特許第6269937号(P6269937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6269937複数熱源蓄熱材によるバイナリー発電装置及びその制御方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269937
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】複数熱源蓄熱材によるバイナリー発電装置及びその制御方法。
(51)【国際特許分類】
   F01K 3/02 20060101AFI20180122BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20180122BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20180122BHJP
   F01K 13/02 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   F01K3/02 C
   F01K27/02 C
   F01K25/10 C
   F01K13/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-16957(P2014-16957)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143496(P2015-143496A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 清
(72)【発明者】
【氏名】坪井 伸貴
(72)【発明者】
【氏名】新屋 文隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 益男
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−033902(JP,U)
【文献】 特開2010−174845(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/014027(WO,A1)
【文献】 特開昭59−190408(JP,A)
【文献】 特開昭64−063610(JP,A)
【文献】 米国特許第6490866(US,B1)
【文献】 米国特許第4135665(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/02
F01K 13/02
F01K 25/10
F01K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却排ガス又は焼却排ガスと熱交換して得られた高温空気による高温熱源に含まれる熱エネルギー、及び前記焼却排ガスを湿式洗浄した洗浄排水による低温熱源に含まれる熱エネルギーを利用する複数熱源発電装置であって、前記低温熱源に含まれる熱エネルギーを蓄熱する低温蓄熱手段、前記高温熱源に含まれる熱エネルギーを蓄熱する高温蓄熱手段、前記低温熱源から前記低温蓄熱手段に、及び前記高温熱源から前記高温蓄熱手段に、それぞれ熱エネルギーを伝達する熱エネルギー伝達手段(1)、前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段からそれぞれ前記複数熱源発電装置に熱エネルギーを伝達する熱エネルギー伝達手段(2)、前記熱エネルギー伝達手段(1)又は(2)のいずれかを選択し前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段の蓄熱、放熱を切り換える手段と、を備え、
前記高温蓄熱手段は、高温熱源で操作可能な蓄熱材を使用し、前記エネルギー伝達手段(1)を介して供給される前記高温熱源に含まれる熱エネルギーを、前記高温熱源で操作可能な蓄熱材に蓄熱し、前記熱エネルギー伝達手段(2)を介して前記高温熱源で操作可能な蓄熱材に蓄積された熱エネルギーを回収し、
前記低温蓄熱手段は、低温熱源で操作可能な蓄熱材を使用し、前記エネルギー伝達手段(1)を介して供給される前記低温熱源に含まれる熱エネルギーを、前記前記低温熱源で操作可能な蓄熱材に蓄熱し、前記熱エネルギー伝達手段(2)を介して前記低温熱源で操作可能な蓄熱材に蓄積された熱エネルギーを回収する
ことを特徴とする複数熱源発電装置。
【請求項2】
前記高温熱源と複数熱源発電装置との間及び/又は低温熱源と複数熱源発電装置との間、にそれぞれ熱回収手段を設け、前記伝達手段(1)は、該熱回収手段で回収された熱エネルギーを前記高温蓄熱手段又は前記低温蓄熱手段へ伝達するものである請求項1記載の複数熱源発電装置。
【請求項3】
焼却排ガス又は焼却排ガスと熱交換して得られた高温空気による高温熱源に含まれる熱エネルギー、及び前記焼却ガスを湿式洗浄した洗浄排水による低温熱源に含まれる熱エネルギーを利用する複数熱源発電装置において、予め設定された熱エネルギーを、低温熱源で操作可能な蓄熱材を使用した低温蓄熱手段、及び高温熱源で操作可能な蓄熱材を使用した高温蓄熱手段に蓄熱しておき、前記焼却排ガスを発生させる施設、前記焼却排高温ガスを湿式洗浄する施設を含むプラント全体の消費電力量が所定値を超える期間、前記プラントの消費電力量が所定値を超えないように、前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段に蓄熱されている低温熱エネルギー及び高温熱エネルギーを前記複数熱源発電装置の低温熱源及び高温熱源として利用することを特徴とする複数熱源発電装置の制御方法。
【請求項4】
前記高温熱源に含まれる熱エネルギー及び/又は低温熱源に含まれる熱エネルギーをそれぞれ熱回収手段により回収し、該熱回収手段で回収された熱エネルギーを前記高温蓄熱手段又は前記低温蓄熱手段へ伝達する請求項3記載の複数熱源発電装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数熱源蓄熱材を利用するバイナリー発電装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を背景に、再生エネルギーの利用が急速に広がっており、我が国の下水道処理施設においても再生可能エネルギーを利用した分散型電源の導入が進められ、さらに、震災などの災害時における非常用電源の確保という観点から自立型電力供給システムへの要求も高まっている。
【0003】
また、近年、電力の需給状況がひっ迫していることから、夏季、冬季の昼間のピークカットが求められ、需要者も維持管理費増大に対応した最大限の経費削減が求められている。
【0004】
このような背景下、下水処理施設からの汚泥や都市廃棄物は毎年大量に発生しており、温室効果ガス削減の観点から、処理施設で発生する廃熱を如何に効率よく回収できるかが課題となっている。
【0005】
下水処理施設からの汚泥や都市廃棄物は、有機物の含有量が多いので、焼却処理されることが多い。しかし、焼却炉排ガス中には硫黄酸化物や塩化水素などの有害ガスが含まれるため、湿式洗浄され、有害ガスが除去された排ガスが大気中に放出される。
【0006】
湿式洗浄により燃焼排ガスは約40〜50℃に冷却される一方、洗浄水は燃焼排ガスとの接触により昇温され、また、燃焼排ガスに含まれる水蒸気の大部分がここで凝縮されその潜熱が洗浄水に吸収されるため、洗浄工程では大量の温排水が発生し、排煙洗浄工程に送られる燃焼炉排ガスに含まれる熱エネルギーの大部分は、かかる50〜80℃程度の温排水として回収される。
【0007】
このような比較的低温度の熱源を電気のような再利用可能エネルギーに変換するため、特許文献1では、液体アンモニアなどの低沸点物質を作動流体としてタービンを駆動する発電装置を使用することが提案され、注目されている。
【0008】
また、燃焼炉からの排出直後の高温燃焼ガスが保有する高温の熱源は、燃焼用空気、流動床用空気、白煙防止用ガスなどを昇温して熱回収されている。
【0009】
本発明者らは、排煙洗浄工程から排出される比較的低温の洗浄排水に代表される低温熱源と、燃焼炉からの排出高温燃焼ガスに代表される高温熱源とのバランスを取りながら、効率よく発電を行う制御装置、制御方法を提案した(特許文献2)。
【0010】
しかし、下水処理施設からの汚泥や都市廃棄物の焼却処理設備に付設される、脱水処理などの自動化が困難な操作は、人手が確保しやすい昼間に行われるので、脱水機などの運転が行われない夜間と比べ昼間の電力消費量が多くなってしまい、下水処理施設における電力使用量の平準化という要請に応えられていなかった。
【0011】
このような要請に応えるため、不使用電力を蓄電し、発電設備で発生する廃熱を熱エネルギーとして蓄熱しておき、電力の負荷変動に対応し、電力の平準化とネルギーの有効利用を図ることが提案されている(特許文献3、4)。
【0012】
しかし、従来の蓄熱発電装置は、いずれも熱源と蓄熱材が一つであるため、発電効率が悪いという問題があった。また、蓄熱材についても種々の温度域で利用可能な蓄熱材が各種開発されているが、利用温度の異なる蓄熱材を利用するシステムはこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平09−032513号公報
【特許文献2】特願2013−115560号公報
【特許文献3】特開2003−074374号公報
【特許文献4】特開平06−129211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、発電効率を高めると共に、発電システムの発電量を下水処理施設のデマンドに応じて制御し得る発電システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施態様は、以下の通りである。
〔1〕高温ガスによる高温熱源に含まれる熱エネルギー、及び該高温ガスを湿式洗浄した洗浄排水による低温熱源に含まれる熱エネルギーを利用する複数熱源発電装置において、さらに、前記低温熱源に含まれる熱エネルギーを蓄熱する低温蓄熱手段、前記高温熱源に含まれる熱エネルギーを蓄熱する高温蓄熱手段、前記低温熱源から前記低温蓄熱手段に、及び前記高温熱源から前記高温蓄熱手段に、それぞれ熱エネルギーを伝達する熱エネルギー伝達手段(1)、前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段からそれぞれ前記複数熱源発電装置に熱エネルギーを伝達する熱エネルギー伝達手段(2)、前記熱エネルギー伝達手段(1)又は(2)のいずれかを選択し前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段の蓄熱、放熱を切り換える手段、を備えたことを特徴とする複数熱源発電装置。
〔2〕前記高温熱源と複数熱源発電装置との間及び/又は低温熱源と複数熱源発電装置との間、にそれぞれ熱回収手段を設け、前記伝達手段(1)は、該熱回収手段で回収された熱エネルギーを前記高温蓄熱手段又は前記低温蓄熱手段へ伝達するものである〔1〕の複数熱源発電装置。
〔3〕高温ガスによる高温熱源に含まれる熱エネルギー、及び該高温ガスを湿式洗浄した洗浄排水による低温熱源に含まれる熱エネルギーを利用する複数熱源発電装置において、予め設定された熱エネルギーを低温蓄熱手段、及び高温蓄熱手段に蓄熱しておき、所定の期間、前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段に蓄熱されている低温熱エネルギー及び高温熱エネルギーを前記複数熱源発電装置の低温熱源及び高温熱源として利用することを特徴とする複数熱源発電装置の制御方法。
〔4〕前記高温熱源に含まれる熱エネルギー及び/又は低温熱源に含まれる熱エネルギーをそれぞれ熱回収手段により回収し、該熱回収手段で回収された熱エネルギーを前記高温蓄熱手段又は前記低温蓄熱手段へ伝達する〔3〕の複数熱源発電装置の制御方法。
〔5〕所定の期間が、高温ガスを発生させる施設、該高温ガスを湿式洗浄する施設を含むプラント全体の消費電力量が所定値を超える期間であり、前記プラントの消費電力量が所定値を超えないように、前記低温蓄熱手段に蓄熱されている低温熱エネルギー及び/又は前記高温蓄熱手段に蓄熱されている高温熱エネルギーを前記複数熱源発電装置の低温熱源及び高温熱源として利用することを特徴とする〔3〕又は〔4〕の複数熱源発電装置の制御方法。
【0016】
本発明でいう「高温ガス」とは、下水処理施設における汚泥焼却炉などから排出される燃焼排ガス、あるいはこれらの燃焼排ガスと熱交換して得られる高温空気などの百度以上の高温ガスをいい、白煙防止用空気、燃焼用空気、流動燃焼器における流動用空気が例示される。
【0017】
本発明でいう「洗浄排水」とは、前記高温ガスと洗浄水を直接接触させ、前記高温ガスを洗浄あるいは冷却する設備から排出される昇温された洗浄排水をいう。
【0018】
本発明でいう「複数熱源発電装置」とは、前記特許文献2に記載される2熱バイナリー発電装置のように、異なる温度の複数の熱源を利用する発電装置をいう。作動流体としてアンモニアやフロンなどの低沸点物質を用いたもの、熱サイクルも、カリーナサイクル方式やランキンサイクル方式のものが、本発明に利用できる。
【0019】
本発明で使用される蓄熱手段とは、それぞれ低温熱源、高温熱源で操作可能な蓄熱材を使用した蓄熱装置を意味する。
低温蓄熱装置の蓄熱材としては、溶融凝固時の潜熱を利用する、パラフィンC18〜C30(操作温度:30〜60℃)、キシリトール(操作温度:94℃)が例示でき、高温蓄熱装置の蓄熱材としては、水和脱水反応時の給放熱を利用するマグネシウム(操作温度:350℃)、カルシウム(操作温度:500℃)が例示できる。
【0020】
本発明でいう「熱エネルギー伝達手段(1)」とは、高温ガスによる高温熱源に含まれる熱エネルギー、及び高温ガスを湿式洗浄した洗浄排水による低温熱源に含まれる熱エネルギーを、夫々高温蓄熱装置、低温蓄熱装置に伝達するもので、具体的には、図1において、燃焼排ガス、あるいはこれらの燃焼排ガスと熱交換して得られる高温空気、および該高温空気を、高温蓄熱装置7に導入する配管23、および洗浄塔4において燃焼排ガスを洗浄冷却して排出される洗浄温排水、および該洗浄排水を低温蓄熱装置6に導入する配管21がこれに当たる。
【0021】
本発明でいう「熱エネルギー伝達手段(2)」とは、前記高温蓄熱装置及び低温蓄熱装置に蓄熱された熱エネルギーを回収し、前記複数熱源発電装置で熱源として利用するよう伝達するもので、具体的には、図1において、各蓄熱装置6,7に流入させる前記各蓄熱装置の蓄熱材より低温の流体、および前記蓄熱材から熱エネルギーを回収して昇温した流体を前記複数熱源発電装置の蒸発器53や蒸気過熱器55に導入させる配管26、28がこれに当たる。
前記熱エネルギー伝達手段(2)によって高温蓄熱装置7に導入される流体としては、高温蓄熱装置7で蓄熱された蓄熱材よりも低温の流体であれば種類を問わないが、常温の空気(外気)が簡便に使用できる。
また、前記熱エネルギー伝達手段(2)によって低温蓄熱装置6に導入される流体も、低温蓄熱装置6で蓄熱された蓄熱材よりも低温の流体であれば種類を問わず、水道水のほか、各部署からの低温排水、例えば前記複数熱源発電装置5の蒸発器53において、作動媒体の蒸発のために顕熱が奪われ降温した循環水が利用できる。
【0022】
本発明でいう「前記低温蓄熱手段及び前記高温蓄熱手段の蓄熱、放熱を切り換える手段」とは、前記高温蓄熱装置7及び前記低温蓄熱装置6に流入する流体を、蓄熱のための高温流体か、放熱のための低温流体のいずれかを選択的に切り換えるもので、前記高温流体と前記低温流体の各配管に設けられた開閉弁や、各配管を選択的に切り換える切換弁などが例示できる。
なお、各流体の配管には、前記蓄熱装置の蓄熱量や放熱量を調整することができるよう、各流体の流量の調節手段が設けておく必要がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の装置及び方法によれば、下水処理施設の電力使用量に応じて、複数熱源発電装置の発電量を制御することにより、下水処理施設の電力会社に対する最大需要電力をカットすることができ、下水処理施設の電力会社によって供給される電力使用量の均一化が図れ、複数の蓄熱を利用することにより従来の複数熱源発電装置の高い発電効率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施態様である汚泥焼却プラントにおけるフロー図
図2】本発明で使用される複数熱源発電装置のフロー図
図3】本発明の蓄熱、放熱操作の例を説明するグラフ
【0025】
符号の説明
1 流動焼却炉
2 余剰熱交換器
3 集塵装置
4 排ガス洗浄塔
5 複数熱源発電装置
6 低温蓄熱装置
7 高温蓄熱装置
8 ブロワー
9 煙突
10,11,12,13 弁
21,22,23,24,25,26,27,28 配管
51 ポンプ
52 再生器
53 蒸発器
54 分離器
55 蒸気過熱器
56 タービン発電機
57 吸収器
58 凝縮器
59 タンク
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施例を下水処理設備から排出される汚泥の焼却プラントで説明するが、本発明がこの実施例に限定されるものでない。
【0027】
図1は、下水処理設備から排出される汚泥の焼却プラントのフロー図で、本実施例のプラントは、流動焼却炉1、余剰熱交換器2、集塵装置3、排ガス洗浄塔4、複数熱源発電装置5、低温蓄熱装置6、高温蓄熱装置7を備える。
【0028】
下水処理設備(図示せず)からの含水率約98%の汚泥は、含水率70〜80%程度に脱水され流動焼却炉1に搬送され焼却される。焼却炉から排出される燃焼排ガスは硫黄酸化物や塩化水素などの有害ガスや粉塵を含んでいるので集塵装置3で除塵した後に排ガス洗浄塔4で有害ガスが除去され、清浄化された排ガスはブロワー8により煙突9に送られる。
【0029】
焼却炉から排出される排ガスは、800〜850℃程度の高温で、流動空気熱交換器によって熱交換された後、500℃〜600℃になり、更に、白煙防止用空気と熱交換しても約250〜350℃の温度なので、集塵装置3としては耐熱性に優れたセラミックフィルタを使用する。
【0030】
本実施例の排ガス洗浄塔4は、燃焼排ガス中に含まれるSOxやHClなどの有害成分を除去し、所定の温度まで冷却するため、塔内の充填層部で、洗浄水と気液接触させる。
洗浄塔4の最上段の充填層部には、後述する複数熱源発電装置5における作動媒体用冷却水(図1※1)が供給され、燃焼排ガスを所定温度まで冷却する。
下段の充填層部では循環洗浄水が、燃焼排ガスと気液接触して有害成分を除去するとともに、燃焼排ガスが保有する熱エネルギーを回収する。燃焼排ガス中の熱エネルギーを回収して昇温した循環水は、後述する複数熱源発電装置5及び/又は低温蓄熱装置6に送られ、洗浄排水による低温熱源に含まれる熱エネルギーが複数熱源発電装置5で回収されるか低温蓄熱装置6に蓄熱される。複数熱源発電装置5で熱エネルギーが回収され、あるいは低温蓄熱装置6に蓄熱されて、温度が低下した燃焼排ガス洗浄排水は燃焼排ガス洗浄塔4に還流され、再び燃焼排ガスの洗浄及び熱エネルギーの回収に利用される。
低温蓄熱装置6に蓄熱された熱エネルギーを放熱するには、弁10を閉止して、洗浄塔4からの昇温した循環水の低温蓄熱装置6への流入を止め、弁12を開き、複数熱源発電装置5の蒸発器53より流出する循環水の一部を低温蓄熱装置6へ導入し、前記低温蓄熱装置6の蓄熱材に蓄熱された熱エネルギーを回収し再び昇温させて、複数熱源発電装置5に還流させる。本実施例では、前記洗浄塔4からの循環水と合流させて複数熱源発電装置に還流しているが、別々に還流させてもよい。
【0031】
排ガス中に含まれる有害成分は、洗浄水としてアルカリ水溶液を使用することにより吸収除去することができる。洗浄水は循環使用され、洗浄水中に蓄積される有害成分は塩として引抜排水とともに排出され、新鮮なアルカリ水溶液を補給することで循環水中の塩濃度が一定に保たれる。
なお、洗浄排水中の有害成分により、直接、発電装置や蓄熱装置で使用すると不都合が生じる場合は、別に熱回収手段を設け、洗浄排水が保有する低温熱エネルギーを別の媒体に伝達し、該媒体を介して低温熱エネルギーを発電装置や蓄熱装置に送ればよい。
【0032】
本実施例では、流動燃焼炉から排出される燃焼排ガスと余剰熱交換器を用いて熱交換させて得られた約350〜400℃の高温空気の一部又は全量が、後述する複数熱源発電装置及び/又は高温蓄熱装置7に送られ、高温空気からなる高温熱源に含まれる高温熱エネルギーを回収及び/又は蓄熱させることができる。高温蓄熱装置7に蓄積された熱エネルギーを放熱するには、弁11を閉止して、余剰熱交換器2からの高温空気の高温蓄熱装置7への流入を止め、弁13を開き、余剰熱交換器2へ導入する常温空気の一部を高温蓄熱装置7へ導入し、前記高温蓄熱装置7の蓄熱材に蓄熱された熱エネルギーを回収し昇温させて、複数熱源発電装置5の蒸気過熱器55に流入させる。
なお、図1では、余剰熱交換器として、白煙防止用空気加熱器が例示されているが、これに限定されず、燃焼用空気予熱器、流動用空気予熱器からの高温空気の一部が利用可能である。
また、高温排ガスに有害成分や粉じんなどが含まれない場合は、高温排ガスを直接、発電装置や蓄熱装置に送るようにしてもよい。
【0033】
図2は、本実施例の複数熱源発電装置5のフロー図を示す。本実施例の複数熱源発電装置5は、ポンプ51、再生器52、蒸発器53、分離器54、蒸気過熱器55、タービン発電機56、吸収器57、凝縮器58、タンク59を備えている。
本実施例では、作動流体として沸点が−33℃の液体アンモニアと水との混合流体を使用している。
【0034】
タンク59内の液体アンモニアは、ポンプ51から高圧で蒸発器53に供給され、前記燃焼排ガス洗浄塔4からの昇温した循環水と熱交換し、循環水が保有する熱エネルギーにより加熱され一部が蒸発する。未蒸発の低濃度の液体アンモニアは分離器54にてアンモニアガスと分離され回収される。
【0035】
一方、蒸発器53で蒸発したアンモニアガスは、蒸気過熱器55にて白煙防止用高温空気と熱交換し、さらに昇温され温度が上がった状態でタービン発電機56に導入され、タービンを作動させてアンモニアガスの保有熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。すなわち、タービン前後のアンモニアガスの有効熱落差が大きいほど発電量も大きくなる。
【0036】
タービン発電機56から排出される、温度及び圧力が低下したアンモニアガスは前記分離器54にて回収された未蒸発の液体アンモニアと吸収器57にて混合され、凝縮器58で冷却されて凝縮し液体アンモニアとなり、タンク59に戻される。
【0037】
本実施例では、分離器54から回収された未蒸発液体アンモニアと蒸発器に供給される液体アンモニアとを再生器52にて熱交換させ蒸発器53に供給される液体アンモニアを予熱している。
【0038】
以上説明したようなプラントにおいて、電力会社から供給される電力量の具体的な制御方法を以下、図1を用いて説明する。
【0039】
<定常操業時>
弁12を閉じた状態で弁10を開き、配管21を通して洗浄装置4から排出される約75℃に昇温した洗浄排水の一部を低温蓄熱装置6に送り、洗浄排水が有する低温熱エネルギーを低温蓄熱装置6に蓄熱する。低温蓄熱装置6で熱エネルギーが回収され約60℃に冷却された洗浄排水は、配管22を通して洗浄装置4に還流される。
また、弁13を閉じた状態で弁11を開き、白煙防止用空気加熱器(余剰熱交換器)2からの約400℃高温空気の一部を配管23を通して高温蓄熱装置7に送り、高温空気が有する高温熱エネルギーを高温蓄熱装置7に蓄熱する。高温蓄熱装置7で熱エネルギーが回収され約100℃に冷却された空気は、配管24を通して煙突9内の排ガスに添加され、該排ガスの昇温に利用される。
【0040】
この時、低温蓄熱装置6及び高温蓄熱装置7に蓄熱される熱エネルギーの総和は、下水処理施設の想定消費電力が所定値を超過する超過分に相当する熱エネルギー量以上となるよう、前記弁10、11を調節して、低温蓄熱装置6及び高温蓄熱装置7に送られる、洗浄排水及び高温空気の流量を調整する。また、低温蓄熱装置6及び高温蓄熱装置7に蓄熱される熱エネルギーの配分は、高温排ガスの温度や含水率などにより適宜決定する。
【0041】
<ピークカット時>
下水処理施設の想定消費電力(デマンド)が所定値(例えば1000kwh)を超過する期間となった場合、弁10を閉じるとともに弁12を開き、複数熱源発電装置5の蒸発器53で低温熱エネルギーが回収され約60℃に冷却された洗浄排水を、配管25を通して低温蓄熱装置6に送り、低温蓄熱装置6に蓄熱された低温熱エネルギーを回収して約75℃に昇温させ、配管26を通して複数熱源発電装置5の蒸発器53に導入する。
また、弁11を閉じるとともに弁13を開き、配管27を通して約20℃の外気を高温熱蓄熱装置7に導入し、高温熱蓄熱装置7に蓄熱された高温熱エネルギーを回収して約400℃に昇温させ、配管28を通して複数熱源発電装置5の蒸気過熱器55に導入する。また、低温蓄熱装置6及び高温蓄熱装置7から放熱される熱エネルギーの配分は、高温排ガスの温度や含水率などにより適宜決定する。
【0042】
この時、低温蓄熱装置6及び高温蓄熱装置7から回収し、複数熱源発電装置5に伝達される熱エネルギー量は、下水処理施設の消費外部電力が所定値(例えば1000kwh)を超えないような発電量となるよう弁12,13を調整して、複数熱源発電装置5に伝達する。
【0043】
以上のような操作を行うことにより、下水処理施設の外部からの消費電力量を所定値以内に収めることが可能となる。
また、本発明の複数熱源発電装置は、災害による緊急停電時の補助電源としても利用できる。
【0044】
図3は、本発明の蓄熱・放熱操作の例を示すグラフで、◆の折れ線(常時稼働)グラフは、下水処理施設の過去の稼働実績から想定される発電システムを導入しない場合の一日の消費電力量の推移、▲の折れ線グラフ(常時発電)は、下水処理施設から回収された廃熱(各時刻における◆と▲の消費電力量の差に相当する熱エネルギー)を、常時、発電装置に供給し、該発電装置で発生する電力で下水処理施設の消費電力の一部を賄うようにした場合の必要とされる外部電力量の推移、■の折れ線グラフ(一部蓄熱)は、本発明の実施例であるさらに下水処理施設から回収された前記廃熱の一定量(各時刻における■と▲の消費電力量の差に相当する熱エネルギー)を蓄熱装置で蓄熱し、消費電力が例えば1000kwh/hを超えることが予測される場合に、蓄熱された熱エネルギーを発電装置に供給し、超過分の電力相当量だけ発電量を増加させた場合の、電力会社から供給される電力量の推移を表す。
通常、下水処理施設では、昼間に汚泥の脱水機などの設備が稼働するので昼間の消費電力量は増加する。
例えば、ピークカット時のデマンドの設定値を1000kwh/hとした場合、9時から14時までの折れ線グラフ(常時発電)と消費電力=1000kwh/hとで区切られる網線部分が不足電力の積算量となる。ピークカット時以外に蓄熱を行う場合の必要蓄熱量は、前記不足電力の積算量に相当する熱エネルギーで、発電装置や熱エネルギー伝達手段の効率を勘案して計算される。
図3は、ピークカット時以外の期間(15時から翌日8時)に、常時一定の電力量(斜線部分)に相当する熱エネルギーを蓄熱する場合を示しているが、夜間の特定時間帯に集中的に蓄熱することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、下水処理施設などで発生する種々の温度の廃熱を、それぞれ適切な蓄熱材を利用して異なる温度で蓄熱し、異なる温度で蓄熱された熱エネルギーを複数熱源発電装置において有効に利用するので、施設の排熱の有効利用が図られるとともに、施設の定常稼働が実現でき、産業上の利用性が大である。
図1
図2
図3