を電極端子2に仮保持させて、絶縁体5の筒状壁61の小突起62を封口板1の下面の凹溝13に部分接触させるようにして、実施形態1と同様にガスケット4の合成樹脂材にて封口板1および電極端子2と一体に成形することにより、絶縁体5の樹脂埋め込み孔60にはガスケット4の端部(下端)41にその合成樹脂材が充填されて、筒状壁61を有する絶縁体5を内蔵したガスケット部3を有する封口体が形成されている。この場合、
図10においては、絶縁体5はガスケット部3の前記端部に露出しているが、露出させずにガスケット部3の端部と封口板1の下面との間に介在させてもよい。また、ガスケット部3の端部に形成されている絶縁体5の大きさは絶縁体5の外周面とガスケット4の周壁とが一致する大きさでガスケット部3の端部の大きさと同程度とすることにより、電極端子2の保持が強くなる。
【0023】
この封口体の形成により、封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても、熱溶融もしくは熱溶解せずに残されている絶縁体5の保持手段(小突起54、55、62)により電極端子2と封口板1との接触をさせにくく保持して電気的短絡を阻止することができる。このように形成された封口体は実施形態1または2または3と同様に
図5に示す密閉型電気化学デバイスにもちいられる。なお、絶縁体5は電極端子2の下方の部位に形成されているが、上方の部位に形成してもよい。
【0024】
(実施形態4)
図13から
図24は、絶縁体5の異なる実施形態を示し、絶縁体5が上下に分割されたガスケット4A、4Bが電極端子2のかしめにより結合されるようにしてできたガスケット部3を有する密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。
【0025】
図15(C)および
図17において、封口板1はアルミニウムやステンレスなどの金属材でできており、透孔11が形成されている。この透孔11の形状は円形または矩形で、図においてはほぼ真円形を示し、その下面で透孔11の周囲には凹所14が透孔11と連通して形成されている。また、電極端子2は、
図15(a)に示すように上端に外部電気接続子との接続部を有し、正極また負極となるように、アルミニウムまたは銅でできた円柱または角柱で下端22はかしめ可能な形状となっており、下方の位置において押圧してかしめができるリベット形状で、上端の頭部24から下方に向かう外周面21で頭部24の近傍には環状の凹所23が形成されている。電極端子2の全体の長さは封口板1の透孔11および凹所14の部位において封口板1の上面および下面から突出できる大きさである。この電極端子2の外周面21はかしめ固着により、封口板1の透孔11の部位においてガスケット部3により封口板1と電気的に絶縁され密着接合されている。このガスケット部3は熱可塑性樹脂材でできたガスケットと電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない絶縁体5とからなる。
【0026】
図15(b)、
図15(d)、
図16および
図18において、ガスケット
部3は、上側ガスケット4Aと下側ガスケット4Bとからなり、その結合により円柱形または角柱形状となり、その熱可塑性樹脂材としては、実施形態1と同様にポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂が例示できる。また、絶縁体5は、上側ガスケット4Aと下側ガスケット4Bとに分割して
それぞれに形成されており、その素材は実施形態1と同様に電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない素材であり、フェノール系樹脂およびエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材およびセラミック材などが例示できる。上側ガスケット4Aは上端部42を有しその中央に端子挿入孔421が形成されており、その下面で端子挿入孔421の部位において絶縁体5の一部が形成されている。上側ガスケット4Aにおける絶縁体5は下端が開口した筒状壁63と、中央部に保持手段となる端子挿入孔631を有する端面64とからなる。筒状壁63の外周は、電極端子2の外周面21を包囲して封口板1の透孔11に密着接合される大きさであり、筒状壁63には中空部632を有し、この中空部632の大きさは、下側ガスケット4Bの突壁44が密着接合される大きさである。下側ガスケット4Bは上側ガスケット4Aと同じ外周形状を有する下端部43とその中央に端子挿入孔431を有する筒状の突壁44とからなる。この下側ガスケット4Bの下端部43の上面には突壁44を取り囲む板状の突片65が形成されている。この上側ガスケット4Aと下側ガスケット4Bとを結合することにより、
図23に示すように、絶縁体5は筒状壁63と、端面64と、突片65とで構成されている。
【0027】
上側ガスケット4Aおよび下側ガスケット4Bに絶縁体5を形成してガスケット部3を得るには、予め成形されてできた絶縁体5を射出成形型で上側ガスケット4Aおよび下側ガスケット4Bのそれぞれの合成樹脂材と一体に成形すればよい。または絶縁体5が配置できるように溝加工をした上側ガスケット4Aおよび下側ガスケット4Bに絶縁体5を載置または接合させてもよい。
【0028】
次に、
図15、
図20、
図21および
図22を参照して、電極端子2を金属材でできた封口板1の透孔11および凹所14に、ガスケット部3を介してかしめ固着する方法について説明する。先ず、
図15(a)に示す電極端子2を
図15(b)に示す上側ガスケット4Aの上端部42の端子挿入孔421および絶縁体5の端子挿入孔631に挿入して絶縁体5の端面64の先端
である端子挿入孔631の部位を保持手段とし電極端子2の凹所23に挿入させて、
図20に示すように電極端子2と上側ガスケット4Aとが一体化されて結合される。この場合、電極端子2を絶縁体5の端子挿入孔631に挿入する際、絶縁体5の端面64の先端
である端子挿入孔631の部位は突出して損傷しやすいので、この端面64の表面に熱可塑性樹脂またはシリコンゴム材などで被覆するか、柔軟なフェノール系樹脂をもちいてもよい。また、上側ガスケット4Aに予め成形されてできた絶縁体5を射出成形型で上側ガスケット4Aの合成樹脂材と一体に成形する方法を採用すれば、電極端子2と上側ガスケット4Aとを一体に成形することができるので、上記のような挿入作業は不要となる。次に、
図15(C)に示す封口板1の上面側の透孔11から下面側の凹所14に、上側ガスケット4Aを有する電極端子2を挿入して、
図21に示すように電極端子2と上側ガスケット4Aとが封口板1に一体化されて結合される。この場合、上側ガスケット4Aに予め成形されてできた絶縁体5を射出成形型で上側ガスケット4Aの合成樹脂材と一体に成形する方法を採用すれば、電極端子2および封口板1を上側ガスケット4Aとを一体に成形することができるので、上記のような挿入作業は不要となる。さらに、電極端子2および封口板1を有する上側ガスケット4Aの下面に下側ガスケット4Bの突壁44を透孔11に挿入し、凹所14に下端部43の上面を挿入し、電極端子2
を下側ガスケット4Bの端子挿入孔431から突出させて、
図15(e)に示す端子挿入孔811を有する金属材でできたワッシャ8を下側ガスケット4Bの下端部43に配置するようにして、端子挿入孔811にこの電極端子2を挿入して電極端子2の下端22を上端の頭部24と押圧することにより、
図22に示すように電極端子2の下端22においてワッシャ8を圧縮し、上側ガスケット4A
と下側ガスケット4Bとは密着接合するとともに封口板1とも密着接合する。その際、電極端子2の押圧作業により電極端子2の外周面21は上側ガスケット4Aおよび下側ガスケット4Bの端子挿入孔421、431にも密着接合される。この場合、ワッシャ8を下側ガスケット4Bと分離して下側ガスケット4Bの下端部43に配置するようにしているが、後述する実施形態8に示すワッシャ8を下側ガスケット4Dと一体に形成されるように、ワッシャ8を下側ガスケット4Bと一体に成形してもよい。このようにして、封口板1の透孔11および凹所14において電極端子2の外周面21と封口板1との間に電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない環状の絶縁体5が内蔵された密閉型電気化学デバイス用封口体が得られ、封口体にはガスケット部3が電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない絶縁体5を内蔵しているので、封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケットが熱溶融もしくは熱溶解してもこの絶縁体5の保持手段(上側ガスケット4Aにおける絶縁体5の端面64の先端)により、電極端子2と封口板1とを接触させにくく保持して電気的短絡を阻止することができる。
【0029】
図24は、封口板1に2個の透孔11が離間して形成され、それぞれの透孔11に実施形態4の封口体を設け、透孔11の間に防爆弁9が設けられている密閉型電気化学デバイスを示す。10は、一端が開口した角筒状または円筒状の本体で、アルミニウムやステンレスなどの金属材でできている。この本体10の開口端は前記封口体を有する封口板1で閉蓋されて、本体10の開口端と封口板1の外周縁とはレーザなどの接合部材Aにより接合されて本体10は封口板1で密閉されている。この封口板1で密閉された本体10の内部には電解液6および電極体7が収納されている。この電極体7は、リード板81、82により各封口体の電極端子2、2の下端のワッシャ8と電気接続されている。なお、この実施形態4においては、
図5に示す密閉型電気化学デバイスと同様に、封口板1に2個の透孔11が形成されて2個の電極端子2で正極および負極となる密閉型電気化学デバイスを示すが、封口板1に1個の透孔11が形成されて1個の電極端子2を正極または負極とする密閉型電気化学デバイスでもよい。密閉型電気化学デバイスの電極端子2が2個のタイプであろうと1個のタイプであろうと、それぞれの透孔11に形成されている封口体は、長年の使用によるガスケット部3と封口板1および電極端子2との間の気密性の劣化を防ぎ、電解液6が外部へ漏れ出にくくすることができるとともに、封口体が高熱の熱的応力を受けて上側ガスケット4Aと下側ガスケット4Bとからなガスケットが熱溶融もしくは熱溶解しても、残された絶縁体5により電極端子2と封口板1とを接触させにくく保持して電気的短絡を阻止することができる。
【0030】
(実施形態5)
図25から
図28は、絶縁体5の異なる実施形態を示し、実施形態1から4に示す成形してできた絶縁体とは異なり、絶縁層でできた絶縁体をもちいて電極端子の外周面と封口板との間の小さな空間部においても電気的短絡を防止させた密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。
【0031】
図27において、封口板1は実施形態1と同じでアルミニウムやステンレスなどの金属材でできており、透孔11が形成されている。この透孔11の内面を被覆する曲面絶縁層部66
と透孔11の周縁の上下面を被覆する平面絶縁層部661とからなる絶縁層でできた絶縁体5が形成されている。この絶縁体5の素材は、電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない環状の素材であり、実施形態1と同様にフェノール系樹脂およびエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材およびセラミック材などが例示できるが、封口板1の透孔11の内面および上下面に絶縁層を形成する方法としては封口板1との一体成形や封口板1へのセラミック材の塗装などがあり、図においては、熱硬化性樹脂との一体成形を
例示している。この場合、絶縁体5の曲面絶縁層部66および平面絶縁層部661はガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても絶縁体5が封口板1の透孔11の部位に残るようにするためにそれぞれ封口板1の透孔11の内面および上下面に強固に密着接合されていることが好ましい。
【0032】
図25および
図26において、電極端子2は、正極また負極となるように、アルミニウムまたは銅でできた円柱または角柱の棒状で、その外周面21よりも大きな形状の頭部24を有する。また、封口板1に形成された絶縁体5は、実施形態1と同様に、熱溶融もしくは熱溶解がしない電気絶縁材でできており、ガスケット4の熱可塑性樹脂材で電極端子2と一体に成形することにより、絶縁体5がガスケット4に内蔵されてガスケット部3とし、このガスケット部3により、電極端子2の外周面21は封口板1の透孔11の部位に
おいて、封口板1と電気的に絶縁され密着接合されている。また、このガスケット部3におけるガスケット4の熱可塑性樹脂材としては、実施形態1と同様にポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂が例示できる。
【0033】
このように形成された封口体は実施形態1と同様に
図5に示す密閉型電気化学デバイスにもちいられる。この場合、絶縁体5は封口板1の透孔11の部位に形成されているので、
図25に示すように、封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても絶縁体5が封口板1の透孔11の部位に残っているので、電極端子2が、例えば、矢印P方向すなわち密閉型電気化学デバイスの本体内に動いても電極端子2の頭部24の下面が封口板1に
接触する状態になって電気的短絡されようとしても、残っている絶縁体5により電極端子2と封口板1との電気的絶縁がされ、電気的短絡を阻止することができる。
【0034】
(実施形態6)
図29および
図30は、絶縁体5の異なる実施形態を示し、実施形態5と同様に、絶縁層でできた絶縁体であるが、電極端子2に形成された密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。
【0035】
図30において、電極端子2は、実施形態5と同様に正極また負極となるように、アルミニウムまたは銅でできた円柱または角柱の棒状で、その外周面21よりも大きな形状の頭部24を有するが、この頭部24の下面および外周面21を被覆する絶縁層でできた絶縁体5が形成されている。この電極端子2の外周面21には環状または複数個分散した凹所25が形成されて、絶縁層の絶縁体5がより強固に密着接合をさせているが、この凹所25は形成されていなくてもよい。また、この絶縁体5の素材は、電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない環状の素材であり、実施形態1と同様にフェノール系樹脂およびエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材およびセラミック材などが例示できる。頭部24の下面には平面絶縁層部671が形成されており、外周面21には曲面絶縁層部67が形成されているが、その絶縁層を形成する方法としては電極端子2との一体成形や電極端子2へのセラミック材の塗装などがあり、図においては、熱硬化性樹脂との一体成形を
例示している。
【0036】
図29および
図30において、電極端子2に形成された絶縁体5は、実施形態1と同様に熱可塑性樹脂材ガスケット4で電極端子2と一体に成形することにより、熱溶融もしくは熱溶解がしない電気絶縁材でできた絶縁体5をガスケット4に内蔵させて、ガスケット部3とし、このガスケット部3により電極端子2の頭部24の下面がガスケット4の上端45にまた電極端子2の外周面21は封口板1の透孔11の部位において、電気的に絶縁され密着接合されている。また、このガスケット部3におけるガスケット4の熱可塑性樹脂材としては、実施形態1と同様にポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂が例示できる。
【0037】
このように形成された封口体は実施形態1と同様に
図5に示す密閉型電気化学デバイスにもちいられる。この場合、絶縁体5は電極端子2に形成されているので、
図29に示すように、封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解しても絶縁体5が電極端子2に残り、電極端子2が例えば、実施形態5のように矢印P方向すなわち密閉型電気化学デバイスの本体内に動いて電極端子2の頭部24の下面が封口板1に
接触する状態になって電気的短絡されようとしても、残っている絶縁体5により電極端子2と封口板1との電気的絶縁がされ、電気的短絡を阻止することができる。なお、この実施形態6においては、電極端子2に形成された絶縁層の絶縁体5がガスケット4の熱溶融もしくは熱溶解時に電極端子2に残ることにより、電気的短絡を阻止するが、実施形態5のような封口板1の透孔11の部位に形成した絶縁体5をもちいて電極端子2と封口板1との両方に絶縁体5を形成してもよい。
【0038】
(実施形態7)
図31は、実施形態5に示す絶縁体5をもちいて密閉型電気化学デバイス用封口体が高熱の熱的応力を受けてガスケット4が熱溶融もしくは熱溶解する場合の絶縁体5の異なる作用効果を示す。
【0039】
図31において、封口板1は実施形態5と同じで透孔11の内面を被覆する曲面絶縁層部66
と透孔11の周縁の上下面を被覆する平面絶縁層部661とからなる絶縁体5が形成されている。一方、電極端子2の頭部24は実施形態1のように大きくはないが、電極端子2が矢印P方向(
図25)以外の方向、例えば、矢印Q方向に動いて電極端子2の外周面21が封口板1に
接触する状態になって電気的短絡されようとしても、残っている絶縁体5により電極端子2と封口板1との電気的絶縁がされ、電気的短絡を阻止することができる。
【0040】
(実施形態8)
図32から
図34は、絶縁体5の異なる実施形態を示し、絶縁層でできた絶縁体5が封口板1に形成されて、実施形態4のように金属材でできた封口板1の透孔11に電極端子2を熱可塑性合成樹脂材のガスケットを介してかしめ固着されるようにしてできたガスケット部3を有する密閉型電気化学デバイス用封口体を示す。
【0041】
図34において、封口板1はアルミニウムやステンレスなどの金属材でできており、透孔11が形成されている。この透孔11の形状は円形または矩形で、
図34(C)に示すように、下面に凹所14が透孔11と連通して形成されている。この封口板1にはその透孔11の内面を被覆する曲面絶縁層部66
と透孔11の周縁の上下面を被覆する平面絶縁層部661とからなる絶縁体5が形成されており、平面絶縁層部661の下端側は封口板1の下面の凹所14の部位にあり、この凹所14の外周方向には空間部141を残している。この絶縁体5の素材は、電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない素材であり、実施形態1と同様にフェノール系樹脂およびエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂材およびセラミック材などが例示できるが、その絶縁層を形成する方法としては封口板1との一体成形や封口板1へのセラミック材の塗装などがあり、図においては、熱硬化性樹脂との一体成形
を例示している。また、ガスケットは
図34(b)に示す上側ガスケット4Cと
図34(d)に示す下側ガスケット4Dとからなり、その結合により円柱形または角柱形状となる。その熱可塑性樹脂材としては、実施形態1と同様にポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂が例示できる。
図34(b)において、上側ガスケット4Cは上端部46を有し、その上面には端子挿入孔461が形成されており、下面には端子挿入孔461と連通した凹所462が形成された段状の孔形状となっている。
図34(d)において、下側ガスケット4Dは上側ガスケット4Cと同じ外周形状を有する下端部47とその中央に端子挿入孔471を有する筒状の突壁48とからなり、この下側ガスケット4Dの下端部47の上面には突壁48を取り囲む環状の凹所49が形成されている。また、下側ガスケット4Dの下端部47の下面には端子挿入孔811を有する金属材でできたワッシャ8が一体に形成されている。さらに、電極端子2は、
図34(a)に示すように、実施形態4と同様に、上端に外部電気接続子との接続部を有し、正極また負極となるように、アルミニウムまたは銅でできた円柱または角柱のリベットで、下端22はかしめ可能な形状となっている。
【0042】
図32および
図33において、電極端子2を上側ガスケット4Cの端子挿入孔461に挿入し、上側ガスケット4Cの凹所462に封口板1に形成した絶縁体5の平面絶縁層部661を挿入し、封口板1の透孔11に下側ガスケット4Dの突壁48を挿入してその凹所49に絶縁体5の平面絶縁層部661の下端が収容するように凹所49の外周の空間部141に挿入させた状態で電極端子2の下端22を上端の頭部24と押圧することにより、電極端子2の下端22においてワッシャ8を圧縮し、上側ガスケット4C
と下側ガスケット4Dとは密着接合するとともに封口板1とも密着接合する。
【0043】
このようにして、封口板1の透孔11および凹所14の部位において電極端子2の外周面21と封口板1との間に電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない絶縁体5が内蔵された密閉型電気化学デバイス用封口体が得られ、この封口体にはガスケット部3が電気絶縁材で熱溶融もしくは熱溶解がしない絶縁体5を有しているので、封口体が高熱の熱的応力を受けて上側ガスケット4Cおよび下側ガスケット4Dが熱溶融もしくは熱溶解しても絶縁体5が封口板1の透孔11および凹所14の部位に残っているので、実施形態5または7のように電極端子2が、例えば、矢印PまたはQ方向に動いても電極端子2が封口板1に
接触する状態になって電気的短絡されようとしても、残っている絶縁体5により電極端子2と封口板1との電気的絶縁がされ、電気的短絡を阻止することができる。
【0044】
このようにしてできた封口体は,実施形態4と同様に、
図24に示す密閉型電気化学デバイスにもちいられ、密閉型電気化学デバイスの電極端子2が2個のタイプであろうと1個のタイプであろうと、それぞれの透孔11に形成されているので、長年の使用によるガスケット部3と封口抜1および電極端子2との間の気密性の劣化を防ぎ、電解液6が外部へ漏れ出にくくすることができるとともに、封口体が高熱の熱的応力を受けて上側ガスケット4Cと下側ガスケット4Dとからなるガスケットが熱溶融もしくは熱溶解しても、
封口板1の透孔11に残された絶縁体5により
封口板1の透孔11における電極端子2と接触させにくくして電気的短絡を阻止することができる。