特許第6270023号(P6270023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270023
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】研磨パッドの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20180122BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20180122BHJP
   B26D 3/28 20060101ALI20180122BHJP
   B24D 11/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   B24B37/24 B
   B26D3/00 601C
   B26D3/28 610T
   B24D11/00 Q
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-186400(P2013-186400)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-51489(P2015-51489A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】松澤 博信
(72)【発明者】
【氏名】松澤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕男
(72)【発明者】
【氏名】前藤 啓介
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−066717(JP,A)
【文献】 特開2006−142474(JP,A)
【文献】 特開2003−048193(JP,A)
【文献】 特開2001−179684(JP,A)
【文献】 特開2010−142931(JP,A)
【文献】 特開2013−151052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0247290(US,A1)
【文献】 米国特許第04210051(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00−37/34
B24D3/00−99/00
B26D1/00−11/00
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ブロックを水平方向にスライスして研磨パッドを製造する研磨パッドの製造装置であって、
前記樹脂ブロックを載置する載置台と、
前記載置台上に載置された前記樹脂ブロックの、表層部分をスライス加工するスライス刃と、
前記スライス刃の刃先から前方に所定間隔を置いて設けられ、前記樹脂ブロックの上面に配置される、スライス加工の際に生じる前記樹脂ブロックのたわみを抑制する押さえローラーと、を備え、
前記スライス刃の刃先から水平方向に延ばした直線及び前記押さえローラーの下端から鉛直方向に延ばした直線の交点と、前記スライス刃の刃先との水平距離は10mm乃至100mmであり、
前記樹脂ブロックと、前記スライス刃及び前記押さえローラーとを相対移動させることによって、前記樹脂ブロックの前記表層部分をスライス加工する、研磨パッドの製造装置。
【請求項2】
前記押さえローラーは、前記載置台を基準として、前記押さえローラーの下端の高さが前記スライス刃の刃先の高さと同じであるか若しくは前記スライス刃の刃先の高さよりも高くなるように配置され、これらの高さの差が0mm乃至5.0mmである、請求項1に記載の研磨パッドの製造装置。
【請求項3】
前記スライス刃と、前記押さえローラーとの最近接距離が、前記スライス加工された研磨パッドの厚さの150%乃至500%の範囲内にある、請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造装置。
【請求項4】
樹脂ブロックをスライスして研磨パッドを製造する研磨パッドの製造方法であって、
前記樹脂ブロックを載置台に載置し、
前記樹脂ブロックの前記載置台との接触面とは反対側の面を含む表層部分をスライス加工するスライス刃を位置決めし、
前記載置台との接触面とは反対側の面上に前記スライス刃の刃先から所定間隔を置いて、スライス加工の際に生じる前記樹脂ブロックのたわみを抑制する押さえローラーを位置決めし、
前記スライス刃の刃先から水平方向に延ばした直線及び前記押さえローラーの下端から鉛直方向に延ばした直線との交点と、前記スライス刃の刃先との距離は10mm乃至100mmであるようにし、
前記載置台と、前記スライス刃及び押さえローラーとを相対移動させ、前記樹脂ブロックの前記表層部分をスライス加工する、研磨パッド製造方法。
【請求項5】
前記押さえローラーは、前記載置台を基準として、前記押さえローラーの下端の高さが前記スライス刃の刃先の高さと同じであるか若しくは前記スライス刃の刃先の高さよりも高く、これらの高さの差が0mm乃至5.0mmであるように位置決めする請求項4に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
前記スライス刃と、前記押さえローラーとの最近接距離が、前記スライス加工された研磨パッドの厚さの150%乃至500%の範囲内となるように位置決めする請求項4又は5に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドの製造装置及び製造方法に係り、詳細には、ハードディスク、液晶ディスプレイ用マザーガラス、半導体デバイスなどの材料の表面を研磨するために用いられる研磨パッドをスライス加工により製造する製造装置及び製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク、液晶ディスプレイ用マザーガラス、半導体デバイスなどの材料の表面には高精度な平坦性が求められるため、研磨パッドを用いた遊離砥粒方式の研磨加工が行われている。遊離砥粒方式は、研磨パッドと非研磨物の間に砥粒を含むスラリー(研磨液)を供給しながら被研磨物の加工面を研磨加工する方法である。
【0003】
例えば、半導体デバイス用の研磨パッドには、その研磨パッド表面に、砥粒を保持するための開孔と、半導体デバイス表面の平坦性を維持する硬性と、半導体デバイス表面のスクラッチを防止する弾性とが要求される。これらの要求に応える研磨パッドとして、ウレタン樹脂発泡体から製造された研磨層を有する研磨パッドが使用されている。
【0004】
ウレタン樹脂発泡体は、通常、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物を含むプレポリマと硬化剤との反応により硬化してブロック状に成形される(乾式法)。そして、この樹脂ブロックをシート状にスライスすることにより硬質の研磨層を有する研磨パッド(以下、硬質(乾式)研磨パッドと略すことがある)が形成される。このようなスライス加工により形成される研磨パッドは、それ自体の厚さが均一であることが好ましい。
【0005】
図1及び図2を参照して、従来の樹脂ブロックのスライス加工の際に発生した問題について説明する。図1及び図2は、従来技術におけるスライス刃を用いた樹脂ブロックのスライス加工について、模式的に示す側面概略図である。図1は樹脂ブロックのスライス加工を開始した直後の状況を示す概略図であり、図2は樹脂ブロックのスライス加工が進行し、薄くなった樹脂ブロックに対してスライス加工が行なわれている状況を示す概略図である。図1に示すように、樹脂ブロック1は載置台2の上に載置されており、樹脂ブロック1がスライス加工中にその位置が横方向にずれないよう、ブロック押さえ21が樹脂ブロック1と載置台2の接触面近傍であって、後述するスライス刃3と反対側に設けられている。樹脂ブロック1の上面付近にはスライス加工用のスライス刃3が設けられている。樹脂ブロック1を載置した載置台2をスライス刃3に対して水平方向に移動させることにより、樹脂ブロック1の上面から所定範囲にある樹脂がスライス刃3によって側面からスライス加工され、所定の厚みを有する研磨パッドが製造される。スライス加工により研磨パッドが製造されるごとに、スライス刃3と樹脂ブロック1の相対位置をスライス加工前の初期位置へと復帰させる。次に研磨パッド1枚分に相当する高さだけ、スライス刃3が下降、若しくは載置台2が上昇し、再び載置台2をスライス刃3に対して水平方向に移動させることで、スライス加工が繰り返される。
【0006】
しかし、スライス加工の際、スライス刃3と樹脂ブロック1との間に生じる抵抗力により、樹脂ブロック1が変形してたわみが生じることがある。図1及び図2にこのようなたわみの例が示されている。図1はスライス加工が開始された直後の状況に相当し、樹脂ブロック1の厚みも比較的厚い段階である。スライス刃3が樹脂ブロック1の側面に当接してスライス加工が行なわれる際、スライス刃3から樹脂ブロック1に対して横方向の力がかかり、樹脂ブロック1の上面付近が特に横方向に変位してたわみが生じる。図2はスライス加工が進行した状況を示しており、樹脂ブロック1の厚みが比較的薄くなった状態にある。この状況でスライス刃3が樹脂ブロック1の側面に当接してスライス加工を行なおうとすると、スライス刃3から樹脂ブロック1に横方向の力がかかる一方で、スライス刃3と反対側の樹脂ブロック1の端部がブロック押さえ21に対して押し当てられる。これにより、樹脂ブロック1の中央付近が持ち上がるような形で変形し、たわみが生じる。これらのたわみが生じた状態でスライス加工が行なわれると、製造された研磨パッドの厚みにばらつきやうねりが発生する。半導体ウェハ等の表面の平坦化のために用いられる研磨パッド自身に厚みのばらつきやうねりがあることは好ましくないため、許容範囲を超えるばらつきやうねりを含んだ研磨パッドは製品として出荷できず、その結果、歩留まりが低下してしまう。
【0007】
このように、従来の樹脂ブロックのスライス加工において、スライス加工に伴う樹脂ブロックのたわみが生じ、これにより製造された研磨パッドに厚みのばらつきやうねりが発生するという問題があった。厚みのばらつきが所定範囲に収まらないような研磨パッドが増加すると、歩留まりが低下してしまう。
【0008】
従来、このような樹脂ブロックのスライス加工に関して、スライス加工の対象となる樹脂ブロックの表層部分を加熱し、樹脂硬度を低下させ、スライス加工時の抵抗を減少させることにより、厚みばらつきが小さい研磨パッドを形成するという手法が提案されていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4887023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように従来の研磨パッド製造装置においては、スライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみにより、製造される研磨パッドの厚みにばらつきが生じるという問題があった。この問題を解決しようと提案された、上記文献1に記載されているような樹脂ブロックを加熱する、という手法も電力消費量が多いという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、樹脂ブロックの加熱を行うことなく、スライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみを抑制し、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減する研磨パッドの製造装置及び製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、樹脂ブロックを水平方向にスライスして研磨パッドを製造する研磨パッドの製造装置であって、樹脂ブロックを載置する載置台と、載置台上に載置された樹脂ブロックの、表層部分をスライス加工するスライス刃と、スライス刃の刃先から前方に所定間隔を置いて設けられ、樹脂ブロックの上面に配置される、スライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみを抑制する押さえローラーと、を備え、スライス刃の刃先から水平方向に延ばした直線及び押さえローラーの下端から鉛直方向に延ばした直線の交点と、スライス刃の刃先との水平距離は10mm乃至100mmであり、樹脂ブロックと、スライス刃及び押さえローラーとを相対移動させることによって、樹脂ブロックの表層部分をスライス加工することを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、スライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみを抑制し、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【0015】
また、このように構成された本発明においてはスライス刃の刃先と押さえローラーの間の距離が適切に保たれるため、スライス刃の刃先と押さえローラーとの間での樹脂ブロックのたわみが発生しにくくなり、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【0016】
本発明において、好ましくは、押さえローラーは、載置台を基準として、押さえローラーの下端の高さがスライス刃の刃先の高さと同じであるか若しくはスライス刃の刃先の高さよりも高くなるように配置され、これらの高さの差が0mm乃至5.0mmであることを特徴としている。
【0017】
このように構成された本発明においては、更に、押さえローラーが樹脂ブロックの上面を押さえる際に、樹脂ブロックにかかる力が適切に保たれるため、樹脂ブロックに押さえローラーによる押さえ跡が残りにくくなり、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【0018】
本発明において、好ましくは、スライス刃と、押さえローラーとの最近接距離が、スライス加工された研磨パッドの厚さの150%乃至500%の範囲内にあることを特徴としている。
【0019】
このように構成された本発明においては、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減しつつ、更に、スライス刃によりスライス加工された研磨パッドが滞りなく樹脂ブロックから剥離することが可能となる。
【0020】
また、本発明は、樹脂ブロックをスライスして研磨パッドを製造する研磨パッドの製造方法であって、樹脂ブロックを載置台に載置し、樹脂ブロックの載置台との接触面とは反対側の面を含む表層部分をスライス加工するスライス刃を位置決めし、載置台との接触面とは反対側の面上にスライス刃の刃先から所定間隔を置いて、スライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみを抑制する押さえローラーを位置決めし、スライス刃の刃先から水平方向に延ばした直線及び押さえローラーの下端から鉛直方向に延ばした直線との交点と、スライス刃の刃先との距離は10mm乃至100mmであるようにし、載置台と、スライス刃及び押さえローラーとを相対移動させ、樹脂ブロックの表層部分をスライス加工することを特徴としている。
【0021】
このように構成された本発明においては、スライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみを抑制し、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【0023】
また、このように構成された本発明においてはスライス刃の刃先と押さえローラーの間の距離が適切に保たれるため、スライス刃の刃先と押さえローラーとの間での樹脂ブロックのたわみが発生しにくくなり、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【0024】
本発明において、好ましくは、押さえローラーは、載置台を基準として、押さえローラーの下端の高さがスライス刃の刃先の高さと同じであるか若しくはスライス刃の刃先の高さよりも高く、これらの高さの差が0mm乃至5.0mmであるように位置決めすることを特徴としている。
【0025】
このように構成された本発明においては、更に、押さえローラーが樹脂ブロックの上面を押さえる際に、樹脂ブロックにかかる力が適切に保たれるため、樹脂ブロックに押さえローラーによる押さえ跡が残りにくくなり、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【0026】
本発明において、好ましくは、スライス刃と、押さえローラーとの最近接距離が、スライス加工された研磨パッドの厚さの150%乃至500%の範囲内となるように位置決めすることを特徴としている。
【0027】
このように構成された本発明においては、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減しつつ、更に、スライス刃によりスライス加工された研磨パッドが滞りなく樹脂ブロックから剥離することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の研磨パッド製造装置及び研磨パッド製造方法によれば、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来の研磨パッド製造装置によるスライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみの例について示す概略図である。
図2】従来の研磨パッド製造装置によるスライス加工の際に生じる樹脂ブロックのたわみの例について示す概略図である。
図3】本発明に係る研磨パッド製造装置の一例を示す概略図である。
図4図3の研磨パッド製造装置のスライス刃付近を拡大して示す拡大概略図である。
図5】従来の研磨パッド製造装置により製造された研磨パッド面の厚みのばらつきと、本発明に係る研磨パッド製造装置により製造された研磨パッド面の厚みのばらつきとを示す、各研磨パッドの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図3は、本発明の好ましい実施形態の研磨パッド製造装置の一例を概略的に示す構成図である。樹脂ブロック1はスライス加工のため、載置台2の上に載置される。
【0031】
樹脂ブロック1は、これを薄くスライス加工することで研磨パッド11とされるブロックであり、ウレタン樹脂などを金型に注型することで作成される。本実施形態においては、ウレタン樹脂発泡体を使用しているが、硬質研磨パッドを製造するために使用可能なその他の樹脂を用いても良い。
【0032】
載置台2は孔(図示せず)の開いたポリカーボネート板であり、上面に樹脂ブロック1が載置される。載置台2の材質はポリカーボネートに限定されるものではなく、ステンレスなどの金属製であっても良い。載置台2の孔には、ポンプなどの減圧装置(図示せず)が接続されており、載置台2の孔から減圧することにより、載置台2上に載置された樹脂ブロック1を載置台2上に吸着固定できるように構成されている。載置台2には更に、後述するスライス刃3の初期位置と反対の側にブロック押さえ21が設けられており、樹脂ブロック1の側面下部が当接可能となっている。樹脂ブロック1を載置台2の上面に載置する際、樹脂ブロック1をブロック押さえに当接させて位置決めを行い、さらに載置台2の孔から減圧を行なうことで樹脂ブロック1の載置台2との接触面が載置台2の上面に吸着し、樹脂ブロック1が載置台2上の所定位置に固定される。
【0033】
スライス刃3は、載置台2上に固定された樹脂ブロック1の上面より所定距離(研磨パッドの厚さ分)だけ下方に配置され、樹脂ブロック1の表層部分をスライス加工するためのものである。スライス刃3は刃先31を有しており、スライス刃3と樹脂ブロック1とが相対移動することで、スライス刃3の刃先31が樹脂ブロック1の表層部分の側面で樹脂ブロック1に当たり、スライス加工が行なわれる。樹脂ブロックのうち表層部分がスライスされることで研磨パッド11が製造される。載置台2に対するスライス刃3(刃先31)の高さ位置は図示しない制御機構により、適宜制御可能である。
【0034】
押さえローラー4は、樹脂ブロック1の上面を押さえるためのローラーであり、本実施形態では金属製で表面バフ加工を施したフリーローラーを用いている。スライス刃3との位置関係が定められると、樹脂ブロック1との相対移動により研磨パッド11がスライスされる間、スライス刃3と押さえローラー4との位置関係は維持されたままとなる。なお、フリーローラーの他に、駆動ローラーなどを用いることも可能である。この場合、ローラーの回転速さと、樹脂ブロック1及びスライス刃3の相対移動の速さとを揃えることが好ましい。
【0035】
スライス刃3と押さえローラー4との詳細な位置関係について、図4を参照して更に説明する。図4は、本発明の実施形態に係る研磨パッド製造装置のうち、スライス刃3と押さえローラー4付近を拡大して示す概略図である。図示するように、スライス刃3の刃先31から水平方向に延ばした直線及び押さえローラー4の下端から鉛直方向に延ばした直線の交点と、スライス刃3の刃先31との距離が「a」で示されている。樹脂ブロック1の種類や研磨パッド11の厚みにもよるが、ウレタン樹脂発泡体で実験した結果、この距離aは10mm乃至100mm程度であることが好ましいことが分かった。
【0036】
また、載置台(図2には示されていない)を基準として、高さをみた場合、押さえローラー4の下端の高さ位置とスライス刃3の刃先31の高さ位置との差が「b」で示されている。この高さについて、押さえローラー4の下端とスライス刃3の刃先31は同じ高さとするか、押さえローラー4の下端をスライス刃3の刃先31よりも高くすることが好ましい。図3に示されているように、スライス刃3の刃先31によって、樹脂ブロック1の表層部分がスライスされて研磨パッド11となるため、押さえローラー4の下端とスライス刃3の刃先31は同じ高さとする場合、押さえローラー4の下端は研磨パッド11の厚さ分だけ樹脂ブロック1に沈み込む形になる。押さえローラー4の高さを過度に低くすると、樹脂ブロック1への沈み込みが大きくなり、スライス加工後の研磨パッド11に押さえローラー4が押し付けられた跡が残るおそれがある。このような跡は、厚みのばらつきと同様に研磨パッド11にとって好ましくない。その一方で、押さえローラー4の下端をスライス刃3の刃先31よりも高くすると、樹脂ブロック1への沈み込みは抑えられるが、高くしすぎると、樹脂ブロック1の表層部分上面からも離れることになり、樹脂ブロック1を押さえるという押さえローラーとしての役割を果たすことができなくなる。このため、スライスされた研磨パッド11の厚みのばらつきを低減する、という当初の目的を達成することができなくなるので、押さえローラー4の高さを過度に高くすることも好ましくない。
【0037】
ウレタン樹脂発泡体を用いて、厚さ約2.3mmの研磨パッドを製造する、という条件で実験した結果、押さえローラー4の下端とスライス刃3の刃先31は同じ高さとするか、押さえローラー4の下端をスライス刃3の刃先31よりも高くする場合もその上限を5.0mm程度にすることが好ましいことが分かった。この値は、樹脂ブロック1の種類や製造する研磨パッド11の厚みに応じて、適宜調整することが好ましい。
【0038】
さらに図4には、スライス刃3と押さえローラー4との最近接距離が「c」で示されている。スライス刃3によって樹脂ブロック1の表層部分からスライスされた研磨パッド11は、スライス刃3と押さえローラー4との間を通って送り出されるため、スライス刃3と押さえローラー4との最近接距離cは、スライス加工された研磨パッド11の厚さの150%乃至500%の範囲内にあることが好ましい。スライス刃3と押さえローラー4との最近接距離cをこのような範囲内に設定することで、スライス刃3によりスライス加工された研磨パッド11を滞りなく樹脂ブロック1から剥離することができる。
【0039】
スライス刃3と押さえローラー4は、スライス刃組立体として一体の構成とし、組立体内での微調整により上述の位置関係を満たすようにしてもよく、スライス刃3と押さえローラー4とを個別の装置として、それぞれの位置を制御して上述の位置関係を満たすようにしてもよい。
【0040】
このようなスライス刃3及び押さえローラー4と、載置台2上に固定された樹脂ブロック1とを相対移動させて、樹脂ブロック1にスライス加工を施し、研磨パッド11を製造する。安全上の要請から、スライス刃3及び押さえローラー4を固定して、載置台2を動かすようにすることが好ましいが、逆に載置台2を固定してスライス刃3及び押さえローラー4を動かすようにしても良く、載置台2とスライス刃3及び押さえローラー4を同時に動かすようにしても良い。
【0041】
このような構成を備えた研磨パッド製造装置によって製造された研磨パッドの例と、押さえローラー4を有していない従来の研磨パッド製造装置によって製造された研磨パッドの例のそれぞれの上面図を図5に示す。それぞれスライス方向は左から右に向かっており、その厚みが許容範囲内に収まっている領域は無地で、厚みが許容範囲を超えた領域は網掛けで示している。図5(a)は従来の研磨パッド製造装置によって製造された研磨パッドを示しており、スライス方向に沿って、スライスが終わる直前付近の領域で特に厚みにばらつきが発生し、許容範囲を超えていることがわかる。これは、スライス加工中の樹脂ブロック1のたわみが、スライス刃3の前方で集中的に発生し、スライスが終わる直前付近でそのたわみの影響が顕著に現れたものと考えられる。
【0042】
一方、図5(b)は本発明の実施形態に係る研磨パッド製造装置によって製造された研磨パッドを示しており、周縁部の一部で厚みの許容範囲を超えた領域が見られるものの、大部分の領域では、厚みが許容範囲内に収まっていることが分かる。本発明の実施形態に係る研磨パッド製造装置は、スライス刃3の前方で特に発生しやすい樹脂ブロック1のたわみを押さえローラー4によって抑制し、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することができることが分かった。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る上述の研磨パッド製造装置で研磨パッドの製造を行なったところ、従来の研磨パッド製造装置と比べて、研磨パッドの厚みのばらつきが低減された結果、研磨パッドの歩留まりが5%〜10%程改善することが分かった。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、様々な改変を施すことも可能である。例えば、スライス加工が進行し、載置台2上の樹脂ブロック1が徐々に薄くなるにつれて、スライス刃3の刃先31の高さと押さえローラー4の下端の高さを変えていくようにすることも可能である。図1及び図2を参照して上述したように、樹脂ブロック1の厚さによって、樹脂ブロック1のたわみの現れ方が変わるため、状況に適合したスライス刃3と押さえローラー4との位置関係の制御を行なうことで、より適切に樹脂ブロック1のたわみを抑制し、製造された研磨パッドの厚みのばらつきを低減することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 樹脂ブロック
2 載置台
21 ブロック押さえ
3 スライス刃
31 刃先
4 押さえローラー
図1
図2
図3
図4
図5