(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B)縮合リン酸塩(B−1)及び/又は両性界面活性剤(B−2)とからなり、(A)/(B−1)が質量比として0.1〜10又は(A)/(B−2)が質量比として0.2〜8である口腔バイオフィルム除去剤。
(B−2)両性界面活性剤が、脂肪酸アミドアルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン及びアミノ酢酸ベタインから選ばれる1種以上のベタイン系両性界面活性剤である請求項1記載の口腔バイオフィルム除去剤。
【背景技術】
【0002】
従来、歯磨剤におけるプラーク(歯垢)除去技術としては、研磨剤などの清掃剤による物理的除去、酵素などによる生化学的除去などがある。
清掃剤による除去では、その効果を発揮するために研磨剤の量を増やしたり、硬さを高める必要があるが、それに伴い研磨力が上がり、歯や歯肉損傷などの為害性、刺激性が生じやすくなる可能性があった。一方、酵素を安定配合するためには各種安定剤を併用する必要があり、泡立ちや味などの使用感に影響する場合があった。
【0003】
また、近年、歯垢をバイオフィルムとして捉え、バイオフィルムを除去できればより効果的に歯垢を除去可能である。口腔内のバイオフィルムを除去するには、歯ブラシを用いたブラッシングによる物理的な方法だけでなく、ブラシの届かないバイオフィルムをも除去可能な化学的方法が有用である。バイオフィルムは、様々な口腔内細菌の共凝集体と菌体外多糖類から構成される。そこで、化学的除去方法としては、共凝集抑制作用のあるエリスリトールや、菌体外多糖を分解する酵素のプロテアーゼやデキストラナーゼ、ムタナーゼなどを用いることが知られているが、その効果は改善の余地があった。
【0004】
また、界面活性剤は洗浄作用を有することが知られ、洗浄剤として口腔用組成物に用いられている。この場合、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムは、アニオン性界面活性剤特有の刺激がない活性剤として知られている(特許文献1:特開平6−72836号公報)。
【0005】
しかし、従来、界面活性剤は、その浸透作用、界面清浄化作用の点から、わずかではあるが歯垢除去効果を有すると認識されていたが、界面活性剤の単独使用で十分な歯垢乃至バイオフィルム除去効果があるとは認識されていないのが現状である。
【0006】
なお、特許文献2(特表2008−519043号公報)には、スルホ酢酸アルキルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩と水溶性亜鉛塩とを併用することが開示されているが、スルホ酢酸アルキル塩は亜鉛塩の収斂性を低減するために用いられているもので、バイオフィルム除去効果については示されていない。更に、特許文献3(特開平9−508120号公報)は、口腔粘膜に対する刺激が軽減された口腔用組成物としてラウリルスルホ酢酸ナトリウムを含む練り歯磨きが開示されているが、バイオフィルム除去効果については言及されていない。
【0007】
一方、縮合リン酸塩が化学的な歯の汚れ除去効果を有することは知られている(特許文献4:特開平9−175966号公報)が、縮合リン酸塩単独で十分な歯垢乃至バイオフィルム除去効果があるとは認識されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、う蝕の原因となるバイオフィルムを化学的に除去する効果が高い口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記本発明の課題を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)アルキルスルホ酢酸塩、並びに(B)縮合リン酸塩(B−1)及び/又は両性界面活性剤(B−2)を併用することにより、前記課題を解決できることを見出したものである。
詳細には、本発明者らは、(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B)縮合リン酸塩(B−1)とを組み合わせることにより、口腔バイオフィルムの除去効果が格段に向上すること、しかも、(A)成分特有の苦味を抑制し得ること、また適度な泡立ちを付与し得ることを見出した(第I発明)。
第I発明においては、(A)成分と(B−1)成分とが、特に(A)/(B−1)が質量比として0.1〜10の範囲内で、特異的かつ相乗的に作用し、口腔バイオフィルムを分散除去する作用が増強する。また、(A)成分に由来する苦味を抑え、(A)成分による適度な泡立ちを与えることができる。
【0011】
即ち、後述する実施例及び比較例に示したように、(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩の単独使用では、作製したバイオフィルムの除去率は70%未満にとどまる。また、縮合リン酸塩(B−1)におけるバイオフィルム除去率は50%に満たないものであり、十分なバイオフィルム除去効果がないにもかかわらず、(A)成分と(B−1)成分とを併用した場合、意外なことに両成分が相乗的に作用し、十分なバイオフィルム除去効果が得られることを知見した。またこの場合、(A)成分以外のアニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムと縮合リン酸塩とを併用しても、十分なバイオフィルム除去効果が得られず、上記バイオフィルム除去効果は(A)成分と(B−1)成分とを併用した場合の特異的な作用効果であることを見出した。更に、アルキルスルホ酢酸塩は苦味が強く、従来、文献的にはその使用が開示されているものの、実際には口腔製剤においてその使用が忌避されていたものであったが、(A)成分と(B−1)成分とを併用すると、(A)成分に由来する苦味が抑制され、良好な使用感を与え、また、(A)成分による適度な泡立ちが維持され、実使用に適する製剤となることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
また、本発明者らは、上記本発明の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B)両性界面活性剤(B−2)とを組み合わせることにより、口腔バイオフィルムの除去効果が格段に向上すること、しかも、(A)成分特有の苦味を抑制し得ること、また適度な泡立ちを付与し得ることを見出した(第II発明)。
第II発明においては、(A)成分と(B−2)成分とが、特に(A)/(B−2)が質量比として0.2〜8の範囲内で、特異的かつ相乗的に作用し、口腔バイオフィルムを分散除去する作用が増強する。また、(A)成分に由来する苦味を抑え、(A)成分による適度な泡立ちを与えることができる。
【0013】
即ち、後述する実施例及び比較例に示したように、(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩の単独使用では、作製したバイオフィルムの除去率は70%未満にとどまる。また、両性界面活性剤(B−2)におけるバイオフィルム除去率は50%に満たないものであり、十分なバイオフィルム除去効果がなく、これを他の界面活性剤と併用してもバイオフィルム除去効果を向上させるものとは考えられないにもかかわらず、(A)成分と(B−2)成分とを併用すると、意外にも両成分が相乗的に作用し、界面活性剤系によって十分なバイオフィルム除去効果が得られることを知見した。またこの場合、(A)成分以外のアニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムと両性界面活性剤とを併用しても、十分なバイオフィルム除去効果が得られず、上記バイオフィルム除去効果は(A)成分と(B−2)成分とを併用した場合の特異的な作用効果であることを見出した。更に、アルキルスルホ酢酸塩は苦味があり、従来、文献的にはその使用が開示されているものの、実際にはその使用が忌避されていたものであったが、(A)成分と(B−2)成分とを併用すると、(A)成分に由来する苦味が抑制され、良好な使用感を与え、また、(A)成分による適度な泡立ちが維持され、実使用に適する製剤となることを知見し、本発明をなすに至った。
【0014】
第II発明においては、更に、(C)第4級アンモニウム塩、(D)キシリトール及び/又はエリスリトールを配合すると、特異的に、より優れた口腔バイオフィルム除去効果を与えることができる。
この場合、特に、(A)成分、(B−2)成分、更に好ましくは(C)成分を含有する歯磨剤組成物、あるいは(A)成分、(B−2)成分、更に好ましくは(D)成分を含有する洗口剤組成物であることが、より好ましい。
【0015】
従って、本発明(第I発明)は、下記の口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物を提供する。
〔I−1〕(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B−1)縮合リン酸塩とからなり、(A)/(B−1)が質量比として0.1〜10である口腔バイオフィルム除去剤。
〔I−2〕(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩が、ラウリルスルホ酢酸塩である〔I−1〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔I−3〕(A)アルキルスルホ酢酸塩
を0.3〜5質量%と、(B)
トリポリリン酸ナトリウム(B−
1’)を0.1〜5質量%とを含有し、(A)/(B−
1’)が質量比として0.1〜10であることを特徴とする口腔用組成物
。
〔I−
4〕
歯磨剤組成物又は洗口剤組成物である〔I−3〕
に記載の口腔用組成物。
〔I−
5〕口腔バイオフィルム除去用である〔I−3〕
又は〔I−
4〕に記載の口腔用組成物。
【0016】
従って、本発明(第II発明)は、下記の口腔バイオフィルム除去
剤を提供する。
〔II−1〕(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B−2)両性界面活性剤とからなり、(A)/(B−2)が質量比として0.2〜8である口腔バイオフィルム除去剤。
〔II−2〕両性界面活性剤(B−2)が、脂肪酸アミドアルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン及びアミノ酢酸ベタインから選ばれる1種以上のベタイン系両性界面活性剤である〔II−1〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔II−3〕(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩が、ラウリルスルホ酢酸塩である〔II−1〕又は〔II−2〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤
。
〔II−
4〕更に、(D)キシリトール及び/又はエリスリトールを含む〔II−1〕〜〔II−
3〕のいずれかに記載の口腔バイオフィルム除去剤
。
【発明の効果】
【0017】
本発明の口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物は、う蝕の原因となる口腔バイオフィルムの化学的除去効果に優れる。また、苦味が抑制され良好な使用感を与え、適度な泡立ちを与える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明は、(A)アルキルスルホ酢酸塩、並びに(B)縮合リン酸塩(B−1)及び/又は両性界面活性剤(B−2)とからなる口腔バイオフィルム除去剤である。また、本発明は、前記(A)及び(B)成分を含有する口腔用組成物である。
【0019】
本発明において、第I発明は、(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B)成分として縮合リン酸塩(B−1)とを併用することを特徴とする。
(A)アルキルスルホ酢酸塩及び(B−1)成分を併用することで、バイオフィルムの分散除去効果を格段に向上でき、また、(A)成分の苦味が抑えられ、泡立ち性を適度に付与することもできる。
【0020】
(A)アルキルスルホ酢酸塩としては、アルキル基の炭素数が10〜20のアルキルスルホ酢酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩を用いることができ、好ましくはラウリルスルホ酢酸塩である。これらは口腔用製剤に使用可能な市販品を入手することが可能である。
【0021】
第I発明に用いる(B)成分の縮合リン酸塩(B−1)は、(A)成分に併用するとバイオフィルム除去効果を向上し、また、苦味を抑制し、適度な泡立ち性を与える。
(B)成分の縮合リン酸塩としては、下記一般式(1)
M
n+2P
nO
3n+1 (1)
(式中、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を使用できる。例えば、重合度n=2のピロリン酸ナトリウムやピロリン酸カリウム、n=3のトリポリリン酸ナトリウムやトリポリリン酸カリウム、n=4のテトラポリリン酸ナトリウムやテトラポリリン酸カリウム、n=5のペンタポリリン酸ナトリウム、更には高重合度のメタリン酸ナトリウムやメタリン酸カリウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でもピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムが、効果発現の点でより好適であり、とりわけトリポリリン酸ナトリウムが好ましい。
【0022】
具体的には、ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製、東北化学(株)製)、ピロリン酸カリウム(太平化学産業(株)製、東亜合成化学(株)製)、トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製、セントラル硝子(株)製、日本ビルダー(株)製)、トリポリリン酸カリウム(太平化学産業(株)製)、テトラポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)、ペンタポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)などを使用できる。
【0023】
第I発明においては、(A)成分と(B−1)成分との配合比率が特定範囲であると口腔バイオフィルム除去効果がより優れる。この場合、(A)/(B−1)比が質量比として0.1〜10、特に0.2〜8であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5であり、さらに好ましくは0.3〜4、特に好ましくは0.6〜3.3、とりわけ好ましくは1.2〜3である。
上記比率範囲内であると、バイオフィルム除去効果がより優れる。また、苦味を抑制し、良好な泡立ちを与えるには比率値が10以下であることが望ましい。
【0024】
また、本発明において、第II発明は、(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B)成分として両性界面活性剤(B−2)とを併用することを特徴とする。
(A)アルキルスルホ酢酸塩及び(B−2)成分を併用することで、バイオフィルムの分散除去効果を格段に向上でき、また、(A)成分の苦味が抑えられ、泡立ち性を適度に付与することもできる。
【0025】
この場合、(A)成分については、上記第I発明と同様である。
【0026】
第II発明に用いる(B)成分の両性界面活性剤(B−2)は、(A)成分に併用することで、口腔バイオフィルムの分散除去効果を格段に向上し、また、苦味を抑制し、適度な泡立ち性を与える。
両性界面活性剤としては、ベタイン系、例えば脂肪酸アミドアルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノ酢酸ベタインを使用できる。中でも、脂肪酸の炭素数が8〜18であり、アルキル基の炭素数が1〜5の脂肪酸アミドアルキルベタインが好ましく、より好ましくは脂肪酸アミドプロピルベタインである。このような脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、外原規(医薬部外品原料規格)記載のヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを使用できる。
両性界面活性剤は口腔用製剤に使用可能な市販品を入手することができる。具体的に、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、市販の商品名TEGO Betain CK OK(EVONIK社製)が挙げられる。
【0027】
第II発明において、(A)成分と(B−2)成分との配合比率が特定範囲であると口腔バイオフィルム除去効果がより優れる。この場合、(A)/(B−2)比が質量比として0.2〜8であることが好ましく、より好ましくは0.4〜5、更に好ましくは0.4〜4、とりわけ好ましくは0.5〜3.1である。上記比率範囲内であると、バイオフィルム除去効果がより優れる。また、より良好な泡立ちを与え、苦味をより抑制するには8以下であることが望ましい。
【0028】
本発明、特に第II発明では、更に(C)第4級アンモニウム塩を配合することが好ましく、(C)第4級アンモニウム塩を配合すると、口腔バイオフィルムの分散除去効果がより向上する。また、泡立ちが更に向上する。
(C)成分の第4級アンモニウム塩としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用し得るが、特に塩化セチルピリジニウムが、バイオフィルム除去効果の点からより好ましい。
(C)成分を配合する場合は、(A)/(C)が質量比として10〜500の範囲内で配合することが、バイオフィルム除去効果の向上の点で好ましい。
【0029】
本発明、特に第II発明では、更に(D)キシリトール及び/又はエリスリトールを配合することが好ましく、(D)キシリトール及び/又はエリスリトールを配合すると、口腔バイオフィルムの分散除去効果がより向上する。なお、(D)成分としては、キシリトール又はエリスリトールを単独で配合しても、キシリトール及びエリスリトールを配合してもよい。
(D)成分を配合する場合は、(A)/(D)が質量比として0.01〜5の範囲内で配合することが、バイオフィルム除去効果の向上の点で好ましい。
【0030】
第I発明の口腔バイオフィルム除去剤は、口腔用組成物に好適に配合される。この場合、第I発明の口腔用組成物において、(A)成分の配合量は、組成物全体の0.3〜5%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0%である。配合量が多いほどバイオフィルム除去効果が向上し、0.3%以上であると、十分なバイオフィルム除去効果を付与することができる。また、良好な泡立ち性を付与することができる。5%以下であると、苦味が強くなることがなく、使用上好ましい。
【0031】
また、第I発明の口腔用組成物において、(B−1)成分の配合量は、組成物全体の0.1〜5%が好ましく、より好ましくは0.3〜5%、更に好ましくは0.30〜5%である。(B−1)成分の配合量は、多いほどバイオフィルム除去効果が向上するが、苦味を抑え、良好な泡立ちを与え、使用上好ましいものを得るには5%以下が望ましい。
【0032】
第II発明の口腔バイオフィルム除去剤は、口腔用組成物に好適に配合され、(A)アルキルスルホ酢酸塩と、(B)成分として両性界面活性剤(B−2)とを含有する。更に、(C)第4級アンモニウム塩を含有してもよく、また、更に(D)キシリトール及び/又はエリスリトールを含有してもよい。特に、(A)成分、(B−2)成分、更に好ましくは(C)成分を含有する歯磨剤組成物、あるいは(A)成分、(B−2)成分、更に好ましくは(D)成分を含有する洗口剤組成物であると、口腔バイオフィルム除去効果がさらに向上する。
【0033】
第II発明の口腔用組成物において、(A)成分の配合量は、組成物全体の0.1〜3%であることが好ましい。この場合、特に歯磨剤組成物においては、(A)成分を0.3〜3%、特に0.5〜2.5%配合することが好ましい。また、洗口剤組成物においては、(A)成分を0.1〜3%、特に0.1〜2.5%、とりわけ0.1〜1%配合することが好ましい。配合量が多いほどバイオフィルム除去効果が向上し、0.1%以上であると、十分なバイオフィルム除去効果を付与することができる。また、良好な泡立ち性を付与することができる。3%以下であると、苦味が強くなることがなく、使用上好ましい。
【0034】
また、第II発明の口腔用組成物において、(B−2)成分の配合量は、組成物全体の0.05〜5%、特に0.1〜5%が好ましく、より好ましくは0.3〜5%、更に好ましくは0.5〜3%である。(B−2)成分の配合量は、多いほどバイオフィルム除去効果が向上し、また良好な泡立ちを与えるが、苦味を生じさせないためには5%以下が望ましい。
【0035】
(C)第4級アンモニウム塩を配合する場合、特に第II発明にかかわる歯磨剤組成物において、その配合量は組成物全体の0.003〜0.05%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.01%である。配合量が多いほどバイオフィルム除去効果が高まる。第4級アンモニウム塩の粘膜刺激を生じさせないためには0.05%以下が好ましい。
【0036】
(D)キシリトール及び/又はエリスリトールを配合する場合、特に第II発明にかかわる洗口剤組成物において、その配合量は組成物全体の0.1〜2%が好ましく、より好ましくは0.3〜1%である。配合量が多いほどバイオフィルム除去効果がより高まる。苦味を生じさせないためには2%以下が好ましい。
【0037】
本発明の口腔用組成物は、液体、液状、ペースト状などの形態に調製でき、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、洗口剤などとして、通常の方法で調製することができる。
【0038】
この場合、上記成分に加えて、必要により、剤型に応じたその他の任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。具体的には、歯磨剤の場合は、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、色素、各種有効成分、水等の溶剤、pH調整剤などを配合し得る。また、洗口剤の場合は、湿潤剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、殺菌剤、香料、甘味剤、色素、各種有効成分などを配合し得る。
【0039】
以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の組成物に配合可能な成分はこれらに制限されるものではない。
研磨剤としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。これらの研磨剤は、通常、歯磨剤の場合、組成物全体の5〜70%、特に10〜50%配合することができる。
【0040】
粘結剤としては、例えばプルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これら粘結剤は、通常、組成物全体の0〜10%、特に0.1〜5%配合できる。
【0041】
粘稠剤(湿潤剤)としては、例えばソルビットや、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これら粘稠剤の配合量は、通常、組成物全体の0〜70%、特に3〜50%である。
【0042】
界面活性剤としては、(A)成分以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を配合することができ、例えば、アルキル硫酸塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドなどのノニオン性界面活性剤を使用できる。これら界面活性剤は、1種又は2種以上使用でき、通常、組成物全体の0〜10%、特に0.1〜5%配合することができる。また、(A)成分以外のアニオン性界面活性剤の配合量は0%でもよく、配合する場合は0.1〜1.5%、特に0.1〜1.0%が好ましい。
【0043】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン等が挙げられる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステルなどが配合できる。
【0044】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、l−メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料など口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
【0045】
色素としては、目的の色調により口腔用組成物に使用可能な色素を使用できる。食用色素としては、例えばブリリアントブルー、タートラジンなど、顔料としては酸化チタンなどが挙げられる。
【0046】
有効成分(薬用成分)としては、例えば、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩類、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等の抗炎症剤、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、塩化リゾチーム等の酵素剤、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等のビタミン類、塩化ナトリウム等の収斂剤、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物などを、薬剤学的に許容できる範囲で有効量使用できる。
【0047】
また、溶剤としてエタノール、水等を配合し得る。
口腔用組成物が歯磨剤組成物の場合は、溶剤は水が好ましく、水の含有量は組成物全体の60%以下が好ましい。また、口腔用組成物が洗口剤組成物の場合、溶剤は水、あるいは水とエタノールの混合溶媒が好ましく、エタノールは組成物全体の10%以下が好ましい。
組成物のpHは通常の口腔用組成物の範囲とすることができるが、好ましくは25℃におけるpHが5.5〜8.5、より好ましくは6〜8である。なお、必要に応じてpH調整剤を用いてpH調整してもよく、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸又はその塩等が挙げられ、中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸が好適である。これらpH調整剤の配合量はpH値が上記範囲内に調整できれば良い。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0049】
[実施例I、比較例I]
表1、2に示す組成の歯磨剤組成物を、下記に示す方法で調製し、下記方法で評価した。結果を表1、2に併記する。
【0050】
歯磨剤組成物の調製方法;
まず、ソルビット液等の粘稠剤を含む精製水中に、(B−1)成分の縮合リン酸塩、所用の水溶性成分を常温で混合後、更に粘結剤、安定化剤を混合し、ディスパーで分散させた。ニーダー中に分散液、研磨剤を入れて混合後、香料、(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩を加えた。ニーダー内を約5kPaまで減圧して脱泡を行い、更に混合を続けて歯磨剤組成物を得た。なお、比較例の組成物は上記方法に準じて調製した。
【0051】
<口腔バイオフィルム除去効果の評価方法>
(1)モデルバイオフィルムの作製方法
直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学社製)を0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものをモデルバイオフィルム作製の担体に用い、培養液には、ベイサルメディウムムチン培養液(BMM)
*1を用いた。モデルバイオフィルムを作製するために使用した菌株は、American Type Culture Collectionより購入したアクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146、ベイヨネラ パルビュラ(Veillonella parvula)ATCC17745、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)ATCC10557、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC25175を用いた。これら5菌株は予めBMM3,000mLを入れたRotating Disk Reactor(培養槽)にそれぞれ1×10
7cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気的条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で24時間培養した。その後、同条件でBMM培地を置換率5vol%/時間の割合で連続的に供給し10日間培養を行い、HA表面に5菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
【0052】
(2)モデルバイオフィルムの除去効果
形成させたモデルバイオフィルムは、24穴マルチプレート(住友ベークライト社製)に移し、調製した歯磨剤組成物(健常人より採取した唾液による3倍希釈液の遠心上清(10,000rpm、10分))を2mL加え、3分間浸漬した(歯磨剤組成物を加えないものをコントロールサンプルとした)。その後、PBS(和光純薬工業社製)1mLで6回洗浄し、同PBS2mLを添加した試験管(直径13mm×100mm)内で超音波処理(200μA、10秒間)により分散した。この分散液の波長550nmでの濁度(OD)を測定しバイオフィルム残存量を測定した。
試験組成物のバイオフィルム除去効果は、下式によりコントロールに対する除去率を求め、この除去率から、下記基準に則り口腔バイオフィルム除去効果を判定した。
バイオフィルム除去率(%)=(コントロールの濁度−試験組成物処置の濁度)/コントロールの濁度×100
口腔バイオフィルム除去効果の判定基準
◎◎:バイオフィルム除去率が95%以上
◎ :バイオフィルム除去率が90%以上95%未満
○ :バイオフィルム除去率が80%以上90%未満
△ :バイオフィルム除去率が70%以上80%未満
× :バイオフィルム除去率が50%以上70%未満
××:バイオフィルム除去率が50%未満
【0053】
*1 BMMの組成:1リットル中の質量で表す。
プロテオースペプトン
(Becton and Dickinson社製):4g/L
トリプトン
(Becton and Dickinson社製):2g/L
イーストエキス
(Becton and Dickinson社製):2g/L
ムチン(Sigma社製):5g/L
ヘミン(Sigma社製):2.5mg/L
ビタミンK(和光純薬工業社製):0.5mg/L
KCl(和光純薬工業社製):1g/L
システイン(和光純薬工業社製):0.2g/L
蒸留水:残
(全量が1Lになるようにメスアップし、121℃で20分間オートクレ
ーブした。)
【0054】
<苦味のなさ及び泡立ちのよさの評価方法>
表に示す歯磨剤組成物の苦味のなさ及び泡立ちのよさを、下記方法で官能評価した。
歯磨剤組成物1gを歯ブラシにとり、3分間ブラッシングすることで下記評点基準により評価した。苦味のなさ及び泡立ちのよさは、評価者6名の平均から下記評価基準に基づき評価した。
【0055】
苦味のなさ
評点基準
5:苦味を感じない
4:殆ど苦味を感じない
3:やや苦味を感じる
2:苦味を感じる
1:強い苦味を感じる
評価基準
◎:平均値が4点以上5点以下
○:平均値が3点以上4点未満
△:平均値が2点以上3点未満
×:平均値が1点以上2点未満
【0056】
泡立ちのよさ
評点基準
5:泡立ちがとてもよい
4:泡立ちがややよい
3:普通の泡立ちである
2:泡立ちがやや悪い
1:泡立ちがとても悪い
評価基準
◎:平均値が4点以上5点以下
○:平均値が3点以上4点未満
△:平均値が2点以上3点未満
×:平均値が1点以上2点未満
【0057】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)成分
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム;日光ケミカルズ(株)製
(B)成分
(B−1)トリポリリン酸ナトリウム;太平化学産業(株)製
(B−1)ピロリン酸ナトリウム;太平化学産業(株)製
(B−1)ピロリン酸カリウム;太平化学産業(株)製
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例II、比較例II]
表3〜6に示す組成の口腔用組成物(表3、4は歯磨剤組成物、表5、6は洗口剤組成物)を下記に示す方法で調製し、上記と同様の方法で評価した。結果を表3〜6に併記する。
なお、洗口剤組成物の苦味のなさ及び泡立ちの良さは、下記方法で官能評価した。
洗口剤10mLを口に含み20秒間すすいだ後、洗口時の苦味のなさを上記評点基準に基づき判定した。評価者6名の平均から上記評価基準に基づき評価した。
【0061】
歯磨剤組成物の調製方法;
まず、ソルビット液等の粘稠剤を含む精製水中に、フッ化ナトリウム等の所用の水溶性成分を常温で混合後、更に粘結剤と共に(B−2)成分を混合し、ディスパーで分散させた。ニーダー中に分散液、研磨剤などの粉体を入れて混合後、香料、(A)成分を加えた。ニーダー内を約5kPaまで減圧して脱泡を行い、更に混合を続けて歯磨剤組成物を得た。
洗口剤組成物の調製方法;
洗口剤組成物の調製は、(A)成分、(B−2)成分及び他の原料を精製水中に順次加えて攪拌し、均一溶解させた。なお、製造にはスリーワンモーター(BL1200,HEIDON社製)を用いた。
比較例の歯磨剤組成物、洗口剤組成物は、上記方法に準じて調製した。
【0062】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)成分
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム;日光ケミカルズ(株)製
(B)成分
(B−2)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン;30%品(各例中の配
合量は純分値)、TEGO Betain CK OK、EV
ONIK(株)製
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
表の結果から明らかなように、(A)成分と(B)成分とを併用すると、口腔バイオフィルム除去効果が格段に向上した。また、苦味が抑制された。更に、口腔用組成物、特に歯磨剤組成物は適度な泡立ちを有していた。
【0068】
以下、処方例を示す。なお、使用原料は上記と同様である。下記洗口剤は、口腔バイオフィルム除去効果に優れ、また苦味が抑制され、泡立ちが良好であった。
【0069】
[処方例I−1] 洗口剤
(A)ラウリルスルホ酢酸ナトリウム 0.8%
(B)(B−1)トリポリリン酸ナトリウム 0.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
グリセリン 5
プロピレングリコール 4
キシリトール 2
安息香酸ナトリウム 0.2
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.2
香料 0.2
水 残
計 100.0%
(A)/(B−1)比;1.6