【実施例1】
【0015】
まず、本発明である乱形タイル用係止板を用いた乱形タイルの係止について説明する。
図1は、乱形タイル用係止板を用いて乱形タイルを係止した壁面を示す正面図であり、
図2は、その左側面図である。なお、壁面100の外側に向かう方を前側、壁面100側に向かう方を後側とする。
【0016】
図1に示すように、乱形タイル用係止板200は、建物の外壁などの壁面100に化粧材として複数の乱形タイル400を任意の配置で配列するために、アンカー120等により壁面100に固定される金属や樹脂などで作られた板材である。なお、乱形タイル400は、不定形のタイル又は石材板などの化粧材であり、それぞれサイズが異なるため、一定の間隔で配置するのが困難なものである。
【0017】
図2に示すように、壁面100に乱形タイル用係止板200を固定するにあたり、下地として壁面100の表面に下地材110を取り付けても良い。壁面100に凹凸が多いなど平滑でない場合や、接着剤が付きにくい場合など、壁面100の状態が良好でない場合には、板材などを下地として用い、良好であれば壁面100を下地としても良い。
【0018】
乱形タイル用係止板200は、下地材110に留めるための固定部220、及び乱形タイル400を係止するための支持部230を有する。なお、乱形タイル用係止板200には、全面に渡って複数の係止孔210も空けられる。
【0019】
固定部220は、部分的に裏面側(壁面100側)に突出させて、その底面を下地材110に接触させた部分である。固定部220は、少なくともアンカー120が収まる大きさがあれば良い。固定部220の底面には、アンカー120の頭部以外の軸部が通る孔を空けておき、アンカー120を下地材110に挿し込んで留めれば良い。
【0020】
支持部230は、下地材110の前側に下地材110から浮かせた状態で配置され、乱形タイル400を吊り下げる等して係止する部分である。なお、乱形タイル400を吊り下げて支持部230に引っ掛けるために取付片300を用いる。
【0021】
取付片300は、例えば、上部を後側にフック状に折り曲げた掛部310、及び下部を前側に折り曲げた留部320を設け、留部320を乱形タイル400の裏面に空ける等した穴に掛けて吊り下げた状態にし、掛部310を乱形タイル用係止板200に引っ掛けることにより、係止すれば良い。
【0022】
乱形タイル用係止板200により係止された乱形タイル400を下地材110に対して固着するために、下地材110と乱形タイル400の間に接着用材料500をスポット状に配して接着する。接着用材料500は、例えば、主に乾式工法で使用する弾性接着剤や、主に湿式工法で使用するモルタルなどである。
【0023】
下地材110と乱形タイル400の間に介在している乱形タイル用係止板200にも接着用材料500を絡ませる。また、ある1つの乱形タイル400とそれに隣接する他の乱形タイル400との間の目地材として、接着用材料500を充填しても良い。
【0024】
次に、本発明である乱形タイル用係止板の構造について説明する。
図3は、乱形タイル用係止板の係止孔が円形状の場合の拡大図であり、
図4は、乱形タイル用係止板の係止孔が菱形状の場合の拡大図であり、
図5は、乱形タイル用係止板の係止孔が矩形状の場合の拡大図である。
【0025】
図3に示すように、乱形タイル用係止板200aは、複数の円形状の係止孔210aを縦横に等間隔で並べ、それを45度傾斜させたような状態で配置することにより、支持部230の全面に係止孔210aが空けられたものである。係止孔210aは、任意の列において縦方向に等間隔で並び、その列と隣接する他の列の係止孔210aは、上側又は下側に半ピッチずれた状態で並ぶ。
【0026】
また、一の係止孔210aにおいて、斜めに隣接する係止孔210aとの間隔よりも、同じ列の上側又は下側の係止孔210aとの間隔が大きくなるので、乱形タイル用係止板200aにおける係止孔210aの空隙率は約50%となる。この場合、乱形タイル用係止板200a自体の強度は出るが、係止孔210aに入り込む接着用材料500の量は少なくなる。
【0027】
接着用材料500が係止孔210aに入り込むことで下地材110と乱形タイル400とが接着される。接着用材料500が弾性接着剤の場合は、空隙率が50%程度でも接着力に支障はないが、モルタルの場合だと、空隙率を70%程度確保しないと地震等の振動によりモルタルが破断して乱形タイル400が剥離するおそれが生じる。
【0028】
図4に示すように、乱形タイル用係止板200bは、複数の菱形状の係止孔210bを等間隔で並ぶように配置することにより、支持部230の全面に係止孔210bが空けられたものである。複数の係止孔210bは、縦横方向には頂点で隣接させ、斜め方向には辺で隣接させることにより、係止孔210bの間隔が小さくなり、乱形タイル用係止板200bにおける係止孔210bの空隙率は70%以上となる。係止孔210bにおいても、隣接する列は、半ピッチずれた状態で並ぶ。
【0029】
接着用材料500が係止孔210bに入り込み、乱形タイル用係止板200bに絡みやすくなるため、下地材110と乱形タイル400とが強く接着され、振動により接着用材料500が破断して乱形タイル400が剥離する可能性は少ない。
【0030】
係止孔210bの間隔が狭くなることで、支持部230の強度が下がるおそれがある。取付片300の留部320に乱形タイル400を留めて掛部310を係止孔210bに掛けたときに、例えば、取付片300の幅が狭いときは、係止孔210bの下側の頂点に対して、一点で荷重が掛かる。
【0031】
また、取付片300の幅が広いときは、係止孔210bの左下側の辺及び右下側の辺に対して、それぞれ一点で荷重が掛かる。左下側の辺(枠)が左下の方向に変形し、右下側の辺(枠)が右下の方向に変形すると、それに連動するように、左上側の辺(枠)が右下の方向に変形し、右上側の辺(枠)が左下の方向に変形していく。そして、変形方向が前後方向に膨らむと、接着用材料500が破断して乱形タイル400が剥離するおそれが生じる。
【0032】
図5に示すように、乱形タイル用係止板200cは、複数の矩形(横長の長方形)状の係止孔210cを縦に等間隔で並べ、隣接する列は、半ピッチずれた状態で並べて配置することにより、支持部230の全面に係止孔210cが空けられたものである。複数の係止孔210cは、縦横方向に辺で隣接しており、係止孔210cの間隔も小さいので、乱形タイル用係止板200cにおける係止孔210cの空隙率は70%以上となる。
【0033】
接着用材料500が係止孔210cに入り込み、乱形タイル用係止板200cに絡みやすいので、下地材110と乱形タイル400とが強く接着され、振動により接着用材料500が破断して乱形タイル400が剥離する可能性は少ない。
【0034】
支持部230の強度については、取付片300の幅が狭いときは、係止孔210cの下側の辺に対し一点で荷重が掛かるおそれがあるが、取付片300の幅が広いときは、係止孔210cの下側の辺で受けるため、荷重が分散される。また、荷重は斜め方向には掛からないので、変形したとしても周りに拡がりづらい。なお、取付片300の位置が横方向にずれないように、係止孔210cの横の長さは、取付片300の幅に合わせれば良い。
【0035】
係止孔210cの配置ピッチが取付片300を掛ける位置、すなわち乱形タイル400の位置の調整可能ピッチとなる。係止孔210cの縦の長さは、取付片300の掛部310を掛けるのに支障がない程度に小さくすることが好ましい。
【0036】
係止孔210cの下側の辺を平坦状(水平状)にして、取付片300及び乱形タイル400の荷重を辺で受ければ良いので、係止孔210cの形状は、六角形など矩形状以外の形状にしても良い。
【0037】
次に、本発明である乱形タイル用係止板の強度保持について説明する。
図6は、乱形タイル用係止板を凹凸状に折り曲げた場合を示す(a)正面図及び(b)底面図である。
図7は、(a)凹状部がない場合及び(b)凹状部がある場合の乱形タイル用係止板を用いた乱形タイルの接着を説明する図である。
【0038】
図6(a)及び(b)に示すように、乱形タイル用係止板200dは、支持部230をクランク状に折り曲げることを繰り返し、下地材110に接する凹状部240を設けたものである。下地材110から浮いた支持部230と、下地材110に接する凹状部240とが交互に来るように折り曲げられ、前後方向に幅が出ることで、乱形タイル用係止板200dの強度が向上する。
【0039】
なお、凹状部240は、底面が下地材110に接触するように、固定部220と同じ深さにすれば良い。また、支持部230のうち、縦に係止孔210dがない位置で直角に折り曲げることで高さを変えて段差を作れば良い。
【0040】
図7(a)に示すように、乱形タイル用係止板200cの両端付近に固定部220を設け、横にした下地材110にアンカー120で固定したときに、支持部230に乱形タイル400を載せ、下地材210と乱形タイル400の間に接着用材料500を注入したとする。乱形タイル400の長さが固定部220の設置ピッチよりも短いと、下地材110から浮いた状態である支持部230が乱形タイル400の重量により下方に湾曲して下地材210と乱形タイル400の間が狭くなる。
【0041】
接着用材料500が下地材210と乱形タイル400の間に充分に入り込まなくなり、接着力が弱くなる可能性がある。なお、支持部230の撓みを抑えるために仮止めした場合も、接着用材料500が充分に入り込まなくなる。
【0042】
図7(b)に示すように、支持部230に間欠的に凹状部240を設けて、乱形タイル400の長さ以下で、支持材210に接する部分と、支持材210から浮いた部分とが交互に来るようにする。乱形タイル400が載る部分を乱形タイル400の長さよりも短くすることで、支持部230が撓むことが抑制される。
【0043】
乱形タイル用係止板200dに凹凸を設けることで、下地材210と乱形タイル400の間隔が確保され、接着用材料500が下地材210と乱形タイル400の間に充分に入り込む。乱形タイル用係止板200dを介して、下地材210と乱形タイル400とが強固に接着され、乱形タイル400の剥離が防止される。なお、凹状部240を利用して接着用材料500が固まるまで乱形タイル用係止板200dを仮止めすることも可能となる。
【0044】
このように、壁面に不定形な乱形タイルを貼り付ける際に、本発明である乱形タイル用係止板を壁面と乱形タイルの間に介在させることで、乱形タイルの剥落を抑制することができる。壁面と乱形タイルの間にスポット状に配した接着用材料は、乱形タイル用係止板の全面に複数空けられた係止孔を通って壁面と乱形タイルとを貼着しているが、乱形タイル用係止板の空隙率を上げることで、接着用材料が振動によって破断することが抑制される。また、乱形タイル用係止板に空けられた係止孔を矩形状など下辺が平坦な形状にすることで、係止孔に引っ掛けた乱形タイルの荷重が一点に集中せず変形を抑えられる。すなわち、乱形タイル用係止板の変形により、壁面と乱形タイルの間が空いて接着用材料が剥がれることが抑制される。
【0045】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。