(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表面に複雑な形状の凹凸を有する基板と、該凹凸における底、側壁面および頂に略均一な厚さで積層された導電膜とを有する積層体およびそれの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものを包含する。
〔1〕アスペクト比が1.5〜100である凹凸を表面に有する基板と、前記凹凸における底、側壁面および頂に略均一な厚さで積層された導電膜であって、ITO膜、FTO膜、SnO
2膜、ATO膜、AZO膜、GZO膜、IZO膜、およびIGZO膜からなる群から選択されるいずれか一つである導電膜とを有する積層体。
〔2〕前記導電膜がITO膜である〔1〕に記載の積層体。
〔3〕前記凹凸が、針状突起、柱状突起、縦穴、細孔または溝からなるものである〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕前記導電膜の段差被覆率が60〜120%である〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載の積層体。
〔5〕前記導電膜がパイロゾル法で得られるものである〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の積層体。
【0007】
〔6〕アスペクト比が1.5〜100である凹凸を表面に有する基板上に、式(I):In(R
1COCHCOR
2)
3(式(I)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表す。)で表されるインジウム化合物と、式(II):(R
3)
2Sn(OR
4)
2(式(II)中、R
3は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
4は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアシル基を表す。)で表されるスズ化合物とを含有する溶液を用いて、パイロゾル法によってITO膜を作製することを含む〔2〕に記載の積層体の製造方法であって、前記溶液の霧化物をキャリアガスに同伴させて、前記基板の平坦面に対して平行に流れるように基板上に供給する積層体の製造方法。
【0008】
〔7〕式(I):In(R
1COCHCOR
2)
3(式(I)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表す。)で表されるインジウム化合物と、式(II):(R
3)
2Sn(OR
4)
2(式(II)中、R
3は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
4は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアシル基を表す。)で表されるスズ化合物とを含有する溶液を霧化し、アスペクト比が1.5〜100である凹凸を表面に有する基板を加熱し、加熱された前記基板に前記霧化物を接触させ、前記基板上にて前記インジウム化合物および前記スズ化合物を熱分解させてITO膜を作製することを含む〔2〕に記載の積層体の製造方法であって、前記溶液の霧化物をキャリアガスに同伴させて、前記基板の平坦面に対して平行に流れるように基板上に供給する積層体の製造方法。
【0009】
〔8〕前記基板の加熱温度が300〜800℃である〔6〕または〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕前記凹凸が、針状突起、柱状突起、縦穴、細孔または溝からなるものである〔6〕〜〔8〕のいずれかひとつに記載の製造方法。
〔10〕段差被覆率が60〜120%になるように前記ITO膜を成膜する〔6〕〜〔9〕のいずれかひとつに記載の製造方法。
〔11〕前記段差被覆率が80〜120%になるように成膜する〔10〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、表面に複雑な形状の凹凸を有する基板と、該凹凸における底、側壁面および頂に略均一な厚さで積層された導電膜とを有する積層体を容易に得ることができる。本発明の製造方法によれば、例えば、アスペクト比が大きなコンタクトホールなどにおいても略均一な厚さで導電膜を成膜することができるので、コンタクトの不良が発生しなくなる。
本発明の積層体は、フラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなど)、面発熱体、タッチパネル、半導体素子などに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、熱した状態の基板に、パイロゾル法を用いて成膜を行うことによって、複雑な形状の凹凸を表面に有する基板に対し、略均一な厚さで導電膜を成膜できることを見出し、この知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の積層体は、基板と、その基板に積層された導電膜とを有するものである。
導電膜は、ITO膜、FTO膜、SnO
2膜、ATO膜、AZO膜、GZO膜、IZO膜、またはIGZO膜であり、ITO膜であることが好ましい。
基板はその表面に凹凸を有する。
前記凹凸のアスペクト比は、1.5〜100、好ましくは2〜100、より好ましくは4〜100、さらに好ましくは8〜100、よりさらに好ましくは10〜100、特に好ましくは15〜100である。前記凹凸の好ましい態様としては、針状突起、柱状突起、縦穴、細孔または溝(トレンチ)からなるものが挙げられる。
図3(a)および(b)はトレンチからなる凹凸を有する基板を示している。
図11(a)および(b)は柱状突起からなる凹凸を有する基板を示している。
前記アスペクト比は、凹部の開口幅Wに対する凹部の深さHの比(H/W)である。前記凹凸が柱状突起により形成される場合は、隣接する柱状突起間の平坦面における最小幅を凹部の開口幅Wとし、柱状突起の高さ(柱状突起(凸部)の頂面から柱状突起間(凹部)の底面まで下した垂線の長さ)を凹部の深さHとする。前記凹凸が針状突起により形成される場合は、隣接する針状突起の頂間の平坦面における最小幅を凹部の開口幅Wとし、針状突起の高さ(針状突起(凸部)の頂面から針状突起間(凹部)の底面まで下した垂線の長さ)を凹部の深さHとする。ここで平坦面というのは、通常は、頂にある平面である。頂が尖っていて平面が無い場合は、3つ以上の頂を結んで形成される面を平坦面という。
前記凹部の開口幅Wは、0.05μm〜200μmが好ましく、より好ましくは0.05μm〜100μm、さらに好ましくは0.05μm〜50μm、特に好ましくは、0.05μm〜10μmである。
【0014】
前記凹凸の側壁面の傾斜角度は、特に限定されないが、平坦面(前述)に対してほぼ垂直、具体的には、平坦面に対して80度超100度以下であることが好ましく、平坦面に対して85度以上95度以下であることがより好ましい。
【0015】
基板はその材料において特に限定されない。基板材料としては、例えば、ガラス、シリコン、酸化珪素などの無機材料、樹脂、ゴムなどの有機材料、シリコーンなどの高分子化合物が挙げられる。
【0016】
導電膜は、前記凹凸における底、側壁面および頂に略均一な厚さで積層されている。ここで、「凹凸における底、側壁面および頂に略均一な厚さで積層されている」とは、凸部の頂面の少なくとも1点と、凹部の底面の少なくとも1点と、側壁面の少なくとも2点(側壁面の中間部(凸部の頂面と凹部の底面との中間に位置する側壁における中間点)から上部(前記中間部と凸部の頂面との間)に位置する側壁面の頂側部、および、前記中間部から下部(前記中間部と凹部の底面との間)に位置する側壁面の底側部)とにおいて、積層された導電膜の膜厚を測定した時に、ほぼ等しい厚みであることを意味する。前記導電膜は、前記凹凸における底、側壁面および頂に欠損することなく積層されていることが好ましい。
積層された導電膜の平均厚さは、特に制限されない。用途などに応じて適宜選定することができる。例えば、ITO膜の場合、シート抵抗値が30Ω/□以下の導電膜を形成する場合には、平均厚さは80nm以上であることが好ましく、シート抵抗値が60〜200Ω/□の導電膜を形成する場合には、平均厚さは30nm程度であることが好ましく、シート抵抗値が200〜3000Ω/□の導電膜を形成する場合には、平均厚さは10〜25nmであることが好ましい。
【0017】
前記略均一な厚さで積層された導電膜の段差被覆率は、好ましくは60〜120%、より好ましくは80〜120%、さらに好ましくは80〜110%、よりさらに好ましくは90〜100%、特に好ましくは95〜100%、最も好ましくは97〜100%である。なお、本発明で規定する段差被覆率は、凸部の頂面に積層された導電膜の厚さに対する側壁面に積層された導電膜の平均厚さの比を百分率(=[側壁面の平均膜厚/凸部の頂面の膜厚]×100(%))で表したものである。凸部の頂が狭すぎて頂面の膜厚を決定できない場合、例えば針状突起からなる凹凸においては、段差被覆率は、[側壁面の平均膜厚/側壁面の頂の膜厚]×100(%)で定義される。
ここでいう「側壁面の平均膜厚」とは、側壁の中間点から上部に位置する少なくとも1点(側壁面の頂側部)での膜厚と、側壁の中間部から下部に位置する少なくとも1点(側壁面の底側部)での膜厚との平均値のことをいう。また、「頂の膜厚」とは、頂面の1点で測定された膜厚のことをいう。
【0018】
前記導電膜は、種々の成膜法によって作製することができるが、本発明においてはパイロゾル法で作製することが好ましい。
【0019】
前記導電膜としてITO膜を用いた場合の積層体の製造方法は、表面にアスペクト比1.5〜100の凹凸を有する基板上に、インジウム化合物とスズ化合物とを含有する溶液(以下、原料液ということがある。)を用いて、パイロゾル法によってITO膜を作製することを含むものである。
【0020】
前記積層体の好適な製造方法は、 インジウム化合物とスズ化合物とを含有する溶液(原料液)を霧化し、 表面にアスペクト比1.5〜100の凹凸を有する基板を加熱し、 加熱された前記基板に前記霧化物を接触させ、 該基板上にてインジウム化合物および前記スズ化合物を熱分解させてITO膜を作製することを含むものである。
【0021】
前記インジウム化合物は、空気中で熱分解して、酸化インジウムを生成する化合物であれば特に制限されないが、 式(I): In(R
1COCHCOR
2)
3 で表される化合物であるのが好ましい。
式(I)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表す。R
1およびR
2における炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などを挙げることができる。
より好ましく用いられるインジウム化合物は、インジウムトリスアセチルアセトナート(In(CH
3COCHCOCH
3)
3)である。
【0022】
本発明に用いられるスズ化合物は、空気中で熱分解して、酸化スズを生成する化合物であれば特に制限されないが、式(II): (R
3)
2Sn(OR
4)
2 で表される化合物であるのが好ましい。
式(II)中、R
3は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
4は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアシル基を表す。
R
3における炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基を挙げることができる。
R
4における炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などを挙げることができ、炭素数1〜10のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基などを挙げることができる。
本発明に好ましく用いられるスズ化合物は、ジ−n−ブチルスズジアセテート((n−Bu)
2Sn(OCOCH
3)
2)である。
【0023】
原料液に用いられる溶媒は、インジウム化合物とスズ化合物とを溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、アセチルアセトンなどのβ−ジケトン化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどのβ−ケトン酸エステル化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどのβ−ジカルボン酸エステル化合物などを挙げることができる。これらの中でも、アセチルアセトンは、本発明の効果が大きく顕れるので好ましい。
【0024】
原料液に含有させるインジウム化合物とスズ化合物との比は、インジウム化合物由来のインジウム元素1質量部に対して、スズ化合物由来のスズ元素が、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.001〜0.5質量部、さらに好ましくは0.05〜0.35質量部となるようにする。
【0025】
原料液に含有させるインジウム化合物とスズ化合物との合計量は、溶媒に溶解することができれば特に制限はないが、インジウム化合物由来のインジウム元素とスズ化合物由来のスズ元素の合計が、溶媒1質量部に対して、好ましくは0.07質量部以下、より好ましくは0.00001〜0.07質量部、さらに好ましくは0.001〜0.04質量部となるようにする。
【0026】
原料液には、第3成分として、Mg、Ca、Sr、Baなどの周期律表第2族元素、Sc、Yなどの第3族元素、La、Ce、Nd、Sm、Gdなどのランタノイド、Ti、Zr、Hfなどの第4族元素、V、Nb、Taなどの第5族元素、Cr、Mo、Wなどの第6族元素、Mnなどの第7族元素、Coなどの第9族元素、Ni、Pd、Ptなどの第10族元素、Cu、Agなどの第11族元素、Zn、Cdなどの第12族元素、B、Al、Gaなどの第13族元素、Si、Ge、Pbなどの第14族元素、P、As、Sbなどの第15族元素、Se、Teなどの第16族元素などが含まれていることが好ましい。第三成分を原料液に含有させるために上記元素からなる単体若しくは化合物を原料液に添加することができる。
原料液に含有させる第三成分の元素量は、インジウム化合物由来のインジウム元素に対して、0.05〜20モル%程度が好ましい。第三成分の元素種に応じて、含有させることができる量は異なるので、ITO膜が所望の抵抗値になるように、元素種および量を適宜選定することができる。
【0027】
本発明において使用されるパイロゾル法は、スプレー熱分解法の一種である。スプレー熱分解法は、一般に、溶液(原料液)を霧化し、基板を加熱装置で加熱し、加熱された基板に霧化物を接触させ、該基板上にて原料液中の化合物を熱分解させて成膜することを含むものである。原料液を霧化する方法としては、スプレーノズルを使用したもの、超音波振動を使用したものなどが挙げられる。パイロゾル法では、超音波振動で原料液を霧化させる。
【0028】
本発明の製造方法においては、前記霧化物を、移動させるためにキャリアガスを流すことが好ましい。そして、加熱された基板8に霧化物を接触させることが好ましい。キャリアガスの流量は供給通路4において層流を成すように調整することが好ましい。キャリアガスとしては、酸化性ガスが好ましい。好ましい酸化性ガスとしては、酸素、空気などが挙げられる。また、キャリアガスは乾燥させたものであることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法に使用される基板は、表面に凹凸を有するものである。好ましい凹凸の形状などは前記のとおりである。
基板の加熱温度は、好ましくは300〜800℃、より好ましくは450〜600℃、さらに好ましくは480〜560℃である。キャリアガスに同伴された霧化物は、好ましくは基板の平坦面に対して平行に流れるように、より好ましくは基板の平坦面に対して平行に層流状態で流れるように基板上に、供給するのが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法を実施するための成膜装置は特に限定されない。
図1は本発明の製造方法を実施するための簡易装置の一例を示す図である。
図1に示す装置では、原料液槽1に貯まった原料液を超音波霧化機2で霧化している。霧化物は、乾燥空気に同伴されて供給通路4を経て成膜炉6に送られる。供給通路4を囲んでヒータ(予熱装置)5が取り付けられていて、霧化物をヒータ5で予熱することができるようになっている。成膜炉6の天面および底面にはヒータ7が設けられている。基板8を成膜炉6の中に置き、ヒータ7で加熱することができる。成膜炉6内では予熱された霧化物が加熱された基板8面に平行に層流状態で流れ、加熱された基板に予熱された霧化物が接触するようになっている。接触しなかった霧化物は排気通路9から排出される。
【0031】
図2は本発明の製造方法を実施するための装置の別の一例を示す図である。
図2に示す成膜炉60では、水平に設置されたベルトコンベアのベルト(搬送装置)50に基板を載せて一枚一枚搬送させつつ、ヒータ(加熱装置)80によって基板を加熱することができる。超音波霧化機(図示せず)で原料液が霧化され、該霧化物が供給通路61から成膜炉60に導入され、基板の表面に対して平行になるように流れ、排気通路62から排気されるようにマッフル本体63の内部空間が画定されている。より具体的に、マッフル本体の内部空間はベルト50を囲繞する略矩形断面の搬送通路部63aと、この搬送通路部63aの上側の壁面から上方に突出すると共に略矩形断面をなすチャンバ部63bと、ガラス基板の搬送方向においてこのチャンバ部63bを挟むように配置され搬送通路部63aの上側の壁面から上方に突出する排気通路部63cとからなる。この排気通路部63cは、この上端のフランジ部63c’に接続される排気通路62と共に一つの排気通路を形成している。上記チャンバ部63bには、
図2に示すように、ITO膜を形成する際の原料を霧化して供給する供給通路61が接続されている。また、このチャンバ部63bには、その上端開口を塞ぐ蓋体66が着脱可能に設けられている。
【0032】
ベルトコンベア式の成膜炉を用いた場合には、基板がベルトコンベアで運ばれる過程において、キャリアガスに同伴された霧化物が流れる方向が、基板の右手から流れる状態と基板の上手から流れる状態と基板の左手から流れる状態とを順に実現させることができる。ベルトコンベア式の成膜炉を複数(例えば、少なくとも3基を直列に)繋いで、所望の厚さのITO膜が基板上に得られるように繰り返し成膜を行ってもよい。
【0033】
上記のような方法によって、基板にITO膜が形成される。ITO膜形成後、所望に応じて加熱処理(アニール)を行うことができる。アニール時の温度は、好ましくは100〜550℃、より好ましくは150〜300℃である。アニール時間は、好ましくは0.1〜3時間、より好ましくは0.3〜1時間が好ましい。アニール時の雰囲気としては、大気、窒素、酸素、水素添加窒素、有機溶媒添加大気もしくは窒素雰囲気などが好ましい。
また、導電膜として、FTO膜、SnO
2膜、ATO膜、AZO膜、GZO膜、IZO膜、またはIGZO膜を形成させる場合も、ITO膜と同様の方法により形成することができる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
ITO製膜装置として、
図2に示す装置を3基直列に連結したものを用いた。基板として、
図3(a)および(b)に示すような、凹部の開口幅(W)1μm、凹部の開口深さ(H)5μm、アスペクト比5のトレンチからなる凹凸を表面に有するシリコンウェハー基板を用いた。成膜炉60の加熱温度を500〜515℃の間に設定した。
【0036】
インジウムトリスアセチルアセトナート(In(AcAc)
3)をアセチルアセトンに溶解させてモル濃度0.12mol/Lの黄色透明溶液を得た。この溶液に、インジウム元素1モルに対してスズ元素が0.05モル(インジウム元素1質量部に対してスズ元素が0.05質量部)となるようにジ−n−ブチルスズジアセテートを添加し溶解させて原料液を調製した。
【0037】
原料液を800kHzの超音波によって微小の液滴(霧)とし、該液滴を83L/分の流量の乾燥空気と共に、供給通路61を通して、成膜炉60に導入した。排気通路62と供給通路61との差圧を30Paに設定した。
以上のような条件に設定した場合、原料液の供給速度は4.4g/分となる。500℃での液滴を含むガスが理想気体であるとした場合の成膜部分での液滴を含むガスの線速度は0.21m/sである。
ベルトコンベアのベルト50に基板を載せ、速度40cm/分で基板を搬送し、成膜炉60内を通過させた。3基の成膜炉60を通過した後、窒素雰囲気下において500℃で加熱処理(アニール)を行った。
【0038】
上記操作で得られた積層体の電子顕微鏡像を
図4〜6に示す。基板の凹凸の側壁面、底面および頂面にほぼ均一な厚さでITO膜が積層されていることがわかった。ITO膜の厚さは、凸部の頂面において45.0nm、側壁面の頂側部において45.0nm、側壁面の中間部において29.5nm、側壁面の底側部において37.5nm、および凹部の底面において36.0nmであった。段差被覆率は83%であった。
【0039】
実施例2
ITO製膜装置として、
図1に示す装置を用いた。基板として、実施例1と同じシリコンウェハー基板を用いた。
ヒータ7による加熱温度を約500℃に調整した。また、成膜炉6内でのガス(乾燥空気)流量を7L/分に設定した。成膜炉6の高さは3cmにした。
【0040】
インジウムトリスアセチルアセトナートをアセチルアセトンに溶解させてモル濃度0.2mol/Lの黄色透明溶液を得た。この溶液に、インジウム元素1モルに対してスズ元素が0.05モル(インジウム元素1質量部に対してスズ元素が0.05質量部)となるようにジ−n−ブチルスズジアセテートを添加して溶解させて原料液を調製した。
【0041】
成膜炉6の底面に基板8を置いて、底面に設置したヒータ7で基板8を500℃に加熱した。原料液を800kHzの超音波によって微小の液滴(霧)とし、該液滴を供給通路4を通して、成膜炉6に導入した。
以上のような条件に設定した場合、原料液の供給速度は4.0g/分となる。500℃での液滴を含むガスが理想気体であるとした場合の成膜部分での液滴を含むガスの線速度は0.06m/sである。この速度で原料液(微小液滴)を成膜炉6に10分間供給し続けた。次いで、窒素雰囲気下において500℃で加熱処理(アニール)を行った。
【0042】
上記操作で得られた積層体の電子顕微鏡像を
図7および8に示す。基板の凹凸の側壁面、底面および頂面にほぼ均一な厚さでITO膜が作製されていることがわかった。ITO膜の厚さは、凸部の頂面において125nm、側壁面の頂側部において125nm、側壁面の中間部において118nm、側壁面の底側部において122nm、および凹部の底面において111nmであった。段差被覆率は97%であった。
【0043】
実施例3
原料液(微小液滴)の供給時間を6分間に変更した以外は、実施例2と同じ方法で積層体を得た。
上記操作で得られた積層体の電子顕微鏡像を
図9および10に示す。基板の凹凸の側壁面、底面および頂面にほぼ均一な厚さでITO膜が作製されていることがわかった。ITO膜の厚さは凸部の頂面において89.0nm、側壁面の頂側部において89.0nm、側壁面の中間部において82.5nm、側壁面の底側部において77.5nm、および凹部の底面において77.5nmであった。段差被覆率は93%であった。
【0044】
実施例4
ITO製膜装置として、
図2に示す装置を3基直列に連結したものを用いた。基板として、
図11(a)および(b)に示すように、高さ50μm、直径30μmの柱状突起が、柱状突起の頂の中心部によって底辺60μm、高さ60μmの三角形が平坦面において連続して形成されるように配置されてなる凹凸を有するシリコンウェハー基板を用いた。ここで、前記柱状突起間凹部の深さ(H)は50μm、凹部の最小開口幅(W)は30μm、アスペクト比は1.67であった。成膜炉60内の温度を504〜507℃の間に設定した。
【0045】
インジウムトリスアセチルアセトナートをアセチルアセトンに溶解させてモル濃度0.2mol/Lの黄色透明溶液を得た。この溶液に、インジウム元素1モルに対してスズ元素が0.05モル(インジウム元素1質量部に対してスズ元素が0.05質量部)となるようにジ−n−ブチルスズジアセテートを添加し溶解させて原料液を調製した。
【0046】
原料液を800kHzの超音波によって微小の液滴(霧)とし、該液滴を83L/分の流量の乾燥空気と共に、供給通路61を通して、成膜炉60に導入した。排気通路62と供給通路61との差圧を30Paに設定した。
以上のような条件に設定した場合、原料液の供給速度は4.35g/分となる。
【0047】
ベルトコンベア50に基板を載せ、速度25cm/分で基板を搬送し、成膜炉60内を通過させた。3基の成膜炉を通過した後、窒素雰囲気下において500℃で加熱処理(アニール)を行った。
【0048】
上記操作で得られた積層体の電子顕微鏡像を
図12および13に示す。基板の凹凸の側壁面、底面および頂面にほぼ均一な厚さでITO膜が作製されていることがわかった。ITO膜の厚さは、凸部の頂面において123nm、側壁面の頂側部において138nm、側壁面の中間部において94nm、側壁面の底側部において77nm、および凹部の底面において87nmであった。段差被覆率は84%であった。
【0049】
実施例5
図2に示す装置を3基直列に連結したものを用いて基板上に成膜を行った。基板として、
図14に示す、凹部の開口幅1μm、凹部の開口深さ20μm、アスペクト比20のトレンチからなる凹凸を表面に有するシリコンウェハー基板を用いた。
インジウムトリスアセチルアセトナートをアセチルアセトンにモル濃度で0.2mol/Lになるように溶解して黄色透明溶液を得た。この溶液にインジウム元素1モルに対してスズ元素が5モル(インジウム元素1質量部に対してスズ元素が5質量部)となるようにジ−n−ブチルスズジアセテートを加えて原料液を調製した。
成膜炉60内の温度を498〜509℃の間に設定した。上記原料液を800kHzの超音波により微小の液滴(霧)とし、83L/分の流量の乾燥空気と共に、供給通路61を通して、成膜炉60内に微小液滴を導入した。その際、排気通路62と供給通路61との差圧を、30Paに設定した。以上のような条件に設定した場合、原料液の供給速度は、4.35g/分となり、この速度で10分間供給を続けた。
ベルトコンベアのベルト50に前記基板を設置して、500℃で基板を十分に予熱した後、ベルトコンベア速度を47cm/分に設定して、基板を成膜炉60内に搬送し、微小液滴を基板上に堆積且つ結晶化させてITO膜を成膜した。成膜後、窒素下において同温度でアニールを行った。この作業は、3基の成膜炉内を通過させる過程において、3回繰り返し行った。
【0050】
図15(a)および(b)に成膜後の基板を、トレンチの長手方向に対して垂直に切断した断面の電子写真を示す。凹部の側壁面、底面、凸部頂面にほぼ均一の膜厚でITO膜が成膜されていることが確認された。成膜されたITO膜の厚さは、凸部の頂面において57nm、側壁面の頂側部において54nm、側壁面の底側部において38nm、および凹部の底面において39nmであり、段差被覆率は81%であった。
【0051】
実施例6
図1に示す成膜装置を用いて基板上に成膜を行った。基板として、
図16に示す、凹部の開口幅2μm、凹部の開口深さ20μm、アスペクト比10のトレンチからなる凹凸を表面に有するシリコンウェハー基板を用いた。
亜鉛ビスアセチルアセトナート(Zn(AcAc)
2)をエタノールにモル濃度で0.09mol/Lになるように溶解して黄色透明溶液を得た。この溶液に亜鉛元素1モルに対して、アルミニウム元素が2モルとなるようにアルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(AcAc)
3)を加えて原料液を調製した。
ヒータ7の温度を約450℃に設定した。また、成膜炉6のガス(乾燥空気)流量を、10L/分に設定した。成膜炉6内での加熱はヒータ7を用いて基板8の上下から行った。成膜炉6の高さは1cmとした。
上記原料液を800kHzの超音波により微小の液滴(霧)とし、供給通路4を通して、成膜炉6に導入した。
以上のような条件に設定した場合、原料液の供給速度は、4.0g/分となり、この速度で5分間供給を続けた。
ヒータ7上に前記基板8を設置して、まず450℃で基板8を十分に予熱した後、微小液滴を基板8上に堆積且つ結晶化させてAZO膜を成膜した。成膜後、窒素下において同温度でアニールを行った。
【0052】
図17(a)および(b)に、成膜後の基板を、トレンチの長手方向に対して垂直に切断した断面の写真を示す。凹部の側壁面、底面、凸部頂面にほぼ均一の膜厚でAZO膜が成膜されているのはわかった。成膜されたAZO膜の厚さは、凸部の頂面において45nm、側壁面の頂側部において48nm、側壁面の底側部において49nm、および凹部の底面において35nmであり、段差被覆率は108%であった。
【0053】
比較例1
基板として、実施例5と同じシリコンウェハー基板を用いた。
ITOターゲットを用いて、到達圧力を5×10
−4Paとし、キャリアガスとしてArガス18(sccm)及びO
2ガス2(sccm)を用い、圧力を0.1Paとする条件で、水平に設置した基板に対して、膜厚が50nmとなるような時間で成膜を実施した。
図18(a)および(b)に成膜後の基板を、トレンチの長手方向に対して垂直に切断した断面の写真を示す。成膜されたITO膜の厚さは、凸部の頂面において59nm、側壁面の頂側部において29nmであったが、側壁面の底側部および凹部の底面においては測定できず、段差被覆率は25%であった。