【文献】
STEBBINS, Jonathan F.,Aluminum Substitution in Rutile Titanium Dioxide: New Constraints from High-Resolution 27Al NMR,Chem.Mater.,米国,American Chemical Society,2007年,vol.19,p.1862-1869
【文献】
HANAOR, Dorian A.H., SORRELL, Charles C.,Review of the anatase to rutile phase transformation,Journal of Materials Science,2011年,Vol.46, No.4,PP.855-874,ISSN:0022-2461, DOI:10.1007/10853-010-5113-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記欠点の1つ以上を実質的に解消するか、又は少なくとも改善することである。さらに、上記必要性を少なくとも部分的に満たすことも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様では、式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2を有する材料が提供される。その材料は、ルチル構造を有し得る。それは、単一相のルチル構造を有し得る。この式では、A
3+は三価の正イオンであり、B
5+は五価の正イオンである。xは0と1との間であるべきである(0と1は含まない、つまり0<x<1)。それは、その材料がルチル構造を有するような値であり得る。δは0と0.025との間(0と0.025も含む)であり得る。nは0と0.8との間(0と0.8は含まない)であるべきであり、略0.5であり得る。
【0008】
以下の態様は、個別に又は任意に適切に組み合わせて、第1態様と併せて使用され得る。
【0009】
xは(それがちょうど0ではないという条件において)略0と略0.2との間であり得る。それは、略0.0005と0.005との間であり得る。xは、その材料の誘電率が略10,000より大きいような値であるか、又はその材料の誘電率が略10,000と100,000との間若しくは略10,000と1,000,000との間であるような値であり得る。xは例えば、0.0005であり得る。それは0.005であり得る。それは、その材料が単一相のルチル構造を有するような値であり得る。
【0010】
その材料は、略10,000より大きい、又は略10,000と100,000との間若しくは略10,000と1,000,000との間の誘電率を有し得る。
【0011】
その材料は、略20
oCにおいて略0.3未満の誘電損失を有し得る。略0.3未満の誘電損失は、略20
oCから略200
oCまでの温度範囲にわたって適合し得る。それは、略100Hzから略1MHz、又は略1kHzから略1MHz、又は1kHzから100MHzの周波数範囲にわたって、0.3未満で維持され得る。
【0012】
その材料は、略1900ppm/
oC未満又はそれに等しいその誘電率の温度係数を有し得る。その温度係数は、略20
oCから略250
oCの範囲にわたって、略1900ppm/
oC未満又はそれに等しい値であり得る。その材料は、略−100
oCから略+200
oC、又は略−190
oCから略+200
oCの範囲にわたり、その誘電率の正の温度係数を有し得る(つまりその係数は、この範囲を通して正であり得る)。それは、略−170
oCから略−20
oCの範囲にわたって、略650ppm/
oC未満のその誘電率の温度係数を有し得る。
【0013】
その材料の色は、グレーであり得るか、又はダークイエローであり得る。
【0014】
特定の例では、その材料は、略100Hzから略1MHzの周波数範囲にわたって略20
oCで、少なくとも略10,000の誘電率及び0.3未満の誘電損失を有する。
【0015】
式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2において、A
3+はBi
3+、In
3+、Ga
3+、Sc
3+、Co
3+、Cr
3+、Fe
3+、若しくはレアアース元素の三価の正イオンであり得るか、又はこれらの何れか2以上の混合物であり得る。A
3+のさらなる代替例はAl
3+である。B
5+はNb
5+、Ta
5+、W
5+、V
5+、Mo
5+、及びSb
5+であり得るか、又はこれらの何れか2以上の混合物であり得る。
【0016】
その材料の平均構造は、ルチル構造であり得る。それは結晶であり得る。その材料は、TiO
2ルチルにおけるTi
4+サイトへのアクセプタ−ドナー共置換(co−substitution)を示し得る。
【0017】
一実施形態において、その材料は(A
3+0.5−δB
3+0.5)
xTi
1−xO
2であり、ここでxは0.2未満かつ0より大きく、δは略0.005未満であり、前記材料はルチル構造を有する。
【0018】
特定の例では、その材料は(In
0.5−δNb
0.5)
xTi
1−xO
2(つまり、(In
3+0.5−δNb
5+0.5)
xTi
1−xO
2)であり、ここで0<x<0.15、例えば0.0005から略0.005であり、δは略0.005未満である。他の例では、A
3+はAl
3+であり、B
5+はNb
5+であり、それによってその材料は、式:(Al
3+0.5−δNb
5+0.5)
xTi
1−xO
2又は(Al
3+0.083−δNb
5+0.75)
xTi
1−xO
2を有する。
【0019】
その材料は、ペレット形状であり得る。この場合、各ペレットは単一相のペレットであり得る。
【0020】
本発明の第2の態様では、以下の段階を含む式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2の材料の製造プロセスが提供される:
・A
2O
3、B
2O
5及びTiO
2を混合して混合物を形成する段階;
・その混合物を圧縮してペレットを形成する段階;及び
・そのペレットをアニーリングして、式:(A
3+0.5−δB
5+0.5)
xTi
1−xO
2の材料を形成する段階。
【0021】
式:(A
3+0.5−δB
5+0.5)
xTi
1−xO
2において、0<x<1であり、xはその材料がルチル構造を有するような値であり、δは0と0.025との間(0と0.025も含む)であり、nは0と0.8との間(0と0.8も含む)であり、A
3+は三価の正イオンであり、B
5+は五価の正イオンである。
【0022】
以下の態様は、個別に又は任意に適切に組み合わせて、第2態様と併せて使用され得る。
【0023】
xは(それがちょうど0ではないという条件において)略0と略0.1との間であり得る。それは、略0.0005と0.005との間であり得る。xは、その材料の誘電率が略10,000より大きいような値であるか、又はその材料の誘電率が略10,000と100,000との間若しくは略10,000と1,000,000との間であるような値であり得る。
【0024】
そのプロセスは、固体状態で実行され得る。
【0025】
アニーリングのステップは、閉鎖加熱炉で実行され得る。それは、略1300から略1500
oCの間の温度で実行され得る。それは十分な時間実行され得、アニールされた式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2のペレットを製造する。それは例えば、少なくとも略2時間若しくは少なくとも略5時間、又は略2から略20時間若しくは略5から20時間にわたって実行され得る。
【0026】
A
2O
3、B
2O
5及びTiO
2のモル比は、そのプロセスが式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2の材料を製造するような比率であり得る。A
2O
3とB
2O
5とのモル比は、略1:1、又はより一般的には(4−5n):3nであり得る。A
2O
3プラスB
2O
5とTiO
2とのモル比は、略(x/2):(1−x)又は((2−3n)x/3):(1−x)であり得る。
【0027】
特定の例では、AはInであり、BはNbであり、nは0.5であり、アニーリングのステップは略1450
oCで略10時間にわたり実行され、それによってそのプロセスは、(In
3+0.5−δNb
5+0.5)
xTi
1−xO
2(ここで0<x<0.1)を作る。
【0028】
本発明はまた、第2態様によって作られた材料を包含する。第2態様によって作られたその材料は、第1態様と一致し得る(according to)。
【0029】
本発明の第3態様では、誘電材料として使用される場合の、第1態様による又は第2態様のプロセスによって作られる材料を含むキャパシタが提供される。
【0030】
本発明の第4態様では、誘電材料としての、第1態様による材料又は第2態様のプロセスによって作られる材料の使用が提供される。
【0031】
本発明の第5態様では、キャパシタを製造するための、第1態様による材料又は第2態様のプロセスによって作られる材料の使用が提供される。
【0032】
本発明の第6態様では、第1態様による材料又は第2態様のプロセスによって作られる材料を2つの導電性端子の間に配置する段階を含む、キャパシタの製造プロセスが提供される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態が、例示のみを目的として、添付図面を参照してここで説明される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、化学式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2、通常およそ(A
3+0.5−δB
5+0.5)
xTi
1−xO
2である材料に関する。本発明の材料はルチル構造、通常は単一相ルチル構造を有する。この式において、Tiは少なくとも部分的に+4酸化状態であり(通常はほぼ完全に+4酸化状態である)、かつ部分的に+3酸化状態でもあり得る。その材料は、“ドープされた”二酸化チタンとみなされることができ、ここでドーパントは、(必ずではないが)通常は大体等モル量であるA
2O
3及びB
2O
5である。この式における変数の定義は以下に述べる。
【0036】
A:これは、+3イオンを形成することができる元素である。適切な例は、Sc、Y、ランタニド(レアアースとしてもまた知られている−La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、Al、Bi、Ga、In、Cr、Co及びFeを含む。任意の所望の比率での何れか2以上の混合物もまた使用され得る。例えばその材料は、例えば式:(A
a3+y−δA
b3+0.5−y−εB
5+0.5)
xTi
1−xO
2を有することができ、ここで0≦y≦(0.5−ε)(つまり、yは0と0.5−εとの間(0と0.5−εも含む)である)であり、xはその材料がルチル構造を有するような値(多くの場合、0<x<0.15、又は0<x<0.1、通常は0.0005<x<0.005)であり、A
a及びA
bは上記のリストからの異なる例のAである。この場合、δ+εは略0と0.025との間(0と0.025も含む)であり、δ及びεの両方が整数又は0である。材料1モルあたりのB
5+が(具体的に0.5モルではなく)nモルであるより一般的な場合、上記の式がそれに応じて調整されることが理解されよう。この場合、yは0と(4−5n)/3との間であるべきである。A
3+は電子アクセプタであり得る。AはTiよりも強い電子アクセプタであり得る。
【0037】
B:これは、+5イオンを形成することができる元素である。適切な例は、Nb、Ta、W、V、Mo、及びSbを含む。これらの何れか2以上の混合物もまた使用され得る。例えば、その材料は式:(A
a3+y−δA
b3+0.5−y−εB
c5+0.5−zB
d5+z)
xTi
1−xO
2を有することができ、ここで0≦y≦0.5、0≦z≦0.5(つまり、y及びzの両方が0と0.5との間(0と0.5も含む)である)であり、xはその材料がルチル構造を有するような値(多くの場合、0<x<0.15、又は0<x<0.1、又は0.0005<x<0.005)であり、A
a及びA
bは上記Aの選択肢のリストからの異なる例のAであり、B
c及びB
dは上記Bの選択肢のリストからの異なる例のBである。この場合は再度、δ+εは略0と0.025との間(0と0.025も含む)である。再度、上述の通り、上記式はnが0.5ではない場合に対して一般化され得る。B
5+は電子ドナーであり得る。BはTiよりも強い電子ドナーであり得る。
【0038】
上記式では、yもzも何れもそれらを表す係数が0未満ではないという条件で、存在するならば、y及びzは独立して、0と0.5との間、又は略0から0.3、0から0.1、0.1から0.5、0.2から0.5、0.1から0.4、若しくは0.2から0.3の何れか、例えば略0、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45若しくは0.5であり得る。
【0039】
好ましくはA及びBは、その材料が安定であるようなものである。それらは、その材料の形成の間又はその材料自身においてA
3+がB
5+を還元しないようなものであり得る。
【0040】
x:これは、その材料がルチル構造を有するような値であるべきである。また、その材料が純粋な酸化チタンではないがチタンを含むように、0<x<1であるべきである。従ってxは、その材料がA及びBでドープされたルチル構造の二酸化チタンとして見られ得るような値であり得る。それは略0.2と等しい若しくはそれ未満であるか、略0.15と等しい若しくはそれ未満であるか、又は略0.1と等しい若しくはそれ未満である。それは、0より大きいという条件で(A
3+及びB
5+がともにその材料に存在するように)、0.05、0.02、0.01、0.005、0.002、0.001、0.0005若しくは0.0002未満若しくはそれに等しい値であり得る。xは略0.0001から略0.1、略0.0001から0.001、0.0001から0.0005、0.0005から0.005、0.0005から0.05、0.005から0.05、又は0.001から0.01、例えば略0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095若しくは0.1であり得る。x値の限界は、A及びBの性質によって決まる。特定のx値に対してそれは、例えばx線回折によって、結果として生じるセラミックスが必要とされる単一相ルチル構造を有するかどうか、故にx値がA及びBの特定の選択に対して適切であるかによって、容易に決定され得る。x値はまた、n値(以下参照)、つまりその材料におけるA及びBの比率によって決まり得る。
【0041】
δ:これは0.025未満であり、場合によって事実上0であり得る。本発明者は、通常チタンは+4酸化状態である一方、非常に少量(典型的に略1%未満)が+3酸化状態に還元され得ることを見出した。これを相殺するために、少量のA
3+イオンが失われ得るか、又は酸素空孔が作られる必要があり得る。因子δはこの損失を反映する。従ってδは通常、A
3+の量の略5%未満、つまり略0.025未満(0.5の5%)である。それは、略0.02、0.015、0.01、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001又は0.0005未満であり得る。典型的なδ値は例えば、0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.1、0.015、0.02又は0.025である。δは事実上ゼロであり得、その場合は事実上全てのTiが+4酸化状態である。
【0042】
n:これは通常略0.5であるが、nが0.5でない場合、その材料は等しくないA
3+及びB
5+のモル量を有する。nは略0と略0.8との間(しかし、決して0若しくはそれ未満、又は0.8若しくはそれ以上ではない)、略0と略0.5、0.5と0.8、0.4と0.6、0.55と0.65、0.4と0.5、若しくは0.5と0.6との間、例えば略0、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75若しくは0.8であり得る。nの範囲はまた、異なるイオンに対する係数が0より大きいことを確保するように調整されなければならない。
【0043】
上記式、例えば式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2において、下付き記号がその材料に存在する原子又はイオンの数の比率を表し、分数の(fractional)原子又はイオンが実際に存在することを示唆しないことが認識されよう。その式が均一ではないことがある物質の実験式を表すこともまた認識されよう。例えば、異なる比率の原子/イオンを有する局在化された領域であり得る。特に、粒子における特定の原子/イオンの濃度は粒子境界と比較して異なることがある。本発明者は、A
3+イオンが場合によっては粒子境界における及び/又は粒子境界付近の平均濃度より高いことがあることを見出した。
【0044】
その材料は、略10,000より大きい、又は略11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000若しくは20,000より大きい誘電率、あるいは略10,000から略30,000、略10,000から20,000、10,000から15,000、10,000から12,000、10,000から11,000、11,000から30,000、15,000から30,000、20,000から30,000、11,000から15000、11,000から13000、若しくは15,000から20,000、例えば略10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000若しくは30,000の誘電率を有し得る。場合によっては、誘電率は30,000を超えることがあり、例えば略35,000、40,000、45,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000又は100,000である。これらの材料の特定の例は、100,000を超える誘電率を有し、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000又は1,000,000を超える誘電率を有し得る。従って誘電率は、略10,000と略1,000,000との間、100,000と1,000,000、100,000と500,000、又は500,000と1,000,000との間、例えば略200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000又は1,000,000であり得る。
【0045】
その材料は、略20
oCで略0.3未満、又は略0.25、0.2、0.15若しくは0.1未満、例えば略0.05から0.3、0.1から0.3、0.2から0.3、0.1から0.25、若しくは0.15から0.25の誘電損失を有し得る。それは、略20
oCで略0.1、0.15、0.2、0.25、0.25、0.27、0.28、0.29又は0.3の誘電損失を有し得る。誘電損失は、略20
oC又は略27
oCで略0.05未満、又は略0.045、0.04、0.035、0.3、0.025若しくは0.02未満であり得、あるいはこれらの温度で略0.1、0.2若しくは0.3である。上記の誘電損失(又はその範囲)は、略20
oCから略200
oC、略20から150、20から100、20から50、50から200、100から200、150から200、又は50から150
oCの温度範囲にわたって適合し得る。それは例えば、何れか1以上の以下の温度で適合し得る:20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200
oC。それはまた、上記範囲の外側の他の温度、例えば略0、5、10、15、210、220、230、240又は250
oCで適合し得る。それは略−190から略250
oC、略−100から250、0から250、100から250、−190から100、−190から0、−190から−100、−100から200、−100から0、又は−50から150
oC、例えば略−190、−150、−100、−50、0、20、50、100、150、200又は250
oCで適合し得る。適切な材料は、略−190から略200
oC又は略−190から略250
oCの温度範囲にわたって、略0.1未満、通常は略0.05未満の誘電損失を有する。上記の誘電損失は、略100Hzから略1MHz、略1kHzから略1MHz、略1から500kHz、1から200、1から100、1から50、1から20、1から10、10から200、10から100、10から50、50から1000、100から1000、200から1000、500から1000、100から500、100から300、又は200から500kHzの周波数範囲にわたって、例えば略1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、150、200、150、300、350、400、450、500、600、700、800、900又は1000kHzにおいて維持され得る。それはまた、これらの範囲を超えて維持され得る。場合によっては、誘電損失は上記の通り、略100MHzまで維持される。それは従って、略1kHzから略100MHz、例えば略1から略100MHz、又は略1から50、1から10、10から100、50から100、若しくは10から50MHzの範囲、例えば略1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90若しくは100MHzで維持され得る。適切な材料は従って、略100Hzから略1MHz、又は1kHzから略100MHzの範囲にわたって、略0.1未満、通常は略0.05未満の誘電損失を維持し得る。上記から、それぞれが上記範囲にある誘電損失、温度範囲及び周波数範囲の任意の組み合わせが適合し得ることが理解されよう。略0.3未満の誘電損失が特定の温度及び/又は周波数範囲にわたって適合することが規定される場合、これは必ずしも特定の損失値が全範囲にわたって適合することを意味せず、むしろその範囲内には変動があり得るが全範囲にわたって損失が0.3未満であることを意味する。
【0046】
本発明の材料は、温度範囲にわたって比較的一定である誘電率を有する。従って、選択された温度範囲にわたって、それは、略2000ppm/
oC未満若しくはそれに等しい、又は略1900、1500、1200、1000、500、200若しくは100ppm/
oC未満若しくはそれに等しいその誘電率の温度係数を有し得る。この係数(又はその範囲)は、略20
oCから略250
oC、又は略20から200、20から150、20から100、50から250、100から250、150から250、100から200、100から150、若しくは150から200
oCの範囲にわたって維持され得る。特にそれは、何れか1以上の以下の温度で適合し得る:20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200
oC。それはまた、その範囲の外側の温度、例えば略0、5、10、15、260、270、280、290又は300
oCで適合し得る。それは、略−190から略250
oC、又は略−100から250、0から250、100から250、−190から100、−190から0、−190から−100、−100から200、−100から0、若しくは−50から150
oC、例えば略−190、−150、−100、−50、0、20、50、100、150、又は200
oCで適合し得る。その温度範囲は、周波数依存性であり得る。従って、低周波数(例えば略100Hz又はそれ未満)では、温度の上限値は低くなる、例えば略200
oCとなることがあり、一方で高周波数(つまり略100Hzより大きい)では、温度の高い上限値、例えば略250
oCを達成し得る。高周波数は、その材料を無線周波数通信技術において使用できるようにする際に有益であり得る。適切な材料は、−190から略200
oCの温度範囲にわたって、略0.1未満、通常略0.05未満の誘電損失を有する。その材料は、略−100
oCから略+200
oC、又は略−100から+100、−100から0、0から+200、+100から+200、若しくは0から+100
oCの範囲にわたって、その誘電率の正の(又は負でない)温度係数を有することができ、例えばそれは、略何れか1以上の以下の温度で、その誘電率の正の(又は負でない)温度係数を有することができる:−100、−50、0、+50、+100、+150又は+200
oC。それは、上記範囲の外側の温度で、正の(又は負でない)温度係数を有することができる。それは、略650ppm/
oC未満、又は略600、550、500、540、400、350、300、250、200、150若しくは100ppm/
oC未満のその誘電率の温度係数を有することができる(例えばその係数は、略600、550、500、540、400、350、300、250、200、150又は100ppm/
oCであり得る)。これは、略−170
oCから略−20
oC、又は略−150から−20、−100から−20、−50から−20、−170から−50、−170から−100、−100から−50、若しくは−150から−100
oCの範囲にわたって、例えば略−170、−160、−150、−140、−130、−120、−110、−100、−90、−80、−70、−60、−50、−40、−30又は−20
oCで適合し得る。それはまた、これらの範囲の外側、例えば略0、−5、−10、−15、−175、−180、−185、−190、−195又は−200
oCで適合し得る。
【0047】
その材料の平均構造は、ルチル構造であり得る。その材料は、TiO
2ルチルにおけるTi
4+サイトへのアクセプタ−ドナー共置換を表すことができる。その平均構造は、空間群P4
2/mnmを有することができる。その材料は、ペレットの形状であり得る。用語“ペレット”は、顆粒(granules)、粒(grains)又は粒子(particles)などのあらゆる種類のペレット様構造を含むとされ得る。この場合、各ペレット、顆粒、粒、又は粒子は、単一相のペレット、顆粒、粒、又は粒子であり得る。これらは球形であり得るか、又は幾つかの他の適切な形状、例えば卵形、楕円体、立方体、菱形(rhomboidal)、角柱、平行六面体(例えば直方形の平行六面体)、偏球形、針状、繊維状、トロイダル、(略6と略50面との間の)多面体、プレートレット形状、菱形であり得、あるいは一様でない形状であり得る。異なるペレットは同一の形状を有することができ、又は異なる形状を有することができる。ペレットは略5から略15mm、又は略5から10、10から15、若しくは8から12mm、例えば略5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15mmの直径を有することができる。それらは、略0.1から2mm、又は略0.1から1、0.1から0.5、0.5から1、若しくは1から2mm、例えば略0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5又は2mmの厚さを有することができる。それらは例えば、略10から略12mmの直径及び略1mmの直径を有することができる。
【0048】
通常ドーピング濃度は、略0.05−10mol%、通常略0.05−5mol%であるが、それは、高ドーピング濃度はより高い損失をもたらすことが多いからである。しかしながら前述の通り、この制限はA及びBの比率及び性質によって決まり得る。誘電率、損失、及び温度安定性の間の適切なバランスが、実用的な用途に対して必要とされる。このドーピングレベルでは、その材料が誘電損失を低く保つのに重要と考えられるルチル構造を維持することが観察された。
【0049】
四価のドーピングイオンは本発明において効果的であると見出されていないが、それは、それらが単に分極率を変化させるだけであり、略10
4の所望の最小値まで誘電率を増加させる十分な駆動力を提供することができないからである。三価のイオンドーピングは、純粋なTiO
2と同様の誘電率を維持することができる。五価のイオンドーピングは、材料特性を絶縁性から半導体性に顕著に変化させることができ、結果として非常に高い損失をもたらすことがある。本発明者は、基本的なメカニズムが以下の(1)及び(2)に関連するとの仮説を立てている:
(1)ドナー−アクセプタ対は全体の電荷バランスを実現することができる。しかしながら、五価のイオンはTiイオン原子価をTi
4+からTi
3+に局所的に誘導するポテンシャルを有する。Ti
3+は、双極子を形成しかつ観察される誘電率に寄与するように局在化された不対電子を有する;
(2)ドーピングイオンは粒子境界において半導体バリア層を作り出し、内部バリア層キャパシタ(IBLCs)を形成し、故に高誘電率をもたらす。
【0050】
本発明の材料の製造プロセスは、固体状態プロセスであり得る。それは溶媒フリープロセスであり得る。それは溶媒の不在下で実行され得る。それは酸化物成分(以下参照)以外の物質を追加することなく実行され得る。本発明の材料を作るために、酸化物成分A
2O
3、B
2O
5及びTiO
2(ここでA及びBは上記の通りである)の混合物が圧縮されてペレットを形成する。従ってその混合物は、A
2O
3、B
2O
5及びTiO
2を含むことができ、又は本質的にA
2O
3、B
2O
5及びTiO
2から構成され得る。酸化物成分の混合は、最終的な混合物がA:B=((4−5n)/3):n、通常1:1のモル比を有する適切な比率であるべきである。比率は、(A+B):Tiの比率が略x:(1−x)であるようにするべきである。従ってA
2O
3とB
2O
5のモル比は、略((4−5n)/3):n、通常略1:1であるべきである。nが略0.5である場合、A
2O
3とB
2O
5のモル比は、略0.9:1と1.1:1、又は略0.9:1と1:1、1:1と1.1:1、0.95:1と1.05:1、0.95:1と1:1、1:1と1.05:1、0.99:1と1.01:1、0.99:1と1:1、1:1と1.01:1、0.999:1と1.001:1、0.999:1と1:1、若しくは1.001:1と1:1との間、例えば略0.9:1、0.91:1、0.92:1、0.93:1、0.94:1、0.95:1、0.96:1、0.97:1、0.98:1、0.99:1、0.995:1、0.999:1、1:1、1.09:1、1.08:1、1.07:1、1.06:1、1.05:1、1.04:1、1.03:1、1.02:1、1.01:1、1.005:1又は1.001:1であり得る。nが他の値であるとき、モル比はもちろん対応して異なる。実際の重量比は、A及びBの原子量によって決まる。TiO
2に結合されたA
2O
3及びB
2O
5のモル比は、(x/2):(1−x)であるべきである。(全てではないが)多くの例では、xは略0.2未満である。結果として、TiO
2に結合されたA
2O
3及びB
2O
5のモル比は一般的に1:tとなり、ここでtは略8より大きい。tは例えば、略8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500若しくは1000より大きいことがあり、又は略8から略1000、若しくは略8から1000、8から500、8から200、8から100、8から50、8から20、10から1000、15から1000、20から1000、50から1000、100から1000、200から1000、500から1000、20から100、50から100、20から50、若しくは50から200、例えば略8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900又は1000であり得る。再度、重量比は、A及びBの原子量によって決まる。酸化物成分(A
2O
3、B
2O
5及びTiO
2)は混合物を形成する際に類似の粒径を有することができる。それらは、互いに略30%を超えて変動しない粒径を有することができる。平均粒径(つまり粒の直径)は、ミクロンオーダーであり得る。
【0051】
酸化物成分を混合して混合物を形成する段階は、結合段階と、後続の及び/又は同時の撹拌(agitation)(旋回、撹拌(stirring)、振動、回転など)段階とを含むことができる。撹拌は、実質的に均一である混合物を生成するのに十分であり得る。この文脈において、均一混合物は、元素A、B及びTiのモル比がその混合物を通じて実質的に均一であるもの、つまり成分がその混合物を通じて均一に分散されているものである。最終混合物が上記の必要とされる組成を有するならば、その成分は任意の順番で、又は全て同時に混合され得る。圧縮ステップは、プレス(例えば油圧プレス)、モールド、ペレタイザー、又は幾つかの他の適切な圧縮デバイスを用いて実行され得る。圧縮は、その混合物をペレットに変形するのに十分な圧力であり得る。それは一軸圧縮であり得る。それは略3から略15トン、又は略3から10、3から5、5から15、10から15、若しくは5から10トン、例えば略3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15トンの圧力であり得る。それは略室温、又は略15から略30°、若しくは略15から20、20から30、若しくは20から25°、例えば略15、20、25又は30°で実行され得る。
【0052】
結果として生じるペレットは次いで、最終材料を製造するためにアニールされる。アニーリングのステップは、閉鎖加熱炉で実行され得る。適切な加熱炉は、略15mm×15mm×15mmのチャンバー寸法を有する。それは、略1300から略1550
oC、又は略1300から1500、1300から1400、1400から1500若しくは1350から1450
oCの間、例えば略1300、1310、1320、1330、1340、1350、1360、1370、1380、1390、1400、1410、1420、1430、1440、1450、1460、1470、1480、1490、1500又は1550
oCの温度で実行され得る。それは、式:(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2のアニールされたペレットを製造するのに十分な時間実行され得る。これは、式中の因子δによって説明されるA
3+イオンの小損失を伴うことがある。それは例えば、少なくとも略5時間、少なくとも略6、7、8、9、10若しくは15時間、又は略5から略20時間、若しくは略5から10、10から20、若しくは10から15時間、例えば略5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20時間にわたって実行され得る。上記温度及び時間の任意の組み合わせが、特定の場合に適切であり得る。結果として生じるペレットは例えば、略9mmの平均直径及び略0.6mmの厚さを有することができる。
【0053】
本発明者は、本発明による多くの適切な材料が等量のA及びBを有するがA:Bの比率はちょうど1:1である必要はないことを見出した。より重要な制限は、材料の全体構造からくる:それは単ルチル相を維持するべきである。従って全電荷がバランスされている限り、nは0.5である必要はない(つまり、A:Bは1:1である必要はない)。Bが過剰である場合(n>0.5)、Ti
4+−Ti
3+、B
5+−Ti
3+又はB
5+−Ti
3+−A
3+結合が化合物中に共存しているとみなされる。Bが少ない場合(n<0.5)、Ti
4+−A
3+、B
5+−Ti
3+又はB
5+−Ti
3+−A
3+結合が共存する。等モルの場合(n=0.5)、主にB
5+−A
3+−Ti
3+結合が存在する。TiO
2は幾つかのカチオンが隙間を占有しているせん断面を介して3+カチオンを収容するかなり大きな能力を有すると認識される。
【0054】
本発明者は、本明細書に記載される材料の大きな誘電率を説明するために、電子ピン止め欠陥双極子機構(an electron−pinned defect−dipole mechanism)の仮説を立てている。この機構では、ホッピング電子が指定された格子欠陥状態によって捕捉及び局在化され(“ピン止め効果”)、巨大な欠陥双極子を生成し、高性能かつ顕著に大きい誘電率を有する材料を結果としてもたらす。本発明者は従って、自由度の低いチタン酸素多面体(TiO
(1−x))を囲んで電子がピン止めされるという方法でそれらが酸化チタンにおいて電子ピン止め欠陥双極子を作り出したと考えている。これらの電子は原子の電子と比較して、(幾つかの多面体領域内に)動くためのより多くの空間を有するため、結果として生じる双極子は巨大であり、これらの双極子の挙動は依然として、自由電子ホッピングというよりはむしろ“固有の”格子欠陥双極子のように振る舞う。これを達成するために、本発明者はドナー置換を導入し、近くのホスト原子の低減に由来する非局在化電子によってホストが占有されることを確保した。新たに生成される酸素空孔又は酸素欠陥環境(正電荷中心)は、別のアクセプタヘテロ原子をホスト格子内に組み込み、次いで元々非局在化している電子と結合して欠陥双極子を形成することによって生成される。最も重要なことに、指定された材料系全体は荷電平衡であり、ドーピング誘導挙動の局在化に対してあまり柔軟性がない。非常に大きい誘電率以外の、このような局在欠陥双極子の形成の最も重要な結果として、非常に低い誘電損失が得られる。これは、電子が1つの格子サイトから別の格子サイトへとホッピングするからというよりはむしろ、電子が局所的に生成された酸素欠陥環境と結合されて外部電場に応答できる巨大双極子を形成するからである、との仮説が立てられている。
【0055】
本発明の材料は、キャパシタにおける高誘電材料として使用され得る。前述のように非常に高い誘電率により、その材料は非常に高いキャパシタンスを有するキャパシタの製造における使用、あるいは非常に小さいキャパシタの製造における使用に適している。それはまた、安全で高効率の固体状態のエネルギー貯蔵デバイス、例えばスーパー及び/又はウルトラキャパシタ材料などにおいて使用されるように、強いポテンシャル(strong potential)を有する。
【0056】
本発明は従って、新たな巨大誘電率材料に関する。これらの材料の何れかは、電子デバイスの最小化及び/又は高電気エネルギー貯蔵デバイスの製造に有益であり得る。それらは、非常に広い温度範囲にわたる比較的低い誘電損失及び適度に良好な温度安定性とともに、10,000を超える誘電率を有することができる。これらの特性は、同様の機能を果たす既存の材料系と比較して優れている。
【0057】
本発明は、広い温度範囲、通常液体窒素温度(略77K)から略200
oCまでにわたって巨大な誘電率を示し、この全温度範囲にわたって略0.3未満の誘電損失を有する、本明細書に記載の材料として重要である。
【0058】
本発明は通常、例えば(In,Nb,Ti)O
2などの修飾ルチル型電子セラミックス、及び巨大誘電率材料としてのそれらの使用に関する。本発明者はここで、実際の用途に対して実現可能な温度安定性を有する顕著に損失の少ない巨大誘電率材料を製造するための設計戦略を開示する。本発明の材料を作るためのプロセスは、TiO
2ルチル内へのドナー−アクセプタ共置換を表すと思われる。結晶化学共置換原理は、酸素空孔、カチオン空孔及びTi
3+格子間イオンなどの固有の欠陥の出現を回避すると考えられる。この設計原理はまた、Ti
3+イオンの形成及び濃度を制御し、Ti
3+カチオンによって作られかつ構造歪みに結び付く局所歪みを収容(又は解放)する能力を提供し、それは結果として、Ti
3+カチオンから準自由電子を局在化し、誘電分極を高め、誘電損失を低減し、温度安定性を向上させる。
【0059】
本発明の材料は、一般化学式:(A
3+,B
5+)
xTi
1−xO
2(ここで、A
3+はBi
3+、In
3+、Ga
3+などの三価の遷移金属イオン、若しくはレアアース元素の3+イオンであるか、又はそれらの混合物であり得、B
5+はNb
5+、W
5+若しくはTa
5+イオンなどの五価のイオン、又はそれらの混合物である)を有する。これらの化合物は通常、例えば10,000を超える巨大な誘電率、妥当な誘電損失、及び良好な温度安定を有する。これらの材料を作るための本明細書に記載のプロセスは、広い温度範囲にわたる0.3未満の誘電損失及び比較的良好な温度安定性(例えば、室温から200
oCまでの温度範囲にわたって1900ppm/K未満である)とともに、10,000を超える高い誘電率の材料を得るのに必要とされる合成手順及び処理条件を含む。従って本明細書では、以下について説明する:
・設計戦略:化学式:(A
3+,B
5+)
xTi
1−xO
2による、TiO
2ルチルにおけるTi
4+サイトへのアクセプタ−ドナー共置換。すべてではないが多くの場合、AとBのモル比は1に等しく、つまり材料は式:(A
3+0.5−δB
5+0.5)
xTi
1−xO
2を有し、xはその材料がルチル構造を有するような値(例えば0<x<0.1又は0.0005<x<0.005)であり、δは0と0.025との間(0と0.025も含む)である。
・Al
3+、Bi
3+、In
3+、Ga
3+及びレアアース元素を含むが、これらに限定されない三価のイオン、並びにそれらの混合物は、TiO
2ルチル内にドープされるアクセプタイオン(A
3+)の候補である。
・Nb
5+、Ta
5+、W
5+を含むが、これらに限定されない五価のイオン、並びにそれらの混合物は、TiO
2内にドープされるドナーイオン(B
5+)としての候補である。
・Nb
5+、Ta
5+、W
5+を含む五価のドナーイオン、並びにそれらの混合物は、近隣に三価のアクセプタイオンA
3+が存在しないとき、TiO
2における近隣のTi
4+イオンのTi
3+イオンへの還元を誘導し得る。Ti
3+イオンの最大量は従って、ドーパントの五価のイオンB
5+の濃度によって制御される。
・(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2ルチル(ここで、A=Bi、In、Ga、Al若しくはレアアース元素、又はこれらの何れか2以上の混合物であり、B=Nb、W及びTa、又はこれらの何れか2以上の混合物であり、固体状態反応による(In
0.5−δNb
0.5)
xTi
1−xO
2を含む)を合成するアプローチ。
・A
2O
3、B
2O
5及びTiO
2の未加工の酸化物粉末をともに混合し、結果として生じる粉末をペレットにプレスし、続いて閉鎖加熱炉において1350
oC−1450
oCの温度範囲にわたってアニーリングをすることによって、高密度(dense)で良好に結晶化された(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2電子セラミックスペレットを合成する手順。
・必要とされる化学組成:(In
0.5−δNb
0.5)
xTi
1−xO
2に従ってIn
2O
3、Nb
2O
5及びTiO
2酸化物粉末を混合し、結果として生じる粉末をペレットにプレスし、続いて閉鎖ボックス加熱炉において1450
oC付近の温度で10時間アニーリングをし、高密度で良好に結晶化されたセラミックスペレットを製造することによって、In
3+及びNb
5+が共ドープされたTiO
2ルチル電子セラミックスを合成する手順。
・結果として生じる材料の平均構造がルチル構造型である、上記の電子セラミックス。
・単一相のペレット形態である、上記の電子セラミックス。
・1kHzから1MHzの広い周波数範囲にわたって室温で、20000を超える(40000まで)の高い誘電率及び0.3未満の誘電損失を有する、(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2電子セラミックスペレット。
・1kHzから1MHzの広い周波数範囲にわたって室温で、10000を超える高い誘電率及び0.3未満の誘電損失を有する、(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2電子セラミックスペレット。
・1MHzにおいて室温で、20000を超える高い誘電率及び0.15未満の誘電損失を有する、(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2電子セラミックスペレット。
・(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2化合物は、−100
oCから+200
oCにおいて誘電率の正の温度係数を有する。
・(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2化合物は、−170
oCから−20
oCにおいて620ppm/
oCの、又は−170
oCから−20
oCにおいてわずか620ppm/
oCの(no more than)誘電率の温度係数を有する。
・(A
3+((4−5n)/3)−δB
5+n)
xTi
1−xO
2化合物は、室温から250
oCまでにおいて1900ppm/
oCの誘電率の温度係数を有する。
・電子セラミックス材料は、室温から200
oCまでの温度範囲において、0.3未満の誘電損失を有する。
・本方法は、すべてのアクセプタ−ドナー共ドープTiO
2ルチル材料を製造するのに広く使用され得る。
【0060】
本発明の材料は、小さいキャパシタンス部品を作るのに使用され得る。例えば、4.7mmの直径及び0.4mmの厚さを有する単層キャパシタは、略52nFのキャパシタンスを有することができる。このキャパシタンスは、同サイズの純粋なTiO
2キャパシタよりも200倍以上高い。反対に、同じキャパシタンスにするためには、キャパシタのサイズ(面積と厚さの比率)は、対応する純粋なTiO
2キャパシタの0.5%に低減され得る。
【0061】
これらのプロトタイプのキャパシタの温度安定性の多くは、実際の用途に対して顕著なポテンシャルを示す標準X7Rキャパシタコードの要件を満たす。巨大な誘電率を有する材料の正確な組成は、ユーザの特定の要件(異なる温度範囲にわたる温度安定性、又は異なる誘電損失要件など)に応じて最適化され得る。
【0062】
図1は、室温でのドープTiO
2ルチルのX線回折パターンを示す。XRDパターンは、0.05%から5%の範囲でのIn+Nbドーピング濃度に対して、ドーピングがTiO
2の平均ルチル構造を変更しないことを示す。ドーパント濃度が増加すると、パターンは低角度に向かって僅かにシフトする。この角度の減少は通常、ユニットセルパラメータの増加を示すため、このことは、In
3++Nb
5+の平均半径がTi
4+より大きいときにIn
3+及びNb
5+イオンが格子内でTi
4+に置換される、という証拠を提供し得る。
【0063】
図2は、室温でのIn+NbドープTiO
2の誘電周波数スペクトルを示す。この図面から、低周波数範囲における誘電分極が電子又はイオン伝導挙動に寄与できる空間電荷から生じることを見ることができる。結果として、損失が周波数の増加とともに顕著に減少する一方、誘電率はより高いが僅かに減少する。デバイタイプの誘電分極緩和がまた、1KHzを超える周波数範囲で観察され、ここで、誘電率は減少ステップを有するが、対応する周波数範囲において誘電損失ピークが存在する。誘電率及び損失はともに、1MHz付近の高い周波数範囲において周波数依存性をあまり示さず、このタイプの材料が高周波数エネルギー貯蔵における使用に適切であり得ることを示唆する。
【0064】
図3は、ドーパント濃度に対するIn+NbドープTiO
2の誘電率及び損失正弦を示す。500KHzで測定されるとき、ドープTiO
2の誘電率は2×10
4を超え、対応する損失は0.15未満であることが見出される。
【0065】
図4は、室温範囲未満の温度での誘電率と温度との関係を説明する典型的な曲線である。ドープTiO
2が測定された温度範囲にわたってその高誘電率を実質的に一定に維持することは明らかである。誘電率のその温度係数は、略−170
oCから略−20
oCの範囲にわたって略650ppm/
oC未満である。
【0066】
図5は、室温を超える温度でのIn+NbドープTiO
2の誘電率(a)及び損失(b)を示す。これらの曲線は、ドープTiO
2が室温から略200
oCの温度範囲で非常に弱い温度依存性を有することを示し、その優れた温度安定性(誘電率の温度係数は、大体0.2%未満である)及び高いエネルギー貯蔵能力を示唆する。
図5では、異なる曲線は、異なる周波数で得られたデータを表す。実線は1kHzで測定され、破線は10kHzで測定され、点線は100kHzで測定された結果である。
【0067】
図6は、ボールミリングの使用、添加物の添加、及びアニーリング温度と持続時間の変更、並びに温度の上昇速度などの処理条件及びアプローチを最適化した後の、0.05%から0.5%、5%、10%の異なる(In+Nb)濃度を有する(In+Nb)ドープTiO
2の周波数依存誘電特性を示す。
【0068】
図7は、ボールミリングの使用、添加物の添加、及びアニーリング温度と持続時間の変更、並びに温度の上昇速度などの処理条件及びアプローチを最適化した後の、10%(In+Nb)TiO
2の温度依存誘電特性を示す。
【0069】
こうして本発明者は、高性能ソリッドステートスーパー(又はウルトラ)キャパシタでの使用に適した材料を開発した。現在の商業市場におけるスーパー(又はウルトラ)キャパシタに関連する材料で匹敵するものは現在存在しないが、それは、全ての現存の巨大誘電率材料は、高い誘電損失、悪い温度安定性、及び/又は再現性のない処理条件などの問題を有するからである。従って、スーパー(ウルトラ)キャパシタの開発のための本発明の使用は、顕著な商業的可能性を有する。本発明の利点は以下を含む:
・単純なホスト化合物及び単純な処理:TiO
2ルチルは単純な化合物である。例えばそれは、非常に高い誘電率を達成するために、0.05%のIn
3+及びNb
5+の共ドープ(式:(A
3+0.5−δB
5+0.5)
xTi
1−xO
2においてx=0.0005を表す)のみを必要とする。焼結のみのワンステップが、高密度かつ高品質の結晶化サンプルを達成するのに十分である。
・本発明の固有の特徴は、誘電率の温度係数並びに誘電損失正弦がともに相対的に低いことであり、それは主な利点である。
・本発明の材料は、有害な元素又は化合物を使用せずに作ることができる。
【0070】
[実施例1]
バルク量の各未加工試薬が、その貯蔵容器から抽出され、H
2Oの残留物を除去するために>12時間にわたって150
oCオーブンの中に配置された。高純度(>99.9%)の酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ニオビウム(Nb
2O
5)及びTiO
2粉末が次いで、表1に示される量で無菌秤量容器内において秤量され、>15分間めのう乳鉢及び乳棒を用いて手で、エタノール下で活発に混合された。混合された粉末は室温で放置されて乾燥され、略1時間にわたって150
oCで熱処理され、次いでステンレス鋼シリンダー状ダイ内に挿入され、略4.5メートルトンの圧力の印加により圧縮され、直径13mmのシリンダー状“ディスク”形状サンプルを形成した。これらは、1400
oC設定のボックス炉において10時間にわたって焼結され、高密度である結晶セラミックスペレットを形成した。周囲の室温(略23
oC)から400
oCにわたる温度で測定された、これらの焼結されたペレットの誘電率及び誘電損失曲線が、それぞれ
図5a及び
図5bに示される。これらの図面は、特に200
oC未満の温度において、サンプルが4×10
4を超える良好な誘電率と、高誘電率材料に対する非常に低い損失正弦(略0.15)と、を有することを明示する。
【0072】
[実施例2]
TiO
2(99.99%)のルチル結晶がAldrich Co.によって提供され、Nb
2O
5(99.99%)がStanford Materials Co.によって提供され、In
2O
3(99.99%)がAldrich Co.によって提供された。これらは200
oCで保管され、吸着された水は完全に除去された。(Nb+In)共ドープルチルTiO
2[式:(In
0.5Nb
0.5)
xTi
1−xO
2]のセラミックスが、実施例1に記載のハンドグライディングの代わりにボールミリングを使用することは別として、実施例1に記載のプロセスと類似の従来のソリッドステート方法によって調製された。ここでxは、Nb及びInのドーピングレベルである。最終的なセラミックスに対する合成条件は、アニーリング温度が1400
oC、持続時間が10時間、かつ上昇速度が2
oC/minに最適化された。同一の合成手順がまた、InがAl、Ga又はScの何れかによって置き換えられた他のサンプルに対しても使用された。唯一の違いは、アニーリング温度が異なる元素に対して最適化されたことであった。
【0073】
相対的に低い誘電損失を有する高誘電率が、ドナーであるニオビウム(Nb)及びアクセプタであるインジウム(In)のルチルTiO
2ホストへの同時組み込みによる局所的電子ピン止め欠陥双極子の形成、つまり(In
0.5Nb
0.5)
xTi
1−xO
2により達成された。例えば0.05%(Nb+In)ドーパントなどの非常に低い(Nb+In)のドーピングレベルは、室温で非常に大きい誘電率を生じさせると見出され、その誘電率は略2×10
4程度であり、一方で誘電損失(tan δ)は0.05未満であった。より高いドーピングレベルは、誘電率をほぼ周波数独立性とし、一方で、誘電率が既に略6×10
4まで追加的に増加していても、広い周波数範囲にわたって、tan δを10%(Nb+In)ドーパントに対して依然として0.04未満、特に略0.02に維持した。しかしながら、例えば20%などの10%を超えるドーピングレベルは、相対的に高い誘電損失に影響を及ぼす界面分極の出現につながり、また、第2の不純物相の出現による低周波数誘電率の巨大な増加につながった。
【0074】
電子ピン止め欠陥双極子の形成の別の重要な結果は、巨大な誘電率及び誘電損失(tan δ)が80Kから450Kの範囲にわたってほぼ温度独立性を示すことであった。温度が液体窒素温度付近まで低下した場合でさえも、低温誘電緩和は検知されなかった。
【0075】
[実施例3]
(Al
0.5Nb
0.5)
xTi
1−xO
2(x=0.5%)が、1500
oCで5時間アニールされた。
図8は、結果として生じる生成物の誘電体誘電率及び損失の周波数依存性を示す。室温での広い周波数範囲において、0.05未満の全体の損失とともに、300,000を超える高い誘電体誘電率が達成された。
【0076】
(Al
0.08Nb
0.75)
xTi
1−xO
2(x=0.5%)が、1500
oCで4時間合成された。
図9は、この生成物の誘電体誘電率及び損失の周波数依存性を示し、10,000を超える誘電体誘電率及び0.1未満の損失を提供した。