(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで,特許文献4に開示された「フルート構造」の通気性と手触りを向上させるために,特許文献5に開示された複数の開孔が形成されたシート部材,又は複数の窪みが形成されたシート部材を用いることが考えられる。
【0011】
しかしながら,上述したように,特許文献5の発明では,複数の開孔が使い捨ておむつの長手方向に沿って直線的に並べられている。そうすると,この特許文献5の発明では,開孔の列の間には,長手方向に沿って全く開孔が形成されていない非開孔部位が存在することなる。つまり,特許文献5の発明では,使い捨ておむつの幅方向に見たときに,開孔部位と非開孔部位が交互に存在しているといえる。このように,筒状部(通気路)を形成するためのシート部材において,開孔部位と非開孔部位とが明確に区別されていると,このシート部材に強度のムラ(偏り)が生じてしまう。すなわち,シート部材のうちの開孔部位は,複数の開孔が列をなして形成されているため,比較的強度が弱くなる。他方で,シート部材のうちの非開孔部位は,長手方向に沿って一切開孔が形成されていないため,比較的強度が強くなる。従って,この発明では,使い捨ておむつの幅方向(ウエスト伸縮部材の伸縮方向)に沿って,強度の弱い部分と強度の強い部分とが交互に存在していることとなる。その結果,特許文献5のように開孔を形成すると,ウエスト伸縮部材が収縮したときに,この収縮力がシート全体に均一に伝わりにくくなり,筒状部(通気路)内の空間が効率的に膨らみにくくなるという問題があった。特に,特許文献5に記載の発明では,筒状部の頂点(凸部)に沿った部位にのみ,複数の開孔が形成することとしている。このように,筒状部の頂点にのみ開孔を形成すると,筒状部頂点付近の強度が低下するため,筒状部内の空間が膨らみにくくなっていた。
【0012】
さらに,特許文献5の発明では,筒状部の頂点(凸部)に沿った部位にのみ,複数の開孔を形成することとしている。このため,特許文献5の発明では,筒状部の根本にあるシート部材の接合部近傍には,開孔が一切形成されていない。しかしながら,シート部材の接合部近傍は,使い捨ておむつの着用時に蒸れやすい部分である。このため,特許文献5の構成では,シート部材の接合部近傍に生じる蒸れを解消できないという問題があった。
【0013】
以上のように,使い捨ておむつの「フルート構造」において,複数の開孔又は窪みが形成されたシート部材を用いる場合には,このシート全体の幅方向(ウエスト伸縮部材の伸縮方向)の強度をなるべく均一化することが好ましい。また,シート部材の接合部近傍における通気性を確保することが好ましい。そこで,本発明は,「フルート構造」に採用されるシート部材の強度を均一化し,シート接合部付近の通気性を向上させることのできる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は,従来の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,上記の「フルート構造」の最外層のシート部材(クッション形成シート)に,複数の開孔又は窪みを形成するとともに,この開孔又は窪みの列を,おむつの長手方向に対して所定角度傾斜させることとした。つまり,本発明において,シート部材に形成される複数の開孔又は窪みは,おむつの長手方向に沿った直線上に並ぶものではなく,おむつの長手方向に対して所定角度傾斜した直線上に並ぶものとなる。これにより,複数の開孔又は窪みが,シート部材全体に効率的に分散されるようになるため,おむつの幅方向(ウエスト伸縮部材の伸縮方向)におけるシート部材の強度を均一化させることができる。また,複数の開孔又は窪みが,シート部材の接合部近傍にも形成されるようになるため,この接合部近傍の通気性を確保することができる。なお,開孔の代わりにシートに窪みを設けてもよい。窪みの穴底は非常に薄くなっているため,開孔と同様に,シート部材の通気性向上を期待することができる。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0015】
本発明の第1の側面は,使い捨ておむつに関する。
本発明の使い捨ておむつは,その長手方向(Y方向)に,前身頃1と,後身頃2と,この前身頃1と後身頃2の間に位置する股下部3とに区分される。また,本発明の使い捨ておむつは,前身頃1と後身頃2の両方又はいずれか一方に,クッション部40が形成されている。
クッション部40は,内側シート41と,外側シート42と,一又は複数のウエスト伸縮部材43と,クッション形成シート44とを含んで構成されている。
外側シート42は,内側シート41の肌非対向面側に位置する。
ウエスト伸縮部材43は,使い捨ておむつの幅方向(X方向)に沿って伸長した状態で,内側シート41と外側シート42の間に挟んで固定されている。
クッション形成シート44は,内側シート41と外側シート42の両方又はいずれか一方に重ねられて,これらのシート41,42に対して,幅方向に接合部51と非接合部52が交互に連続するように間欠的に接合されている。
また,クッション形成シート44は,複数の開孔60又は窪みが規則的に形成されたシート部材によって構成されている。
複数の開孔60又は窪みは,行グループ(R)に属するものと,列グループ(C)に属するものとにグループ分けされる。行グループ(R)は,幅方向(X方向)に隣接する開孔60を繋げてできるグループである。また,列グループ(C)は,長手方向(Y方向)に隣接する開孔60又は窪みを繋げてできるグループである。
そして,本発明において,列グループ(C)内の複数の開孔60又は窪みを繋ぐ連結直線(A)は,長手方向に沿って延びる基準直線(F)に対して,所定角度(θ)で傾いている(
図6参照)。
【0016】
上記構成のように,本発明において,クッション形成シート44に形成される開孔60又は窪みのパターンは,開孔60又は窪みの列が,使い捨ておむつの長手方向に沿った仮想的な基準直線(F)に対して所定角度(θ)傾いたパターンとなっている。このため,クッション形成シート44上のどの位置に基準直線(F)を引いた場合であっても,その基準直線(F)上に,少なくとも一つの開孔60又は窪みが位置するようにすることができる。また,上記のパターンによれば,クッション形成シート44の幅方向(X方向)に沿って,複数の開孔60又は窪みが効率的に分散するため,クッション形成シート44全体の強度を均一にすることができる。従って,このようなクッション形成シート44を用いて「フルート構造」を形成することで,通気路内の内部空間が膨らみやすくなり,クッション性を高めることができる。さらに,上記のパターンによれば,シート同士の非接合部52だけでなく,接合部51近傍にも,開孔60又は窪みを形成することができる。これにより,クッション形成シート44全体の通気性が向上する。
【0017】
本発明の使い捨ておむつにおいて,上記の所定角度(θ)は,5度以上45度以下であることが好ましい。
【0018】
開孔60の列の傾き(θ)が5度未満若しくは45度を超えるものであると,複数の開孔60をクッション形成シート44全体に分散させにくくなる。その結果,クッション形成シート44の通気路が膨らみにくくなったり,通気性が悪くなったりするおそれがある。従って,開孔60の列の傾き(θ)は,5度以上45度以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の使い捨ておむつにおいて,仮想的な基準直線(F)を,2つの開孔(61,62)の中心を同時に通るように引いたとする。このときの2つの開孔を,それぞれ,第1の開孔61及び第2の開孔62と定義する。この場合に,第1の開孔61と第2の開孔62の長手方向の間隔(P)は,隣接する列グループ(C)に含まれる開孔60の長手方向の間隔(D)に対して,3倍以上であることが好ましい(
図6参照)。
【0020】
上記構成のように,基準直線(F)上に位置する第1の開孔61と第2の開孔62の長手方向の間隔(P)は,なるべく離れていることが好ましい。この間隔(P)が近いものであると,一つの基準直線(F)上に多数の開孔60が揃うこととなるが,複数の開孔60をシート全体に分散させるためには,一つの基準直線(F)上に,なるべく開孔60が揃わないようにすると良い。そこで,複数の開孔60を分散させるために,上記の間隔(P)は,なるべく離れていることが好ましい。
【0021】
本発明において,クッション形成シート44の接合部51の間における幅方向の長さ(L
1)は,当該クッション形成シート44が接合された内側シート41又は外側シート42の接合部51の間における幅方向の長さ(L
2)よりも長いことが好ましい(
図8参照)。
【0022】
上記構成のように,本発明では,間欠的な接合部51の間における長さは,クッション形成シート44の方が,これを間欠的に接合するシート部材41,42よりも長くなっていることが好ましい(
図8参照)。これにより,ウエスト伸縮部材43が収縮しておらず,内側シート41と外側シート42が張った状態にあっても,クッション形成シート44は,多少弛んだ状態となる。このため,例えば着用者の腹周りが太く,ウエスト伸縮部材43が十分に収縮していない状態であっても,使い捨ておむつのウエスト周りにおいては,クッション形成シート44が皺を形成するため,柔軟性とクッション性を発揮することができる。また,ウエスト伸縮部材43が収縮し,これを挟んでいる内側シート41と外側シート42に皺が形成された状態になると,クッション形成シート44には,さらに大きな皺が形成される。このように,クッション形成シート44が大きい皺を形成するようになるため,おむつのウエスト周りの柔軟性とクッション性をさらに高めることができる。
【0023】
本発明の第2の側面は,クッションシートに関する。
クッションシートは,複数のシート部材の間に一又は複数の弾性伸縮部材が固定されたシート状部材である。弾性伸縮部材が複数である場合,各弾性伸縮部材は平行に配置される。
クッションシートは,内側シート41と,外側シート42と,一又は複数の弾性伸縮部材43と,クッション形成シート44と,を含む。
一又は複数の弾性伸縮部材43は,一定方向(X方向)に沿って伸長した状態で,内側シート41と外側シート42の間に挟んで固定されている。
クッション形成シート44は,内側シート41と外側シート42の両方又はいずれか一方に重ねられて,これらに対して,一定方向(X方向)に接合部51と非接合部52が交互に連続するように間欠的に接合されている。
また,クッション形成シート44は,複数の開孔60又は窪みが規則的に形成されたシート部材によって構成されている。
複数の開孔60又は窪みは,行グループ(R)と列グループ(C)とにグループ分けされる。
行グループ(R)は,一定方向(X方向)に隣接する開孔60又は窪みを繋げてできるグループである。
列グループ(C)は,一定方向と直交する直交方向(Y方向)に隣接する開孔60又は窪みを繋げてできるグループである。
ここで,列グループ(C)内の複数の開孔60又は窪みを繋ぐ連結直線(A)は,直交方向(Y方向)に沿って延びる基準直線(F)に対して,所定角度(θ)で傾いている
【0024】
上記構成のように,クッション性の高いクッションシートを,使い捨ておむつとは別体として製造することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば,いわゆる「フルート構造」に採用される開孔シートの強度を均一化し,また,シート接合部付近の通気性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0028】
なお,本明細書において,「前身頃」とは,着用者におむつを装着した際に,着用者の腹側(身体前方)を覆う部分を意味する。また,「股下部」とは,着用者におむつを装着した際に,着用者の股下を覆う部分を意味する。また,「後身頃」とは,着用者におむつを装着した際に,着用者の背側(身体後方)を覆う部分を意味する。
また,本願明細書において,「長手方向」とは,基本的に,使い捨ておむつの前身頃と後身頃を結ぶ方向(Y方向)を意味する。また,「幅方向」とは,基本的に,使い捨ておむつの長手方向に直交する方向(X方向)を意味する。
また,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する
【0029】
(1.使い捨ておむつの全体構成)
本発明は,例えば,公知のパンツ型の使い捨ておむつ,及びテープ型の使い捨ておむつに広く適用可能である。パンツ型の使い捨ておむつとは,前身頃と後身頃の両側部が予め接合されたタイプの使い捨ておむつである(例えば特許文献1)。また,テープ型の使い捨ておむつとは,前身頃又は後身頃の両側部に接着テープが取り付けられ,着用時に接着テープを利用して前身頃と後身頃を接着させるタイプの使い捨ておむつである(例えば特許文献3)。また,パンツ型の使い捨ておむつには,前身頃から後身頃にかけて外装体が一体になった一体タイプのもの(例えば特許文献1)や,前身頃の外装体と後身頃の外装体が分離した分離タイプのもの(例えば特許文献2)がある。以下では,これらの種々のタイプの使い捨ておむつのうち,パンツ型使い捨ておむつの分離タイプを例に挙げて,本発明の内容を具体的に説明する。
【0030】
図1は,使い捨ておむつ100を前身頃側から見た例を示す斜視図である。また,
図2は,使い捨ておむつの例を示す展開図であって,使い捨ておむつを肌対向面側から見た状態を示している。
図2の展開図に示されるように,使い捨ておむつ100は,その長手方向に,装着された際に着用者の腹部に接する前身頃1と,着用者の背部に接する後身頃2と,着用者の股下にあてがわれる股下部3とに区分される。本実施形態において,使い捨ておむつ100は,前身頃外装体10によって前身頃1が構成され,後身頃外装体20によって後身頃2が構成される。そして,前身頃外装体10と後身頃外装体20の間の股下部3には,吸収性本体30が架橋されている。つまり,吸収性本体30の一端は,前身頃外装体10に固定され,吸収性本体30の他端は,後身頃外装体20に固定されている。
【0031】
図2に示された展開状態から,前身頃外装体10と後身頃外装体20の幅方向両端部を接合することにより,
図1に示される状態に組み上がる。
図1に示されるように,前身頃外装体10の上端縁と後身頃外装体20の上端縁により,ウエスト開口部4が形成される。また,前身頃外装体10と後身頃外装体20の両端部同士が接合されることにより,装着時に着用者の脚部周りに位置するレッグ開口部5が形成される。このため,着用者は,ウエスト開口部4から両脚部を入れ,それぞれの脚部をレッグ開口部5から出すことで,使い捨ておむつ100を装着できる。
【0032】
また,
図2に示されるように,本実施形態において,前身頃外装体10と後身頃外装体20には,それぞれ,クッション部40が形成されている。クッション部40は,ウエスト開口部4を形成する端縁に沿って,幅方向に延びるように形成されたものである。クッション部40は,複数のウエスト伸縮部材43を含む。複数のウエスト伸縮部材43は,ウエスト開口部4の開口縁に相当する前身頃外装体10の端部と後身頃外装体20の端部に沿って,使い捨ておむつの幅方向に延びている。複数のウエスト伸縮部材43は,伸長状態で固定されており,この複数のウエスト伸縮部材43が収縮することにより,ウエスト開口部4近傍に,ウエストギャザーが形成される。
【0033】
本実施形態において,クッション部40は,前身頃外装体10と後身頃外装体20の両方に設けられている。ただし,本発明において,クッション部40は,前身頃外装体10と後身頃外装体20の少なくともいずれか一方に設けられていればよい
【0034】
(2.使い捨ておむつの各部構成)
次に,図面を用いて,使い捨ておむつ100の各部の構成の一例について説明する。
【0035】
(2−1.クッション部)
図3は,
図2に示したY−Y線における断面図を示している。なお,
図3の断面図では,使い捨ておむつを構成する各種のシート部材に概念的な厚みをもたせて描画しているが,通常,使い捨ておむつを構成するシート部材は,非常に薄いものである。
【0036】
図3に示されるように,前身頃外装体10と後身頃外装体20(以下,併せて「外装体10,20」という)は,クッション部40を含んで構成されている。クッション部40は,使い捨ておむつのウエスト開口部4の周縁に,ウエストギャザーを形成する手段であり,複数のシート部材と伸縮部材とから構成される。
【0037】
図3の断面図に示されるように,クッション部40は,肌対向面側に位置する内側シート41と,肌非対向面側に位置する外側シート42と,これらの内側シート41と外側シート42の間に固定された複数のウエスト伸縮部材43と,を含む。
図3に示されるように,内側シート41と外側シート42は,共に,使い捨ておむつの長手方向の端縁を形成している。つまり,内側シート41と外側シート42は,使い捨ておむつのウエスト開口部4に沿った端縁を形成するものである。また,
図2の平面図に示されているように,複数のウエスト伸縮部材43は,使い捨ておむつの幅方向に沿って平行に延びている。また,複数のウエスト伸縮部材43は,使い捨ておむつの長手方向に所定間隔をあけて配置されている。なお,
図3に示した例において,内側シート41と外側シート42はそれぞれ分離されているが,これらのシート41,42は,繋がって一体的に形成されていてもよい。つまり,一枚のシート部材をウエスト端縁において折り返して,肌対向面側の部分を内側シート41とし,肌非対向面側の部分を外側シート42としてもよい。
【0038】
複数のウエスト伸縮部材43は,幅方向に沿って伸長した状態で,内側シート41と外側シート42の間に固定されている。複数のウエスト伸縮材43が固定される際の伸張率は,例えば,150〜400%,200〜380%,又は250〜360%であることが好ましい。なお,「伸張率」とは,非伸張状態(自由状態)の伸縮部材の長さ(原寸)を100%としたときに,伸張状態とされた伸縮部材の長さを示した値である。このように,内側シート41と外側シート42の間に伸長状態にあるウエスト伸縮部材43が形成されているため,ウエスト伸縮部材43が収縮したときに,内側シート41と外側シート42に皺(ギャザー)が形成される。
【0039】
ウエスト伸縮部材43を,内側シート41と外側シート42の間に挟み込んで固定するときには,例えば,ウエスト伸縮部材43自体に接着剤を塗布し,接着剤が塗布されたウエスト伸縮部材43を,内側シート41と外側シート42の間に挟み込めばよい。また,例えば,内側シート41と外側シート42の両方又はいずれか一方に接着剤を塗布した後,これらのシート41の間にウエスト伸縮部材43を挟み込んで固定することもできる。
【0040】
さらに,本実施形態において,クッション部40は,内側シート41の肌対向面側に配置されたクッション形成シート44を含む。クッション形成シート44は,使い捨ておむつの装着者の肌に直接触れるシート部材であり,内側シート41の肌対向面側に,皺(ギャザー)形成する機能を持つ。なお,クッション形成シート44は,さらに,外側シート42の肌非対向面側に配置されていてもよい。また,内側シート41に重ねられたクッション形成シート44と,外側シート42に重ねられたクッション形成シート44(図示省略)は,一体的に繋がっていてもよい。
【0041】
また,
図1及び
図2に示されるように,クッション形成シート44は,複数の開孔60が形成されたシート部材によって構成されている。また,図示は省略するが,クッション形成シート44は,開孔60の代わりに,窪みが形成されていてもよい。ここで,開孔とは,シート部材が完全に貫通するように形成された貫通孔を意味する。他方,窪みとは,貫通孔ではないものの,他の部分と比較してシート部材の厚みが薄くなった部分を意味する。クッション形成シート44には開孔60を形成した方が通気性は高くなるが,クッション形成シート44に窪みを形成することによっても通気性の向上が期待される。以下では,複数の開孔60が形成されたクッション形成シート44の例について詳しく説明する。ただし,本願明細書において,クッション形成シート44に形成される開孔60の説明を,窪みと読み換えることもできる。また,クッション形成シート44に,開孔60と窪みの両方を形成することも可能である。
【0042】
ここで,
図4を参照して,クッション部40に含まれるクッション形成シート44が,皺を形成する構造について説明する。
図4は,クッション部40を構成する各種の要素を,概念的に示した模式図である。
図4(a)に示されるように,クッション部40は,内側シート41と,外側シート42と,これらのシート41,42の間に固定された複数のウエスト伸縮部材43と,内側シート41に重ねられたクッション形成シート44と,を含んで構成されている。さらに,クッション形成シート44は,多数の開孔60が形成されている。なお,クッション形成シート44は,外側シート42に重ねられていてもよいし,内側シート41と外側シート42の両方に重ねられていてもよい。
【0043】
図4(a)に示されるように,クッション形成シート44と内側シート41の接合部51は,おむつの幅方向(X方向)に沿って間欠的に形成されている。すなわち,クッション形成シート44と内側シート41は,おむつの幅方向に沿って,接合部51と非接合部52が交互に連続するようにして接合されている。接合部51においては,ホットメルト接着剤等によってクッション形成シート44と内側シート41を接合することとしてもよいし,ヒートシールや超音波シールによってクッション形成シート44と内側シート41を融着してもよい。
図4(a)に示されるように,接合部51は,基本的に,おむつの長手方向(Y方向)に沿って直線的に形成されている。接合部51の形状は,直線状であってもよいし,点状(ドット状)であってもよい。また,
図4に示されるように,接合部51は,おむつの長手方向(Y方向)に間欠的に形成されたものであってもよい。その他,クッション形成シート44と内側シート41の接合態様については,特許文献4(特開2011−254996号公報)等を参考として,公知の接合態様を適宜採用することができる。
【0044】
図4(b)は,図面の下側(肌非当接面側)から順に,外側シート42,ウエスト伸縮部材43,内側シート41,及びクッション形成シート44の順番で重ね合わせた状態の断面図を示している。
図4(b)は,ウエスト伸縮部材43が収縮していない状態を示すものである。
図4(b)に示されるように,ウエスト伸縮部材43は,内側シート41と外側シート42の間に,伸長状態で挟み込んで固定されている。また,クッション形成シート44は,幅方向に間欠的に形成された接合部51において,内側シート41の肌対向面側に接合されている。
【0045】
次に,
図4(c)は,ウエスト伸縮部材43が少し収縮した様子を示し,
図4(d)は,ウエスト伸縮部材43が大きく収縮した様子を示している。
図4(c)(d)に示されるように,ウエスト伸縮部材43の収縮に伴って,クッション形成シート44に皺が形成される。つまり,ウエスト伸縮部材43が収縮すると,非接合部52において,クッション形成シート44が,内側シート41から離れて,クッション形成シート44と内側シート41との間に,通気路(空間)70が形成される。このような構造を,本願明細書では「フルート構造」と称している。このようにして,間欠的に形成された接合部51の間において,通気路70を形成することにより,ウエスト伸縮部材43を挟んでいる内側シート41の硬さが,着用者の直接肌に伝わりにくくなる。また,「フルート構造」を形成することで,ウエストギャザー全体に通気性,柔軟性,及びクッション性を付与することができる。
【0046】
図5は,クッション部40の構造を模式的に示した斜視図である。
図5に示されるように,ウエスト伸縮部材43が収縮すると,クッション形成シート44は,隣り合う接合部51の間の非接合部52において,内側シート41から離れる。このため,クッション形成シート44と内側シート41の間に,通気路(空間)70が形成される。また,クッション形成シート44には,複数の開孔60が形成されている。この開孔60は,クッション形成シート44を貫通しており,通気路70の内部に繋がっている。このため,開孔60を通じて,通気路70の内部に空気が導入されたり,通気路70の内部の空気が外部に排出されるようになる。従って,クッション形成シート44に複数の開孔60を形成することで,クッション形成シート44の通気性が向上する。また,開孔60を形成することで,クッション形成シート44の手触りをより柔らかくすることができる。
【0047】
また,
図5に示されるように,クッション形成シート44は,間欠的接合領域44aと,全面的接合領域44bに,上下に区分されている。間欠的接合領域44aは,使い捨ておむつのウエスト端縁寄りの位置(
図5の上方)に設けられ,全面的接合領域44bは,使い捨ておむつの股下部3寄りの位置(
図5の下方)に設けられている。
図5に示されるように,間欠的接合領域44aでは,上述したように,幅方向に間欠的に設けられた複数の接合部51によって,クッション形成シート44が内側シート41に対して接合されている。このため,間欠的接合領域44aにおいては,ウエスト伸縮部材43が収縮したときに,上述した「フルート構造」が形成される。他方,全面的接合領域44bにおいて,クッション形成シート44は,内側シート41に対して,接着剤53などによって,全面的に接合されている。つまり,ウエスト伸縮部材43が収縮した場合でも,全面的接合領域44bにおいては,クッション形成シート44は内側シート41から離れない。このため,全面的接合領域44bにおいては,クッション形成シート44と内側シート41との間に通気路(空間)70が形成されないようになっている。
【0048】
このように,クッション形成シート44の下方に,全面的接合領域44bを設けることで,クッション形成シート44が内側シート41に対してしっかりと固定されて,剥がれにくくなる。つまり,クッション形成シート44の下端側は,おむつの着用者の肌と頻繁に擦れ合うこととなるため,比較的剥がれやすい部位である。このため,クッション形成シート44の下端側にまで,間欠的な接合部51を形成すると,クッション形成シート44が剥がれて,着用者に対して不快感を与えたり,尿漏れが発生するおそれがある。そこで,このような事態を防止するために,クッション形成シート44の下方の領域には,全面的に接着剤53などを塗布して,内側シート41にしっかりと固定することが好ましい。ただし,クッション形成シート44の下方に全面的接合領域44bを設けると,「フルート構造」の通気路70の下方が塞がれることとなるため,通気路70内に空気が出入りしにくくなるおそれがある。そこで,このように通気路70の下方が塞がれている場合であっても,通気路70内に空気を出入りさせて通気性を保つために,本発明では,クッション形成シート44に複数の開孔60を形成することとしている。クッション形成シート44に複数の開孔60を形成することで,クッション形成シート44の下方に全面的接合領域44bを設けた場合であっても,クッション形成シート44の通気性を維持することができる。
【0049】
その他,ウエスト伸縮部材43としては,糸状弾性ゴム又は帯状弾性ゴムを適用することが好ましい。このようなゴム材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,又はポリエステル等の素材を用いることができる。
【0050】
また,本実施形態では,
図3に示されるように,内側シート41が,おむつの股下部3の方向へと延在している。そして,内側シート41の一部は,吸収性本体30の長手方向の端部の上(肌対向面)に重畳している。このように,内側シート41の一部を吸収性本体30に重畳させることで,吸収性本体30が,外装体10,20にしっかりと固定されて,外れにくくなる。
【0051】
また,外装体10,20は,インナーシート45と,タミー伸縮部材46と,をさらに含んで構成されていることとしてもよい。すなわち,
図3に示されるように,本実施形態において,外側シート42は,股下部3の方向へと延在し,その一部が,吸収性本体30の肌非対向面側に位置している。ここで,外側シート42の延在部分の肌対向面側には,インナーシート45が配置されている。そして,外側シート42の延在部分とインナーシート45との間には,一又は複数本のタミー伸縮部材46が,挟んで固定されている。タミー伸縮部材46は,ウエスト伸縮部材43と同様に,おむつの幅方向に沿った伸長状態で,外側シート42の延在部分とインナーシート45との間に固定される。
【0052】
(2−1−1.クッション形成シートの開孔パターン)
続いて,
図6を参照して,クッション形成シート44の開孔60の好ましいパターンについて説明する。
図6(a)は,開孔60のパターンの一例を示し,
図6(b)は,
図6(a)に示した点線の枠内の拡大図を示している。
図6に示した例において,開孔60の形状は,正円となっている。ただし,開孔60の形状は,楕円形であってもよいし,三角形,四角形,五角形,六角形,その他の多角形であってもよい。
【0053】
図6(b)に示されるように,複数の開孔60は,規則的なパターンで,クッション形成シート44に形成されている。まず,複数の開孔60は,行グループ(R)と列グループ(C)とにグループ分けすることができる。行グループ(R)とは,おむつの幅方向(X方向)に隣接する開孔60を繋げてできるグループである。つまり,行グループ(R)は,幅方向(X方向)において,最も近い開孔60同士を左右に繋げたときにできる開孔60のグループである。他方,列グループ(C)とは,おむつの長手方向(Y方向)に隣接する開孔60を繋げてできるグループである。つまり,列グループ(C)は,長手方向(Y方向)において,最も近い開孔60同士を上下に繋げたときにできる開孔60のグループである。行グループ(R)と列グループ(C)は,それぞれ,複数存在する。また,行グループ(R)と列グループ(C)は,それぞれ,直線状である。また,一つの開孔60は,複数の行グループ(R)のうちの一つと,複数の列グループ(C)のうちの一つに属することとなる。
【0054】
図6(b)に示した例において,複数の行グループ(R)は,すべて,使い捨ておむつの幅方向(X方向)に沿って平行に延びている。つまり,一つの行グループ(R)に属する複数の開孔60を仮想的な連結直線(B)で繋ぐと,この連結直線(B)は,幅方向(X方向)に沿って平行に延びることとなる。このように,開孔60の行(R)は,すべて,おむつの幅方向(X方向)と平行であることが好ましい。
【0055】
他方,本発明において,複数の列グループ(C)は,すべて,使い捨ておむつの長手方向(Y方向)に対して,所定角度(θ)で傾斜している。具体的に説明すると,一つの列グループ(C)に属する複数の開孔60を繋ぐ仮想的な連結直線(A)を引く。また,使い捨ておむつの長手方向(Y方向)と平行に,仮想的な基準直線(F)を引く。このとき,連結直線(A)と基準直線(F)のなす角(鋭角)が,開孔60の列グループ(C)の傾斜角度(θ)となる。このように,開孔60の列(C)を所定角度(θ)で傾斜させる点が,本発明の特徴の一つである。
【0056】
列グループ(C)の傾斜角度(θ)は,例えば,5〜45度であることが好ましい。また,傾斜角度(θ),45度未満であること,すなわち45度でないことが好ましい。例えば,傾斜角度(θ)は,10〜43度,15〜40度,又は20〜35度であることが特に好ましい。
【0057】
このように,開孔60の列(C)を傾けることで,使い捨ておむつの長手方向(Y方向)に,開孔60が一つも存在していない領域をなくすことができる。つまり,
図6に示されるように,使い捨ておむつの長手方向(Y方向)と平行に仮想的な基準直線(F)を引くと,この基準直線(F)上には,少なくとも一つの開孔60の一部(中心以外でもよい)が位置している。これにより,このような開孔パターンが形成されたクッション形成シート44は,おむつの幅方向(X方向)の強度がほぼ一様になる。その結果,おむつの幅方向(X方向)に沿ってウエスト伸縮部材43が収縮したときに,その収縮力がクッション形成シート44全体に均一に伝わり,クッション形成シート44により形成される空間が効率的に膨らむようになる。また,
図6に示したパターンのように,ある基準直線(F)上に,少なくとも一つの開孔60の一部が位置しているようにすることで,クッション形成シート44の通気性を良くすることができる。
【0058】
開孔60の好ましいパターンについて,さらに詳しく説明する。
図6に示されるように,おむつの幅方向(Y方向)に隣接する開孔60の間の間隔(W)は,すべて等しい。開孔60の幅方向の間隔(W)は,例えば,接合部51の幅方向の間隔(S)(
図4参照)よりも,小さいことが好ましい(W<S)。例えば,開孔60の間隔(W)は,接合部51の間隔(S)を100%とした場合に,10〜95%,又は20〜90であればよく,特に50〜85%,又は60〜80%であることが好ましい。具体的な数値を示すと,接合部51の幅方向の間隔(S)(
図4参照)は,5〜20mm,6〜18mm,又は7〜16mmであることが好ましい。また,開孔60の幅方向の間隔(W)は,3〜16mm,又は4〜14mmであることが好ましい。開孔60の間隔(W)をこのような範囲に設定することで,クッション形成シート44によって通気路70が形成されたときに,この通気路70上に少なくとも一つ以上の開孔60が形成されるようになる。
【0059】
また,
図6に示されるように,ある行グループ(R)に属する開孔60と,それに隣接する行グループ(R)に属する開孔60との幅方向の間隔が,符号W
1及びW
2で示されている。間隔(W
1)と間隔(W
2)の和は,上記間隔(W)に等しい。このとき,間隔(W
1)と間隔(W
2)は,それぞれ,異なる値であることが好ましい(W
1≠W
2)。
図6では,短い方の間隔を,符号W
1で示し,長い方の間隔を,符号W
2で示している(W
1<W
2)。短い方の間隔(W
1)は,同じ列グループ(C)内で隣接する開孔60同士の幅方向の間隔である。長い方向の間隔(W
2)は,隣接する異なる列グループ(C)に属する開孔60の幅方向の間隔である。ここで,間隔(W
1)と間隔(W
2)が等しい値(W
1=W
2)である場合,使い捨ておむつの長手方向(Y方向)に,開孔60が一つも存在していない領域が形成される可能性がある。このような状態は避けるべきである。そこで,本発明では,あえて,間隔(W
1)と間隔(W
2)を,それぞれ,異なる値(W
1≠W
2,つまり,W
1<W
2)とすることが好ましい。例えば,短い方の間隔(W
1)は,長い方向の間隔(W
2)に対して,10〜95%,又は20%〜90%とすることが好ましく,特に50%〜85%,又は60%〜80%とすることが好ましい。なお,このような条件(W
1<W
2)を満たす場合,最も近い3つの開孔60を線で繋いでなる三角形(T)は,正三角形及び二等辺三角形とはならない。つまり,本発明では,上記三角形(T)は,正三角形及び二等辺三角形以外であることが好ましい。上記三角形(T)が正三角形又は二等辺三角形であると,長手方向(Y方向)に,開孔60が一つも存在していない領域が形成される可能性があるからである。
【0060】
図6において,隣接する列グループ(C)に属する開孔60の長手方向(Y方向)の間隔が,符号Dで示されている。開孔60の長手方向の間隔(D)は,上記した条件(θ,W,W
1,W
2などの条件)を満たす範囲において,任意に設定することができる。
図6に示したパターンにおいて,開孔60の長手方向(Y方向)の間隔(D)は,すべて等しくなっている。また,例えば,開孔60の長手方向の間隔(D)は,開孔60の幅方向の間隔(W)に対して,70〜130%,又は80〜120%であることが好ましい。開孔60の長手方向の間隔(D)を,開孔60の幅方向の間隔(W)とほぼ等しくすることで,
図6(a)に示されるように,開孔60のパターンが,バランスのとれた綺麗なパターンとなり,見た目が良くなる。
【0061】
また,
図6では,おむつの長手方向(Y方向)と平行に1本の基準直線(F)を引いた場合に,その基準直線(F)上に中心が位置する2つの開孔を,それぞれ符号61と符号62で示している。言い換えると,
図6に示したパターンでは,1本の基準直線(F)の上に,第1の開孔61の中心と第2の開孔62の中心とが位置する。
図6において,第1の開孔61と第2の開孔62を,便宜的に,黒色で示している。また,
図6では,第1の開孔61と第2の開孔62との長手方向(Y方向)の間隔を,符号Pで示している。第1の開孔61と第2の開孔62の間隔(P)は,上記した開孔60の長手方向の間隔(D)よりも長くなる(D<P)。例えば,間隔(P)は,間隔(D)の3倍以上であることが好ましく,4倍以上,又は5倍以上であることが特に好ましい。
図6に示した例では,間隔(P)は,間隔(D)の5倍に設定されている。
【0062】
このように,ある基準直線(F)上に位置する第1の開孔61と第2の開孔62の長手方向の間隔(P)は,なるべく離れていることが好ましい。この間隔(P)が近いものであると,一つの基準直線(F)上に多数の開孔60が揃う可能性がある。一つの基準直線(F)上に多数(例えば3つ以上)の開孔60が揃うと,複数の開孔60がシート全体に分散しにくくなる。そうすると,クッション形成シート44の幅方向の強度にムラ(偏り)が生じたり,通気性が良い部分と悪い部分が明確に区別されるようになる。そこで,クッション形成シート44の強度や通気性を一様にするためには,なるべく,複数の開孔60をシート全体に分散させることが好ましい,そのためには,一つの基準直線(F)上に,なるべく開孔60が揃わないようにすると良い。従って,複数の開孔60を分散させるために,間隔(P)は,なるべく離れていることが好ましい。なお,ある開孔60の中心を通る1本の基準直線(F)上に,他の開孔60の中心が一つも存在しないという形態も,本発明の好ましい形態である。
【0063】
また,
図6において,開孔60の直径が,符号φで示されている。例えば,開孔60の直径(φ)は,開孔60の幅方向の間隔(W)に対して,5%〜50%,7%〜40,又は10〜30%であることが好ましい。具体的には,開孔60の直径(φ)は,0.5mm以上であることが好ましく,0.5〜3.0mm,0.8mm〜2.0mm,又は1.0mm〜1.5mmであることが特に好ましい。
【0064】
上記した各種条件に基づいて,開孔60のパターンを定めることで,
図6に示すような好ましいパターンを形成することができる。
図6に示した開孔60のパターンは,クッション形成シート44の幅方向の強度にムラ(偏り)が生じることを防止できる。このため,このようなパターンが形成されたクッション形成シート44は,ウエスト伸縮部材43が収縮した際に,空間が効果的に膨らむため,クッション性の良い通気路70を形成することができる。また,このようなパターンが形成されたクッション形成シート44は,全体的に,通気性が優れたものとなる。特に,このクッション形成シート44は,接合部51近傍においても,好ましい通気性を発揮する。
【0065】
その他,内側シート41,外側シート42,クッション形成シート44は,それぞれ,手触りが良く通気性を有する不織布などの素材で形成されたものであることが好ましい。例えば,不織布としては,例えばスパンボンド法や,エアスルー法,エアレイド法によって製造されたものを用いればよい。また,クッション形成シート44には,公知のパンチング方式の開口装置を用いて,上記したパターンの開孔を形成するようにすればよい。
【0066】
(2−1−2.クッション形成シートの長さ変更)
続いて,
図7及び
図8を参照して,クッション形成シート44のさらに好ましい形態について説明する。
図7は,
図4と同様に,クッション部40を構成する各種の要素を概念的に示した模式図である。
図7(a)に示されるように,クッション部40は,内側シート41と,外側シート42と,複数のウエスト伸縮部材43と,クッション形成シート44とを含んで構成されている。なお,
図7(a)においては,図面が複雑になることを回避するために,クッション形成シート44に形成された複数の開孔60を省略している。当然のことながら,クッション形成シート44には,上述したパターンに従って,複数の開孔60を形成することができる。ただし,
図7及び
図8に示した発明は,クッション形成シート44に開孔60を形成しない発明としても利用することができる。
【0067】
図7(b)は,図面の下側(肌非当接面側)から順に,外側シート42,ウエスト伸縮部材43,内側シート41,及びクッション形成シート44の順番で重ね合わせた状態の断面図を示している。
図7(b)は,ウエスト伸縮部材43が全く収縮していない状態を示すものである。
図7(b)に示されるように,ウエスト伸縮部材43は,内側シート41と外側シート42の間に,伸長状態で挟み込んで固定されている。また,クッション形成シート44は,幅方向に間欠的に形成された接合部51において,内側シート41の肌対向面側に接合されている。ここで,
図7(b)に示されるように,内側シート41と外側シート42は,ウエスト伸縮部材43の伸長状態に合わせて,幅方向に弛みのない張った状態となっている。これに対し,クッション形成シート44は,ウエスト伸縮部材43が伸長している状態であっても,幅方向に少し弛んだ状態となっている。このように,本発明は,クッション形成シート44が弛みのある状態で,内側シート41に間欠的に接合される点を,特徴の一つとしている。
【0068】
図7(b)に示されるように,本発明では,ウエスト伸縮部材43が収縮しておらず,内側シート41と外側シート42が幅方向に弛みのない張った状態となっている場合であっても,クッション形成シート44が幅方向に少し弛んだ状態となっている。このため,ウエスト伸縮部材43が完全に伸張していても,クッション形成シート44と内側シート41の間には空間70が生じて,クッション形成シート44が少し浮いた状態となっている。
【0069】
図7(b)に示した本発明のクッション部40の構造は,
図4(b)に示した構造と比較すると,その違いが明らかである。
図4(b)に示した構造では,ウエスト伸縮部材43が伸張している状態にあるときに,内側シート41,外側シート42,及びクッション形成シート44のそれぞれが,幅方向に弛みのない張った状態となっている。このため,ウエスト伸縮部材43が伸長している状態にあっては,クッション形成シート44には,皺が形成されていない。このため,例えば,腹周りの太い着用者が,使い捨ておむつを履くような場合には,ウエスト伸縮部材43が収縮しないため,クッション形成シート44に皺が形成されないこととなる。これに対し,
図7(b)に示されたクッション部40の構造では,ウエスト伸縮部材43が伸張している状態であっても,クッション形成シート44が,内側シート41から浮いた状態となって,皺を形成している。このため,例えば腹周りの太い着用者が使い捨ておむつを履いてウエスト伸縮部材43の収縮が小さい状態であっても,クッション形成シート44によって皺が形成されるようになる。よって,ウエスト伸縮部材43が収縮していない状態であっても,おむつのウエスト周りの柔軟性とクッション性を十分に発揮することができる。
【0070】
次に,
図7(c)は,ウエスト伸縮部材43が多少収縮した様子を示し,
図7(d)は,ウエスト伸縮部材43が十分に収縮した様子を示している。
図7(c)及び
図7(d)に示されるように,ウエスト伸縮部材43の収縮に伴って,クッション形成シート44によって形成される皺が大きくなることがわかる。このような現象は,
図7(c)(d)と,
図4(c)(d)を比較すれば明らかである。すなわち,
図7に示されるように,ウエスト伸縮部材43が収縮した状態において,
図7のクッション形成シート44は,
図4のクッション形成シートと比較し,明らかに大きな皺を形成することができる。このため,
図7のクッション形成シート44を採用すれば,おむつのウエスト周りに形成されるウエストギャザーは,その柔軟性がさらに高まり,また,通気性もより良好なものとなる。
【0071】
ここで,
図8は,クッション形成シート44と,これが接合された内側シート41の長さを比較するための説明図である。すなわち,上記したように,ウエスト伸縮部材43の伸長状態において,内側シート41には弛みを生じさせず,クッション形成シート44にのみ弛みが生じさせるためには,接合部51の間において,クッション形成シート44が内側シート41よりも長い必要がある。
図8に示されるように,おむつの幅方向に隣接する2つの接合部51の間において,クッション形成シート44と内側シート41をそれぞれ切り出す。そして,切り出したクッション形成シート44と内側シート41を弛みのない状態に伸ばして並べる。このとき,2つの接合部51の間におけるクッション形成シート44の長さを,“L
1”とする。また,2つの接合部51の間における内側シート41の長さを,“L
2”とする。
図8に示されるように,長さ(L
1)と長さ(L
2)を比較すると,長さ(L
1)の方がより長くなっていることがわかる。このように,おむつの幅方向に隣接する2つの接合部51の間において,クッション形成シート44と内側シート41を切り出して,長さを比較する。このとき,クッション形成シート44の長さの方を長くすることで,ウエスト伸縮部材43が収縮していない状態であっても,クッション形成シート44によって皺を形成することができるようになる。
【0072】
ここで,内側シート41の長さ(L
2)を100%としたときに,クッション形成シート44の長さ(L
1)は,103〜300%であることが好ましい。また,クッション形成シート44の長さ(L
1)は,内側シート41の長さ(L
2)に対して,110〜3290%又は120〜280%であってもよいし,150〜250%であってもよい。このように,長さ(L
1)を,少なくとも長さ(L
2)の103%以上とすることで,ウエスト伸縮部材43が十分に収縮していない状態であっても,クッション形成シート44に皺を発現させることができる。他方,長さ(L
1)が,長さ(L
2)の300%を超えるものであると,クッション形成シート44が大きく撓んでしまい,却っておむつの履き心地が悪くなる。このため,本発明において,長さ(L
1)は,長さ(L
2)の103%以上300%以下であることが特に好ましい。
【0073】
(2−2.クッション部の実施形態)
続いて,
図9〜
図11を参照して,本発明の使い捨ておむつ100におけるクッション部40の他の実施形態について説明する。以下の実施形態については,基本的に,上述した
図3に示した実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0074】
図9(a)に示した実施形態において,クッション部40は,内側シート41に間欠的に接合されるクッション形成シート44Aと,外側シート42に間欠的に接合されるクッション形成シート44Bを含んでいる。すなわち,内側のクッション形成シート44Aは,内側シート41の肌対向面に接合されている。また,外側のクッション形成シート44Bは,外側シート42の肌非対向面に接合されている。このように,本発明において,クッション形成シート44A,44Bは,内側と外側の両方に配置されたものであってもよい。
【0075】
図9(b)に示した実施形態において,内側のクッション形成シート44Aと,外側のクッション形成シート44Bは,一枚のシート部材によって構成されている。すなわち,一枚のシート部材を,使い捨ておむつの長手方向の端縁において折り返し,折り返し線よりも内側に位置する部分を,内側のクッション形成シート44Aとし,折り返し線よりも外側に位置する部分を,外側のクッション形成シート44Bとしている。このように,本発明において,内側のクッション形成シート44Aと外側のクッション形成シート44Bを,一枚のシート部材によって構成することも可能である。
【0076】
図10(a)に示した実施形態において,内側シート41と外側シート42は,一枚のシート部材によって構成されている。すなわち,一枚のシート部材を,使い捨ておむつの長手方向の端縁において折り返し,その間に複数のウエスト伸縮部材43を挟み込んで固定する。そして,折り返し線よりも内側に位置する部分を,内側シート41とし,折り返し線よりも外側に位置する部分を,外側シート42としている。このように,本発明において,内側シート41と外側シート42を,一枚のシート部材によって構成することも可能である。
【0077】
図10(b)に示した実施形態では,内側シート41と外側シート42を一枚のシート部材によって構成するとともに,別々のシート部材で形成された内側のクッション形成シート44Aと外側のクッション形成シート44Bを設けている。すなわち,内側のクッション形成シート44Aは,内側シート41の肌対向面に接合され,外側のクッション形成シート44Bは,外側シート42の肌非対向面に接合されている。このように,本発明では,内側シート41と外側シート42を,一枚のシート部材で構成し,且つ,内側のクッション形成シート44Aと外側のクッション形成シート44Bの両方を設けることもできる。
【0078】
図11(a)に示した実施形態では,内側シート41と外側シート42を一枚のシート部材によって構成するとともに,内側のクッション形成シート44Aと外側のクッション形成シート44Bを一枚のシート部材によって構成している。すなわち,一枚のシート部材を,使い捨ておむつの長手方向の端縁において折り返し,折り返し線よりも内側に位置する部分を,内側のクッション形成シート44Aとし,折り返し線よりも外側に位置する部分を,外側のクッション形成シート44Bとしている。このように,本発明では,内側シート41と外側シート42を一枚のシート部材によって構成し,且つ,内側のクッション形成シート44Aと外側のクッション形成シート44Bを一枚のシート部材によって構成することもできる。
【0079】
図11(b)に示した実施形態において,外側シート42の肌非対向面側に,最外層シート47を貼り合わせている。この最外層シート47は,上述した外側のクッション形成シート44Bとは異なり,外側シート42に対して間欠的に接合されるものではなく,例えばホットメルト接着剤などによって全面的に張り合わせるものである。最外層シート47は,外側シート42を補強し,且つ,その手触りを良くするためのシート部材である。このように,外側シート42の肌非対向面には,最外層シート47を貼り合わせることもできる。
【0080】
(2−3.吸収性本体)
図2や
図3に示されるように,吸収性本体30は,前身頃外装体10と後身頃外装体20の間に架橋された状態で保持され,使い捨ておむつ100の着用時おいて,着用者の股下部に位置し,着用者が排泄した尿などの液体を吸収保持する。吸収性本体30は,使い捨ておむつの股下部3を中心に,前身頃1及び後身頃2にかけて配置される。
図2や
図3に示されるように,吸収性本体30は,吸収体31と,トップシート32と,バックシート33と,カバーシート34と,一対の立体ギャザー35を備えている。
【0081】
吸収体31は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体31は,液透過性のトップシート32と,液不透過性のバックシート33の間に配置される。吸収体31は,トップシート32を透過した液体を吸収する機能を有し,吸収性材料により構成される。吸収体31を構成する吸収性材料には,公知の材料を採用することができる。吸収性材料としては,例えば,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしてもよい。吸収体31は,コアラップシート36よって,被包することが好ましい。コアラップシート36としては,ティシュペーパー,吸収紙,親水化処理を行った不織布等を適宜用いることができる。
【0082】
トップシート32は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体31へ透過させるための部材である。このため,トップシート32は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート32は,吸収体31の肌当接面側を被覆するように配置される。トップシート32を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,トップシート32としては,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0083】
バックシート33は,トップシート32を透過し吸収体31に吸収された液体が,おむつの外側へ漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート33は,液不透過性材料によって構成される。バックシート33は,吸収体31の底面からの液漏れを防止するため,吸収体31を肌非当接面側から被覆する。バックシート33を構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0084】
カバーシート34は,バックシート33を補強し,かつ,その手触りを良くするための部材である。カバーシート34は,バックシート33の肌非当接面側に貼り合わせられる。カバーシート34を構成する材料としては,織布や不織布が用いられる。特に,カバーシート34を構成する材料として,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステルのような熱可塑性樹脂からなる不織布又は湿式不織布を用いることが好ましい。
【0085】
一対の立体ギャザー35は,吸収体31の両側縁部沿って起立し,着用者が排泄した尿の横漏れを防止するための部材である。立体ギャザー35のそれぞれには,その先端部に,立体ギャザー伸縮材が配置されており,伸縮材が収縮した際に,着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。このため,一対の立体ギャザー35は,尿の防漏壁となり,トップシート32を透過しなかった尿や,吸収体31により吸収しきれなった尿が,使い捨ておむつの脚部周り開口部などから漏出する横漏れを防止する。立体ギャザー35は,従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。立体ギャザー35は,例えば,撥水性シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材を挟み込んで固定することにより,形成することができる。撥水性シートとしては,例えば,カードエンボスやスパンボンド等の製法により得られた不織布シートを使用することができ,特に防水性が高いSMSやSMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0086】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【0087】
例えば,本発明では,
図4又は
図7に示したようなクッションシートを,使い捨ておむつとは別体で製造し,使い捨ておむつのウエスト周りに,貼り合わせるようにして,クッション性を付与することもできる。
【0088】
すなわち,
図4(a)に示されるように,クッションシートは,複数のシート部材の間に一又は複数の弾性伸縮部材が平行に固定されたシート状部材である。クッションシートは,内側シート41と,外側シート42と,一又は複数の弾性伸縮部材43と,クッション形成シート44と,を含む。一又は複数の弾性伸縮部材43は,一定方向(X方向)に沿って伸長した状態で,内側シート41と外側シート42の間に挟んで固定されている。クッション形成シート44は,内側シート41と外側シート42の両方又はいずれか一方に重ねられて,これらに対して,一定方向(X方向)に接合部51と非接合部52が交互に連続するように間欠的に接合されている。また,クッション形成シート44は,複数の開孔60又は窪みが規則的に形成されたシート部材によって構成されている。複数の開孔60又は窪みは,行グループ(R)と列グループ(C)とにグループ分けされる。行グループ(R)は,一定方向(X方向)に隣接する開孔60又は窪みを繋げてできるグループである。列グループ(C)は,一定方向と直交する直交方向(Y方向)に隣接する開孔60又は窪みを繋げてできるグループである。ここで,列グループ(C)内の複数の開孔60又は窪みを繋ぐ連結直線(A)は,直交方向(Y方向)に沿って延びる基準直線(F)に対して,所定角度(θ)で傾いている。所定角度(θ)は,5度〜45度であることが好ましい。
【0089】
また,
図7及び
図8に示されるように,クッション形成シート44の接合部51の間における一定方向の長さ(L
1)は、当該クッション形成シート44が接合された内側シート41又は外側シート42の接合部51の間における一定方向の長さ(L
2)よりも長くなっていることが好ましい。この場合,クッション形成シート44には,上記した複数の開孔60又は窪みが形成されていることが好ましい。ただし,
図7及び
図8に示した形態において,クッション形成シート44には,開孔60又は窪みが形成されていなくてもよい。
【0090】
上記のように,使い捨ておむつとは別に,クッションシートを製造することで,既成の使い捨ておむつにも簡単にクッション性を付与することができるようになる。このため,クッションシートのみを製造することも,本発明の好ましい形態である。