(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第2室に流入する直前の前記供給管内を流れる前記ドロー溶液の浸透圧を計測するための計測装置を含み、前記計測装置で計測された前記浸透圧の値に基づいて前記バイパスポンプの流量を制御する装置である、請求項1に記載の正浸透処理システム。
【背景技術】
【0002】
海水、河川水または排水などの処理対象液(フィード溶液)から、正浸透現象を利用して真水を回収するための正浸透処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。正浸透現象とは、低濃度の溶液中の水がより高濃度(高浸透圧)の溶液に向かって膜を浸透して移動する現象のことである。
【0003】
正浸透処理では、フィード溶液(Feed Solution:以下、「FS」と略す場合がある)より高い浸透圧を有するドロー溶液(Draw Solution:以下、「DS」と略す場合がある)を用いる。正浸透膜モジュール内において、浸透膜を介してDSとFSとを接触させると、浸透圧の低いFSから浸透圧の高いDSへ水が移動する。そして、正浸透膜モジュールを通過した後のDS(すなわち、FS中から水を回収したDS)から、種々の手法を用いて真水を回収することができる。
【0004】
ここで、海水、河川水、排水などのFSは、一般的にスケール成分(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)を含有しているが、このスケール成分の濃度がスケール生成限界濃度を超えると、FS中のスケール成分が析出してスケールが生成する場合がある。
【0005】
正浸透処理システムでは、通常、正浸透膜モジュールを通過した後のDS(すなわち、FS中から水を回収したDS)から別の装置によって水を分離回収し、残った高濃度のDSは正浸透膜モジュールに戻されて再使用される。この場合、DSからの水の回収効率を高めようとすれば、正浸透膜モジュールに再供給されるDSは必然的に高濃度になってしまう。なお、特許文献1のように、水貯留タンクからの水をDSと共に膜モジュールに供給してDSを適度に希釈することは可能であるが、一旦回収した水を消費するため、全体としての水の回収効率上望ましくない。
【0006】
しかし、DSが高濃度になり、DSとFSの浸透圧差が過度に大きくなる場合、正浸透膜の表面付近において、FSが急激に濃縮され、それと同時にスケール成分も濃縮されて高濃度となるため、スケールが析出して正浸透膜の表面にスケールが生成され易くなる。正浸透膜の表面に生成されたスケールは、膜の目詰まりを生じ、正浸透膜の性能を著しく低下させてしまう。
【0007】
このような正浸透膜の目詰まりを解消するために、特許文献1(特開2012−250200号公報)では、正浸透膜の両側に供給される水の濃度差を駆動力として正浸透膜の逆洗を実施することで、正浸透膜の表面または内部に付着した膜の孔の目詰まりを生じさせる物質を物理的に剥離および洗浄する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示される方法では、システム内のポンプやバルブを定期的に操作して、正浸透処理を中断して逆洗を行う必要がある。また、スケールが難洗浄性である場合は、正浸透膜を洗浄しても膜性能を回復させることは難しい。
【0010】
したがって、正浸透膜の表面におけるスケールの生成自体を抑制することで、正浸透膜の洗浄を行わずに膜性能を維持することのできる正浸透処理システムの提供が望まれる。しかしながら、正浸透膜を用いた正浸透処理システムにおいて、正浸透膜の表面におけるスケール生成を抑制する方法については、これまで十分に検討されていなかった。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、正浸透膜の表面におけるスケール生成を抑制し、正浸透膜の性能を維持することのできる正浸透処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)フィード溶液中に含まれる水を、正浸透膜を介して、前記フィード溶液より高い浸透圧を有するドロー溶液中に移動させることのできる、正浸透処理システムであって、
前記正浸透膜、ならびに、前記フィード溶液が供給される第1室、および、前記ドロー溶液が供給される第2室を有し、前記第1室と前記第2室とは前記正浸透膜で仕切られている、正浸透膜モジュールと、
前記第2室から排出される前記ドロー溶液から水を分離するための水分離装置と、
前記ドロー溶液を前記第2室から前記水分離装置へ排出するための排出管と、
前記水分離装置において水を分離することにより濃縮された前記ドロー溶液を前記第2室へ供給するための供給管と、
前記第2室内の前記ドロー溶液の一部を前記水分離装置を介さずに前記供給管へ流入させて再循環させるための、バイパス管およびバイパスポンプと
を備えることを特徴とする、正浸透処理システム。
【0013】
(2)前記フィード溶液はスケール成分を含み、
前記第1室内の前記フィード溶液中から前記第2室内の前記ドロー溶液中に水が移動することにより、前記フィード溶液が濃縮されたときの前記第1室内の前記フィード溶液の濃度が、前記第1室内において前記スケール成分の析出によりスケールが生成するスケール生成限界濃度より低くなるように、前記バイパスポンプの流量を制御するための制御装置をさらに備え、上記(1)に記載の正浸透処理システム。
【0014】
(3)前記制御装置は、前記第2室に流入する直前の前記供給管内を流れる前記ドロー溶液の浸透圧を計測するための計測装置を含み、前記計測装置で計測された前記浸透圧の値に基づいて前記バイパスポンプの流量を制御する装置である、上記(2)に記載の正浸透処理システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正浸透膜の表面におけるスケール生成を抑制し、正浸透膜の性能を維持することのできる正浸透処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の正浸透処理システムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態の正浸透処理システムは、FS中に含まれる水を、正浸透膜を介して、フィード溶液より高い浸透圧を有するドロー溶液中に移動させる正浸透処理を行うことのできるシステムである。
【0019】
正浸透処理によって、例えば、海水等のFSから淡水を取出したり、淡水を取出すことによりFSを濃縮したり、浸透流からエネルギーを回収したりすることができる。エネルギーを回収する方法としては、例えば、正浸透膜の第1面側に高濃度で浸透圧が高いDS(海水等)を加圧状態で流し、正浸透膜の第2面側に低濃度で浸透圧が低いFS(淡水等)を低圧で流すことで、DS側に淡水が移動して加圧状態の海水の量が増加し、その増加分の圧力でタービン等を回転させてエネルギーを得る方法が挙げられる。
【0020】
図1を参照して、本実施形態の正浸透処理システムは、基本的に、
(i)正浸透膜10、ならびに、フィード溶液が供給される第1室21、および、ドロー溶液が供給される第2室22を有し、第1室21と第2室22とは正浸透膜10で仕切られている、正浸透膜モジュール1と、
(ii)第2室22から排出されるドロー溶液から水を分離するための水分離装置72と、
(iii)ドロー溶液を第2室22から水分離装置72へ排出するための排出管41と、
(iv)水分離装置72において水を分離することにより濃縮されたドロー溶液を第2室22へ供給するための供給管42と、
(v)第2室22内のドロー溶液の一部を水分離装置72を介さずに供給管42へ流入させて再循環させるための、バイパス管43およびバイパスポンプ83とを備える。
【0021】
本実施形態において、フィード溶液はスケール成分を含んでいる。スケール成分とは、フィード溶液中に溶解している成分であり、その析出によりスケール(堆積物)を生成する成分である。スケール成分としては、例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムが挙げられる。スケール成分を含むフィード溶液としては、例えば、海水、河川水、汽水、生活排水、または、油田もしくはガス田の排水が挙げられる。なお、フィード溶液中には、溶解していない成分が含まれていてもよい。
【0022】
ドロー溶液は、フィード溶液より高い浸透圧を有する液体であれば特に限定されないが、ドロー溶液としては、例えば、無機塩溶液、糖溶液、または、水に対する溶解度が高い気体(アンモニアや二酸化炭素など)、有機物、磁性体微粒子もしくは有機高分子などを含む液体が挙げられる。なお、ドロー溶液中には、溶解していない成分が含まれていてもよい。
【0023】
正浸透膜の形状としては、特に限定されないが、例えば、平膜、スパイラル膜または中空糸膜が挙げられる。本実施形態では、正浸透膜として、
図1において簡略化して描かれるような平膜を描いている。正浸透膜の材質としては、特に限定されないが、例えば、酢酸セルロース、ポリアミドまたはポリスルホンが挙げられる。前記正浸透膜は、FSとDSを流すためにモジュールに組み立てられる。モジュールの形態は特に限定されないが、中空糸膜を用いる場合は、中空糸膜をストレート配置した軸流型モジュールや、中空糸膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジュールなどが挙げられる。平膜の場合は、平膜を積み重ねた積層型モジュールや、平膜を封筒状とし、芯管に巻きつけたスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
【0024】
以下、
図1を参照して、FSが海水であり、海水から淡水を製造する場合について、より具体的に、本実施形態の正浸透処理システムについて説明する。
【0025】
本実施形態の正浸透処理システムは、
取り入れた海水の前処理を行う前処理装置71と、
前処理装置71に接続され、前処理装置71から排出される汚泥等が送られる前処理排液タンク78と、
前処理装置71にポンプ81を介して接続され、前処理された海水が供給される正浸透膜モジュール1の第1室21と、
第1室21に接続され、第1室21を通過した海水を回収する濃縮海水タンク79と、
正浸透膜モジュール1の正浸透膜10と、
DSが供給される正浸透膜モジュール1の第2室22と、
第2室22にバルブ91を有する排出管41を介して接続され、第2室22を通過したドロー溶液が送液される水分離装置72と、
水分離装置72に接続されるとともに、正浸透膜モジュール1にバルブ92、ポンプ82および制御装置74を有する供給管42を介して接続されるDS調整装置73と、
第2室22に接続されるとともに、供給管42の制御装置74とバルブ92との間に接続され、バイパスポンプ83を有するバイパス管43と、
水分離装置72に接続され、水分離装置72でDSから分離された水が送液される水貯留タンク75と、
から構成される。
【0026】
なお、前処理装置71は正浸透膜モジュール1の第1室21の第1端(上流側)に接続されており、濃縮海水タンク79は正浸透膜モジュール1の第1室21の第2端(下流側)に接続されている。また、DS調整装置73は供給管42を介して正浸透膜モジュール1の第2室22の第1端(上流側)に接続されており、水分離装置72は排出管41を介して正浸透膜モジュール1の第2室22の第2端(下流側)に接続されている。また、バイパス管43は、供給管42と正浸透膜モジュール1の第2室22の第2端(下流側)とに接続されている。
【0027】
前処理装置71は、図示しないポンプで取水した海水を砂濾過やUF膜(Ultrafiltration:限外ろ過膜)、MF膜(Microfiltration:精密ろ過膜)、カートリッジフィルターなどによって処理する装置であり、これにより濁質を除去し、正浸透膜モジュール1に適合する水質の海水が得ることができる。必要により、pHの調整手段や塩素添加装置などを付け加えることも可能である。
【0028】
正浸透膜モジュール1は、正浸透膜10で仕切られた第1室21および第2室22を有しており、第1室21には前処理装置71から海水が供給され、第2室22にはDS調整装置からDSが供給される。
【0029】
そして、正浸透膜10の両側の第1室21と第2室22との間には、フィード溶液とドロー溶液の浸透圧の差に応じた駆動力が生じる。このため、ドロー溶液(高浸透圧溶液)の浸透圧を海水の浸透圧より大きくすれば、海水からドロー溶液中に水を回収することができる。
【0030】
なお、海水およびDSの浸透圧は、以下の式(1)から算出することができる。
Π=iRTC ・・・(1)
式(1)において、Πは浸透圧、Rは気体定数、Tは絶対温度、Cは溶液のモル濃度、iはファント・ホッフの係数である。なお、ファント・ホッフの係数iは、溶質が電解質の場合で電離が生じる影響を表す係数である。DSに高分子を用いる場合、濃度と浸透圧の関係はファント・ホッフの法則に当てはまらないことが知られている。その場合には、予め濃度と浸透圧の関係を明らかにする必要がある。
【0031】
正浸透膜モジュール1の第1室21から排出される濃縮海水は、濃縮海水タンク79に送られ、排水処理操作後、海洋へ放流される。
【0032】
次に、正浸透膜モジュール1の第2室22を通過後に排出されたDSは、バルブ91を開いた状態で排出管41を経由して水分離装置72に送られる。ここで、DS中に浸透圧を高めるために添加されているドロー物質と、DS中に含まれる水とを分離する。水分離装置72によって実施される分離方法としては、ドロー物質の種類によって適合するものが選択される。例えば、無機塩や低融点物質等の場合は晶析処理、水に対する溶解度が高い気体の場合はガス放散、磁性体微粒子の場合は磁気分離、糖溶液の場合はイオン交換、刺激応答性高分子の場合はその刺激(温度、pH、電気、磁場、光など)を選択することができる。また、共通の分離方法として、例えば、蒸留、逆浸透膜処理が挙げられる。
【0033】
分離された水は、水貯留タンク75に送られる。水貯留タンク75に貯留された水は、必要により次の精製工程等に送られる。
【0034】
一方、水が分離された後に残るドロー物質を高濃度で含むDSは、DS調整装置73に送られる。DS調整装置73に送られるDSの浸透圧は、水分離装置72の仕様により異なるが、少なくとも水分離装置72の入口での浸透圧より高い。
【0035】
DS調整装置73で温度等が調整されたDSは、バルブ92が開かれた状態でポンプ82により供給管42を介して、正浸透膜モジュール1の第2室22に戻される。ここで、第2室22内のDSの一部は、第2室22の第1端(下流側)から取り出されて、バルブ93が開かれた状態でバイパスポンプ83によりバイパス管43を介して(水分離装置72を介さずに)、供給管42へ送液される。これにより、水を使用せずに、第2室22に供給されるDSを希釈することができる。
【0036】
本実施形態において、制御装置74は、第2室22に流入する直前の供給管42内を流れるDSの浸透圧を計測するための計測装置と、バイパスポンプ83の流量を制御するための制御装置とを含む。制御装置74は、この計測装置によって計測されたDSの浸透圧の値に基づいて、バイパスポンプ83の流量を制御する。これにより、第1室21内のFS中から第2室22内のDS中に水が移動することにより、フィード溶液が濃縮されたときの第1室21内のFSの濃度が、第1室21内においてスケール生成限界濃度(スケール成分の析出によりスケールが生成する濃度と生成しない濃度との臨海値)より低くなるように制御することができる。
【0037】
具体的には、例えば、あらかじめ正浸透膜モジュール1の第1室21に供給される海水についてスケール生成限界濃度を調べておき、DSとFSの間の浸透圧差とFS中のスケール成分の濃度との関係を求めておくことで、FS中のスケール成分の濃度がスケール生成限界濃度に達するときのDSの浸透圧を基準値として求めることができる。そして、DSの浸透圧の計測値がスケール生成限界濃度より小さくなるように、制御装置74により、DSの浸透圧の計測値に基づいて、バイパスポンプ83の流量を制御する。
【0038】
FSは、正浸透膜10の第1室21内を第1端側(上流側)から第2端側(下流側)に移動するにつれて徐々に濃縮される。反対に、DSは、正浸透膜10の第2室22内を第1端側(上流側)から第2端側(下流側)に移動するにつれて徐々に希釈される。このため、本実施形態では、正浸透膜10の第1室21内を第1端側(上流側)において、特にDSとFSの浸透圧差が大きく、局部的にFSが高濃度に濃縮されるため、スケールが生成し易い。したがって、特にこのようなスケールが生成し易い部分において、FSがスケール生成限界濃度に達しないよう考慮して、制御装置74などによって再循環させるDSの量を制御することが好ましい。
【0039】
本実施形態では、計測装置で計測される指標値が浸透圧である場合について説明したが、ドロー物質の種類に応じて他の指標値を用いてもよい。例えば、ドロー物質が塩の場合は電気伝導度を計測してもよく、ドロー物質が高分子の場合は粘度、圧損もしくは流量を計測してもよく、ドロー物質が糖の場合は屈折率を計測してもよい。
【0040】
上記の処理により、正浸透処理と水分離処理が行われ、連続的に海水から水を製造することができる。
【0041】
本実施形態の正浸透処理システムにおいては、希釈されて排出されるDSの一部を、正浸透膜モジュールに供給されるDSに混合することで、正浸透膜モジュールに供給されるDSが希釈される。これにより、DSとFSの浸透圧差が過度に大きくなることを防止して、正浸透膜の表面におけるスケール生成を抑制することができる。したがって、正浸透膜の性能を維持することのできる正浸透処理システムを提供することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、希釈されたDSの一部を再循環することにより、正浸透膜処理手段へ供給するDSの流量が増加する。これにより、DSの流速が上がり、DSの境膜抵抗(濃度分極抵抗)が低下して、DSとFSとの間の有効濃度差が維持されるため、正浸透処理の効率が向上する。
【0043】
なお、逆浸透処理は、人為的に強い圧力を加えることにより、逆に高濃度の処理対象液から低濃度液(水など)側に水を移動させて水を回収する処理であるが、強い圧力を加えるためのエネルギー消費量が極めて多く、エネルギー効率が低い。これに対して、正浸透処理は、エネルギー効率が高いという利点を有している。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態では、正浸透膜として中空糸膜10を有する中空糸膜モジュール(
図2を参照)を正浸透膜モジュール1として使用している点で、実施形態1とは異なる。なお、ここでは、実施形態1と同様の点についての重複する説明は省略する。
【0045】
図2を参照して、本実施形態の中空糸膜モジュールは、中心に配置された複数の孔3aを有する多孔分配管3と、その周囲に配置された複数の中空糸膜10と、多孔分配管3および複数の中空糸膜10をそれらの両端で固定する樹脂壁61とからなる中空糸膜エレメントを備える。なお、複数の中空糸膜10はその両端に開口部を有している。該中空糸膜エレメントは、保持部材51にO−リング51aが介在した状態で保持されている。
【0046】
本実施形態の中空糸膜モジュールにおいては、低浸透圧のFSが中空糸膜10の内部21(第1室)を流れ、高浸透圧のDSが中空糸膜10の外側22(第2室)を流れる。すなわち、FS供給口11aより供給されるFSは、中空糸膜10の第1開口部10aより中空糸膜10の内部21(第1室)に流入して、中空糸膜10の第2開口部10bから流出し、FS排出口11bよりモジュール外に取り出される。また、DS供給口12aより供給されるDSは、多孔分配管3内に流入し、複数の孔3aを通って中空糸膜10の外側22(第2室)に供給され、DS排出口12bから取り出される。
【0047】
実施形態1において、平膜状の正浸透膜を有する正浸透膜モジュール1に代えて、このような中空糸膜モジュールを用いることもできる。
【0048】
FSは、中空糸膜10の内部21(第1室)を第1開口部10a側から第2開口部10b側に移動するにつれて徐々に濃縮される。一方、DSは、DS供給口12aより供給され多孔分配管3内に流入するので、多孔分配管3の近傍にある中空糸膜の外側には常にフレッシュで浸透圧の高いDSが供給される。これにより、多孔分配管3の近傍にある中空糸膜の内部21(第1室)を流れるFSは高濃度に濃縮されるため、多孔分配管3の近傍でスケールが発生しやすい。
【0049】
なお、FSを中空糸膜の外側22に流し、DSを中空糸膜の内部21に流す場合は、FSは、中空糸膜10の外側22を多孔分配管3側から圧力容器15側に移動するにつれて徐々に濃縮される。この場合、DSは、DS供給口11aから流入し、第1開口部10aから中空糸膜の内部21に流入するので、第1開口部10a側には第2開口部10b側に比べて常にフレッシュで浸透圧の高いDSが供給される。これにより、第1開口部10a側を流れるFSは高濃度に濃縮されるため、第1開口部10a側でスケールが発生しやすい。
【0050】
したがって、特にこのようなスケールが生成し易い部分において、FSがスケール生成限界濃度に達しないよう考慮して、制御装置74などによって再循環させるDSの量を制御することが好ましい。