(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ発色層(B)が、酸化チタン、アンチモンドープ酸化物および銅モリブデン複合酸化物から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載のレーザ印字積層体の製造方法。
レーザ発色層(B)のバインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体および硝化綿から選ばれる1種類以上の樹脂を含有していることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のレーザ印字積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
先ず、レーザマーキング用積層体について説明する。
レーザマーキング用積層体は、フィルム層(A)上にレーザ発色層(B)、必要に応じて接着層(C)、基材層(D)を形成することで得られる。レーザ発色層(B)はレーザ発色剤を含有するレーザ発色性印刷インキ、もしくはレーザ発色性塗料を印刷、塗工することで形成される。
【0021】
積層体の基本構成は、1) フイルム層( A ) /レーザ発色層(B) / 接着層(C)/基材層(D)、2)フイルム層( A ) /レーザ発色層(B) /基材層(D)である。
本発明においては、前述のレーザマーキング用積層体のレーザ発色層が隣接する二つの界面、即ち(1)フイルム層(A)/レーザ発色層(B)、(2)レーザ発色層(B)/接着剤層(C)もしくは基材層(D)の相対的接着強度の違いに基付き、印字方向、印字の形態を適宜選択することにより印字の視認性が大きく向上することを見出したものである。
【0022】
具体的には、レーザ印字前の積層体において、フイルム層(A)と基材層(D)間で剥離処理を行なった際、層間剥離の生じる界面により、そして基材層(D)のレーザ光透過性により、レーザ印字を行なう面、レーザ印字が正文字印字、或いは鏡文字印字であるかを適宜選択することにより印字濃度の高く、視認性に優れた印刷物を得ることができる。本発明により、種々の積層構成を有する積層体に対して印字濃度が高く、視認性に優れたレーザ印字物を得ることが可能となった。
また、レーザ印字濃度、視認性を高める方法として、複数の線数を印字する方法が知られているが、レーザ印字に時間を要し、生産効率が劣る。本発明により最小回数のレーザ印字により、優れた視認性が得られ、生産効率も向上させることができる。
【0023】
その他の構成として(3) フイルム層( A ) /レーザ発色層(B) /印刷インキ層/基材層(D)、(4) フイルム層( A ) /レーザ発色層(B) /印刷インキ層/接着層(C)/基材層(D)等が挙げられる。これらにおいても同様であり、フィルム層(A)側から見て視認性が良好であるためには、フイルム層( A ) /レーザ発色層(B)で層間剥離することが必要である。
【0024】
本発明におけるフィルム層(A)と基材層(D)間で剥離処理は、ラミネート物の引張り強度試験に用いられる公知の方法、装置により行なうことができる、例えばラミネート物を定形に切り出し、その一部を前もって剥離させ、引っ張り試験機で剥離強度を測定する方法である。市販の装置としてはインテスコ製201万能引張り試験機がある。
【0025】
本態様に用いられるフィルム層(A)としては、レーザ光を透過する透明なプラスチックフィルムを使用する。プラスチックフィルムとしては、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム等がある。ポリエステル系フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド系フィルムとしてはナイロン(Ny)、ポリオレフィン系フィルムとしては低密度ポリエチレン、無延伸および延伸ポリプロピレン(OPP)等が挙げられる。
その他の透明プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリビニルアルコールフイルム等、及びポリ塩化ビニリデン等をコーテイングしたポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セロファン等のフイルムも挙げられる。また、プラスチックフイルムとして熱収縮フイルムを使用することもできる。熱収縮性フイルムとしては、ポリエステル系、スチレン系等がある。また、これらフイルム等にアルミナ、シリカ等を蒸着した蒸着フイルム等も使用できる。
【0026】
本発明においては、フィルム層(A)を構成するプラスチックフィルムは透明であることが必要である。透明であるとは、レーザマーキング用積層体において該プラスチックフィルムを通してレーザ発色層(B)の印字、或いはレーザ層発色(B)以外の通常の印刷インキ層部分が十分に認識できることをいう。一般に見た目で透明なプラスチックフィルムは本発明において使用できるが、プラスチックフィルムに着色剤を練り込んで透明さが低下したもの、透明なプラスチックフィルム上に不透明な膜が蒸着、コーテイングされているものは適さない。
【0027】
フィルム層(A)を構成する透明なプラスチックフイルムの厚みは特に限定されないが、通常印刷に用いられるフイルムがそのまま適用できる。例えばPETの場合、12〜40μm、ナイロンの場合は15〜40μm、OPPの場合は20〜50μmが好適に用いられる。
【0028】
フィルム層(A)とレーザ発色層(B)が層間剥離するためには、使用するプラスチックフィルムがポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルムであり、その印刷面の表面張力が45mN/m以下であることが好ましい。これらのプラスチックフィルムはレーザ発色層(B)に対して接着性が劣る傾向であり、レーザ照射を行なうとフィルム層(A)とレーザ発色層(B)が層間剥離し易く、フィルム層(A)側から見た場合、視認性に優れたレーザ印字積層体が得られる。フィルム層(A)の表面張力は、例えば、濡れ指数としてJIS K6768(ポリエチレン及びポリプロピレンフィルムの濡れ試験方法)で求められる。
【0029】
また、本発明において、プラスチック層(A)をなすプラスチックフィルムは、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルムでありコロナ処理を施していないコロナ未処理面を有していることが好ましい。レーザ発色層(B)をフィルム層(A)のコロナ未処理面側に形成し、レーザマーキング用積層体を製造すると、フィルム層(A)とレーザ発色層(B)での層間剥離が起こり易く、フィルム層(A)側から見た場合印字濃度の高く、視認性の良好なレーザ印字積層体を得ることができる。
【0030】
本発明の原理を推察も含めて更に説明する。前述したようにレーザ照射するとレーザ発色層(B)内で発色剤の変色、発色剤近傍のバインダー樹脂の炭化に伴い、分解ガス、気化ガスが発生する。これらはレーザ照射スポット付近に膨れが生じ、凸が形成されることでも分かる。
【0031】
レーザ照射を行なった場合、分解、気化ガスの発生が全く、或いは殆どない場合、レーザマーキング積層体のレーザ照射スポット付近では膨れは起こらなく、発色した発色剤、炭化したバインダー樹脂は、基本的にはレーザ発色層(B)内でレーザ光のビーム径の透過体積内にのみ存在すると考えられる。(
図1)そのため、フィルム層(A)、または基材層(D)から見た場合、視認できる印字面積は、ほぼレーザビーム径にほぼ等しいと言える。
【0032】
しかし、本発明に示したように特定の層間剥離を起こす積層体、例えば、フィルム層(A)とレーザ発色層(B)間が層間剥離し易い構成の場合、レーザ照射を行なうと、1)レーザ発色層(B)内で発生した分解、気化ガスが“内部圧力”となり、レーザ照射スポットを含む領域で接着強度がより弱い層間、すなわちフィルム層(A)/レーザ発色層(B)間に層間剥離を引き起こさせる。2)また、同時に発色した発色剤、炭化したバインダー樹脂は、レーザ径の透過体積内にとどまらず、層間剥離に伴いあらたに発生した“空間内”に“飛散”した状態になる。(
図2)フィルム層(A)側から見るとレーザ照射スポットを含む領域は、層間剥離し、レーザ発色層(B)のその部分はあたかも“口を開いた”状態であり、しかも発色した発色剤、炭化した樹脂がレーザスポット径以上に拡がった状態、すなわち印字スポット面積がより大きく拡がった状態に見える。 これは、あたかもビーム径のより大きいレーザ光を照射した印字物、レーザ照射の本数を増やした印字物と同等な状態であり、視認性が極めて高い印字物が得られる。 この場合、基材層(D)が透明なフィルムとすると、基材層(D)側からみると、レーザ発足層(B)/接着剤層(C)、或いは接着剤層(C)/基材層(D)で層間剥離していないため、僅かレーザのスポット径に相当する領域のみが発色したように見えるのみで、基材層(D)側からの視認性は乏しい。
【0033】
本発明においては、視認する側は剥離が起こっている界面に近い側である。具体的には フィルム層
(A)とレーザ発色層(B)が層間剥離する場合には、フィルム層側から視認する。レーザ発色層(B)と、接着層(C)もしくは基材層(D)で層間剥離する場合は、基材層(D)側から視認する。
レーザ発色層(B)/接着層(C)で層間剥離する場合、接着層(C)は元々透明であるため、また基材層(D)も透明であるため基材層(D)側から見れば上記の例の説明がそのまま当てはまる。
【0034】
本発明を更に説明すると、(1)フィルム層(A)と基材層(D)間で剥離処理を行った際に、フィルム層(A)とレーザ発色層(B)が層間剥離する場合には、下記(イ)、(ロ)のいずれかでレーザ印字する。
(イ)基材層がレーザ光を透過しない場合はフィルム層(A)側から正文字をレーザ印字する。
この場合視認が高いのは、フィルム層(A)側である。正文字を印字するので、印字状態を把握しながら印字し易く、特に好ましい。
(ロ)基材層がレーザ光を透過する場合は、基材層(D)側から鏡文字をレーザ印字する。または、フィルム層(A)側から正文字をレーザ印字する
この場合基材層(D)もレーザ光を透過するため、基材層(D)側からも印字可能であるが、視認性が良好なのは剥離面により近いフィルム層(A)側である。フィルム層(A)側から視認するためには基材層(D)側から鏡文字としてレーザ印字する必要がある。これら鏡文字はフィルム層(A)側から見ると通常の正文字として認識できる。
【0035】
(2) フィルム層(A)と基材層(D)間で剥離処理を行った際に、レーザ発色層(B)と、接着層(C)もしくは基材層(D)で層間剥離する場合は、下記(ハ)でレーザ印字する
(ハ)基材層がレーザ光を透過する場合は、基材層(D)側から正文字をレーザ印字する、または、フィルム層(A)側から鏡文字をレーザ印字する
何れの方向から印字しても視認性が良好なのは基材層(D)側である。フィルム層(A)側から見ると、フィルム層(A)側は剥離面がないため、僅かレーザスポット径のみの印字面積であり、視認性は劣る。
【0036】
レーザ発色層(B)は、レーザ発色性の印刷インキおよび/または塗工液より形成され、印刷インキであることが好ましい。レーザ発色性の印刷インキは、レーザ発色性を有する材料から選択される1種以上の材料の他に、通常はバインダー樹脂を含有し、さらに必要に応じて、インキ適性、印刷適性などを向上させる添加剤などを含有する。レーザ発色性を有する材料としては、無機材料、有機材料がある。本態様に用いられる無機材料は、例えば、(1)金属単体、(2)金属塩、(3)金属水酸化物、(4)金属の酸化物等を示す。
【0037】
1)金属の単体としては、鉄、亜鉛、スズ、ニッケル、銅、銀、金等が挙げられる。
【0038】
(2)金属の塩としては、炭酸銅、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、炭酸ランタン、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸カドミウム、硝酸亜鉛、硝酸コバルト、硝酸鉛、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸パラジウム、硝酸ランタン、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸カドミウム、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸パラジウム、塩化銅、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銀、塩化亜鉛、リン酸銅、リン酸鉄、リン酸コバルト、ピロリン酸銅、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸コバルト、シュウ酸銅、シュウ酸鉄、シュウ酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸鉄、安息香酸コバルト、芳香環を有するホスホン酸銅などが挙げられる。
【0039】
(3)金属の水酸化物としては、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アンチモン、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化ランタン等が挙げられる。
【0040】
(4)金属の酸化物としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マンガン、酸化モリブテン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化パラジウム、酸化ランタン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、銅−モリブテン複合酸化物(42−903A、東缶マテリアル・テクノロジー株式会社製)等が挙げられる。 その他の金属酸化物としては、層状構造を有する、マイカ、モンモリロナイト、スメクタイト等を用いることもできる。
【0041】
無機材料の中では、銅化合物、モリブデン化合物、酸化チタン、アンチモン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物、クロム化合物、またはジルコニウム化合物、から選ばれる1種以上の材料、より好ましくは、銅化合物、モリブデン化合物、酸化チタン、アンチモン化合物、クロム化合物、ニッケル化合物を有する材料、さらに好ましくは、酸化チタン、アンチモンドープ酸化物、銅−モリブデン複合酸化物から選ばれる1種以上である。特に、銅−モリブテン複合酸化物は自己発色性が強く、また銅−モリブデン複合酸化物自身の近傍の樹脂なども黒化させやすいため、視認性の優れた印字物が得られる。また、それ自身は黒色化しないものの、近傍の樹脂を黒化し易いアンチモンドープ酸化スズ、発色層中に高濃度で含有させることが出来る酸化チタンも発色性、バックグランドが元々白色であることから視認性が非常に高く、好適に用いられる。酸化チタンとしてはアナターゼ、ルチル型共に使用できる。
【0042】
レーザ発色層(B)にはレーザ発色剤の他、着色顔料を用いると印字物のバックグランドとして鮮明性、コントラスト、視認性を向上させることができる。本発明に使用するレーザ発色剤においては、黄色、紅色、藍色、もしくは白色顔料等の着色顔料を必要に応じて併用することにより視認性の高いレーザ発色層(B)を得ることができる。
【0043】
レーザ発色性印刷インキに用いるバインダー樹脂として、例えばセルロース、メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カゼイン、ゼラチン、スチレン/無水マレイン酸共重合体塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン樹脂、アクリル/スチレン樹脂等が挙げられる。溶剤型樹脂としてはスチレン/マレイン酸、アクリル/スチレン樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネイト、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、硝化綿等がある。これらの樹脂は単独、または2種以上混合することで得られる。
これら樹脂の中でポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、硝化綿から選ばれる1種以上の樹脂を用いることが好ましい。特にポリウレタン樹脂はフイルムへの密着性が良く、熱的緩和性にも優れていることから積層体として好適に用いられる。また、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、硝化綿は、レーザによる発色性が良好で、レーザ発色剤のレーザ吸収性が乏しくても、印刷層、塗工層としての発色性を向上させる。
【0044】
更にレーザ発色層(B)には発色層の膜強度、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の向上を目的に硬化剤を併用することができる。硬化剤としてはイソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、エチレンイミン系等が使用できる。膜強度、膜物性の点からはイソシネート系硬化剤が好ましい。
イソシアネート系硬化剤としては、公知のヘキサメチレンジイソシアネート、イソポロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどのアダクトタイプ、ビュレットタイプおよびトリマータイプなどのポリイソシアネートプレポリマーが挙げられ、これらから1種または2種以上が使用される。イソシアネート系硬化剤の中でも3官能以上のものが特に良好である。これらイソシアネート系硬化剤は水酸基を有する樹脂と組み合わせれば、耐レーザ照射性が向上し、表面状態の優れた字物が得られるが、フィルム層との密着性が向上し、層間剥離が起こり難くなり、フィルム(A)側の印字の視認性が低下する場合がある。
【0045】
また、印刷適性、塗工適性、皮膜物性向上のため必要に応じて顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、ワックス、滑剤、シランカップリング剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、紫外線吸収剤、難燃剤などを挙げることができる。
これら添加剤の種類、使用量は、印刷方法、印刷基材、印刷条件により適宜選択できる。
【0046】
その他、レーザ発色性印刷インキとして光硬化性印刷インキも使用可能である。具体的には、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエン/ポリチオール系樹脂、スピラン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂等、紫外線硬化性モノマー、プレポリマー、光重合開始剤、及びレーザ発色剤からなるものが使用される。
【0047】
光硬化性印刷インキ)を硬化させるには、1)紫外線照射として超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ等が使用される。2)電子線照射の場合、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000eVのエネルギーを持つ電子を照射する。
【0048】
レーザ発色層(B)は、レーザ発色性印刷インキ、もしくはレーザ発色性塗工液を用いてフィルム層(A)をなすプラスチックフィルムの全体、或いは一部にベタ印刷し、使用に供される。レーザ発色性印刷インキ、もしくは塗工液を印刷後、溶剤乾燥、放射線硬化などの過程を経て形成される。このようなレーザ発色性印刷インキ、塗工液は、例えば、グラビア印刷用インキ、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、シルクスクリーン印刷用インキなどとして調整することができる。必要に応じて、インクジェット、浸漬、スピンコーティングなどの方法を単独、又は併用して用いることができる。レーザ発色層(B)の形成をグラビア印刷法にて行う場合、1回の工程、もしくは数度の重ね印刷を行っても構わない。また、1回目に印刷するレーザ発色層と2回目以降のレーザ発色層で発色剤を同じものである必要はなく、意匠性を損なわない範囲で適宜選択される。
また、意匠性の観点から、レーザ発色層(B)を形成する前に、パターン柄を形成しても良い。パターン柄の形成には、例えばグラビア印刷の場合、黄、藍、マゼンタ、黒等のプロセスインキおよびパール顔料等を用いた特色インキ等が用いられるが、それらは公知公用のものが使用され、特に制限はなく、フィルム種類への適性、用途等により適宜選択される。
【0049】
接着層(C)は必要に応じて設けられる層であるが、公知公用であるポリエステル系、ポリエーテル系等のドライラミネート型接着剤、ノンソルベント型接着剤、アクリル接着剤や押し出しラミネート用AC剤が用いられる。特に制限はないが、剥離面の制御するに際し、適宜選択される。
【0050】
基材層(D)にはフィルム層(A)に挙げた透明なプラスチックフイルム以外に紙、金属箔、ガラス、木材等が用いられる。好ましくはプラスチックフィルム、紙、金属箔であり、更に好ましくはプラスチックフィルムである。
基材層(D)が透明な場合、基材層(D)側からもレーザ印字できる。
【0051】
基材層(D)に透明なプラスチックフィルムを用いる場合は、前記したフィルム、及びその厚みがそのまま適用できる。またエクストルーダー方式による押し出しポリエチレン,ポリプロピレン等も使用できる。
レーザ印字積層体から包装袋とする場合は 基材層(D)はポリエチレン、ポリプロピレン等のシーラントと呼ばれるヒートシール可能なフィルムがより好ましい。
【0052】
紙としては、アート紙、コート紙、上質紙、和紙、合成紙等が使用できる。
【0053】
金属箔としてはアルミ箔が好ましく、印刷に適した厚さのもの、例えば厚みが5〜150μmのものが使用できる。
【0054】
レーザ照射によるレーザ印字方法は、公知のレーザ印字装置、レーザマーカで行われる。例えば、炭酸ガスレーザ(10640nm)、YAGレーザ(1064nm)、YVO
4レーザ(1064nm)、ファイバーレーザ(1064nm)、グリーンレーザ(532nm)等を使用できる。特にレーザ光の波長が532nm〜1064nmであると、より鮮明な印字が可能となる。
【0055】
好ましくは、YAGレーザ、YVO4レーザ、ファイバーレーザであり、更に好ましくはレーザ光の強度分布がシングルモードのパワー分布であるYVO4レーザである。
【0056】
YAGレーザ、若しくはYVO4レーザは1)LD%、2)Q−スイッチ周波数、及び3)走査速度等の条件により対象物の印字品質を制御できる。例えば、キーエンス社製のMD−V9600。
LD%は、レーザ出力を表す。LD%によりレーザパワーを制御できるが、大きくし過ぎるとレーザマーキング用積層体がダメージを受けやすい。また、小さすぎると印字が不鮮明になる。
Q−スイッチ周波数は、パルスを発生させる周波数を表す。Q−スイッチ周波数も印字品質に影響を及ぼし、大きすぎても、小さすぎても印字品質が低下する。
走査速度は印字ドットの間隔、印字時間等を制御するもので遅過ぎると印字ドットが集中し、場合によってはレーザマーキング用積層体がダメージを受ける。また、速過ぎると、印字ドット間が広くなり場合によっては印字濃度、印字品質の低下がみられる。
レーザによる印字では、文字を印字するにあたって、走査するレーザ本数により印字の視認性を制御することができる。例えば、線幅を0.2mm、線数を4本とすると0.2mm幅の間に4本の印字が施され、結果的に印字が濃くなり、視認性が良化する。しかしながら、本数を増やす分、印字時間が長くなり、生産効率が低下するため、より少ない本数で視認性の良い印字を行うことが好ましい。本発明においてはレーザマーキング用積層体の剥離界面を考慮し、レーザ印字面、印字文字の形態(正文字、鏡文字)を適宜選択し、印字することから、少ない印字本数で印字濃度が高く、視認性の高いレーザ印字物を得ることができる。
【0057】
レーザ印字における鏡文字の印刷については、例えば、YVO4レーザ「キーエンス社製MD-9600」では、「ミラー反転あり」モードにすることで印字できる。鏡文字はレーザ印字面と反対の面から見ると通常の正文字となり、認識可能となる。
【0058】
本発明のレーザ印字積層体を用い、食品、医薬品、化粧品等を内容物とした包装体にすると、内容物の賞味期限、消費期限、製造年月日、ロット番号等の可変情報を提供でき生産者、消費者等に資することができる。本発明においてはレーザ印字はレーザマーキング用積層体に先にレーザ印字を行い、レーザ印字積層体を得て、その後に製袋する他、レーザマーキング用積層体を用途にあった筒状、箱状の筐体にし、その後にレーザ印字することも可能である。包装体として利用する時は、層間剥離面が包装体の外側(視認する側)になるようレーザマーキング用積層体を設計しておけば、内容物の可変情報を生産者、中間業者、消費者等が流通過程、店頭で視認しやすい。
また、本発明のレーザ印字積層体は、視認性に優れ、改竄ができなく、セキュリテイ上でも有用であることからカード、ラベル等にも適用できる。
【0059】
以上のように本発明においては、積層体が有する固有の層間剥離面を事前に引っ張り試験などで把握したり、最初からある特定の界面で層間剥離するようにフイルム層(A)、基材層(D)等の材質、表面処理を適宜選択することにより視認性の高いレーザ印字積層体が得られる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づき本態様をさらに詳しく説明する。実施例中、部は重量部を表し、%は重量%を表す。
【0061】
以下、実施例に基づき本態様をさらに詳しく説明する。実施例中、部は重量部を表す。尚、%は特に指定のない限り重量%を示す。
【0062】
(合成例1)ポリウレタン樹脂の合成
攪拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに3−メチル−1,5―ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール(分子量2000、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフイで測定される数平均分子量を示す)1000部、とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素雰囲気下、85℃で5時間反応させた。次いで、40℃に冷却後イソホロンジアミン82部、ジ−n−ブチルアミン7.8部、トルエン1244部、メチルエチルケトン1244部およびイソプロピルアルコール573部を添加し、攪拌下40℃で5時間反応させた。このようにして得られたポリウレタン樹脂(樹脂1)の固形分は30%、粘度は400cps(25℃)であった。
【0063】
(調整例1)塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体の調整
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体SOLBIN C 30部(日信化学工業社製)をメチルエチルケトン70部に溶解し、30%溶液に調整した(樹脂2)
【0064】
(製造例1)レーザ発色性印刷インキ(b1)の製造
酸化チタン(チタニックスJR805、テイカ株式会社製)60部、銅・モリブデン複合酸化物(トマテック42−903A、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)10部、合成例1で得たポリウレタン樹脂15部、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂2)15部、メチルエチルケトン60部の混合物をペイントシェーカで練肉し、印刷インキを得た。得られた印刷インキを更に、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比50:40:10)で希釈し、ザーンカープ#3(離合社製)で17秒(25℃)に調整し、レーザ発色性印刷インキ(b1)を得た。
【0065】
(製造例2)レーザ発色印刷インキ(b2)
酸化チタン(チタニックスJR805、テイカ株式会社製)70部、合成例1で得たポリウレタン樹脂15部、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(樹脂2)15部、メチルエチルケトン60部の混合物をペイントシェーカで練肉し、印刷インキを得た。得られた印刷インキを更に、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比50:40:10)で希釈し、ザーンカープ#3(離合社製)で17秒(25℃)に調整し、レーザ発色性印刷インキ(b2)を得た。
【0066】
(製造例3)
アンチモンドープ酸化チタン(レーザーフレア 820、メルク社製)70部、合成例1で得たポリウレタン樹脂15部、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(樹脂2)15部、メチルエチルケトン60部の混合物をペイントシェーカで練肉し、印刷インキを得た。得られた印刷インキを更に、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比50:40:10)で希釈し、ザーンカープ#3(離合社製)で17秒(25℃)に調整し、レーザ発色性印刷インキ(b3)を得た。
表1に以上のレーザ発色性インキの組成表(固形重量比)を示す。
【0067】
(実施例1)
本明細書において、実施例7、8、および10以外の実施例は参考例である。
【0068】
フィルム層(A)として、PET(東洋紡績社製「エステルE5102」、膜厚12μm)の未処理面を弱コロナ処理を行い、その面に版深30μmのグラビア版を用いて印刷速度50m/分、乾燥温度60℃でレーザ発色性印刷インキ(b1)を印刷した。この時フィルム層の濡れ指数は40mN/mであった。
【0069】
得られたPET印刷物を接着剤c1(TM329/CAT−8B、東洋モートン社製)を用いドライラミネーションにより低密度ポリエチレン「TUX−FCD」(トーセロ社製、膜厚40μm)を貼り合わせた。得られたラミネート物は40℃で3日間エージングを施し、最終的にフイルム層(A)/レーザ発色層(B)/接着剤層(C)/ポリエチレンの基材層(D)を有するレーザマーキング用積層体L1を得た。
【0070】
(実施例2〜10、比較例1)
実験例2〜10、比較例1については、実施例1と同じ方法で、表2に示したプラスチックフィルム、レーザ発色性印刷インキ、必要に応じて接着剤を用い、レーザマーキング用積層体L2〜L11を得た。使用したプラスチックフィルム、接着剤、基材は下記の通りである。
(プラスチックフィルム)
PET : ポリエステル、エステルE5102(東洋紡績社製、膜厚12μm)
Ny: ナイロン、ON−RT(ユニチカ株式会社製、膜厚15μm)
OPP:延伸ポリプロピレン、パイレンP2161(東洋紡績社製、膜厚40μm)
(接着剤)
c1:TM329/CAT8B :東洋モートン社製 エーテルル系ドライラミネート用接着剤
c2:EL540/CAT−RT80 東洋モートン社製 エクストルーダー用AC剤
c3:TM550/CATRT−37:東洋モートン社製 エステル系ドライラミネート用接着
剤
フィルムの濡れ指数はJIS K6768の方法に準拠した。表2にその値を示す。
(基材)
PE:ポリエチレン、TUX−FCD(東セロ株式会社製、膜厚40μm)
PP:未延伸ポリプロピレン
尚、実施例7、比較例1においてはイソシアネート硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュッレトタイプ)を使用した。
【0071】
実施例1〜10および比較例1で得られたレーザマーキング用積層体L1〜L11について、層間剥離する界面、剥離強度を調べるため剥離試験を行なった。前記レーザマーキング用積層体を幅15mm、長さ100mmに裁断し、剥離試験用のサンプルを得、インテスコ社製201万能引張り試験機で剥離面とその剥離強度を測定した。層間剥離面は下記のように記した
(A)/(B):フィルム層(A)/レーザ発色層(B)で層間剥離
(B)/(D):レーザ発色層(B)/基材層(D)で層間層間剥離
(B)/(C):レーザ発色層(B)/接着剤層(C)で層間剥離
*(B):レーザ発色層の凝集破壊
【0072】
得られたレーザマーキング用積層体についてレーザ印字を行ない、レーザ印字積層体を得た。レーザ印字はYVO4レーザ「キーエンス社製MD-9600」を使用して行った。印字内容は、「Lot.ABC123」であり、印字条件は下記の通りである。鏡文字は「ミラー反転あり」モードで印字した。
(1)走査速度=500mm/秒
(2)Q−スイッチ周波数=10kHz
(3)レーザパワー30%
(4)線数 1本
である。
【0073】
得られたレーザ印字積層体について視認性を評価した。視認性はレーザ印字積層体のフィルム層(A)側と基材層(D)側について行なった。表2にその視認性とレーザ照射側を記す。
視認性の評価は下記の通りである。
視認性:印字濃度5段階で目視評価した。
◎:印字濃度が極めて高く、視認性が極めて良好。
〇:印字濃度が高く、視認性が良好。
〇△:印字濃度が十分であり、視認性が比較的良好。
△:印字濃度が不十分であり、視認性が不良。
×:印字濃度が殆どなく、視認性が極めて不良。
尚、実用レベルは〇△以上である
【0074】
表2から明らかな様に、印字を読み取る方向が層間剥離すると、印字の視認性が高まる結果となった。レーザ印字に対して、剥離界面を制御した積層体とすることで、視認性の良好な積層体を得ることができる。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】