(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269985
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】自動車ドアロック
(51)【国際特許分類】
E05B 85/24 20140101AFI20180122BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20180122BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
E05B85/24
E05B79/08
B60J5/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-530294(P2015-530294)
(86)(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公表番号】特表2015-532952(P2015-532952A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】DE2013000515
(87)【国際公開番号】WO2014036991
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】102012017677.5
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハンケ, アルミン
(72)【発明者】
【氏名】イナン, オメル
(72)【発明者】
【氏名】マツァール, ラデク
【審査官】
小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102006032033(DE,A1)
【文献】
特開平09−303025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/24
B60J 5/00
E05B 79/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式ラッチ(1)と爪部(2)とを備えるロック機構(1、2)を有し、さらに当該ロック機構(1、2)の解除要素(3)と保留要素(4)とを有し、前記回転式ラッチ(1)の閉位置から開位置への障害のない開動作を確保する、自動車ドアロックであって、
前記回転式ラッチ(1)の前記開動作の間、前記解除要素(3)が前記ロック機構(1、2)から解除される位置に前記保留要素(4)が前記解除要素(3)を保持し、
前記爪部(2)には、前記回転式ラッチ(1)の係合解除位置の方向に予め張力がかけられることを特徴とする、自動車ドアロック。
【請求項2】
前記保留要素(4)が前記解除要素(3)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車ドアロック。
【請求項3】
前記回転式ラッチ(1)の前記開動作の間、前記保留要素(4)が保留域(10)に付置されることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載の自動車ドアロック。
【請求項4】
前記保留域(10)が前記回転式ラッチ(1)上に設けられることを特徴とする、請求項3に記載の自動車ドアロック。
【請求項5】
前記保留要素(4)が前記保留域(10)と相互に作用するタペット(12)を含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車ドアロック。
【請求項6】
前記タペット(12)と前記保留域(10)とが、対応する傾斜面(13、14)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の自動車ドアロック。
【請求項7】
前記タペット(12)が、前記保留域(10)に係合する戻り止め位置から、前記保留域(10)に沿って摺動する解除位置に移動され得ることを特徴とする、請求項5または6に記載の自動車ドアロック。
【請求項8】
前記保留域(10)が、前記回転式ラッチ(1)の回転軸線(11)からの距離に適合された半径(R)を有するアーチ形状であることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の自動車ドアロック。
【請求項9】
前記保留域(10)が、前記回転式ラッチ(1)の回転軸線(11)からの距離に適合された半径(R)を有するアーチ形状であり、120度未満の角度で延び広がっていることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の自動車ドアロック。
【請求項10】
前記爪部(2)と相互に作用する阻止レバー(6)が、前記解除要素(3)に付置されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車ドアロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に回転式ラッチと爪部とを備えるロック機構を有し、併せてロック機構の解除要素と保留要素とを備え、回転式ラッチの閉位置から開位置への障害のない開動作を確保する、自動車ドアロックに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の設計の、また独国特許出願公開第10 2006 032 033号明細書(A1)に開示されているような自動車ドアロックにおいて、保留要素は、保留位置にあるとき、回転式ラッチが回転してその閉位置を脱け出し初期施錠位置を通り過ぎるまで、爪部がその解除位置を保っていることを確実にする。この目的のために、保留要素は解除要素に付置される支持部を含んでおり、解除要素が作動すると、保留位置に到達するために回転式ラッチの保留域の前方に移動する。いったん初期施錠位置を通り過ぎると、この保留域から再び退出させられる。こうして保留要素は、回転式ラッチの開動作中に爪部が意図せず回転式ラッチと(再び)係合し得るのを防ぐ。そのような動作状態は、例えば、後尾扉に起こり得ることで、例えば、後尾扉が雪荷重で覆われる事態が発生した場合に起こり得る。
【0003】
独国特許発明第40 42 678号明細書(C2)による自動車ドアクロージャにおいて、保留レバーは、保留要素としてトリガレバーに付置される。保留要素が保留位置にある状態では、各自動車ドアを手動で開くことで回転式ラッチが完全に開かれるまで、爪部は開位置に保持される。この態様において、例えば、自動車ドアの開扉が遠隔で作動されたが完全には実行されなかった場合、爪部は、回転式ラッチに(再び)係合することを阻止され、ドアは(もはや)開かれないことを確実にするべきである。そのような動作状態は、遠隔操作開扉信号の後に爪部の係合を解くための電動式駆動装置がその基本位置に戻ってしまった場合に起こり得る。
【0004】
先行技術実施形態の態様のすべてが十分なわけではない。独国特許発明第40 42 678号明細書(C2)に開示されている設計は数多くのレバーを用いており、比較的複雑である。独国特許出願公開第10 2006 032 033号明細書(A1)はその点、すでに保留要素が解除要素に付置される支持部を含んでいることで簡素化されている。しかしながらこの保留要素は、爪部をその解除位置に保持するために爪部に作用し続けている。なんらかの状況で保留要素の機能性が損なわれるとすぐに、爪部が回転式ラッチと係合し続ける可能性があり、誤作動を危惧せねばならない。本発明はそれを改善することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡素な設計を用いながら、最大限可能な信頼性をもたらすような態様で、前述の自動車ドアロックをさらに発展させるという技術的課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するために、本発明の包括的な自動車ドアロックは、回転式ラッチの開動作の間、保留要素が解除要素をロック機構に対して無効な位置に保持することを特徴としている。
【0007】
開示された先行技術、例えば独国特許出願公開第10 2006 032 033号明細書(A1)、とは対照的に、保留要素は爪部に作用せず、代わりに解除要素に作用する。その保留要素は、回転式ラッチの開動作の間、解除要素がロック機構に対して無効な位置に保持されることを確実にする。換言すれば、保留要素は実質的に解除要素に作用し、爪部には作用しない。
【0008】
この配置において、爪部が回転式ラッチに自動的に係合しないことを確実にするために、爪部に係合解除位置の方向に有利に予め張力をかける(予張力を付与する)。このことは一般的に、爪部に付置されるバネによって確保され、その結果、爪部は回転式ラッチとの係合領域外に保たれることになる。この態様において、特に信頼性の高い機能的な構成が簡素な設計と共にもたらされる。その選択された予張力によって、爪部はそのような回転式ラッチとの相互作用ができない。すなわち爪部に付置される阻止レバーが爪部に作用するときにのみ、それに従って主要な施錠位置で係合できるように、または回転式ラッチの主要な掛止端面と相互に作用できるようになっている。
【0009】
他のあらゆる場合において、回転式ラッチは多少なりとも爪部から係合を解かれている。加えて、保留要素が解除要素をその無効な位置に保持するため、回転式ラッチは基本的に機械的影響がない状態で開動作を行う。したがって、この回転式ラッチの閉位置から開位置への開動作に意図しない妨げや障害は、原理上すでに起こり得ないことになる。結果的に、先行技術実施形態と比べて、機能的信頼性は大幅に高くなっている。
【0010】
さらなる利点は、保留要素が有利に解除要素に接続しており、保留域と常に相互作用するため、設計が特に簡素なことである。この保留域は回転式ラッチ上に設けることができる。このことは、保留要素を効果的にするには保留要素が保留域に支えられて収まり、保留域に沿って滑動するだけでよいことを意味する。そうしてこの態様において、保留要素に接続された解除要素は、ロック機構に対してその無効な位置に保持される。このことは、いかなる場合も、保留域に沿った保留要素の全経路に当てはまる。
【0011】
この目的のために、保留要素は、保留域と相互に作用するタペットを有利に含む。そのタペットと保留域とは、通常、対応する傾斜面を含む。この態様において、タペットは、保留域に係合する戻り止め位置から、保留域に沿って滑動する解除位置に移動することができる。そのような動作を生じさせるには、解除要素が適宜作用を受けるだけでよい。解除要素が、例えばタペットの戻り止め位置から解除位置に枢動されるとすぐに、タペットと保留域との対応する傾斜面は互いに沿って滑動し、タペットが保留域に係合するその戻り止め位置から解除位置に移動する。
【0012】
すでに説明したように、タペット、したがってその保留要素は、保留域に沿って回転式ラッチの解除位置に滑動する。解除要素のロック機構に対する無効な位置はこれに対応する。このことは、タペットが解除位置において保留域に沿って滑動している間、解除要素はロック機構に対して無効な位置にあるため、ロック機構と相互に作用し得ないことを意味する。
【0013】
保留域は通常アーチ形状をしており、回転式ラッチの回転軸線からの距離に適合する半径を有し、120度未満、好ましくは90度未満、さらになお好ましくは50度の角度で延び広がっていてもよい。その結果、開いている回転式ラッチは、タペットがアーチ形状の保留域に沿って滑動している間は、解除要素が無効な位置に保持されていることを確実にする。タペットがアーチ形状の保留域を離れる、または離れることが可能になるとすぐに、回転式ラッチは、原則として閉じる位置または閉位置に移動することができる。一実施形態において、47度の角度が用いられる。すなわち、そのアーチ形状の保留域は、回転式ラッチの外縁部に沿って47度の角度領域で延び広がり、トリガレバーが確実に離れたままであることを確かなものにする。
【0014】
回転式ラッチのそれぞれの閉動作は、一方でタペット、他方で保留域という、互いに沿って滑動する2つの傾斜面に対応する。このことは、回転式ラッチがその閉位置すなわち主要な施錠位置に到達するまで、回転式ラッチの閉動作の一部として生じる。そこで爪部も、回転式ラッチのそれぞれの主要な掛止端面に係合する。このことは、爪部に付置される阻止レバーによって確保されるものであり、この場合、バネの助力を得てその位置に枢動され、爪部を自身のバネの力に逆らって回転式ラッチの主要な戻り止め位置に移動させる。阻止レバーは次に解除要素に付置される。
【0015】
ロック機構の主要な施錠位置に応じて、解除要素は阻止レバーを、爪部に支えられているその着座部から移動させる、または枢動させて離すことができる。その結果、爪部はバネの力によって回転式ラッチから係合を解かれる位置に移動される。同時に、解除要素の作用は、保留要素がそのタペットと共にそれまで着いていた保留域に対して係合する戻り止め位置から解除位置に移動され、保留域に沿って滑動することを確実にする。この動作位置から、回転式ラッチは、バネの助力を得てその閉位置からその開位置に、爪部と解除要素との影響を受けることなく自動的に移動することができる。その開位置において、回転式ラッチは、それぞれの自動車ドアが操作者によって容易に開けられるように、それまで保持されていたロックボルトを解除する。
【0016】
このすべてが、信頼性の高いを設計を有する実施形態によって、最小限の構成要素しか必要とせず達成される。その解除要素と保留要素とは、通常、実質的に単一の装置または単一の部品として設計される。この解除要素と保留要素とを備える装置は、少なくとも部分的にプラスチックで製造することができる。同様に、回転式ラッチと保留域もまた単一の装置として設けることができる。この装置はプラスチックで製造しても金属で製造してもよい。
【0017】
本発明によれば、回転式ラッチは、上記の閉じ工程の間およびその閉位置すなわち主要な施錠位置に到達する前にも、初期施錠位置に着く、あるいは着くことが可能である。この目的のために、爪部は、回転するように取り付ける態様で解除要素に接続された別のレバーを含んでもよい。この追加のレバーは、初期施錠位置に着いたとき、回転式ラッチ上の突出部と相互に作用することができるが、通常必要ではない。これらが本発明の主要な利点である。
【0018】
以下に、一実施形態のみを示す図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1〜
図4は本発明の自動車ドアロックを、ロック機構と、さまざまな動作位置でそのロック機構と相互に作用する要素までに省略して示す図。
【
図5】それぞれのタペットを有する保留要素を詳細に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面は、実質的に回転式ラッチ1と爪部2とからなるロック機構1、2を装備した基本構成の自動車ドアロックを示している。さらに、ロック機構1、2には解除要素3が備わっている。それに加え、この基本構成は、回転式ラッチ1の閉位置から開位置への障害のない開動作を確保する保留要素4を含んでいる。この保留要素4の効果は、
図1に示される回転式ラッチ1の閉位置を、
図3に示される開位置または
図4に示されるような完全に開いた位置と比べると、特に明らかである。
【0021】
本発明は、回転式ラッチ1の、ロック機構1、2に対してその無効な位置における開動作の間、解除要素3を保持する保留要素4によって、前述の回転式ラッチ1のその閉位置からその開位置への障害のない開動作を達成するものである。この場合、爪部2も無効である。本実施形態において、このことは、
図1に示されるように、またこの図面のそれぞれの矢印で示されるように、爪部2に、回転軸線5に対して反時計方向に予め張力をかける(明確には図示されていない)バネによって確保される。それはすなわち、爪部2に、回転式ラッチ1との係合解除位置の方向に予張力がかかっていることを意味する。
【0022】
図1に示されるロック機構1、2の閉位置すなわち回転式ラッチ1の主要な施錠位置において、爪部2に付置される阻止レバー6は、爪部2の端面7が回転式ラッチ1の主要なロック域8に支えられて収まり、そうして端面7が主要なロック域8すなわち主要な掛止端面を離れて図示された反時計方向に枢動しないことを確保する。そのような枢動動作は、解除要素3にも付置される前述の阻止レバー6によって阻止される。
【0023】
この解除要素3はトリガレバー3であり、単一アームのレバーとして設計され、爪部2の軸線と同一の軸線上に、その共通の軸線すなわち回転軸線5を中心に枢動可能に取り付けられる。これに対し、解除要素すなわちトリガレバー3に付置される阻止レバー6は、独自の軸線すなわち回転軸線9を有し、その軸線を中心に枢動可能に阻止レバー6が取り付けられる。例示的実施形態において、阻止レバー6は、阻止レバー6にその回転軸線9に対して
図1の他方の矢印で示されるように反時計方向に予張力をかける、例えばバネも含んでもよい。
【0024】
本発明によれば、保留要素4は解除要素すなわちトリガレバー3に接続される。この保留要素4は、実質的に、長さ方向に延びるトリガレバー3に対してある角度をなして接続された延長アームである。例示的実施形態において、
保留要素4すなわち各延長アームは、長さ方向に延びるトリガレバー3に対して直角またはほぼ直角に接続される。いずれの場合も、解除要素すなわちトリガレバー3と、保留要素4すなわち対応する延長アームもまた、実質的に単一の装置3、4を画定しており、全体的にまたは部分的にプラスチックで製造することができる。
【0025】
保留要素4は保留域10に付置される。例示的実施形態において、保留域10は回転式ラッチ1上に設けられ、この場合は弓形のウェブとして設計される。このウェブは、金属の回転式ラッチ1のプラスチックケース内に形成することができる。保留域10は、実質的に、回転式ラッチ1の回転軸線11からの保留域10の距離に適合された半径Rを有する。
【0026】
保留要素4は、
図5の詳細な斜視図に示されるように、保留域10と相互に作用するタペット12を含む。タペット12と保留域10とは、それぞれ対応する互いに適合された傾斜面13、14を含む。タペット12は、全体的に、保留域10に関連して2つの異なる基本位置を想定することができる。
【0027】
図1に示される動作位置において、タペット12は、例えば、保留域10に係合する戻り止め位置にある。これに対し、
図2および3に示される動作位置は、保留域10に沿って滑動するタペット12に対応する。これにはタペット12の解除位置も含まれ、したがって保留要素4の解除位置すなわち解除要素3の解除位置は、保留要素4に誘導されることになる。この解除位置において、解除要素3はロック機構1、2から解除される。すなわち、無効な位置に置かれる。そのような解除位置は
図4にも示されており、そこでは、一方のノーズ12と、他方の保留域10との間に相互作用は存在しない。解除要素3は、いかなる場合も、その解除位置においては爪部2にも回転式ラッチ1にも機械的に作用することはどうしても不可能である。
【0028】
図1に示される主要な施錠位置からの移行中、すなわち、保留域10に対して戻り止め位置にあるタペット12が、
図2および3に示されるように、タペット12の保留域10に対する解除位置に移行する間、2つの傾斜面13、14が滑動して互いに通過するような態様で、タペット12が保留域10に覆い掛かるまで、タペット12は解除要素3の作用を受けている。その結果、
図2および3に示されるように、タペット12は保留域10に沿って、保留域10の外側または端面上を滑動することができる。この解除位置において、解除要素3が、ロック機構1、2を言うなれば持ち上げ外しているため、解除要素3とロック機構1、2との相互作用は不可能である。この場合、爪部2も回転式ラッチ1と相互に作用することは不可能である。すなわち、爪部2は、バネによってその軸線すなわち回転軸線5を中心に枢動され、回転式ラッチ1から離れるため、回転式ラッチ1は障害のない開動作を行うことができる。このことは、その回転式ラッチ1の開動作の間、保留要素4が解除要素3をロック機構1、2に対して無効な位置に保持しているという事実による。
【0029】
図1に示されるような主要な施錠位置に続いて、主に
図2および3に示される回転式ラッチ1の開動作が起こる。回転式ラッチ1が
図4に示される動作位置に到達するとすぐに、タペット12は保留域10を離れる。すると解除要素3は、
図3から
図4への移り変わりで明らかなように、その軸線すなわち回転軸線5を中心に(バネの助力を得て)時計方向に枢動することが可能になる。
【0030】
その結果、回転式ラッチ1は、後続の閉動作に向けて一種の準備が整った状態になる。
図4に示される開位置または完全に開いた位置から始まると、回転式ラッチ1は、その図示された軸線すなわち回転軸線11を中心に時計方向に枢動するような態様で閉じる方向に作用を受けて、
図4に示される動作位置から始まり、保留要素4上のタペット12が保留域10に係合することが可能になる。
図4に始まるこの閉動作の最後には、回転式ラッチ1は
図1に示される位置すなわち主要な施錠位置に着く。
【0031】
この動作の前に、爪部2上の任意の掛止レバー2’を、回転式ラッチ1上の突出部(図示せず)と相互に作用させてもよい。このことは、
図4の完全に開いた位置から始まる前に、回転式ラッチ1が
図1に示される完全に閉位置すなわち主要な施錠位置に到達し、前述の掛止レバー2’が回転式ラッチ1上のその突出部と相互に作用することを意味する。それはロック機構1、2の初期施錠位置と対応し、通常必要ではないが、完璧を期すためにのみ言及するものである。
【0032】
回転式ラッチ1が、閉動作中すなわち回転軸線11を中心にした時計方向の回転を通じて、
図1に示される位置に到達するとすぐに、それまで回転式ラッチ1に沿って滑動していた爪部2またはその端面7は、回転式ラッチ1上の主要なロック域8と相互に作用することが可能になる。この場合、阻止レバー6は、実質的に反時計方向に予張力をかけられている爪部2が、前述の主要なロック域8に係合することを確実にする。この目的のために、阻止レバー6も、上記のように、バネによってその軸線9を中心に反時計方向に予張力をかけられる。
【0033】
回転式ラッチ1が
図1に示される位置に到達するとすぐに、爪部2が、阻止レバー6の助力を得て回転式ラッチ1の主要な施錠位置に、言うなれば押し込まれる。すなわち爪部2上の端面7が、阻止レバー6の助力を得て回転式ラッチ1上の主要なロック域8に向かって枢動する。こうして
図1に示されるその対応する動作位置において、ロック機構1、2は主要な施錠位置に収まる。この位置を離れるには、
図1と
図2との間の移り変わりから明らかなように、まず最初に解除要素3がその回転軸線5を中心に反時計方向に枢動されなければならない。この工程の間、保留要素4またはそのタペット12が保留域10と、この保留域10に対してその係合する戻り止め位置とを離れるだけではない。代わりに、解除要素3上の端面15も、
図1に示される主要な施錠位置において、端面15に当接している阻止レバー6のピン16が作用を受けることを確保する。
【0034】
解除要素3上の端面15は、
図1から
図2へ移り変わる間、阻止レバー6が阻止レバー6に付置されているバネの力に逆らって、その軸線9を中心に時計方向に動かされるような態様で、阻止レバー6のピン16に実質的に作用する。その結果、阻止レバー6およびその延長アーム17は、
図1に示されるように延長アーム17が最初主要な施錠位置で寄り掛かって当接していた爪部2上のタペット18を離れる。結果的に延長アーム17は爪部2上の凹部19内に移動する。同時に、爪部は、バネの力によってその回転軸線5を中心に反時計方向に動かされることで、回転式ラッチ1から離れる。こうして
図2に示される動作位置に到達する。
【0035】
阻止レバー6上の延長アーム17は、
図4に示されるから動作位置から始まり、回転式ラッチ1が
図1の主要な施錠位置に動かされるとき初めて、爪部2上の凹部19を再び離れる。そこで阻止レバー6は、爪部2の端面7を主要なロック域8に押し込むことが可能になる。この工程の間、阻止レバー6の延長アーム17は、延長アーム17が爪部2のタペット18から上がり、そのとき到達した
図1に示される主要な施錠位置に爪部2を押し止めるまで、凹部19に沿って摺動する。したがって、この位置において、爪部2はその回転軸線5を中心に反時計方向に枢動することはできない。
【0036】
図示された自動車ドアロックは、自動車サイドドア用の自動車ドアロックとして設計することができる。しかしながら、この自動車ドアロックは、通常、後尾扉用のロックまたは後尾扉ロックである。したがって爪部2上に追加の掛止レバー2’は必要ない。それは、この場合2つの爪部のロック機構は設けられておらず、ロック機構1、2だけで、
図1に示される主要な施錠位置と、
図4に最終位置として示されるような明らかな開位置とに着けることを意味する。
【0037】
すでにこれまで説明したように、解除要素3と保留要素4とは、実質的にプラスチックからなる従来の装置3、4と同一の製造工程の一部として製造することができる。それに対して追加の掛止レバー2’は、多くの場合、金属で製造される。掛止レバー2’は、通常、回転するように取り付ける態様で解除要素3に接続される。