特許第6269375号(P6269375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6269375非接触給電装置および非接触給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269375
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】非接触給電装置および非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20180122BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-154921(P2014-154921)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-32404(P2016-32404A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】田邊 英樹
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−074756(JP,A)
【文献】 特開2013−187962(JP,A)
【文献】 特開2013−172490(JP,A)
【文献】 特許第5549745(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴方式により非接触で受電装置に電力を給電する給電コイルと、共振コンデンサとを有する共振回路と、
所定の駆動周波数を有する駆動信号に基づいて、前記共振回路に交流電力を供給するための電源部と、
前記共振回路の前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるためのスイッチ部と、
前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相とを略一致させるように、前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える前記スイッチ部を制御するスイッチ制御部と、を備える、非接触給電装置。
【請求項2】
前記スイッチ部は、前記給電コイルの一端に接続される第1スイッチ素子と、前記給電コイルの他端に接続される第2スイッチ素子とを有し、
前記スイッチ制御部は、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とをスイッチングすることにより、前記共振回路の前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御部は、前記駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、前記スイッチ部により前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている、請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた信号を生成する信号生成部をさらに備え、
前記スイッチ制御部は、前記信号生成部により生成された前記信号に基づいて、前記駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、前記スイッチ部により前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
前記スイッチ制御部は、前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相との位相差に基づいて、前記スイッチ部により前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項6】
前記駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた信号を生成する信号生成部をさらに備え、
前記スイッチ制御部は、前記信号生成部により生成された前記信号の位相と前記共振回路の振動の位相との位相差に基づいて、前記スイッチ部により前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項7】
前記共振回路は、前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相との位相差が略1/4周期未満になるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項8】
受電装置と、
共鳴方式により非接触で前記受電装置に電力を給電する給電装置と、を備え、
前記給電装置は、
給電コイルと、共振コンデンサとを有する共振回路と、
所定の駆動周波数を有する駆動信号に基づいて、前記共振回路に交流電力を供給するための電源部と、
前記共振回路の前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるためのスイッチ部と、
前記駆動信号の位相と前記共振回路の振動の位相とを略一致させるように、前記給電コイルに流れる電流の方向を切り替える前記スイッチ部を制御するスイッチ制御部と、を含む、非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触給電装置および非接触給電システムに関し、特に、共振回路を備える非接触給電装置および非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共振回路を備える非接触給電装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、設定対称装置(受電装置)に非接触で電力を供給する送電コイルと、送電コイルと直列に接続される3つのコンデンサとからなる共振回路を備える非接触設定装置(非接触給電装置)が開示されている。この非接触設定装置は、スイッチにより送電コイルと接続されるコンデンサの数を変更(1つ、2つまたは3つに変更)して、共振回路の共振周波数を変化させるように構成されている。これにより、この非接触設定装置では、設定対称装置との送電距離(コイル間距離)に応じて最適な送電を行うための共振周波数が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−182012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、従来、経時変化および使用環境などに起因して非接触給電装置の共振回路の共振周波数が変化することが知られている。この場合、共振回路の共振周波数の所望の共振周波数からのずれが生じてしまう。その結果、非接触給電装置の共振回路の共振周波数が変化することに起因して、非接触給電装置から受電装置への電力の伝送効率が低下するという不都合があった。
【0006】
上記不都合を解消するために上記特許文献1に記載の非接触設定装置の手法を用いることも考えられる。すなわち、経時変化および使用環境などに起因する共振回路の共振周波数の変化に対応するように、スイッチにより送電コイルと接続されるコンデンサの数を変更して、非接触給電装置の共振回路の共振周波数を変化させることも考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合には、経時変化および使用環境などに起因する共振回路の共振周波数の変化を調整するために3つのコンデンサを設ける必要がある分、共振回路が大型化するとともに回路構成が複雑化してしまうという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、共振回路の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置における共振回路の共振周波数の変化に起因する受電装置への電力の伝送効率の低下を抑制することが可能な非接触給電装置および非接触給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の局面による非接触給電装置は、共鳴方式により非接触で受電装置に電力を給電する給電コイルと、共振コンデンサとを有する共振回路と、所定の駆動周波数を有する駆動信号に基づいて、共振回路に交流電力を供給するための電源部と、共振回路の給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるためのスイッチ部と、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように、給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部を制御するスイッチ制御部と、を備える。
【0010】
ここで、駆動信号の駆動周波数と共振回路の共振周波数とが異なる場合には、駆動信号の位相と共振回路に発生する振動の位相とにずれが生じ、駆動信号の駆動周波数と共振回路の共振周波数とが略一致する場合には、駆動信号の位相と共振回路に発生する振動の位相とが略一致することが知られている。そこで、この発明の第1の局面による非接触給電装置では、上記のように、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように、給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部を制御するスイッチ制御部を設ける。これにより、スイッチ制御部により給電コイルに流れる電流の方向を強制的に切り替えることに対応して、共振回路の振動(振動波形)を、強制的に、上昇から下降に転じる方向または下降から上昇に転じる方向に変化させることができる。その結果、経時変化および使用環境などに起因して共振回路の共振周波数が変化したとしても、疑似的に駆動信号の駆動周波数(所望の共振周波数)と共振回路の共振周波数とが略一致する状態(駆動信号の位相と共振回路に発生する振動の位相とが略一致する状態)にすることができる。したがって、経時変化および使用環境などに起因する共振回路の共振周波数の変化を調整することができるので、給電装置における共振回路の共振周波数の変化に起因する受電装置への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。また、経時変化および使用環境などに起因する共振回路の共振周波数の変化を調整するために複数(3つ)のコンデンサを設ける必要がないので、共振回路の大型化および複雑化を抑制することができる。これらの結果、共振回路の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置における共振回路の共振周波数の変化に起因する受電装置への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による非接触給電装置において、好ましくは、スイッチ部は、給電コイルの一端に接続される第1スイッチ素子と、給電コイルの他端に接続される第2スイッチ素子とを有し、スイッチ制御部は、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とをスイッチングすることにより、共振回路の給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子との簡素な構成により、共振回路の大型化および複雑化を抑制しながら、容易に共振回路の給電コイルに流れる電流の方向を切り替えることができる。
【0012】
上記第1の局面による非接触給電装置において、好ましくは、スイッチ制御部は、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ部により給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている。ここで、駆動信号の駆動周波数と共振回路の共振周波数とが略一致する理想的な場合には、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、共振回路の振動(振動波形)が上昇から下降または下降から上昇に転じる。そこで、上記のように構成すれば、理想的な場合に共振回路の振動(振動波形)が上昇から下降または下降から上昇に転じる時点で、共振周波数が変化した場合の共振回路の振動(振動波形)を上昇から下降に転じる方向または下降から上昇に転じる方向に容易に変化させることができる。したがって、共振周波数が変化した場合の共振回路の振動(振動波形)を、理想的な場合の共振回路の振動(振動波形)になるように容易に変化させることができる。
【0013】
上記第1の局面による非接触給電装置において、好ましくは、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた信号を生成する信号生成部をさらに備え、スイッチ制御部は、信号生成部により生成された信号に基づいて、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ部により給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている。このように構成すれば、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を、信号生成部により生成された信号により容易に判断することができる。その結果、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ制御部によるスイッチ部の制御を容易に行うことができる。
【0014】
上記第1の局面による非接触給電装置において、好ましくは、スイッチ制御部は、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相との位相差に基づいて、スイッチ部により給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている。このように構成すれば、たとえば、スイッチ部の制御タイミングを直接的に知らせるための信号を生成する信号生成部がない場合にも、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相との位相差に基づいて、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を知ることができる。その結果、スイッチ制御部によるスイッチ部の制御を容易に行うことができる。
【0015】
上記第1の局面による非接触給電装置において、好ましくは、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた信号を生成する信号生成部をさらに備え、スイッチ制御部は、信号生成部により生成された信号の位相と共振回路の振動の位相との位相差に基づいて、スイッチ部により給電コイルに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように構成されている。ここで、一般的に、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相との位相差よりも、駆動信号の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた信号と共振回路の振動の位相との位相差の方が取得しやすい。したがって、上記のように構成すれば、位相差を容易に取得して、スイッチ制御部によりスイッチ部を制御することができる。
【0016】
上記第1の局面による非接触給電装置において、好ましくは、共振回路は、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相との位相差が略1/4周期未満になるように構成されている。このように構成すれば、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相との位相差が小さい分、容易に、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させることができる。
【0017】
この発明の第2の局面による非接触給電システムは、受電装置と、共鳴方式により非接触で受電装置に電力を給電する給電装置と、を備え、給電装置は、給電コイルと、共振コンデンサとを有する共振回路と、所定の駆動周波数を有する駆動信号に基づいて、共振回路に交流電力を供給するための電源部と、共振回路の給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるためのスイッチ部と、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように、給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部を制御するスイッチ制御部と、を含む。
【0018】
この発明の第2の局面による非接触給電システムでは、上記のように、駆動信号の位相と共振回路の振動の位相とを略一致させるように、給電コイルに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部を制御するスイッチ制御部を設ける。これにより、第2の局面による非接触給電システムにおいても、共振回路の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置における共振回路の共振周波数の変化に起因する受電装置への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、共振回路の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置における共振回路の共振周波数の変化に起因する受電装置への電力の伝送効率の低下を抑制することが可能な非接触給電装置および非接触給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態による非接触給電システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態による非接触給電装置の位相の遅れる場合におけるスイッチ制御のある場合とない場合の電圧波形を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態による非接触給電装置の位相の進む場合におけるスイッチ制御のある場合とない場合の電圧波形を説明するための図である。
図4】本発明の第2実施形態による非接触給電システムの全体構成を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態による非接触給電装置の駆動信号の位相と共振回路の電圧波形の位相との位相差について説明するための図である。
図6】本発明の第3実施形態による非接触給電システムの全体構成を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態による非接触給電装置の駆動信号の位相と共振回路の電圧波形の位相との位相差について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による非接触給電システム100の構成について説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態による非接触給電システム100は、図1に示すように、給電装置1と、受電装置2とを備えている。なお、給電装置1は、本発明の「非接触給電装置」の一例である。
【0024】
非接触給電システム100では、給電装置1と受電装置2とは、磁界共鳴方式により非接触で電力を受給(給電および受電)するように構成されている。非接触給電システム100は、たとえば、自動車のダッシュボードや商用の飲食施設のテーブルなどに設置された給電装置1と、非接触で電力を受電可能な電子機器(たとえば、スマートフォンやデジタルカメラ)としての受電装置2とにより構成される。なお、上記した給電装置1と受電装置2との組み合わせは一例であり、非接触給電システム100は、上記した組み合わせ以外の給電装置1と受電装置2とにより構成されてもよい。
【0025】
図1に示すように、給電装置1は、電源部11と、共振回路12と、信号生成部13と、スイッチ部14と、スイッチ制御部15とを含んでいる。
【0026】
電源部11は、図示しないAC/DCコンバータとスイッチング回路とを含み、商用電源90から供給された交流電力を、所定の駆動周波数を有する駆動信号S1(図2参照)に基づく交流電力に変換した状態で、共振回路12に供給するように構成されている。
【0027】
共振回路12は、給電コイル12aと、共振コンデンサ12bとを有している。共振回路12では、給電コイル12aと共振コンデンサ12bとは、後述するスイッチ素子14bを介して、互いに直列に接続されている。また、共振回路12では、給電コイル12aは、電源部11から駆動信号S1に基づく交流電力が供給されることにより、受電装置2に非接触で給電を行うための磁界を発生するように構成されている。これにより、給電装置1は、共振回路12の給電コイル12aを介して受電装置2に非接触で電力を給電するように構成されている。
【0028】
また、共振回路12は、所定の駆動周波数と若干ずれた(周波数が若干大きいまたは小さい)共振周波数を有している。所定の駆動周波数と若干ずれた共振周波数を共振回路12が有する場合には、たとえば、経時変化および使用環境などに起因して共振回路12の共振周波数が変化した場合が考えられる。この場合、共振回路12では、図2および図3に示すように、所定の駆動周波数と略同一の周波数で、かつ、位相がずれた(位相が遅れたまたは進んだ)交流電圧が発生する。図2および図3では、共振回路12において発生する交流電圧を、共振コンデンサ12bにおいて発生する交流電圧の波形として示している。なお、位相が遅れた場合の波形が、共振コンデンサ電圧Va1図2参照)であり、位相が進んだ場合の波形が、共振コンデンサ電圧Va2図3参照)である。また、共振コンデンサ電圧Va1およびVa2の位相は、本発明の「共振回路の振動の位相」の一例である。
【0029】
また、第1実施形態では、共振回路12は、図2および図3に示すように、駆動信号S1の位相と共振コンデンサ電圧Va1(またはVa2)の位相との位相差が略1/4周期(略90度)未満になるように構成されている。詳細には、図2に示す場合には、駆動信号S1の位相に対する共振コンデンサ電圧Va1の位相の遅れが略1/4周期未満になるように構成されており、図3に示す場合には、駆動信号S1の位相に対する共振コンデンサ電圧Va2の位相の進みが略1/4周期未満になるように構成されている。
【0030】
信号生成部13は、発振器13aおよび13bを有している。発振器13aは、所定の駆動周波数を有する略矩形波状の駆動信号S1を生成するとともに、生成した駆動信号S1を電源部11に出力するように構成されている。発振器13bは、略矩形波状の駆動信号S1の駆動タイミング(立ちあがりまたは立ち下がりのタイミング)に対応する位相に対して位相が略90度ずれた参照用信号S2を生成するとともに、生成した参照用信号S2をスイッチ制御部15に出力するように構成されている。参照用信号S2は、駆動信号S1と略同一の周波数を有する略矩形波状の信号である。
【0031】
スイッチ部14は、スイッチ素子14aおよび14bを有している。スイッチ素子14aおよび14bは、たとえば、半導体スイッチまたはリレースイッチにより構成される。また、スイッチ素子14aおよび14bは、共に、端子Bと3つの切替端子A1、A2およびA3とを有している。スイッチ素子14aは、端子Bが電源部11に接続されており、切替端子A1が給電コイル12aの一端に接続されている。また、スイッチ素子14aは、切替端子A2はいずれの素子にも接続されておらず、切替端子A3が給電コイル12aの他端に接続されている。スイッチ素子14bは、端子Bが共振コンデンサ12bの一方側の電極に接続されており、切替端子A1が給電コイル12aの他端に接続されている。また、スイッチ素子14bは、切替端子A2はいずれの素子にも接続されておらず、切替端子A3が給電コイル12aの一端に接続されている。なお、スイッチ素子14aおよび14bは、それぞれ、本発明の「第1スイッチ素子」および「第2スイッチ素子」の一例である。
【0032】
スイッチ制御部15は、マイコンを含み、スイッチ部14のスイッチ素子14aおよび14bに個別にスイッチ制御信号を出力することにより、スイッチ素子14aおよび14bスイッチングして、各々の接続状態を切り替えるように構成されている。また、スイッチ制御部15は、スイッチ素子14aおよび14bの接続状態を連動して切り替えるように構成されている。
【0033】
ここで、第1実施形態では、スイッチ制御部15は、スイッチ素子14aおよび14bをスイッチングすることにより、共振回路12の給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うように構成されている。具体的には、スイッチ制御部15は、スイッチ素子14aおよび14bが共に端子B−切替端子A1(以下、単にB−A1と記載する)の接続状態である第1経路と、スイッチ素子14aおよび14bが共に端子B−切替端子A3(以下、単にB−A3と記載する)の接続状態である第2経路とをスイッチングにより切り替えることにより、共振回路12の給電コイル12aに流れる電流の方向が、逆向きになるように切り替える制御を行うように構成されている。なお、端子B−切替端子A2の接続状態は、B−A1の接続状態とB−A3の接続状態との切り替えの際、デッドタイム(一方がB−A1、他方がB−A3に接続された状態になるのを抑制する時間)を設けることにより、短絡を防止するために利用される。これにより、給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御の際の短絡による誤動作が生じるのを抑制することが可能になる。
【0034】
また、第1実施形態では、スイッチ制御部15は、信号生成部13の発振器13bにより生成された参照用信号S2に基づいて、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点(すなわち、参照用信号S2の立ち上がりまたは立ち下がりに対応する時点)で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、スイッチ制御部15は、図2および図3の共振コンデンサ電圧Vb1およびVb2のように、駆動信号S1の位相と共振コンデンサ電圧Vb1(またはVb2)の位相とを略一致させるように構成されている。このスイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御の詳細については、後述する。
【0035】
図1に示すように、受電装置2は、共振回路21と、整流回路22と、DC/DCコンバータ23と、負荷24とを含んでいる。
【0036】
共振回路21は、受電コイル21aと、直列共振コンデンサ21bと、並列共振コンデンサ21cとを有している。直列共振コンデンサ21bおよび並列共振コンデンサ21cは、それぞれ、受電コイル21aに直列および並列に接続されている。また、共振回路21は、給電装置1の駆動信号S1の所定の駆動周波数と略同一の共振周波数で共振するように構成されている。
【0037】
また、共振回路21では、受電コイル21aは、給電装置1の共振回路12の給電コイル12aで発生された磁界により非接触で電力を受電するように構成されている。この際、共振回路21では、共振回路21の共振周波数と略同一の周波数を有する交流電力が発生する。
【0038】
整流回路22は、ブリッジ整流回路により構成されており、共振回路21で発生した交流電力を直流電力に整流するように構成されている。また、整流回路22は、整流した直流電力をDC/DCコンバータ23に供給するように構成されている。
【0039】
DC/DCコンバータ23は、整流回路22から供給された直流電力の電圧値を所定の電圧値に昇圧または降圧して、負荷24に電力を供給するように構成されている。
【0040】
負荷24は、充放電可能な2次電池を含んでいる。2次電池としての負荷24は、DC/DCコンバータ23から供給された電力により充電されるように構成されている。なお、負荷24は、充放電可能な2次電池以外の負荷を含んでいてもよい。たとえば、DC/DCコンバータ23から供給された電力により直接的に動作する回路を含んでいてもよい。
【0041】
次に、図2を参照して、給電装置1のスイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御について説明する。図2では、所定の駆動周波数よりも小さい共振周波数を共振回路12が有している場合について説明する。
【0042】
この場合、図2に示すように、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、共振コンデンサ12bにおいて、駆動信号S1の位相と位相が位相差φ1だけ遅れた共振コンデンサ電圧Va1の波形の交流電圧が発生する。ここで、位相差φ1は、略1/4周期(略90度)未満である。
【0043】
また、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、所定の駆動周波数と略同一の受電装置2の共振回路21の共振周波数と、給電装置1の共振回路12の共振周波数とが略一致しない。
【0044】
一方、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われる場合には、共振コンデンサ電圧Va1は、駆動信号S1の位相と位相が略一致する共振コンデンサ電圧Vb1の波形の交流電圧に調整される。以下、スイッチ制御部15による共振回路12に発生する交流電圧の波形の調整について詳細に説明する。
【0045】
まず、時点t0において、スイッチ素子14aおよび14bが共にB−A1の接続状態である第1経路により給電コイル12aに電流が流れる状態であるとする。図2の給電コイル電流Ib1の波形に示すように、時点t0から共振コンデンサ12bに給電(充電)するための電流が第1経路により給電コイル12aに流れる。これにより、図2の共振コンデンサ電圧Vb1の波形に示すように、共振コンデンサ12bに給電(充電)が行われて、徐々に共振コンデンサ12bの電圧値が大きくなる。
【0046】
そして、駆動信号S1の立ち上がりの駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点t1において、スイッチ制御部15により、スイッチ素子14aおよび14bが共にB−A1の接続状態からB−A3の接続状態に切り替えられる。これにより、給電コイル12aに流れる電流の経路が第1経路から第2経路に切り替わり、給電コイル12aに流れる電流の方向が強制的に逆向きになる。その結果、共振コンデンサ12bでは放電が開始されるため、図2の共振コンデンサVb1の波形に示すように、時点t1において強制的に上昇から下降に転じる方向に波形が変化される。なお、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、図2の共振コンデンサVa1の波形に示すように、時点t1よりも若干後の時点において、上昇から下降に転じる。すなわち、この上昇から下降に転じる時点を位相が進む方向に変化させた分、共振コンデンサ電圧Va1の位相が調整される。
【0047】
そして、駆動信号S1の立ち下がりの駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点t2において、スイッチ制御部15により、今度は、スイッチ素子14aおよび14bが共にB−A3の接続状態からB−A1の接続状態に切り替えられる。これにより、今度は、給電コイル12aに流れる電流の経路が第2経路から第1経路に切り替わり、再び、給電コイル12aに流れる電流の方向が強制的に逆向きになる。その結果、共振コンデンサ12bでは放電が開始されるため、図2の共振コンデンサVb1の波形に示すように、時点t2において強制的に下降から上昇に転じる方向に波形が変化される。なお、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、図2の共振コンデンサVa1の波形に示すように、時点t2よりも若干後の時点において、下降から上昇に転じる。すなわち、この下降から上昇に転じる時点を位相が進む方向に変化させた分、共振コンデンサ電圧Va1の位相が調整される。
【0048】
以降は、駆動信号S1の駆動タイミング(立ち上がりまたは立ち下がり)に対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点において、周期的に、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われる。なお、この波形の調整の結果、図2に示すように、調整後の共振コンデンサ電圧Vb1の波形の振幅C2は、調整前の共振コンデンサ電圧Va1の波形の振幅C1よりも大きくなる。
【0049】
これらの結果、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、駆動信号S1の位相と位相が位相差φ1だけ遅れた共振コンデンサ電圧Va1の波形を、駆動信号S1の位相と位相が略一致する共振コンデンサ電圧Vb1の波形になるように調整することが可能になる。
【0050】
ここで、駆動信号S1の駆動周波数と共振回路12の共振周波数とが異なる場合には、駆動信号S1の位相と共振回路12に発生する交流電圧の位相とにずれが生じ、駆動信号S1の駆動周波数と共振回路12の共振周波数とが略一致する場合には、駆動信号S1の位相と共振回路12に発生する交流電圧の位相とが略一致することが知られている。
【0051】
したがって、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われた場合には、所定の駆動周波数と略同一の受電装置2の共振回路21の共振周波数と、給電装置1の共振回路12の共振周波数とが略一致する状態とみなすことができる。
【0052】
次に、図3を参照して、給電装置1のスイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御について説明する。図3では、所定の駆動周波数よりも大きい共振周波数を共振回路12が有している場合について説明する。
【0053】
この場合、図3に示すように、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、共振コンデンサ12bにおいて、駆動信号S1の位相と位相が位相差φ2だけ進んだ共振コンデンサ電圧Va2の波形の交流電圧が発生する。ここで、位相差φ2は、略1/4周期(略90度)未満である。
【0054】
まず、時点t3において、スイッチ素子14aおよび14bが共にB−A1の接続状態である第1経路により給電コイル12aに電流が流れる状態であるとする。図3の給電コイル電流Ib2の波形に示すように、時点t3から共振コンデンサ12bに給電(充電)するための電流が給電コイル12aに流れる。これにより、図2の共振コンデンサ電圧Vb1の波形に示すように、共振コンデンサ12bに給電(充電)が行われて、徐々に共振コンデンサ12bの電圧値が大きくなるとともに、時点t4よりも前の時点で、共振コンデンサ12bの電圧値が上昇から下降に転じる。
【0055】
そして、駆動信号S1の立ち上がりの駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点t4において、スイッチ制御部15により、スイッチ素子14aおよび14bが共にB−A1の接続状態からB−A3の接続状態に切り替えられる。これにより、給電コイル12aに流れる電流の経路が第1経路から第2経路に切り替わり、給電コイル12aに流れる電流の方向が強制的に逆向きになる。その結果、放電が行われていた共振コンデンサ12bに給電(充電)が開始されるため、図2の共振コンデンサVb2の波形に示すように、時点t4において強制的に下降から上昇に転じる方向に波形が変化される。そして、時点t4から共振コンデンサ12bの電圧値が徐々に大きくなるとともに、共振コンデンサ12bの電圧値が再び上昇から下降に転じ、その後徐々に共振コンデンサ12bの電圧値が小さくなる。そして、時点t5よりも前の時点で、共振コンデンサ12bの電圧値が下降から上昇に転じる。
【0056】
そして、駆動信号S1の立ち下がりの駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点t5において、スイッチ制御部15により、今度は、スイッチ素子14aおよび14bが共にB−A3の接続状態からB−A1の接続状態に切り替えられる。これにより、今度は、給電コイル12aに流れる電流の経路が第2経路から第1経路に切り替わり、再び、給電コイル12aに流れる電流の方向が強制的に逆向きになる。その結果、放電が行われていた共振コンデンサ12bでは給電が開始されるため、図2の共振コンデンサVb2の波形に示すように、時点t5において強制的に上昇から下降に転じる方向に波形が変化される。そして、時点t5から共振コンデンサ12bの電圧値が徐々に大きくなるとともに、共振コンデンサ12bの電圧値が再び下降から上昇に転じ、その後徐々に共振コンデンサ12bの電圧値が大きくなる。以降は、駆動信号S1の駆動タイミング(立ち上がりまたは立ち下がり)に対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点において、周期的に、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われる。
【0057】
これらの結果、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御が行われない場合には、駆動信号S1の位相と位相が位相差φ2だけ進んだ共振コンデンサ電圧Va2の波形を、駆動信号S1の位相と位相が略一致する共振コンデンサ電圧Vb2の波形に調整することが可能になる。なお、調整後の共振コンデンサ電圧Vb2の波形では、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、凹部が生じる。この波形の場合にも、所定の駆動周波数と略同一の受電装置2の共振回路21の共振周波数と、給電装置1の共振回路12の共振周波数とが略一致した状態とみなすことができる。
【0058】
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
第1実施形態では、上記のように、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動(共振コンデンサ電圧Va1およびVa2)の位相とを略一致させるように、給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部14を制御するスイッチ制御部15を設ける。これにより、スイッチ制御部15により給電コイル12aに流れる電流の方向を強制的に切り替えることに対応して、共振回路12の振動(振動波形)を、強制的に、上昇から下降に転じる方向または下降から上昇に転じる方向に変化させることができる。その結果、経時変化および使用環境などに起因して共振回路12の共振周波数が変化したとしても、疑似的に駆動信号S1の駆動周波数(受電装置2の共振回路21の共振周波数)と共振回路12の共振周波数とが略一致する状態(駆動信号S1の位相と共振回路12に発生する振動の位相とが略一致する状態)にすることができる。したがって、経時変化および使用環境などに起因する共振回路12の共振周波数の変化を調整することができるので、給電装置1における共振回路12の共振周波数の変化に起因する受電装置2への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。また、経時変化および使用環境などに起因する共振回路12の共振周波数の変化を調整するために複数のコンデンサを設ける必要がないので、共振回路12の大型化および複雑化を抑制することができる。これらの結果、共振回路12の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置1における共振回路12の共振周波数の変化に起因する受電装置2への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0060】
ところで、非接触給電システム100の給電装置1では、一般的に、製造時(出荷前)に共振回路12の共振周波数の調整が行われる。具体的には、共振回路12の給電コイル12aおよび共振コンデンサ12bのパラメータを調整することにより、駆動信号S1の駆動周波数と共振回路12の共振周波数とを略一致させるように共振回路12の共振周波数の調整が行われる。そして、この製造時における共振回路12の共振周波数の調整は、大変手間がかかるため、給電装置1の生産性の低下を招くという不都合があった。この第1実施形態では、上記のように給電装置1を構成することによって、この不都合を解消することもできる。すなわち、製造時において駆動信号S1の駆動周波数と共振回路12の共振周波数とを略一致させるように共振回路12の共振周波数の調整が行われなくとも、使用時において疑似的に駆動信号S1の駆動周波数と共振回路12の共振周波数とが略一致する状態にすることができるので、共振回路12の共振周波数の調整の手間を省略して、給電装置1の生産性の低下を抑制することもできる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、スイッチ素子14aとスイッチ素子14bとをスイッチングすることにより、共振回路12の給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うようにスイッチ制御部15を構成する。これにより、スイッチ素子14aとスイッチ素子14bとの簡素な構成により、共振回路12の大型化および複雑化を抑制しながら、容易に共振回路12の給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相とを略一致させるようにスイッチ制御部15を構成する。ここで、駆動信号S1の駆動周波数と共振回路12の共振周波数とが略一致する理想的な場合には、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、共振回路12の振動(振動波形)が上昇から下降または下降から上昇に転じる。そこで、上記のように構成することにより、理想的な場合に共振回路12の振動(振動波形)が上昇から下降または下降から上昇に転じる時点で、共振周波数が変化した場合の共振回路12の振動(振動波形)を上昇から下降に転じる方向または下降から上昇に転じる方向に容易に変化させることができる。したがって、共振周波数が変化した場合の共振回路12の振動(すなわち、共振コンデンサ電圧Va1またはVa2)を、理想的な場合の共振回路12の振動(すなわち、共振コンデンサ電圧Vb1またはVb2)になるように容易に変化させることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、信号生成部13により生成された参照用信号S2に基づいて、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相とを略一致させるようにスイッチ制御部15を構成する。これにより、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を、信号生成部13により生成された参照用信号S2により容易に判断することができる。その結果、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ制御部15によるスイッチ部14の制御を容易に行うことができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相との位相差が略1/4周期未満になるように共振回路12を構成する。これにより、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相との位相差が小さい分、容易に、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相とを略一致させることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、図4および図5を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、信号生成部13により生成された参照用信号S2に基づく時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えた上記第1実施形態の構成とは異なり、駆動信号S1の位相と共振回路12に発生する交流電圧の位相との位相差φ3に基づく時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0066】
本発明の第2実施形態による非接触給電システム200は、図4に示すように、給電装置101を備えている。給電装置101は、信号生成部113と、スイッチ制御部115と、電圧検出部116と、位相差検出部117とを含んでいる。なお、給電装置101は、本発明の「非接触給電装置」の一例である。
【0067】
第2実施形態では、信号生成部113は、駆動信号S1を生成する発振器113aを有し、参照用信号S2を生成する発振器13bを有していない。発振器113aは、生成した駆動信号S1を、電源部11および位相差検出部117に出力するように構成されている。
【0068】
電圧検出部116は、共振コンデンサ12bにおいて発生する交流電圧を、図5に示す共振コンデンサ電圧Va11の波形として検出するように構成されている。また、電圧検出部116は、検出された波形をスイッチ制御部115および位相差検出部117に出力するように構成されている。なお、共振コンデンサ電圧Va11の位相は、本発明の「共振回路の振動の位相」の一例である。
【0069】
位相差検出部117は、駆動信号S1と電圧検出部116により検出された波形とに基づいて、駆動信号S1の位相と共振コンデンサ電圧Va11の位相との位相差φ3を検出するように構成されている。また、位相差検出部117は、検出された位相差φ3を、スイッチ制御部115に出力するように構成されている。
【0070】
また、第2実施形態では、スイッチ制御部115は、位相差検出部117により検出された位相差φ3に基づいて、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を取得するように構成されている。具体的には、スイッチ制御部115は、電圧検出部116により検出された共振コンデンサ電圧Va11の波形のピーク時点(上昇から下降または下降から上昇に転じる時点)から位相差φ3だけ進んだ複数の時点t6、t7、t8、t9・・・を取得することにより、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を取得するように構成されている。
【0071】
そして、スイッチ制御部115は、取得された駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、スイッチ制御部115は、図5の共振コンデンサ電圧Va12のように、駆動信号S1の位相と共振コンデンサ電圧Va11の位相とを略一致させるように構成されている。なお、第2実施形態では、駆動信号S1に対して位相が遅れた波形(共振コンデンサ電圧Va11)のみを示したが、位相が進んだ波形の場合にも、上記第1実施形態と同様に駆動信号S1の位相と略一致させることも可能である。
【0072】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
第2実施形態では、上記のように、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動(共振コンデンサ電圧Va11)の位相とを略一致させるように、給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部14を制御するスイッチ制御部115を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、共振回路12の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置101における共振回路12の共振周波数の変化に起因する受電装置2への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0075】
また、第2実施形態では、上記のように、スイッチ制御部115は、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相との位相差φ3に基づいて、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相とを略一致させるように構成されている。これにより、上記第1実施形態のように、スイッチ部14の制御タイミングを直接的に知らせるための信号を生成する信号生成部13の発振器13bがない場合にも、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相との位相差φ3に基づいて、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を知ることができる。その結果、スイッチ制御部115によるスイッチ部14の制御を容易に行うことができる。
【0076】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
(第3実施形態)
次に、図6および図7を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、駆動信号S1の位相と共振回路12に発生する交流電圧の位相との位相差φ3に基づく時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えた第2実施形態とは異なり、参照用信号S22と共振回路12に発生する交流電圧の位相との位相差φ4に基づく時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える例について説明する。なお、上記第1および第2実施形態と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0078】
本発明の第3実施形態による非接触給電システム300は、図6に示すように、給電装置201を備えている。給電装置201は、信号生成部213と、スイッチ制御部215と、位相差検出部217とを含んでいる。なお、給電装置201は、本発明の「非接触給電装置」の一例である。
【0079】
第3実施形態では、信号生成部213は、発振器213aおよび213bを有している。発振器213aは、駆動信号S1を生成するとともに、生成した駆動信号S1を電源部11に出力するように構成されている。発振器213bは、駆動信号S1の駆動タイミング(立ちあがりまたは立ち下がりのタイミング)に対応する位相に対して位相が略90度ずれた参照用信号S22を生成するとともに、生成した参照用信号S22を位相差検出部217に出力するように構成されている。
【0080】
位相差検出部217は、参照用信号S22と電圧検出部116により検出された波形(すなわち、共振コンデンサ電圧Va11)とに基づいて、参照用信号S22の位相と共振コンデンサ電圧Va11の位相との位相差φ4を検出するように構成されている。また、位相差検出部217は、検出された位相差φ4を、スイッチ制御部215に出力するように構成されている。
【0081】
また、第3実施形態では、スイッチ制御部215は、位相差検出部217により検出された位相差φ4に基づいて、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を取得するように構成されている。具体的には、スイッチ制御部215は、電圧検出部116により検出された共振コンデンサ電圧Va11の波形のピーク時点(上昇から下降または下降から上昇に転じる時点)から位相差φ4だけ進んだ複数の時点t10、t11、t12、t13・・・を取得することにより、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点を取得するように構成されている。
【0082】
そして、スイッチ制御部215は、取得された駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた時点で、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、スイッチ制御部215は、図7の共振コンデンサ電圧Va12のように、駆動信号S1の位相と共振コンデンサ電圧Va11の位相とを略一致させるように構成されている。なお、第3実施形態においても、駆動信号S1に対して位相が遅れた波形(共振コンデンサ電圧Va11)のみを示したが、位相が進んだ波形の場合にも、上記第1実施形態と同様に駆動信号S1の位相と略一致させることが可能である。
【0083】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
第3実施形態では、上記のように、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動(共振コンデンサ電圧Va11)の位相とを略一致させるように、給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えるスイッチ部14を制御するスイッチ制御部215を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、共振回路12の大型化および複雑化を抑制しながら、給電装置201における共振回路12の共振周波数の変化に起因する受電装置2への電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0086】
また、第3実施形態では、上記のように、信号生成部213により生成された信号の位相と共振回路12の振動の位相との位相差φ4に基づいて、スイッチ部14により給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替える制御を行うことにより、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相とを略一致させるようにスイッチ制御部215を構成する。ここで、一般的に、駆動信号S1の位相と共振回路12の振動の位相との位相差よりも、駆動信号S1の駆動タイミングに対応する位相に対して位相が略90度ずれた信号と共振回路12の振動の位相との位相差φ4の方が取得しやすい。したがって、上記のように構成することにより、位相差φ4を容易に取得して、スイッチ制御部215によりスイッチ部14を制御することができる。
【0087】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0088】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0089】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、磁界共鳴方式により非接触で電力を受給するように非接触給電システム100(200、300)の非接触給電装置1(101、201)に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、磁界共鳴方式以外の共鳴方式により非接触で電力を受給する非接触給電システムの非接触給電装置に適用してもよい。たとえば、電界共鳴方式の非接触給電装置に適用してもよい。
【0090】
また、上記第1〜第3実施形態では、2つのスイッチ素子14aおよび14bにより給電コイル12aに流れる電流の方向を切り替えた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3つ以上のスイッチ素子を用いて給電コイルに流れる電流の方向を切り替えてもよい。
【0091】
また、上記第1〜第3実施形態では、共振回路12の振動の位相を、共振コンデンサ12bに発生する交流電圧(Va1、Va2およびVa11)の位相とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、共振回路の振動の位相を、給電コイルに発生する交流電圧の位相としてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1、101、201 給電装置(非接触給電装置)
2 受電装置
11 電源部
12 共振回路
12a 給電コイル
12b 共振コンデンサ
13、113、213 信号生成部
14 スイッチ部
14a スイッチ素子(第1スイッチ素子)
14b スイッチ素子(第2スイッチ素子)
15、115、215 スイッチ制御部
100、200、300 非接触給電システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7