(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記強度分率は、全ての前記少なくとも2つの波長にわたる強度の和を基準としたある波長で測定された透過光の比率として定義されることを特徴とする請求項6に記載の分析器。
前記強度分率は、全ての前記少なくとも2つの波長にわたる強度の和を基準としてある波長で測定された透過光の比率として定義されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、分光法を用いて薬剤又は他の物質を検証又は識別するか又は他に特徴付けるための分析器及び/又は方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に説明する実施形態は、薬剤の特徴付けに関するが、本発明は、薬剤を特徴付けることだけに限定されることはない。当業者は、本明細書における開示内容を他の物質の特徴付けにも適用することができることを認めるであろう。
【0006】
一態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響放射線を表す出力を与える試料検出器と、出力から試料係数を決定し、かつ試料係数と訓練試料から決定された訓練係数とを用いて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるためのプロセッサとを含む試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器析器にあるということができる。
【0007】
好ましくは、試料検出器出力は、少なくとも2つの波長で検出器によって検出された強度を表し、試料係数を決定する段階は、各波長でのスペクトル強度分率を決定して使用する段階を含む。
【0008】
好ましくは、分析器は、少なくとも2つの波長で検出された強度を表す出力を与える少なくとも2つの波長で基準電磁放射線を検出するための基準検出器を更に含み、各波長でのスペクトル強度分率は、基準検出器からの出力を用いて正規化されたスペクトル強度分率である。
【0009】
好ましくは、分析器は、少なくとも2つの波長で検出器によって検出された強度を表す複数の訓練試料に関する訓練出力を試料検出器から取得するために複数の訓練試料に対して使用され、プロセッサは、訓練出力の各波長でのスペクトル強度分率を決定し、それを使用することによって訓練係数を決定するように構成される。
【0010】
好ましくは、スペクトル強度分率は、基準検出器からの出力を用いて正規化されたスペクトル強度分率である。
【0011】
好ましくは、強度分率は、全ての少なくとも2つの波長にわたる強度の和を基準としたある波長で測定された透過光の比率として定義される。
【0012】
好ましくは、各波長での正規化スペクトル強度は、プロセッサ内で下式を用いて決定される。
ここで、f
mは、m番目の波長で検出された電磁放射線強度(又はそれに関する処理された又は未処理のいずれかのパラメータ)であり、好ましくは、強度f
mは、適切な場合に、基準強度(任意的にその平均)に対する試料強度(任意的にその平均)の比、又は基準強度(任意的にその平均)に対する訓練強度(任意的にその平均)の比であり、Σf
mは、少なくとも2つの波長の全てにわたる強度の和である。
【0013】
好ましくは、試料及び/又は訓練試料は、希釈剤中である濃度を有する物質を含み、試料係数及び/又は訓練係数は、濃度に依存しない。
【0014】
好ましくは、各試料係数は、下式によって決定される。
ここで、
(好ましくは、無希釈物質と希釈剤の間の勾配又は差である)が成り立ち、Xは、希釈剤中の物質の濃度であり、Bは、盲検試験試料を表し、g
Bm(x)は、未知濃度を有する試料のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率である。
【0015】
好ましくは、各訓練係数は、下式によって決定される。
ここで、
(好ましくは、無希釈物質と希釈剤の間の勾配又は差である)が成り立ち、
は、無希釈試料(無希釈物質である)のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率である。
【0016】
好ましくは、分析器は、試料に向けて放出される電磁放射線が変調電磁放射線であり、試料係数を決定する前に、プロセッサが、少なくとも2つの波長の各々における強度から望ましいスペクトル成分を抽出して暗電流を排除するように変調器を更に含む。
【0017】
好ましくは、訓練係数を決定する前に、プロセッサにより、望ましいスペクトル成分が、少なくとも2つの波長の各々における強度から抽出され、暗電流が排除される。
【0018】
好ましくは、プロセッサは、検出された被影響変調電磁放射線を表す出力に正弦関数及び余弦関数を乗算し、変調振動周期にわたって積分することにより、望ましいスペクトル成分を抽出し、暗電流成分を除去する。
【0019】
好ましくは、プロセッサは、変調された検出被影響放射線を表す出力に対してフーリエ変換を実行し、変換された出力から暗電流成分を除去することによって望ましいスペクトル成分を抽出する。
【0020】
好ましくは、分析器は、試料の温度を測定し、プロセッサに温度出力を与える温度センサを更に含み、プロセッサは、少なくとも2つの波長での訓練係数の望ましいスペクトル成分を試料の温度に対して補正する。
【0021】
好ましくは、温度は、下式に従って補正される。
ここで、Iは、試料に対して特定の波長で検出器によって検出される被影響電磁放射線の強度であり、T
tは、被影響電磁放射線が波長で検出された時の訓練試料の温度であり、T
bは、被影響電磁放射線が波長で検出された時の未知試料の温度であり、ΔT=T
t−T
bは、訓練試料温度と未知試料温度の間の試料温度差であり、dI/dTは、与えられた波長での試料に関する測定強度と測定温度の間の線形関係の勾配である。
【0022】
好ましくは、これらの係数と訓練試料から決定された訓練係数とを用いて、試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるために、プロセッサは、訓練試料の各々に関する各訓練係数に対する重みの組合せに基づいて、各訓練試料に関する訓練値を決定又は取得し、各試料係数に対する重みの組合せに基づいて、試料に関する試料値を決定又は取得し、訓練値と試料値の間の関係に基づいて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける。
【0023】
好ましくは、プロセッサが試料の濃度を決定する段階を更に含む。
【0024】
好ましくは、試料の濃度を決定するために、プロセッサは、下式を使用する。
ここで、xは、濃度であり、
が成り立ち、Xは、希釈剤中の物質の濃度であり、Bは、盲検試験試料を表し、g
Bm(x)は、未知濃度を有する試料のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率であり、
が成り立ち、
は、無希釈試料(無希釈物質である)のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率である。
【0025】
好ましくは、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0026】
好ましくは、電磁放射線は、各々が異なる波長を有する複数の電磁放射線ビームを含む。
【0027】
好ましくは、光源は、光検出器を含むレーザであり、光検出器は、基準検出器である。
【0028】
好ましくは、液体は水であり、6つの電磁放射線ビームが存在し、波長は、実質的に1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、及び1850nmであり、任意的に1450nmはアンカー波長である。
【0029】
好ましくは、試料は、IV輸液セット又はシリンジのような静脈内投与デバイス、又は試験セル、試験管、又はフローセルなどのような他の受容器内にある。
【0030】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、検出された被影響放射線を表す検出出力を与える段階と、出力から試料係数を決定する段階と、試料係数と訓練試料から決定された訓練係数とを用いて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける段階とを含む試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法にあるということができる。
【0031】
好ましくは、検出出力は、少なくとも2つの波長で検出された強度を表し、試料係数を決定する段階は、各波長でのスペクトル強度分率を決定して使用する段階を含む。
【0032】
好ましくは、本方法は、少なくとも2つの波長で基準電磁放射線を検出し、少なくとも2つの波長で検出された強度を表す出力を与える段階を更に含み、各波長でのスペクトル強度分率は、基準検出器からの出力を用いて正規化されたスペクトル強度分率である。
【0033】
好ましくは、本方法は、複数の訓練試料に対して、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして各訓練試料に向けて放出する段階と、各訓練試料に対して、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、検出された被影響放射線を表す検出出力を与える段階と、各試料に対して、訓練出力の各波長でスペクトル強度分率を決定して使用することによって出力から訓練係数を決定する段階とを更に含む。
【0034】
好ましくは、スペクトル強度分率は、基準検出器からの出力を用いて正規化されたスペクトル強度分率である。
【0035】
好ましくは、強度分率は、全ての少なくとも2つの波長にわたる強度の和を基準としたある波長で測定された透過光の比率として定義される。
【0036】
好ましくは、各波長での正規化スペクトル強度は、下式を用いて決定される。
ここで、f
mは、m番目の波長で検出された電磁放射線強度(又はそれに関する処理された又は未処理のいずれかのパラメータ)であり、好ましくは、強度f
mは、適切な場合に、基準強度(任意的にその平均)に対する試料強度(任意的にその平均)の比、又は基準強度(任意的にその平均)に対する訓練強度(任意的にその平均)の比であり、Σf
mは、少なくとも2つの波長の全てにわたる強度の和である。
【0037】
好ましくは、試料及び/又は訓練試料は、希釈剤中である濃度を有する物質を含み、試料係数及び/又は訓練係数は、濃度に依存しない。
【0038】
好ましくは、各試料係数は、下式によって決定される。
ここで、
(好ましくは、無希釈物質と希釈剤の間の勾配又は差である)が成り立ち、Xは、希釈剤中の物質の濃度であり、Bは、盲検試験試料を表し、g
Bm(x)は、未知濃度を有する試料のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率である。
【0039】
好ましくは、各訓練係数は、下式によって決定される。
ここで、
(好ましくは、無希釈物質と希釈剤の間の勾配又は差である)が成り立ち、
は、無希釈試料(無希釈物質である)のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率である。
【0040】
好ましくは、試料に向けて放出される電磁放射線は変調電磁放射線であり、試料係数を決定する前に、少なくとも2つの波長の各々における強度から望ましいスペクトル成分が抽出され、暗電流が排除される。
【0041】
好ましくは、訓練係数を決定する前に、望ましいスペクトル成分が、少なくとも2つの波長の各々における強度から抽出され、暗電流が排除される。
【0042】
好ましくは、検出された被影響変調電磁放射線を表す出力に正弦関数及び余弦関数を乗算し、変調振動周期にわたって積分することにより、望ましいスペクトル成分が抽出され、暗電流成分が除去される。
【0043】
好ましくは、変調された検出被影響放射線を表す出力に対してフーリエ変換を実行し、変換された出力から暗電流成分を除去することにより、望ましいスペクトル成分が抽出される。
【0044】
好ましくは、本方法は、試料の温度を測定し、プロセッサに温度出力を与え、少なくとも2つの波長での訓練係数の望ましいスペクトル成分を試料の温度に対して補正する段階を更に含む。
【0045】
好ましくは、温度は、下式に従って補正される。
ここで、Iは、試料に対して特定の波長で検出器によって検出される被影響電磁放射線の強度であり、T
tは、被影響電磁放射線が波長で検出された時の訓練試料の温度であり、T
bは、被影響電磁放射線が波長で検出された時の未知試料の温度であり、ΔT=T
t−T
bは、訓練試料温度と未知試料温度の間の試料温度差であり、dI/dTは、与えられた波長での試料に関する測定強度と測定温度の間の線形関係の勾配である。
【0046】
好ましくは、これらの係数と訓練試料から決定された訓練係数とを用いて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるために、訓練試料の各々に関する各訓練係数に対する重みの組合せに基づいて、各訓練試料に関する訓練値を決定又は取得する段階と、各試料係数に対する重みの組合せに基づいて、試料に関する試料値を決定又は取得する段階と、訓練値と試料値の間の関係に基づいて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける段階とを含む。
【0047】
好ましくは、本方法は、試料の濃度を決定する段階を更に含む。
【0048】
好ましくは、試料の濃度を決定するために、プロセッサは、下式を使用する。
ここで、xは、濃度であり、
が成り立ち、Xは、希釈剤中の物質の濃度であり、Bは、盲検試験試料を表し、g
Bm(x)は、未知濃度を有する試料のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率であり、
が成り立ち、
は、無希釈試料(無希釈物質である)のスペクトル強度分率であり、
は、希釈剤のスペクトル強度分率である。
【0049】
好ましくは、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0050】
好ましくは、電磁放射線は、各々が異なる波長を有する複数の電磁放射線ビームを含む。
【0051】
好ましくは、液体は水であり、6つの電磁放射線ビームが存在し、波長は、実質的に1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、及び1850nmであり、任意的に1450nmはアンカー波長である。
【0052】
好ましくは、試料は、IV輸液セット又はシリンジのような静脈内投与デバイス、又は試験セル、試験管、又はフローセルなどのような他の受容器内にある。
【0053】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、各波長で放出電磁放射線を検出し、各波長で検出された基準強度である放出電磁放射線を表す検出出力を与える段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、各波長で検出された出力強度である検出された被影響放射線を表す検出出力を与える段階と、試料の温度を測定する段階と、出力から試料係数を決定する段階と、試料係数と訓練試料から決定された訓練係数とを用いて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける段階とを含む試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法にあるということができ、試料係数を決定する段階は、基準強度及び出力強度の出力から暗電流を排除する段階と、基準強度及び出力強度からスペクトル強度分率を決定する段階と、スペクトル強度分率から濃度非依存の係数を決定する段階とを含み、訓練係数は、試料の温度に対して温度補正されたデータから決定しなければならない。
【0054】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響放射線を表す出力を与える試料検出器と、出力から試料係数を決定し、かつ試料係数と訓練試料から決定された訓練係数とを用いて試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるためのプロセッサとを含む試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器にあるということができ、試料係数は、全ての波長にわたって得られた正規化スペクトル強度の勾配/差の二乗和平方根に対して正規化された特定の波長での正規化スペクトル強度の勾配/差から見出され、正規化スペクトル強度の各勾配/差は、特定の波長での無希釈形態の試料及び希釈剤に関する検出器出力から得られ、各正規化スペクトル強度は、試料に関する全ての波長での検出強度の和に対する特定の波長での検出強度から見出される。
【0055】
波長は、試験波長に関連している。
【0056】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響放射線を表す出力を与える試料検出器と、検出された被影響電磁放射線を表す検出器出力から試料を識別又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬剤試料を識別又は検証するための分析器にあるということができ、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0057】
好ましくは、電磁放射線は、各々が異なる波長を有する複数の電磁放射線ビームを含む。
【0058】
好ましくは、薬剤試料を検証又は識別する段階は、n薬剤のセットのうちの1つに関する比較データと対比してのものであり、電磁放射線は、少なくともlog
2n個の異なる波長を1つ又はそれよりも多くのビーム内に含む。
【0059】
好ましくは、異なる波長は、1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内の複数のスペクトル特性の少なくとも一部にわたって広がるか又はこれらを捕捉する。
【0060】
好ましくは、液体スペクトルは、2つ又はそれよりも多くのスペクトル特性を含み、各スペクトル特性は、液体スペクトルの領域内に収まり、又はこの領域にわたって広がり、各波長は、これらの領域のうちの1つの領域内に収まる。
【0061】
好ましくは、各領域は、波長領域によって定められる。
【0062】
好ましくは、スペクトル特性は、液体スペクトルのピーク、トラフ、湾曲点、安定点又は安定領域、平坦部、屈曲部、及び/又は傾斜部を含む。
【0063】
好ましくは、液体は水であり、1300nmと1400nmの間の第1の領域、1400nmと1500nmの間の第2の領域、1500nmと1600nmの間の第3の領域、1600nmと1700nmの間の第4の領域、1700nmと1800nmの間の第5の領域、及び1800nmと200nmの間の第6の領域という水スペクトルの領域内に収まるスペクトル特性を含む。
【0064】
好ましくは、電磁放射線は、液体スペクトル内の安定領域の波長の近傍(又は安定領域にわたる領域内)にアンカー波長を有する。
【0065】
好ましくは、各波長は、容易/廉価に入手可能な光源によって生成される波長に更に対応する。
【0066】
好ましくは、光源は、各々が固定の又は調整可能な波長での電磁放射線ビームを放出するように構成された複数のレーザである。
【0067】
好ましくは、試料に向けて放出される電磁放射線ビームを変調するための変調器を含み、試料検出器によって検出される変調された検出被影響放射線がもたらされ、プロセッサは、検出器からの出力から試料を識別又は検証する段階の一部として検出された被影響変調電磁放射線を表す出力から暗電流成分を除去する。
【0068】
任意的に、プロセッサは、暗電流成分を除去するために、検出された被影響変調電磁放射線を表す出力に正弦関数及び余弦関数を乗算し、変調振動周期にわたって積分することにより、暗電流成分を除去する。
【0069】
任意的に、プロセッサは、変調された検出被影響放射線を表す出力に対してフーリエ変換を実行し、変換されたものから暗電流成分を除去することによって暗電流成分を除去する。
【0070】
好ましくは、プロセッサは、基準情報を用いて薬剤試料を識別又は検証する。
【0071】
好ましくは、アンカー波長での被影響電磁放射線又はアンカー波長を含む電磁放射線ビームが基準情報を与える。
【0072】
好ましくは、分析器は、複数の電磁放射線ビームを基準試料に向けるための光学デバイスと、基準試料によって影響を受けた被影響電磁放射線ビームを検出して基準情報を取得し、この基準情報をプロセッサに渡す基準検出器とを更に含む。
【0073】
好ましくは、検出器及び/又は光源は、温度安定性を与えるために、好ましくは、ペルチェデバイスを閉ループシステムに用いて温度補償される。
【0074】
好ましくは、各電磁放射線ビームは、高強度狭帯域光ビームである。
【0075】
好ましくは、検出器は、被影響放射線の波長に対応する応答を有するようにバイアスされた広帯域光ダイオードである。
【0076】
好ましくは、複数のレーザから放出された電磁放射線ビームは、レーザビームを試料経路に位置決めするためのカルーセル又はキャリッジデバイス、又はプリズム、回折格子、ビームスプリッター、又は試料経路に沿うように放射線ビームを向け直すための他の光学デバイスのうちの1つ又はそれよりも多くによって試料経路に向けられる。
【0077】
好ましくは、プロセッサは、薬剤試料情報及び任意的に各波長に対する基準情報を与える薬剤試料からの被影響電磁放射線を表す出力を受け入れ、プロセッサは、この薬剤試料情報及び任意的に各波長に対する基準情報を用いて薬剤試料情報の代表値を決定する。
【0078】
好ましくは、試料情報及び基準情報は、各電磁放射線ビームに対して強度と波長とを相関付ける。
【0079】
好ましくは、代表値は、試料情報の間及び任意的に基準情報の間の最良適合に対応する。
【0080】
好ましくは、各波長での電磁放射線ビームに関する代表値は、薬剤試料を検証又は識別するのに格納値と比較される。
【0081】
好ましくは、液体は水であり、6つの電磁放射線ビームが存在し、波長は、実質的に1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、及び1850nmであり、任意的に1450nmはアンカー波長である。
【0082】
好ましくは、試料は、IV輸液セット又はシリンジのような静脈内投与デバイス、又は試験セル、試験管、又はフローセルなどのような他の受容器内にある。
【0083】
好ましくは、光源は、光検出器を含むレーザであり、光検出器は、レーザからの電磁放射線を検出し、基準情報を出力する。
【0084】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出して、検出された被影響放射線を表す出力を与える段階と、検出された被影響電磁放射線を表す出力から試料を識別又は検証する段階とを含む液体ベースの薬剤試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法にあるということができ、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0085】
好ましくは、電磁放射線は、各々が異なる波長を有する複数の電磁放射線ビームを含む。
【0086】
好ましくは、薬剤試料を検証又は識別する段階は、n薬剤のセットのうちの1つに関する比較データと対比してのものであり、電磁放射線は、少なくともlog
2n個の異なる波長を1つ又はそれよりも多くのビーム内に含む。
【0087】
好ましくは、異なる波長は、1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内の複数のスペクトル特性の少なくとも一部にわたって広がるか、又はこれらを捕捉する。
【0088】
好ましくは、液体スペクトルは、2つ又はそれよりも多くのスペクトル特性を含み、各スペクトル特性は、液体スペクトルの領域内に収まり、又はこの領域にわたって広がり、各波長は、これらの領域のうちの1つの領域内に収まる。
【0089】
好ましくは、各領域は、波長領域によって定められる。好ましくは、スペクトル特性は、液体スペクトルのピーク、トラフ、湾曲点、安定点又は安定領域、平坦部、屈曲部、及び/又は傾斜部を含む。
【0090】
好ましくは、液体は水であり、1300nmと1400nmの間の第1の領域、1400nmと1500nmの間の第2の領域、1500nmと1600nmの間の第3の領域、1600nmと1700nmの間の第4の領域、1700nmと1800nmの間の第5の領域、及び1800nmと200nmの間の第6の領域という水スペクトルの領域内に収まるスペクトル特性を含む。
【0091】
好ましくは、電磁放射線は、液体スペクトル内の安定領域の波長の近傍(又は安定領域にわたる領域内)にアンカー波長を有する。
【0092】
好ましくは、各波長は、容易/廉価に入手可能な光源によって生成される波長に更に対応する。
【0093】
好ましくは、電磁放射線は、各々が固定の又は調整可能な波長での電磁放射線ビームを放出するように構成された複数のレーザを含む光源を用いて生成される。
【0094】
好ましくは、変調された検出被影響放射線を与えるために試料に向けて放出された電磁放射線ビームを変調する変調器が使用され、検出器からの出力から試料を識別又は検証する段階は、検出された被影響変調電磁放射線を表す出力から暗電流成分を除去する段階を含む。
【0095】
任意的に、暗電流成分を除去する段階は、暗電流成分を除去するために、検出された被影響変調電磁放射線を表す出力に正弦関数及び余弦関数を乗算し、変調振動周期にわたって積分する段階を含む。
【0096】
任意的に、暗電流成分を除去する段階は、変調された検出被影響放射線を表す出力に対してフーリエ変換を実行し、変換されたものから暗電流成分を除去する段階を含む。
【0097】
好ましくは、識別又は検証する段階は、基準情報を用いて薬剤試料を識別又は検証するプロセッサによって実施される。
【0098】
好ましくは、アンカー波長での被影響電磁放射線又はアンカー波長を含む電磁放射線ビームが基準情報を与える。
【0099】
好ましくは、本方法は、光学デバイスを用いて複数の電磁放射線ビームを基準試料に向ける段階と、基準検出器を用いて基準試料によって影響を受けた被影響電磁放射線ビームを検出して基準情報を取得し、この基準情報をプロセッサに渡す段階とを更に含む。
【0100】
好ましくは、本方法は、温度安定性を与えるために、好ましくは、サーミスタ及びペルチェデバイスを閉ループシステムに用いて検出器及び/又は光源を温度補償する段階を更に含む。
【0101】
好ましくは、各電磁放射線ビームは、高強度狭帯域光ビームである。
【0102】
好ましくは、検出器は、被影響放射線の波長に対応する応答を有するようにバイアスされた広帯域光ダイオードである。
【0103】
好ましくは、複数のレーザから放出された電磁放射線ビームは、レーザビームを試料経路に位置決めするためのカルーセル又はキャリッジデバイス、又はプリズム、回折格子、ビームスプリッター、又は試料経路に沿うように放射線ビームを向け直すための他の光学デバイスのうちの1つ又はそれよりも多くによって試料経路に向けられる。
【0104】
好ましくは、プロセッサは、薬剤試料情報及び任意的に各波長に対する基準情報を与える薬剤試料からの被影響電磁放射線を表す出力を受け入れ、プロセッサは、薬剤試料情報及び任意的に各波長に対する基準情報の代表値を決定する。
【0105】
好ましくは、試料情報及び基準情報は、各電磁放射線ビームに対して強度と波長とを相関付ける。
【0106】
好ましくは、代表値は、試料情報の間及び任意的に基準情報の間の最良適合に対応する。
【0107】
好ましくは、各波長での電磁放射線ビームに関する代表値は、薬剤試料を検証又は識別するのに格納値と比較される。
【0108】
好ましくは、液体は水であり、6つの電磁放射線ビームが存在し、波長は、実質的に1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、及び1850nmであり、1450nmはアンカー波長である。
【0109】
好ましくは、試料は、IV輸液セット又はシリンジのような静脈内投与デバイス、又は試験セル、試験管、又はフローセルなどのような他の受容器内にある。
【0110】
好ましくは、各レーザは光検出器を含み、光検出器は、レーザからの電磁放射線を検出し、基準情報を出力する。
【0111】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる選択波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出する試料検出器と、検出された被影響電磁放射線から試料を識別又は検証するためのプロセッサとを含む液体担体中の薬剤試料(又は他の物質)を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器にあるということができ、各波長は、液体担体のスペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にあり、液体担体に適する分析範囲内に収まるように選択される。
【0112】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる選択波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出する段階と、検出された被影響電磁放射線から試料を識別又は検証する段階とを含む液体担体中の薬剤試料(又は他の物質)を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法にあるということができ、各波長は、液体担体のスペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にあり、液体担体に適する分析範囲内に収まるように選択される。
【0113】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出する試料検出器と、検出された被影響電磁放射線から試料を識別又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬剤試料(又は他の物質)を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器にあるということができ、各波長は、液体担体中の薬剤に関する改善された識別/検証を可能にする分析範囲に収まり、各波長は、分析範囲にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0114】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出する段階と、検出された被影響電磁放射線から試料を識別又は検証する段階とを含む液体ベースの薬剤試料(又は他の物質)を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法にあるということができ、各波長は、液体担体中の薬剤に関する改善された識別/検証を可能にする分析範囲に収まり、各波長は、分析範囲にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0115】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む変調電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響変調電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響変調放射線を表す出力を与える試料検出器と、出力から暗電流を除去することを含む検出された被影響変調電磁放射線を表す出力から試料を識別又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬剤試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器であり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある。
【0116】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む変調電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響変調電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響放射線を表す出力を与える段階と、出力から暗電流を除去する段階を含む検出された被影響変調電磁放射線を表す出力から試料を識別又は検証する段階とを含む液体ベースの薬剤試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法であり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある。
【0117】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出し、かつ放出電磁放射線の電力を測定するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響放射線を表す出力を与える試料検出器と、放出電磁放射線の測定電力を使用することを含む検出された被影響電磁放射線を表す出力から試料を識別又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬剤試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器であり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある液体スペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍(又はスペクトル特性にわたる領域内)にある。
【0118】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出する段階と、放出電磁放射線の電力を測定する段階と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出し、かつ検出された被影響放射線を表す出力を与える段階と、放出電磁放射線の測定電力を使用する段階を含む検出された被影響電磁放射線を表す出力から試料を識別又は検証する段階とを含む液体ベースの薬剤試料を識別又は検証するか又は他に特徴付ける方法であり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある。
【0119】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つの異なる波長を含む電磁放射線を少なくとも1つのビームとして試料に向けて放出するための電磁放射線源と、試料によって影響を受けた放出電磁放射線からもたらされる被影響電磁放射線を検出する試料検出器と、検出された被影響電磁放射線から試料を識別又は検証するためのプロセッサとを含む試料を識別又は検証するか又は他に特徴付けるための分析器であり、波長のうちの各波長又は少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にある。
【0120】
好ましくは、光源は、各々が固定の又は調整可能な波長の電磁放射線ビームを放出するように構成された単一パッケージ内の複数のレーザである。
【0121】
本明細書に開示する一連の数への言及(例えば、1から10まで)は、当該範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)も組み込み、同じく当該範囲内の有理数のいずれかの範囲(例えば、2から8まで、1.5から5.5まで、及び3.1から4.7まで)も組み込むように意図している。
【0122】
本明細書に使用する「含んでいる」という表現は、「から少なくとも部分的に構成される」を意味する。「含む」及び「からなる」のような関連表現も同様に解釈されるものとする。
【0123】
本発明はまた、広義には、個々に又は集合的に本出願の本明細書に言及するか又は示す部分、要素、及び特徴、更にこれらの部分、要素、又は特徴のうちのいずれか2つ又はそれよりも多くから構成されるいずれかの又は全ての組合せにあるということができ、本明細書で本発明がかかわる当業技術で公知の均等物を有する特定の完全体に言及する場合に、そのような公知の均等物は、個々に示されているかのように本明細書に組み込まれていると見なされる。
【0124】
本発明の好ましい実施形態を以下の図面を参照して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0126】
概要
図1は、薬剤又は他の試料(例えば、血液、生体試料等)を検証又は識別(すなわち、分析/特徴付け)するための本発明による分光分析器10(例えば、分光光度計)の概要を示している。「薬剤」という表現は、臨床医によって管理される9(例えば、病院、処方箋、又は薬局を通して)、又は自由に入手可能である患者を治療するためのいずれかの薬剤、又は他の薬物、又は物質を網羅すると広義に解釈しなければならない。分析器は、未知の試料を分析して検証/識別するか又は他に特徴付ける盲検試験に対して使用することができる。分析器は、盲検試験における未知試料のその後の分析に役立てるための訓練処理中に試験試料から訓練データを取得するために使用することができる。
【0127】
分析器(装置)10は、作動の物理的制御と処理態様の両方を制御するコントローラ12を含む。分析器10は、ある波長領域内の複数の波長を有する/複数の波長での電磁放射線22を発生させて放出するための電磁放射線源11を含む。この光源は、制御目的で光検出器4などを有することができる。電磁放射線は、異なる波長での複数の電磁放射線ビーム又は複数の波長成分を含む単一電磁放射線ビームの形態を取ることができる。
【0128】
電磁放射線出力に対して使用する「波長」という表現は、1300nmのような特定の波長を意味する。理解されるように、実際には、光源は、純粋な単波長を有する電磁放射線出力を供給せず、出力は、中心波長/ピークのいかなる側にも成分を含む可能性がある。この場合に、「波長」という表現は、放射線出力が中心波長のいかなる側にも波長成分を有する可能性があり、例えば、±30nm又は±12nmの波長成分を有することができ、又はいかなる側にも僅か数nm(例えば、レーザにおいては2nm)であっても波長成分を有する可能性がある場合の電磁放射線出力の中心波長/ピークを意味する。各そのような波長は、他の成分が存在する場合であっても、実用目的には離散しているので「離散」波長と表現することができる。
【0129】
電磁放射線ビーム22は、例えば、1つ又はそれよりも多くのレーザから放出された可視光ビームとすることができる。一例では、電磁放射線源(「光源」)11は、異なる波長を有する複数の電磁放射線ビームを連続的又は同時に発生させて放出するか又は複数の波長成分を有する単一電磁放射線ビームを放出するように構成することができる単一デバイスとすることができる。別の例では、光源11は、各々が望ましい波長を有する電磁放射線ビーム22を発生させて放出するように構成された個々の光源のセットとすることができる。「光源」という表現は、光源を構成する単一光源又は複数の光源を意味することができる。各場合に、光源11は、固定波長の電磁放射線ビームを発生させることができ、又はある波長領域のうちの1つにおける電磁放射線ビームを放出するように調整可能にすることができる。光源電磁放射線は、後で説明するように、任意的に変調することができる。当業者は、他の例を考えることができるであろう。光源は、作動温度を検出するためのサーミスタのような内蔵又は別個の温度センサ2a(光ダイオード4の一部を形成することができる)を有することができる。出力は、プロセッサ18に渡すことができる。
【0130】
好ましくは、光源11は、対応する波長を有する各電磁放射線ビーム22を独立して連続的に放出することができるように構成される。この構成は、ある波長領域を通して掃引される電磁放射線ビームを放出するようになった単一光源を使用することによって達成することができる。これに代えて、複数のレーザを含む単一パッケージのように、光源が、各々を順番に作動させることができる複数の電磁放射線源を含む場合に、各光源が「アクティブ」光源になることによってこの構成を提供することができる。アクティブ光源の電磁放射線ビームが望ましい試料経路14aに沿って向けられるように、光源から出力された各電磁放射線ビームは、この光源から望ましい試料経路14aに沿うように向け直す回折格子、ミラー、プリズム、又は他の光学装置13に入射するように配置することができる。そのような配置では、各電磁放射線ビームが発生される/アクティブ化されると同時に、これらのビームは、望ましい経路に沿って順に向けることができる。これに代えて、複数の電磁放射線ビームは、同時にビーム経路14aに沿って向けることができ、その結果、複数の波長成分を含む電磁放射線の単一ビームがもたらされる。これに代えて、光源は、経路14aに沿って放射線ビームを放出するように各光源を物理的に配置するように機械的に制御することができるカルーセル又は線形キャリッジ(同じく13で表す)上に配置することができる。これらの代替に対しては、後でより詳しく説明する。複数の電磁放射線ビームを光源11から望ましい経路14aに沿うように向け直すための他の配置を考えることができる。経路14aに沿って向けられる電磁放射線ビームは、試料電磁放射線ビームと表現することができる。
【0131】
装置10は、試料電磁放射線ビームの経路14a内に試料を保持するための試料/試料保持器16を含む。試験下の試料及び保持器の温度の測定を行うことを可能にするために、非接触赤外線温度センサ又は他の温度センサ71が試料保持器16内に組み込まれるか、又はその近くに配置される。このセンサ71は、保持器温度センサ2b、2cと同じか又は別個のものとすることができる。
【0132】
試料保持器16は、試験管/試験管ホルダ、他のタイプの試験セル、輸液ポンプ/IVセットの一部、フローセル、シリンジ、又はいずれかの方式でこれらのうちのいずれかを保持するか又は試料/物質を保持するためのいずれかの他のタイプのデバイスとすることができる。これに代えて単純に経路14a内に試料を配置することができる。いかなる試料保持器も、試料に至るまで、更にそこを通過する電磁放射線22の透過を可能にする。試料は、好ましくは、(限定的ではないが)液体ベースの薬剤である。液体ベースの試料は、例えば、水ベースの薬剤とすることができるが、水担体又は他の液体担体中の別のタイプの試料/物質とすることができる。下記の実施形態における「薬剤」の使用は例示目的のものに過ぎず、他のタイプの試料に対してこれらの実施形態を使用することができることが認められるであろう。「試料」という表現は、分析(例えば、検証/識別)のための物質を示し、必ずしも大量の物質のうちの試験試料/小分量に限定されるわけではない。例えば、試料は、単純に投与される薬剤の一(試料)部分ではなく、投与される薬剤そのものとすることができる。装置10は、臨床又は他の環境において投与前の薬剤を検証/識別するために使用することができる。この場合に、装置10内に入れられる試料は、投与中の薬剤そのものになる。試料は、訓練試料又は試験下の未知試料とすることができる。試料チャネル及び基準チャネル内の保持器は、保持器温度2a、2c及び/又は試料温度を検出するためのサーミスタのような内蔵又は別個の温度センサを有することができる。出力は、プロセッサ18に渡すことができる。
【0133】
経路14aに沿って放出された電磁放射線ビームは、この経路内(例えば、試料保持器内)に配置された試料(物質)16上に入射する電磁放射線を供給する。試料16に到達するいずれかの入射電磁放射線ビーム14aは、試料による(例えば、試料を通じた透過及び/又は試料による反射のいずれかによる)影響を受ける。影響を受けて試料16を射出する(試料)電磁放射線14bは被影響電磁放射線であり、試料に関するスペクトル情報を含む。スペクトル情報は、被影響電磁放射線中に含まれるいずれかの情報を広義に意味する。例えば、被影響電磁放射線14bは、入射放射線の1つの波長での被影響電磁放射線の強度に関する情報を含む。
【0134】
試料を射出する被影響電磁放射線を検出することができるように、被影響電磁放射線経路14b内に試料検出器17が配置される。検出器17は、例えば、1つ又はそれよりも多くの光検出器を含むことができる。検出器17は、試料16のスペクトル情報を表す又は示すデータ/信号の形態にある情報14cを出力し、すなわち、この出力は、検出された被影響電磁放射線を表している。検出器出力14cは、例えば、検出器上に入射する被影響電磁放射線の電磁強度の指示を一般的に強度に比例する電圧の形態で表す又は提供することができる。出力は、実際には電磁放射線強度ではなくてもよいが、実強度に比例する電圧を有する信号であるなど、電磁放射線強度に対していずれかの関係を有することになることが認められるであろう。本明細書を通じて、検出器出力に言及する場合の「強度」という表現の使用は、限定的なものではなく、強度に関するいずれかのパラメータに関することができることが認められるであろう。検出器17の出力14cは、保持器内の試料を検証又は識別するか又は他に分析するための検証/識別アルゴリズムを実施するプロセッサ18に渡される。任意的に前処理を行うことができるが、例えば、レーザのような安定した光源が使用される場合に、この前処理は必須ではない。プロセッサ18は、コントローラ12の一部を形成することができ、又はそれとは別個のものとすることができる。プロセッサ18は、試料を検証又は識別するか又は他に分析するための基準データ/訓練/比較データを有するデータベース23に対するアクセスを有する。データベース23はデータストアであり、かつあらゆる適切な形態を取ることができ、あらゆる適切なハードウエア(プロセッサ内外のメモリ、又は更にリモートハードウエアのメモリ等)を使用することができる。データベース23は必ずしもプロセッサ18の一部であるわけではないが、簡略化の目的でそのように示している。経路14a、14b、放出されて影響を受けた放射線、及び/又は試料/試料ホルダ16は、「試料チャネル」と表現することができる。試料検出器16及びプロセッサ18への入力(及び任意的にプロセッサ自体)も試料チャネルの一部を形成することができる。
【0135】
任意的に、試料16上に入射した放出電磁放射線ビーム14aは、基準試料/基準物質(又は単純に「基準」)19を含む別の保持器19に向う基準経路15aに沿うように分割されるか(21)又は他に向け直される基準チャネルを存在させることができる。これを達成するために、ビームスプリッター21を使用することができると考えられる。基準は、例えば、食塩水とすることができる。基準試料保持器19は、試料チャネルに関して言及した保持器16のうちのいずれかのものとすることができる。これに代えて、基準は、保持器及び/又は試料を持たない場合があり、遮られることのない電磁放射線を測定する目的のものとすることができる。別個のチャネルとして示すが、基準チャネルは、実際には試料チャネルと同じとすることができ、この場合は試料及び/又は保持器を取り外し、電磁放射線経路に適切な基準試料(もしあれば)を配置するように再構成することができる。基準経路15aに沿う基準電磁放射線ビームは、基準試料19(もしあれば)上に入射し、それによる影響を受けて被影響(基準)電磁放射線15bが生成され、この電磁放射線15bは、基準検出器20上に入射してそれによって検出される。基準検出器20は、試料チャネルのものと同じか又は異なる検出器とすることができる。
図1には、基準検出器20を独立した検出器として例示している。
【0136】
検出器20は、基準のスペクトル情報15cを表す又は示すデータ/信号の形態にある情報15cを出力し、すなわち、この出力は、検出された被影響電磁放射線を表している。検出器出力15cは、例えば、試料チャネルに対して上述したもののような被影響電磁放射線の電磁強度を表すとすることができる。検出器出力15cは、保持器内の試料16を検証又は識別するために検証/識別アルゴリズムを実施するプロセッサ18に渡される。前処理を実施することができるが、レーザのような安定した光源が使用される場合に、この前処理は必須ではない。基準チャネルからの検出器出力15cは、試料チャネルデータ14cを正規化及び/又は補正するための基準データを供給する。基準チャネルは、試料の前に減光フィルタを含むことができる。このフィルタは、検出器の出力が、試料チャネル上の検出器の出力との処理/比較を可能にするのに適するレベルになるように、検出された被影響電磁放射線を正規化、又は他に修正する方式で入射電磁放射線を減衰させる。
【0137】
基準チャネルに対する代替では、任意的に、試料チャネルデータ14cを正規化及び/又は補正するための基準になる基準データ/基準出力/基準信号/基準情報を提供するのに、光源上のモニタダイオード4からの出力を使用することができる。出力は、コントローラ12及び/又はプロセッサ18に供給することができる。モニタダイオードは、出力電磁放射線の電力を測定する光源上の先在的な検出器とすることができる。この場合に、モニタダイオードを「基準検出器」と見なすことができ、このダイオードが、基準チャネルを実質的に与えることができる。
【0138】
各電磁放射線ビーム22は、好ましくは、1300〜2000ナノメートル(nm)の分析範囲(「分析領域」)内に収まる波長を有する(又は複数の波長成分を有する)。この領域は、名目上「近赤外線」又は「NIR」と表現される場合がある。この領域は、薬剤を検証又は識別するための有利なスペクトル情報を提供する。各電磁放射線ビーム22の波長(又は電磁ビームを構成する複数の波長)は、好ましくは、分析範囲内に収まる薬剤試料のベース液体のスペクトル特性(特徴)に基づいて選択することができる。そのような特性は、例えば、当該ベース液体スペクトルのピーク、トラフ、湾曲点、安定点又は安定領域、平坦部、屈曲部、及び/又は傾斜部とすることができる。各選択波長は、そのようなスペクトル特性の近傍(又は広がる領域内)にある。スペクトル特性の位置は、公称波長(例えば、特性の中心波長)又は特性にわたる領域を定める公称波長領域によって定めることができる。
【0139】
各波長の選択は、
図2に示す仮想ベース液体のスペクトルを参照して説明することができる。仮想スペクトルは、分析範囲に以下のスペクトル特性A〜Eを含む。
・1300nmと1400nmの間にあるピーク(1350nmの中心波長の実ピーク)(A)
・1400nmと1500nmの間にあるトラフ(1450nmの中心波長の実トラフ)(B)
・1500nmと1600nmの間にある湾曲部(1550nmの中心波長の実湾曲部)(C)
・1600nmと1800nmの間にある傾斜部(D)
・1800nmと2000nmの間にある平坦部(E)
・更に特性DとEの間の1800nmの前後に屈曲部が示されている。
【0140】
この仮想液をベースとして使用する薬剤の分析では、上述のスペクトル特徴A〜Eのうちの1つ又はそれよりも多くに対する波長領域(又は中心波長)の近くの領域内にある波長、又は上述のスペクトル特徴A〜Eのうちの1つ又はそれよりも多くに対する波長領域にわたって広がる(この範囲を定める/区切る)領域内に収まる波長を選択することができる。スペクトル特性の「近傍」の波長は、スペクトル特性中心波長での波長を意味する場合もある。例えば、以下の通りに3つの異なる波長を選択することができる。
・波長#1 1310nm−特徴Aに対する領域1300〜1400nmの領域内、
・波長#2 1450nm、特徴Bの中心波長のほぼ近傍又はその領域内、
・波長#3 1800nm、特徴Eの縁部/屈曲部(すなわち、特徴Eの領域)。
【0141】
液体スペクトルのスペクトル特性に関して選択された離散波長を「選択波長」又は「選択された波長」と表現することができる。一般論として、選択波長又は選択された波長は、スペクトル特性に「対応」するか又はスペクトル特性を「捕捉」する。
【0142】
図2は、スペクトル特性(特徴)の一部の仮想的な例しか示しておらず、スペクトルにおいて更に多くのものが可能であることが認められるであろう。更に、スペクトル特性に対する波長領域は重なり合うことができ、又は一致することさえも可能である。更に、分析範囲の各スペクトル特性に対して別個の波長を選択する必要はなく、スペクトル特性の選択に関する波長の選択だけを選択するだけでよい。波長領域によってスペクトル特性を定めることができない場合があり、又はいずれかのそのような範囲が解釈に依存して変化する可能性がある。スペクトル特性の近くの波長を代わりに選択することができる。この波長は、例えば、スペクトル特性の中心点波長のある公差(例えば、±30nm)に近いか又はその領域内の波長とすることができる。
【0143】
更に、選択波長には、そのようなスペクトル特性にわたる領域の近くにあり、又はその領域内に収まる波長が利用可能、又はこの波長に構成可能な光源11によって影響を及ぼすことができる。放出放射線における適切な波長の選択は、プロセッサによって正確な検証又は識別のためのより確実な情報を与えることになる。
【0144】
更に、好ましくは、選択波長は、試験されている薬剤とは独立して選択することができる。
【0145】
波長は、領域にわたってこれらの波長をランダムに又は均等に離間させるか、又は他の選択基準を使用するなどのようないずれかの他の適切な方式で選択することができることが認められるであろう。
【0146】
あらゆる適切な個数の波長を使用することができる。必須ではなく任意的に、光源11によって供給される(1つ又は複数のいずれかのビーム22で)電磁放射線を構成する異なる波長の個数は、nが試験される試料数である時に少なくともlog
2nである。使用される波長が多い程、精度は高いが、波長の個数は、コスト及び利便性に対して最適化される。
図3で分るように、電磁放射線ビーム/波長の個数が大きくなると、検出誤差が減少する。30薬剤のセットに対する2つの波長の選択は、0.14という誤差をもたらし、それに対して5つの波長は、僅か0.02という誤差しかもたらさない。
【0147】
任意的に、電磁放射線波長22のうちの1つを基準チャネルの必要性を排除するために使用することができるアンカー点での波長を有するように選択することができる。アンカー点は、基本的なベース液体のスペクトルの安定部分又は他の適切な部分内に波長を有するように選択される。アンカー波長に対しては、後でより詳しく説明する。
【0148】
試料検出器17から及び任意的に基準検出器20からの出力(又はこれに代えて、出力電磁放射線の電力を測定するモニタダイオードからの出力)を受け入れると、プロセッサ18は、訓練/比較データを含むデータベース23(時にルックアップテーブルの形態にある)にアクセスするアルゴリズムを実行し、この出力を用いて、試料16から検出された被影響電磁放射線14bに基づいて、任意的に、
a)基準チャネルが使用される場合に、当該基準試料から検出された被影響放射線15b、又は
b)光源モニタダイオードが使用される場合に、出力光源電磁放射線の測定電力、
に基づいて、訓練/比較データを用いて試料16を検証又は識別(「特徴付け」)する。訓練/比較データは、分析器を用いた訓練試料の事前分析において取得することができる。1つの選択肢では、検出器から得られた生の訓練/比較データは、盲検試験における実際の未知試料の特徴付けに対して使用することができる訓練係数/比較係数が得られるように処理される。
【0149】
プロセッサ18は、コントローラ12と共に又はそれとは独立して作動させることができる。処理に対しては、後でより詳しく説明する。
【0150】
検証/識別処理に加えて又はその一部として、以下の項目のうちの1つ又はそれよりも多くを提供することができる。
・試料(適切な場合は保持器を含む)温度の測定及びこの試料温度に基づく訓練/比較データの補正、
・識別/検証において比較データ/比較試料を表すパラメータに対して基準にすることができる試料濃度に依存しない試料又は訓練データ/訓練試料を表すパラメータ(係数)を決定する段階、
・試料の濃度を決定する段階、
・試料保持器(例えば、試験管/試験管ホルダ、他の個の試験セル、輸液ポンプ/IVセットの一部、フローセル、シリンジ、又はいずれかの方式でこれらのうちのいずれかを保持するか又は試料/物質を保持するためのいずれかの他の個のデバイス)を含むシステム内の寸法公差によって引き起こされる不正確性を低減するように生の訓練/比較データと実試料データとを処理する段階、
・変調光源を伴う技術又はチョッパーホイール配置を用いて測定された暗電流のいずれかを用いて光検出器の暗電流を決定及び/又は排除する段階。
【0151】
ユーザインタフェース24は、ユーザがパラメータを設定すること、予想される(例えば、検証おいて)薬剤又は他の試料の識別名を入力すること、及び分析結果を受け入れる(スクリーン、ディスプレイ、オーディオ警報、インジケータなどを通して)ことを含む装置10を作動させることを可能にする。結果は、薬剤が予想通りであるか否かを示すことができる(検証/確認)、又は薬剤を通知することができる(識別)、及び/又は盲検試験下の試料の濃度を示すことができる。
【0152】
コントローラ12及び/又はプロセッサ18は、試験結果に基づいて薬剤の送出を許可又は阻止するように外部デバイス(輸液ポンプのような)を制御することができる。
【0153】
好ましくは、装置10は、電磁放射線源11及び/又は検出器17、20の温度を安定化するためのフィードバックシステムを更に含む。一例では、サーミスタが、電磁放射線源、検出器、及び/又は任意的に試料保持器2a、2b、2c、5a、5bの温度を検出する。光源11及び検出器17、20の温度を冷却して安定化させるためにペルチェ冷却デバイスを作動させることができる。サーミスタの出力は、光源及び/又は検出器を冷却するペルチェ冷却デバイスを制御するコントローラ12に送られる。好ましくは、サーミスタは、内蔵光検出器/光源サーミスタ2a、2b、2c、5a、5bであり、ペルチェ熱電冷却器は、光検出器/光源2a、2b、2c、5a、5b内に組み込まれる。
【0154】
一般的に、装置10は、
図4の流れ図を参照して以下に説明する通りに機能する。コントローラ12を用いて、選択波長を有する/この波長での1つ又はそれよりも多くの電磁放射線ビーム22を試料16に向けて放出するように光源11を作動させる(好ましいが、必須ではなく個々に連続して)、段階40。試料16上に入射する電磁放射線14aは、試料を透過又は反射して被影響電磁放射線14bになり、被影響電磁放射線14bは、検出器17によって検出される、段階41。任意的に、放出された放射線をビームスプリッター21によって基準試料19(自由空間経路の)にも向け直すことができ、この放射線は、同じか又は異なる検出器20によって検出される、段階42。試料検出器17から及び任意的に基準検出器20からの出力14c、15cがプロセッサ18に渡される、段階42。この場合に、必要に応じて、検出器出力14c、15cを正規化及び/又は補正するための前処理が行われる、段階42。次いで、正規化された検出器出力から試料を識別又は検証するのに利用される基準情報(例えば、訓練/比較データ)を基準薬剤のデータベース23に問い合わせる段階を含む識別/検証アルゴリズムが実行される、段階43。試料の検証又は識別の結果は、ユーザインタフェース24によって伝達される、段階44。
【0155】
本発明のより詳細な説明を提供すると他の選択肢が明らかになるであろう。
【0156】
第1の実施形態
ここで本発明の一実施形態を一例として詳細に以下に説明する。この実施形態は、限定的ではなく、例示的なものであると考えられたい。この実施形態は、例えば下記の表に提供する15薬剤のセットから水ベースの薬剤又は他の液体ベースの薬剤の検証又は識別を可能にするための装置に関して説明する。この実施形態において、試料を薬剤と呼ぶが、より一般的には、この実施形態は、あらゆる他の試料個に適用することができる。
【0157】
この例では、30のlog
2nよりも大きい6つの電磁放射線波長が選択される。これらの波長は分析範囲で選択され、ベース液体であり、この範囲に収まる水のスペクトル特性に基づいている。水ベースの薬剤(又は他の液体ベースの薬剤又は水溶液)のスペクトルは、大半がベース液体スペクトルによって占められることになる。例えば、
図5を参照すると、薬剤W(4%ゲロフシンコハク化ゼラチン溶液)のスペクトル(点線)は、水のスペクトル(実線)と非常に似通っている。これは、水のスペクトルが優勢であるからである。しかし、異なる水ベースの薬剤の間の透過係数の差を測定することもできる。水スペクトルのスペクトル特性の区域/波長に着目し、これらの波長での電磁放射線ビームを使用することにより、薬剤の識別又は検証のための薬剤識別能を与える上で、これらの波長での水スペクトルと水ベースの薬剤スペクトルの間の差を利用することができる。
【0158】
図6は、決定される分析範囲で考えられる一部のスペクトル特性(特徴)を有する水のスペクトルを示しており、これに対して下記でより詳しく説明する。
・スペクトル特性A(傾斜部)1300nmと1400nmの間の第1の領域内、
・スペクトル特性B(平坦部/トラフ)1400nmと1500nmの間の第2の領域内、
・スペクトル特性C(傾斜部)1500nmと1600nmの間の第3の領域内、
・スペクトル特性D(ピーク)1600nmと1700nmの間の第4の領域内、
・スペクトル特性E(湾曲部)1700nmと1800nmの間の第5の領域内、
・スペクトル特性F(屈曲部)1800nmと2000nmの間の第6の領域内。
【0159】
上述のリストは、考えられるスペクトル特徴の網羅的なリストではない。
【0160】
電磁放射線ビームの波長の選択は厳密に固定されるわけではなく、必ずしもベース液体のスペクトル特性だけに基づくわけではない。この選択は、薬剤試料のベース水のスペクトル内のスペクトル特性の波長による影響を受けるが、更に、選択波長は他のファクタにも基づく可能性がある。例えば、コスト効率と通常入手可能な供給チェーンの都合から、このスペクトル特性に近いが同じではない別の波長が既製のレーザ又は他の光学構成要素によって容易に利用可能である場合に、この波長を使用するか又は選択することが好ましい場合がある。
【0161】
例えば、1310nm及び1550nmの波長は、通信業界内で広く普及しており、それに起因してこれらの波長に向けて構成された多くのデバイスが存在するので、水ベースの薬剤に対する選択波長としてこれらの波長を使用することができる。レーザダイオードは、名目上1650ナノメートル、1750ナノメートル、及び1850ナノメートルにおいて中心波長を有するが、これらの波長は、最大でプラス又はマイナス30ナノメートルまで変更することができる。従って、これらの範囲の波長を選択することができる。従って、これらの成分の利用可能性及びベース液体のスペクトル特性に着目することにより、放出放射線に適する波長を決定することができる。
【0162】
従って、以上の説明に基づいて、6つの波長の各々は、スペクトル特徴の各々のうちの1つにわたる領域の近傍又はこの領域内にあるがハードウエアの利用可能性による影響も受けるものとして選択することができる。従って、水に対する6つの波長は、(例として)特徴Aに対応する1350ナノメートル、特徴Bに対応する1450ナノメートル、特徴Cに対応する1550ナノメートル、特徴Dに対応する1650ナノメートル、特徴Eに対応する1750ナノメートル、特徴Fに対応する1850ナノメートルとすることができ、これらの全てが1300〜2000ナノメートルの領域内に収まる。明らかなように、1350nmから1850nmまでの波長選択は、水スペクトル内のピーク及びトラフ、並びに他のスペクトル特性に近いが、正確には一致しない。選択は、利用可能なハードウエアの作動波長にもかかわりがある。これらの選択は、当然ながら公称波長であり、実際の波長は、光源11の特性に起因して実際には異なる可能性がある。任意の波長を特定のスペクトル特徴において選択するのではなく、領域にわたって散在するように選択することができることにも注意しなければならない。
【0163】
図22は、
図1で一般的に記述された装置10の1つの可能な形態を概略的な形態に示している。分光分析器10は、コントローラ12と、複数の波長での電磁放射線22を光の形態で出力する光源11を一緒に形成する6つのレーザモジュール51a〜51fを含む単一レーザパッケージ(より一般的には(「レーザ」)とを有する。単一パッケージ211は、一体平行化レンズ210に向けて電磁放射線ビーム22(波長201a〜201fのうちのいずれか1つとすることができる)を放出するように配置された光源11を形成する6つのレーザを含む。パッケージは、6つの波長201a〜201fの各々に調整された又は調整可能な波長をレンズ210に向けて放出するように作動可能である。パッケージは、コントローラ12によって電子的に制御される安定した高強度狭帯域平行電磁放射線出力を与える1つ又はそれよりも多くのレーザダイオードを含む。コントローラは、ユーザ入力及びユーザ出力のためのユーザインタフェース24を有することができる。光源は、作動温度を検出するためにサーミスタのような内蔵又は別個の温度センサ2aを有することができる。出力はプロセッサ18に渡すことができる。
【0164】
コントローラ12は、単波長のビーム201a〜201fを試料に向けて連続放出するか又は他に放出するようにレーザパッケージを作動させる。これに代えて、複数の波長成分(例えば、201a〜201f又はその部分集合)を含む電磁ビーム22をレンズ210を通して試料16に向けて放出する(14a)ことができるように、複数のビーム201a〜201fを作動させることができる。
【0165】
装置は、レーザパッケージ211に結合されたか又はコントローラ12内に組み込まれた別個のデバイスとすることができる変調器70を含み、又は装置は、レーザパッケージ自体内に組み込むことができる。変調器70は、出力電磁放射線22を変調するようにレーザパッケージ211を制御する。電磁放射線を変調することにより、以下に説明する暗電流を考慮するための処理が可能になる。
【0166】
パッケージ211は、出力電磁放射線22のフィードバック制御に向けて、当該放射線を検出するための(例えば、電磁放射線の出力電力を測定するための)1つ又はそれよりも多くの光ダイオード4aを含む。この光ダイオードは、温度センサ2aと組み合わせることができる。出力は、直接又はコントローラ12を通じたいずれかでプロセッサ18に供給される。レーザは、他の光源よりも少ない熱放出問題のみを有し、従って、測定に対して有害な熱効果を低減する。各レーザの出力電力は、好ましくは、均衡のとれた装置を有するという都合上、名目上では同じである(一般的に2〜3mWであるが、それよりも大きいことも可能である)。好ましくは、それによってレーザダイオードに対して共通のダイオードドライバ回路を使用することも可能になる。
【0167】
試験下の試料16及びその保持器を測定するための温度センサ71(例えば、非接触赤外線センサ)も存在する。保持器温度も同じく測定するために、組み合わされたか又は別個の温度センサを存在させることができる。出力は、プロセッサ18に直接、又はコントローラ12を通して供給される。
【0168】
作動された状態で、レーザ211は、試料に向けてレンズ210を通じる経路14aに沿って(好ましくは、変調された)電磁放射線22を放出する。光源から検出器までの経路14aは、自由空間と光ファイバ構成要素との組合せである。それによって光減衰率及びハードウエアが低減する。更に、装置は、ビーム経路14aに位置合わせされた試料保持器16aを含む。作動レーザ51a〜51fから放出された電磁放射線は、試料保持器内の試料16上に入射し、そこを透過又は反射する。
【0169】
検出器17は、試料16を抜け出る被影響放射線経路14bに配置される。好ましくは、検出器17は、被影響放射線中に存在することになる波長の電磁放射線を検出するのに適する応答を有するようにバイアスされた単一光検出器(光ダイオードのような)である。単一検出器は、構成要素によって導入される変化性に起因する誤差を低減し、それによって複数の光検出器の間の相対差が取り除かれ、放出電磁放射線の出力へのより安定した応答が可能になり、従って、感度が改善する。例えば、InGaAs光ダイオードを使用することができる。検出器17は、被影響放射線14bを検出し、検出器17の出力14cはプロセッサ18に渡され、プロセッサ18は、データベース23内にある事前に取得した訓練/比較データを用いて、本明細書に説明するように試料を検証又は識別するか又は他に特徴付ける。この処理に加えて又はその一部として、プロセッサ18は、以下のことも行う。
・試料(適切な場合は保持器を含む)の温度の測定及び試料温度に基づく訓練/比較データの補正、
・識別/検証において比較データ/比較試料を表すパラメータに対して基準にすることができる試料濃度に依存しない試料又は訓練データ/訓練試料を表すパラメータ(係数)を決定する段階、
・試料の濃度を決定する段階、
・試料保持器(例えば、試験管/試験管ホルダ、他の個の試験セル、輸液ポンプ/IVセットの一部、フローセル、シリンジ、又はいずれかの方式でこれらのうちのいずれかを保持するか又は試料/物質を保持するためのいずれかの他の個のデバイス)を含むシステム内の寸法公差によって引き起こされる不正確性を低減するように生の訓練/比較データと実試料データとを処理する段階、
・変調光源を伴う技術又はチョッパーホイール配置を用いて測定された暗電流のいずれかを用いて光検出器の暗電流を決定及び/又は排除する段階。
【0170】
好ましくは、装置は、電磁放射線源11及び検出器の温度を安定化させるためのフィードバックシステムも含む。一例では、サーミスタ2a、71、5aが、電磁放射線源、検出器、及び/又は保持器の温度を検出する。光源及び検出器を冷却してこれらの温度を安定化させるために、ペルチェ冷却デバイスを作動させることができる。サーミスタの出力はコントローラに送られ、コントローラは、光源及び/又は検出器を冷却するようにペルチェ冷却デバイスを制御する。好ましくは、サーミスタは、内蔵光検出器/光源サーミスタ2a、71、5aであり、ペルチェ熱電冷却器は、光検出器2a、5aに組み込まれる。
【0171】
装置/分析器10は、訓練処理/試験中に実施される訓練の試料から生の訓練/比較データを取得するのに使用される。装置/分析器10は、盲検試験中に試験下にある実際の未知試料の生データも取得する。装置/分析器10は、盲検試験において未知試料を特徴付ける処理内で利用することができる係数(比較データ)を取得するために、生の訓練/比較データ及び/又は試験下にある生の試料データを処理することができる。
【0172】
次いで、
図23(図に基づいているが、図よりも詳細な内容を提供している)を参照して、盲検試験における装置10の作動を以下に説明する。盲検試験は、検証又は識別のための実際の未知試料が試験されるものである。試験される未知試料16は、保持器に配置されるか、又は他に分析器10に配置されるか、又はその中に導入される。コントローラ12は、選択波長201a〜201fのうちの1つにおける電磁放射線ビーム22を試料16に放出するようにレーザ211を作動させる、段階230。この作動の一部として、好ましくは、変調器70/コントローラ12は、プロセッサ18に関して以下に説明する方式で、電磁光源放射線ビーム20を変調するようにレーザ211を作動させる、段階230。このようにして、各々が異なる選択波長に調整された異なる選択波長を有する6つの変調電磁光源放射線ビーム201a〜201fをレーザ211から連続して放出することができる、段階230。各試験において、処理におけるあらゆる適切な時点で、例えば、放射線を放出するのと同時に、試料の温度が測定されて記録される、段階230。
【0173】
各電磁ビーム22は、一体平行化レンズ210を通して経路14aに沿って試料16に向けて放出される。試料16に向けて放出される(14a)各電磁放射線ビームに対して、試料から発せられる被影響放射線は、光検出器17によって検出される、段階231。
【0174】
任意的に、基準情報を取得するために、レーザ211内のモニタダイオード4aは、出力電磁放射線ビーム22の電力を測定する。これに代えて、
図1又は
図18に示すもののような基準チャネルを用いて基準情報を取得することができる。
【0175】
試験下の試料16の識別/検証に向けて、試料検出器17から及び任意的に光源レーザ211内のモニタダイオード4からの出力(電磁放射線強度測定値)が、プロセッサ18及び/又はこれらの出力がデータとして格納されるデータベース23に渡される、段階232。プロセッサ18及び/又はデータベース23には温度測定値も渡される。試料検出器17又はモニタダイオード4からプロセッサ18において受け取られる出力14cは、試料16に向けて放出された各電磁放射線ビームにおける被影響電磁放射線14bの強度を示している。これらの出力は、例えば、検出器の光電流(強度に比例する電圧等)及び/又は検出電磁放射線の強度を直接的又は間接的に示すデータを含むことができる。この変調光源(以下に解説する)の場合に、デジタル化された変調波形出力が受け取られる。好ましくは、各波長に関する平均強度又は他の代表的強度を取得するために処理することができる複数の強度測定値を取得するために、各波長に対して数回、段階230〜232が繰り返される、段階233。例えば、各波長で、分析器は、試料によって影響を受けた被影響電磁放射線を25個の異なる時点で検出し、その出力をプロセッサ18及び/又はデータベース23に渡す、段階230〜233。1つの波長での処理が完了した状態で、段階230〜233の処理は、残りの波長で繰り返される、段階234。各反復中に、温度測定値を取得することができ、プロセッサ/データベース内に相応に格納することができる、段階230。プロセッサ/データベース内の強度データ及び温度データを「盲検試験生データ」と表現することができる。
【0176】
全ての強度、温度、及びあらゆる他の測定値をプロセッサ18が受け入れ終えた状態で、検証又は識別を行うことができる、段階235。試料の識別又は検証は、事前に生成された又は他に得られた訓練データ(「比較データ」とも表現する)に基づいている。この実施形態において、識別処理/検証処理中に盲検試験下の試料を表す試料係数又は他のデータが、盲検試験生データから取得/決定され、これらのデータは、訓練処理中に試験試料から得られた対応する訓練係数又は他の比較データと比較される。試験下の試料の係数又は他のデータが試験試料のものと必要とされる類似度で一致する場合に、検証又は識別を行うことができる。
【0177】
一般論として、試験下の未知試料の特徴付けを提供するのに、生訓練データ及び/又は盲検試験生データをそのままに使用するか、又はあらゆる適切な手法で処理して使用することができることが認められるであろう。この実施形態において説明する係数は、生データを使用する1つの手法を明らかにしている。「訓練データ」は、未処理形態にある生訓練データ又は処理された生訓練データを指す場合がある。更に、「比較データ」は、処理された又は未処理の生訓練データ及び/又は処理された又は未処理の生盲検試験データを指す場合がある。比較データは、盲検試験下の未知試料を特徴付けるのに使用することができるいずれかのデータを指す。
【0178】
検証は、試料薬剤が予想された薬剤であることを確認する段階を含む。例えば、臨床医は、ユーザインタフェース24を通して自らが考える薬剤を指定することができ(例えば、n薬剤のセットから)、段階85、次いで、装置を用いて、保持器内の薬剤が真に自らが指定した薬剤であるか否かを確認する。識別は、薬剤が何であるかに関する臨床医からのいかなる示唆もなしに、薬剤が実際には何であるかを決定する段階を含む。検証/識別では、薬剤を識別するために、又は薬剤が臨床医によって指定された予想薬剤であるか否かを検証するために、盲検試験生データが処理され、データベース23内の処理された生訓練データと対比して比較される、段階85。次いで、出力がユーザインタフェースに供給される、段階87。
【0179】
次いで、検証/識別処理をより詳細に以下に説明する。しかし、検証/識別処理は訓練データを利用するので、最初に、訓練データの取得及び(任意的な)処理を
図23を参照して以下に説明する。
【0180】
訓練データの取得
概要としては、訓練データは、盲検試験において実際の未知試料の検証/識別が行われる前のいずれかの時点での訓練処理中に得られる。訓練データは、一度取得するか又は定期的に更新することができる。訓練データは、プロセッサ18に格納され、及び/又はプロセッサ18に統合され、又は検証/識別中の使用に向けてプロセッサ18によってアクセス可能であるかのいずれかであるデータベース23に格納される。上述したように、「訓練データ」及び「比較データ」という表現は、一般的に、訓練処理中に得られる生データ、又はその後で識別/検証処理における利用に向けて後処理された生データを指す場合がある。訓練データは、盲検試験試料からのデータが比較分析されることになる既知試料から得られる。好ましくは、盲検試験において試験することができるいずれかの未知の試料個(例えば、特定の薬剤)は、同じ試料タイプ(例えば、薬剤)から事前に得られた対応する訓練データを有することになる。試験することができるものに対応する訓練試料セット(例えば、薬剤セット)は、訓練処理において取得、分析され、これらの訓練試料に関する訓練データが得られて格納される。生訓練データは、本明細書に説明するように、例えば、
図23に示すように、例えば
図22の装置又は説明する他の実施形態のうちのいずれかを用いて実際の盲検試験データが得られるのと同じ手法で得られる。
【0181】
一例として、
図23を参照すると、試験(訓練)試料(例えば、下記の表にあるもののような異なる訓練薬剤/希釈剤)のセットが得られる、段階237。試料は、既知の濃度の様々な無希釈薬剤と、実際の盲検試験に向けて薬剤を希釈することができる希釈剤である関連の希釈剤(例えば、0.9%食塩水、5%グルコース)とを含む。例えば、
図22の分析器を用いて各々が順次分析される。実際の盲検試験に対して上述したように、訓練薬剤が保持器に配置され、異なる波長の(任意的に変調された)電磁放射線が保持器内の薬剤に向けて連続して放出される、段階238。各波長での薬剤からの被影響電磁放射線の強度が検出器によって検出され、段階239、プロセッサ18及び/又はデータベース23に渡される、段階240。好ましくは、各電磁放射線波長を複数回放出することができ、段階241、各々からの検出器強度出力/測定値が、プロセッサ内で平均化又は他に処理され、生訓練データが得られる。1つの波長が完了した状態で、242において、次の波長に対して試料が試験される。各薬剤を各波長で異なる保持器(例えば、異なる試験管)内で、各保持器の変化を平均化するために複数回試験することができる、段階243。各波長での各測定において、レーザ、検出器、及び試料/保持器における温度を取得し、格納に向けて強度測定値と共にプロセッサ/データベースに渡すことができる、段階238、240。上述の処理が各試料薬剤に対して繰り返される、段階244。
図23は、各波長が複数回試験され、次いで、保持器が変更されることを示すが、各波長で保持器を変更し、その後で波長を変更するなどの別の順序を発生させることができることに注意しなければならない。様々な順序が可能であり、本説明及び
図8が限定的であると考えるべきではない。
【0182】
基準チャネルが使用される場合に、基準チャネルに対して同じ処理が実施され、すなわち、異なる波長の(任意的に変調された)電磁放射線が、経路に試料又は保持器がない状態で検出器に向けて放出される、段階238。各波長で感受された電磁放射線の強度が検出器によって検出され、段階239、プロセッサ18及び/又はデータベース23に渡される、段階240。好ましくは、電磁放射線の各波長を複数回放出することができ、段階241、各々からの検出器強度出力/測定値がプロセッサ内で平均化又は他に処理され、生訓練データが得られる。1つの波長が完了した状態で、次の波長が放出される、段階242。各波長での各測定において、レーザ、検出器、及び試料/保持器における温度を取得し、格納に向けて強度測定値と共にプロセッサ/データベースに渡すことができる。上述の処理が各試料薬剤に対して繰り返される、段階244。
【0183】
これに代えて、基準チャネルの代わりにモニタダイオード4が使用される場合にも、同じ処理を提供する。任意的に変調された異なる波長の電磁放射線が、経路に試料又は保持器がない状態で検出器に向けて放出される、段階238。各波長での感受電磁放射線の強度がモニタダイオード4によって検出され、段階239、プロセッサ18及び/又はデータベース23に渡される、段階240。好ましくは、各電磁放射線波長が複数回放出され、段階241、各々からのモニタダイオード強度出力/測定値が、プロセッサ内で平均化又は他に処理され、生訓練データが得られる。1つの波長が完了した状態で、次の波長が放出される、段階242。各薬剤を各波長で異なる保持器(例えば、異なる試験管)内で、各保持器の変化を平均化するために複数回試験することができ、段階243、各々に対してモニタダイオード出力が得られる。各波長での各測定において、レーザ及び検出器における温度を取得し、格納に向けて強度測定値と共にプロセッサ/データベースに渡すことができる。上述の処理が各試料薬剤に対して繰り返される、段階244。
【0184】
各試料薬剤又は各モニタダイオード4に関する各波長での各測定又は基準チャネル測定における(スペクトル)強度及び温度の生訓練データの結果が格納される。データは、各訓練薬剤に対して、関連の波長(例えば、6個の波長)でのスペクトル透過強度(上述の形態にある)、並びにそれぞれの温度読取値を含む。モニタダイオードが使用される場合に、データは、各訓練薬剤に対して関連の波長(例えば、76個の波長)でのスペクトル透過強度も含む。基準チャネルが使用される場合に、データは、関連の波長(例えば、6個の波長)でのスペクトル透過強度、並びに各基準チャネル測定におけるそれぞれの温度読取値を含む。生訓練データは、異なる保持器(例えば、5個の異なる試験管保持器)を用いた各波長での複数回の走査(一般的に25回の走査が使用されるが、あらゆる適切な回数とすることができる)から構成されることになる。(スペクトル)強度は、プロセッサに向けてデジタル化された検出器からの電圧又は類似の出力の形態を取ることができる。変調光源(下記でより詳しく説明する)の場合に、デジタル化された強度は、波形の形態又は波形の成分の振幅の形態を取ることができる。
【0185】
訓練データは、測定温度で得られる。後の温度補償に向けて、特定の波長での試料に関する強度対温度の勾配が得られる、段階240。この取得は、当業技術で公知の実験室分光計内に試験下の試料を配置することによって行われる(好ましくは、同じ保持器内に)。各試料における強度は、各波長でいくつかの温度で測定され、強度対温度の直線の勾配di/dtが決定され、後の使用に向けてプロセッサ18/データベース23に渡される。
【0186】
生訓練データは、検証/識別処理中に、実際の盲検試験において未知試料を検証/識別するのに使用することができる比較(「訓練」とも表現する)係数(比較データ)を取得するように処理される。好ましい実施形態において、生訓練データは、暗電流が排除されており、盲検試料試験温度と一致するように温度が補正されている。データは、各々が保持器経路長変化に対する感受性を低下させ、濃度に依存せず、保持器経路長変化を補償する係数セットに変換される。好ましい実施形態において、この処理は、盲検試験を実施する時点又はその直後で行われるが、これは必須ではない。これに代えて、この処理は、実際の盲検試験の前に又は盲検試験の後で実施することができる。生訓練データの処理に対しては、下記で詳細に説明する。
【0187】
盲検試験データの取得及び検証/識別
概要としては、未知試料薬剤に関する盲検試験データは、上述の通りに得られ、実際の薬剤の盲検試験中に測定される様々な波長での強度及び試料温度(T
b)を含む生盲検試験データがもたらされ、更に(使用される場合は)モニタダイオードからの(又はこれに代えて基準チャネルからの)様々な波長での基準強度及び基準温度がもたらされる。盲検試験生データは、盲検試験(試料)係数を生成するように処理される。試験下の未知試料を識別/検証するために、事前に決定された訓練/比較データ及び盲検試験係数に基づいて訓練係数の間で数学解析を実施することができる。
【0188】
要約すると、最初に検出器からの変調出力を表す生データ(各々が、特定の試料に関する特定波長での検出強度を表すデータである)の各値に対して以下の段階が行われる。
・第1に、出力(盲検試験データ及び訓練データに関する)のDC成分が除去/排除され(例えば、変調技術を利用して)、信号の大きさが得られる(変調を用いた暗電流の排除という項目を参照されたい)。このDC成分排除は、生訓練データに対して、収集時又は検証/識別処理中のいずれかにおいて行われる。それによって以下のものがもたらされる。
○盲検試験データの各波長に対するデータ点を含む暗電流排除されたデータ(N
1からN
n)(試験下の未知試料に関する)のセット、
○生訓練データの各波長に対するデータ点を含む訓練セット内の各薬剤に関する暗電流排除されたデータ(N
1からN
n)のセット。
・次いで、第2に、生訓練データの各波長に対するデータ点を含む訓練セット内の各薬剤に関する暗電流排除されたデータ(N
1からN
n)のセットの大きさが、温度補正/調節(温度補正という項目を参照されたい)を受ける。それによって盲検試験試料の温度に適合する訓練セット内の各薬剤に関する温度補正されたデータ(I(T
b)1からI(T
b)
n)のセットがもたらされる。
・第3に、以下のものに対して強度比分率(スペクトル強度分率)が得られる。
○試験下の未知試料に関する各暗電流排除されたデータ点(N
1からN
n)、
○訓練セット内の各薬剤に関する各暗電流排除されたデータ点(N
1からN
n)。
この場合に、強度比分率は、物質を検証/識別するのに保持器公差感受性を低下させるパラメータである(保持器公差感受性の低下という項目を参照されたい)。
上記により、以下のものがもたらされる。
○盲検試験データの各波長に対するデータ点を含むスペクトル強度分率データ(g
m1からg
mn)(試験下の未知試料に関する)のセット、
○生訓練データの各波長に対するデータ点を含む訓練セット内の各薬剤に関するスペクトル強度分率データ(g
m1からg
mn)のセット。
・第4に、強度比分率を使用するので、試料濃度に依存しない係数が導出される(濃度非依存係数とうい項目を参照されたい)。
上記により、以下のものがもたらされる。
○盲検試験データの各波長に対するデータ点を含む濃度非依存データ(y
m1からy
mn)(試験下の未知試料に関する)のセット、
○生訓練データの各波長に対するデータ点を含む訓練セット内の各薬剤に関する濃度非依存データ(y
m1からy
mn)のセット。
【0189】
次いで、試験下の未知試料を検証又は識別するために、試験下の未知試料に関するデータ(y
m1からy
mn)のセットを訓練セット内の各薬剤に関するデータ(y
Bm1からy
Bmn)のセットと比較することができる。
【0190】
次いで、検証/識別処理を
図23の段階235をより詳細に示す
図24を参照してより詳細に以下に説明する。
【0191】
変調を用いた暗電流の排除
最初に、235aにおいて、光検出器17/4の暗電流が補償される。この補償は、生訓練データと盲検試験データの両方における基準データ及び試料データに対して行われる。光検出器は、入射放射線が存在しない場合であってもベースライン出力(「暗電流」と表現している)を有する。この実施形態において、暗電流を求めるのに従来のチョッパーホイール配置を使用するのではなく、暗電流読取値の必要性を排除するためにレーザドライバ電流変調が使用される。
図22の分析器を参照すると、レーザ出力は、
図23の段階230で上述の通りに変調される。上述の処理に向けて、被影響検出放射線が試料検出器及び基準検出器17によって感受され(訓練処理と盲検試験の両方において)、プロセッサ18に渡される、段階231、232。プロセッサにおいて受け取られた出力は、下記の導出において例証するように、暗電流に対応するDC成分を含む。この出力は、受け取られた出力及びあらゆる他の望ましくない成分の暗電流(DC)成分A
0S及びA
0Rを除去する(下式により)ようにプロセッサによって処理することができる、段階235a。望ましい成分sin(ωt)及びcos(ωt)が得られ、これらの成分は、暗電流のない強度測定値を表している。この処理は、当業者に公知のあらゆる適切な信号処理を用いて行うことができる。
【0192】
例えば、1つの可能性において、出力にsin(ωt)及びcos(ωt)それぞれを乗算し、振動周期にわたって積分することにより、出力電流のフーリエ解析を実施することができる。このフーリエ解析は、変調が単一周波数である場合、例えば、単一周波数における正弦波変調の場合に使用することができる。この処理手順は、測定ノイズを低減するのに有益なある形式の平均化を与える。
【0193】
これに代えて、デジタル化された出力波形に対して高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを適用することができ、関連のフーリエ成分を抽出することができる。従って、フーリエ係数から、試料チャネルに対して
が、基準チャネルに対して
が得られる。
【0194】
これらのフーリエ振幅の比を取ることにより、変調深度ΔPへの依存性が排除され、次式によって与えられる正規化(強度)出力Nが与えられる。
ここで、Sは、試料セルを含む光路内の減衰率を表す定数である。Rは、基準に送出される入射電力の割合を表す定数である。
【0195】
分析下の液体/薬剤(訓練試料又は盲検試験下の未知試料のいかなる場合であっても)に対して関連の各波長で、N(補償された強度成分)の値が決定される。薬剤に関する各波長でのこの値セットは、暗電流排除されたデータ(N
1からN
n)のセットを形成する。例えば、試験において8個の波長が使用される場合に、このセットは、各波長に対して1つの8個のN値を含むことになる。
【0196】
この処理手順は、訓練処理/セットにおける試料/薬剤に関する暗電流排除された訓練データ(暗電流が除去された強度成分を含む)と、盲検試験下の試料に関する暗電流補償された盲検試験データ(暗電流が除去された強度成分を含む)とをもたらす。各薬剤(訓練セット内、及び実際の盲検試験下の)に関する暗電流排除された強度成分(N
1からN
n)は、プロセッサ18及び/又はデータベース23に格納される。
【0197】
変調を用いた暗電流排除の導出
試料16を射出する変調被影響放射線は、光検出器17によって検出され、光検出器17は、得られる出力電流を供給する。出力電流は、あらゆる照明が不在の場合であっても存在する暗電流項、及び検出器上に入射する光の強度に比例する項という2つの成分の和である。従って、試料チャネル出力電流I
Sを次式のように書くことができる。
ここで(1)では、I
SDarkは、試料チャネル検出器の暗電流信号である。Sは、試料セルを含む光路内の減衰率を表す定数である。Pは、試料セルを照明する入射電力である。
【0198】
レーザダイオード光源の内蔵光検出器から生成される基準チャネル出力電流I
Sに対して、次式のように類似の式を書くことができる。
ここで(2)では、I
RDarkは、レーザダイオードパッケージ内の基準光検出器の暗電流信号である。Rは、基準に送出される入射電力の割合を表す定数である。
【0199】
レーザ211の出力は、既知の波形を有するドライバ電流を変調することによって変調される。一般的に、平均値の周りで電流を変化させるために、角周波数を有する正弦変調が使用される。この正弦変調は、
図17に示すのと類似の正弦方式でレーザダイオード光源の出力電力を変調する効果を有する。
【0200】
数学的には、時間依存レーザ出力電力P(t)を次式のように書くことができる。
ここで(3)では、P
0は、レーザからの平均出力電力である。ΔPは、出力電力波形における変調振幅(変調深度)である。φは、時間t=0における変調波形の位相である。
【0201】
入射電力に関して式(3)を用いて式(1)及び式(2)に代入することにより、試料チャネル及び基準チャネルからの出力電流に対して次式が得られる。
【0202】
試験下の試料を特徴付けることに関して関連のパラメータは、定数S及びRである。これらの2つの定数の比は、試料セル内の液体の正規化された係数特性を表している。
【0203】
上述の式における正弦項を展開することによって次式が与えられる。
それによって次式が与えられる。
従って、次式が得られる。
【0204】
式(4)及び(5)の精査により、出力電流は、定数DC項A
0S及びA
0Rから構成される単純なフーリエ級数に変調周波数ω、振幅A
1S、A
1R、B
1S、及びB
1Rで変化する正弦項及び余弦項を加えた形態を有することが示される。
【0205】
暗電流項は、(4)及び(5)におけるフーリエ級数のDC項にしか寄与しない。暗電流項は、式(4)及び(5)のDC成分内に含まれる。従って、変調出力波形の簡易フーリエ解析は、暗電流に依存しないsin(ωt)項及びcos(ωt)項のフーリエ係数を与える。
【0206】
各出力電流の正弦変化成分を測定することにより、各検出器ダイオードの暗電流を測定する必要なく、定数S及びRを決定することができる。これらの暗電流項は、DC遮断構成要素により、又は出力電流のフーリエ解析を具現化して正弦項を除く全ての項を廃棄することによって測定値から排除することができる。
【0207】
従来の分光計システムでは、暗電流は、光学照明を周期的に遮断し、次いで、復帰させる回転機械チョッパーを用いて照明を遮断することによって測定されることになる。上述のレーザ電流変調を使用することにより、回転チョッパーのような機械構成要素の必要性が排除され、それによっていかなる移動部品も用いないことで、分光計設計が簡素化され、コストが低減され、信頼性が改善される。機械チョッパーを駆動するのに使用される電気モータからの電気的干渉も排除される。
【0208】
温度補正
概要としては、次いで、保持器/試料の温度変化に起因する検出器からの強度測定値変化を補償するために温度補正処理を行うことができる、
図24の段階235b。
【0209】
温度依存性は、試料温度変化に対して線形であることを示すことができ、下記の説明を更に参照されたい。従って、各波長で、温度に対する強度値の勾配は、温度変化に関連付けられた透過強度変化を特徴付けるための情報を与える。この勾配データは、上述の通りに得られ、スペクトル訓練データと共に薬剤/希釈剤データベースに格納される。
【0210】
訓練セットデータベース内の温度依存性データ(温度に対する強度の勾配、各未希釈薬剤において各波長に対して1つの勾配)を用いて、プロセッサは、盲検試験試料が測定された温度、すなわち、T
bと同じ温度で全ての未希釈薬剤及び希釈剤に対する新しい訓練データセットを生成する。この温度補正は、元の基準訓練データセット(上述したように暗電流が排除されたもの)内の全ての保持器(例えば、試験管)に関するデータに適用される。それによって試験下の未知試料を検証/識別するための比較係数を取得するのに次の段階である温度補正された訓練データのセットがもたらされる。この場合に、全データが盲検試験試料温度T
bに変換され/この温度で有効であるので、このようにして訓練データに適用される温度補正は、盲検試験において得られるデータとの直接比較を行うことを可能にする。
【0211】
上述したように、未知薬剤試料に対して盲検試験を実施する場合に、異なる波長で強度データが測定され、試料の温度が得られ、更にデータベース23に格納される。流体の温度が既知である場合に、盲検試験において測定される未知薬剤の温度に対応して、温度補正された訓練データ係数セットが、データベース内の全ての薬剤に対して生成される。従って、盲検試験濃度非依存係数と訓練データセットのものの両方が共通の温度を有する。
【0212】
図24の段階235bにおいて、温度補償が以下の通りに行われる。訓練セット内の各薬剤に対して、訓練データセットが得られ、次いで、各波長での各訓練データ値(暗電流が排除された)N1からNnに対して、暗電流補正された強度値が、次式を用いてプロセッサ18内で温度補正される。
ここで(6)では、Iは、試料に対して特定の波長で検出器によって検出された被影響電磁放射線の強度(暗電流が排除された、例えば、N)であり、T
tは、被影響電磁放射線が当該波長で検出された時の訓練試料の温度であり、T
bは、被影響電磁放射線が当該波長で検出された時の未知試料の温度であり、ΔT=T
t−T
bは、訓練試料温度と未知試料温度の間の試料温度差であり、DI/dTは、試料に関する与えられた波長での測定強度と温度の間の線形関係の勾配である。
【0213】
全てのパラメータは、訓練データ及び盲検試験データから把握される。
【0214】
特に、上述の式は、I(T
b):I(T
b)=I(T
t)−(dI/dT)ΔTに対して解くように書き換えられる。各強度I(T
t)(訓練中に得られる訓練試料の強度である)は、dI/dT及びΔTと共に得られる。訓練データからの各強度I(T
t)に対して、対応する温度補正されたI(T
b)は、式(6)を書き換えたものを用いて得られて格納され、この強度I(T
t)は、仮に未知薬剤が訓練薬剤あった場合の盲検試験温度での未知薬剤に関する「予想」強度に相関する。I(T
b)は温度補正された強度である。この補正されたI(T
b)は、下記で訓練係数を計算するのに使用されるものである。
【0215】
基準データがモニタダイオード4から発せられる場合に、温度補正はこの基準データには適用されない。しかし、基準データが成分及び/又は試料を有する基準チャネルから発せられる場合に、温度補正は、上述の通りに確実に行われる。
【0216】
この段階の後の時点で、プロセッサ18/データベース23は、暗電流が排除され、温度が試験下の未知試料の温度に適合するように補正された強度を表す訓練セット内の各薬剤に関する訓練データ(I(T
b)
1からI(T
b)
n)のセットを有する。
【0217】
温度補正の導出
未知薬剤試料に対して盲検試験を実施するときには、異なる波長で強度データが測定され、試料の温度が格納される。流体の温度が既知である場合に、盲検試験において測定される未知薬剤の温度に対応して、温度補正された訓練データ係数セットが、データベース内の全ての薬剤に対して生成される。従って、盲検試験濃度非依存係数と訓練データセットのものの両方が共通の温度を有する。
【0218】
温度補正は、以下に提供するように、与えられた薬剤に対して特定の波長で測定された強度と温度の間の実験観察的線形関係を利用することによって実施される。従って、与えられた薬剤の温度依存性は、温度変化に対する測定強度の勾配に対応する関連の各波長での単一係数によって測定して特徴付けることができる。
【0219】
与えられた波長での訓練データセット内の与えられた薬剤に対して、温度T
0+ΔTにおける強度は、温度T
0における強度を用いて次式のように表すことができる。
式(A6)は、式(6)に同等である。
【0220】
(A6)では、勾配dI/dTは、データベース内の各薬剤に対して既知である定数係数である。これらの係数は、各希釈剤及び関連の無希釈薬剤に対する測定によって決定される。各波長には別個の係数が存在する。これらの温度係数は、訓練データセットの一部を形成する。
【0221】
(A6)における温度T
0は、元の訓練データ測定が実施された温度(流体試験セルホルダ内の温度センサから決定されたもの)として定められる。これは、データベース内の各入力項目において同じである必要はなく、各波長で異なることができる。
【0222】
T
0からの温度偏差をΔTで表している。この温度偏差は、試験(盲検試験)下の未知薬剤の流体温度を測定し、T
0という既知値を減算することによって決定される。従って、(A6)の線形補正式を用いて、盲検試験測定と同じ温度で濃度非依存の訓練係数の温度補正されたセットを生成することができる。
【0223】
保持器公差感受性の低下
試料保持器16は、試験管、セル、IVライン、シリンジ、又は透明壁を有する他の適切な保持器とすることができる。試料保持器壁、経路長、及びあらゆる他の幾何学パラメータ及び/又は材料パラメータにおける公差に起因する不正確性は低減することができる。例えば、盲検試験又は訓練試験中に、典型的にプラスチックで製造された2つの光学透明の壁によって範囲が与えられた固定空洞を有することによって流体(試料)厚が制御される。本発明では、そのようなプラスチック保持器は、廃棄の前に一度だけ使用される消耗製品であるように設計される。製造処理中には十分に制御されるが、製造公差に起因して、意図する公称流体厚からの管毎の軽微な偏差が不可避に存在する。一般的に、例えば数mmの公称流体厚では、±15ミクロンの寸法公差が存在することになる。管毎のこの寸法不確定性は、保持器の公称厚に関する平均値付近の与えられた流体に関する測定強度値の発散を意味する。
【0224】
概要としては、保持器(例えば、試験管)の幾何学形状の変化(製造公差に起因する)に対する強度データの感受性を低下させるために、訓練データにおける強度値と盲検試験データにおける強度値との正規化比を生成する以下の「保持器補正」アルゴリズムが良好に機能することが見出されている、段階235c。このアルゴリズムは、暗電流及び温度の補正が適用された後で訓練データと盲検試験データの両方に適用される。このアルゴリズムの導出の詳細を以下に提供する。補正は必ずしもそのようなものであるわけではないが、アルゴリズムは、検証/識別処理を保持器公差/変化に対してそれ程感受性が高くないものにする係数を生成する。
【0225】
次いで、この処理を
図8の段階235cを参照してより詳細に以下に説明する。この場合に、各波長での基準強度に対する試料強度(適切な場合に、補償された訓練データ又は盲検試験データからの)の比が、各保持器に対してプロセッサによって評価される(同じ試料に対して複数回の試験が複数の保持器内に実施される場合に)。次いで、プロセッサにより、複数波長にわたる和に対して各保持器における比データが正規化される。この正規化を下記で数学的に説明する。
【0226】
最初に、訓練セット内の各無希釈薬剤及び希釈剤に関して、各波長で基準生データ強度セット(いずれかの手法により、例えば、モニタダイオードにより、又は基準チャネルを通して得られたもの)に対して、又は基準データセットと訓練データセットの両方が上述の通りに暗電流補正及び温度補正に関して処理されたである場合に訓練データ生強度(I(T
b)
1からI(T
b)
n)のセットに対して、走査回数にわたる平均が見出される。これらの平均の比f
m(訓練生データ平均強度を基準生データ平均強度で割算したもの)が、各保持器に対して各波長で見出される。次いで、この比データは、各管に対して複数波長にわたる和に対して正規化される。この正規化を下記で数学的に説明する。
【0227】
m番目の波長での比をf
mで表記すると、正規化された比は、次式のようにパラメータg
mによって与えられる。
【0228】
必要に応じて、試料データに対して同じ正規化が同じく実施される。すなわち、試料薬剤及び希釈剤に関して、各試験波長で基準生データ強度(いずれかの手法により、例えば、モニタダイオードにより、又は基準チャネルを通して得られたもの)及び未知試料データ生強度(これらの両方を暗電流補正及び温度補正に関して処理されたとすることができる)に対して走査回数にわたって平均が見出される。これらの平均の比f
m(未知試料生データ平均強度を基準生データ平均強度で割算したもの)が各(試験)波長で見出される。次いで、この比データは、各管に対して複数波長にわたる和に対して正規化される。この正規化は、数学的には上述の式(7)に記載されている。
【0229】
g
m値は、与えられた保持器に対して測定された全ての試験波長にわたる強度の和を基準としてのm番目の波長で測定された透過光の比率として定義される(スペクトル)強度分率(「比分率」とも表現する)を表している。g
mの値は、測定される全ての試験波長にわたって受け取られた全エネルギ量の分率を表すので常に0と1の間に収まる。
【0230】
温度補正されたかつ暗電流排除された訓練データでは、使用される各保持器に関するg
m値(g
m1からg
mn)のセットが式(7)よって得られる。暗電流補正された盲検試験データに対しても、使用される保持器に関するg
m値(g
m1からg
mn)のセットを取得するのに同じ処理手順が適用される。
【0231】
それによってプロセッサ18/データベース23に格納されて検証/識別目的で計算することができ(以下に更に示すように)、保持器の幾何学形状に対して低い感受性しか伴わずに使用することができる訓練係数及び盲検試験係数の基礎を形成する各薬剤に関するg
m係数(g
m1からg
mn)のセットがもたらされる。
【0232】
保持器公差感受性低下の導出
試験下の流体に関する強度測定は、流体試料を含む特定目的で製造された試験管(バイアル)を用いて実施される。一般的にプラスチックで製造された2つの光学透明の壁によって範囲が与えられた固定空洞を有することによって流体厚が制御される。典型的な流体厚は数mmであり、プラスチック壁は同等の合計厚を有する。本発明では、そのようなプラスチック試験管は、廃棄の前に一度だけ使用される消耗製品であるように設計される。
【0233】
製造処理中には十分に制御されるが、製造公差に起因して、意図する公称流体厚からの管毎の軽微な偏差が不可避に存在する。一般的に、注入成形構成要素では、数mmの公称流体厚において±15ミクロンの寸法公差が存在することになる。管毎のこの寸法不確定性は、管の公称厚に関する平均値付近の与えられた流体に関する測定強度値の発散を意味する。この誤差は、m番目の波長に対してランベルト・ベールの法則を開始点として使用する測定値セットで数学的に次式のように表すことができる。
ここで(B1)では、I=試験管内の流体を通る測定透過強度(この場合に、温度補正されたI(T
b))、I
0=試験管上の入射強度(基準チャネル読取値に比例する)、T
m=試験管壁及び流体の屈折率を含み、材料境界面での反射を考慮する透過係数、
=m番目の波長での合計厚wを有する試験管壁材料の減衰係数、α
m=m番目の波長での厚みdを有する流体の減衰係数。
【0234】
一例として、流体厚dの変化に対する測定透過係数f
mの感受性を考えられたい。dに関して、全ての他の変数を一定に保ちながら微分(B1)することにより、次式が与えられる。
【0235】
公称流体厚をd
0として定め、この値からの偏差をΔdとして定めると、測定強度に対して得られる効果を次式のように表すことができる。
【0236】
(B2)と(B3)を組み合わせることにより、次式の誤差項Δf
mが与えられる。
【0237】
同じ公称設計の多くの試験管を用いて流体に対して実施された測定により、(B4)で与えられる形式の誤差は、流体間隔dに関連付けられた典型的な寸法公差と整合することが示されている。更に、これらの管毎の変化は、一部の薬剤間の平均強度値間の差と大きさが同等であり又はそれよりも大きい可能性があることも見出されている。それによってある一定の薬剤では、薬剤の分別が非常に困難になるか又は不可能にさえなる。
【0238】
これを改善するために、試験管に関連付けられた寸法公差に対してそれ程高い感受性を持たない別の測定パラメータを考察する。このパラメータは、与えられた試験管に対して測定された全ての波長にわたる強度の和を基準としてのm番目の波長で測定された透過光の比率として定義されるg
mで表される強度分率である。すなわち、次式を定義する。
【0239】
g
mの値は、測定される全ての波長にわたって受け取られた全エネルギ量の分率を表すので常に0と1の間に収まる。流体厚における寸法公差に対するg
mの感受性を推定するために、流体厚dに関する偏微分を使用する前と類似の処理手順が辿られる。ΣfmをΣで表すことによって次式が与えられる。
【0240】
(B6)を用い、更に(B2)を用いると∂Σ/∂d=−2Σα
mf
mであることに注意すると、g
mに関連付けられた誤差項Δg
mを次式で表すことができる。
【0241】
(B7)の精査により、透過係数f
mの代わりに強度分率g
mを使用する場合に、試験管内の流体厚の寸法公差に関連付けられたΔg
mの発散の大きさが縮小する。この減少は、(B7)において1よりも大きいファクタΣ及びΣ
2を含む分母項によるものである。
【0242】
ここで、異なる薬剤に対して測定を実施する際に発生することになる流体減衰係数が変化する場合の公称流体厚d
0の試験管に関する強度分率パラメータの事例を考察する。流体減衰係数がα
mからα
m+Δα
mに変化した場合に、強度分率に対する効果は次式の通りである。
【0243】
(B8)では、分母における減衰係数の変化は、分子におけるものと比較して無視することができることになる。従って、(B8)を次式のように書くことができる。
【0244】
従って、(B9)から、流体減衰係数の変化に対するパラメータg
mの変化分率は、次式によって与えられる。
【0245】
式(B10)は、強度分率パラメータg
mが、流体減衰係数の変化に対して感受性を有するままに留まり、従って、薬剤分別パラメータとして適切であることを立証するものである。
【0246】
強度分率パラメータg
mの使用を同じ流体を含む複数の試験管を用いて得られた測定データを用いて検証した。得られる異なる管にわたる値の発散は、測定透過係数だけを用いて得られる値と比較して極めて低く、従って、(B7)の理論的な結果が証明されることが見出されている。
【0247】
また、強度分率パラメータを使用する場合に、異なる薬剤の減衰係数の固有差が変わらずに維持され、それによって(B10)の結果が証明されることも見出されている。
【0248】
試験管毎の流体厚変化に対する感受性の低下は、これまで単に透過係数データだからでは区別を付けるのが不可能であることが見出されていた薬剤の間の分別において重要なファクタであることが見出されている。
【0249】
濃度非依存係数
上述したように暗電流補正、温度補正、及び経路長補正を適用し、訓練データ及び盲検試験データからg
m係数がもたらされると、次の段階は、訓練試料薬剤と盲検試験下の未知試料薬剤の両方に関して、与えられた薬剤希釈剤の組合せに関する各波長での濃度に依存しないスペクトル(比較)係数のセットをこれらのg
m係数から生成することである、段階235d。
【0250】
与えられた薬剤希釈剤の組合せにおける強度は、濃度に線形依存することが実験的かつ理論的に示されている。従って、得られるxで表す無希釈薬剤の体積分率に対する直線の勾配を用いて、この依存性を特徴付けることができる。この場合に、x=0は純粋な希釈剤の場合に対応し、x=1は、純粋な無希釈薬剤の場合に対応する。濃度非依存係数の導出の詳細を以下に提供する。
【0251】
図24の段階235dを参照すると、プロセッサにおいて濃度非依存係数を計算することにおいて含まれる段階を以下に提供する。最初に、希釈剤、例えば、0.9%食塩水を選択する。次いで、選択された希釈剤及び各無希釈薬剤に関して、補償された訓練データセットからg
m値に関する複数の試験管にわたる平均を上記に提供したように取得/評価する。各波長(接尾辞m)での各薬剤及び選択された希釈剤に関して1つのそのような平均値が存在する。無希釈薬剤管平均を
で表し、希釈剤の管平均を
で表している。盲検試験データ(単一保持器しか存在しない)に対してxが未知の濃度である時にg
Bm(x)で表される(上付き文字Bは盲検試験に対する)g
m値を取得/評価する。次いで、各薬剤希釈剤の組合せに関する強度対濃度曲線の勾配s
mを与えるために、各薬剤に関して各無希釈薬剤管平均から希釈剤管平均を次式のように減算する。
【0252】
次いで、プロセッサは、各更に別の希釈剤に対して同じ段階を実施する。次いで、プロセッサは、次式の通りに訓練セット係数を評価する。
【0253】
これらの係数は、式(8)の勾配を全ての波長にわたって得られた二乗和平方根に対して正規化したものである。これらの係数は濃度xには依存せず、与えられた無希釈薬剤及びその選択された希釈剤に対して各波長で定められる。
【0254】
次いで、今度は、薬剤のアイデンティティと濃度が両方共に未知である場合の盲検データに着目する。未知の濃度xの薬剤と選択された希釈剤との混合物の場合に、m番目の波長でのスペクトル強度g
Bm(x)に関する濃度に対する線形依存性を次式によって定めることができる。
式(10)では、濃度xと共に未知である盲検試験薬剤に関する濃度の勾配をs
Bmで表している。
【0255】
式(10)及び(9)で与えられた式を用いて、プロセッサにより、盲検試験薬剤に関する濃度非依存係数y
Bmのセットを次式のように評価することができる。
【0256】
式(11)は、上述の係数y
Bmは、g
Bm(x)の測定値及び訓練データセットから得られる既知の希釈剤値
から決定することができることを示している。
【0257】
使用することが可能ないくつかの希釈剤が存在することになるので、希釈剤のアイデンティティが不明又は疑わしい場合に、訓練データと盲検試験データの両方に対して濃度非依存係数の異なるセットをもたらすように、上述の処理手順を各異なる希釈剤に対して繰り返すことができる。従って、y
m及びy
Bmの完全なセットは、一般的に、関連の全ての希釈剤に関する係数から構成されることになる。
【0258】
式9及び11を用いて、プロセッサは、各薬剤に関する訓練データ係数のセット(y
m1からy
mn)をもたらすy
mと、盲検試験データ係数(互いに「比較係数」)のセット(y
Bm1からy
Bmn)をもたらすy
Bmとを取得し、これらの比較係数は、プロセッサ18/データベースに格納され、検証識別に向けて使用することができる。
【0259】
濃度非依存係数の導出
関連の各流体の特質は、その複素屈折率によって特徴付けることができる。試験下の流体nの複素屈折率をその実数部分及び虚数部分n’及びn’’を用いて次式として書くことができる。
ここで(C1)では、
である。
【0260】
物理的には、屈折率の実数部分n’が、λ=λ
0/n’に従って流体中の電磁放射線の波長を決定し、ここでλ
0は、自由空間内の波長である。更に、重要なことには、水性流体を通じたNIR透過では、屈折率の虚数部分n’’が、次式のようにランベルト・ベールの法則に従って入射電磁波の減衰率(吸収による)を決定する。
【0261】
(C2)では、流体を通る透過光強度をIで表し、I
0は、流体試料上に入射する強度である。流体の厚みをdで表し、αは、次式で与えられる減衰係数である。
【0262】
従って、与えられた自由空間波長での試験下の流体を通じた測定減衰率は、流体の複素屈折率の虚数部分によって決定される。
【0263】
投与の前に静脈薬剤の調製時に共通して行われることは、食塩水又は水のような希釈剤を使用する薬剤の希釈である。これらの状況下での薬剤検証は、薬剤濃度の更に複雑化されたファクタを有し、これは、いずれかのその後の検証分析で対処しなければならない。希釈剤のアイデンティティが既知である場合に、薬剤の濃度に依存しない各無希釈薬剤に関する係数セットを取得するために、以下の処理手順が適用される。
【0264】
下付き文字「1」及び「2」で各々を表し、それぞれ複素相対誘電率ε
1及びε
2を有する2つの流体の混合物としての希釈薬剤を考えられたい。試験下の流体の複素相対誘電率をεで表し、この誘電率は、流体の複素屈折率nに次の関係式によって関連付けられる。
【0265】
この複素相対誘電率は、個々の成分の複素相対誘電率と各成分の体積分率とを用いてリヒトネッカーの混合則「参考文献1」を援用することによって表すことができ、次式で与えられる。
【0266】
(C5)では、xは、無希釈薬剤として定めることができる成分「2」の体積分率を表し、成分「1」は希釈剤である。従って、x=0の時に、混合物は100%希釈剤からなり、x=1の時に、混合物は100%無希釈薬剤である。
【0267】
最近まで、上述の式は、いかなる確固とした物理的根拠も持たない本質的に半経験的なものと見なされていた。しかし、2010年に、シンプキン「参考文献2」により、マクスウェルの方程式及び電荷保存則を用いて第一原理からこの式が導出されている。
【0268】
ここで、(C4)を(C5)に代入し、各辺の平方根を取ることにより、式(C5)を当該媒質の複素屈折率を用いて表すことができる。それによって混合物の複素屈折率に関する同一式が与えられる。
ここでn
1は、希釈剤の複素屈折率であり、n
2は、体積分率xを有する無希釈薬剤の複素屈折率である。
【0269】
ここで、希釈剤の複素屈折率に対する差Δnを用いて、無希釈薬剤の複素屈折率は次式のように表される。
【0270】
(C7)を(C6)に代入すると、次式が与えられる。
【0271】
静脈薬剤の場合に、複素屈折率は水の特質に依存し、水の複素屈折率からの複素屈折率の偏差は大きさが小さい。従って、(C8)では、分率Δn/n
1は1と比較して小さく、従って、非常に良い近似で右辺を2項級数に展開することができ、先頭の数項しか用いない。従って、(C8)は次式になる。
【0272】
従って、2つの流体に対する混合則は、無希釈薬剤の体積分率に対する線形関係によって十分に近似される。(C9)の両辺の虚数部分を採用することにより、次式が与えられる。
【0273】
ここで、式(C2)のランベルト・ベールの法則の自然対数を取り、減衰係数αに(C3)を用いて代入することにより、次式が得られる。
【0274】
Iが、希釈薬剤の測定透過強度を表すとすると、n’’に式(C10)を用いて代入することができ、次式が得られる。
【0275】
上述の表現式は、次式のように表すことができる。
ここで(C12)では、
は、純粋な希釈剤に適用可能である測定強度I
1の場合のランベルト・ベールの法則であり、
は、無希釈薬剤に適用可能である測定強度I
2の場合のランベルト・ベールの法則である。
【0276】
(C12)では入射強度I
0が相殺されるので、次式を与えるように上式を更に簡素化することができる。
【0277】
式(C13)は、測定強度が、リヒトネッカー式に等しい対数混合則に従うことを示している。(C13)におけるような表現式は、いくつかの測定波長の各々に対して与えられた薬剤希釈剤混合物に適用することができる。
【0278】
(C13)では、異なる薬剤において測定スペクトル強度が殆ど異ならないことに着目することにより、対数表現式を簡素化することができる。すなわち、比(I/I
2)及び(I
2/I
1)は1に近い。従って、次の近似式を書くことができる。
及び
これらの式は、I−I
1及びI
2−I
1の大きさがI
1に対して小さいことにより有効である。(C13)にこれらの近似式を使用することにより、次の線形表現式がもたらされる。
【0279】
(C14)で与えられる形式の表現式を各波長で定めることができる。注意される重要な点は、薬剤濃度の尺度である無希釈薬剤の体積分率xが、与えられた混合物において全ての波長に共通である点である。従って、2つの波長の最小値において測定を行うことにより、濃度xを排除し、与えられた希釈剤に対する特定の無希釈薬剤に独特の値を得ることができる。全ての波長での測定データを利用する濃度xを排除する最適な手法を以下の通りに提案する。正規化係数が全ての波長にわたる二乗和平方根である正規化処理手順が使用される。この二乗和平方根方式を示すために、m=1,2,3...Mの時に、(C14)におけるようなM個の式のセットが各波長λ
mに対して1つ得られるようにM個の波長を考えられたい。
【0280】
次いで、(C15)において両辺を二乗し、全ての波長(接尾辞m)にわたって和を取り、平方根を取ることにより、xに関する次の表現式が与えられる。
【0281】
(C14)におけるxに(C16)を用いて代入することにより、各波長で次式のように定められる係数y
mが与えられる。
【0282】
(C17)の最右辺により、係数y
mは薬剤濃度に依存せず、無希釈薬剤及びその希釈剤に独特のものである。
【0283】
未知薬剤に対して盲検試験を実施するときには、係数は、未知薬剤混合物に対してM個の波長で強度I(x,λ
m)を測定することによって見出される。次いで、各波長でのこれらの測定強度と希釈剤の間の差は、全ての波長にわたる二乗和平方根に対して(C17)の右辺にある第1の表現式によって正規化される。希釈剤のアイデンティティは既知であり、一般的に訓練データセット内に含まれることになるその強度はI
1(λ
m)であると仮定する。通常、希釈剤は、食塩水、水、又はグルコースである。希釈剤のアイデンティティが不明又は疑わしい場合に、薬剤検証分析における使用に向けて、希釈剤と無希釈薬剤との全ての可能な組合せに対して濃度非依存係数を決定することができる。
【0284】
(C17)の影響は、訓練データセットを生成するときに、(C17)における関連の希釈剤の強度(I
1(λ
m)で表す)及び(C17)おける無希釈形態にある関連の薬剤の強度(I
2(λ
m)で表す)を測定することしか必要ではないということである。希釈剤と薬剤のあらゆる可能な組合せに対して訓練データを生成する必要はなく、関連の各希釈剤及び各無希釈薬剤に関するデータだけを生成する必要しかない。次いで、様々な薬剤及び希釈剤に関する訓練データセットに(C17)の最右辺によって与えられる濃度非依存係数が入力される。
【0285】
薬剤のアイデンティティが盲検試験から検証され、訓練セット係数が上述したように生成された状態で、(C15)を用いた逆代入によってxの値を計算することによって薬剤の濃度を決定することができる。
【0286】
薬剤検証/識別又は他の特徴付け
ここで、訓練データ内の薬剤の各々及び選択された希釈剤に関する濃度非依存係数セットが存在するので、式(9)から得られる訓練係数y
mが存在する。また、未知盲検試験薬剤に関する濃度非依存係数セットも存在するので、式(11)から得られる試料係数yB
mが存在する。
【0287】
この段階で、薬剤のアイデンティティは、例えば、y
mを訓練データとし、y
Bmを試験データとして線形判別分析を用いてプロセッサによって検証/識別するか又は他に特徴付けられる、段階235e。一般論として、試料に対して各選択波長で互いの比較試料に対して代表的な試料/訓練係数が見出される。試料係数は、訓練係数と対比して分析される。これらの係数に基づいて、各試料に対して代表値を取得することができる。未知試料に対して見出された代表値と訓練試料(同じ試料に対応する)の代表値との間に十分な類似性が存在する場合に、検証又は識別が行われる。十分な類似性は、あらゆる適切な統計的又は他の技術を用いて決定することができる。例えば、十分な類似性は、代表値の一部又は全てが検証行列内のものと適合するときに発生することができる。別の例では、十分な類似性は、試料が各比較試料に関する閾値よりも小さい時に発生することができる。検証/識別の結果をユーザに通知するために、ユーザインタフェースを通して警報又は出力を行うことができる。
【0288】
検証では、未知試料に関するy
Bm値が、臨床医によって示された/入力された薬剤に関するy
m値と対比して分析され、適合が存在するか否かが調べられる。盲検試験試料が予想された入力薬剤に適合するか否かを臨床医に通知するために、インタフェース上に「イエス」又は「ノー」のような出力応答を出力することができる、
図23の段階236。識別では、未知試料に関するy
Bm値が、全ての訓練試料に関するy
m値と対比して分析される。プロセッサ18は、例えば、試料薬剤が何であるかを臨床医に通知する出力をユーザインタフェース上に提供することができ、
図23の段階236、適切な場合は外部機器を制御することができる。
【0289】
プロセッサ18が各段階を行う検証/識別方法の1つの可能な実施形態を
図25(
図24の段階235eをより詳細に示す)を参照して説明する。上述したように、各未知試料及び訓練試料は、各波長に対して1つの係数セットを有する。概要としては、各試料に関する係数セットに対して、各波長に対して1つの6つの重みによる線形スコア、すなわち、スコア=w
1×波長1における正規化値+...+w
6×波長6における正規化値が定められる。更に、スコアがτを例えば超えた時に警報が発せられるように、各スコアに対して閾値τが決定される。
【0290】
最初に、プロセッサ18により、データベース23から試料係数が得られる、段階240。次いで、試料係数に、それに適用される重み付けが乗算されるか、又は他に試料係数が重み付けを有する、段階241。重み付けは、この試料に対する以前の重み付けに加算される、段階242。それによって試料に関する代表試料値になる累積重み付けが与えられる。試料に関する全ての係数を処理し終わった場合に、段階243、方法は、次の段階に移動する。全ての係数が処理し終っていない場合に、段階243、次の係数が得られ、段階240、重み付けされ、段階241、この試料に関する累積重み付けに加算される、段階242。
【0291】
次いで、訓練試料係数に対して、プロセッサ18が段階を行う同じ処理が発生する。検証が行われる場合に、以下に続く段階が発生する。臨床医が予想薬剤として予め入力した試料/薬剤に対して、プロセッサ18によって第1の係数が得られる、段階244。次いで、この係数に、それに適用される重み付けが乗算されるか、又は他に係数が重み付けを有する、段階245。この重み付けは、この訓練試料に対する以前の重み付けに加算される、段階246。それによって訓練試料に関する代表訓練値になる累積重み付けが与えられる。試料に関する全ての係数を処理し終わった場合に、段階247、方法は次の段階に移動する。全ての係数が処理し終っていない場合に、段階247、次の係数が得られ、段階244、この訓練試料に対して重み付けされ、段階245、この試料に関する累積重み付けに加算される、段階246。
【0292】
次いで、代表訓練値と累積代表試料値が比較されるか、又は閾値と対比して比較されるか、又はこれらの値の間のあらゆる他の関係が決定される、段階248。例えば、試料値が訓練値の「X」の領域内にある場合に、又は試料値が訓練値といずれかの関連がある閾値よりも大きいか又は下回る場合に、「適合」が決定され、未知試料は、訓練値のものと同じであると見なされる。そうでなければ、未知試料は適合するものとは見なされない。次いで、結果を示す出力を発生させることができる、段階236。処理は終了する。
【0293】
識別が行われる場合に、全ての訓練試料に関する全ての訓練試料係数を通して段階244から248までが反復される、段階249。すなわち、比較段階248が適合をもたらされなかった場合に、段階249、プロセッサ18は、データベース23内の次の訓練試料に関する訓練係数からの代表訓練試料値を決定する、段階244から247。訓練代表値と試料代表値が比較され、適合が発生するか否かが決定され、段階248、結果が出力される、段階236。適合がなかった場合に、段階249、全ての訓練試料係数が分析し終わるまで又は適合が発生するまで段階244から248までが繰り返される。
【0294】
上述の実施形態は、概念的なものでしかなく、プロセッサによって取られる実際の段階及びその順序は異なる可能性があることが認められるであろう。例えば、最初に訓練試料係数を処理することができる。多くの代替を考えることができるであろう。
【0295】
重み付け及び閾値の決定
下記の薬剤を第1の実施形態において記述された装置及び方法を用いて試験した。スコアにおいて1単位の間隔を与える線形プログラムを解くことによって重み付けw
1...w
6を選択した。この選択は、「意図する」薬剤が残りのものから十分に分離している場合に可能である。しかし、解を得ることができる場合であっても、「ロバスト性」の問題がある。大きい重み付けは「ロバスト性」を欠く兆候を示しがちである。盲検試験性能のより明快な理解を得るためは、訓練データに±1%を加算し、得られる不正な誤警報率を考察することが必要になる。閾値τは、許容範囲率を与えるように選択される(可能な場合に)。
【0296】
薬剤濃度の特定
薬剤アイデンティティが検証されると、今度は、式(8)を用いて濃度曲線の勾配s
mをプロセッサによって求めることができる。次いで、設定s
Bm=s
mに基づく式(10)への逆代入から、選択された希釈剤中の薬剤の濃度をプロセッサによって求めることができる。従って、濃度xが次式によって与えられる。
【0297】
プロセッサは、試料薬剤の濃度がどれ程のものであるかを臨床医に通知する出力をユーザインタフェース上に提供することができる。
【0298】
この実施形態において、全ての補正又は処理が必須であるわけではないことが認められるであろう。生データは、暗電流が排除され、温度補正され、強度分率が見出され、濃度非依存の係数が見出されるように記述したが、これらの部分集合を使用することができる。更に、これらの段階が行われると記述した順序を限定的であると考えるべきではない。また、温度補正、強度分率、及び濃度非依存の係数が盲検試験の後で見出されているが、これは必須ではないことも認められるであろう。これらの一部又は全ては、訓練試験の後で見出すことができる。データベース23(例えば、ルックアップテーブルの形態にある)は、訓練取得時又はその後で生成することができ、次いで、盲検試験の後の特徴付け処理を使用することができる。例えば、可能な全ての温度に関する訓練試料係数を供給することができ、その後で、特徴付け中にプロセッサ18を使用することができる。
【0299】
また、検証が行われる時に全ての訓練データ/係数を処理及び比較する必要がない場合があることも認められるであろう。これに代えて、決定される薬剤に関する訓練データ/係数のみが、未知試料のものに対して処理されて比較される。識別では、適合が見つかるまで、訓練試料のうちの一部又は全てに関する訓練データ/係数を未知薬剤と処理/比較する必要がある場合がある。
【0300】
第2の実施形態
次いで、本発明の1つの可能な実施形態を例示的に詳細に以下に説明する。この実施形態は、限定的ではなく、例示的なものであると考えられたい。この実施形態は、例えば30薬剤のセットからの水ベースの薬剤の検証又は識別を可能にするための装置に関して説明する。
【0301】
この例では、30のlog
2nよりも大きい6個の電磁放射線波長が選択される。これらの波長は分析範囲で選択され、ベース液体であってこの範囲に収まる水のスペクトル特性に基づいている。水ベースの薬剤(又は他の液体ベースの薬剤又は水溶液)のスペクトルは、大半がベース液体スペクトルによって占められることになる。例えば、
図5を参照すると、薬剤W(4%ゲロフシンコハク化ゼラチン溶液)のスペクトル(点線)は、水のスペクトル(実線)と非常に似通っている。これは、水のスペクトルが優勢であるからである。しかし、異なる水ベースの薬剤の間の透過係数の差を測定することができる。水スペクトルのスペクトル特性の区域/波長に着目し、これらの波長での電磁放射線ビームを使用することにより、薬剤の識別又は検証のための薬剤識別能を与える上で、これらの波長での水スペクトルと水ベースの薬剤スペクトルの間の差を利用することができる。
【0302】
図6は、決定される分析範囲で考えられる一部のスペクトル特性(特徴)を有する水のスペクトルを示しており、これに対して下記でより詳しく説明する。
・スペクトル特性A(傾斜部)1300nmと1400nmの間の第1の領域内、
・スペクトル特性B(平坦部/トラフ)1400nmと1500nmの間の第2の領域内、
・スペクトル特性C(傾斜部)1500nmと1600nmの間の第3の領域内、
・スペクトル特性D(ピーク)1600nmと1700nmの間の第4の領域内、
・スペクトル特性E(湾曲部)1700nmと1800nmの間の第5の領域内、
・スペクトル特性F(屈曲部)1800nmと2000nmの間の第6の領域内。
【0303】
上述のリストは、考えられるスペクトル特徴の網羅的なリストではない。
【0304】
電磁放射線ビームの波長の選択は厳密に固定されるわけではなく、必ずしもベース液体のスペクトル特性だけに基づくわけではない。この選択は、薬剤試料のベース水のスペクトル内のスペクトル特性の波長による影響を受けるが、更に、選択波長は他のファクタにも基づく可能性がある。例えば、コスト効率と通常入手可能な供給チェーンの都合から、このスペクトル特性に近いが同じではない別の波長が既製のレーザ又は他の光学構成要素によって容易に利用可能である場合に、この波長を使用するか又は選択することが好ましい場合がある。
【0305】
例えば、1310nm及び1550nmの波長は通信業界内で広く普及しており、それに起因してこれらの波長に向けて構成された多くのデバイスが存在するので、水ベースの薬剤に対する選択波長としてこれらの波長を使用することができる。レーザダイオードは、名目上1650ナノメートル、1750ナノメートル、及び1850ナノメートルにおいて中心波長を有するが、これらの波長は、最大でプラス又はマイナス30ナノメートルまで変更することができる。従って、これらの範囲の波長を選択することができる。従って、これらの成分の利用可能性及びベース液体のスペクトル特性に着目することにより、放出放射線に適する波長を決定することができる。
【0306】
従って、以上の説明に基づいて、6つの波長の各々は、スペクトル特徴の各々のうちの1つにわたる領域の近傍又はこの領域内にあるが、ハードウエアの利用可能性による影響も受けるものとして選択することができる。従って、水に対する6つの波長は、(例として)特徴Aに対応する1350ナノメートル、特徴Bに対応する1450ナノメートル、特徴Cに対応する1550ナノメートル、特徴Dに対応する1650ナノメートル、特徴Eに対応する1750ナノメートル、特徴Fに対応する1850ナノメートルとすることができ、これらの全てが1300〜2000ナノメートルの領域内に収まる。明らかなように、1350nmから1850nmまでの波長選択は、水スペクトル内のピーク及びトラフ、並びに他のスペクトル特性に近いが、正確には適合しない。選択は、利用可能なハードウエアの作動波長にもかかわりがある。これらの選択は、当然ながら公称波長であり、実際の波長は、光源11の特性に起因して実際には異なる場合があるであろう。
【0307】
図7は、
図1で一般的に記述された装置10の1つの可能な形態を概略的な形態に示している。分光分析器10は、コントローラ12と、複数の波長での電磁放射線22を光の形態で出力する光源11を一緒に形成する6つのレーザ51a〜51fを支持するカルーセル50とを有する。各レーザは、上記に定めた6つの波長のうちの1つで電磁放射線22を放出するように調整されるか又は調整可能である。各レーザは、ドライバ回路を通して電子的に容易に制御される安定した高強度狭帯域平行電磁放射線出力を与えるレーザダイオードを含むことができ、又はこれらのレーザダイオードで形成することができる。各レーザは、適切なレンズを用いて放出電磁放射線14aをビームに平行化することができるレンズを含む。各レーザ51a〜51fは、出力電磁放射線のフィードバック制御に向けて、当該放射線を検出するための1つ又はそれよりも多くの光ダイオード4a〜4fを有することができる。レーザは、他の光源よりも少ない放熱問題のみを有し、従って、測定に対する熱の悪影響が低減する。各レーザの出力電力は、好ましくは、均衡のとれた装置を有する都合上、名目上は同じである(一般的に30mW)。好ましくは、それによってレーザダイオードに対して共通のダイオードドライバ回路を使用することも可能になる。
【0308】
コントローラ12は、レーザ51a〜51fのうちのいずれか1つを順次作動させ、作動されたレーザ(例えば、図示のように51f)を試料経路/ビーム経路14aに沿ってビーム22を放出するように位置合わせするように、カルーセル50を軸の周りに回転するように制御することができる。レーザ51a〜51fは、必要に応じて暗電流信号の測定を容易にするために完全にオフにすることができる。それによって機械作動式光学チョッパーの使用を排除することができる(必要に応じて含めることができるが)。作動された状態で、レーザは、電磁放射線22を試料に向けて経路14に沿って放出する。好ましくは、光源から検出器までの経路14aは、いずれかが存在するとしても好ましくは大部分が最小限の光ファイバ構成要素のみを有する自由空間を通じたものである。それによって光減衰率及びハードウエアが低減する。更に、装置は、ビーム経路14aに位置合わせされた試料保持器16aを含む。作動レーザ51a〜51fから放出された電磁放射線は、試料保持器内の試料16上に入射し、そこを透過又は反射する。
【0309】
検出器16は、試料16aを抜け出る被影響放射線経路14bに配置される。好ましくは、検出器16は、被影響放射線中に存在することになる波長の電磁放射線を検出するのに適する応答を有するようにバイアスされた単一光検出器/光ダイオードである。単一検出器は、構成要素によって導入される変化性に起因する誤差を低減し、それによって複数の光検出器の間の相対差が取り除かれ、放出電磁放射線の出力へのより安定した応答が可能になり、従って、感度が改善する。例えば、InGaAs光ダイオードを使用することができる。検出器17は、被影響放射線14bを検出し、検出器17の出力14cは、上述したように試料を検証又は識別するプロセッサ18に渡される。
【0310】
更に、装置は、入射電磁放射線ビーム22/14aを基準試料保持器に向けて基準検出器20に通過する基準経路15aに沿うように向け直すビームスプリッター21を有する。基準検出器20の出力もプロセッサ18に渡される。基準は、例えば、食塩水とすることができる。
【0311】
好ましくは、装置は、電磁放射線源11及び検出器の温度を安定化するためのフィードバックシステムを更に含む。一例では、サーミスタが、電磁放射線源及び/又は検出器の温度を検出する。光源及び検出器の温度を冷却して安定化するために、ペルチェ冷却デバイスを作動させることができる。サーミスタの出力は、光源及び/又は検出器を冷却するペルチェ冷却デバイスを制御するコントローラに送られる。好ましくは、サーミスタは、内蔵光検出器サーミスタ5a、5bである。更に、ペルチェ熱電冷却器は、光検出器5a、5bに組み込まれる。
【0312】
次いで、
図4を参照して、装置10の作動を以下に説明する。コントローラ12は、各レーザ51a〜51fを作動位置に順次回転させるようにカルーセル50を作動させる。レーザ51a〜51fは、作動位置にある時に、選択波長のうちの1つにおける電磁放射線ビームを試料16に(及び任意的に基準試料19に)放出するようにコントローラによって作動される。このようにして、異なる選択波長を有する6つの電磁放射線ビームが、各々が異なる選択波長に調整された6つのレーザ51a〜51fの各々から連続して放出される、段階40。各レーザ51a〜51fは、電磁ビーム22を経路14aに沿って試料に向けて順次放出する。試料16に向けて放出された(14a)各電磁放射線ビームに対して、試料から発せられる被影響放射線が検出される、段階41。電磁放射線ビームは、検出器によって達成される読取値/測定値をオフ段階中にも同じく取得するためにオン及びオフにすることができ、これは、参照目的で暗信号/電流を与えることができる。放出電磁放射線は、ビームスプリッター21を用いて基準試料19を通る基準経路15aに沿っても向けられ、基準検出器20によって検出される。試料検出器17及び基準検出器20からの出力はプロセッサ18に渡される、段階42。プロセッサは、(任意的に)検出器からの出力に対して前処理を実施し、次いで、前処理された出力に基づいて薬剤を検証又は識別する、段階43。プロセッサは、ユーザインタフェース24を通して結果を出力する、段階44。
【0313】
1つの可能な実施形態において、プロセッサ18は、
図8に示すように前処理方法及びそれに続く検証/識別方法を含むか又は実施する。この実施形態において、基準チャネルが使用され、更に暗電流読取値が使用される。暗電流は、電磁放射線(例えば、光)が検出器17、20上に入射しない時にこれらの検出器によって供給される出力である。検出器からのこの暗電流読取値は、較正目的で検出器からの実際の読取値から減算することができる。暗読取値を有することは本発明に必須ではなく、本明細書ではこれを1つの可能な選択肢として記載し、処理方法の残りの説明部分も、暗読取値が得られなくても又はそれによらずに機能することになる。
【0314】
図8における検証又は識別を実施する前に、試料を検証/識別することを可能にする基準の比較データを生成するために
図9〜
図11に示すように訓練処理が実施される。訓練処理では、比較データを生成するのに、異なる薬剤間の分離を最適化する試料データの各々からのデータ値の特定の線形組合せを決定するアルゴリズムが使用される。次いで、試験下の薬剤が意図する薬剤であることを検証するために、得られる数学的規則は、試験下の薬剤に対して得られるデータに適用される。本説明の実施形態において、暗電流読取値が使用される。訓練処理は、好ましくは、前処理段階と比較データ発生段階とを含む。前処理は必須ではないが、性能を改善する。
【0315】
図9を参照して、訓練処理において、いくつかの訓練試料が分析器内で順次試験される。各訓練試料は、分析器の実際の使用中に試験されることになる試料に関するものである。各訓練試料に対して、試料チャネルと基準チャネルの両方からの出力が、プロセッサにおいて受け取られる、段階90。暗電流が使用される場合に、暗読取値のための各検出器からの出力が、実読取値の出力から減算される。プロセッサ18において試料検出器17から受け取られる出力14cは、試料16に向けて放出された各電磁放射線ビームにおける被影響電磁放射線14bの強度を示している。この出力は、例えば、検出器の光電流及び/又は検出電磁放射線の強度を直接的又は間接的に示すデータを含むことができる。同様に、プロセッサ18において検出器20から受け取られる出力15cは、基準試料に向けて放出された各電磁放射線ビームにおける被影響電磁放射線15bの強度も示している。好ましくは、装置は、各波長で複数回の測定を実施する。例えば、各波長で、装置は、試料によって影響を受けた被影響電磁放射線を15個の異なる時点で検出し、その出力をプロセッサに渡す、段階94。同じく各波長で、装置は、基準による影響を受けた被影響電磁放射線を15個の異なる時点で検出し、その出力をプロセッサに渡す、段階94。
【0316】
次いで、各波長で、プロセッサ18は、特定の選択波長で試料によって影響を受けた被影響電磁放射線14bの強度と相関する試料に関する様々な試料データ点を基準検出器及び試料検出器の出力から生成する、段階91。これらのデータ点100は、例えば、
図10に示すようにプロットすることができるが、プロセッサは、必ずしも実際にデータをプロットするわけではないが認められるであろう。x軸は、試料検出器17における検出器出力に対応する強度指示値を示し、y軸は、基準検出器20における検出器出力に相関する強度指示値を示している。これらの値は、検出された被影響電磁放射線の強度を直接的又は間接的に示している。基準チャネルが使用される場合に、基準検出器上の出力は、同時に得られた試料検出器からの出力と対にされる。各試料/基準チャネル検出器出力値対は、グラフ上にプロットされる。そのような測定値は、各波長で数回取得することができる。従って、
図10のプロット図は、訓練試料16及び基準19上に入射する(14a)電磁放射線の特定の選択波長(例えば、名目上1350nmのもの)で数回(例えば、15回)測定された強度を示す値103を示している。
【0317】
次いで、各訓練試料において、処理は、第2の(比較)試料101及び対照(例えば、食塩水)102に関する類似のデータ点を取得するように繰り返される。
図9に示すように、第2の(比較)試料101及び対照試料102に関する試料/基準チャネル検出器出力値対をグラフ上にプロットすることができる、段階91。
【0318】
次いで、
図10に示すように、特定の波長(1350nm)における以下のデータ点セットの各々に対して、最良適合直線を適切な統計技術を用いて計算することができ、段階92、x軸の切片値が見出される、段階92。
・訓練試料セット103、
・第2の(比較)試料101、及び
・対照試料102。
【0319】
これらのデータ点から、正規化された前処理された値が見出される。例えば、訓練試料103及び対照102それぞれに関するx軸切片値(例えば、842500及び850500)を求めることができ、次いで、互いから減算することができ、正規化前処理された値(例えば、8000)が得られる、段階93。同様に、第2の(比較)試料101及び対照102それぞれに関するx軸切片値(例えば、86000及び850500)を求めることができ、次いで、互いから減算することができ、正規化前処理された値(例えば、95000)が得られる、段階93。この処理を他の選択波長(例えば、この場合は5つの他のもの)の各々に対して実施することができ、段階94及び段階90〜93、訓練試料に対して6つの正規化前処理された値(各波長に対して1つ)のセットがもたらされる。この処理を第2の(比較)試料に対して他の選択波長の各々において実施することができ、各波長で第2の(比較)薬剤に関する6つの正規化前処理された値のセットがもたらされる。各波長での訓練試料及び第2の(比較)試料に関するこれらの正規化前処理された値セットは、各軸が波長に対応し、当該波長での前処理された値は、当該軸に対してプロットされた多次元空間内で相関付ける/プロットすることができる。
【0320】
実際には、各訓練試料及び第2の(比較)試料に対して6つの正規化前処理された値のセットが複数存在するように、この処理、段階90〜94は、各波長で多くの回数実施することができる。各セットは、多次元(この場合は6次元)空間内の1つの点としてプロットする/相関付けることができる。そのようなプロットの例を
図11に示している。この図では、簡略化のために、各軸が2つの波長からの結果に関する2次元空間しか示していないが、現実には、6つ全ての波長を網羅する6次元グラフであることが必要になる。この2次元グラフ上では、訓練試料及び第2の(比較)試料の各々に関する各セットに対して、2つの正規化前処理された値(すなわち、各波長に対して1つの値)から構成される対を単一点、例えば、110としてプロットしており、訓練試料に関する正規化前処理された値データセット111及び第2の(比較)試料に関する正規化前処理された値データセット112がもたらされる。
【0321】
上述の前処理段階は、システム内の系統誤差及び測定データのドリフトの悪影響を低減する。基準チャネル/値は任意的であることに注意しなければならない。代替では、x軸切片値は、試料データだけに対して見出される。
【0322】
代替実施形態において、システムドリフト及び系統誤差は、非常に安定したレーザダイオード光源の使用とレーザ自体のモニタダイオードの出力から導出される基準信号の使用とによって殆ど排除することができるので、上述の前処理段階を割愛することができる。それによって別個の光学基準チャネル及び/又は対照試料を使用する必要性を排除する単一光検出器を有する単一チャネルの使用が容易になる。この目的を実現するために、様々な静脈薬剤に関する測定透過率スペクトルのデータベースは、各薬剤の試料を単一チャネル内で複数の試験管を用いて連続して測定することにより、より直接的な方式で累積させることができる。
【0323】
訓練試料及び第2の(比較)試料に関するデータが前処理され、
図11に示すように相関付けられた後で、訓練試料に関する代表値を取得することができる。前処理が実施されない場合に、処理は、前処理されていない(生)データに関する代表値を求める段階に進む。最初に、第2の(比較)試料データセット112から訓練試料データセット111を分離する線113が決定される、段階95。次いで、この線の法線方向は、スコアにおいて比較試料から訓練試料を分離するための重み付けとして使用される。更に、訓練試料が下回る閾値が決定される、段階96。閾値及び重み付けスコアは、当該訓練試料に関する検証/識別を助ける比較データの代表値を与える。代表値は、訓練試料に関するデータベース23内に比較データとして格納される、段階98。
【0324】
訓練試料に関するデータベース23内に比較データとして格納するための第2の代表値を取得するために、同じ訓練試料に対して第3の(比較)試料と対比しながら全体の処理が繰り返される(段階99及び段階90〜98)。次いで、訓練試料に関する比較データとして格納するための第3及びそれ以降の代表値を生成するために、第4及びそれ以降の比較試料と対比しながらこの処理が再度繰り返される(段階99及び歩進90から98)。これらの値は、一緒に、訓練試料を識別/検証するための比較データベース内の代表値を形成する。
【0325】
更に、各追加の訓練試料に関する代表値を同じく取得するために、各他の訓練試料(n薬剤のセット内の)に対して複数の比較試料と対比しながら全体の処理(段階100、段階90〜99)が繰り返される。
【0326】
訓練処理段階90〜100を説明するのに、グラフ及び技術を参照したことが認められるであろう。これらのものは、例示目的で記述されたものである。代表値を決定する訓練処理を実施するいずれのプロセッサも、最終結果を得るためにそのようなグラフを実際に生成せず、又はそのような技術を利用しない場合があり、同じ結果に到達する他の処理技術を使用することができる。
【0327】
上述の訓練処理は、データベース23に格納することができ、試験下のセットからの実際の試料を識別又は検証するのに使用することができる各訓練試料(n薬剤のセット内の)に関する比較データを生成することになる。比較データベース23は、実際の試料試験のかなり前に生成することができ、又は直前に生成するか又は実施中に生成することさえ可能である。比較データは、検出器から得られた多次元スペクトルデータに基づく多次元検証/識別行列と見なすことができる。比較データは、n薬剤のセット内の他の薬剤のうちのいずれかから薬剤のうちのいずれかを検証又は識別するのに使用することができる。
【0328】
再度
図8を参照して、比較データベースが生成され、データベース23に格納された状態で、実際の試料の検証/識別が以下の通りに行われる。試料チャネルと基準チャネルの両方からの出力がプロセッサにおいて受け取られる、段階80。暗電流が使用される場合に、暗読取値のための各検出器からの出力が、実読取値の出力から減算される。プロセッサ18において試料検出器17から受け取られる出力14cは、試料16に向けて放出された各電磁放射線ビームにおける被影響電磁放射線14bの強度を示している。この出力は、例えば、検出器の光電流及び/又は検出電磁放射線の強度を直接的又は間接的に示すデータを含むことができる。同様に、プロセッサ18において検出器20から受け取られる出力15cは、基準試料に向けて放出された各電磁放射線ビームにおける被影響電磁放射線15bの強度も示している。好ましくは、装置は、各波長で複数回の測定を実施する。例えば、各波長で、装置は、試料によって影響を受けた被影響電磁放射線を15個の異なる時点で検出し、その出力をプロセッサに渡す、段階80。同じく各波長で、装置は、基準による影響を受けた被影響電磁放射線を15個の異なる時点で検出し、その出力をプロセッサに渡す、段階80。
【0329】
次いで、この出力は、好ましくは、訓練処理に対して
図9から
図11を参照して上述したものと同じ方式で前処理される、段階81〜84。この説明をここで繰り返す必要はないが、要約すると、データ点が生成され、段階81、最良適合線が見出され、段階82、正規化前処理された値を与えるx軸値が得られる、段階83。この処理は、全ての波長に対して行われる、段階84。前処理は必須ではないが、性能を改善することができる。
【0330】
各波長の被影響放射線に対して前処理、段階81〜84が実施された後で、次いで、識別/検証アルゴリズムを始動することができる、段階85。検証は、試料薬剤が予想された薬剤であることを確認する段階を含む。例えば、臨床医は、例えばユーザインタフェース24を通して自らが考える薬剤を指定することができ(例えば、n薬剤のセットから)、段階80、次いで、装置を用いて、保持器内の薬剤が真に自らが指定した薬剤であるか否かを確認する。識別は、薬剤が何であるかに関する臨床医からのいかなる示唆もなしに、薬剤が実際には何であるかを決定する段階を含む。検証/識別では、薬剤を識別するか又は薬剤が、臨床医によって指定された通りの予想薬剤であるか否かを検証するために、スペクトルデータ(すなわち、前処理された値)がデータベース23内の比較データと対比して比較される、段階85。次いで、出力がユーザインタフェースに供給される、段階86。
【0331】
1つの可能な識別/検証アルゴリズムでは、試料データが得られて前処理された状態で、この試料に対して、
図9から
図11を参照して記述された訓練処理中に見出されたものと同じ方式で代表値が見出される。代表値は、試料に対して、各選択波長で各他の比較試料に対して見出される。代表値は、比較データにおける代表値に対して比較される。試料に対して見出された代表値と同じ試料に対応する比較データにおける代表値との間に十分な類似性が存在する場合に、検証又は識別が行われる。十分な類似性は、あらゆる適切な統計技術又は他の技術を用いて決定することができる。例えば、十分な類似性は、代表値の一部又は全てが検証行列内のものと適合する場合に発生する可能性がある。別の例では、十分な類似性は、試料が各比較試料に対する閾値よりも小さい場合に発生する可能性がある。検証/識別の結果をユーザに通知するために、ユーザインタフェースを通して警報又は出力を行うことができる。
【0332】
図15は、分析器を用いて検証した30薬剤のセットに関する試験データを示している。この試験では、各薬剤を分析器内に挿入し、次いで、分析器を当該薬剤が30薬剤のうちの1つであるか否かを検査するように系統的に構成された。警報が発せられた場合に、この警報は、薬剤が予想されたものではなかったことを示している。各薬剤を他の薬剤の各々に対して15回試験した。従って、例えば、メタラミノールを分析器の中に入れ、次いで、メタラミノールを検査するように分析器を構成した。15回の試験の後で、分析器は一度も警報を発せず、分析器がメタラミノールを別の薬剤として検出しなかったことを示している。メタラミノールを試料保持器内に保持したまま、次いで、ヘパリンを検査するように分析器を構成した。15回の独立した試験の各々において、分析器は警報を発し、分析器内の薬剤(メタラミノール)が予想したもの(ヘパリン)ではなかったことを各回において検出したことを示している。次いで、分析器を他の薬剤の各々に向けて構成し直し、メタラミノールが試料保持器内にあるままの状態で、各々に対して15回試験が行われた。次いで、分析器を全ての他の薬剤を検査するように系統的に構成し直しながら、同じ処理を試料として使用される全ての他の薬剤に対して繰り返した。警報が発せられる(保持器内の薬剤が検査ターゲットの形態にあるものではないと分析器が見なしたことを示す)度に、警報を記録した。
図15の表は、各薬剤検出の組合せで警報が発せられた回数を反映している。誤差率が示されている。低い誤差率は、検証精度での有意な改善を明らかにしている。
【0333】
第3の実施形態
図12は、装置10の代替実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用する代わりに、光源11を形成する6つのレーザ51a〜51fは、電磁放射線ビーム22を反射タイプの回折格子120に向けて放出するように配置される。各レーザ51a〜51fは、回折格子に向けて調整された又は調整可能な波長の平行電磁ビーム22を放出するように作動可能である。各レーザ51a〜51fに関する格子面上への入射角Xは、これらのレーザの1次の回折ビームが同じ角度Yで射出し、それによって各レーザに対して共通の光路14aが生成されるように選択される。コントローラ12は、単波長のビームを試料に向けて放出するようにレーザ51a〜51fを連続して作動させる。これに代えて、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16に向けて放出することができるように、複数のレーザ51a〜51fを一度に作動させることができるであろう。基準チャネル試料19が存在する場合に、その方向にビームを向けるために、例えば、
図1に示すように別個の格子又はビームスプリッター21を使用することができると考えられる。この実施形態の全ての他の態様は、
図1、
図2、
図16、及び/又は
図18に示して記述したものと同様とすることができる。
【0334】
第4の実施形態
図13は、装置10の別の代替実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用する代わりに、光源11を形成する6つのレーザ51a〜51fは、電磁放射線ビーム14aを試料経路14aに沿うように放出電磁放射線ビーム22を向け直すそれぞれのビームスプリッター130a〜130fに向けて放出するように配置される。コントローラ12は、調整された又は調整可能な波長の電磁放射線をそれぞれのビームスプリッター130a〜130fを通して試料に向けて放出するように各電磁放射線源11を順次制御することができる。これに代えて、複数の波長成分を有する電磁ビーム22を試料16に向けて(14a)供給するように、レーザ51a〜51fのうちの2つ又はそれよりも多くを一度に作動させることができるであろう。ビームスプリッターからの透過エネルギを除去するために、ビームスプリッターアレイの背後で吸収器135が設けられる。基準チャネル試料19が存在する場合に、その方向にビームを向けるために、例えば、
図1に示すように別個の格子又はビームスプリッター21を使用することができると考えられる。この実施形態の全ての他の態様は、
図1、
図2、
図16、及び/又は
図18に示して記述したものと同様とすることができる。
【0335】
第5の実施形態
図14は、装置10の代替実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用する代わりに、光源11を形成する6つのレーザ51a〜51fは、電磁放射線ビーム22をプリズム140に向けて放出するように配置される。各レーザ51a〜51fは、調整された又は調整可能な波長の平行電磁ビーム14aをプリズムに向けて放出するように作動可能である。各レーザ51a〜51fに関する格子面上への入射角Xは、これらのレーザの1次の回折ビームが同じ角度Yで射出し、それによって各レーザ51a〜51fに対して共通の光路14aが生成されるように選択される。コントローラ12は、単波長のビームを試料に向けて放出するようにレーザ51a〜51fを連続して作動させる。これに代えて、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16に向けて(14a)放出することができるように、複数のレーザ51a〜51fを一度に作動させることができるであろう。基準チャネル試料19が存在する場合に、その方向にビームを向けるために、例えば、
図1に示すように別個の格子又はビームスプリッター21を使用することができると考えられる。この実施形態の全ての他の態様は、
図1、
図2、
図16、及び/又は
図18に示して記述したものと同様とすることができる。
【0336】
第6の実施形態
図20は、装置10の代替実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用する代わりに、光源11を形成する6つのレーザ51a〜51fは、電磁放射線ビーム22を別個の光ファイバケーブル201a〜201fを通して平面光波回路(PLC)(光ファイバ結合器)200に向けて放出するように配置される。各レーザ51a〜51fは、調整された又は調整可能な波長の平行電磁ビーム14aをPLC200に向けて光ファイバケーブル201a〜201fを通して放出するように作動可能である。コントローラ12は、単波長のビームを試料に向けて放出するように各レーザ51a〜51fを連続して作動させる。これに代えて、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16に向けて(14a)放出することができるように、複数のレーザ51a〜51fを一度に作動させることができるであろう。基準チャネル試料19が存在する場合に、その方向にビームを向けるために、例えば、
図1に示すように別個の格子又はビームスプリッター21を使用することができると考えられる。この実施形態の全ての他の態様は、
図1、
図2、
図16、及び/又は
図18に示して記述したものと同様とすることができる。
【0337】
第7の実施形態
図21は、装置10の代替実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用する代わりに、光源11を形成する6つのレーザを含む単一パッケージ211は、電磁放射線ビーム201a〜201fを一体平行化レンズ210に向けて放出するように配置される。このレーザは、6つの波長の各々において調整された又は調整可能な波長をレンズ210に向けて放出するように作動可能である。コントローラ12は、単波長のビーム201a〜201fを試料に向けて放出するようにレーザを連続して作動させる。これに代えて、複数のビーム51a〜51fは、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16に向けて(14a)レンズ210を通して放出することができるように、一度に作動させることができるであろう。基準チャネル試料19が存在する場合に、その方向にビームを向けるために、例えば、
図1に示すように別個の格子又はビームスプリッター21を使用することができると考えられる。この実施形態の全ての他の態様は、
図1、
図2、
図16、及び/又は
図18に示して記述したものと同様とすることができる。
【0338】
代替実施形態
1300〜2000nmの公称分析範囲は、改善された薬剤検証又は識別に対して利点を与えるので選択波長として選択される。しかし、1300〜2000nmへの言及を限定的であると見なすべきではなく、若干異なる範囲又は全く他の範囲のスペクトル特性に関する波長を選択することができることが認められるであろう。いずれの分析範囲内に収まる選択波長(従って、スペクトル特性)も、液体担体中の薬剤に対する改善された識別/検証を可能にする。例えば、分析範囲は、1300nm〜2000nmの部分集合、例えば、1300nm〜1900nm、1350nm〜1950nm、1400nm〜1900nm、1500nm〜1800nm、又は他の部分集合とすることができる。範囲は、1250〜2050nm、1200nm〜2100nm、又は1150nm〜2150nm、又は類似の範囲のようなより大きいものとすることができる。分析範囲は、1200nm〜1900nm又は1300nm〜1900nmのような公称範囲からオフセットされたものとすることさえ可能である。これらの例は、非限定的な例である。一般的に、分析範囲は、例えば、1100nm〜1500nm付近から始めて1800nm〜2150nm付近で終わることができる。更に、これも非限定的であり、範囲は、改善された検証/識別を可能にする全く異なるものとすることができる。更に、これらの分析範囲の外側にあり、これらの分析範囲の外側にあるスペクトル特徴に対応する波長は、言及した分析範囲に収まる波長との組合せに使用することができる。分析範囲内に収まるスペクトル特性に対応する複数の波長を使用することにより、改善された性能が与えられる。好ましくは、もれなく全ての波長が分析範囲内で選択されるが、有利である可能性がある他の範囲に収まる波長を使用することも除外されない。
【0339】
この範囲は、構成要素の選択による影響を少なくとも部分的に受ける可能性がある。例えば、シリコン光ダイオードは、下方に少なくとも1100nmまでの応答を有し、従って、使用される場合に、この波長を範囲の下限として使用することができる。好ましくは、本発明は、1つの検出器のみを用い、従って、範囲は、単一検出器が網羅することができるもの、例えば、InGaAs検出器の場合は1300nm〜2000nmによって定めることができる。
【0340】
水以外の液体は、改善された識別/検証を可能にする他の分析範囲を有する可能性がある。
【0341】
情報を抽出するための他の方法が当業者によって把握されている場合があり、当業者は、これらの方法を使用することができる。
【0342】
代わりの分析処理では、基準チャネルは使用されない。これに代えて、基準チャネル内の基準から影響を受けた電磁放射線からの検出器出力15cではなく、アンカー波長で得られた被影響電磁放射線(試料からのもの)からの検出器出力14cが使用される。他の波長に関して受け取られる被影響電磁放射線からの全ての他の検出器出力14cは、アンカー波長での被影響電磁放射線の検出器出力を用いて正規化/補正される。アンカー波長は、既に選択された波長のうちの1つとすることができるが、好ましくは、ベース液体スペクトル内の適切なスペクトル特徴/点にわたる領域の近傍又は領域内に存在するように選択されることになる。例えば、アンカー波長は、ベース液体スペクトルの安定領域にわたる領域の近くに存在するか又はその領域内に収まることができる。基準チャネル/検出器出力の排除により、試料の差を覆い隠す可能性がある試料チャネルと基準チャネルの間の変化が除去され、この除去により、より感度が高く安定した装置を提供する。アンカー波長での出力は、他の波長での出力を正規化、較正、又は他に調節するのに使用することができる。アンカー波長からの出力は、試料を検証/分析するために、上述の基準チャネルからの出力と同じ方式で処理することができる。すなわち、アンカー出力は、基準情報になることができる。
【0343】
水がベース液体である場合の1つの可能性として、1450ナノメートルの前後でおいて水のスペクトルに特別な安定性があるので、この波長がアンカー点として選択される。この波長は、OH結合の存在に起因して、水溶液の最大光吸収率に対応する。水は、試験されている試料薬剤に対しては一般的な透過媒質である。この波長で得られるデータは、ごく僅かな感熱性しか示さず、従って、非常に安定した予想可能な基準を可能にする。上述したものは、水ベースの薬剤に関する単なる一例であり、それを示すものでしかなく、他の要件に基づいて選択することができる波長及びアンカー点に関して限定的であると見なすべきではない。
【0344】
上述の実施形態の各々は、データを処理するのに使用するための基準測定値を取得するための基準チャネルの任意的な使用を記載している。代替では、基準チャネルは使用されない。基準情報を取得するのに、基準チャネルの代わりに、レーザダイオード11(電力モニタ及びレーザダイオードの制御に向けて使用される)内の光ダイオード4(
図20を参照されたい)を利用することができる。多くの場合に、レーザダイオードには、レーザの出力電力をモニタするのに使用される内蔵光検出器ダイオード4が装備される。この装備は、内蔵光ダイオードの信号を組み込むフィードバック回路によってレーザドライバ電流を制御することを可能にすることによってレーザを安定化するために行われる。
【0345】
基準情報を取得するためのこの代替物は、記述された実施形態のうちのいずれかにおける基準チャネルの代わりに代用することができる。この代替物を用いて得られる基準測定値は、記述されたいずれかの上述の実施形態と同じ方式で利用することができる。
【0346】
光源電磁放射線の出力電力を検出するレーザダイオード光検出器4の出力はプロセッサ18に渡され、試料チャネル内の検出器17からの出力を正規化及び/又は補正するために、基準検出器20によって得られる基準読取値の代わりに使用される。光検出器4からのこの出力信号は、そうでなければ2つの別個の測定チャネルを伴うビームスプリッター配置を使用することによってより便利に生成されたであろう基準チャネルと同じ機能を実施する。レーザからの光ダイオード出力を基準信号として使用することにより、ビーム分割光学系及び追加の基準試料及び検出器の必要性が排除される。
【0347】
代替実施形態において、電磁光源11は広帯域光源であり、この広帯域光源と試料の間に配置することができる異なる波長での複数のフィルタ13を有する。各フィルタからの出力は、選択波長のうちの1つを有する電磁ビーム22を供給する。広帯域光源は、例えば、広帯域フィラメント黒体光源及びフィルタとすることができる。これに代えて、光源11は、フィルタを有するか又は伴わない1つ又はそれよりも多くのLEDの形態を取ることができる。代替光源のうちのいずれかをカルーセル50上に装着して第1の実施形態において上述したように作動させることができ、又は実施形態2から4で記述されたもののような光学デバイスと協働して作動させることができる。
【0348】
光源のうちのいずれも、例えば、上述のサーミスタ及びペルチェ冷却デバイスを使用することによるフィードバックシステムを用いて温度安定化させることができる。
【0349】
検出器は、1つ又はそれよりも多くのInGaAs光ダイオード又は他の光センサの形態にあるとすることができる。
【0350】
基準チャネル及び試料チャネルの各々に対して別個の光ダイオード、又は同様か又は他の検出器を使用することができると考えられる。これに代えて、試料と基準の両方のチャネルに対して単一光ダイオード、又は同様か又は他の検出器を使用することができ、両方のチャネルの被影響放射線ビームを合流させるか、又は他にこれらのビームを検出器に向ける光学デバイスが利用される。
【0351】
多くの(例えば、500個の)測定値にわたって検出器読取値を平均化することにより、測定値内の偶然誤差を低減することができる。測定データを補正するために、暗測定値(光源オフ)を使用することができる。
【0352】
暗電流読取値に対して、任意的に、試料16及び基準20上に入射する電磁放射線22をブラックアウト/遮蔽するチョッパーホイールを使用することができる。チョッパーは、光学デバイス13の一部を形成することができると考えられる。各電磁読取値に対して、チョッパーが電磁放射線22を遮蔽するときに、検出器17/20は、「暗」読取値も取得する。チョッパーホイール及び暗読取値を有することは、本発明では必須ではなく、本明細書では1つの可能な選択肢として記述している。
【0353】
1300nmから2000nmまでの帯域にわたって、ヒ化ガリウムインジウム(InGaAs)技術に基づく単一タイプの光ダイオード検出器を使用することができ、それによって検出器システムが更に簡素化される。
【0354】
本発明は、好ましくは、1300nmから2000nmまでの分析領域内又はその変形を使用する。この領域は、吸光度スペクトル内に出現する幅広のスペクトルピーク及びトラフという欠点と思われていたことに起因して、薬剤分析ではこれまで無視されてきた。これまで赤外線(IR)分光法は、2000nmよりも長い波長で存在する多くの狭帯域スペクトル吸収特性を利用してきた。このいわゆる「指紋」領域は、試験下の材料中に存在するある一定の化学結合に独特のスペクトル線を示し、材料を識別するのに非常に高い感度の技術を提供する。本発明者は、1300nm〜2000nmの分析範囲(又はその一部分)が、薬剤の検証又は識別又は他の分析において利点を与えると判断した。更に、本発明者は、この分析領域内の際立ったスペクトル特徴のスペクトル位置が、温度変化による影響をそれ程受けないことを確証した。2000nmよりも大きい領域内に出現する多くの狭スペクトル帯域は高い温度感受性を示している。2000nmよりも大きいこの領域が検証又は識別に使用される場合に、分析装置は、非常に精密な波長分解能を必要とする。この分解能は、高コストの精巧な分光計を用いてしか到達することができない。
【0355】
より具体的には、このタイプのIR分光測定(2000nmよりも大きい)は、多くの個々のスペクトル特徴を分解するために、幅広いスペクトル帯域にわたって維持される非常に微細な波長分解能(一般的に数ナノメートル)を必要とする。微細な波長分解能は、温度変化に対する狭スペクトル線のあらゆるシフトを考慮するために基本的に必要とされる。
【0356】
そのような高分解スペクトル線の測定は、機械的に回転される回折格子及び単一検出器、又は検出器要素の線形アレイを有する固定格子のいずれかに基づく精巧なモノクロメータが装備された分光計の使用を必要とする。両方の選択肢は、既存の分光計において見られるものであり、両方共に実施することが高価である。
【0357】
費用効果的な代替として、例えば、水ベースの静脈薬剤の検証/識別又は他に分析を目的とした場合に、本発明者は、1300nmと2000nmの間のより短い波長領域内で測定を行うことが有利であると判断した。この波長領域内のスペクトル特性/特徴は個数がかなり少なく、スペクトルがかなり幅広であるが(水のものとそれ程異ならない)、薬剤(又は他の液体ベースの試料)の間に検証/識別を容易にするほど十分なスペクトル差が残っていることが見出されている。本発明者は、1300nmから2000nmまでの領域内では、各薬剤のIR透過率スペクトルのピーク及びトラフ(並びに他のスペクトル特性)が発生する波長が、全ての水ベースの薬剤(又は他の試料)において温度に対して非常に安定した状態に留まることも見出した。
【0358】
重要なことに、本発明者は、温度感受性狭スペクトル吸収特徴の不在に起因して、高分解スペクトル線を測定するための要件がなく、それによって高価なモノクロメータの必要性が排除されることを確証した。各薬剤(又は他の試料)を特徴付けるのに、1300nmから2000nmまでの範囲にわたる離散波長で行われる数回の測定(一般的に5回又は6回)で十分である。典型的には、各測定は、12nm(例えば、広帯域光源によって照明される帯域通過フィルタによって決定される)の帯域幅にわたって、又はレーザ利用照明では数ナノメートルにわたって行われる。
【0359】
上記では、一般論としていくつかの実施形態及び変形を説明した。様々な実施形態の特徴の組合せを考えることができ、かつ説明した実施形態を限定的であると見なすべきではないことは当業者によって認められるであろう。