特許第6269950号(P6269950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6269950非接触ICカードのリーダ/ライタを備えた静電容量結合方式スイッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269950
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】非接触ICカードのリーダ/ライタを備えた静電容量結合方式スイッチ
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20180122BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   G06K7/10 100
   H01H36/00 J
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-133487(P2014-133487)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12237(P2016-12237A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】門井 英夫
(72)【発明者】
【氏名】高柳 博一
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−039531(JP,A)
【文献】 特開2013−114506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICカードに、電波により情報を送信し、前記非接触ICカードから送信される情報を受信するためのアンテナを有したリーダ/ライタと、入力物体により情報を入力するための1個以上の静電容量スイッチ電極と、該静電容量スイッチ電極を取り囲む様に設けられているグランド線と、コンデンサと抵抗によって交流信号を発生させるC/F変換回路と、前記1個以上の静電容量スイッチ電極のいずれか1個と前記C/F変換回路とを接続するか、前記1個以上の静電容量スイッチ電極の全てを前記C/F変換回路と切り離して浮遊状態にする電極選択回路と、前記グランド線を接地するか、浮遊状態にするグランド接続スイッチとを有し、前記グランド線を前記グランド接続スイッチにより接地し、前記電極選択回路によって前記1個以上の静電容量スイッチ電極を前記C/F変換回路に接続して前記入力物体による入力を検出するタッチスイッチモードと、前記グランド線を前記グランド接続スイッチにより浮遊状態にし、前記電極選択回路によって前記1個以上の静電容量スイッチ電極を全て浮遊状態にして非接触ICカードとの通信を行う非接触ICカードモードとを、少なくとも1回以上ずつ行う動作を交互に繰り返すことを特徴とする、非接触ICカードのリーダ/ライタを備えた静電容量結合方式スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードと通信するためのアンテナを備え、静電容量結合方式を利用した入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触ICカードのリーダ/ライタ及びアンテナを有する通信機器に、指で操作するテンキーなどのスイッチを組み込む場合は、機械式のスイッチが用いられていた。しかし、機器の薄型化、デザイン上の自由度の拡大等の要求に応じて、機械式のスイッチの代わりに、タッチスイッチが用いられるようになっている。
タッチ入力の手段としては、例えば、抵抗膜方式のタッチパネルが知られている。抵抗膜方式のタッチパネルは、空隙を開けて配置したフィルムの、向かい合ったそれぞれの面に導通性の薄膜を貼り、使用者が特定の位置を押したとき、フィルム上の導通性薄膜が互いに接して電気が通ることに基づいて、使用者がタッチした位置を検出するものである。
【0003】
従来、前記非接触ICカードのリーダ/ライタ及びアンテナを有する通信機器にタッチスイッチを組み込む場合は、前記の抵抗膜方式のタッチパネルが一般的に使用されている。タッチパネル上に、1個以上のスイッチに対応する領域を定め、それらの領域内にタッチされたと検出したら、対応するスイッチが入力されたと認識する。
透明なタッチパネルを使用し、タッチパネルの下に液晶表示装置を配置すれば、スイッチ面の表示を、稼働中に自由に変えられる等の利点もある。
【0004】
しかし、抵抗膜方式を使用する場合は、タッチ検出が、指の押圧によるフィルムの変形に基づくため、指が直接抵抗膜方式のタッチパネルに触れられるよう、タッチパネルを、組み込む機器の最表面に配置する必要がある。このため、抵抗膜方式のタッチパネルは、破損しやすい。タッチパネルが破損すると、スイッチの入力の誤動作が起きやすくなり、スイッチとしての耐久性が劣ることになる。また、屋外で使用される場合は、紫外線が直接抵抗膜方式のタッチパネルに当たるため、タッチパネルの変形、変色、劣化等が考えられ、耐候性が劣ってしまう。
【0005】
また、抵抗膜方式のタッチパネルを機器の最表面に配しなければならないということと、一般的にタッチパネルの入力領域の外側に配置される通信線を隠すために、縁スペースをタッチ部の周囲に設ける必要があることから、タッチパネル周りのデザインは制約を受ける。
【0006】
これらに対し、前記非接触ICカードのリーダ/ライタ及びアンテナを有する通信機器に、静電容量方式のタッチスイッチを使用すれば、タッチスイッチを、機器の最表面に露出させる必要がない。タッチスイッチを、非導電性の樹脂等のカバーの裏側に配することができるため、前記の耐久性、耐候性、縁スペースの問題を解消することができる。従来の静電容量方式のタッチスイッチの技術としては、例えば、特許文献1記載のものが挙げられる。
【0007】
図1を用いて、静電容量方式のスイッチの構成について説明する。静電容量結合方式のタッチスイッチは、スイッチ部1と制御基板2とから構成される。スイッチ部1は、スイッチ電極を形成したスイッチ電極フィルムを、ガラス、もしくはアクリルのような樹脂等の絶縁基材5の、タッチする面と反対側に、両面テープ等を含む接着剤6を用いて貼り合わせたもので構成される。スイッチ電極フィルムは、通常、フィルム(一般的には、ポリエチレンテレフタラートフィルム:PETフィルムが使用される)の表面に、スイッチ電極3、及び、スイッチ電極3の周りを囲み、制御基板2のグランドに接続されたグランド線4を形成したものである。スイッチ電極3及びグランド線4は、ITO(酸化インジウムスズ)、もしくは、透明でなくてもよい場合は銀ペースト等を印刷することによって形成する。タッチスイッチの背後に、液晶表示装置といった表示装置を配置せず、タッチスイッチが透明でなくてもよい場合は、前記のスイッチ電極フィルムの代わりに、ガラスエポキシ基板の表面に、スイッチ電極3、及びスイッチ電極3の周りを囲むグランド線4を、銅エッチングで形成した基材を用いてもよい。
【0008】
図2を用いて、静電容量方式のスイッチ動作について説明する。入力物体である指7がスイッチ電極3に近づくと、指7とスイッチ電極3との間に平行板コンデンサが形成され、静電容量8が発生する。この静電容量の変化を、コンデンサC9と抵抗R10とで形成するC/F変換回路(静電容量Cを周波数Fに変換する回路)で交流信号の周波数の変化に変換し、その周波数を、インプットキャプチャ11機能(交流信号の周期の数を数える機能)でデジタルデータに置き換え、演算処理12により、タッチスイッチのオン/オフ状態を判断する。スイッチ電極3が複数個の場合、スイッチ電極3の選択は、スイッチ電極3の数の分だけ設けた電極選択回路13により行う。電極選択回路13を設ける代わりに、インプットキャプチャ11をスイッチ電極3の数だけ設けてもよい。
入力物体は、指先だけでなく、手や他の人体の部分、また、導電性の素材で形成された先端を持つタッチペン等であってもよい。
静電容量結合方式を利用したタッチスイッチは、指やタッチペンといった入力物体が触れることのできる領域をスイッチ電極とし、入力物体がそのスイッチ電極に近づいたことを検出するものであり、タッチスイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置である。
【0009】
電波を使用して人や物を認識する非接触型の自動認識技術として、RFID(Radio Frequency IDentification、「電波による個体識別」の略)が知られている。アンテナやICチップを、タグやラベルという形に加工して、商品や人に付与し、そのICチップに対して、情報の読み取りや書き込みを行うリーダ/ライタを用いて、通信を行う。
現在、非接触ICカードは、RFIDと同様の技術を用いており、広義のRFIDに含まれる。非接触ICカードは、乗車カードや電子マネー、社員証やセキュリティロックなど色々な用途があり、RFIDは様々な分野で利用される様になった。
【0010】
図3を用いて、非接触ICカード14の情報の読み書きについて説明する。非接触ICカード14は、情報の保持、及び無線を通じて情報の制御を行うICチップ15と、通信を行うためのアンテナ16とで構成される。また、リーダ/ライタ17は、非接触ICカード14と無線を通じて通信を行うためのアンテナ16、及び制御を行うための制御基板18より構成される。
情報をやりとりするためのアンテナ16は、非接触ICカード14内及びリーダ/ライタ17内にそれぞれ配置され、リーダ/ライタ17内のアンテナ16から発生する磁界19を、非接触ICカード14内のアンテナ16が捉え、非接触ICカード14内のアンテナ16で得た誘導電流20によってICチップ15へ電力を供給し、相互間のデータ通信を行う。このため、アンテナ16は、磁界19を発生させて誘導電流20を流すように、ループ状のコイル形状になっている。
静電容量方式のタッチスイッチとRFIDとを組み合わせた従来技術としては、例えば、特許文献2記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−084982号公報
【特許文献2】特開2011−002947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
タッチスイッチと非接触ICカードのリーダ/ライタとを組み合わせる場合、装置全体は小型化することが求められる。しかし、非接触ICカードのループ状のアンテナは、その開口面積をできるだけ大きくするのが望ましい。これらの要求を同時に満たすため、タッチスイッチのスイッチ領域と、非接触ICカードのアンテナの開口領域とは、スイッチ面に鉛直な方向から見た場合、互いに重ね合わせるようにデザインされることが多い。
【0013】
前記特許文献2は、タッチスイッチ側からの影響により、RFIDのアンテナの通信感度が低下したことを課題とした技術であり、RFIDのアンテナの内側にタッチスイッチを配した上で、RFIDのアンテナの角度を傾斜させる構造が記載されている。この構造では、タッチスイッチの周りにRFIDのアンテナを配する構造のため、RFIDのアンテナの大型化、及び機器の筐体のパネル面積の大型化を招き、RFIDのアンテナを傾斜配置させることから、機器の筐体の奥行き寸法も厚くなってしまう。特に液晶パネルとタッチセンサーとを積層させる場合、パネル表示部全体を配するための縁スペースならびに厚さが必要となり、機器の筐体形状の設計自由度が低下しやすい構造となってしまう。
【0014】
一方で、静電容量方式のタッチスイッチは、一般的に、制御基板のグランドに接続されたグランド線が、スイッチ電極を囲うようなループ状の閉回路として、タッチスイッチの外周に配されたものが、多く用いられている。これは、スイッチ電極がノイズの影響を受けないようにするためである。
しかし、非接触ICカードのループ状のアンテナの開口部と重複する領域に、グランドに接続された配線が存在すると、それは、アンテナに対してシールドとして作用するため、アンテナの性能を棄損する。このため、非接触ICカードのアンテナの通信感度が低下することがあった。
【0015】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、タッチスイッチのスイッチ部と非接触ICカードのアンテナとを重畳し、装置全体を小型化しながら、アンテナの性能をタッチスイッチが棄損することがないような、静電容量方式のタッチスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、非接触ICカードに、電波により情報を送信し、前記非接触ICカードから送信される情報を受信するためのアンテナを有したリーダ/ライタと、入力物体により情報を入力するための1個以上の静電容量スイッチ電極と、該静電容量スイッチ電極を取り囲む様に設けられているグランド線と、コンデンサと抵抗によって交流信号を発生させるC/F変換回路と、前記1個以上の静電容量スイッチ電極のいずれか1個と前記C/F変換回路とを接続するか、前記1個以上の静電容量スイッチ電極の全てを前記C/F変換回路と切り離して浮遊状態にする電極選択回路と、前記グランド線を接地するか、浮遊状態にするグランド接続スイッチとを有し、前記グランド線を前記グランド接続スイッチにより接地し、前記電極選択回路によって前記1個以上の静電容量スイッチ電極を前記C/F変換回路に接続して前記入力物体による入力を検出するタッチスイッチモードと、前記グランド線を前記グランド接続スイッチにより浮遊状態にし、前記電極選択回路によって前記1個以上の静電容量スイッチ電極を全て浮遊状態にして非接触ICカードとの通信を行う非接触ICカードモードとを、少なくとも1回以上ずつ行う動作を交互に繰り返すことを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非接触ICカードを含むRFIDのリーダ/ライタ及びアンテナを有する通信機器に静電容量方式のタッチスイッチを組み込む場合は、非接触ICカードに、電波により情報を送信し、前記非接触ICカードから送信される情報を受信するためのアンテナを有したリーダ/ライタと、指に代表される入力物体により情報を入力するための1個以上の静電容量スイッチ電極と、該静電容量スイッチ電極を取り囲む様に設けられているグランド線と、コンデンサと抵抗によって交流信号を発生させるC/F変換回路と、前記1個以上の静電容量スイッチ電極のいずれか1個と前記C/F変換回路とを接続するか、前記1個以上の静電容量スイッチ電極の全てを前記C/F変換回路と切り離して浮遊状態にする電極選択回路と、前記グランド線を接地するか、浮遊状態にするグランド接続スイッチとを有し、前記グランド線を前記グランド接続スイッチにより接地し、前記電極選択回路によって前記1個以上の静電容量スイッチ電極を前記C/F変換回路に接続して前記入力物体による入力を検出するタッチスイッチモードと、前記グランド線を前記グランド接続スイッチにより浮遊状態にし、前記電極選択回路によって前記1個以上の静電容量スイッチ電極を全て浮遊状態にして非接触ICカードとの通信を行う非接触ICカードモードとを、少なくとも1回以上ずつ行う動作を交互に繰り返すようにしたので、前記非接触ICカードを含むRFIDのリーダ/ライタのアンテナの性能を棄損することなく、タッチスイッチを配置することができ、従って、機器の筐体形状の自由度を向上させ、同時に、機器の形状を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】タッチスイッチ構成図
図2】タッチスイッチ動作図
図3】非接触ICカードの情報読み取り図
図4】構成図
図5】タッチスイッチのブロック図
図6】スイッチ電極形状寸法図
図7】非接触ICカード読み取り構造図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図4及び図5を用いて、本発明にかかる、静電容量方式のスイッチと、非接触ICカード14及びリーダ/ライタ17の構成について説明する。リーダ/ライタ17の上に、静電容量方式のタッチスイッチを、アクリル5をタッチ面として上面になるよう、重ね合わせる。
静電容量方式のタッチスイッチと、非接触ICカード14用のリーダ/ライタ17は、静電容量方式のタッチスイッチが指7を検出せず、且つ、リーダ/ライタ17が非接触ICカード14を検出しない間は、略交互に動作させる。ここでは、タッチスイッチを動作させる期間をタッチスイッチモード、リーダ/ライタ17を動作させる期間を、非接触ICカードモードと呼称する。
【0020】
タッチスイッチモードでは、グランド接続スイッチ21を閉じて、グランド線4をグランドに接続する。電極選択回路13によって、検出対象とするスイッチ電極3の全てに順番に切り替え、指7のタッチが存在するかどうか調べる。このとき、リーダ/ライタ17のアンテナ出力は、出力が変動しない状態にあることが好ましい。いずれのスイッチ電極3もタッチされていなければ、タッチスイッチモードを終了し、非接触ICカードモードに移行する。一回のタッチスイッチモード終了後、非接触ICカードモードに移行せず、二回以上、タッチスイッチモードを繰り返してから、非接触ICカードモードに移行してもよい。
【0021】
非接触ICカードモードにおいては、タッチスイッチの制御基板2は、グランド接続スイッチ21を開くとともに、電極選択回路13も全て開いて、全てのスイッチ電極3、及びグランド線4を浮遊状態にする。その上で、リーダ/ライタ17は、非接触ICカード14が検出範囲内に存在するかどうかを調べる。非接触ICカード14が検出されなければ、非接触ICカードモードを終了し、タッチスイッチモードに移行する。指7及び非接触ICカード14がいずれも検出されない間は、これを繰り返す。
【0022】
タッチスイッチモードにおける指7の検出は、以下のように行う。グランド接続スイッチ21を閉じ、電極選択回路13によって、検出対象とするスイッチ電極3を選択する。導電体である指7がスイッチ電極3の近傍に近づくと、指7とスイッチ電極3との間に平行板コンデンサが形成され、静電容量8が発生する。静電容量8は、指7がスイッチ電極3に近づくにつれて増大する。静電容量8が変化すると、C/F変換回路で変換される交流信号の発振周波数が変化する。一般にコンデンサC9と抵抗R10とで形成されたC/F変換回路の発振周波数は、コンデンサC9の静電容量Cと抵抗R10の電気抵抗値Rを用いて表される、式f=1/(C×R)のfに比例する。指7がスイッチ電極3に近づくほど、静電容量8が大きくなるため、発振周波数は、指7がスイッチ電極3に近づくほど低くなる。電源を入れたときの計測開始時に、全てのスイッチ電極3について、指7が接触していない状態での、インプットキャプチャ11でカウントした周期数を基準値として保持しておく。引き続くタッチスイッチモードにおいて、各スイッチ電極3について、指7の接近に伴う周波数の低下によって、周期数がどのくらい減少するか調べることで、タッチを検出する。
【0023】
非接触ICカードモードにおける非接触ICカード14の検出は、以下のように行う。リーダ/ライタ17は、リーダ/ライタ17内のアンテナ16から、同期信号及び問い合わせ命令を発信する。読み取り可能範囲内に非接触ICカード14が存在する場合は、リーダ/ライタ17内のアンテナ16が発する磁界19を、非接触ICカード14内のアンテナ16が捉え、非接触ICカード14内のアンテナ16で得た誘導電流20によってICチップ15へ電力が供給される。ICチップ15は、リーダ/ライタ17が発信した問い合わせ命令に対する回答を、非接触ICカード14内のアンテナ16から発信し、リーダ/ライタ17は、それを受信することによって、非接触ICカード14が読み取り可能範囲内に存在することを検出する。
【0024】
タッチスイッチモードが必要とする最小の時間は、スイッチ電極3の数、回路構成、C/F変換回路で使用する周波数等によって変化する。一方、非接触ICカードモードが必要とする最小の時間も、使用する周波数、試行回数等によって変化する。タッチスイッチモードと非接触ICカードモードの交互の繰り返しは、各々の最小の時間を勘案し、一回ごとに交互に行うようにしてもよいし、いずれかを複数回行ってからもう一方に移行するようにしてもよい。
【0025】
また、タッチスイッチモードもしくは非接触ICカードモードのいずれかにおいて、指7もしくは非接触ICカード14が検出された後は、機器の用途に応じて、タッチスイッチモードと非接触ICカードモードを交互に行うようにしてもよいし、指7が検出された後は、所定のスイッチ入力がなされるといった特定の条件を満たすまでは、タッチスイッチモードのみを繰り返し行うようにしたり、非接触ICカード14が検出された後は、非接触ICカード14が検出されなくなるといった特定の条件を満たすまでは、非接触ICカードモードを継続するようにしてもよい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により、本発明を説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものでなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。
【0027】
(実施例1)
図6を用いて説明する。スイッチ部1は、PETフィルム22の表面に銀ペーストを印刷したスイッチ電極3を用い、スイッチ電極3の形状及び寸法は、人の指7が触れることができる10×10mmの正方形とした。スイッチ電極3の周りには、パターン幅を1mmとし、15×15mmの正方形で囲うように、グランド線4を設けた。
図7(a)及び(b)を用いて説明する。スイッチ電極3の数は、リーダ/ライタ17のアンテナ16がスイッチ電極3で覆われるように、横3個、縦3個の計9個とした。前記PETフィルム22の表面に1mm厚のアクリル5を置き、PETフィルム22の裏面には、リーダ/ライタ17(ジーエルサイエンス株式会社製のTM02−C−5V)を、前記9個のスイッチ電極3で囲まれる位置に置く構造とした。
【0028】
非接触ICカード14のデータの読み取りは、前記リーダ/ライタ17をパソコンにUSB接続し、ソフトウェア(ジーエルサイエンス株式会社製のTZ01−DSET)を使用した。また、試験用の読み取りカードは、非接触ICカード14(テスト用のフェリカカード(「FeliCa」は、ソニー株式会社の登録商標))を使用した。
タッチスイッチモードにかかる時間は1回当たり約20msであり、非接触ICカードモードにかかる時間は1回当たり約30msである。ここでは、タッチスイッチモードを5回実行した後、非接触ICカードモードを1回実行する動作を繰り返すようにした。
この条件で、リーダ/ライタ17に非接触ICカード14をかざし、リーダ/ライタ17のアンテナ16の面からの距離23を変えて、それぞれの距離に対して、50回の試行中、何回読み取りに成功したかを数えた。
【0029】
(比較例1)
実施例1の構成において、タッチスイッチモードと非接触ICカードモードを交互に実行するのではなく、常に両者を実行するようにした。
この条件で、同様、リーダ/ライタ17に非接触ICカード14をかざし、リーダ/ライタ17のアンテナ16の面からの距離23を変えて、それぞれの距離に対して、50回の試行中、何回読み取りに成功したかを数えた。
【0030】
【表1】
【0031】
表1の結果より、実施例1は、比較例1に比べ、リーダ/ライタ17のアンテナ16の面からの距離23が大きくなるに連れて、読み取りに成功する割合が高くなることが分かり、本発明の効果が確認された。
【符号の説明】
【0032】
1 スイッチ部
2 制御基板
3 スイッチ電極
4 グランド線
5 アクリル
6 接着剤
7 指
8 静電容量
9 コンデンサC
10 抵抗R
11 インプットキャプチャ
12 演算処理
13 電極選択回路
14 非接触ICカード
15 ICチップ
16 アンテナ
17 リーダ/ライタ
18 制御基板
19 磁界
20 誘導電流
21 グランド接続スイッチ
22 PETフィルム
23 ICカード読み取り距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7