特許第6269312号(P6269312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6269312フタロシアニン化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269312
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】フタロシアニン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 47/08 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   C09B47/08CSP
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-101614(P2014-101614)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-218125(P2015-218125A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 紗也佳
(72)【発明者】
【氏名】平佐 美幸
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌平
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−019828(JP,A)
【文献】 特開2013−182021(JP,A)
【文献】 特開2013−156397(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102395(WO,A1)
【文献】 特開2013−145335(JP,A)
【文献】 特開平10−036830(JP,A)
【文献】 特開平01−133790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物。
【化1】
[式中、Xは直接結合またはOを表す。]
【請求項2】
Xが、Oである請求項1記載のフタロシアニン化合物。
【請求項3】
請求項2記載のフタロシアニン化合物からなる顔料であって、CuKα線によるX線回折パターンが、ブラック角2θ(±0.2)=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有する顔料。
【請求項4】
請求項2記載のフタロシアニン化合物からなる顔料であって、CuKα線によるX線回折パターンが、ブラック角2θ(±0.2)=6.9°、8.8°、10.7°、14.2°、16.1°、19.8°、23.1°、29.0°にピークを有する顔料。
【請求項5】
下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを反応させて得られる請求項1記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【化2】
[式中、RはOHまたはハロゲン原子を表す。Xは直接結合またはOを表す。YはOHまたはハロゲン原子を表す。ただし、RとYが同時にハロゲン原子となることはない。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフタロシアニン化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニンは、種々の有機顔料の中でも、高い堅牢性や着色力等から、青(シアン、ブルー)用色材として、様々な用途で広く使用されている。産業的には、中心金属が銅である銅フタロシアニンが最も広く普及しており、オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインキ等の印刷インキ、プラスチックや塗料等の着色剤、感熱転写方式や電子写真方式等の画像記録材料、液晶、プラズマ、有機電界発光(エレクトロルミネッセンス)素子、電子ペーパー等の画像表示装置やCCD等の撮像素子に用いられるカラーフィルタ等で使用されている。
【0003】
一方、銅フタロシアニンでは得られない特性を得るために、他の中心金属を有する様々なフタロシアニンも検討されており、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムフタロシアニンは、色材としての有用性が期待される材料の一つであると考えられている。例えば、特許文献1や特許文献2ではカラーフィルタとしての用途、特許文献3では電子写真感光体用光導電材料としての用途、特許文献4ではインクジェット記録用インクとしての用途が報告されている。
【0004】
近年、色材として、特にカラーフィルタ用着色剤として、従来公知のヒドロキシアルミニウムフタロシアニンよりも有用な色材として、特許文献5〜7に開示されているアルミニウム原子上の水酸基が有機残基で置換されたアルミニウムフタロシアニン化合物が報告されている。しかし、近年の色材に対する要求は著しく、これらの文献で具体的に開示されているアルミニウムフタロシアニン化合物では、最近の市場での要求特性、特に、分散性、安定性、色彩的特性といった要求特性を全て満足できなくなってきているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−4930号公報
【特許文献2】特開2004−333817号公報
【特許文献3】特開平05−93150号公報
【特許文献4】特開2000−17207号公報
【特許文献5】特開2012−155231号公報
【特許文献6】特開2013−079301号公報
【特許文献7】特開2013−087251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、分散性、安定性が良好で、着色力、色相、明度、コントラスト等の色彩的特性に優れたフタロシアニン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明をなしたものである。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物に関する。
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、Xは直接結合またはOを表す。]
【0010】
また、本発明は、Xが、Oである前記記載のフタロシアニン化合物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記記載のフタロシアニン化合物からなる顔料であって、CuKα線によるX線回折パターンが、ブラック角2θ(±0.2)=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有する顔料に関する。
【0012】
また、本発明は、前記記載のフタロシアニン化合物からなる顔料であって、CuKα線によるX線回折パターンが、ブラック角2θ(±0.2)=6.9°、8.8°、10.7°、14.2°、16.1°、19.8°、23.1°、29.0°にピークを有する顔料に関する。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを反応させて得られる前記記載のフタロシアニン化合物の製造方法に関する。
【化2】
【0014】
[式中、RはOHまたはハロゲン原子を表す。Xは直接結合またはOを表す。YはOHまたはハロゲン原子を表す。ただし、RとYが同時にハロゲン原子となることはない。]
【発明の効果】
【0015】
本発明により、分散性、安定性が良好で、着色力、色相、明度、コントラスト等の色彩的特性に優れたフタロシアニン化合物およびそれからなる顔料を提供できるようになった。これにより、分散性、安定性、色彩的特性が求められるカラーフィルタ、トナー、インクジェットインキ等の様々な産業上の利用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1で製造したフタロシアニン化合物(PB−1)のCuKα線によるX線回折パターンである。
図2図2は、実施例4で製造したフタロシアニン化合物(PB−4)のCuKα線によるX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを反応させて製造することができる。
【0018】
一般式(2)で表される化合物としては、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0019】
一般式(3)で表される化合物としては、ビス(1−ナフチル)ホスフェート、ビス(1−ナフチル)クロロホスフェート、ビス(1−ナフチル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0020】
反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールに代表される一価のアルコール系溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のようなアミド系溶媒、その他、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ系溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能系溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられるが、溶解性の観点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価のアルコール系溶媒や、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。これらの反応溶媒は、単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
反応終了後に反応溶媒を除去する方法としては、業界公知の方法を用いることができる。例えば、吸引濾過または加圧濾過を行った後、使用した反応溶媒と相溶性があり、かつ低沸点の他の有機溶媒で洗浄した後、乾燥除去する方法がある。反応溶媒が水溶性有機溶媒の場合には、反応液を水と混合した後、ろ過、水洗により除去することが望ましい。
【0022】
本発明のフタロシアニン化合物は、顔料としての性質を有するため、いくつかの結晶形を取り得るが、一般式(1)において、XがОである場合、CuKα線によるX線回折パターンが、ブラック角2θ(±0.2)=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有する顔料、または、ブラック角2θ(±0.2)=6.9°、8.8°、10.7°、14.2°、16.1°、19.8°、23.1°、29.0°にピークを有する顔料が、良好な安定性を有し、色彩的特性に優れており好ましい。得られるフタロシアニン化合物からなる顔料の結晶形は、反応溶媒や反応後の後処理工程によって、制御することが可能である。
【0023】
本発明のフタロシアニン化合物は、顔料の性質を有するため、ソルトミリング処理等の方法により、顔料粒子の微細化および整粒を施すことにより、顔料としてより好適に使用することができる。好ましい顔料の一次粒子径は、使用する用途によって異なるが、カラーフィルタ用途に用いる場合、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される平均一次粒子径が、10nm以上であることが好ましく、また、100nm以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、20〜80nmの範囲である。
【0024】
ソルトミリング処理とは、顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤との混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する処理である。水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して着色剤が破砕される。顔料をソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。
【0025】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いるのが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、顔料の全質量を基準(100質量%)として、50〜2000質量%用いることが好ましく、300〜1000質量%用いることが最も好ましい。
【0026】
水溶性有機溶剤は、フタロシアニン化合物及び水溶性無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。ただし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点のものが好ましい。そのようなものとしては、例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が用いられる。これら水溶性有機溶剤は、フタロシアニン化合物の全質量を基準(100質量%)として、5〜1000質量%用いることが好ましく、50〜500質量%用いることが最も好ましい。
【0027】
フタロシアニン化合物をソルトミリング処理する際には、必要に応じて樹脂を添加してもよい。ここで、用いられる樹脂の種類は特に限定されず、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等を用いることができる。用いられる樹脂は、室温で固体であり、水不溶性であることが好ましく、かつ上記水溶性有機溶剤に一部可溶であることがさらに好ましい。樹脂の使用量は、顔料の全質量を基準(100質量%)として、2〜200質量%の範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、特に断りのない限り、「部」および「%」とは、それぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
【0029】
(フタロシアニン化合物の同定方法)
本発明のフタロシアニン化合物の同定は、質量分析および元素分析により行った。質量分析は、ブルカー・ダルトニクス社製MALDI質量分析装置autoflexIIIを用いて測定した。得られたマススペクトラムにおける主ピークの分子イオンピーク値(実施値)が、計算によって得られる質量数(理論値)から±0.1質量数以内の場合、同定できたものとみなした。元素分析は、パーキン・エルマー社製 2400 CHN Elemant Analyzerを用いた。実測値が、理論値から±0.3%以内の場合、元素組成が一致しているものとみなした。
【0030】
また、CuKα線によるX線回折パターンは、リガク社製卓上型X線回折装置を用いて、フタロシアニン化合物の顔料粉末を、ブラック角2θ=3°〜35°の範囲を、X線サンプリング間隔0.02°で測定を行った。
【0031】
<フタロシアニン化合物の製造方法>
まず、実施例に先立って、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の原料となる一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物の製造について述べる。
【0032】
[製造例1]
(フタロシアニン化合物(a)の製造)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素ガスを導入しながら、n−アミルアルコール1250部、フタロジニトリル225部、塩化アルミニウム無水物78部を添加し、攪拌した。これに、DBU(1,8−Diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)266部を加え、窒素雰囲気下、136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、135部のフタロシアニン化合物(a)を得た。フタロシアニン化合物(a)について元素分析を行ったところ、計算値(C)66.85%、(H)2.80%、(N)19.49%に対して、実測値(C)66.7%、(H)3.0%、(N)19.2%であり、フタロシアニン化合物(a)であることを同定した。
【0033】
【化3】
【0034】
[製造例2]
(フタロシアニン化合物(b)の製造)
反応容器中でフタロシアニン化合物(a)100部を濃硫酸1200部に25℃にて加えた。40℃、3時間撹拌して、3℃の冷水24000部に硫酸溶液を注入した。青色の析出物をろ過、水洗、乾燥して、92部の下記構造を有するフタロシアニン化合物(b)を得た。フタロシアニン化合物(b)について元素分析を行ったところ、計算値(C)69.06%、(H)3.08%、(N)20.14%に対して、実測値(C)69.1%、(H)3.2%、(N)20.1%であり、フタロシアニン化合物(b)であることを同定した。
【0035】
【化4】
【0036】
ついで、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法について示す。
[実施例1]
フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造
反応容器に、1−メチル−2−ピロリドン500部、フタロシアニン化合物(b)50部、ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水5000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水10000部で洗浄後、80℃にて一昼夜乾燥させて、70部のフタロシアニン化合物1(PB−1)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物1であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、図1に示すように、ブラック角2θ=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有していた。
【0037】
[実施例2]
フタロシアニン化合物2(PB−2)の製造
反応容器に、1−メチル−2−ピロリドン500部、フタロシアニン化合物(b)50部、ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水5000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水10000部で洗浄後、80℃にて一昼夜乾燥させて、70部のフタロシアニン化合物を得た。得られたフタロシアニン化合物を粉砕後、その粉末を耐熱容器に入れ、高温室内で200℃、2時間加熱し、66部のフタロシアニン化合物2(PB−2)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物2であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、ブラック角2θ=6.9°、8.8°、10.7°、14.2°、16.1°、19.8°、23.1°、29.0°にピークを有していた。
【0038】
[実施例3]
フタロシアニン化合物3(PB−3)の製造
1−メチル−2−ピロリドン500部をN,N−ジメチルホルムアミド500部に変更した以外は、フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造と同様に行い、67部のフタロシアニン化合物3(PB−3)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物3であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、ブラック角2θ=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有していた。
【0039】
[実施例4]
フタロシアニン化合物4(PB−4)の製造
反応容器に、エチレングリコール500部、製造例1で得られたフタロシアニン化合物(b)50部、ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部を加えた。130℃で、3時間反応させた後、水5000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水10000部で洗浄後、80℃にて一昼夜乾燥させて、70部のフタロシアニン化合物4(PB−4)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物4であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、図2に示すように、ブラック角2θ=6.9°、8.8°、10.7°、14.2°、16.1°、19.8°、23.1°、29.0°にピークを有していた。
【0040】
[実施例5]
フタロシアニン化合物5(PB−5)の製造
フタロシアニン化合物(b)をフタロシアニン化合物(a)に変更した以外は、フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造と同様に行い、67部のフタロシアニン化合物5(PB−5)を得た。TOF−MSによる質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物5であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、ブラック角2θ=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有していた。
【0041】
[実施例6]
フタロシアニン化合物6(PB−6)の製造
反応容器に、N,N−ジメチルホルムアミド500部、製造例1で得られたフタロシアニン化合物(b)50部、ビス(1−ナフチル)クロロホスフェート35.0部を加えた。130℃で、3時間反応させた後、水5000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水10000部で洗浄後、80℃にて一昼夜乾燥させて、68部のフタロシアニン化合物6(PB−6)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物6であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、ブラック角2θ=4.4°、6.8°、8.8°、11.5°、13.6°、16.4°、22.3°、24.8°にピークを有していた。
【0042】
[実施例7]
フタロシアニン化合物7(PB−7)の製造
反応容器に、1−メチル−2−ピロリドン500部、製造例1で得られたフタロシアニン化合物(b)50部、ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水5000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水10000部で洗浄後、80℃にて一昼夜乾燥させて、72部のフタロシアニン化合物を得た。得られたフタロシアニン化合物を、キシレン500部に加え、135℃で2時間加熱した。67部のフタロシアニン化合物7(PB−7)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物7であることを同定した。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、ブラック角2θ=6.9°、8.8°、10.7°、14.2°、16.1°、19.8°、23.1°、29.0°にピークを有していた。
【0043】
[実施例8]
フタロシアニン化合物8(PB−8)の製造
ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部をビス(1−ナフチル)ホスフィン酸30.0部に変更した以外は、フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造と同様に行い、70部のフタロシアニン化合物8(PB−8)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物8であることを同定した。
【0044】
[実施例9]
フタロシアニン化合物9(PB−9)の製造
ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部をビス(1−ナフチル)ホスフィン酸30.0部に変更した以外は、フタロシアニン化合物4(PB−4)の製造と同様に行い、68部のフタロシアニン化合物9(PB−9)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物9であることを同定した。
【0045】
[実施例10]
フタロシアニン化合物10(PB−10)の製造
ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部をビス(1−ナフチル)ホスフィン酸30.0部に変更した以外は、フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造と同様に行い、68部のフタロシアニン化合物を得た。次に、得られたフタロシアニン化合物のソルトミリング処理を行った。得られたフタロシアニン化合物60部、塩化ナトリウム500部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製2Lニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で6時間混練した。次に、この混練物を3000部の温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間撹拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、55部のフタロシアニン化合物10(PB−10)を得た。
【0046】
[比較例1]
フタロシアニン化合物11(PB−11)の製造
ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部を、リン酸ジフェニル23.0部に変更した以外は、フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造と同様に行い、62部のフタロシアニン化合物11(PB−11)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物11であることを同定した。
【0047】
[比較例2]
フタロシアニン化合物11(PB−12)の製造
ビス(1−ナフチル)ホスフェート32.0部を、ジフェニルホスフィン酸20.0部に変更した以外は、フタロシアニン化合物1(PB−1)の製造と同様に行い、60部のフタロシアニン化合物12(PB−12)を得た。質量分析および元素分析の結果、フタロシアニン化合物12であることを同定した。
【0048】
以上、実施例1〜10および比較例1〜2で合成したフタロシアニン化合物について、質量分析および元素分析を行った結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
以下、本発明のフタロシアニン化合物を、カラーフィルタとして使用した例を参考例として説明する。
【0051】
[参考例11〜26、比較例3〜6]
(カラーフィルタ用着色組成物の製造方法)
【0052】
<着色剤の製造方法>
(着色剤(A−1)の製造)
C.I.ピグメントグリーン58(DIC社製「FASTGEN GREEN A110」)を100部、塩化ナトリウム1200部、およびジエチレングリコール120部をステンレス製3Lニーダー(井上製作所社製)に仕込み、70℃で6時間混練した。この混練物を3000部の温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間撹拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、着色剤(A−1)を得た。
【0053】
(着色剤(A−2)の製造)
特許第4993026号公報に記載の合成方法に従い、キノフタロン化合物(1)を得た。
【0054】
【化5】
【0055】
さらに、前記着色剤(A−1)で使用したC.I.ピグメントグリーン 58の100部を、C.I.ピグメントイエロー138(BASF社製商品名パリオトールイエローK0961HD)20部とキノフタロン化合物(1)80部の混合物に変更した以外は、着色剤(A−1)と同様にして、着色剤(A−2)を得た。
【0056】
(着色剤(A−3)の製造)
前記着色剤(A−1)で使用したC.I.ピグメントグリーン 58を、C.I.ピグメントイエロー150(ランクセス社製商品名E4GN)に変更した以外は、着色剤(A−1)と同様にして、着色剤(A−3)を得た。
【0057】
<色素誘導体の製造方法>
(色素誘導体(Q−1)の製造)
特開2004−067715号公報に記載の合成方法に従い、色素誘導体(Q−1)を得た。
【0058】
【化6】
【0059】
<カラーフィルタ用着色組成物の製造方法>
まず、本発明の着色組成物に使用したバインダー樹脂の製造方法を示す。
【0060】
<バインダー樹脂溶液の製造方法>
(アクリル樹脂溶液1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン196部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、n−ブチルメタクリレート37.2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.9部、メタクリル酸12.0部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)20.7部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してアクリル樹脂溶液1を調製した。重量平均分子量(Mw)は26000であった。
【0061】
(アクリル樹脂溶液2の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン207部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、メタクリル酸20部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)20部、メタクリル酸メチル45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8.5部、及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1.33部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、共重合体樹脂溶液を得た。次に得られた共重合体溶液全量に対して、窒素ガスを停止し乾燥空気を1時間注入しながら攪拌したのちに、室温まで冷却した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズMOI)6.5部、ラウリン酸ジブチル錫0.08部、シクロヘキサノン26部の混合物を70℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液2を調製した。重量平均分子量(Mw)は18000であった。
【0062】
(バインダー樹脂の重量平均分子量)
アクリル樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)
により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0063】
[参考例11]
(着色組成物(D−1)の製造)
下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)にて5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、着色組成物を作製した。

フタロシアニン化合物(PB−1) 7.7部
着色剤(A−1) 3.3部
樹脂型分散剤(BASF社製「EFKA4300」) 2.0部
アクリル樹脂溶液1 44.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 44.0部
【0064】
(参考例12〜26、比較例3〜6)
フタロシアニン化合物と着色剤と色素誘導体からなる材料の合計含有量を11.0部に固定し、材料中の質量比を表2に示したように変更した以外は、参考例11と同様にして、それぞれ着色組成物を得た。
【0065】
<着色組成物の評価>
得られた着色組成物について、初期粘度および保存安定性を下記方法で評価した。また、着色組成物を用いて作成した基板(カラーフィルタ)について、コントラストを下記方法で評価した。表2に評価結果を示す。
【0066】
(コントラストの評価)
得られた着色組成物を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて、回転数を変えて、230℃での熱処理後の膜厚が約1.2μm前後となるように3点の塗膜基板を作製した。乾燥条件は、塗布後70℃で20分、さらに230℃で30分とした。それぞれ塗膜の膜厚およびコントラストを測定し、3点のデータから膜厚が1.2μmにおけるコントラストを一次回帰法により算出した。参考例11〜20、比較例4は比較例3を、参考例21〜25は比較例5を、参考例26は比較例6を、それぞれコントラストの基準として、下記の3段階での相対値で評価した。

A:+10%以上(基準より極めて良好)
B:+10%未満〜+5%以上(基準より良好)
C:+5%未満(基準と同等または劣る)
【0067】
(初期粘度の評価)
着色組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。評価基準は下記の通りである。

A:10未満(極めて良好)
B:10以上20未満(良好)
C:20以上(不良)
【0068】
(保存安定性の評価)
得られた着色組成物について、40℃の恒温機に1週間保存して経時促進させた後、経時後の着色組成物の粘度を前記粘度測定と同じ方法で測定した。40℃で1週間保存した後の保存前に対する粘度の変化率を算出し、下記の基準により2段階で評価した。

A:粘度変化率が±10%以内で、沈降物を生じなかった(良好)
B:粘度変化率が±10%を超えた、又は、粘度変化率が±10%以内であっても沈降物を生じていた(不良)
【0069】
【表2】
【0070】
本発明のフタロシアニン化合物とC.I.ピグメントグリーン58とを組合せた参考例11〜20は、比較例3〜4と比べてコントラスト、初期粘度、および保存安定性が良好であった。また、本発明のフタロシアニン化合物とキノフタロン顔料を組合せた実施例21〜25と比較例5の比較、本発明のフタロシアニン化合物とC.I.ピグメントイエロー150を組合せた実施例26と比較例6の比較においても同様の結果であった。
【0071】
<黄色着色組成物の製造方法>
(着色組成物(D−101)の製造)
下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)にて5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、黄色着色組成物(D−101)を作製した。

着色剤(A−2) 9.9部
色素誘導体(Q−1) 1.1部
樹脂型分散剤(味の素ファインテクノ社製「PB821」) 1.0部
アクリル樹脂溶液1 44.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 44.0部
【0072】
<感光性着色組成物の製造方法>
[参考例27]
(感光性着色組成物(R−1)の製造)
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して緑色感光性着色組成物(R−1)を得た。

着色組成物(D−1) 24.2部
着色組成物(D−101) 23.6部
アクリル樹脂溶液2 7.1部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM402」 3.3部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアーOXE02」) 0.8部
増感剤(保土谷化学工業社製「EAB−F」) 0.4部
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 39.6部
【0073】
[参考例28〜30、比較例7〜8]
着色組成物の合計含有量はすべて47.8部に固定し、塗膜基板が、C光源でx=0.225、y=0.660の色度になるように着色組成物の種類を表3に記載したように変更した以外は、参考例27と同様にして、それぞれ感光性着色組成物(R−2〜6)を得た。
【0074】
<感光性着色組成物の評価>
得られた感光性着色組成物(R−1〜6)について、保存安定性を下記方法で評価した。また、感光性着色組成物(R−1〜6)を用いて作成した基板(カラーフィルタ)について、明度およびコントラストを下記方法で評価した。表3に評価結果を示す。
【0075】
(明度の評価)
感光性着色組成物(R−1〜6)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃で20分乾燥し、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量150mJ/cm2で紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像を行い、塗膜基板を得た。ついで230℃で30分間加熱、放冷後、得られた塗膜基板の明度Y(C)を、顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用いて測定した。尚、230℃での熱処理後で、C光源でy=0.660の色度に合うようにした。アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム1.5質量%炭酸水素ナトリウム0.5質量% 陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペリレックスNBL」)8.0質量%および水90質量%からなるものを用いた。比較例7を基準として、下記の3段階での相対値で評価した。明度Y(C)に関しては、0.5%以上であれば、明らかに差があるといえる。

A:+2%以上(基準より極めて良好)
B:+2%未満〜+0.5%以上(基準より良好)
C:+0.5%未満(基準と同等または劣る)
【0076】
(コントラストの評価)
塗膜のコントラストの測定法については、前記着色組成物のコントラスト測定と同様の方法で測定した。明度評価をしたものと同じ塗膜基板を用いて、コントラストを算出した。比較例7を基準として、下記の3段階での相対値で評価した。

A:+10%以上(基準より極めて良好)
B:+10%未満〜+5%以上(基準より良好)
C:+5%未満(基準と同等または劣る)
【0077】
(保存安定性の評価)
得られた感光性着色組成物について、初期および経時促進後の粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて25℃条件で測定した。経時促進の条件は、40℃の恒温機に1週間保存とした。40℃で1週間保存した前後の粘度の変化率を計算し、以下の基準により2段階で評価した。

A:粘度変化率が±10%以内で、沈降物を生じなかった(良好)
B:粘度変化率が±10%を超える場合、又は粘度変化率が±10%以内であっても沈降物を生じていた(不良)
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示すように、参考例27〜30は、比較例7〜8に対して、明度、コントラスト、および保存安定性が良好な結果であった。
【0080】
<カラーフィルタの作製>
まず、カラーフィルタの作製に使用する青色、および赤色感光性着色組成物の作製を行った。
【0081】
(青色感光性着色組成物(R−201)の作製)
下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)にて5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、青色着色組成物(D−201)を作製した。

青色顔料(C.I.ピグメントブルー15:6) 7.2部
紫色顔料(C.I.ピグメントバイオレット23) 4.8部
樹脂型分散剤(BASF社製「EFKA4300」) 1.0部
アクリル樹脂溶液1 35.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 52.0部
【0082】
続いて、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過し、青色感光性着色組成物(R−201)を作製した。

青色着色組成物(D−201) 34.0部
アクリル樹脂溶液2 15.2部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM400」) 3.3部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー907」) 2.0部
増感剤(保土谷化学工業社製「EAB−F」) 0.4部
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 45.1部
【0083】
(赤色感光性着色組成物(R−301)の作製)
下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)にて5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、赤色着色組成物(D−301)を作製した。

赤色顔料(C.I.ピグメントレッド254) 6.6部
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド177) 5.4部
樹脂型分散剤(BASF社製「EFKA4300」) 1.0部
アクリル樹脂溶液1 35.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 52.0部
【0084】
続いて、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過し、赤色感光性着色組成物(R−301)を作製した。

赤色着色組成物(D−301) 42.0部
アクリル樹脂溶液2 13.2部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM400」) 2.8部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー907」) 2.0部
増感剤(保土谷化学工業社製「EAB−F」) 0.4部
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 39.6部
【0085】
(カラーフィルタの作製)
ガラス基板上にブラックマトリクスをパターン加工し、該基板上にスピンコーターで、本発明の赤色の感光性着色組成物(R−301)を塗布し、塗膜を形成した。該塗膜にフォトマスクを介して、超高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2の紫外線を照射した。次いで0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像して未露光部分を取り除いた後、イオン交換水で洗浄し、この基板を230℃で30分加熱して、赤色フィルタセグメントを形成した。ここで、赤色フィルタセグメントは、230℃での熱処理後で、C光源において(以下、緑色、青色にも用いる)x=0.665の色度になるようにした。また、同様の方法により、緑色フィルタセグメントは、本発明の緑色の感光性着色組成物(R−1)を用いてy=0.660の色度になるようにし、青色フィルタセグメントは、青色感光性着色組成物(R―201)を用いてy=0.082の色度になるようにし、各フィルタセグメントを形成して、カラーフィルタを得た。
【0086】
緑色フィルタセグメントの形成に、本発明の感光性着色組成物(R−1)を用いることにより、カラーフィルタの高明度化、および高コントラスト化が可能であり、その他物性にも問題なく好適に使用することができた。
図1
図2