特許第6269625号(P6269625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269625
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20180122BHJP
   F24F 11/79 20180101ALI20180122BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   F24F1/00 401C
   F24F11/02 102H
   F24F13/14
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-178769(P2015-178769)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-53563(P2017-53563A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】樽木 裕介
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−065877(JP,A)
【文献】 特開2014−006044(JP,A)
【文献】 特開2009−019831(JP,A)
【文献】 特開2005−164066(JP,A)
【文献】 特開平08−152187(JP,A)
【文献】 特開平10−009657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/20
F24F 11/02
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の側壁に設置される空気調和機であって、
調和空気を吹出口に案内する上スクロール(141)と下スクロール(142)を持つ案内流路(113)が形成された本体ケーシング(110)と、
前記上スクロール又は前記上スクロールの延長面近傍に設定されている回動中心が上流側端部にあり、前記吹出口から吹き出される前記調和空気の風向を調整する第1風向調整部材(150)と、
前記第1風向調整部材から前記側壁に向かう方向に離れて位置し、前記下スクロール又は前記下スクロールの延長面近傍に設定されている回動中心が上流側端部にあり、前記風向を調整する第2風向調整部材(160)と、
前記第1風向調整部材と前記第2風向調整部材の間に位置し、前記上スクロール又は前記上スクロールの延長面近傍に設定されている回動中心が上流側端部にあり、前記風向を調整する第3風向調整部材(170)と、
前記風向を鉛直下向きの成分を含む第1方向に調整する場合に、前記第2風向調整部材および前記第3風向調整部材を利用すると共に、前記案内流路および前記案内流路に続く吹出流路(114)から外れた待避位置に前記第1風向調整部材を移動させる制御部(180)と、
を備える空気調和機(100)。
【請求項2】
前記制御部は、前記風向を、前記鉛直下向きの成分を含み、かつ、前記第1方向とは異なる第2方向に調整する場合に、前記第2風向調整部材および前記第3風向調整部材に加えて、前記第1風向調整部材を利用し、
前記第3風向調整部材は、前記第1風向調整部材と共に前記調和空気を導くガイド面を形成する、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、暖房運転時に、前記第2方向として、前記側壁に向かう方向に前記風向を調整する、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記第2方向に調整された前記調和空気は、前記第1方向に調整された前記調和空気よりも前記側壁に寄っている、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第3風向調整部材は、前記案内流路において、前記第1風向調整部材よりも前記調和空気の流れの上流側に配置されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記第3風向調整部材の短手方向の幅は、前記第1風向調整部材の短手方向の幅よりも狭い、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記第1風向調整部材は、前記第2風向調整部材に対向し得る側の第1ガイド面(152)及びテーパ部(153)を有し、
前記第1ガイド面及び前記テーパ部は、前記第1風向調整部材が水平姿勢をとる場合または前記第1風向調整部材の先端が水平よりも鉛直方向上側に位置する場合に、前記吹出口から吹き出される前記調和空気を鉛直上向きの成分を含む方向へ導く、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1風向調整部材、前記第2風向調整部材、および前記第3風向調整部材のそれぞれの、水平面に対する傾斜角度を制御することによって、前記第1風向調整部材、前記第2風向調整部材、および前記第3風向調整部材のそれぞれの姿勢を制御する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
吹出口の吹出角度を前方上方乃至後方下方に変更する風向可変部を備える空気調和機が知られている(特許文献1(特開2005−164066号公報)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空気調和機が調和空気の風向を調整する場合に、風向を調整する部材が調和空気の流れを妨げる抵抗として作用することがある。そうすると、吹出口から吹き出される調和空気の風量は低減してしまう。
【0004】
本発明の課題は、調和空気の風量の低減を抑制する空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空気調和機は、室内の側壁に設置される。空気調和機は、本体ケーシングと、第1風向調整部材と、第2風向調整部材と、第3風向調整部材と、制御部とを備える。本体ケーシングには、調和空気を吹出口に案内する上スクロールと下スクロールを持つ案内流路が形成されている。第1風向調整部材、第2風向調整部材、および第3風向調整部材のそれぞれは、吹出口から吹き出される調和空気の風向を調整する。第2風向調整部材は、第1風向調整部材から側壁に向かう方向に離れて位置する。第3風向調整部材は、第1風向調整部材と第2風向調整部材の間に位置する。第1風向調整部材は、下スクロール又は下スクロールの延長面近傍に設定されている回転中心が上流側端部にある。第2風向調整部材は、下スクロール又は下スクロールの延長面近傍に設定されている回転中心が上流側端部にある。上スクロール又は上スクロールの延長面近傍に設定されている回転中心が上流側端部にある。制御部は、風向を第1方向に調整する場合に、第2風向調整部材および第3風向調整部材を利用すると共に、第1風向調整部材を待避位置に移動させる。第1方向は、鉛直下向きの成分を含む方向である。待避位置は、案内流路および案内流路に続く吹出流路から外れた位置である。
【0006】
本発明の第1観点に係る空気調和機では、制御部は、風向を第1方向に調整する場合に、第2風向調整部材および第3風向調整部材を利用する。つまり、制御部は、第1風向調整部材と第2風向調整部材の間に位置することによって、本来であれば抵抗として作用し得る第3風向調整部材を、第2風向調整部材と共に、風向の調整に積極的に利用している。それと同時に、第3風向調整部材を風向の調整に利用する場合に、逆に抵抗として作用し得る第1風向調整部材を待避位置に移動させる。以上により、調和空気の風量の低減を抑制することができる。
【0007】
本発明の第2観点に係る空気調和機においては、制御部は、風向を第2方向に調整する場合に、第2風向調整部材および第3風向調整部材に加えて、第1風向調整部材を利用する。第2方向は、鉛直下向きの成分を含み、かつ、第1方向とは異なる方向である。第3風向調整部材は、第1風向調整部材と共に調和空気を導くガイド面を形成する。
【0008】
本発明の第2観点に係る空気調和機では、第2風向調整部材および第3風向調整部材に加えて、第1風向調整部材を利用することにより、第2風向調整部材および第3風向調整部材のみを利用した場合とは異なる風向を実現することができる。多様な風向を実現することができるので、利用者の要求に沿った風向を提供することが期待できる。
【0009】
本発明の第3観点に係る空気調和機においては、制御部は、暖房運転時に、第2方向として、側壁に向かう方向に風向を調整する。
【0010】
本発明の第3観点に係る空気調和機では、制御部が、暖房運転時に、側壁に向かう方向に風向を調整するので、調和空気である暖かな空気を壁に沿わせて床面に到達させることが期待できる。暖かな空気が床面に到達することによって、空気調和機が設置された部屋を均一に暖めることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る空気調和機においては、第2方向に調整された調和空気は、第1方向に調整された調和空気よりも側壁に寄っている。すなわち、第2方向は、第1方向よりも側壁に寄っている。
【0012】
本発明の第4観点に係る空気調和機では、制御部は、風向を第1方向に調整するか、または第2方向に調整するかによって、第1風向調整部材、第2風向調整部材、および第3風向調整部材のいずれを利用するかを異ならせる。すなわち、第1風向調整部材、第2風向調整部材、および第3風向調整部材を風向に応じて使い分けることができる。これにより、風向に適した制御を行うことができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る空気調和機においては、第3風向調整部材は、案内流路において、第1風向調整部材よりも調和空気の流れの上流側に配置されている。
【0014】
本発明の第5観点に係る空気調和機では、第3風向調整部材が、案内流路において、第1風向調整部材よりも調和空気の流れの上流側に配置されているので、調和空気の風向がより上流側で調整される。これにより、調和空気の風向が第2方向に調整される場合に、調和空気は第2風向調整部材に沿い易くなる。
【0015】
本発明の第6観点に係る空気調和機においては、第3風向調整部材の短手方向の幅は、第1風向調整部材の短手方向の幅よりも狭い。
【0016】
本発明の第6観点に係る空気調和機では、第3風向調整部材の短手方向の幅が、第1風向調整部材の短手方向の幅よりも狭いので、第3風向調整部材は、本体ケーシング内の限られた空間に収容され易い。
【0017】
本発明の第7観点に係る空気調和機においては、第1風向調整部材は、第2風向調整部材に対向し得る側の第1ガイド面及びテーパ部を有する。第1ガイド面及びテーパ部は、第1風向調整部材が水平姿勢をとる場合または第1風向調整部材の先端が水平よりも鉛直方向上側に位置する場合に、吹出口から吹き出される調和空気を鉛直上向きの成分を含む方向へ導く。
【0018】
本発明の第7観点に係る空気調和機では、鉛直上向きの成分を含む方向へ風向が調整される場合に、第1風向調整部材のテーパ部によって、当該方向へ風向をより容易に導くことができる。一方、制御部は、鉛直下向きの成分を含む第1方向に風向を調整する場合に、第1風向調整部材を案内流路および吹出流路から外れた待避位置に移動させるので、第1風向調整部材による影響を低減することができる。すなわち、鉛直上向きの成分を含む方向へ流れる調和空気の風量を低減することができる。
【0019】
本発明の第8観点に係る空気調和機においては、制御部は、第1風向調整部材、第2風向調整部材、および第3風向調整部材のそれぞれの、水平面に対する傾斜角度を制御することによって、第1風向調整部材、第2風向調整部材、および第3風向調整部材のそれぞれの姿勢を制御する。
【0020】
本発明の第8観点に係る空気調和機では、制御部が、第1風向調整部材、第2風向調整部材、および第3風向調整部材のそれぞれの姿勢を制御することにより、調和空気の風向を調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る空気調和機では、調和空気の風量の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の外観斜視図である。
図2】後方下側に風向を調整している状態の空気調和機の断面図である。
図3】前方下側に風向を調整している状態の空気調和機の断面図である。
図4】前方下側に風向を調整している状態の空気調和機の断面図である。
図5】運転を停止している状態の空気調和機の断面図である。
図6】空気調和機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を以下に示す。なお、以下の実施形態は、具体例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【0024】
<第1実施形態>
(1)空気調和機の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和機100の外観斜視図である。図2図3図4、および図5は、空気調和機100の断面図である。本明細書では、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、および「右」の6つの方向は、図1に示されるように定義される。
【0025】
空気調和機100は、室内の側壁に設置される。詳しくは後述するが、空気調和機100は、第1方向である前方下側または第2方向である後方下側に調和空気の風向を調整することができる。図1および図2は、後方下側に風向を調整している状態の空気調和機100を示す。図3および図4は、前方下側に風向を調整している状態の空気調和機100を示す。図5は、運転を停止している状態の空気調和機100を示す。
【0026】
空気調和機100は、主として、本体ケーシング110、室内ファン120、室内熱交換器130、フレーム140、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170を備える。
【0027】
(1−1)本体ケーシング
本体ケーシング110は、室内ファン120、室内熱交換器130、およびフレーム140等を収納する。本体ケーシング110の上部には、吸込口が形成されている。本体ケーシング110の下部の中央付近には、調和空気を吹き出す吹出口111が形成されている。本体ケーシング110の下部の前方付近には、収容部112が形成されている。収容部112は、本体ケーシング110の内側に窪んだ領域である。窪みの深さは、第1風向調整部材150の厚みに合うように設定されている。本体ケーシング110の内部には、調和空気を吹出口111に案内する案内流路113が形成されている。
【0028】
(1−2)室内ファン
室内ファン120は、フレーム140に取り付けられている。室内ファン120は、本体ケーシング110の、上下方向における略中央部分に位置している。室内ファン120は、クロスフローファンである。室内ファン120は、ファンモータに接続されている。ファンモータの駆動によって室内ファン120が回転すると、室内の空気は、上述の吸込口から本体ケーシング110の内部に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、室内熱交換器130を通過した後、案内流路113を案内されて、最終的に吹出口111から吹き出される。
【0029】
(1−3)室内熱交換器
室内熱交換器130は、フレーム140に取り付けられている。室内熱交換器130は、室内ファン120の一部を覆うように位置している。より詳細には、室内熱交換器130は、室内ファン120の上部付近、すなわち、室内ファン120の前方下側付近から室内ファン120の後方上側付近にかけて、位置している。室内熱交換器130は、室内の空気と熱交換することによって、冷房運転時に冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時に冷媒の放熱器として機能する。
【0030】
(1−4)フレーム
フレーム140は、室内ファン120および室内熱交換器130を取り付けるための部材である。フレーム140は、上スクロール141と下スクロール142を含む。上スクロール141および下スクロール142は、案内流路113を形成している。
【0031】
(1−5)第1風向調整部材
第1風向調整部材150は、本体ケーシング110の下部に回動自在に取り付けられている。第1風向調整部材150は、吹出口111付近に位置している。第1風向調整部材150は、吹出口111から吹き出される調和空気の風向を調整する。
【0032】
第1風向調整部材150は、第1駆動部151(図6参照)に接続されている。第1駆動部151は、例えば、ステッピングモータである。第1駆動部151が第1風向調整部材150を回動させることによって、第1風向調整部材150は、水平面に対する傾斜角度が互いに異なる複数の姿勢をとることができる。
【0033】
第1風向調整部材150は、調和空気をガイドする第1ガイド面152を有する。第1ガイド面152は、図2に示す第1風向調整部材150の姿勢において、第1風向調整部材150のうち第2風向調整部材160に対向する側の面である。第1ガイド面152には、テーパ部153が設けられている。テーパ部153は、第1ガイド面152の先端に位置している。第1風向調整部材150が水平姿勢をとる場合、または第1風向調整部材150の先端が水平よりも上側に位置する場合に、テーパ部153は、吹出口111から吹き出される調和空気を鉛直上向きの成分を含む方向へ導く。すなわち、調和空気は、第1風向調整部材150のテーパ部153に沿って、水平または水平よりも上向きの方向に送り出される。
【0034】
第1ガイド面152には、テーパ部153とは反対側の端部付近に段差部154が設けられている。段差部154は、第1ガイド面152のうち第1風向調整部材150の厚み方向に窪んだ部分である。
【0035】
(1−6)第2風向調整部材
第2風向調整部材160は、本体ケーシング110の下部に回動自在に取り付けられている。第2風向調整部材160は、吹出口111付近に位置している。第2風向調整部材160は、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170のうち、最も後方に位置している。すなわち、第2風向調整部材160は、第1風向調整部材150から側壁に向かう方向に離れて位置している。第2風向調整部材160は、吹出口111から吹き出される調和空気の風向を調整する。
【0036】
第2風向調整部材160は、第2駆動部161(図6参照)に接続されている。第2駆動部161は、例えば、ステッピングモータである。第2駆動部161が第2風向調整部材160を回動させることによって、第2風向調整部材160は、水平面に対する傾斜角度が互いに異なる複数の姿勢をとることができる。
【0037】
第2風向調整部材160は、調和空気をガイドする第2ガイド面162を有する。第2ガイド面162は、図2に示す第2風向調整部材160の姿勢において、第2風向調整部材160のうち第1風向調整部材150に対向する側の面である。
【0038】
(1−7)第3風向調整部材
第3風向調整部材170は、本体ケーシング110の下部に回動自在に取り付けられている。第3風向調整部材170は、第1風向調整部材150と第2風向調整部材160の間に位置している。より詳細には、第3風向調整部材170は、案内流路113において、第1風向調整部材150よりも調和空気の流れの上流側に位置している。第3風向調整部材170は、吹出口111から吹き出される調和空気の風向を調整する。
【0039】
第3風向調整部材170は、第3駆動部171(図6参照)に接続されている。第3駆動部171は、例えば、ステッピングモータである。第3駆動部171が第3風向調整部材170を回動させることによって、第3風向調整部材170は、水平面に対する傾斜角度が互いに異なる複数の姿勢をとることができる。
【0040】
第3風向調整部材170は、調和空気をガイドする第3ガイド面172を有する。第3ガイド面172は、図2に示す第3風向調整部材170の姿勢において、第3風向調整部材170のうち第2風向調整部材160側の面である。
【0041】
第3風向調整部材170は、第1風向調整部材150よりも小さい。より詳細には、第3風向調整部材170の短手方向(すなわち図2に示す第3風向調整部材170の姿勢における上下方向)の幅は、第1風向調整部材150の短手方向の幅よりも狭い。
【0042】
(2)空気調和機の機能ブロック
図6は、空気調和機100の機能ブロック図である。既に説明したように、空気調和機100は、第1駆動部151、第2駆動部161、および第3駆動部171を備える。空気調和機100は、制御部180をさらに備える。
【0043】
制御部180は、CPU、ROMおよびRAM等から構成されたコンピュータである。制御部180は、第1駆動部151、第2駆動部161、および第3駆動部171に接続されている。制御部180は、遠隔操作装置300から各種の制御信号を受信する。制御信号として、運転モードに関する制御信号、および風向に関する制御信号等を挙げることができる。ユーザは、遠隔操作装置300を操作することによって、運転モード、風向等を設定することができる。また、遠隔操作装置300を操作することによって、空気調和機100の電源をオンまたはオフすることができる。
【0044】
制御部180は、風向に関する制御信号を受信すると、当該制御信号に応じて、第1駆動部151、第2駆動部161、および第3駆動部171の駆動を制御する。すなわち、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170のそれぞれの、水平面に対する傾斜角度を制御する。これにより、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170の姿勢を制御する。
【0045】
(3)風向制御
制御部180は、運転モードに応じて、調和空気の風向を調整する。ここでは、運転モードは暖房に設定されているとする。
【0046】
(3−1)前方下側
空気調和機100は、互いに異なる複数の前方下側方向に風向を調整することができる。本実施形態においては、空気調和機100は、図3および図4に示されるように、互いに異なる2つの前方下側方向に風向を調整する。図3に示す状態の空気調和機100は、図4に示す空気調和機100よりも、より前方に調和空気を送ることができる。
【0047】
風向が前方下側方向に設定されている場合には、制御部180は、図3および図4に示されるように、第2風向調整部材160および第3風向調整部材170を利用して、調和空気の風向を調整する。具体的には、下記の通りである。
【0048】
制御部180は、第2風向調整部材160が前方下向きに傾斜した姿勢をとるように、第2駆動部161の駆動を制御する。換言すると、第2風向調整部材160の鉛直方向上側の端部が第2風向調整部材160の鉛直方向下側の端部よりも側壁の側に位置するように、第2駆動部161の駆動を制御する。
【0049】
制御部180は、第3風向調整部材170が前方下向きに傾斜した姿勢をとるように、第3駆動部171の駆動を制御する。換言すると、第3風向調整部材170の鉛直方向上側の端部が第3風向調整部材170の鉛直方向下側の端部よりも側壁の側に位置するように、第3駆動部171の駆動を制御する。
【0050】
さらに、制御部180は、第1風向調整部材150を案内流路113および吹出流路114から外れた待避位置に移動させる。本実施形態においては、第1風向調整部材150を収容部112に収容する。吹出流路114は、案内流路113に続く領域であって、第2風向調整部材160と第3風向調整部材170により規定される流路である。吹出流路114は、図3および図4に破線で示されるように、第2風向調整部材160の先端の延長部分と、第3風向調整部材170の先端の延長部分とに挟まれた領域を含む。
【0051】
調和空気は、第2風向調整部材160と第3風向調整部材170に挟まれた空間を通過する。第2風向調整部材160および第3風向調整部材170が前方下向きに傾斜しているので、調和空気を前方下側に導くことができる。
【0052】
(3−2)後方下側
風向が後方下側方向に設定されている場合には、制御部180は、図2に示されるように、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170の全てを利用して、調和空気の風向を調整する。具体的には、下記の通りである。
【0053】
制御部180は、第2風向調整部材160が後方下向きに傾斜した姿勢をとるように、第2駆動部161の駆動を制御する。換言すると、第2風向調整部材160の鉛直方向下側の端部が第2風向調整部材160の鉛直方向上側の端部よりも側壁の側に位置するように、第2駆動部161の駆動を制御する。
【0054】
制御部180は、第1風向調整部材150が後方下向きに傾斜した姿勢をとるように、第1駆動部151の駆動を制御する。換言すると、第1風向調整部材150の鉛直方向下側の端部が第1風向調整部材150の鉛直方向上側の端部よりも側壁の側に位置するように、第1駆動部151の駆動を制御する。
【0055】
さらに、制御部180は、第1風向調整部材150に連動するように第3風向調整部材170の姿勢を調整する。具体的には、第3風向調整部材170の先端が第1風向調整部材150の段差部154に接するように、第3風向調整部材170の姿勢を調整する。これにより、第3風向調整部材170は、第1風向調整部材150と共に調和空気を導くガイド面を形成する。すなわち、第1ガイド面152と第3ガイド面172が、あたかも一体に形成されたような略面一のガイド面を形成する。また、第1ガイド面152と第3ガイド面172の接触部分付近は、第1風向調整部材150の鉛直方向下側の端部、および第3風向調整部材170の鉛直方向上側の端部よりも、前方側に位置している。すなわち、第1ガイド面152と第3ガイド面172は、全体としては、前方に突き出た弓形の形状を成す。
【0056】
調和空気は、第1風向調整部材150および第3風向調整部材170と、第2風向調整部材160とに挟まれた空間を通過する。第1風向調整部材150および第2風向調整部材160が後方下向きに傾斜しているので、調和空気を後方下側に導くことができる。後方下側(すなわち第2方向)に調整された調和空気は、前方下側(すなわち第1方向)に調整された調和空気よりも、側壁に寄っている。
【0057】
(4)運転停止時の空気調和機
制御部180は、電源をオフする旨の制御信号を受信すると、第1風向調整部材150を収容部112に収容すると共に、吹出口111を閉じるように第2風向調整部材160の姿勢を制御する。さらに、制御部180は、電源をオフする旨の制御信号を受信すると、上スクロール141に形成された収容部に第3風向調整部材170を収容する。以上のような状態において、第1風向調整部材150と第2風向調整部材160は、本体ケーシング110と一体的に空気調和機100の意匠を構成する。
【0058】
(5)空気調和機の特徴
本実施形態の空気調和機100においては、制御部180は、風向を前方下側方向に調整する場合に、第2風向調整部材160および第3風向調整部材170を利用する。つまり、制御部180は、第1風向調整部材150と第2風向調整部材160の間に位置することによって、本来であれば抵抗として作用し得る第3風向調整部材170を、第2風向調整部材160と共に、風向の調整に積極的に利用している。それと同時に、第3風向調整部材170を風向の調整に利用する場合に、逆に抵抗として作用し得る第1風向調整部材150を待避位置に移動させる。以上により、調和空気の風量の低減を抑制することができる。
【0059】
本実施形態の空気調和機100においては、制御部180は、風向を後方下側方向に調整する場合に、第2風向調整部材160および第3風向調整部材170に加えて、第1風向調整部材150を利用する。そして、第3風向調整部材170は、第1風向調整部材150と共に調和空気を導くガイド面を形成する。第1風向調整部材150および第3風向調整部材170が、あたかも一体となってガイド面を形成することにより、調和空気は、第1風向調整部材150と第3風向調整部材170の間に侵入し難くなる。第1風向調整部材150と第3風向調整部材170の間に侵入することによる、調和空気の風量の損失を低減することができるので、吹出口111から吹き出される調和空気の風量の低減を抑制できる。
【0060】
第1ガイド面152と第3ガイド面172が、全体として、前方に突き出た弓形の形状を成すので、調和空気を弓形の形状に沿わせることができる。これにより、調和空気の風向をより抵抗なく後方下側方向に調整することができる。
【0061】
また、第2風向調整部材160および第3風向調整部材170に加えて、第1風向調整部材150を利用することにより、第2風向調整部材160および第3風向調整部材170のみを利用した場合とは異なる風向を実現することができる。多様な風向を実現することができるので、利用者の要求に沿った風向を提供することが期待できる。
【0062】
本実施形態の空気調和機100においては、制御部180は、暖房運転時に、後方下側方向、すなわち、側壁に向かう方向に風向を調整する。これにより、調和空気である暖かな空気が壁を経由して床面に到達することが期待できる。暖かな空気が床面に到達することによって、空気調和機が設置された部屋を均一に暖めることが期待できる。
【0063】
本実施形態の空気調和機100においては、第1方向は前方下側、すなわち側壁から離れる方向であり、第2方向は後方下側、すなわち側壁に向かう方向である。換言すると、第2方向に調整された調和空気は、第1方向に調整された調和空気よりも側壁に寄っている。
【0064】
制御部180は、風向を側壁から離れる方向に調整するか、または側壁に向かう方向に調整するかによって、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170のいずれを利用するかを異ならせる。すなわち、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170を風向に応じて使い分けることができる。
【0065】
風向が側壁から離れる方向に調整される場合には、図3に示されるように、案内流路113から吹出流路114は、直線状に通じている。または、図4に示されるように、案内流路113から吹出流路114は、比較的緩やかな曲線状に通じている。したがって、第1風向調整部材150よりも小さい第3風向調整部材170であっても、十分に風向を調整することができる。
【0066】
一方、風向が側壁に向かう方向に調整される場合には、図2に示されるように、案内流路113から吹出流路114は、急な曲線状に通じている。したがって、第3風向調整部材170に加えて第1風向調整部材150によって、風向を調整する。第1風向調整部材150よりも大きい第3風向調整部材170に調和空気を沿わせた上で、第2風向調整部材160側に導くので、後方下側方向に効率的に風向を調整することができる。
【0067】
本実施形態の空気調和機100においては、第3風向調整部材170は、案内流路113において、第1風向調整部材150よりも調和空気の流れの上流側に配置されている。調和空気の風向がより上流側で調整されることにより、風向が後方下側方向に調整される場合に、調和空気は第2風向調整部材160に沿い易くなる。
【0068】
本実施形態の空気調和機100においては、第3風向調整部材170の短手方向の幅は、第1風向調整部材150の短手方向の幅よりも狭い。したがって、第3風向調整部材170は、本体ケーシング110内の限られた空間に収容され易い。
【0069】
本実施形態の空気調和機100においては、第1風向調整部材150はテーパ部153を有する。したがって、鉛直上向きの成分を含む方向へ風向が調整される場合に、第1風向調整部材150のテーパ部153によって、当該方向へより容易に導くことができる。一方、制御部180は、前方下側方向に風向を調整する場合に、第1風向調整部材150を案内流路113および吹出流路114から外れた待避位置に移動させるので、第1風向調整部材150による影響を低減することができる。すなわち、鉛直上向きの成分を含む方向へ流れる調和空気の風量を低減することができる。
【0070】
本実施形態の空気調和機100においては、制御部180は、第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170のそれぞれの、水平面に対する傾斜角度を制御する。第1風向調整部材150、第2風向調整部材160、および第3風向調整部材170のそれぞれの姿勢を制御することにより、調和空気の風向を調整することができる。
【0071】
<変形例>
本発明の実施形態に適用可能な変形例を説明する。
【0072】
(1)変形例A
以上の説明では、制御部180が側壁に向かう方向に調和空気の風向を調整する場合に、第1ガイド面152と第3ガイド面172は略面一であったが、面一でなくてもよい。第3風向調整部材170が第1風向調整部材150に重なることによって、第1ガイド面152と第3ガイド面172とが、段差状に形成されてもよい。第3風向調整部材170が第1風向調整部材150に乗り上げるように位置することにより、第3風向調整部材170が段差部154を覆うので、第1風向調整部材150と第3風向調整部材170の間に侵入する風量をより低減することができる。
【0073】
(2)変形例B
以上の説明では、第3風向調整部材170は、本体ケーシング110の下部に回動自在に取り付けられていたが、進退自在に取り付けられてもよい。すなわち、第3風向調整部材170は円運動ではなく、直線運動してもよい。また、第3風向調整部材170は、本体ケーシング110の下部に、特定の姿勢を維持した状態で固定されていてもよい。この場合には、第3風向調整部材170の姿勢は不変であるので、制御部180は、第1風向調整部材150および第2風向調整部材160の姿勢のみを制御すればよい。
【0074】
(3)変形例C
第2ガイド面162には、テーパ部が設けられていてもよい。テーパ部は、第2ガイド面162の先端に位置している。第2風向調整部材160が後方下向きに傾斜した姿勢をとる場合に、テーパ部は、吹出口111から吹き出される調和空気を後方下側へ導く。したがって、風向をより後方下側に導き易くなる。
【0075】
第3ガイド面172には、逆テーパ部が設けられていてもよい。逆テーパ部は、第3ガイド面172の先端に位置している。第3風向調整部材170が後方下向きに傾斜した姿勢をとる場合、または略垂直な姿勢をとる場合に、逆テーパ部は、吹出口111から吹き出される調和空気を後方下側へ導く。これにより、風向をより後方下側に導き易くなる。
【0076】
(4)変形例D
以上の説明では、風向が前方下側方向に設定されている場合に、制御部180は、第1風向調整部材150を収容部112に収容したが、案内流路113および吹出流路114から外れた位置であれば、収容部112に収容しなくてもよい。また、空気調和機100は、互いに異なる3つ以上の前方下側方向に風向を調整してもよい。
【0077】
(5)変形例E
以上の説明では、第1方向が前方下側であり、第2方向が後方下側であったが、第1方向および第2方向の両方が前方下側であってもよいし、第1方向および第2方向の両方が後方下側であってもよい。これらの場合にも、第2方向に調整された調和空気は、第1方向に調整された調和空気よりも側壁に寄っている。すなわち、第2方向は、第1方向よりも側壁に寄っている。したがって、例えば、第1方向および第2方向の両方が後方下側である場合に、風向を側壁により寄っている第2方向に調整するときに、第3風向調整部材170に加えて第1風向調整部材150を用いることにより、後方下側方向に効率的に風向を調整することができる。
【0078】
(6)変形例F
以上の説明では、運転モードが暖房に設定されている場合を例に挙げたが、運転モードが加湿または加湿暖房に設定されている場合でも本発明を適用することができる。
【0079】
以上のように、本発明は実施形態を用いて説明されたが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲に限定されない。多様な変更または改良を上記の実施形態に加えることが可能であることは、当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0080】
100 空気調和機
110 本体ケーシング
111 吹出口
113 案内流路
114 吹出流路
150 第1風向調整部材
153 テーパ部
160 第2風向調整部材
170 第3風向調整部材
180 制御部
300 遠隔操作装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2005−164066号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6