(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、今日、家庭内に無線LANルータや中継器などの無線通信端末によって構成される無線通信システムが普及している。無線通信システムにおいては、無線通信装置の設置位置によって、無線通信装置間の電波が届きにくい場合があり、通信状態を向上させる技術が望まれていた。また、無線通信間の通信状態を向上させる技術は、一般消費者が簡易に実施可能な技術であることが望まれていた。さらに、精度良く無線通信装置間の通信状態を制御することが望まれていた。その他、無線通信システムにおいては、小型化や、低コスト化、省資源化、装置の製造の容易化、使い勝手の向上等が望まれていた。これらの課題は、無線LANルータや中継器に限らず、無線通信装置一般に共通の課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、携帯端末と、第1の無線通信装置と、前記第1の無線通信装置と無線通信を行う第2の無線通信装置とを有する無線通信システムが提供される。この無線通信システムにおいては;前記携帯端末は;前記携帯端末の位置を示す端末位置情報を取得する端末位置決定部と;前記端末位置決定部を用いて、前記第1の無線通信装置の位置を示す第1の位置情報を取得する第1位置情報取得部と;前記端末位置決定部を用いて、前記第2の無線通信装置の位置を示す第2の位置情報を取得する第2位置情報取得部と;前記携帯端末の姿態を検知する姿態検知部と;前記姿態検知部を用いて、前記第1の無線通信装置の姿態を示す姿態情報を取得する姿態情報取得部と;前記第1の位置情報と前記第2の位置情報と前記姿態情報に基づく制御信号を、前記第1の無線通信装置に送信する制御信号送信部とを備え;前記第1の無線通信装置は;前記第1の位置情報および前記姿態情報を取得する際の前記携帯端末の姿態を案内する姿態案内部と;前記制御信号を受信する制御信号受信部と;前記受信した前記制御信号に基づいて、前記第2の無線通信装置との通信状態を制御する通信状態制御部とを備える。
【0007】
この形態の無線通信システムによると、携帯端末を用いて通信状態を制御するので、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との通信状態を簡易に制御することができる。また、携帯端末の端末位置決定部を用いて第1の位置情報および第2の位置情報を取得するので、高精度に各無線通信装置の位置情報を取得可能である。また、携帯端末の姿態検知部を用いて姿態情報を取得するので、高精度に姿態情報を取得可能である。従って、これら2つの無線通信装置間の通信状態を精度よく制御することができる。さらに、第1の無線通信装置は姿態案内部を備えるので、携帯端末は姿態案内部によって案内された姿態で第1の位置情報および姿態情報を取得する。従って、携帯端末は第1の位置情報および姿態情報を精度良く取得することができる。
【0008】
(2)上記形態の無線通信システムにおいて、前記通信状態は、前記第2の無線通信装置が前記第1の無線通信装置から受信する電波の強度であるとしてもよい。
【0009】
この形態の無線通信システムによると、第2の無線通信装置が第1の無線通信装置から受信する電波の強度を簡易かつ精度よく制御することができる。
【0010】
(3)上記形態の無線通信システムにおいて、前記通信状態は、前記第1の無線通信装置が発する電波の電波指向特性であるとしてもよい。
【0011】
この形態の無線通信システムによると、第1の無線通信装置が発する電波の電波指向特性を簡易かつ精度良く制御することができる。
【0012】
(4)上記形態の無線通信システムにおいて、前記第1の無線通信装置は、アンテナを複数備え;前記通信状態制御部は、前記複数の各アンテナから発する電波の位相差を調整することにより前記電波指向特性を制御するとしてもよい。
【0013】
この形態の無線通信システムによると、複数の各アンテナから発する電波の位相を制御することによって電波指向性を制御することができる。
【0014】
(5)上記形態の無線通信システムにおいて、前記通信状態は、前記第1の無線通信装置が発する電波の偏波特性であるとしてもよい。
【0015】
この形態の無線通信システムによると、第1の無線通信装置が発する電波の偏波特性を簡易かつ精度良く制御することができる。
【0016】
(6)上記形態の無線通信システムにおいて、前記姿態案内部は、前記携帯端末を前記第1の無線通信装置に特定の姿態で固定する固定部であるとしてもよい。
【0017】
この形態の無線通信システムによると、携帯端末は、第1の通信装置に固定された状態で第1の位置情報を取得することができるので、第1の位置情報を簡易かつ精度良く取得することができる。
【0018】
(7)上記形態の無線通信システムにおいて、前記第1の無線通信装置は、さらに、近距離無線通信インターフェースを備え;前記携帯端末は、さらに;近距離無線通信インターフェースと;前記近距離無線通信インターフェースによる近距離無線通信を介して、前記第1の無線通信装置から、前記第1の無線通信装置の仕様情報を取得する仕様情報取得部とを備え;前記制御信号は、さらに、前記仕様情報に基づく信号であるとしてもよい。
【0019】
この形態の無線通信システムによると、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との通信状態を、第1の無線通信装置の仕様に基づいて制御することができる。
【0020】
(8)上記形態の無線通信システムにおいて、前記仕様情報は、前記第1の無線通信装置のアンテナ数、電波の出力パワー、アンテナが固定式か可動式かを示すアンテナタイプ、および偏波特性の少なくともいずれかの情報を含むとしてもよい。
【0021】
この形態の無線通信システムによると、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との通信状態を、第1の無線通信装置のアンテナ数、電波の出力パワー、アンテナタイプ、偏波特性の少なくともいずれかの情報に基づいて制御することができる。
【0022】
(9)上記形態の無線通信システムにおいて、前記携帯端末は;前記第2の無線通信装置が受信する前記第1の無線通信装置からの受信電波強度を取得する受信電波強度取得部と;前記第1の位置情報と、前記第2の位置情報と、前記受信電波強度とに基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置との間の通信状態を示すマップを生成するマップ生成部と;前記生成した前記マップをユーザに表示する表示部とを備えるとしてもよい。
【0023】
この形態の無線通信システムによると、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との間の通信状態を示すマップをユーザに表示するので、ユーザは、通信状態を容易に把握することができる。
【0024】
(10)本発明の他の形態によれば、無線通信を行う無線通信装置が提供される。この形態の無線通信装置は;携帯端末によって生成された制御信号であって、前記無線通信装置の位置を示す第1の位置情報と、前記無線通信対象である通信対象無線通信装置の位置を示す第2の位置情報と、前記無線通信装置の姿態を示す姿態情報とに基づく制御信号を受信する制御信号受信部と;前記受信した前記制御信号に基づいて、前記通信対象無線通信装置との通信状態を制御する通信状態制御部と;前記携帯端末が前記無線通信装置から前記第1の位置情報および前記姿態情報を取得する際の前記携帯端末の姿態を案内する姿態案内部と;を備える。
【0025】
この形態の無線通信装置によると、携帯端末から受信した制御信号に基づいて通信対象無線通信装置との通信状態を制御するので、簡易に通信状態を制御することができる。
【0026】
(11)本発明の他の形態によれば、第1の無線通信装置と、前記第1の無線通信装置と無線通信を行う第2の無線通信装置との通信状態を制御する機能を、位置情報を取得可能な携帯端末に実現させるコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは;前記第1の無線通信装置の位置を示す第1の位置情報を取得する第1位置情報取得機能と;前記第2の無線通信装置の位置を示す第2の位置情報を取得する第2位置情報取得機能と;前記第1の無線通信装置の姿態を示す姿態情報を取得する姿態情報取得機能と;前記第1の位置情報と、前記第2の位置情報と、前記姿態情報とに基づく制御信号であって、前記第1の無線通信装置が前記制御信号に基づいて前記第2の無線通信装置との通信状態を制御するための制御信号を、前記第1の無線通信装置に送信する制御信号送信機能と;を前記携帯端末に実現させる。
【0027】
この形態のコンピュータプログラムによると、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との通信状態の制御を、携帯端末に実現させることができる。
【0028】
(12)本発明の他の形態によれば、位置情報を取得可能な携帯端末に実現させるコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは;第1の無線通信装置の位置を示す第1の位置情報を取得する第1位置情報取得機能と;第2の無線通信装置の位置を示す第2の位置情報を取得する第2位置情報取得機能と;前記第2の無線通信装置が受信する前記第1の無線通信装置からの受信電波強度を取得する受信電波強度取得機能と;前記第1の位置情報と、前記第2の位置情報と、前記受信電波強度とに基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置との間の通信状態を示すマップを生成するマップ生成機能と;前記生成したマップを表示部に表示させる表示機能と;を前記携帯端末に実現させる。
【0029】
この形態のコンピュータプログラムによると、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との間の通信状態を示すマップを表示させる機能を携帯端末に実現させることができる。従って、ユーザは、通信状態を容易に把握することができる。
【0030】
上述した本発明の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本発明の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本発明の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本発明の独立した一形態とすることも可能である。
【0031】
また、このような形態によれば、低コスト化、省資源化、製造の容易化、性能の向上等の種々の課題の少なくとも1つを解決することができる。
【0032】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、無線LANルータ、無線中継器、通信状態制御装置、通信状態制御方法、携帯端末用アプリケーションなどの種々の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
A.第1実施形態:
(A1)無線通信システムの構成:
図1は本発明の第1実施形態としての無線通信システム10の構成を説明する説明図である。無線通信システム10は、第1の無線通信装置20と、第2の無線通信装置40と、携帯端末60と、クライアントCLとを備える。第1の無線通信装置20は、IEEE802.11に準拠したアクセスポイント装置である。第1の無線通信装置20は、ルータとしても機能し、有線を介してインターネットINTに接続されている。第1の無線通信装置20は、筺体の側面に、携帯端末60を固定することが可能な姿態案内部36を備える。姿態案内部36については後で説明する。
【0035】
クライアントCLは、無線通信機能を有するコンピュータである。クライアントCLは、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40を介して、無線LAN(Local Area Network)によって、インターネットINTと接続されている。
【0036】
第2の無線通信装置40は、IEEE802.11に準拠し、第1の無線通信装置20と無線を介してデータの送受信を行うとともに、クライアントCLと無線を介してデータの送受信を行う無線中継器である。また、第2の無線通信装置40は、筺体の側面に携帯端末60を固定することが可能な姿態案内部56を備える。姿態案内部56については後で説明する。
【0037】
携帯端末60は、通話機能を有するとともにタッチパネルを有するいわゆるスマートフォンである。携帯端末60は、IEEE802.11に準拠した無線通信インターフェースを備え、無線LANを介して第1の無線通信装置20と接続されている。また、携帯端末60は、第1の無線通信装置20を介してインターネットINTに接続されている。第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40から受信する電波の強度に応じ、携帯端末60は、第1の無線通信装置20と直接的に接続される場合と、第2の無線通信装置40を介して間接的に第1の無線通信装置20と接続される場合とがある。
【0038】
図2は、第1の無線通信装置20の構成を説明するブロック図である。第1の無線通信装置20は、CPU22、LANインターフェース24(以下、LAN/IFとも呼ぶ)、WAN(Wide Area Network)インターフェース25(以下、WAN/IFとも呼ぶ)、RAM26、ROM28、無線制御部30、NFC(Near Field Communication)インターフェース35(以下、NFC/IFとも呼ぶ)とを備え、それぞれ、バスによって相互に接続されている。また、無線制御部30は、固定式アンテナ32〜34を備える。さらに、上述のように、第1の無線通信装置20は、筺体の側面に、携帯端末60を固定するための姿態案内部36を備える。
【0039】
CPU22は、ROM28に格納されているプログラムを実行することにより、第1の無線通信装置20全体の動作制御を行う。また、CPU22は、制御信号受信部221と、通信状態制御部222とを備える。制御信号受信部221と、通信状態制御部222とは、ROM28に記憶されているプログラムをCPU22が実行することによって実現される。制御信号受信部221および通信状態制御部222が行う処理については後述する。
【0040】
ROM28には、第1の無線通信装置20の仕様に関する情報(以下、仕様情報データ281とも呼ぶ)が記憶されている。仕様情報データ281には、第1の無線通信装置20が備えるアンテナ数、アンテナタイプ、偏波特性、出力パワーに関する情報が記憶されている。具体的には、第1の無線通信装置20の仕様情報データ281には、「アンテナ数:3本、アンテナタイプ:固定式、出力パワー:18dBm、偏波特性:垂直偏波」と言うデータが記録されている。
【0041】
LAN/IF24は、有線によってLANに接続するためのインターフェースである。WAN/IF25は、インターネットINTに接続するためのインターフェースである。無線制御部30は、他の無線通信端末と無線通信を行うためのインターフェースである。無線制御部30には固定式アンテナ32〜34が接続されている。無線制御部30は、固定式アンテナ32〜34が受信した電波をデータに変換するともに、送信するデータを固定式アンテナ32〜34を介して電波として他の無線通信端末に送信する。
【0042】
NFC/IF35は、姿態案内部36に固定された携帯端末60と近距離無線通信(NFC)を行うためのインターフェースである。図示するように、NFC/IF35は、姿態案内部36と近接した位置に配置されており、姿態案内部36に固定された携帯端末60と、NFCを介した通信が可能である。姿態案内部36は、携帯端末60を第1の無線通信装置20に対して一定の姿態で固定する。ユーザが姿態案内部36の上から携帯端末60を挿入することによって、携帯端末60は第1の無線通信装置20に固定される。
【0043】
上記説明した構成を有する第1の無線通信装置20は、固定式アンテナ32〜34から出力する電波の指向性を制御することが可能である。第1の無線通信装置20は、各固定式アンテナ32〜34から出力する電波の位相差を変更し、出力された電波の重なる位置を制御することによって、電波の指向性を制御する。以下、電波の位相差を変更することによって電波の指向性を制御する制御処理を「ビームフォーミング」とも呼ぶ。以上、第1の無線通信装置20について説明した。
【0044】
図3は、第2の無線通信装置40の構成を説明する説明図である。第2の無線通信装置40は、CPU42、RAM46、LAN/IF47、ROM48、無線制御部50、NFC/IF55を備え、それぞれ、バスによって相互に接続されている。また、無線制御部50は、固定式アンテナ52〜54を備える。さらに、第2の無線通信装置40は、筺体の側面に、携帯端末60を固定するための姿態案内部56を備える。
【0045】
CPU42は、ROM48に格納されているプログラムを実行することにより、第2の無線通信装置40全体の動作制御を行う。ROM48には、第2の無線通信装置40の仕様に関する情報(以下、仕様情報データ481とも呼ぶ)が記憶されている。仕様情報データ481には、第2の無線通信装置40が備えるアンテナ数、アンテナタイプ、偏波特性、出力パワーに関する情報が記憶されている。具体的には、第2の無線通信装置40の仕様情報データ481には、「アンテナ数:3本、アンテナタイプ:固定式、出力パワー:20dBm、偏波特性:垂直偏波」と言うデータが記録されている。
【0046】
LAN/IF47は、有線によってLANに接続するためのインターフェースである。
【0047】
無線制御部50は、他の無線通信端末と無線通信を行うためのインターフェースである。無線制御部50には固定式アンテナ52〜54が接続されている。無線制御部50は、固定式アンテナ52〜54が受信した電波をデータに変換するともに、送信するデータを固定式アンテナ52〜54を介して電波として送信する。
【0048】
NFC/IF55は、姿態案内部56に固定された携帯端末60と近距離無線通信(NFC)を行うためのインターフェースである。NFC/IF55は、姿態案内部56と近接した位置に配置されており、姿態案内部56に固定された携帯端末60と、NFCを介した通信が可能である。姿態案内部56は、携帯端末60を第2の無線通信装置40に対して一定の姿態で固定する。ユーザが姿態案内部56の上から携帯端末60を挿入することによって、携帯端末60は第2の無線通信装置40に固定される。
【0049】
上記説明した構成を有する第2の無線通信装置40は、第1の無線通信装置20と同様、ビームフォーミングを行う。すなわち、第2の無線通信装置40は、各固定式アンテナ52〜54から出力する電波の位相差を制御して、各アンテナから出力された電波の重なる位置を制御する。以上、第2の無線通信装置40について説明した。
【0050】
図4は、携帯端末60の構成を説明する説明図である。携帯端末60は、CPU62、RAM63、ROM64、音声入出力部66、表示部68、操作部69、無線LAN通信制御部70、移動体通信制御部72、NFC/IF75、GPS受信機76、姿態検知部77を備え、互いにバスで接続されている。
【0051】
CPU62は、ROM64に記憶されているプログラムを実行することにより、携帯端末60全体の動作制御を行う。また、CPU62は、端末位置決定部621、第1位置情報取得部622、第2位置情報取得部623、姿態情報取得部624、仕様情報取得部625、マップ生成部626、制御信号送信部627を備える。端末位置決定部621、第1位置情報取得部622、第2位置情報取得部623、姿態情報取得部624、仕様情報取得部625、マップ生成部626、制御信号送信部627は、ROM64に記憶されているプログラムをCPU62が実行することによって実現される。
【0052】
ROM64は、フラッシュROMであり、不揮発性の半導体メモリである。ROM64には、後述する通信状態最適化処理を行うためのアプリケーションプログラムAPPが格納されている。
【0053】
音声入出力部66は、マイクおよびスピーカを備え、音声の入力および出力を行う。表示部68は、タッチパネル式のディスプレイにより構成されており、画像や各種メニュー画面等を表示する。また、表示部68は、タッチペンや指等の接触操作に応じた画像を表示する。操作部69は、各種メニューを選択するための操作ボタン、音声を調整するための操作ボタン、番号や文字等を入力するためのボタン等を備えている。
【0054】
無線LAN通信制御部70は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えばIEEE802.11a/b/g/nに準拠した無線LANのクライアントとして、無線LANのアクセスポイント(本実施形態においては、第1の無線通信装置20または第2の無線通信装置40)と無線通信を行う。移動体通信制御部72は、アンテナと、変調器やアンプと、図示しない送受信回路とを含み、例えば、3G(3rd. Generation)/LTE(Long term Evolution)等の3GPP(3rd Generation Partnership Project)に準拠した移動体通信方式により、通信キャリアとの間で、データ通信や音声通信を行う。
【0055】
NFC/IF75は、近距離無線通信を行うインターフェースである。GPS受信機76は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)を構成する人工衛星から送信された電波を受信することによって、携帯端末60の現在位置座標(経度、緯度、高度)を取得する。姿態検知部77は、携帯端末60の加速度を測定することによって、携帯端末60の傾きを検出する。本実施形態においては、携帯端末60の傾きは、北方向を正方向とするX軸、東方向を正方向とするY軸、垂直上方向を正方向とするZ軸を基準として検出される。以上、携帯端末60の構成について説明した。
【0056】
(A2)通信状態最適化処理:
無線通信システム10が行う通信状態最適化処理について説明する。
図5は、通信状態最適化処理の流れを示すフローチャートである。通信状態最適化処理は、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の通信状態を最適化するための処理である。通信状態最適化処理は、情報取得処理、第1通信状態マップ生成処理、最適化実行処理、および第2通信状態マップ生成処理の4つサブルーチンから構成される。
【0057】
通信状態最適化処理は、ユーザが携帯端末60のアプリケーションプログラムAPPを起動させることによって開始される。具体的には、表示部68に表示されているアプリケーションプログラムAPP用のアイコンをユーザが操作することによって、CPU62が、アプリケーションプログラムAPPを実行する。
【0058】
通信状態最適化処理が開始されると、携帯端末60と、第1の無線通信装置20と、第2の無線通信装置40とが協働して情報取得処理を行う(ステップS100)。情報取得処理は、携帯端末60が、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40に関する種々の情報を取得する処理である。図示するように、携帯端末60は、第1の無線通信装置20の姿態案内部36に固定された状態で、第1の無線通信装置20に関する情報を取得する。具体的には、携帯端末60は、第1の無線通信装置20の位置情報、姿態情報、仕様情報を取得する。
【0059】
また、携帯端末60は、第2の無線通信装置40の姿態案内部56に固定された状態で、第2の無線通信装置40に関する情報を取得する。具体的には、携帯端末60は、第2の無線通信装置40の位置情報、姿態情報、仕様情報、および、受信電波強度(以下、RSSI:Received Signal Strength Indicationとも呼ぶ)を取得する。
【0060】
情報取得処理の終了後、無線通信システム10は、第1通信状態マップ生成処理を行う(ステップS200)。第1通信状態マップ生成処理は、情報取得処理において取得した第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の情報に基づいて、携帯端末60が、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の通信状態を示すマップ(第1通信状態マップMP1)を生成し、表示部68に表示する処理である。
【0061】
図6は、第1通信状態マップ生成処理によって携帯端末60が表示部68に表示する第1通信状態マップMP1を示す説明図である。第1通信状態マップMP1には、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の座標位置に、第1の無線通信装置20を示すポリゴン20Pおよび第2の無線通信装置40を示すポリゴン40Pが表示される。また、第1通信状態マップMP1には、第1の無線通信装置20が出力している電波の電波強度の値S1、および、第2の無線通信装置40が受信している電波の電波強度(RSSI)を示す値S2および、リンクレートを示す値L2が表示される。さらに、第1通信状態マップMP1には、第1の無線通信装置20が出力した電波の減衰を表現した線画F1が表示される。ユーザは、第1通信状態マップMP1を視認することによって、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の現在の通信状態を認識することができる。さらに、第1通信状態マップMP1には、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との通信状態を最適化するための最適化実行ボタンBTが表示されている。ユーザが最適化実行ボタンBTを操作すると、無線通信システム10は、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との通信状態の最適化を行う。
【0062】
説明を
図5に戻す。無線通信システム10は、第1通信状態マップ生成処理の終了後、最適化実行処理を行う(ステップS300)。最適化実行処理は、ユーザが最適化実行ボタンBTを操作することにより開始される。最適化実行処理は、第2の無線通信装置40が受信する第1の無線通信装置20からの電波の強度を最適化する処理である。本実施形態においては、最適化実行処理は、第2の無線通信装置40が受信する第1の無線通信装置20からの電波の強度を最大にする処理である。具体的には、第1の無線通信装置20が、ビームフォーミングを用いて、出力する電波の指向性を変更し、第2の無線通信装置40が受信する第1の無線通信装置20からの電波の強度を最大にする。
【0063】
最適化実行処理の終了後、無線通信システム10は、第2通信状態マップ生成処理を行う(ステップS400)。第2通信状態マップ生成処理は、携帯端末60が、最適化実行処理後の第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の通信状態を示すマップ(第2通信状態マップMP2)を生成し、表示部68に表示する処理である。
【0064】
図7は、第2通信状態マップ生成処理によって携帯端末60が表示部68に表示する第2通信状態マップMP2を示す説明図である。第2通信状態マップMP2には、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の座標位置もポリゴン20Pおよびポリゴン40Pが表示される。また、第2通信状態マップMP2には、第1の無線通信装置20が出力している電波の電波強度の値S3、および、最適化実行処理を行った後に第2の無線通信装置40が受信している電波の電波強度(RSSI)の値S4およびリンクレートを示す値L4が表示される。さらに、第2通信状態マップMP2には、第1の無線通信装置20が出力した電波の減衰を表現した線画F2が表示される。ユーザは、第2通信状態マップMP2を視認することによって、最適化実行処理後の第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の通信状態を認識することができる。第2通信状態マップ生成処理の終了によって、無線通信システム10は、通信状態最適化処理を終了する。
【0065】
(A3)情報取得処理:
次に、通信状態最適化処理を構成する各サブルーチンについて説明する。
図8は、情報取得処理(
図5:ステップS100)の流れを示すフローチャートである。情報取得処理を開始すると、携帯端末60(CPU62)は、携帯端末60を第1の無線通信装置20の姿態案内部36に固定することをユーザに促す案内表示を表示部68に表示する(ステップS102)。
【0066】
案内表示を視認したユーザが携帯端末60を第1の無線通信装置20の姿態案内部36に固定すると、CPU62は、NFC/IF75を介して第1の無線通信装置20のNFC/IF35を検出する(ステップS104)。CPU62は、NFC/IF35の検出によって、携帯端末60が姿態案内部36に固定されたことを認識する。
【0067】
その後、CPU62は、携帯端末60と第1の無線通信装置20との無線LANによる接続を行う(ステップS106)。具体的には、CPU62は、第1の無線通信装置20との間でアソシエーションを行う。アソシエーションを行う際、携帯端末60は、NFCを介して第1の無線通信装置20から、SSIDやその他の接続情報を取得する。アソシエーションによって、第1の無線通信装置20は、携帯端末60を無線LAN接続する(ステップS108)。
【0068】
無線LAN接続後、CPU62は、第1位置情報取得部622の機能として、第1の無線通信装置20の位置情報(以下、第1位置情報とも呼ぶ)を取得する。また、CPU62は、姿態情報取得部624の機能として、第1の無線通信装置20の姿態情報を取得する(ステップS110)。第1位置情報の取得は、第1位置情報取得部622が、GPS受信機76を用いて第1の無線通信装置20の位置情報を検出することによって行う。第1位置情報取得部622は、端末位置決定部621が携帯端末60の位置として検出した座標(緯度、経度、高度)を第1の無線通信装置20の座標として採用してもよい。
【0069】
さらに、第1位置情報取得部622が第1の無線通信装置20の位置情報を取得するときは、携帯端末60は姿態案内部36に固定され一定位置であるので、携帯端末60に対する第1の無線通信装置20の相対位置は一定である。従って、第1位置情報取得部622は、姿態案内部36に固定された携帯端末60に対する第1の無線通信装置20の相対位置を予め取得しておき、端末位置決定部621が携帯端末60の位置として検出した座標を修正することによって第1の無線通信装置20の座標を取得するとしてもよい。
【0070】
第1の無線通信装置20の姿態情報の取得は、姿態情報取得部624が、姿態検知部77を用いて第1の無線通信装置20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)の傾きを検出することによって行う。携帯端末60が第1の無線通信装置20の姿態情報を取得するときは、携帯端末60は姿態案内部36に固定され一定の姿態であるので、携帯端末60に対する第1の無線通信装置20の相対的な姿態は一定である。従って、姿態情報取得部624は、姿態案内部36に固定された携帯端末60に対する第1の無線通信装置20の相対的な姿態を予め取得しておき、携帯端末60の姿態として検出した3軸(X軸、Y軸、Z軸)の傾きを修正することによって第1の無線通信装置20の姿態を取得する。
【0071】
その後、CPU62は、仕様情報取得部625の機能として、NFCを介して、第1の無線通信装置20に仕様情報データの取得要求を送信する(ステップS112)。
【0072】
第1の無線通信装置20のCPU22は、仕様情報データの取得要求を携帯端末60から受信すると、ROM28から仕様情報データ281を読み出し、NFC/IF35およびNFC/IF75を介して、携帯端末60に対して仕様情報データを送信する(ステップS114)。CPU62は、第1の無線通信装置20から受信した仕様情報データをROM64に記憶する(ステップS116)。
【0073】
その後、CPU62は、携帯端末60を第2の無線通信装置40の姿態案内部56に固定することをユーザに促す案内表示を表示部68に表示する(ステップS122)。その後にCPU62が第2の無線通信装置40と行うステップS124〜S136の処理は、CPU62が第1の無線通信装置20と行ったステップS102〜S116の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
CPU62は、ステップS136の処理を行った後、NFCを介して、第2の無線通信装置40に、RSSI情報(電波受信強度)と、第1の無線通信装置20と接続によるリンクレートの取得要求を送信する(ステップS134)。第2の無線通信装置40のCPU42は、RSSI情報およびリンクレートの取得要求を受信すると、無線制御部50を用いて、固定式アンテナ52〜54が受信している第1の無線通信装置20からの電波のRSSIおよびリンクレートを検出し、NFCを介して、RSSIの値をRSSI情報、リンクレートの値をリンクレート情報として携帯端末60に送信する(ステップS140)。CPU62は、第2の無線通信装置40からRSSI情報とリンクレート情報を受信すると、ROM64に記憶する(ステップS142)。その後、情報取得処理は終了する。
【0075】
(A4)第1通信状態マップ生成処理:
図9は、携帯端末60が行う第1通信状態マップ生成処理の流れを示すフローチャートである。処理を開始すると、CPU62は、マップ生成部626の機能として、第1通信状態マップMP1を生成するためのマップレイヤー上に、第1の無線通信装置20の位置および第2の無線通信装置40の位置を表示する(ステップS202)。具体的には、マップ生成部626は、ROM64に記憶した第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の位置座標を読み出し、各無線通信装置の位置座標に対応するマップレイヤーの位置に、第1の無線通信装置20を示すポリゴン20P、および第2の無線通信装置40を示すポリゴン40Pを表示する(
図6参照)。
【0076】
その後、CPU62は、ROM64に記憶した第1の無線通信装置20の仕様情報データ281に含まれる出力パワーの値を読み出し、マップレイヤー上のポリゴン20Pの近傍に出力パワーの値S1を重畳する(ステップS204)。そして、CPU62は、ROM64に記憶した第2の無線通信装置40のRSSI情報とリンクレート情報を読み出し、マップレイヤー上のポリゴン40Pの近傍にRSSIの値S2およびリンクレートの値L2を重畳する(ステップS206)。
【0077】
その後、CPU62は、第1の無線通信装置20が出力した電波の減衰を表現した線画F1をマップレイヤーに重畳する(ステップS208)。CPU62は、ステップS202〜S208によって加工したマップレイヤーを第1通信状態マップMP1として生成し(
図6参照)、表示部68に第1通信状態マップMP1として表示する(ステップS210)。その後、CPU62は、第1通信状態マップ生成処理を終了する。
【0078】
(A5)最適化実行処理:
図10は、最適化実行処理の流れを示すフローチャートである。CPU62は、ユーザが最適化実行ボタンBTを操作したことを認識すると(ステップS302:YES)、情報取得処理によって取得した第1の無線通信装置20の位置座標、第2の無線通信装置40の位置座標、および、3軸(X軸、Y軸、Z軸)を基準とした第1の無線通信装置20の傾きを読み込み、第1の無線通信装置20を基準とした第2の無線通信装置40の相対方向ベクトル(a,b,c)を算出する(ステップS304)。
【0079】
図11は、相対方向ベクトルの算出方法を説明する説明図である。CPU62は、第1の無線通信装置20の位置座標(X1,Y1,Z1)および第2の無線通信装置40の位置座標(X2、Y2、Z2)に基づいて、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との相対的な位置関係を算出する。また、CPU62は、算出した第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との相対的な位置関係と、第1の無線通信装置20の3軸における傾きとに基づいて、第1の無線通信装置20の装置本体を基準とした基準方向ベクトルDから見た、第2の無線通信装置40の相対方向ベクトル(a,b,c)を算出する。
【0080】
説明を
図10に戻す。第1の無線通信装置20から見た第2の無線通信装置40の相対方向ベクトル(a,b,c)を算出すると、CPU62は、制御信号送信部627の機能として、無線LANを介して第1の無線通信装置20に制御信号を送信する(ステップS306)。制御信号には、相対方向ベクトル(a,b,c)の情報が含まれる。
【0081】
第1の無線通信装置20のCPU22は、制御信号受信部221の機能として制御信号を受信する(ステップS308)。そして、CPU22は、通信状態制御部222の機能として、相対方向ベクトル(a,b,c)の方向の電波強度が強くなるように電波指向性を制御する(ステップS310)。すなわち、通信状態制御部222は無線制御部30を制御して、相対方向ベクトル(a,b,c)の方向の電波強度が強くなるように固定式アンテナ32〜34から出力する電波の位相差を制御するビームフォーミングを行う。
【0082】
その後、CPU22は、通信状態の制御の終了通知を、無線LANを介して携帯端末60に送信する(ステップS312)。携帯端末60は、第1の無線通信装置20から電波指向性制御の終了通知を受信すると、最適化実行処理後を終了する。
【0083】
(A6)第2通信状態マップ生成処理:
図12は、第2通信状態マップ生成処理の流れを示すフローチャートである。処理を開始すると、携帯端末60のCPU62は、マップ生成部626の機能として、無線LANを介して第2の無線通信装置40にRSSI情報の取得要求を送信する(ステップS402)。第2の無線通信装置40のCPU42は、RSSI情報の取得要求を受信すると、無線制御部50を用いて、固定式アンテナ52〜54が受信している第1の無線通信装置20からの電波のRSSIを検出し、無線LANを介して、RSSIの値をRSSI情報として携帯端末60に送信する(ステップS404)。CPU62は、第2の無線通信装置40からRSSI情報を受信すると、ROM64に記憶する(ステップS406)。
【0084】
その後、CPU62は、第2通信状態マップMP2を生成するためのマップレイヤー上に、第1の無線通信装置20の位置および第2の無線通信装置40の位置を表示する(ステップS412)(
図7参照)。そして、CPU62は、ROM64に記憶した第1の無線通信装置20の仕様情報データ281に含まれる出力パワーの値を読み出し、マップレイヤー上のポリゴン20Pの近傍に出力パワーの値を重畳する(ステップS414)。そして、CPU62は、ROM64に記憶した最適化実行処理後、第2の無線通信装置40のRSSI情報を読み出し、マップレイヤー上のポリゴン40Pの近傍にRSSIの値を重畳する(ステップS416)。
【0085】
その後、CPU62は、第1の無線通信装置20が出力した電波の減衰を表現した線画F2をマップレイヤーに重畳する(ステップS418)。CPU62は、ステップS412〜S418によって加工したマップレイヤーを第2通信状態マップMP2として生成し(
図7参照)、表示部68に第2通信状態マップMP2として表示する(ステップS420)。その後、CPU62は、第2通信状態マップ生成処理を終了する。
【0086】
以上説明したように、無線通信システム10は、携帯端末60を用いて第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の通信状態を制御するので、通信状態を簡易に制御することができる。特に本実施形態においては、第1の無線通信装置20の電波指向性を簡易に制御することがきる。
【0087】
また、第1の無線通信装置20の位置情報、第2の無線通信装置40の位置情報、および第1の無線通信装置20の姿態情報を、携帯端末60を用いて取得するので、位置情報および姿態情報を高精度に取得することができる。さらに、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40は、各々、姿態案内部36および姿態案内部56を備える。従って、携帯端末60は、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40に対して常に一定の相対位置で位置情報および姿態情報を取得可能である。よって、位置情報および姿態情報の精度をさらに向上させることができる。結果として、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との通信状態を高精度に制御することができる。
【0088】
また、無線通信システム10は、第1の無線通信装置20が備える複数のアンテナから出力する電波の位相差を制御することによって、電波指向性を制御するので、第1の無線通信装置20が備えるアンテナが固定式であっても、電波指向性を制御することができる。
【0089】
無線通信システム10は、携帯端末60の表示部68に、第1通信状態マップMP1および第2通信状態マップMP2を表示するので、ユーザは、容易に第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との間の通信状態を把握することができる。また、ユーザは、第2通信状態マップMP2を視認することによって、最適化された通信状態を認識することができる。
【0090】
B.第2実施形態:
次に、本発明における第2実施形態について説明する。第2実施形態と第1実施形態のとの違いは、無線通信システム10aがサーバ80を備えることと、情報取得処理において携帯端末60が、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の仕様情報を、サーバ80から取得することである。
【0091】
図13は、無線通信システム10aの構成を説明する説明図である。
図13において、第1実施形態と同じ構成については、第1実施形態(
図1)と同じ符号を用いる。図示するように、無線通信システム10aは、第1の無線通信装置20、第2の無線通信装置40、携帯端末60、クライアントCLに加え、サーバ80を備える。サーバ80は、インターネットINTに接続されている。携帯端末60は、第1の無線通信装置20を介してインターネットINTに接続され、サーバ80へのアクセスが可能である。
【0092】
サーバ80には、種々の無線通信装置の仕様情報を記憶した仕様情報データベース82(以下、仕様情報DB82とも呼ぶ)が格納されている。図示するように、仕様情報DB82は、第1の無線通信装置20、第2の無線通信装置40をはじめ、種々の無線通信装置の仕様が記録されるデータベースである。図示するように、仕様情報DB82は、無線通信装置の型番毎に、アンテナ数、アンテナタイプ、偏波特性、出力パワーを記憶している。
【0093】
無線通信システム10aは、情報取得処理を実行した際、携帯端末60が各無線通信装置の仕様情報をサーバ80から取得する。具体的には、携帯端末60は、第1の無線通信装置20の姿態案内部36、および、第2の無線通信装置40の姿態案内部56に固定された際に、NFCを介して、各無線通信装置の型番情報を取得する。そして、携帯端末60は、インターネットINTを介してサーバ80の仕様情報DB82にアクセスし、各無線通信装置の型番に対応した仕様情報を取得する。なお、携帯端末60は、仕様情報の一部を第1の無線通信装置20,40からNFCを介して取得し、残りの仕様情報をサーバ80から取得するとしてもよい。このようにしても、携帯端末60は、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の仕様情報を取得することができる。
【0094】
以上説明したように、第2実施形態における無線通信システム10aは、仕様情報をサーバ80の仕様情報DB82に格納しているので、第1の無線通信装置20のROM28および第2の無線通信装置40のROM48は、仕様情報データ281,481を記憶するための記憶領域を削減することができる。
【0095】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(C1)変形例1:
上記実施形態においては、第1の無線通信装置20が備えるアンテナは固定式であるとしたが、第1の無線通信装置20が備えるアンテナが可動式であるとしてもよい。また、第1の無線通信装置20は、可動式アンテナを駆動させる駆動部を備えるとしてもよい。第1の無線通信装置20は、このような構成を備えることにより、出力する電波の偏波特性を制御することができる。
【0096】
図14は、変形例1における、第1の無線通信装置20aおよび第2の無線通信装置40aを示す説明図である。第1の無線通信装置20aは、ロッド状の可動式アンテナ33a,34aを備える。また、第1の無線通信装置20aは、可動式アンテナ33a,34bを駆動させる駆動部38を備える。
図14の構成において、第1の無線通信装置20aのCPUは、可動式アンテナ33a,34aの位置を検出して、仕様情報データを自動的に更新してもよい。可動式アンテナ33a,34aの位置の検出は、例えば、駆動部38に内蔵されたスイッチにより実現可能である。さらに、
図14の構成において、ユーザが、HTTP(HyperText Transfer Protocol)等の手段により提供される第1の無線通信装置20aの設定画面を介して、仕様情報データを更新してもよい。第2の無線通信装置40aは、ロッド状の固定式アンテナ53a,54aを備える。なお、第2の無線通信装置40aにおいて、固定式アンテナ53aは垂直偏波用に配置され、固定式アンテナ54aは水平偏波用に配置されている。
図14における配置はあくまで一例である。
【0097】
例えば、
図14に示すように、固定式アンテナ53a,54aの長手方向が垂直方向に向くように第2の無線通信装置40aが設置されている場合、第1の無線通信装置20aが出力する電波の偏波特性は、垂直偏波であることが望ましい。変形例1における携帯端末60aは、情報取得処理において、第2の無線通信装置40aの姿態情報(X軸、Y軸、Z軸に対する傾き)とアンテナタイプとに基づいて、第2の無線通信装置40aに最適な偏波特性(偏波方向)を算出する。そして、最適化処理において、携帯端末60aは、第2の無線通信装置40aに最適な偏波特性(偏波方向)に関する情報(偏波特性情報)を含んだ制御信号を、第1の無線通信装置20に送信する。
【0098】
第1の無線通信装置20aは、制御信号に含まれる偏波特性情報に基づいて可動式アンテナ33a,34aを駆動させ、第1の無線通信装置20aが出力する電波の偏波特性を、第2の無線通信装置40aに最適な偏波特性となるように制御する。
図14の例の場合、第1の無線通信装置20aは、長手方向が垂直方向となるように可動式アンテナ33a,34aを駆動させる。このようにすることで、第1の無線通信装置20から出力する電波を、第2の無線通信装置40aにとって最適な偏波特性にすることができる。従って、第1の無線通信装置20と第2の無線通信装置40との通信状態をさらに最適な状態にすることができる。
【0099】
なお、仮に、固定式アンテナ53a,54aの長手方向が水平方向に向くように第2の無線通信装置40aが設置されている場合、携帯端末60が送信する制御信号によって、第1の無線通信装置20aは、長手方向が水平方向、かつ、固定式アンテナ53a,54aの長手方向と平行となるように可動式アンテナ33a,34aを駆動させる。このようにすることで、第1の無線通信装置20から出力する電波を、第2の無線通信装置40aにとって最適な偏波特性にすることができる。
【0100】
(C2)変形例2:
上記実施形態においては、第1通信状態マップMP1および第2通信状態マップMP2には、第1の無線通信装置20が出力する電波の電波強度および第2の無線通信装置40が受信する受信電波強度を表示したが、さらに、第2の無線通信装置40が出力する電波の電波強度、および、第1の無線通信装置20が受信する受信電波強度を表示するとしてもよい。情報取得処理において、携帯端末60が第1の無線通信装置20からRSSIを取得し、第2の無線通信装置40から出力パワーを取得することによって、第1通信状態マップMP1に、第2の無線通信装置40が出力する電波の電波強度、および、第1の無線通信装置20が受信する受信電波強度を表示することができる。また、第2通信状態マップ生成処理において、携帯端末60が、第1の無線通信装置20からRSSIを取得することによって、第2通信状態マップMP2に、第2の無線通信装置40が出力する電波の電波強度、および、第1の無線通信装置20が受信する受信電波強度を表示することができる。
【0101】
(C3)変形例3:
上記実施形態においては、最適化実行処理として、第1の無線通信装置20が出力する電波の指向性を制御したが、第2の無線通信装置40が出力する電波の指向性を制御するとしてもよい。最適化処理において、第2の無線通信装置40に対する第1の無線通信装置20の相対方向に、第2の無線通信装置40が出力する電波の電波強度が最大になるように、第2の無線通信装置40から出力する電波の指向性を制御することによって実現することができる。電波の指向性の制御方法としては、第2の無線通信装置40が備えるアンテナが固定式である場合には電波の位相差を制御する方法を採用することができる。第2の無線通信装置40が備えるアンテナが稼動式である場合にはアンテナを駆動させる方法を採用することができる。
【0102】
(C4)変形例4:
上記実施形態においては、第1の無線通信装置20が出力する電波の指向性を変更する方法として、複数のアンテナから出力される電波の位相差を制御したが、第1の無線通信装置20が備えるアンテナが可動式アンテナである場合には、アンテナを駆動させることによって電波の指向性を変更するとしてもよい。
【0103】
(C5)変形例5:
上記実施形態においては、姿態案内部36,56は、携帯端末60を固定する態様であったが、他の態様を採用するとしてもよい。例えば、姿態案内部36,56は、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の筐体の側面に表示された案内図であってもよい。例えば、案内図としては、第1の無線通信装置20および第2の無線通信装置40の筐体の側面に携帯端末60を予め定められた姿態で当接させた場合の携帯端末60の輪郭を線画として表現した図を採用することができる。