(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミン化合物は、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールなどに代表される耐熱性高分子の原料として有用である。これらの高分子材料はその高度な耐熱性から、自動車、航空宇宙、防火服等の分野に使用されている。しかしながら、これらの高分子材料は、多くの場合、有機溶媒に対する溶解性が乏しく、成型性が悪い。そのため、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールの場合、有機溶媒可溶性の前駆体高分子(ポリアミド酸、ポリアミドフェノール)を用いて所望の形状に成型した後、300℃から350℃の高温下で脱水環化させることで、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールに変性させて最終成型体としている。
【0003】
ただし、前記のような成型工程は、有機系色素を使用した比較的耐熱性の低いディスプレイ用部材や、残留熱応力が発生しやすい熱膨張係数が異なる半導体用の積層部材に用いるには、成型温度が高すぎるため不適である。そのため、有機溶媒を蒸発揮散する程度の温度で成型可能な有機溶媒可溶型のポリイミドやポリベンゾオキサゾールが注目されている。
【0004】
これらの高分子を有機溶媒に可溶化させる手法として、エーテル結合やメチレン結合などの屈曲構造を主鎖骨格に導入すること、tert−ブチル基やトリフルオロメチル基などの嵩高い構造を側鎖に導入すること、主鎖骨格の対称性を崩すことが知られている。中でも、耐熱性を犠牲にすること無く、有機溶媒に対する溶解性を向上させる手法として、フルオレン構造を用いる手法が知られている。
【0005】
フルオレン構造を有する高分子は、有機溶剤に可溶化するだけでなく、その特異な構造により低誘電率化やガス透過性を高める効果があり、半導体用保護膜やガス分離膜としての報告例がある(特許文献1,2)。
【0006】
しかしながら、フルオレン構造を有する高分子は、疎水性が高く親水性基材への塗布性に乏しいことや、分子間相互作用が低いことによる機械強度が乏しい欠点を有する。フェノール性水酸基やカルボキシル基などの親水性基をフルオレン骨格に導入することで当該欠点の解消を試みた報告例があるが、フェノール性水酸基やカルボキシル基などの親水性基の導入のための合成工程が多段階になり、かつ操作が煩雑であった(特許文献3、4、8)。
【0007】
特許文献3では、フェノール性水酸基含有フルオレンジアミンの製法が開示されている。当該製法では、フェノール性水酸基をフルオレン骨格に導入した後、ニトロ化、続いて水素還元工程により目的物であるフェノール性水酸基含有フルオレンジアミンを得ている。実施例記載内容によると、各工程は比較的高収率(85〜90%)で目的物を得ているものの、大量の硝酸の使用による廃棄物の問題や、高価なパラジウム触媒の使用、高圧水素が必要であり、工業的に容易な手法とは言い難い。
【0008】
特許文献4では、カルボキシル基含有フルオレンジアミンの製法が開示されている。当該製法では、ジフェン酸を硫酸中で加熱しフルオレノンカルボン酸とし、引き続きアニリン類との脱水工程を必要とする高温下での反応により目的物であるカルボキシル基含有フルオレンジアミンを得ている。本反応も大量の硫酸使用による廃棄物の問題や、脱水工程に伴うトルエン共存下の共弗脱水の付帯設備が必要で、これも工業的に容易な手法とは言い難い。
【0009】
特許文献8では、特許文献3と比較して、フェノール性水酸基とアミノ基の置換位置が逆転している、フェノール性水酸基含有フルオレンジアミンの製法が開示されている。当該製法では汎用の2−ベンゾオキサゾリンを使用しているが、反応後にシリカゲルクロマトグラフによる副生物との分離精製操作が必要で、これも工業的に容易な手法とは言い難い。
【0010】
このように、フェノール性水酸基やカルボキシル基、もしくは両官能基とは異なる親水性基をフルオレン骨格に簡便に導入することが期待されていた。
【0011】
また、フルオレン構造を有する芳香族ジアミン化合物に2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基を導入した化合物は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、フルオレン構造を有する芳香族ジアミン化合物に2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基(以下、「HFIP基」または「−C(CF
3)
2OH基」と呼ぶことがある。)を導入したHFIP基含有フルオレンジアミン、およびHFIP基含有フルオレンジアミンから合成されるポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリベンゾオキサゾール類似構造を有する含フッ素複素環含有高分子化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、フェノール性水酸基やカルボキシル基などの親水性基をフルオレン骨格へ導入する従来の方法よりも簡便な合成方法により、親水性基であるHFIP基をフルオレン骨格に導入できることを見出した。さらに、本発明者らは、HFIP基含有フルオレンジアミンから、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリベンゾオキサゾール類似構造を有する含フッ素複素環含有高分子化合物を合成し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0016】
[発明1]
式(2)
【化1】
【0017】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜2のいずれかの整数を表し、m+nは1以上4以下である。)
で表される含フッ素フルオレンジアミン。
【0018】
[発明2]
式(3−1)
【化2】
【0019】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される発明1に記載の含フッ素フルオレンジアミン。
【0020】
[発明3]
式(2B)
【化3】
【0021】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される発明1または2に記載の含フッ素フルオレンジアミン。
【0022】
[発明4]
発明1〜3のいずれかに記載の含フッ素ジアミンを、式(10)、(11)
【化4】
【0023】
(式(10)中、Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよく、R
4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはベンジル基を表す。式(11)中、Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよく、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
で表されるジカルボン酸もしくはジカルボン酸誘導体、または、式(14)
【化5】
【0024】
(式(14)中、R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物と接触させ、反応させることで得られる高分子化合物。
【0025】
[発明5]
式(6)
【化6】
【0026】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜2のいずれかの整数を表し、m+nは1以上4以下である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する高分子化合物。
【0027】
[発明6]
式(19)
【化7】
【0028】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明5に記載の高分子化合物。
【0029】
[発明7]
式(6A)
【化8】
【0030】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明5または6に記載の高分子化合物。
【0031】
[発明8]
式(9)
【化9】
【0032】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する高分子化合物。
【0033】
[発明9]
式(9B)
【化10】
【0034】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明8に記載の高分子化合物。
【0035】
[発明10]
式(7)
【化11】
【0036】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜2のいずれかの整数を表し、m+nは1以上4以下である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する高分子化合物。
【0037】
[発明11]
式(7A)
【化12】
【0038】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明10に記載の高分子化合物。
【0039】
[発明12]
式(7B)
【化13】
【0040】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明10または11に記載の高分子化合物。
【0041】
[発明13]
式(8)
【化14】
【0042】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜2のいずれかの整数を表し、m+nは1以上4以下である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する高分子化合物。
【0043】
[発明14]
式(8A)
【化15】
【0044】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明13に記載の高分子化合物。
【0045】
[発明15]
式(8B)
【化16】
【0046】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有する、発明13または14に記載の高分子化合物。
【0047】
[発明16]
発明5〜9のいずれかに記載の高分子化合物であって、2価の有機基Aが、式(25)〜(29)
【化17】
【0048】
(式中、波線と交差する線分は結合位置を表す。)
から選ばれる1種以上であることを特徴とする高分子化合物。
【0049】
[発明17]
発明10〜15のいずれかに記載の高分子化合物であって、R
5が、式(30)〜(35)
【化18】
【0050】
(式中、波線と交差する線分は結合位置を表す。)
から選ばれる1種以上であることを特徴とする高分子化合物。
【発明の効果】
【0051】
本発明により、HFIP基含有フルオレンジアミンを提供することが可能である。さらに、本発明により、HFIP基含有フルオレンジアミンから合成されるポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリベンゾオキサゾール類似構造を有する含フッ素複素環含有高分子化合物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0053】
本明細書において、フルオレン構造を有する芳香族ジアミン化合物のうち、下記式(1)
【化19】
【0054】
で表される9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを「フルオレンジアミン」と呼び、「フルオレンジアミン」は置換基を有していてもよい。ただし、HFIP基を置換基として有する場合には、「HFIP基含有フルオレンジアミン」として区別して呼ぶ。
【0055】
本発明に係るHFIP基含有フルオレンジアミン、およびHFIP基含有フルオレンジアミンを単量体として、重合反応によって得られるポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリベンゾオキサゾール類似構造を有する含フッ素複素環含有高分子化合物の順に沿って説明する。
【0056】
<HFIP基含有フルオレンジアミン>
本発明にかかるHFIP基含有フルオレンジアミンは、式(2)
【化20】
【0057】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基、フェニル基、メトキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、スルホン酸基、−C≡C−C(CH
3)
2OH基、−C≡C−C
6H
5基、−C≡C−Si(CH
3)
3基からなる群から選ばれる1種の置換基を表す。HFIPは−C(CF
3)
2OH基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜2のいずれかの整数を表し、m+nは1以上4以下である。)
で表される。
【0058】
式(2)で表されるHFIP基含有フルオレンジアミン(以下、「HFIP基含有フルオレンジアミン(2)」と表すことがある。)のうち、式(3−1)、(3−2)
【化21】
【0059】
(式中、R
1、R
2およびHFIPは式(2)と同義を表す。)
で表されるHFIP基含有フルオレンジアミンが好ましい。
【0060】
炭素数1〜4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0061】
任意の数の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜4のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基などが挙げられる。
【0062】
HFIP基含有フルオレンジアミンは、具体的には、下記式(4−1)〜(4−12)
【化22】
【0063】
(式中、R
3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Meはメチル基を表す。Phはフェニル基を表す。HFIPは式(2)と同義を表す。)
で表される化合物などが挙げられる。中でも、HFIP基含有フルオレンジアミンの合成原料となるフルオレンジアミンの入手の容易性から、一般式(4−1)、(4−2)で表されるHFIP基含有フルオレンジアミンが特に好ましい。
【0064】
本発明にかかるHFIP基含有フルオレンジアミン(2)は、式(5)で表されるフルオレンジアミン(以下、「フルオレンジアミン」(5)と表すことがある。)を、ヘキサフルオロアセトンまたはヘキサフルオロアセトン・三水和物と反応させることで得られる(特許文献5、6、7参照)。
【化23】
【0065】
(式(5)中、R
1、R
2は式(2)と同義を表す。)
本反応は無溶媒でも行うことができるが、溶媒を使用することもできる。使用される溶媒としては、反応に関与しないものなら特に制限は無いが、キシレン、トルエン、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリルなどの芳香族炭化水素類または水が好ましい。使用する溶媒の量には特に制限が無いが、多量に使用することは容積あたりの収量が減少するので好ましくない。
【0066】
本反応において、使用する反応器は特に限定されないが、密封反応器(オートクレーブ)を使用して行う場合には、ヘキサフルオロアセトンとヘキサフルオロアセトン・三水和物のいずれを用いるかによって態様が異なる。ヘキサフルオロアセトンを用いる場合には最初にフルオレンジアミン(5)と、必要に応じて触媒および/または溶媒を反応器内に仕込む。次いで、反応器内圧が0.5MPaを越えないように、温度を上げつつ、ヘキサフルオロアセトンを逐次導入していくことが好ましい。
【0067】
ヘキサフルオロアセトン・三水和物を用いる場合には、最初にフルオレンジアミン(5)と必要量のヘキサフルオロアセトン・三水和物を仕込むことが可能であり、さらに必要に応じて触媒および/または溶媒を反応器内に仕込んで反応を行うことができる。
【0068】
本反応の反応時間に特別な制限はないが、温度や、用いる触媒の量等に依存して最適の反応時間は異なる。従って、ガスクロマトグラフィーなど、汎用の分析手段により、反応の進行状況を測定しつつ反応を実施し、原料が十分消費されたことを確認した後、本工程を終了することが好ましい。 反応終了後、抽出、蒸留、晶析などの通常の手段により、HFIP基含有フルオレンジアミン(2)を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、再結晶などにより精製することもできる。
【0069】
<高分子化合物>
次に、HFIP基含有フルオレンジアミン(2)を単量体として、重合反応によって得られる一般式(6)
【化24】
【0070】
で表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物(以下、「ポリアミド化合物(6)」と表すことがある。)、一般式(7)
【化25】
【0071】
で表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物(以下、「ポリアミド化合物(7)」と表すことがある。)および一般式(8)
【化26】
【0072】
で表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリイミド化合物(以下、「ポリイミド化合物(8)」と表すことがある。)などの高分子化合物について、順に沿って説明する。さらに、一般式(9)
【化27】
【0073】
で表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリベンゾオキサゾール類似構造を有する含フッ素複素環含有高分子化合物(以下、「含フッ素複素環含有高分子化合物(9)」と表すことがある。)についても説明する。
【0074】
[ポリアミド化合物(6)]
本発明に係るHFIP基含有フルオレンジアミンの高分子化合物のうち、ポリアミド化合物(6)は、HFIP含有フルオレンジアミン(2)を、式(10)、式(11)で表されるカルボン酸またはカルボン酸誘導体と反応させることで得られる。
【化28】
【0075】
(式中、R
1、R
2、HFIP、mおよびnは式(2)と同義を表す。R
4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはベンジル基を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
一般式(10)、(11)で表されるジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体は、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸またはこれらのジカルボン酸誘導体のいずれを用いてもよい。
【0076】
脂肪族ジカルボン酸とその誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸のジカルボン酸化合物またはこれらのジカルボン酸誘導体が挙げられる。
【0077】
芳香族ジカルボン酸とその誘導体としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジカルボキシルジフェニルエーテル、3,4’−ジカルボキシルジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシルジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシルジフェニルメタン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルメタン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジカルボキシルジフェニルスルホン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルスルホン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、3,4’−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、4,4’−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、3,3’−ジカルボキシルジフェニルケトン、3,4’−ジカルボキシルジフェニルケトン、4,4’−ジカルボキシルジフェニルケトン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、2,2−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルホンまたはビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルホン、パーフルオロノネニルオキシ基含有のジカルボン酸である5−(パーフルオロノネニルオキシ)イソフタル酸、4−(パーフルオロノネニルオキシ)フタル酸、2−(パーフルオロノネニルオキシ)テレフタル酸または4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)イソフタル酸、パーフルオロヘキセニルオキシ基含有のジカルボン酸である、5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)イソフタル酸、4−(パーフルオロヘキセニルオキシ)フタル酸、2−(パーフルオロヘキセニルオキシ)テレフタル酸または4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)イソフタル酸、2,2’−ジ−トリフルオロメチル−4,4’−ジカルボキシビフェニルまたはこれらのジカルボン酸誘導体が挙げられる。
【0078】
中でも入手の容易さ、縮重合反応のし易さ、および重合物が透明性に優れることから、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0079】
ポリアミド化合物(6)のうち、下記式(12−1)〜(12−5)
【化29】
【0080】
(式中、R
1、R
2およびHFIPは式(2)と同義を表す。)
のいずれかで表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物が好ましく、具体的には、下記式(13−1)〜(13−10)
【化30】
【0081】
(式中、R
3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Meはメチル基を表す。Phはフェニル基を表す。HFIPは式(2)と同義を表す。)
のいずれかで表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物が挙げられる。
【0082】
中でも、HFIP基含有フルオレンジアミンの合成原料となるフルオレンジアミンの入手の容易性から、式(13−1)〜(13−5)のいずれかで表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物が特に好ましい。
【0083】
ポリアミド化合物(6)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。当該重量平均分子量の上限は、500,000以下が好ましく、300,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が10,000未満だと、得られる高分子膜の強度が乏しい。重量平均分子量が500,000超だと、得られる高分子溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなる。ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と表すことがある。)分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものである(本願において以下同じ。)。当該分析の詳細な分析条件は、本願の実施例で記述する。
【0084】
ポリアミド化合物(6)の合成方法については、特に制限されず、ジアミン化合物とカルボン酸化合物またはその誘導体からポリアミド化合物を合成するための公知の方法を採用できる。例えば、HFIP基含有フルオレンジアミン(2)と、一般式(10)、(11)で表されるジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を有する組成物を、150℃以上で相互に溶融させて無溶媒で縮重合反応させる方法、溶媒中にて150℃以上で縮重合反応させる方法、−20〜80℃の温度で溶媒中にて重合反応させる方法などが挙げられる。
【0085】
ポリアミド化合物(6)の合成において、溶媒を用いることができる。用いる溶媒としては、反応基質が溶解し、また反応温度において凍結しなければ特に限定されず、例えば、アミド類、芳香族類、ハロゲン類、ラクトン類などの溶媒が挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが使用できる。
【0086】
これらの溶媒は、単独でも2種以上の混合液として使用されてもよい。
【0087】
さらに、これらの溶媒とともに、ピリジン、トリエチルアミンなどの酸受容体を共存させて反応を行うことが効果的である。
【0088】
[ポリアミド化合物(7)]
さらに、本発明に係るHFIP基含有フルオレンジアミンの高分子化合物のうち、ポリアミド化合物(7)は、HFIP含有フルオレンジアミン(2)を、式(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物と反応させることで得られる。
【化31】
【0089】
(式中、R
1、R
2、HFIP、mおよびnは式(2)と同義を表す。R
5は脂環、芳香
環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩
素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がア
ルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換さ
れていてもよい。)
一般式(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、R
5において、脂肪族、脂環、芳香族のいずれかの構造を持つものを用いることができる。具体的には、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)、トリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ビストリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ジフルオロベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水化物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ケトン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水化物、2,5,6,2',5',6'−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水化物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水化物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物が挙げられ、これらを2種以上併用することもできる。
【0090】
ポリアミド化合物(7)のうち、下記式(15−1)〜(15−6)
【化32】
【0091】
(式中、R
1、R
2およびHFIPは式(2)と同義を表す。)
で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物が好ましく、具体的には、下記式(16−1)〜(16−12)
【化33】
【0092】
(式中、R
3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Meはメチル基を表す。Phはフェニル基を表す。HFIPは式(2)と同義を表す。)
で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物などが挙げられる。
【0093】
中でも、HFIP基含有フルオレンジアミンの合成原料となるフルオレンジアミンの入手の容易性から、式(16−1)〜(16−6)で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物が、特に好ましい。
【0094】
ポリアミド化合物(7)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。当該重量平均分子量の上限は、500,000以下が好ましく、300,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が10,000未満だと、得られる高分子膜の強度が乏しい。重量平均分子量が500,000超だと、得られる高分子溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなる。
【0095】
ポリアミド化合物(7)の合成方法については、特に制限されず、例えば、HFIP基含有フルオレンジアミン(2)と、一般式(14)で表されるジカルボン酸誘導体を有する組成物を、150℃以上で相互に溶融させて無溶媒で縮重合反応させる方法、溶媒中にて150℃以上で縮重合反応させる方法、−20〜80℃の温度で溶媒中にて重合反応させる方法などが挙げられる。
【0096】
また、ポリアミド化合物(7)の合成において、溶媒を用いることができる。用いる溶媒としては、反応基質が溶解し、また反応温度において凍結しなければ特に限定されず、例えば、アミド類、芳香族類、ハロゲン類、ラクトン類などの溶媒が挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが使用できる。
【0097】
これらの溶媒は、単独でも2種以上の混合液として使用されてもよい。
【0098】
[ポリイミド化合物]
本発明に係るHFIP基含有フルオレンジアミンの高分子化合物のうち、式(8)で表されるポリイミド化合物は、ポリアミド化合物(7)から合成される。
【化34】
【0099】
(式中、R
1、R
2、HFIP、mおよびnは式(2)と同義を表す。R
5は脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
ポリイミド化合物(8)のうち、下記式(17−1)〜(17−6)
【化35】
【0100】
(式中、R
1、R
2およびHFIPは式(2)と同義を表す。)
で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有するポリイミド化合物が好ましく、具体的には、下記式(18−1)〜(18−12)
【化36】
【0101】
(式中、R
3は、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Meはメチル基を表す。Phはフェニル基を表す。HFIPは式(2)と同義を表す。)
で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有するポリイミド化合物などが挙げられる。
【0102】
中でも、HFIP基含有フルオレンジアミンの合成原料となるフルオレンジアミンの入手の容易性から、式(18−1)〜(18−6)で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有するポリイミド化合物が特に好ましい。
【0103】
ポリイミド化合物(8)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。当該重量平均分子量の上限は、500,000以下が好ましく、300,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が10,000未満だと、得られる高分子膜の強度が乏しい。重量平均分子量が500,000超だと、得られる高分子溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなる。
【0104】
ポリイミド(8)の合成反応、すなわち、ポリアミド化合物(7)の脱水閉環反応は、加熱するのみ、もしくは、酸や塩基などの添加剤と熱の併用により当該反応が促進する条件により行う。
【0105】
一般的には、ポリアミド化合物(7)の溶液を150℃以上、250℃以下の高温でイミド化し、HFIP基を含むポリイミド溶液に調製することができる。その際、ピリジン、トリエチルアミン、無水酢酸等を添加剤として用いてもよい。溶液中のHFIP基を含むポリイミドの濃度は、5質量%以上、50質量%以下が好ましい。5質量%より少ないと、薄すぎて工業的に実用的ではない。50質量%を超えると溶解し難い。さらに、好ましくは10質量%以上、40質量%以下である。
【0106】
ポリアミド化合物(7)の溶液を調製する際に用いる溶媒としては、反応基質が溶解すれば特に限定されず、例えば、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン、芳香族系溶媒であるベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼンまたはベンゾニトリル、ハロゲン系溶媒であるクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン、ラクトン類であるγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンまたはα−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種以上の混合溶媒として使用されても良い。
【0107】
ポリイミド(8)を合成する方法として、ポリアミド化合物(7)の合成直後の反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供する方法も適用可能である。この場合、前述の温度範囲、添加剤、濃度、溶媒を使用可能である。
【0108】
[含フッ素複素環含有高分子化合物]
本発明に係るHFIP基含有フルオレンジアミンの高分子化合物のうち、含フッ素複素環含有高分子化合物(9)は、式(19)で表される繰り返し単位を少なくとも含有するポリアミド化合物(以下、「ポリアミド化合物(19)」と表すことがある。)を脱水環化することで得られる。
【化37】
【0109】
(式中、R
1、R
2およびHFIPは式(2)と同義を表す。Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
具体的には、以下の反応式に示される脱水環化反応が進行して複素環が形成される。
【化38】
【0110】
(式中、Aは脂環、芳香環、アルキレン基から選ばれる一種以上を含有した2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含有していてもよく、任意の数の水素原子がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。波線と交差する線分は結合位置を表す。)
含フッ素複素環含有高分子化合物(9)のうち、下記式(20−1)〜(20−5)
【化39】
【0111】
(式中、R
1、R
2およびHFIPは式(2)と同義を表す。)
で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有する含フッ素複素環含有高分子化合物が好ましく、具体的には、下記式(21−1)〜(21−10)
【化40】
【0112】
(式中、R
3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Meはメチル基を表す。Phはフェニル基を表す。)
で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有する含フッ素複素環含有高分子化合物などが挙げられる。
【0113】
中でも、HFIP基含有フルオレンジアミンの合成原料となるフルオレンジアミンの入手の容易性から、式(21−1)〜(21−5)で表されるいずれかの繰り返し単位を少なくとも含有する含フッ素複素環含有高分子化合物が特に好ましい。
【0114】
含フッ素複素環含有高分子化合物(9)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。当該重量平均分子量の上限は、500,000以下が好ましく、300,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が10,000未満だと、得られる高分子膜の強度が乏しい。重量平均分子量が500,000超だと、得られる高分子溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなる。
【0115】
ポリアミド化合物(19)の脱水環化による含フッ素複素環含有高分子化合物(9)の合成手法としては、加熱、酸触媒、塩基触媒の使用などの反応条件を選択することができる。
【0116】
例えば、特許文献6、7に開示されている類似の脱水環化反応における反応条件を準用することができる。
【0117】
さらに一例を挙げると、ポリアミド化合物(19)を溶媒中にて150〜250℃で加熱することでポリアミド化合物(19)の脱水環化が進行して、含フッ素複素環含有高分子化合物(9)が生成する。その際、反応を効率的に進行させることを目的に、ピリジン、トリエチルアミン、無水酢酸などを加えてもよい。
【0118】
含フッ素複素環含有高分子化合物(9)の合成において、溶媒を用いることができる。用いる溶媒としては、反応基質が溶解し、また反応温度において凍結しなければ特に限定されず、例えば、アミド類、芳香族類、ハロゲン類、ラクトン類などの溶媒が挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが使用できる。これらの溶媒は、単独でも2種以上の混合液として使用されてもよい。さらに、これらの溶媒とともに、ピリジン、トリエチルアミンなどの酸受容体を共存させて反応を行うことが効果的である。
【0119】
[重合成分]
また、高分子化合物の耐熱性の改善や所望の有機溶剤への溶解性を得ることを目的として、HFIP基含有フルオレンジアミン(2)から得られるポリアミド化合物(6)、ポリアミド化合物(7)、ポリイミド化合物(8)、含フッ素複素環含有高分子化合物(9)の合成において、HFIP基を含有していないジアミン化合物を重合成分として加えてもよい。
【0120】
当該ジアミン化合物は、具体的には、3,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、2,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、3,3’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビストリフルオロメチル−5,5’−ジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(フッ素化アルキル)−4,4’−ジアミノビフェニル、ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、ジブロモ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(フッ素化アルコキシ)−4,4’−ジアミノビフェニル、ジフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビナフチルアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノジュレン、1,4−キシリレンジアミン、ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ジアルキル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチルージアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチルージアミノジフェニルメタン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニルまたは4,4’−ジアミノベンズアニリドなどが例示でき、これらを2種以上併用することもできる。
【0121】
<高分子化合物の使用における態様>
本発明の高分子化合物は、有機溶媒に溶解したワニス状態、粉末状態、フィルム状態、固体状態で使用に供することが可能である。その際、得られた高分子化合物中には、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等の添加物が混合されていても差し支えない。
【0122】
ワニスで使用する場合は、ガラス、シリコンウエーハ、金属、金属酸化物、セラミックス、樹脂などの基材上にスピンコート、スプレーコート、フローコート、含浸コート、ハケ塗りなど通常用いられる方法で塗布することができる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0124】
本発明で得られたHFIP基含有フルオレンジアミンおよびHFIP基含有フルオレンジアミンを用いた高分子化合物の物性評価は、以下に示す方法で行った。
【0125】
[NMR(核磁気共鳴)測定]
化合物の構造は、共鳴周波数400MHzのNMR(核磁気共鳴)装置(JNM−AL400またはJNM−ECA400;日本電子製)を使用し、
1H−NMR、
19F−NMRの測定で確認した。
【0126】
[重量平均分子量測定]
重量平均分子量(以下、「Mw」と表すことがある。)は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8320、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
【0127】
〔実施例1〕
<式(22)で表されるHFIP基含有フルオレンジアミン(HFIP−FL)の合成>
300mLオートクレーブに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(25g、0.072mol、東京化成品)、ヘキサフルオロアセトン三水和物(70g、0.32mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(0.68g、3.6mmol)を加え、オートクレーブを密閉し、オイルバスで130℃にて17時間撹拌した。室温(特に加熱または冷却しない雰囲気温度をいい、通常約15〜30℃である。以下同じ。)に冷却後、反応溶液にトルエン(50g)を加え、得られた固体をろ過、水洗した後、さらにクロロホルム(100ml)で洗浄した。得られた固体をろ過、減圧乾燥することで白色粉末を得た(11.6g、0.017mol、収率25%)。NMR解析から、前記白色粉体は、式(22)で表されるHFIP基含有フルオレンジアミン(以下、「HFIP−FL」と表すことがある。)であることを確認した。
【0128】
[NMR測定]
1H−NMR(DMSO−d
6):δ9.19(brs, 2H),7.87(d,J=7.6 Hz,2H),7.35(m,2H),7.26(m,4H),7.02(s, 2H),6.80(dd,J=8.5 ,1.7Hz, 2H),6.60(d,J=8.5Hz,2H),5.55(brs,4H);
19F−NMR(DMSO−d
6):δ−72.65(s)
【化41】
【0129】
〔実施例2〕
<式(23)で表されるHFIP基含有フルオレンジアミン(HFIP−MeFL)の合成>
300mLオートクレーブに、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン(70g、0.186mol)、ヘキサフルオロアセトン三水和物(220g、1.000mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(1.77g、9.3mmol)を加え、オートクレーブを密閉し、オイルバスで130℃にて24時間撹拌した。
【0130】
室温に冷却後、反応溶液にメタノール(200mL)を加え、得られた固体をろ過した後、さらにクロロホルム(100ml)で洗浄した。得られた固体をろ過、減圧乾燥することで白色粉末を得た(15.2g、0.022mol、収率20%)。NMR解析から、前記白色粉体は、式(23)で表されるHFIP基含有フルオレンジアミン(以下、「HFIP−MeFL」と表すことがある。)であることを確認した。
【0131】
[NMR測定]
1H−NMR(DMSO−d
6):δ10.11(brs, 2H),7.86(d,J=7.2Hz,2H),7.35(m,2H),7.26(m,4H),6.97(s, 2H),6.79(s,2H),5.24(brs,4H),1.98(s,6H);
19F−NMR(DMSO−d
6):δ−72.92(s)
【化42】
【0132】
〔実施例3〕
<HFIP−FLと6FDAの重合反応によるポリマーP1の合成>
300−mL三口フラスコ中に、HFIP−FL(10.01g、14.7mmol)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以下、「6FDA」と表すことがある。)(6.533g、14.7mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(38.57g)を加え、窒素雰囲気下、室温にて18時間撹拌した。得られた反応液を、水、メタノール混合溶媒(混合体積比は1:1)に投入し、白色沈殿を得た。得られた白色沈殿をろ過、回収後、室温にて12時間真空乾燥させることで、ポリマーP1を得た(収量14.89g、収率90%)。GPC測定の結果、Mwは51,000であった。
【0133】
下記式において、nは繰り返し単位の数を表す(実施例の項において同じ。)。
【化43】
【0134】
〔実施例4〕
<ポリマーP1のイミド化によるポリマーP1−1の合成、およびP1−1の溶剤溶解性>
100mL−ナスフラスコ中に、ポリマーP1(5g)、無水酢酸(0.998g、9.78mmol)、トリエチルアミン(1.08g、10.66mmol)を加え、N,N−ジメチルアセトアミド(20g)に溶解させた後、110℃、24時間反応させた。得られた反応液を、水、メタノール混合溶媒(混合体積比は1:1)に投入し、白色沈殿を得た。得られた白色沈殿をろ過、回収後、室温にて12時間真空乾燥させることで、ポリマーP1−1を得た(収量4.11g、収率85%)。GPC測定の結果、Mwは31,000であった。IR測定から、1,780cm
−1、1,720cm
−1にイミド基特有の吸収を確認出来たことから、ポリマーP1−1であることが判った。得られたポリマーP1−1は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドに可溶(ポリマー固体を5wt%濃度にて溶媒中、室温下で撹拌し、目視で判断。以下同じ。)であった。
【化44】
【0135】
〔実施例5〕
<ポリマーP1−1の製膜実験>
実施例4で得られたポリマーP1−1(3g)を、N,N−ジメチルアセトアミド(12g)に溶解させた後、得られた溶液を硝子基板上にスピンコート塗布し、N,N−ジメチルアセトアミドの沸点に近い180℃を上限温度とし、100℃で1時間、180℃で1時間加熱した。硝子基板上にて、剥がれやクラックなどは目視で観測されず、25μm膜厚の均一膜が得られた。
【0136】
〔実施例6〕
<HFIP−MeFLとイソフタル酸クロリドの重合反応によるポリマーP2の合成>
300−mL三口フラスコ中に、HFIP−MeFL(9.00g、12.7mmol)、イソフタル酸クロリド(2.52g、12.7mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(46g)を加え、窒素雰囲気下、室温にて18時間撹拌した。得られた反応液を、水、メタノール混合溶媒(混合体積比は1:1)に投入し、白色沈殿を得た。得られた白色沈殿をろ過、回収後、室温にて12時間真空乾燥させることで、ポリマーP2を得た(収量8.73g、収率83%)。GPC測定の結果、Mwは25,000であった。
【化45】
【0137】
〔実施例7〕
<ポリマーP2の加熱脱水反応によるポリマーP2−1の合成、およびP2−1の溶剤溶解性>
ポリマーP2(5g)をN−メチルピロリドン(20g)に溶解させた後、得られた溶液を、200℃で12時間撹拌した。得られた反応液を、水、メタノール混合溶媒(混合体積比は1:1)に投入し、白色沈殿を得た。得られた白色沈殿をろ過、回収後、室温にて12時間真空乾燥させることで、ポリマーP2−1を得た(収量3.83g、収率80%)。GPC測定の結果、Mwは23,000であった。IR測定から、1,650cm
−1にC(=N)基特有の吸収を確認出来たことから、ポリマーP2−1であることが判った。得られたポリマーP2−1は、N−メチルピロリドンに可溶であった。
【化46】
【0138】
〔実施例8〕
<ポリマーP2−1の製膜実験>
実施例7で得られたポリマーP2−1(3g)をN―メチルピロリドン(12g)に溶解させた後、得られた溶液を硝子基板上にスピンコート塗布し、N―メチルピロリドンの沸点に近い200℃を上限温度とし、100℃で1時間、200℃で1時間加熱した。硝子基板上にて、剥がれやクラックなどは目視で観測されず、23μm膜厚の均一膜が得られた。
【0139】
〔実施例9〜13〕
<ポリマーP3〜P7の合成>
実施例3と同様の手法にて、HFIP−FLもしくはHFIP−MeFLと、下記の各種テトラカルボン酸二無水物である、PMDA、BPDA、BTDA、DSDA、ODPA
【化47】
【0140】
との重合反応を行い、下記のポリマーP3〜P7
【化48】
【0141】
を得た。結果を表1に示す。
【表1】
【0142】
〔実施例14〜17〕
<ポリマーP8〜P11の合成>
実施例6と同様の手法にて、HFIP−FLもしくはHFIP−MeFLと、下記の各種ジカルボン酸ジクロリドである、TPC、BPDC、6FDC、6FBDC
【化49】
【0143】
との重合反応を行い、下記のポリマーP8〜P11
【化50】
【0144】
を得た。結果を表2に示す。
【表2】
【0145】
〔実施例18〜22〕
<ポリマーP3−1〜P7−1の合成、およびそれらの溶剤溶解性>
実施例4と同様の手法にて、ポリアミド酸であるポリマーP3〜P7からそれぞれ、下記のポリイミド化合物であるポリマーP3−1〜P7−1
【化51】
【0146】
を得た。結果を表3に示した。得られたP3−1〜P7−1はいずれも、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミドに可溶であった。
【表3】
【0147】
〔実施例23〜26〕
<ポリマーP8−1〜P11−1の合成、およびそれらの溶剤溶解性>
実施例7と同様の手法にて、HFIP基含有ポリアミドであるポリマーP8〜P11からそれぞれ、脱水閉環反応にて下記のポリマーP8−1〜P11−1
【化52】
【0148】
を得た。結果を表4に示した。得られたP8−1〜P11−1はいずれも、N−メチルピロリドンに可溶であった。
【表4】
【0149】
〔実施例27〜35〕
<ポリマーP3−1〜P11−1の製膜実験>
ポリマーP3−1〜P7−1に関しては実施例5と同様の手法にて、ポリマーP8−1〜P11−1に関しては実施例8と同様の手法にて、硝子基板上にスピンコート製膜した。結果を表5に示した。
【表5】