(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269849
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20180122BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20180122BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20180122BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20180122BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20180122BHJP
B60J 10/17 20160101ALI20180122BHJP
B60J 10/74 20160101ALI20180122BHJP
【FI】
C08J3/24 ZCES
C08L23/04
C08L23/10
C08L23/16
C08L83/04
B60J10/17
B60J10/74
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-551652(P2016-551652)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2015074408
(87)【国際公開番号】WO2016052029
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-200113(P2014-200113)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 厚子
(72)【発明者】
【氏名】山口 恵弘
(72)【発明者】
【氏名】栗本 英一
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−117018(JP,A)
【文献】
特開2002−020558(JP,A)
【文献】
特開2010−024310(JP,A)
【文献】
特開2012−31342(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/007798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B60J 10/00−10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスが摺接するガラスラン、インナーウエザストリップ又はアウターウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材であって、PPと架橋前のEPDMと超高分子量PEよりなるPE粒子とを二軸押出機に投入して溶融混練しながらEPDMを動的架橋することにより、PE粒子が分散し、該PE粒子が摺動材表面を凹凸化したオレフィン系TPVよりなるガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項2】
PPとEPDMとの合計100質量部に対して、PE粒子の配合量が10〜90質量部である請求項1記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項3】
PE粒子の平均粒径は、投入前に30〜200μmであり、溶融混練で微細化し、製造されたガラス摺接部位用摺動材中において10〜50μmである請求項1又は2記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項4】
PPの配合量がEPDMの配合量よりも大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項5】
ガラス摺接部位用摺動材は、PPとEPDMとの合計100質量部に対して、さらに30質量部以下のシリコーン化合物を配合したものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項6】
シリコーン化合物は前記二軸押出機に投入してPPと架橋前のEPDMとPE粒子とともに混練する請求項5記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項7】
前記二軸押出機で得られたPE粒子が分散したオレフィン系TPVとシリコーン化合物とを新たに二軸押出機に投入して溶融混練する請求項5記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
【請求項8】
製造されたガラス摺接部位用摺動材が次の特性(ア)、(イ)及び(ウ)を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材を製造する方法。
(ア)JIS K7125に準拠して測定された静摩擦係数が0.4以下、動摩擦係数が0.2以下である。
(イ)ガラス摺接部位用摺動材で成形した試験片に該試験片との接触面積が150mm2 であるガラス製摩耗子を試験片に載せ、10Nの荷重を加え、試験片の表面を摺動速度150mm/秒で往復摺動させ、往復摺動回数50000回目の水平方向の荷重を測定して摺動抵抗とし、該摺動抵抗が10.0N以下である。
(ウ)ガラス摺接部位用摺動材で成形した試験片に底面が幅50mm×摺動方向長さ20mm(R10mm付)のガラス製摩耗子を載せ、30Nの荷重を加え、試験片の表面を摺動速度60回/分で往復摺動させ、往復10000回摺動後の試験片の磨耗量を測定し、該摩耗量が0.10mm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエザストリップ
のガラス摺接部位用摺動材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエザストリップは、一般的にオレフィン系ポリマー(ゴム、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー)により形成されており、特に窓枠部に取り付けられてガラスが摺接するガラスラン、インナーウエザストリップ、アウターウエザストリップ等のウエザストリップでは、ガラスの摺動性を高めるために、次のような手段が知られている。
【0003】
(1)シリコーン化合物の添加
特許文献1には、オレフィン系ポリマーにシリコーン化合物を5〜20重量%配合した原料の押し出しにより得られる摺動材料と、それを使用してガラスと摺接する部位の表面部分を成形したウエザストリップが記載されている。
しかし、シリコーン化合物は、摺動性は付与するが、その背反事項として、配合量が多いと型部との接着性を低下させるため、断面の切り出し工程が必要になるという問題がある。
【0004】
(2)樹脂微粒子の混合
特許文献2には、ウエザストリップ本体の材料としてオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用し、薄保護膜の材料としてオレフィン系樹脂のベース材料にポリエチレン粉末又は粒子を混合した合成樹脂を使用して、二台の押し出し成形機で同時押し出し成形するウエザストリップの製造方法が記載されている。ポリエチレン粉末又は粒子は、高粘度・低流動性のものを用いるので、ある程度の粉末又は粒子の形状を維持したままで押し出し成形され、表面に細かい凹凸の粗面部を形成するとしている。
しかし、本発明者らの検討によると、薄保護膜のベース材料が樹脂であるため、柔軟性に劣るという問題があった。
【0005】
特許文献3には、オレフィン系樹脂にエチレン系共重合ゴムが動的に分散・混練により架橋されたポリマーからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーに、アクリル変性オルガノポリシロキサンを配合し、さらにポリエチレン系微粒子パウダー、ポリスチレン系微粒子パウダー、アクリル系微粒子パウダーから選ばれる少なくとも一種の微粒子パウダー(平均粒子径が30〜80μm)を配合してなる組成物と、それを使用してウエザストリップのガラスと摺接する箇所を成形することが記載されている。
しかし、本発明者らの検討によると、この手法によっても十分な摺動性は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008/007798A1国際公開パンフレット
【特許文献2】特公平7−73893号公報
【特許文献3】特許第4297459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、摩擦係数、摺動抵抗、摩耗量等が小さく、摺動性の良いウエザストリップ
のガラス摺接部位用摺動材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomer)は熱可塑性樹脂とゴムからなるポリマーであり、そのうち動的架橋(Dynamic Vulcanization)というリアクティブプロセスによって製造されるTPEが、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV:Thermoplastic Vulcanizates)である。動的架橋とは、熱可塑性樹脂とゴムを溶融混練すると同時に、せん断下でゴムを架橋するプロセスであり、通常のゴムを静的に架橋成形するプロセスに対して呼称されるものである。TPVは、マトリックス(海相)である熱可塑性樹脂中に架橋ゴムがドメイン(島相)として分散した海島構造をなす。ウエザストリップに一般的に使用されているのは、オレフィン系熱可塑性樹脂の一つであるポリプロピレン(PP)と、オレフィン系ゴムの一つであるエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)とを組み合わせたオレフィン系TPVである。
【0009】
本発明者らが、特許文献3の手法を確認するため、
図4(a)に示すように、押出機50に、動的架橋後のオレフィン系TPVのペレットとポリエチレン(PE)粒子とを投入し、混練して押し出し、押し出したオレフィン系TPV52を観察したところ、
図4(b)に模式的に示すように、マトリックスであるPP53におけるドメインであるEPDM54の粒径が不均一であるだけでなく、PE粒子55の分散性が悪く、粒径も不均一であった。このような状態が原因で、上記のとおり十分な摺動性が得られなかったものと考察された。
【0010】
本発明者らは、この考察をふまえ、PPと架橋前のEPDMとポリエチレン(PE)粒子とを混練することで、PE粒子の分散性とサイズの均一化を高めることができることを見出し、さらに検討のうえ本発明に到った。
【0011】
本発明は、
ガラスが摺接するガラスラン、インナーウエザストリップ又はアウターウエザストリップのガラス摺接部位用摺動材であって、PPと架橋前のEPDMとPE粒子とを二軸押出機に投入して溶融混練しながらEPDMを動的架橋することにより、PE粒子が分散し
、該PE粒子が摺動材表面を凹凸化したオレフィン系TPVよりなる
ガラス摺接部位用摺動材を製造する方法である。
【0012】
PPと架橋前のEPDMとPE粒子とを二軸押出機に投入することで、PE粒子がマトリックスであるPPに分散しやすくなる。また、PPと架橋前のEPDMとPE粒子とが二軸押出機を通って溶融混練される過程で、PE粒子は、二軸の回転によるせん断により微細化され、粒径が均一化されるため、より分散しやすくなる。このPE粒子は、ウエザストリップのガラス摺接部位に用いたウエザストリップ用摺動材の表面を、均等なピッチ及び凸高さで凹凸化し、ガラスとの接触面積を減らすため、摩擦係数や摩耗量が減少し、摺動性が向上する。
【0013】
ここで、PE粒子は、EPDMの動的架橋がさほど進行していない二軸押出機の軸長の前半部にあるホッパに投入すればよく、例えば、PP及び架橋前のEPDMと同一ホッパに同時に投入したり、PP及び架橋前のEPDMのホッパに隣接するホッパに投入したりすることができる。
【0014】
PPとEPDMとの合計100質量部に対して、PE粒子の配合量が10〜90質量部であることが好ましい。PE粒子の配合量が10質量部未満になると摩擦係数及び摺動抵抗が大きくなり、90質量部を超えると摺接するガラスの摩耗が多くなる。
【0015】
PE粒子の平均粒径は、投入前に30〜200μmであり、溶融混練で微細化し、製造されたウエザストリップ用摺動材中において10〜50μmであることが好ましい。PE粒子の粒径が、この範囲で微細化することにより、均一化されるからである。
なお、本発明におけるPE粒子の平均粒径は、JIS Z8801で規定された9種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの粒子を分級した際に得られる各篩に残った粒子の重量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の重量になる粒子径を測定することにより得られた値である。
【0016】
PE粒子の材料としては、
前記のとおり超高分子量PE(UHMWPE)を用いる。PEには、中密度PE(MDPE)、高密度PE(HDPE)、高分子量PE(HMWPE)、超高分子量PE(UHMWPE)等
があるが、一般のMDPE等に比べ数倍以上の耐摩耗性を有しているUHMWPEが好ましい
からである。
【0017】
ウエザストリップ用摺動材は、ガラスの摺動性を高めるために、PPとEPDMとの合計100質量部に対して、さらに30質量部以下のシリコーン化合物を配合したものでもよい。シリコーン化合物の配合量を30質量部以下とするのは、ウエザストリップ用摺動材をウエザストリップのガラス摺接部位に用いるとき、そのガラス摺接部位とウエザストリップ本体との接着性を悪化させないためである。この場合、
(1)シリコーン化合物を前記二軸押出機に投入してPPと架橋前のEPDMとPE粒子とともに混練してもよいし、
(2)前記二軸押出機で得られたPE粒子が分散したオレフィン系TPVとシリコーン化合物とを新たに二軸押出機に投入して溶融混練してもよい。
【0018】
シリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーンガム、シリコーン系共重合体等を例示することができる。
【0019】
なお、ウエザストリップ用摺動材には、EPDMを架橋するための薬品(架橋剤、架橋促進剤等)を適宜配合することは言うまでもなく、さらに他の配合物を適宜配合することもできる。他の配合物としては、相溶化剤、カーボンブラック、酸化防止剤、加工助剤、着色剤等を例示できる。
【0020】
製造されたウエザストリップ用摺動材は、静摩擦係数が0.4以下、動摩擦係数が0.2以下、且つ摺動抵抗が50000回で10.0N以下であることが好ましく、摺動抵抗が50000回で5.0N以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明の摺動材の用途
は、前記のとおり、窓枠部に取り付けられてガラスが摺接するガラスラン、インナーウエザストリップ
又はアウターウエザストリップ
のガラス摺接部位の成形
である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、摩擦係数、摺動抵抗、摩耗量等が小さく、摺動性の良いウエザストリップ
のガラス摺接部位用摺動材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例に係るウエザストリップ用摺動材の製造方法を示し、(a)はPPと架橋前のEPDMとPE粒子とを二軸押出機に投入して溶融混合するときの概略図、(b)は(a)で得られたPE粒子が分散したオレフィン系TPVのペレットとシリコーン化合物とを新たに二軸押出機に投入して溶融混練するときの概略図、(c)は(b)で得られたウエザストリップ用摺動材の組織を示す模式図である。
【
図2】(a1)は摩耗試験の側面図、(a2)は摩耗試験後の試験片の断面図、(b1)は摺動抵抗測定の側面図、(b2)は摺動抵抗測定の平面図である。
【
図3】実施例のウエザストリップ用摺動材をガラスとの摺接部位に用いて成形した、(a)はガラスランの断面図、(b)はインナーウエザストリップ及びアウターウエザストリップの断面図である。
【
図4】従来例に係るウエザストリップ用摺動材の製造方法を示し、(a)は架橋後のオレフィン系TPVとPE粒子とを二軸押出機に投入して溶融混合するときの概略図、(b)は(a)で得られたウエザストリップ用摺動材の組織を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
PPと架橋前のEPDMとPE粒子とを二軸押出機に投入して溶融混練しながらEPDMを動的架橋することにより、PE粒子が分散したオレフィン系TPVよりなるウエザストリップ用摺動材を製造する。PPとEPDMとの合計100質量部に対して、PE粒子の配合量を10〜90質量部とする。PE粒子の平均粒径は、投入前に30〜200μmであり、溶融混練で微細化し、製造されたウエザストリップ用摺動材中において10〜50μmであることが好ましい。PE粒子の材料は、超高分子量PEが好ましい。
【0025】
ウエザストリップ用摺動材は、PPとEPDMとの合計100質量部に対して、さらに30質量部以下のシリコーン化合物を配合したものでもよい。シリコーン化合物は前記二軸押出機に投入してPPと架橋前のEPDMとPE粒子とともに混練することができる。または、前記二軸押出機で得られたPE粒子が分散したオレフィン系TPVとシリコーン化合物とを新たに二軸押出機に投入して溶融混練することもできる。
【実施例】
【0026】
次の表1に示す配合組成の実施例1〜7及び比較例1の各オレフィン系TPV(ウエザストリップ用摺動材)を作製した。配合数値は、PPとEPDMとの合計を100質量部とし、それに対する他の材料の質量部を示した。
【0027】
【0028】
ここで、各材料の詳細は次のとおりである。
・PP:ブロックPP、日本ポリプロ株式会社の商品名「ノバテックPP EC7」
・EPDM:JSR株式会社の商品名「EP98」
・PE粒子:UHMWPE粒子、三井化学株式会社の商品名「ハイゼックスミリオン240S」(平均分子量約200万、平均粒径約120μm)
・相溶化剤:三井化学株式会社の商品名「タフマー7080」
・カーボンブラック:カーボンブラックマスターバッチ(MB)、三福工業株式会社の商品名「MFP−CB45L」
・架橋剤:フェノール樹脂、田岡化学工業株式会社の商品名「タッキロール250I」
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社の商品名「IRGANOX1010」
・シリコーン化合物:ペレット状シリコーン、東レ・ダウコーニング株式会社の商品名「BY27−001」
【0029】
次の2つのステップにより、実施例1〜7及び比較例1の各オレフィン系TPVを作製した。
(1)PE粒子が分散したオレフィン系TPVの作製ステップ
図1(a)に示すように、二軸押出機10の基端の第1ホッパ11に、PPと架橋前のEPDMとを相溶化剤、カーボンブラック、架橋剤及び酸化防止剤とともに投入し、その隣の第2ホッパ12(二軸押出機の軸長の前半部にある)にPE粒子を投入して、二軸押出機10を通る過程で二軸の回転によるせん断によりPPと架橋前のEPDMとPE粒子とを溶融混練しながらEPDMを動的架橋することにより、PE粒子が分散したオレフィン系TPV1を押し出した。そして、このオレフィン系TPV1をペレット化した。
なお、第1ホッパ11に、これらの材料をまとめて投入してもよい。
【0030】
(2)さらにシリコーン化合物を含むオレフィン系TPVの作製ステップ
図1(b)に示すように、前記二軸押出機10で得られたオレフィン系TPV1のペレットを、新たに二軸押出機20の基端の第1ホッパ21に投入し、その隣の第2ホッパ22にシリコーン化合物を投入して、これらを混練し、シリコーン化合物を含むオレフィン系TPV2を押し出した。
なお、第1ホッパ21に、これらの材料をまとめて投入してもよい。
【0031】
図1(c)に、作製した実施例1〜7のオレフィン系TPV2の組織を拡大して模式的に示す。実施例1〜7のオレフィン系TPV2は、マトリックス(海相)であるPP3中にEPDM4がドメイン(島相)として分散した海島構造をなし、さらにPE粒子5が分散していた。前述した
図4(b)の従来例と比べ、EPDM4も、PE粒子5も分散性がよかった。また、PE粒子5の平均粒径は、投入前に約120μmであったものが、溶融混練で微細化し、作製されたオレフィン系TPV2中においては約50μmでありしかも均一化していた。
【0032】
実施例1〜7及び比較例1の各オレフィン系TPVの常態物性を、次のように試験・測定して評価し、上記の表1に記した。
【0033】
1.引張強度及び伸び
JIS K6251に準拠し、常温で引張試験を行い、引張強度と伸び(切断時伸び)を測定した。引張強度は6.0MPa以上を「良」、6.0MPa未満を「不可」と評価した。伸びは70%以上を「良」、70%未満を「不可」と評価した。
【0034】
2.静摩擦係数、動摩擦係数
JIS K7125に準拠し、100mm/分で移動させたときの荷重から算出した。静摩擦係数は0.4以下を「良」、0.4超を「不可」と評価した。動摩擦係数は0.2以下を「良」、0.2超を「不可」と評価した。
【0035】
3.摺動抵抗
図2(a1)(a2)に示すように、オレフィン系TPV2で成形した幅5mm、長さ160mm、厚さ2mmの試験片2aを作製し、試験片2aを保持具15の上に取り付け、試験機にセットした。板状で摺動方向長さ30mmのガラス製摩耗子16を試験片2aに載せ、10Nの荷重を加え、試験片2aの表面をその長さ方向に摺動速度150mm/秒で往復摺動させた。往復摺動回数50000回目の水平方向の荷重を測定して摺動抵抗の値とした。摺動抵抗は10N以下を「良」、10N超を「不可」と評価した。
【0036】
4.ガラスによる磨耗量
図2(b1)に示すように、オレフィン系TPV2で成形した幅20mm、長さ160mm、厚さ2mmの試験片2bを作製し、試験片2bを保持具17の上に取り付け、試験機にセットした。底面が幅50mm×摺動方向長さ20mm(R10mm付)のガラス製摩耗子18を試験片2bに載せ、30Nの荷重を加え、試験片2bの表面をその長さ方向に摺動速度60回/分で往復摺動させた。
図2(b2)に示すように、往復10000回摺動後の試験片2bの磨耗量(mm)を測定した。摩耗量は0.10mm以下を「良」、0.10mm超〜0.11mm以下を「可」、0.11mm超を「不可」と評価した。
【0037】
実施例1〜7の各オレフィン系TPV2は、例えば、
図3の(a)に示すようなガラスラン31や、(b)に示すようなインナーウエザストリップ32及びアウターウエザストリップ33の、ガラス40との摺接部位に、ウエザストリップ用摺動材として用いることができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)実施例ではシリコーン化合物を2ステップ目で混練したが、シリコーン化合物を1ステップ目の二軸押出機10に投入して前記PPと架橋前のEPDMとPE粒子とともに混練してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 オレフィン系TPV
2 オレフィン系TPV(シリコーン化合物を含む)
2a 試験片
2b 試験片
3 PP
4 EPDM
5 PE粒子
10 二軸押出機
11 第1ホッパ
12 第2ホッパ
15 保持具
16 ガラス製摩耗子
17 保持具
18 ガラス製摩耗子
20 二軸押出機
21 第1ホッパ
22 第2ホッパ
31 ガラスラン
32 インナウエザストリップ
33 アウタウエザストリップ