特許第6269934号(P6269934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269934
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】振幅検出回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/153 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   H03K5/153 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-265547(P2013-265547)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-122637(P2015-122637A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野々山 淳
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−081107(JP,A)
【文献】 特開昭53−081221(JP,A)
【文献】 実開昭51−154145(JP,U)
【文献】 特開2007−255909(JP,A)
【文献】 特開2000−013193(JP,A)
【文献】 特開2006−148515(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0143435(US,A1)
【文献】 特開昭60−027221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の振幅に対応した出力信号を出力する振幅検出回路であって、
上昇電圧と下降電圧とを制御信号に基づいて切り替えて前記出力信号として出力する昇降電圧生成回路と、
前記入力信号と前記出力信号とを比較する第1比較器と、
上昇電圧を出力する上昇電圧生成回路と、
前記第1比較器の比較結果に応じて前記上昇電圧生成回路の出力電圧を基準電位に固定するスイッチと、
前記上昇電圧生成回路の出力電圧と参照電圧とを比較し、比較結果を前記制御信号として出力する第2比較器と、
を備えたことを特徴とする振幅検出回路。
【請求項2】
前記昇降電圧生成回路は、定電圧電源と、前記電源からの供給電圧を前記制御信号に応じてオンオフするスイッチと、前記上昇電圧および前記下降電圧の時定数を定める抵抗とコンデンサとを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の振幅検出回路。
【請求項3】
前記上昇電圧生成回路は、定電圧電源と、前記上昇電圧の時定数を定める抵抗とコンデンサとを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の振幅検出回路。
【請求項4】
前記昇降電圧生成回路は、定電流電源と、前記定電流電源からの供給電流を前記制御信号に応じてオンオフするスイッチと、前記上昇電圧および前記下降電圧の時定数を定める抵抗とコンデンサとを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の振幅検出回路。
【請求項5】
前記上昇電圧生成回路は、定電流電源とコンデンサとを含んでいることを特徴とする請求項1または4に記載の振幅検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅検出回路に関し、特に、低電源電圧で安定に動作する振幅検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号の振幅の大きさに応じた信号を出力する振幅検出回路として、従来から種々の方式が提案されている。図6(a)は、従来の振幅検出回路の第1例を示す図である。本図の回路例では、入力電圧VINを、演算増幅器AMPの非反転入力端子に入力する。そして、コレクタに電圧VCCを印加したトランジスタQのベースに演算増幅器AMPの出力を入力し、トランジスタQのエミッタを、演算増幅器AMPの反転入力端子に接続する。さらに、トランジスタQのエミッタには、並列接続の抵抗RとコンデンサCとを接続し、抵抗Rに生じる電圧を出力電圧VOUTとする。
【0003】
入力電圧VINの電圧がコンデンサCの電圧よりも高いときは、トランジスタQが導通状態となって、コンデンサCは入力電圧VINに追従して充電される。入力電圧VINの電圧がコンデンサCの電圧よりも小さくなるとトランジスタQがオフ状態となり、コンデンサCの放電により出力電圧VOUTは時定数CRで下降する。時定数CRを入力電圧VINの周期よりも十分長く設計しておくことで、図6(b)に示すように、出力電圧VOUTは入力電圧VINの振幅に近い電圧を保持することになる。
【0004】
図7(a)は、従来の振幅検出回路の第2例を示す図である。本図の回路例では、演算増幅器AMPの出力に接続されたダイオードD2は、反転入力端子に入力される入力電圧VINが負のときだけ導通状態となるため、LPFの入力電圧VLは、図7(b)に示すように、半波整流波となり、その振幅は入力電圧VINの振幅×(−RF/RS)となる。この電圧VLをLPFでフィルタリングすると、入力電圧VINの振幅に応じた値の直流電圧VOUTが得られる。
【0005】
図8(a)は、従来の振幅検出回路の第3例を示す図である。本図の回路例はアナログ乗算器を用いた方式である。乗算器の2つの入力端子の両方に入力電圧VINを入力するため、図8(b)に示すように、乗算器の出力電圧VLは入力電圧VINの2乗に比例する。この電圧VLをLPFでフィルタリングすると、入力電圧VINの振幅に応じた値の直流電圧VOUTが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−122041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6(a)、図7(a)に示した回路は、いずれも演算増幅器Ampを用いたフィードバック方式であり、フィードバックループにおける位相回転より発振するおそれがあり、動作の安定性が十分に高いとはいえない。また、図8(a)に示した回路は、アナログ乗算器を用いているため、比較的高い電源電圧を必要とし、低消費電力が要求される装置への適用には向いていない。
【0008】
そこで、本発明は、低電源電圧で安定に動作する振幅検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の振幅検出回路は、入力信号の振幅に対応した出力信号を出力する振幅検出回路であって、上昇電圧と下降電圧とを制御信号に基づいて切り替えて前記出力信号として出力する昇降電圧生成回路と、前記入力信号と前記出力信号とを比較する第1比較器と、上昇電圧を出力する上昇電圧生成回路と、前記第1比較器の比較結果に応じて前記上昇電圧生成回路の出力電圧を基準電位に固定するスイッチと、前記上昇電圧生成回路の出力電圧と参照電圧とを比較し、比較結果を前記制御信号として出力する第2比較器と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記昇降電圧生成回路は、定電圧電源と、前記電源からの供給電圧を前記制御信号に応じてオンオフするスイッチと、前記上昇電圧および前記下降電圧の時定数を定める抵抗とコンデンサとを含めることができる。
また、前記上昇電圧生成回路は、定電圧電源と、前記上昇電圧の時定数を定める抵抗とコンデンサとを含めることができる。
あるいは、前記昇降電圧生成回路は、定電流電源と、前記定電流電源からの供給電流を前記制御信号に応じてオンオフするスイッチと、前記上昇電圧および前記下降電圧の時定数を定める抵抗とコンデンサとを含めることができる。
また、前記上昇電圧生成回路は、定電流電源とコンデンサとを含めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低電源電圧で安定に動作する振幅検出回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る振幅検出回路の構成を示す図である。
図2】振幅検出回路の動作を説明するタイミング図である。
図3】振幅検出回路における昇降電圧生成回路と上昇電圧生成回路と参照電圧Vrefの具体的な回路例を示す図である。
図4】振幅検出回路における昇降電圧生成回路と上昇電圧生成回路と参照電圧Vrefの具体的な回路の別例を示す図である。
図5】振幅検出回路の適用例を示す図である。
図6】従来の振幅検出回路の第1例を説明する図である。
図7】従来の振幅検出回路の第2例を説明する図である。
図8】従来の振幅検出回路の第3例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る振幅検出回路の構成を示す図である。本図に示すように、振幅検出回路100は、コンパレータCMP1と、コンパレータCMP2と、スイッチSW1と、昇降電圧生成回路110と、上昇電圧生成回路120と、参照電圧Vrefを出力する電源とを備えて構成される。
【0013】
コンパレータCMP1の正端子には、振幅検出対象である入力電圧VINが入力される。コンパレータCMP1の負端子には昇降電圧生成回路110からの出力電圧が印加され、この負端子の電圧を振幅検出結果である出力電圧VOUTとする。
【0014】
昇降電圧生成回路110は、コンパレータCMP2の出力信号がHのとき、時定数τ1で上昇し、コンパレータCMP2の出力信号がLのとき、時定数τ2で下降する電圧を生成する回路である。
【0015】
コンパレータCMP2の負端子には上昇電圧生成回路120からの出力電圧が印加される。上昇電圧生成回路120は、スイッチSW1がオフ状態のときに、時定数τ3で上昇する電圧を生成する回路である。この電圧は、スイッチSW1がオン状態になると基準電位GNDに固定される。スイッチSW1は、コンパレータCMP1の出力がHのときにオンとなり、コンパレータCMP1の出力がLのときにオフとなる。なお、スイッチSW1のオン時に上昇電圧生成回路120から過電流が流れないように保護機能を付加するようにしてもよい。
【0016】
コンパレータCMP2の正端子には参照電圧Vrefが印加され、出力信号は、上述のように昇降電圧生成回路110の上昇電圧生成動作を制御する。具体的には、上昇電圧生成回路120の電圧が参照電圧Vrefよりも低ければ、昇降電圧生成回路110は電圧上昇動作を行ない、上昇電圧生成回路120の電圧が参照電圧Vrefよりも高ければ、昇降電圧生成回路110は電圧下降動作を行なう。
【0017】
この構成の振幅検出回路100の動作について図2のタイミング図を参照して説明する。
【0018】
時刻t1で、入力電圧VINが出力電圧VOUTよりも高くなると、コンパレータCMP1の出力がHとなり、SW1をオン状態にする。このため、コンパレータCMP2の負端子は基準電位GNDとなり、コンパレータCMP2はHを出力する。これにより、昇降電圧生成回路110が電圧上昇動作を行ない、出力電圧VOUTが時定数τ1で上昇していく。
【0019】
時刻t2で、出力電圧VOUTが入力電圧VINよりも高くなると、コンパレータCMP1の出力がLとなり、SW1をオフ状態にする。上昇電圧生成回路120の動作により、コンパレータCMP2の負端子電圧が時定数τ3で上昇していく。しかしながら、基準電圧Vrefには達せず、コンパレータCMP2はHを維持し、出力電圧VOUTは上昇を続ける。
【0020】
時刻t3で、再度、入力電圧VINが出力電圧VOUTよりも高くなると、コンパレータCMP1の出力がHとなり、SW1をオン状態にする。このため、上昇していたコンパレータCMP2負端子は基準電位GNDに落ちる。コンパレータCMP2はHを維持するため、出力電圧VOUTは継続して上昇していく。
【0021】
その後、スイッチSW1のオフオンが繰り返されるが、出力電圧VOUTの値が高くなるにつれてオンの時間が短くなっていく。そして、時刻t4で出力電圧VOUTが入力電圧VINの振幅を超えると、スイッチSW1のオフ状態が継続するため、上昇電圧生成回路120の動作により、コンパレータCMP2の負端子電圧が上昇し続ける。
【0022】
時刻t5で、コンパレータCMP2の負端子電圧が正端子の参照電圧Vrefを超えると、コンパレータCMP2の出力がLとなる。これにより、昇降電圧生成回路110が電圧下降動作に切り替わり、出力電圧VOUTは、時定数τ2で下降していく。
【0023】
時刻t6で出力電圧VOUTが入力電圧VINの振幅を下回ると、コンパレータCMP1の出力がHとなり、SW1をオン状態にする。このため、コンパレータCMP2負端子は基準電位GNDにリセットされ、コンパレータCMP2はHを出力する。これにより、昇降電圧生成回路110が電圧上昇動作に切り替わる。
【0024】
出力電圧VOUTは、入力電圧VINの振幅付近から上昇するため、時刻t7ですぐに入力電圧VINの振幅を超え、時刻t4以降の動作を繰り返すことになる。
【0025】
この結果、出力電圧VOUTは、入力電圧VINの振幅付近の電圧で安定的に上昇下降を繰り返すことになる。すなわち、入力電圧VINの振幅に応じた値の電圧を得ることができる。出力電圧VOUTをLPFでフィルタリングしてリプルの含まれない直流電圧を得るようにしてもよい。
【0026】
このように、本実施形態の振幅検出回路100は、2つのコンパレータを用いることにより、演算増幅器を含んだフィードバック回路を利用せずに振幅を検出するため、発振のおそれがなく安定的に動作することができる。また、乗算器を用いていないため、低電圧電源で動作することが可能である。
【0027】
さらに、コンパレータの帯域は、入力電圧VINの周波数に対応しておれば十分であり、演算増幅器を含んだフィードバック回路のように広い帯域を確保する必要がない。一般に、帯域と消費電流はトレードオフの関係にあるため、本実施形態の振幅検出回路100では、消費電流を低減することができ、消費電力を一層削減することができる。
【0028】
図3は、振幅検出回路100における昇降電圧生成回路110と上昇電圧生成回路120と参照電圧Vrefの具体的な回路例を示す図である。
【0029】
本図の例では、定電圧電源V1を用い、電圧V1を抵抗R4と抵抗R5で分圧することにより参照電圧Vrefを生成している。
【0030】
昇降電圧生成回路110は、定電圧電源V1、コンパレータCMP2の出力でオンオフするスイッチSW2、並列接続の抵抗R1とコンデンサC1、抵抗R2で構成している。この場合、抵抗R1の電圧が昇降電圧生成回路110の出力としてコンパレータCMP1の負端子に印加されることになる。
【0031】
スイッチSW2がオンのとき、昇降電圧生成回路110の出力電圧は、時定数τ1=C1・R1・R2/(R1+R2)で、電圧V1×R1/(R1+R2)に向かって上昇する。このため、電圧V1×R1/(R1+R2)が入力電圧VINの振幅よりも高くなるように設計する。また、スイッチSW2がオフのとき、昇降電圧生成回路110の出力電圧は、時定数τ2=C1・R1で、基準電位GNDに向かって下降する。
【0032】
上昇電圧生成回路120は、電源電圧V1、抵抗R3、コンデンサC2で構成している。この場合、コンデンサC2の電圧が上昇電圧生成回路120の出力としてコンパレータCMP2の負端子に印加されることになる。
【0033】
SW1がオフのとき、上昇電圧生成回路120の出力電圧は、時定数R3・C2で電圧V1に向かって上昇する。また、スイッチSW1がオフになると、コンデンサC2は一気に放電し、基準電位GNDとなる。
【0034】
図4は、振幅検出回路100における昇降電圧生成回路110と上昇電圧生成回路120と参照電圧Vrefの具体的な回路の別例を示す図である。本図の例では、定電圧電源Vrefで参照電圧Vrefを生成している。
【0035】
昇降電圧生成回路110は、定電流源A1、コンパレータCMP2の出力でオンオフするスイッチSW3、並列接続の抵抗R6とコンデンサC2で構成している。この場合、抵抗R6の電圧が昇降電圧生成回路110の出力としてコンパレータCMP1の負端子に印加されることになる。
【0036】
上昇電圧生成回路120は、定電流源A2、コンデンサC4で構成している。この場合、コンデンサC4の電圧が上昇電圧生成回路120の出力としてコンパレータCMP2の負端子に印加されることになる。
【0037】
図5は、本実施形態の振幅検出回路100の適用例を示す図である。本例は、圧力等の物理量に依存した電流を出力する物理量センサ210の出力を増幅して、駆動端子に正帰還をかけることで自励振を起こさせる自励振回路200に振幅検出回路100を適用した場合を示している。
【0038】
本例では、振幅検出回路100の出力と参照電圧Vrefとの差を誤差検出アンプAMP3で検出し、検出された誤差に応じて可変利得増幅器AMP2の出力を制御するようにしている。なお、物理量センサ210が電圧出力型の場合は、増幅器AMP1を電圧入力型に変更すればよい。
【符号の説明】
【0039】
100…振幅検出回路、110…昇降電圧生成回路、120…上昇電圧生成回路、200…自励振回路、210…物理量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8