特許第6268919号(P6268919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268919
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20180122BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20180122BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20180122BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180122BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C09J133/08
   C09J133/10
   C09J175/04
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-222853(P2013-222853)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-86231(P2015-86231A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】諸田 雅紀
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−110183(JP,A)
【文献】 特開平09−251272(JP,A)
【文献】 特開平05−059338(JP,A)
【文献】 特開平04−031481(JP,A)
【文献】 特開平03−292379(JP,A)
【文献】 特開平01−261479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸2−エチルヘキシルを25〜89.9重量%、アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを10〜60重量%およびカルボキシル基含有モノマーを含むその他モノマーを0.1〜15重量%含み、かつ前記アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルよりも前記アクリル酸2−エチルヘキシルを多く含むモノマー混合物を溶液重合してなる共重合体、
ならびにイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物およびアミン系化合物(ただし、エチレンイミン系化合物を除く)からなる群より選択される硬化剤を含む、粘着剤。
【請求項2】
前記硬化剤が、イソシアネート系化合物およびエポキシ系化合物からなる群より選択され、さらに、炭素数4〜20のアルキル基を有する単官能アルコールを含む、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
基材、請求項1または2に記載の粘着剤から形成してなる粘着剤層を備えた、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック等への貼り付けに好適に使用できる粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることからラベルや接着用として幅広い分野で使用されている。例えば、粘着シートをプラスチック等の容器のラベルとして使用することは一般的であるが、当該プラスチック容器がプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂である場合、オレフィン樹脂は、極性が低いため粘着シートを貼り付けたときの粘着力が低くラベルが剥がれやすいという問題があった。またプラスチック容器の内容物が、食用油または化粧品等の油脂を含む場合、プラスチック容器の使用によりラベル貼り付け面に油脂が浸透し、ラベルに浮きや剥がれが生じる場合があった。また水分を多く含む食品や化粧品等も多く粘着シートには、水分が付着した場合、ラベルに浮きや剥がれが生じる場合があった。
【0003】
そこで、特許文献1には、水分散型重合体と無機粒子を含む粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−117053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の粘着剤は、耐油脂性は有していたがポリオレフィン樹脂への粘着力が低く、また耐水性が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、ポリオレフィン樹脂に対する密着性が良好で、油脂や水が付着した場合にも浮きや剥がれが生じにくい粘着シートを得ることができる粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粘着剤は、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルおよびアルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを特定の範囲で含むモノマー混合物を溶液重合して得た共重合体、ならびに硬化剤を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明によれば、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルとアルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを使用したことで、粘着シートの粘着剤層は、接着界面に油脂および水を侵入させにくい特性が得られた上、ポリオレフィン樹脂に対する良好な粘着力も得ることが出来た。
【0009】
本発明により、ポリオレフィン樹脂に対する密着性が良好で、油脂や水が付着した場合にも浮きや剥がれが生じにくい粘着シートを得ることができる粘着剤を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘着剤は、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルおよびルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを特定の範囲で含むモノマー混合物を溶液重合して得た共重合体、ならびに硬化剤を含む。具体的には、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルを25〜89.9重量部、アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを10〜60重量%およびその他モノマーを0.1〜15重量%含むモノマー混合物を溶液重合してなる共重合体と、硬化剤とを含むことが好ましい。本発明の粘着剤は、粘着シートに加工して使用することが好ましい。なお、本明細書で粘着シート、粘着フィルム、および粘着テープは同義語である。
【0011】
本発明において共重合体は、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルを25〜89.9重量部、アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを10〜60重量%およびその他モノマーを0.1〜15重量%含むモノマー混合物を溶液重合して得ることができる。共重合体の重合方法は、耐油脂性および耐水性の両立の点で、水中で共重合する乳化重合および懸濁重合以外の重合であり溶液重合が好ましい。なお本明細書で溶液重合は、紫外線重合、塊状重合等の溶媒に水を含まない重合方法を包含している。
【0012】
溶液重合に使用するモノマーは、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステル、アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステル、その他モノマーであるが、その他モノマーは、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルおよびアルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステル以外のモノマーである。
本発明では、アルキル基の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルおよびアルキル基の炭素数がアルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルを併用することで、耐油脂性および耐水性の両立することで食用油や化粧品等の付着に耐えられる、ならびにポリオレフィン樹脂に対する良好な粘着力を実現できた。
一般に(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分としたアクリル共重合体を含む粘着剤を使用した粘着シートは、ポリオレフィン樹脂等の極性が低い被着体に貼り合せる場合、粘着剤層とポリオレフィン樹脂との極性が大きく異なるたことで高い粘着力が得られないことが多い。高い粘着力を得るためには粘着剤層と被着体の極性と近づけることが必要である。そこで本発明では、アルキル基の炭素数が長いアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルを併用することで、粘着剤の極性をポリオレフィン樹脂の極性に近づけ、これにより粘着剤層の凝集力が向上することでポリオレフィン樹脂に対する良好な粘着力が得られた。また、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が長いことで、粘着剤層が疎水性になることで耐水性が向上した。さらに粘着シートが油脂に接したとき粘着剤層が油脂を内部に取り込み、粘着剤層と被着体の接着界面に油脂を残留させ難くすることで、油脂が付着する環境でも粘着シートに浮きや剥離が生じ難くなった。
【0013】
本発明においてアルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルは、炭素数が6〜20の範囲にあることで粘着剤層の極性バランスおよび粘着力ならびに共重合性を両立しやすくなる。具体的には、例えば、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸イソオクタデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。アルキル鎖の構造は、直鎖構造、分岐構造、脂環構造のいずれの構造を有しても良い。なお前記アルキル鎖は8〜18が好ましい。さらに、これらの中でもアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクタデシルは、耐油脂性、耐水性および粘着力が優れるためより好ましい。これらのモノマーは、単独または2種以上を併用できる。
【0014】
アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、25〜89.9重量%を含むことが好ましく、40〜80重量%がより好ましい。25重量%以上を含むことで良好な粘着力が得やすくなる。また、89.9重量%以下を含むことで良好な凝集力が得やすくなる。
【0015】
アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数が6〜20の範囲にあることで粘着剤層の極性バランスおよび粘着力ならびに共重合性を両立しやすくなる。具体的には、例えばメタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸イソオクタデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸エイコシルなどが挙げられる。アルキル鎖の構造は、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれの構造を有しても良い。なお前記アルキル鎖は8〜18が好ましい。さらに、これらの中でもメタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシルは、耐油脂性、耐水性および粘着力の点からより好ましい。良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらのモノマーは、単独または2種以上を併用できる。
【0016】
アルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステルは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、10〜60重量%を含むことが好ましく、10〜50重量%がより好ましい。10重量%以上を含むことで粘着剤層の凝集力が向上するため良好な粘着力が得やすくなる。また、60重量%以下を含むことで適度な分子量の共重合体が得易くなる。
【0017】
前記その他モノマーは、アルキル鎖の炭素数が6〜20のアクリル酸アルキルエステルおよびアルキル鎖の炭素数が6〜20のメタクリル酸アルキルエステル以外の共重合可能なモノマーである。具体的には、反応性官能基含有モノマー、アルキル鎖の炭素数が1〜5の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香環含有モノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーおよびその他ビニルモノマーが好ましい。なお(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルを含む。
前記反応性官能基含有モノマーは、例えばカルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー等が好ましい。
【0018】
前記カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p−カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(EO付加モル数:2〜18)フタル酸アクリル酸エステル、フタル酸モノヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0019】
前記カルボキシル基含有モノマーは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、0.1〜15重量%を含むことが好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。0.1重量〜15重量%含むことで硬化剤との架橋密度を適切な範囲に調整し易くなる。
【0020】
前記水酸基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
【0021】
前記水酸基含有モノマーは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、0.1〜8重量%を含むことが好ましく、0.2〜6重量%がより好ましい。0.1〜8重量%含むことで硬化剤との架橋密度を適切な範囲に調整し易くなる。
【0022】
前記アミド結合含有モノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有した化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0023】
前記エポキシ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0024】
前記アミノ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルなどが挙げられる。
【0025】
前記アミド結合含有モノマー、前記エポキシ基含有モノマーおよび前記アミノ基含有モノマーは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、それぞれ0.1〜15重量部含むことが好ましい。
反応性官能基含有モノマーは、単独または2種以上を併用できる。
【0026】
前記アルキル鎖の炭素数が1〜5の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチルなどが挙げられる。
【0027】
前記アルキル鎖の炭素数が1〜5の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、1〜15重量部含むことが好ましい。
【0028】
前記芳香環含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ビフェニル、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0029】
前記芳香環含有モノマーは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、1〜15重量部含むことが好ましい。
【0030】
前記アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
前記アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、1〜15重量部含むことが好ましい。
【0032】
前記その他ビニルモノマーは、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。これら以外の共重合可能なモノマーを適宜選択することができる。。
【0033】
前記その他ビニルモノマーは、共重合に使用するモノマー混合物100重量%中、1〜15重量部含むことが好ましい。
【0034】
本発明の溶液重合で使用できる溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノール等が好ましい。これらは単独また2種類以上を適宜選択できる。
【0035】
前記溶液重合は、モノマー混合物の合計100重量部に対し重合開始剤を0.001〜1重量部加えて重合反応を行うことができる、通常、重合反応は、窒素気流下で、50℃〜90℃程度の温度で6時間〜20時間行うことができる。また、重合反応に連鎖移動剤を使用して共重合体の重量平均分子量を適宜調整することができる。
【0036】
本発明において重合体の重量平均分子量は、20万〜120万が好ましく、30万〜100万がより好ましく、40万〜80万がさらに好ましい。重量平均分子量を20万〜120万の範囲にすることで、粘着物性と塗工性のバランスを両立することができる。なお、本発明において重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0037】
前記連鎖移動剤は、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、グリシジルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、ハイドロキノン等が挙げられる。
【0038】
前記重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物が一般的である。
【0039】
前記アゾ系化合物は、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)等が挙げられる。
【0040】
前記有機過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
これら重合開始剤は単独または2種以上を併用できる。
【0041】
本発明において硬化剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、エチレンイミン系化合物、金属キレート系化合物、アミン系化合物などが好ましい。
【0042】
前記イソシアネート系化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのイソシアネートモノマーとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ビュレット体またはイソシアヌレート体、およびこれらイソシアネートモノマーと公知のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物、
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(コロネート2770:日本ポリウレタン工業社製)などの分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が、粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0043】
前記エポキシ系化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0044】
前記エチレンイミン系化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン等が挙げられる。
【0045】
前記金属キレート系化合物は、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。
【0046】
前記アミン系化合物は、例えばヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂およびメチレン樹脂などが挙げられる。
これら硬化剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0047】
前記硬化剤は、共重合体100重量部に対して、0.1〜15重量部を含むことが好ましく、0.2〜10重量部がより好ましい。0.1〜15重量部を含むと粘着剤層の凝集力と粘着力のバランスを取ることが容易になる。
【0048】
本発明の粘着剤は、さらにアルコールを含むことが好ましい。アルコールは、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれの構造を有しても良い。本発明の粘着剤は、アルコールを含むことで、粘着剤層の架橋密度の調整が容易になる。また、粘着剤層の極性をポリオレフィン樹脂の極性により近づけることが出来るためポリオレフィン樹脂に対する粘着力がより向上する。
【0049】
前記アルコールは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、イソデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、エイコサンアルコール、シクロヘキシルアルコール、イソボルネオールなどの脂肪族あるいは脂環族アルコール類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオールなどの脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,1,1−トリメチロールオクタン、1,1,1−トリメチロールノナン、1,1,1−トリメチロールデカン、1,1,1−トリメチロールウンデカン、1,1,1−トリメチロールドデカン、1,1,1−トリメチロールトリデカン、1,1,1−トリメチロールテトラデカン、1,1,1−トリメチロールペンタデカン、1,1,1−トリメチロールヘキサデカン、1,1,1−トリメチロールヘプタデカン、1,1,1−トリメチロールオクタデカン、1,1,1−トリメチロールナノデカン、1,1,1−トリメチロール−sec−ブタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ペンタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ノナン、1,1,1−トリメチロール−tert−トリデカン、1,1,1−トリメチロール−tert−ヘプタデカン、1,1,1−トリメチロール−2−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−2−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロールイソヘプタデカンなどのトリメチロール分岐アルカン類、トリメチロールブテン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,2,6−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等の3官能ポリオール類;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール等の4官能以上のポリオール類が挙げられ、これらの中でも特に2−エチルヘキシルアルコール、イソオクタデシルアルコールが好ましい。
アルコールは、炭素数4〜20のアルキル基を有する単官能アルコールがより好ましい。これらは、単独または2種以上を併用できる。
【0050】
前記アルコールは、共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部配合することが好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
【0051】
本発明の粘着剤は、さらに粘着付与樹脂を含むこともできる。前記粘着付与樹脂を含むと粘着力がより向上する。
【0052】
前記粘着付与樹脂は、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(油性フェノール樹脂)などが好ましい。これらは、単独または2種以上を併用できる。
【0053】
前記粘着付与樹脂は、共重合体100重量部に対して、1〜30重量部配合することが好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
【0054】
本発明の粘着剤は、さらにシランカップリング剤を含むこともできる。
【0055】
前記シランカップリング剤は、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0056】
本発明の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として各種樹脂、硬化触媒、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を配合しても良い。
【0057】
本発明の粘着剤は、非極性被着体の貼り付け用粘着剤として好適であるほか、一般ラベル・シール、粘着性光学フィルム、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0058】
本発明の粘着シートは、基材と、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。なお粘着剤層の基材と接しない面に剥離性シートを貼り合わせることはいうまでもない。
【0059】
前記粘着剤を塗工する際に、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできる。
【0060】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス、および木材等が好ましい。基材の形状は、板状およびフィルム状が選択できるが、取り扱いが容易であるフィルムが好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0061】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、、ポリアミド、ポリイミドのフィルム、エポキシなどが挙げられる。
【0062】
粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては硬化剤種、粘着剤層の厚さ、または溶剤種により、通常60〜160℃程度の熱風加熱ができる。
【0063】
粘着剤層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。0.1〜300μmの範囲にあることで粘着物性を適切な範囲に調整できる。
【0064】
本発明の粘着シートは、ポリプロピレンに対する粘着力が8N/25mmであることが好ましい。具体的には、23℃相対湿度50%の雰囲気下で粘着シートをポリプロピレン板に貼合せ、その24時間経過後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験における粘着力が8N/25mmであることが好ましく、10N/25mmがより好ましい。
【0065】
本発明の粘着シートの粘着剤層は、そのゲル分率が30〜80重量%であることが好ましく、40〜70重量%がより好ましい。ゲル分率が30〜80重量%であることで、耐油脂性、耐水性および粘着力をより高いレベルで両立できる。なお、本発明でゲル分率は、所定の大きさの粘着シートをSUSメッシュ(目開き:0.077mm、線径:0.05mm)に貼り付けた後、酢酸エチルに浸漬し、50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥後、下記数式(1)で算出した数値である。
数式(1) ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100
G1:酢酸エチルで抽出する前の粘着剤層の重量
G2:酢酸エチルで抽出・乾燥した後の粘着剤層の重量
【0066】
本発明の粘着シートは、ポリオレフィンを始めとするプラスチック、ガラス、ダンボール、および金属等といった高極性から低極性まで被着体を選ばずに様々な用途で使用できる。具体的には、食料品、化粧品、機械等の油脂や水が付着しやすい環境で使用させる用途でも好ましく使用できる。
【実施例】
【0067】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0068】
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル88部、メタクリル酸2−エチルヘキシル10部、アクリル酸2部、酢酸エチル55部、アセトン5部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記述する。)0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル65部を加え、重量平均分子量が67万の共重合体溶液を得た。
【0069】
(合成例2〜15)
モノマーの種類及び配合量を表1の記載に従った他は、合成例1と同様に行うことで合成例2〜15の重合体を得た。なお表1中の配合量は、重量部である。また後述する表2および表3の配合量も重量部である。
【0070】
得られた共重合体溶液について、溶液の外観、重量平均分子量を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。なお表1中の配合量は、重量部である。
【0071】
<溶液外観>
各重合体溶液の外観を目視で評価した。
【0072】
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量の測定は島津製作所製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー(株)製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を直列に連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/min
カラム温度 : 40℃
【0073】
【表1】
【0074】
表1の略号を以下に示す。
2EHA : アクリル酸2−エチルヘキシル
IODA : アクリル酸イソオクタデシル
2EHMA : メタクリル酸2−エチルヘキシル
DMA : メタクリル酸ドデシル
AA : アクリル酸
HEA : アクリル酸2−ヒドロキシエチル
BA : アクリル酸ブチル
MMA : メタクリル酸メチル
【0075】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体溶液中の重合体100部に対して、硬化剤としてコロネートL(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、日本ポリウレタン社製)2部(不揮発分換算)を配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を35%に調整して粘着剤を得た。
前記粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0076】
(実施例2〜15、比較例1〜5)
原料を表2、3の配合に従って変更した以外は実施例1と同様に行うことで実施例2〜15および比較例1〜5粘着シートを得た。なお、本願明細書において実施例5、7および8は参考例である。

【0077】
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表2および表3に示す。
【0078】
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がしてポリプロピレン(PP)板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定した。
上記同様にステンレス(SUS)板に対して粘着力を測定した。
【0079】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。前記粘着シートから剥離性シートを剥がして研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にずれた長さを測定した。
評価基準
○:「ずれた長さが0.5mm未満である。良好。」
×:「ずれた長さが0.5mm以上である。実用不可」
【0080】
(3)耐油脂性・耐水性
得られた粘着シートを幅25mm・縦25mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気で前記粘着シートから剥離性シートを剥がしてPP板に貼着し試料(積層体)とした。貼着5分間後、ただちに下記試験を行った。。
耐油脂性評価:前記積層体を日清サラダ油(日清オイリオ社製)中に70℃で200時間浸漬を行い、浸漬後の粘着シートの浮きおよび剥がれを目視で観察した。
耐水性評価:前記積層体を蒸留水中に40℃で48時間浸漬を行い、浸漬後の粘着シートの浮きおよび剥がれを目視で観察した。なお評価は、下記の3段階の評価基準に基づいて行った。
◎:「浮き、剥がれが全く認められず、良好である」
○:「0.2mm未満の浮き、剥がれが認められるが、実用上問題がない」
×:「0.2mm以上の浮き、剥がれがあり、実用不可である」
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
表2および表3の略号を以下に記載する。
TETRAD−X : N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)
2EH-OH : 2−エチルヘキシルアルコール
IOD−OH : イソオクタデシルアルコール
D−125 : ペンセルD−125(ロジン誘導体、荒川化学社製)
P−100 : アルコンP−100(炭化水素樹脂、荒川化学社製)
【0084】
表2および表3の結果から実施例1〜15に示すように本発明の粘着剤は、PP粘着力、保持力、耐油脂性、耐水性に優れていることがわかる。これに対し、比較例1〜5では、いずれかの項目が不良となっており、実用上問題があったり、実用不可であることがわかる。
【0085】
本発明の粘着剤は、ポリオレフィン樹脂に対して良好な粘着力を有し、さらに食用油や化粧品等に含まれる油脂や水が付着しやすい環境で使用されても良好な耐油脂性、耐水性を有しているために、調味料用容器ラベルや化粧品用容器ラベル用の粘着剤として特に有用である。