【実施例】
【0022】
(第1実施例)
図1に示す半導体装置100は、半導体基板2と、半導体層16と、第1トレンチゲート部20と、第2トレンチゲート部30と、トレンチ絶縁部14と、第1主電極E1と、第2主電極E2を備えている。半導体基板2の材料はシリコンである。なお、半導体基板2の材料として、シリコン酸化膜を用いることもできる。
【0023】
半導体層16は、半導体基板2の表面に設けられている。半導体層16の材料はシリコンである。半導体層16の裏面側(半導体基板2と接する側)は、n
+型の低抵抗領域4が設けられている。低抵抗領域4は、半導体層16の裏面側の全面に設けられている。低抵抗領域4には、n型不純物としてリン(P)が導入されている。低抵抗領域4の不純物濃度は1×10
17〜1×10
23cm
−3に調整されている。低抵抗領域4は、特許請求の範囲に記載の第4半導体領域の一例である。低抵抗領域4の表面に、n型のドリフト領域6が設けられている。ドリフト領域6には、n型不純物としてリンが導入されている。ドリフト領域6の不純物濃度は1×10
12〜1×10
15cm
−3に調整されている。ドリフト領域6は、特許請求の範囲に記載の第1半導体領域の一例である。
【0024】
ドリフト領域6の表面に、p型のボディ領域8が設けられている。低抵抗領域4は、ドリフト領域6によってボディ領域8から分離されているということもできる。ボディ領域8には、p型不純物としてホウ素が導入されている。ボディ領域8の不純物濃度は1×10
16〜1×10
19cm
−3に調整されている。ボディ領域8のうち、トレンチ絶縁部14に対して第1トレンチゲート部20が設けられている側のボディ領域(第1トレンチゲート部20に接しているボディ領域)8aは、特許請求の範囲に記載の第2半導体領域の一例である。また、トレンチ絶縁部14に対して第2トレンチゲート部30が設けられている側のボディ領域(第2トレンチゲート部30に接しているボディ領域)8bは、特許請求の範囲に記載の第5半導体領域の一例である。以下、ボディ領域8aを第1ボディ領域と称し、ボディ領域8bを第2ボディ領域と称する。
【0025】
ボディ領域8の表面の一部に、n
+型の高濃度領域10が設けられている。高濃度領域10には、n型不純物としてリンが導入されている。高濃度領域10の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20cm
−3に調整されている。高濃度領域10のうち、トレンチ絶縁部14に対して第1トレンチゲート部20が設けられている側の高濃度領域(第1トレンチゲート部20に接している高濃度領域)10aは、特許請求の範囲に記載の第3半導体領域の一例である。また、トレンチ絶縁部14に対して第2トレンチゲート部30が設けられている側の高濃度領域(第2トレンチゲート部30に接している高濃度領域)10bは、特許請求の範囲に記載の第6半導体領域の一例である。以下、高濃度領域10aを第1高濃度領域と称し、高濃度領域10bを第2高濃度領域と称する。
【0026】
ボディ領域8の表面の他の一部に、p
+型のコンタクト領域12が設けられている。コンタクト領域12の不純物濃度は1×10
17〜1×10
20cm
−3に調整されている。以下、コンタクト領域12のうち、トレンチ絶縁部14に対して第1トレンチゲート部20が設けられている側のコンタクト領域12aを第1コンタクト領域と称し、トレンチ絶縁部14に対して第2トレンチゲート部30が設けられている側のコンタクト領域12bを第2コンタクト領域と称する。なお、ドリフト領域6は、n型の半導体層16内に低抵抗領域4,ボディ領域8,高濃度領域10及びコンタクト領域12を形成した残部である。
【0027】
第1トレンチゲート部20が、半導体層16の表面から深部に向けて伸びている。第1トレンチゲート部20は、ドリフト領域6まで達しており、第1高濃度領域10a及び第1ボディ領域8aに接している。具体的には、第1トレンチゲート部20は、第1高濃度領域10a及び第1ボディ領域8aを貫通し、ドリフト領域6まで達している。第1トレンチゲート部20は、第1ゲート電極22と第1ゲート絶縁膜24を備えている。第1ゲート電極22は、第1ゲート絶縁膜24を介して、第1高濃度領域10aの一部,第1ボディ領域8a,ドリフト領域6の一部に対向している。
【0028】
第2トレンチゲート部30が、半導体層16の表面から深部に向けて伸びている。第2トレンチゲート部30は、ドリフト領域6まで達しており、第2高濃度領域10b及び第2ボディ領域8bに接している。第2トレンチゲート部30は、第2高濃度領域10b及び第2ボディ領域8bを貫通し、ドリフト領域6まで達している。第2トレンチゲート部30は、第2ゲート電極32と第2ゲート絶縁膜34を備えている。第2ゲート電極32は、第2ゲート絶縁膜34を介して、第2高濃度領域10bの一部,第2ボディ領域8b,ドリフト領域6の一部に対向している。第1トレンチゲート部20と第2トレンチゲート部30は、半導体層16の深部に向けて同じ深さまで伸びている。
【0029】
第1ゲート電極22及び第2ゲート電極32は、各々異なるゲート配線(図示省略)に接続されている。そのため、第1ゲート電極22及び第2ゲート電極32は、別々に制御することができ、両者に異なる電圧を印加することができる。例えば、第1ゲート電極22と第2ゲート電極32の双方に閾値電圧を超える電圧を印加し、第1ゲート絶縁膜24とボディ領域8の界面と、第2ゲート絶縁膜34とボディ領域8の界面の双方にチャネルを形成することができる。あるいは、第1ゲート電極22と第2ゲート電極32の一方にのみ閾値電圧を超える電圧を印加し、第1ゲート絶縁膜24とボディ領域8の界面、第2ゲート絶縁膜34とボディ領域8の界面の一方にのみチャネルを形成することもできる。
【0030】
トレンチ絶縁部14が、第1トレンチゲート部20と第2トレンチゲート部30の間で、半導体層16の表面から深部に向けて伸びている。トレンチ絶縁部14は、ドリフト領域6まで達している。換言すると、第2トレンチゲート部30は、トレンチ絶縁部14に対して第1トレンチゲート部20の反対側で。半導体層16の表面から深部に向けて伸びてドリフト領域6に達している。トレンチ絶縁部14は、第1トレンチゲート部20及び第2トレンチゲート部30より半導体層16の深部まで伸びている。半導体装置100では、トレンチ絶縁部14は、半導体層16の表面からコンタクト領域12,ボディ領域8及びドリフト領域を貫通し、低抵抗領域4まで達している。トレンチ絶縁部14は、トレンチ14bとトレンチ14b内に充填されている絶縁体14aを備えている。絶縁体14aの材料はシリコン酸化膜である。なお、絶縁体14aの材料として、シリコン窒化膜を用いることもできる。
【0031】
上記したように、低抵抗領域4は、半導体層16の裏面側の全面に設けられている。そのため、半導体装置100を平面視すると、低抵抗領域4は、第1トレンチゲート部20,第2トレンチゲート部30及びトレンチ絶縁部14と重複している。なお、
図1から明らかなように、低抵抗領域4は、第1トレンチゲート部20及び第2トレンチゲート部30と非接触であり、トレンチ絶縁部14の底面を覆っている。
【0032】
第1主電極E1と第2主電極E2は、トレンチ絶縁部14を間において半導体層16の表面に配置されている。第1主電極E1は、第1高濃度領域10a及び第1コンタクト領域12aに電気的に接続されている。また、第2主電極E2は、第2高濃度領域10b及び第2コンタクト領域12bに電気的に接続されている。第1コンタクト領域12aと第2コンタクト領域12bは、トレンチ絶縁部14によって分離されている。第1主電極E1は、第1コンタクト領域12aを介して第1ボディ領域8aに電気的に接続されている。そのため、第1ボディ領域8aの電位は、第1主電極E1の電位に固定される。第2主電極E2は、第2コンタクト領域12bを介して第2ボディ領域8bに電気的に接続されている。そのため、第2ボディ領域8bの電位は、第2主電極E2の電位に固定される。なお、第1トレンチゲート部20が設けられている部分の半導体層16の構造と、第2トレンチゲート部30が設けられている部分の半導体層16の構造は、トレンチ絶縁部14に対して対称である。なお、本明細書で開示する技術は、第1トレンチゲート部20が設けられている部分の半導体層16の構造と、第2トレンチゲート部30が設けられている部分の半導体層16の構造が、トレンチ絶縁部14に対して非対称である半導体装置にも適用することができる。
【0033】
図2を参照し、半導体装置100の利点を説明する。
図2は、第1ゲート電極22と第2ゲート電極32の双方にオン電圧(閾値電圧を超える電圧)を印加し、第1主電極E1を接地電位に固定し、第2主電極E2を電源の高電位側に接続した状態を示している。
図2に示すように、第1ゲート電極22と第2ゲート電極32にオン電圧を印加すると、第1ゲート絶縁膜24と第1ボディ領域8aの界面にチャネル40aが形成され、第2ゲート絶縁膜34と第2ボディ領域8bの界面にチャネル40bが形成される。第1高濃度領域10aからに注入された電子は、チャネル40a,ドリフト領域6,低抵抗領域4,ドリフト領域6及びチャネル40bを通過して、第2高濃度領域10bに移動する。
図2の矢印に示すように、電子は、ドリフト領域6を移動するときに様々な経路を通過する。例えば、電子は、チャネル40aから低抵抗領域4までの最短距離、チャネル40aからチャネル40bまでの最短距離等の経路に分散して移動する。すなわち、ドリフト領域6において、電流が特定の経路を局所的に流れることを防止することができる。その結果、半導体装置100を駆動しているときに、半導体層16の発熱を抑制することができる。
【0034】
半導体装置100の他の利点を説明する。上記したように、半導体装置100を平面視したときに、低抵抗領域4は、半導体層16の全面に設けられている。そのため、半導体装置100を平面視すると、低抵抗領域4は、第1トレンチゲート部20と重複する位置に設けられている。そのため、電子がチャネル40aから低抵抗領域4に移動するときに、ドリフト領域6を通過する距離を最短にすることができる。同様に、低抵抗領域4が第2トレンチゲート部30と重複する位置に設けられているので、電子が低抵抗領域4からチャネル40bに移動するときに、ドリフト領域6を通過する距離を最短にすることができる。また、トレンチ絶縁部14の底面が低抵抗領域4に覆われているので、電子がトレンチ絶縁部14の周囲を移動するときに、電子の移動抵抗を小さくすることができる。
【0035】
上記したように、半導体装置100は、第1ゲート電極22及び第2ゲート電極32を備えている。そのため、第1主電極E1を低電位に固定し、第2主電極E2を高電位に固定すると、第2主電極E2から第1主電極E1に向けて電流を流すことができる。反対に、第2主電極E2を低電位に固定し、第1主電極E1を高電位に固定すると、第1主電極E1から第2主電極E2に向けて電流を流すことができる。半導体装置100は、双方向MOSFETとして利用することができる。
【0036】
また、半導体装置100は、2種のトレンチゲート部(第1トレンチゲート部20,第2トレンチゲート部30)を備えており、各々のゲート電極(第1ゲート電極22,第2ゲート電極32)を別々に制御することができる。そのため、例えば、第1ゲート電極22に閾値電圧を超える電圧を印加し、第2ゲート電極32に電圧を印加せず(少なくとも閾値電圧を超える電圧を印加しない)、第1主電極E1を低電位に固定し、第2主電極E2を高電位に固定すると、第1主電極E1から第2主電極E2に向けて電流が流れるIGBTを実現することができる。なお、電圧を印加するゲート電極,第1主電極E1及び第2主電極E2を固定する電位を調整することにより、第2主電極E2から第1主電極E1に向けて電流が流れるIGBTを実現することもできる。すなわち、半導体装置100は、双方向IGBTとして利用することもできる。
【0037】
上記したように、トレンチ絶縁部14を介して、第1トレンチゲート部20が設けられている部分の半導体層16の構造は、第2トレンチゲート部30が設けられている部分の半導体層16の構造と対称である。そのため、第1主電極E1から第2主電極E2に向けて電流が流れる状態のときと、第2主電極E2から第1主電極E1に向けて電流が流れる状態のときで、半導体装置100の特性を同一にすることができる。
【0038】
なお、上記実施例では、低抵抗領域4が半導体層16の裏面の全面に設けられている形態について説明したが、本明細書で開示する技術は、低抵抗領域の形状が低抵抗領域4と異なる形態をも取り得る。以下、
図3〜
図5を参照し、第2実施例〜第4実施例の半導体装置(半導体装置200から400)について説明する。なお、以下の説明では、半導体装置200から400について、半導体装置100と同一の構造については、半導体装置100と同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0039】
(第2実施例)
図3を参照し、半導体装置200の特徴を説明する。半導体装置200では、低抵抗領域204が、半導体層16の裏面に設けられていない。低抵抗領域204は、ドリフト領域206の内部に設けられている。そのため、低抵抗領域204は、半導体基板2に直接接触しない。なお、半導体装置200を平面視すると、低抵抗領域204は、半導体層16の全面に設けられている。
【0040】
(第3実施例)
図4を参照し、半導体装置300の特徴を説明する。半導体装置300では、低抵抗領域304が、ドリフト領域306内に分散して設けられている。低抵抗領域304は、半導体層16の裏面の一部に設けられている。半導体装置300を平面視すると、低抵抗領域304は、トレンチゲート部20,30と重複する位置に設けられている。そのため、ドリフト領域306に注入された電子は、低抵抗領域304に向かう経路、トレンチ絶縁部14に向かう経路等、ドリフト領域306内で分散して移動する。
【0041】
(第4実施例)
図5を参照し、半導体装置400の特徴を説明する。半導体装置400では、半導体装置300と同様に、低抵抗領域404が、ドリフト領域406内に分散して設けられている。半導体装置400では、平面視したときに、トレンチゲート部20,30と重複する位置に加え、トレンチ絶縁部14と重複する位置にも低抵抗領域404が設けられている。なお、トレンチ絶縁部14の底面は、低抵抗領域404に覆われている。半導体装置400も、ドリフト領域406内に注入された電子が、ドリフト領域406内で分散して移動する。また、トレンチ絶縁部14の底部において、電子の移動抵抗を小さくすることができる。
【0042】
(第5実施例)
図6を参照し、半導体装置500について説明する。半導体装置500は、半導体装置100の変形例であり、第2主電極E2が設けられている部分の半導体層16の内部構造が半導体装置100と異なる。なお、以下の説明では、半導体装置500について、半導体装置100と同一の構造については、半導体装置100と同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。半導体装置500は、第1トレンチゲート部20のみ有しており、第2トレンチゲート部を有していない(
図1を比較参照)。そのため、半導体装置500では、第2高濃度領域10bとドリフト領域6との間にチャネルが形成されない。半導体装置500は、双方向半導体装置として機能せず、第1主電極E1がエミッタ電極に相当し、第2主電極E2がコレクタ電極に相当するIGBTとして機能する。
【0043】
(第6実施例)
図7を参照し、半導体装置600について説明する。なお、半導体装置600は、半導体装置100,500の変形例であり、第2主電極E2が設けられている部分の半導体層16の内部構造が半導体装置100,500と異なる。なお、以下の説明では、半導体装置600について、半導体装置100,500と同一の構造については、半導体装置100,500と同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
図7に示す半導体装置600は、半導体装置500と同様に、第1トレンチゲート部20のみを有しており、第2トレンチゲート部を有していない。また、第1ボディ領域8aのみ有しており、第2ボディ領域を有していない。半導体装置600では、第2高濃度領域10bが直接ドリフト領域606に接している。そのため、第1高濃度領域10aからドリフト領域606に注入されたキャリア(電子)は、トレンチ絶縁部14の下方を通過する際に低抵抗領域4を移動し、再度ドリフト領域606を移動して第2高濃度領域10bに達することができる。半導体装置600は、双方向半導体装置として機能せず、第1主電極E1がソース電極に相当し、第2主電極E2がドレイン電極に相当するMOSFETとして機能する。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。