(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記緩衝部材は、前記天然ゴムに前記ナイロン繊維を1:0.8〜1の割合で混練した材料で形成されていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2いずれかに記載の電気掃除機の吸込具。
前記車輪は、円環状に成形された前記緩衝部材の内側に、前記緩衝部材の内径よりも嵌合箇所の径が大きい車輪本体を圧入した構成であることを特徴とする請求項1から請求項4何れか1項に記載の電気掃除機の吸込具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の電気掃除機の吸込具のように、不織布に合成樹脂(ゴム)を含浸させた材料を用いた場合、不織布は伸縮性に乏しく、不織布に合成樹脂(ゴム)を含浸させた材料も同様となるので、圧入のような後嵌めでの組立ては困難であり、複数部品を組み合せて組立てる必要があることから、組立て性が悪い上、組立てコストも掛かる、という課題がある。
【0007】
また、狭い隙間を掃除するときに、電気掃除機の吸込具を長手方向である左右方向を縦向きにして、隙間に吸込具を挿入することがあり、この場合、車輪は回動方向と直交する方向に摺動するようになる。不織布に合成樹脂(ゴム)を含浸させた材料は耐久性に劣るため、偏摩耗を起こし易いことから、摩耗した箇所に硬質の樹脂で形成された車輪本体が露出しフローリングを傷付ける、また、硬質の樹脂とフローリングが接触して騒音が発生する、という課題がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の従来の電気掃除機の吸込具のように、起毛布を用いた場合、樹脂成形された部材の外周に貼り付け、あるいは嵌め込みで起毛布を取り付けて使用されるが、起毛布には綿状の塵埃や髪の毛等が絡み易く、こまめな手入れが必要である、という課題がある。
【0009】
また、電気掃除機の吸込具を長手方向である左右方向を縦向きにして、狭い隙間を掃除する場合、車輪は回動方向と直交する方向に摺動するので、起毛布がはがれたり、部分的に毛が抜けたりしてしまい、その部分から硬質樹脂で形成された車輪本体が露出しフローリングを傷付ける、また、硬質の樹脂とフローリングが接触して騒音が発生する、という課題がある。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、弾性があって伸縮性に富み、組立て性がよく、耐久性に優れた材料によって形成された緩衝部材を、被清掃面と接する面に用いた車輪を備える電気掃除機の吸込具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決する本発明に係る電気掃除機の吸込具は、吸込具本体と、吸込具本体の下面側に設けられ、吸込具本体の短手方向である前後方向の動作に合わせて回動する車輪と、を備え、車輪の、少なくとも被清掃面と接する面に、天然ゴムにナイロン繊維を混練した材料で形成された緩衝部材を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電気掃除機の吸込具によれば、吸込具本体の下面側に設けられた車輪の被清掃面と接する面に、天然ゴムにナイロン繊維を混練した材料で形成された緩衝部材を備えるようにしたので、緩衝部材の基材である天然ゴムが伸縮性に富んでいることから、車輪を構成する例えば樹脂で形成される部材に後から圧入して嵌めることができ、組立て作業性が向上する。
【0013】
また、緩衝部材の基材である天然ゴムが耐久性に優れていることから、車輪を回動方向と直交する方向に摺動させる場合でも偏摩耗を起こしにくく、緩衝部材が部分的に減ることがないので、車輪を構成する樹脂部材が露出することがなくフローリングの傷付きを防止することができる。
【0014】
さらに、天然ゴムにナイロン繊維を混練することで、車輪が回転するときの被清掃面との
摩擦音を低減することができるので、吸込具を被清掃面上で移動させるときの騒音を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
(全体の構成)
図1は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具を電気掃除機に接続した状態を示す斜視図、
図2は電気掃除機本体を側面方向から見た断面図である。
図1と
図2により、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具が接続される電気掃除機全体の概略構成を説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具1は延長管2、把持部3、ホース体5を介して電気掃除機本体6と接続されていて、全体として電気掃除機100が構成される。
【0018】
電気掃除機本体6の前側には、ホース体5を接続するための接続口7が設けられている。ホース体5を接続口7に接続することで、ホース体5と延長管2及び把持部3を介して接続される吸込具1は、後述する電気掃除機本体6に内包された電動送風機9が発生させる吸引風により、塵埃を含んだ空気を吸い込むことが可能となる。
【0019】
また、電気掃除機本体6の上面後方には、ハンドル8が設けられている。これは電気掃除機本体6を持ち運ぶときに使用するためのもので、樹脂素材で形成されている。また、電気掃除機本体6の上面には、前方から後方に傾斜するように集塵部9が着脱自在に取付けられている。
【0020】
集塵部9は、
図2に示す電気掃除機本体6に内包された電動送風機10が、把持部3に設けられた操作部4からの入力で駆動することにより発生する吸引風によって、吸込具1から吸い込んだ塵埃を含んだ空気から、塵埃と空気を分離して塵埃を捕集、収容するためのものである。
【0021】
さらに、電気掃除機本体6には電動送風機10の他、操作部4からの入力で電動送風機10の駆動、出力増減等を制御するための制御基板11、電動送風機10等に電力を供給する図示しない電源コードを収納するためのコードリールも内包される。
【0022】
電気掃除機本体6の接続口7に一端が接続されるホース体5は、蛇腹のような可撓性を有する軟質管で形成されている。ホース体5のもう一端は、把持部3の一端に接続される。把持部3は吸込具1を操ることと、掃除機本体6の取り廻しをするためのものであり、硬質の樹脂素材で形成されている。
【0023】
把持部3には前述のように操作部4が設けられている。操作部4は図示しない複数の操作スイッチを有し、これら操作スイッチからの入力を受けて制御基板11が電動送風機10を駆動させる。駆動した電動送風機10が吸引風を発生させることにより、塵埃を含んだ空気を吸い込むことが可能となる。
【0024】
把持部3のもう一端は、延長管2の一端に接続される。延長管2は図示しないが伸縮構造を有しており、掃除をするとき、必要に応じて伸ばして使用することができるようになっていて、把持部3と同様、硬質の樹脂素材で形成されている。
【0025】
延長管2のもう一端は、吸込具1に接続される。以降、
図3から
図7により本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具の構成について詳しく説明する。
【0026】
(吸込具の構成)
図3(a)は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具を上面方向から見た図、
図3(b)本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具を下面方向から見た図、
図4は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具の斜視図、
図5は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具を、吸込具本体と継手管に分離した状態の斜視図、
図6は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具の、吸込具本体から上ケースを外した状態の斜視図、
図7は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具の、吸込具本体から上ケースを外して上面方向から見た図である。
なお、それぞれの図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する場合がある。
【0027】
吸込具1は
図3〜5に示すように、吸込具本体21と継手管22で、アルファベットのTの字の様に構成されている。吸込具本体21は、硬質の樹脂素材で形成された下ケース31、同様に硬質の樹脂素材で形成された上ケース30、及び硬質の樹脂素材で形成されて意匠性を考慮した外観を有するカバー32で外郭が構成される。上ケース30とカバー32が吸込具本体21の上面を構成する部材となる。
【0028】
下ケース31と上ケース30の当接部には、軟質の樹脂素材で形成されたダンパー29がその外周に取付けられている。ダンパー29は、掃除のときに吸込具1が壁や家具等に当たっても、それらが傷付かないようにするためのものである。
【0029】
吸込具本体21の下面側には、下面部開口25が設けられている。下面部開口25は、床等の被清掃面から塵埃を吸い込むための開口である。下面部開口25の内部には下面部開口25と連通した空間である吸込室34があり、その吸込室34には被清掃面から塵埃を掻き揚げるための回転ブラシ26が着脱自在に取付けられている。
【0030】
回転ブラシ26は
図6及び
図7に示すように、吸込具本体21の中央で且つ進行方向から見て後方に内包され、下ケース31に配置されたモーター37によって回転力を得ている。モーター37の回転力は、まず、モーター37の回転軸に圧入されたギアからベルト38に伝達される。
【0031】
ベルト38に伝達されたモーター37の回転力は、プーリー連結軸40の一端に圧入されたプーリー46に伝達され、さらにプーリー連結軸40の他端に圧入されたプーリー47に伝達される。
【0032】
さらにプーリー47に掛けられたベルト39に伝達され、ベルト39から回転ブラシ26の一端に連結されたギア48に伝達されて回転ブラシ26が回転し、被清掃面から塵埃を掻き上げて、より清掃性能の向上が図れる。
【0033】
吸込具本体21の下面側には、吸込具本体21の下面から出没自在のスイッチ機能付き車輪28が設けられている。このスイッチ機能付き車輪28は、回転ブラシ26を回転させるモーター37の回転をオン、オフするためのものである。
【0034】
回転ブラシ26は被清掃面から塵埃を掻き上げるので、被清掃面に接触していないときに回転させると無駄な電力を消費したり、使用者が触れて危険であったりする。よって、吸込具本体21が被清掃面から離れるとスイッチ機能付き車輪28は下面から突出してモーター37がオフし、回転ブラシ26の回転を停止させ、再び、吸込具本体21を被清掃面に接触させると、スイッチ機能付き車輪28が没してモーター37がオンし、回転ブラシ26の回転を開始するようになっている。
【0035】
さらに、吸込具本体21の下面に、吸込具本体21の短手方向で、進行方向に対して後端側には、被清掃面をスムーズに移動できるように後部車輪27a、27bが設けられている。また、吸込具本体21の長手方向で、両端寄りにそれぞれ側部車輪20a、20bが設けられている。なお、後部車輪27a、27b及び側部車輪20a、20bの構成については後段で説明する。
【0036】
前述のように、吸込具本体21には各種部材が内包、または取付けられているが、それら部材の中でモーター37が最も重量のある部材である。モーター37は
図7に示す吸込具本体21の長手方向の中心を通る中心線で、左右に重量バランスがとれる位置に配置されているので、モーター37の重心は中心線上になる。
【0037】
前述のように、最も重量のあるモーター37が吸込具本体21の長手方向の中心を通る中心線で、左右に重量バランスがとれる位置に配置されているので、吸込具本体21の長手方向左右のバランスもほぼ均衡するようになる。
【0038】
また、モーター37は吸込具本体21の中心線上において、進行方向から見て後方に内包されているので、吸込具本体21の重心も後方となる。
【0039】
継手管22は、硬質の樹脂素材で形成され中空構造の回動部23と、延長管2に差し込んで接続する接続部24で構成されている。回動部23は、図示していないが接続部24と回動可能に接続されている。
【0040】
継手管22の回動部23には、
図5に示すように回動軸部33aと33bが設けられている。回動軸部33aと33bは、継手管22を吸込具本体21に回動自在に連結するために設けられており、回動軸部33aが
図5に示す吸込具本体21の連通口36aと、回動軸部33bが、連通口36aと対向する面に設けられた仮想線で表す連通口36bと連結される。
【0041】
前述のような吸込具1を被清掃面上で動作させるとき、
図3(b)に示す前述の吸込具本体21の下面に設けられた側部車輪20a、20bと後部車輪27a、27b及びスイッチ機能付き車輪28が、被清掃面と接触することになる。
【0042】
被清掃面が硬質な床、例えばフローリングのような床である場合、側部車輪20a、20bと後部車輪27a、27b及びスイッチ機能付き車輪28のフローリング(被清掃面)と接触する面(箇所)を硬質な部材で構成すると、フローリング(被清掃面)に傷を付けてしまうことがある。
【0043】
また、吸込具1をフローリング(被清掃面)から持ち上げて、再びフローリング(被清掃面)に戻すとき、硬質の部材同士が接触するときの音が騒音となってしまうことがある。
【0044】
そのため、側部車輪20a、20bと後部車輪27a、27b及びスイッチ機能付き車輪28の被清掃面と接触する面(箇所)には、軟質の緩衝部材52が設けられている。
図8(a)は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具の、車輪の一例を示す単品の斜視図、
図8(b)は車輪の単品を車輪本体と緩衝部材を分離した状態の斜視図、
図8(c)は緩衝部材表面の概略拡大図である。
【0045】
なお、
図8(a)、(b)、(c)に示す車輪は一例であり、ここでは後部車輪27a、27bを例に説明することとする。後部車輪27a、27bは
図8(a)に示すように車輪本体51の中心に車軸50が挿入され、車輪本体51の外周に緩衝部材52が設けられた形状である。
【0046】
車軸50は棒状の鋼材で形成されていて、この車軸が下ケース31の図示しない軸受け部に回転自在に保持されることで、後部車輪27a、27bが回転する。車輪本体51は、例えばポリエチレン樹脂のような硬質の樹脂材料を金型成形することで形成される。
【0047】
車軸50と車輪本体51の固定は、車軸50を車輪本体51に設けられた貫通穴54に圧入して固定するか、あるいは車輪本体51を金型成形するときに金型内に挿入するインサート成形のような方法で固定でき、特定の固定方法に限定されるものではない。
【0048】
前述のように緩衝部材52は軟質であり、天然ゴムを基材としている。天然ゴムの強度、耐久性、弾性を確保するために天然ゴムを練る必要があり、天然ゴムだけを練る素練りという工程と、硫黄などの加硫剤を加えて練る混練りという工程がある。
【0049】
加硫剤を加えて練る混練りの工程で、一緒にナイロン繊維を混ぜて練り込んでいる。このときに混練するナイロン繊維の繊維長は短い方がよく、例えば5mm以下の長さのナイロン繊維を混ぜ込んでいる。
【0050】
また、天然ゴムと混練するナイロン繊維の割合は、天然ゴムを1とするとナイロン繊維が0.8〜1の割合となっており、半々あるいはナイロン繊維が若干少ない割合で混練している。
【0051】
これで緩衝部材52の素材が出来上がり、この素材を円環状に成形する。その後、加硫という加熱する工程で、円環状に成形された緩衝部材52の素材に熱を加えることで、化学反応によって天然ゴムの分子を加硫剤で繋ぎ、強度を増大させ、湿度変化による弾性の減少を防止することで緩衝部材52が形成される。
【0052】
緩衝部材52は、天然ゴムの強度、耐久性、弾性といった性質を引き継いでいる。そして、緩衝部材52の表面は平坦ではなく、
図8(c)に示すように、ナイロン繊維55が不均一に表面から突出したようになっている。
【0053】
図9に示すように、隙間を掃除する場合、吸込具1を長手方向である左右方向を前後方向として動かす必要がある。この場合、後部車輪27a、27bは、通常は前後方向である短手方向に回動するようになっているため回動できず、被清掃面上を摺るように動く、言い換えると摺動することになる。
【0054】
摺動する場合においても、被清掃面と接する緩衝部材52は天然ゴムの強度、耐久性といった性質を引き継いでいるので、部分的に摩耗(偏摩耗)を起こしにくい。
【0055】
それから、後部車輪27a、27bの被清掃面と接する緩衝部材52の表面が平坦である場合、面で摺動すると接触抵抗が大きくなるが、前述のように緩衝部材52の表面は平坦ではなく、ナイロン繊維55が不均一に表面から突出したようになっているので、緩衝部材52は天然ゴムの強度、耐久性、弾性といった性質を引き継いで、かつ摺動性にも優れている。
【0056】
車輪本体51の緩衝部材52を嵌める箇所の外径寸法はφ1となっている。円環状の緩衝部材52の内径寸法はφ2となっており、φ1とφ2の大小関係はφ1>φ2となっているが、緩衝部材52は弾性を備え伸縮性があることから、緩衝部材52を拡げるようにして車輪本体51に圧入して嵌め込むことができ、組立て作業が容易である。
【0057】
但し、圧入しただけでは、被清掃面と接触して回動しているうちに、ずれてしまう可能性があるため、車輪本体51の緩衝部材52を嵌める箇所の両端部には外れ防止部53a、53bが設けられており、緩衝部材52が外れないようにしている。なお、
図8(b)では、外れ防止部53a、53bが全周に設けるようにしているが、緩衝部材52が外れなければよいので、部分的に設けるだけでもよい。
【0058】
以上のように本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の吸込具によれば、吸込具本体の下面側に設けられた車輪の、被清掃面と接する面に、天然ゴムにナイロン繊維を混練した材料で形成された緩衝部材を備えるようにしたので、車輪本体に弾性があり伸縮性に富む緩衝部材を容易に取付けることができ、組立て作業の効率を上げることができる。
【0059】
また、緩衝部材の表面は平坦ではなく、ナイロン繊維が不均一に表面から突出したようになっているので、緩衝部材は天然ゴムの強度、耐久性、弾性といった性質を引き継いで、かつ摺動性にも優れており、偏摩耗を起こしにくく、車輪本体を形成する硬質の樹脂が露出してフローリングのような被清掃面が傷付くことを抑制でき、硬質の部材同士が接触することがないので騒音も抑制することができる。