(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つ以上の歪検出素子が形成された検出素子部および前記検出素子部より延出された配線部を有する基板と、基部および前記基部の一方の面から突出する操作部を有する操作体とを備え、前記基部の他方の面に前記基板が固着されてなる座標入力装置において、 前記基部の他方の面には、前記歪検出素子に対応する領域以外の部分に少なくとも1つ以上の第1の溝が形成されており、前記操作部の中心軸近傍に穴部が形成されており、前記第1の溝は前記穴部につながっていることを特徴とする座標入力装置。
前記歪検出素子は、前記操作部の中心軸上の点を略中心として、前記基板の表面に互いに90度の間隔で4つ形成され、前記第1の溝は前記4つの歪検出素子に対応する領域の間を通るように形成されることを特徴とする請求項1に記載の座標入力装置。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンまたはゲーム機は、操作者がスティック等の棒状の操作部位を指で傾斜させる入力操作を電気信号として読み取り、画面の中の例えば編集位置の選択やカーソルの動作等に反映させる、座標入力装置を備えていることがある。
【0003】
また、そのような座標入力装置は、組み立て工程時のミスによって、入力操作の検出感度が悪くなる場合、不良品となって、検査除去する費用が発生するので、製造コストが大きくなる。そのため、そのような座標入力装置の検出感度に係る構成は、組み立て易く、且つ、検出感度の悪くなる状態になり難い構造を備えていることが好ましい。
【0004】
従来の座標入力装置としては、特許文献1に記載の角柱形状の突出部を備える座標入力装置が知られている。
【0005】
特許文献1に記載の座標入力装置について説明する。操作体を傾倒操作することによって操作体を所定の形状に変形させ、その変形によって所定の位置に配置した歪み検出素子に応力をかけ、その歪み検出素子の電気抵抗を変化させる装置である。このような座標入力装置では、合成樹脂を成形してなる操作部材と、フレキシブル基板を有している。操作部材は、基部と四角柱状の操作部とからなる。また、フレキシブル基板は、フィルム基材上に歪み検出素子と配線とが形成された平面形状を有する配線基板である。ここで、基部の下面とフレキシブル基板の上面とは、接着剤などを用いて、固着される構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなスティック等の棒状の操作部位を指で傾倒させる入力操作を電気信号として読み取る座標入力装置は、操作者からの傾倒操作によって、設計どおりに変形するように配慮された構成となっていることが好ましい。そのために、その座標入力装置の部材間を接合する接着剤層は、余分な接着剤または気泡を含むことなく均一な厚さに設けられていることが好ましい。しかしながら、基部の下面とフレキシブル基板の上面を接着する際に、余分な接着剤がはみ出したり、気泡を含んで接着剤層が不均一に形成されることがあり、検出感度の低下や誤検出を引き起こすおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決して、余分な接着剤または気泡を逃がす構造を設けることによって、接合部への気泡の混入や厚みの不均一、接合部の外部への余分な接着剤のはみ出しを抑制し、検出感度の低下や誤検出のない座標入力装置を提供するものである。また、接合部の外部への余分な接着剤のはみ出しを抑制することで、外観不良や組み立て不良の起こり難い座標入力装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、請求項1に記載の座標入力装置は、1つ以上の歪検出素子が形成された検出素子部および前記検出素子部より延出された配線部を有する基板と、基部および前記基部の一方の面から突出する操作部を有する操作体とを備え、前記基部の他方の面に前記基板が固着されてなる座標入力装置において、前記基部の他方の面には、前記歪検出素子に対応する領域以外の部分に少なくとも1つ以上の第1の溝が形成されて
おり、前記操作部の中心軸近傍に穴部が形成されており、前記第1の溝は前記穴部につながっている。これによれば、座標装置を組み立てるとき、基板を操作体の下面へ圧接しながら接着する工程で、余分な接着剤や気泡が溝に逃げるので、基部と検出素子部の接着層への気泡の混入や厚みの不均一が抑制される。そのため、入力操作の力による基部の変形(歪み)は、正確に歪検出素子に検出されるので、座標入力装置の検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
また、前記溝を通じて前記穴に接着剤が流れ込む余地が設けられることにより、さらに確実に基部と、検出素子部と、の気泡の混入や厚みの不均一は抑制されるので、座標入力装置の検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0011】
また、
請求項2記載の座標入力装置は、 前記歪検出素子は、前記操作部の中心軸上の点を略中心として、前記基板の表面に互いに90度の間隔で4つ形成され、前記第1の溝は、前記4つの歪検出素子に対応する領域を通るように形成される。これによれば、歪検出素子の間に溝が構成されるために、余分な接着剤や気泡を効果的に逃がすことが出来るので、基部と、検出素子部と、の気泡の混入や厚みの不均一は抑制され、座標入力装置の検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0012】
また、
請求項3記載の座標入力装置は、 前記第1の溝は、前記操作部の中心軸上の点で互いに交差する十字形状であり、前記歪検出素子に対して45度の間隔で形成されている。これによれば、歪検出素子の間に溝が構成されるために、余分な接着剤や気泡は、効果的に逃がすことが出来る。また、いずれの溝も各歪検出素子間の中央に均等に配置されるため、傾倒操作時の応力分布に溝が影響したとしても、各歪検出素子に同等の影響を与えるために、方向検出精度は確保される。
【0013】
また、
請求項4記載の座標入力装置は、前記基部の他方の面には、前記検出素子部に対応する領域の輪郭に沿って形成された少なくとも1つ以上の第2の溝が設けられている。これによれば、検出素子部に対応する領域の輪郭に沿って設けられた外周溝に余分な接着剤や気泡が流れ込むので、検出素子部の外側からの接着剤のはみ出し、気泡の残留を防ぐことができるようになって、検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0014】
また、
請求項5記載の座標入力装置は、前記基部の他方の面には、前記配線部に対応する領域の輪郭に沿って、少なくとも1つ以上の第3の溝が設けられている。これによれば、基部と配線部の接合面からはみ出ようとする余分な接着剤及び気泡は、側溝に流れ込んで、座標入力装置の外にもれ出ることはなくなるので、座標入力装置の外観不良は抑制される。また、基部と配線部の接合面での接着剤のはみ出しが検出素子部側へ回り込んで固着することも、防ぐことができる。
【0015】
また、
請求項6記載の座標入力装置は、前記基部は他方の面に凹部を有し、前記凹部は前記検出素子部および前記配線部に対応する形状で形成されている。これによれば、凹部に検出素子部および配線部の一部を収納することにより、基部を外部装置へ取り付ける際に、外部装置へ検出素子部および配線部が接触しにくくなり、接触による歪み等を発生させることがないため、座標入力装置の検出精度の低下や誤検出が抑制される。また、基板20の仮位置決めがしやすくなる。
【0016】
また、
請求項7記載の座標入力装置は、前記凹部の内側壁には、前記基板を位置決めするための少なくとも1つ以上の突起が形成されている。これによれば、基板を凹部に取り付ける際に、突起に突き当てることにより、所定の位置で位置決めすることができ、部品形状によるばらつきを小さくでき、また組立性を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の座標入力装置は、余分な接着剤または気泡を逃がす構造を設けることによって、接合部への気泡の混入や厚みの不均一、接合部の外部への余分な接着剤のはみ出しを抑制し、検出感度の低下や誤検出のない座標入力装置を提供するものである。また、接合部の外部への余分な接着剤のはみ出しを抑制することで、外観不良や組立不良の起こり難い座標入力装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態の座標入力装置1について、
図1から
図8を用いて説明する。
図1は、本発明の座標入力装置1の構成を説明する図であり、(A)は分解斜視図、(B)は斜視図である。
図2は、
図1(B)に示す座標入力装置1をZ2方向から見た下面図である。
図3は、
図2に示す切り取り線H−H‘において切断し、X1方向から見た断面に固定板600を取り付けた状態を説明する模式断面側面図である。
図4は、
図2に示す切り取り線I−I‘において切断し、Y1方向から見た断面に固定板600を取り付けた状態を説明する模式断面側面図である。
図5は、
図1(A)に示す操作体10をX2方向からみた側面図である。
図6は
図1(A)に示す操作体10をZ1方向からみた上面図である。
図7は、
図1(A)に示す操作体10をZ2方向からみた下面図である。
図8は、
図1(A)に示す基板の構成をZ1方向からみた上面図である。また、ここではZ1の向きを上、Z2の向きを下として説明する。
【0020】
座標入力装置1は、
図1から
図4に示すように、操作体10と、基板20と、を備えている。座標入力装置1は、スティック状の操作部位(操作部18に図示しないキャップをかぶせている)を指で傾倒操作させ、入力操作の方向に基づいた電気信号を出力する装置である。なお、基板20の上面と、操作体10の下面と、は対向して配置されているとともに、一部は接している。また、その接している面は接着剤等を用いて固着されている。座標入力装置1は、操作者からの操作力によって各部が変形し、基板20の下面に設けられた歪検出素子21が歪みを検出したときには、その歪みに基づいた電気信号を、基板20上に設けられた図示していない配線と端子を介して、図示していない外部の解析回路へ出力する。なお、歪検出素子21は、歪みにより検出部の寸法が変化したときに電気抵抗が変化し、その電気抵抗の変化に基づく出力をする素子である。座標入力装置1は、、外部装置の例えば平板状の部材の上面に固定されて用いられる構成となっている。この板を、便宜上、固定板600と呼ぶ。また、座標入力装置1は、操作部18に図示しないキャップを被せて用いる構成となっている。
【0021】
操作体10は、合成樹脂を一体成型してなる成型部材である。操作体10は、
図3から
図7に示すように、板状で上側から見たときに略長方形の基部11と、基部11の上面から突出する操作部18と、を備えている
【0022】
基部11は、基底部12と平坦部13と連結部14とを備えている。また、基部11の下面には凹部33があり、凹部33は操作部18の中心軸を略中心とした形状を持つ検出素子収納凹部33aと、検出素子収納凹部33aより基部11の端部まで延設される配線収納凹部33bよりなる。また、検出素子収納凹部33aの天井面より上方向に向かって、操作部18の中心軸を略中心とした穴部34が形成されている。
【0023】
連結部14は、操作部18の下端に隣接する部分である。
図6の上面図に示すように上側から見た場合に、連結部14の上端部近傍は、四角柱状の操作部18からXY平面に平行な方向に突出した部分を含み、操作部18の略四角形の形状を略円形の形状に変化させながら、外側の平坦部13へ向かう部分である。ここで連結部14と平坦部13の境界の輪郭は略円形となるように形成されている。この連結部14により、操作部18が傾倒操作されたときに発生する応力を基部11の比較的狭い領域に集中させることができる。なお、連結部14の中心軸は、操作部18の中心軸とは略同一となるように形成される。また、連結部14は、操作部18を中心とする全周において、Z方向の厚みが略同一となる形状に形成されていることが望ましい。また
図5に示すように連結部14の下端14b近傍は、R形状となっている方が、基部11(平坦部13)との境界部分への過剰な応力集中を避けることができる。平坦部13は、連結部14の下端14bの外周より、歪検出素子21に対応する位置を含む領域で、上面が平坦となっている領域である。このとき、平坦部13は、連結部14の下端14bの外周より、操作部18の中心軸を中心として、歪検出素子21に対応する位置を含む同心円までの領域を少なくとも含む領域で、上面が平坦となっていることが好ましい。基底部12は、基部11において平坦部13の外側の部位であり、基部11の土台となる部分である。
図6から
図7に示すように、基底部12のなす略長方形の四隅それぞれには、上下方向への貫通穴31が1つずつ設けられている。貫通穴31は、図示しないボルトネジおよび図示しないナットを用いて基底部12と、固定板600と、を固定するための穴である。
【0024】
凹部33は、基板20の一部を収納可能な形状を有している。検出素子収納凹部33aは、操作部18の中心軸を略中心として、基板20の検出素子部20aの形状より僅かに大きく形成される。ここでは、四隅を面取りされた略正方形の形状を有している。なお、検出素子収納凹部33aの天井面は、平面形状を有して設けられており、対応する基板20の一部(
図8に示す検出素子部20a)の上面を貼り付け可能な構成となっている。配線収納凹部33bは、検出素子収納凹部33aから延設された凹部であり、検出素子収納凹部33aのY2方向側の端面から基部11のY2方向側の端面まで貫通して設けられている。配線収納凹部33bは、配線部20bの形状よりも僅かに大きい形状で形成されている。なお、配線収納凹部33bの天井面は、平面形状を有して設けられており、対応する基板20の一部(
図8に示す配線部20bの一部)の上面を貼り付け可能な構成となっている。穴部34は、操作体10が成型される際に肉厚部で顕著となる収縮変形を防ぐための肉抜き穴である。穴部34は、操作部18の中心軸と略同一の中心軸をもちながら、基部11の下面(凹部33の天井面)から、上方向に向かって形成されている。
【0025】
凹部33は、溝部33d(第1の溝部)、外周溝33e(第2の溝部)、側溝33f(第3の溝部)および突起部15aを有している。
図7を用いてこれらについて説明をする。ここで、歪検出素子21に対応する位置は、検出素子収納凹部33aの領域内において、操作軸18の中心軸に対してX1方向、Y1方向、X2方向およびY2方向にある。(
図2を参照)。また
図7において、操作軸18は図示していないが、穴部34に中心軸と略同一の中心軸をもつ。
【0026】
溝33dは、検出素子収納凹部33a内で、操作部18の略中心軸上の点で互いに90度で交差する十字形状であり、穴部34につながるように設けられている。さらに、溝33dは、操作軸18の中心軸上の点を中心として、α方向と、β方向と、γ方向と、η方向と、に設けられている。ここで、α方向とは、Y1方向から時計回りに45度回転した方向のことを指す。β方向とは、X2方向から時計回りに45度回転した方向のことを指す。γ方向とは、Y2方向から時計回りに45度回転した方向のことを指す。η方向とは、X1方向から時計回りに45度回転した方向のことを指す。このように、操作部18の略中心軸を基準として、歪検出素子21と溝33dが均等な角度で配置されることにより、操作部18の傾倒操作時の応力分布に対して溝が影響したとしても、各歪検出素子に同等の影響を与えるために、方向検出精度は確保される。外周溝33eは、検出素子収納凹部33aの底面に形成され、検出素子部20aに対応する領域の輪郭の近傍に設けられている。検出素子部20aの輪郭形状に沿って設けられるが、全く同一の形状でなくてもよく、ここでは、略八角形の検出素子部20aに対して、検出素子部20aの輪郭に沿うように円形形状で設けられている。また、外周溝33eは、溝33dにつながって設けられている。側溝33fは、配線収納凹部33bの底面に形成され、配線部20bに対応する領域の輪郭の近傍に設けられ、配線部20bの輪郭形状に沿って設けられているが、同一形状でなくてもよい。突起部15aは、検出素子収納凹部33aの側壁15に形成され、側壁15の壁面より、検出素子収納凹部33aの内側(操作部18の中心軸の方向)に向かって、小さく突出している部分である。本実施例では、検出素子収納凹部33aの側壁の全体に渡って、所定の間隔で8個形成されている。基板20を凹部33に取り付ける際に検出素子部20aを検出素子収納凹部33aに収容する際に、突起部15aに突き当てることにより、所定の位置で点接触で位置決めすることで、部品形状等によるばらつきを小さくでき、また収納もしやすくなる。
【0027】
操作部18は、操作者が座標入力装置1に入力操作するときに、指で傾倒操作させる操作部位であり、操作部18の上部にキャップ等を付けて、操作者が指で操作しやすいようにして、使用される。操作部18は、
図3および
図4に示すように、基部11の中央部から上向きに突出した略四角柱の部位である。操作部18の上端部には、操作者が直接触れるキャップが取り付けられて使用されることが多く、操作時にキャップと操作部18とのズレや滑りが発生しにくくするために角柱状の構成となっている。また、操作部18のなす四角柱の各側面の上端部には、キャップの内側面と係止可能な凸部19が設けられている。
【0028】
基板20は、PETフィルムなど柔軟性の高いフィルムを基材としたフレキシブル基板であり、
図8に示すように、検出素子部20aと、配線部20bと、を備えている。検出素子部20aは、下面側に4つの歪検出素子21があり、配置位置の中心軸から見た角度がそれぞれ略90度の間隔で、また中心軸からの距離が略同一であるように配置されている。配線部20bは、図示しない配線により検出素子部20aとY2側の端部に形成された図示しない端子部が電気的に接続されており、歪検出素子21の検出に基づいて端子部より外部装置へ出力するように構成されている。
【0029】
基板20は、
図2に示すように操作体10の下面側にある凹部33に収納される。検出素子部20aは、それより僅かに大きい形状で形成された検出素子収納凹部33aに、また配線部20bはそれより僅かに大きい形状で形成された配線収納凹部33bにそれぞれ収納される。このとき、検出素子部20a上面と対向する検出素子収納凹部33aの天井面とは接着剤等により固着される。また、同様に配線部20b上面と対向する配線部収納凹部33bは接着剤等により固着される。またこのとき、4つの歪検出素子21の配置位置の中心軸は、操作体10の操作部18の中心軸と略同一となるように形成されている。また、歪検出素子21は、
図2、
図6に示すように操作部18の略四角柱の側面部の向いている方向と同一方向に配置されているが、これに限定されるものではない。また、本実施例では、基板20の下面側に歪検出素子21が形成されているが、基板20の上面側に形成されてもよい。
【0030】
基板20は、
図8に示す歪検出素子21aを4つ備えている。歪検出素子21は、周囲に応力が掛かるなどの理由によって寸法が変化したとき、電気抵抗が変化する素子である。なお、歪検出素子21は、検出素子部20aのなす四隅を丸面取りされた正方形の形状の中心から、X1方向と、Y2方向と、X2方向と、Y1方向と、に等距離に離れて設けられている。即ち本実施例では、検出素子部20aが検出素子収納凹部33aに収納されたとき、溝(第1の溝)33dは歪検出素子21の間を通る位置に配置されている。
【0031】
図3、
図4に示すように、基板20の下面側には、検出素子部20aを保護したり、フレキシブル基板の強度を補強したりするために、カバーシートが配置され、カバーシートの上面で、基板20の下面側に接着剤等により固着される。
【0032】
図3、
図4に示す固定板600は、外部装置の取り付け部分に相当する部材を便宜的に表したものである。固定板600には、基底部12の貫通穴31に対応した位置にネジ穴または貫通穴が設けられて、ネジやナットで固定される。
【0033】
操作部18の上部には図示しないキャップが装着されて使用されるが、キャップは操作者が操作部18を傾倒操作するときに直接触れる合成樹脂からなる成型体である。キャップの下部および内側面には、凸部19を含む操作部18に対応した形状が設けられている。キャップは、操作部18の上方から圧入することによって、操作部18の上面と側面の一部を覆って配置される構成となっている。
【0034】
次に、操作体10と基板20とが接着剤によって接合されるとき、余分な接着剤と気泡とが溝33dと、外周溝33eと、側溝33fと、に入り込むことによって均一な厚さの接着剤層が形成される動作について
図1(A)および
図7を用いて説明する。接着剤は、熱硬化性接着剤が用いられるが、他の接着剤が用いられてもよい。
【0035】
座標入力装置1が組み立てられるとき、操作体10の下向きの面には、接着剤が塗布される。なお、その接着剤は、ここでは
図7に破線で示す円Aと、
図7に長一点鎖線で示す直線Bと、に沿って塗布される。なお、円Aは、外周溝33eのなす円と同一中心を有するとともに、外周溝33eのおよそ半分の長さの半径を有する円である。なお、直線Bは、外周溝33eのなす円のY2方向側の端部からY2方向に配置された直線である。下向きの面に円Aと、直線Bと、に沿って接着剤がやや多めに塗布された操作体10は、
図1(A)に示すように、基板20の上方向に配置される。このとき、操作体10の下面と、基板20の上面と、は対抗して配置される。基板20の上方向に配置された操作体10は、下方向にスライドして基板20と張り合わされる。このとき、基板20の側面は、突起部15aに突き当てられて、設計された位置に配置される。また、基板20の側面と、突起部15aと、が係合することによって、基板20は仮止めされて、設計された位置からずれたり、外れたりし難くなる。張り合わされた操作体10と、基板20とは治具によって圧接される。このとき、円Aに沿って塗布された接着剤は、圧接される操作体10と、基板20と、に挟まれることによって、円Aから穴部34の設けられた中心方向または外周溝33e方向に向けて広がる。そして、接合面に収まりきらない余剰分の接着剤と気泡とは、穴部34と、外周溝33eと、に入り込むため、接合面には均一な厚さの接着剤層が形成される。また、余剰分の接着剤と気泡との量が外周溝33eに収まりきらないほどに多い場合、外周溝33eから溢れた接着剤と気泡とは、突起15aと側壁15の間に流れ込むかまたは溝33dを通って、穴部34へ流れ込む。また、このとき、直線Bに沿って塗布された接着剤は、圧接される操作体10と、基板20と、に挟まれることによって、直線Bから外周溝33eと、側溝33fと、配線収納凹部33bのY2方向側の端部と、に向けて広がる。そして、接合面に収まりきらない余剰分の接着剤と気泡とは、外周溝33eと、側溝33fと、に流れ込む。また、配線収納凹部33bのY2方向側の端部から溢れる。そのため、接合面には均一な厚さの接着剤層が形成される。治具によって圧接された操作体10と、基板20と、は予め所定の温度に加熱された熱風乾燥炉に投入され、所定の時間加熱される。なお、所定の温度とは、接着剤が硬化する温度である。なお、所定の時間とは、接着剤が所定の温度で硬化終了までにかかる時間である。
以上の工程を経ることにより、操作体10と、基板20と、の接合界面には、均一な厚さの接着剤層が形成される。
【0036】
このように、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、1つ以上の歪検出素子21が形成された検出素子部20a及び検出素子部20aより延出された配線部20bを有する基板20と、基部11と基部11の上面から突出する操作部18を有する操作体10と、を備え、基部11の下面に基板20が固着されてなる座標入力装置1において、基部11の下面には、歪検出素子21に対応する領域以外の部分に少なくとも1つ以上の溝33dが形成されている。これによれば、座標装置を組み立てるとき、基板20を操作体10の下面へ圧接しながら接着する工程で、余分な接着剤や気泡が溝に逃げるので、残留気泡の影響によって発生する、基部11と、検出素子部20aと、の気泡の混入や厚みの不均一が抑制される。そのため、入力操作の力による基部11の変形(歪み)は、正確に歪検出素子21に検出されるので、座標入力装置1の検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0037】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、基部11の下向きの面には、操作部18の中心軸近傍に穴部34が形成され、溝33dは穴部34につながっている。これによれば、溝33dを通じて穴に接着剤が流れ込む余地が設けられることにより、さらに確実に基部11と、検出素子部20aと、の気泡の混入や厚みの不均一は抑制されるので、座標入力装置1の検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0038】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、歪検出素子21は、操作部18の中心軸上の点を略中心として、基板20の表面に互いに90度の間隔で4つ形成され、溝33dは、4つの歪検出素子21に対応する領域の間を通るように形成される。これによれば、歪検出素子21の間に溝33dが構成されるために、余分な接着剤や気泡を効果的に逃がすことが出来るので、基部11と、検出素子部20aと、の気泡の混入や厚みの不均一は抑制され、座標入力装置1の検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0039】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、溝33dは、操作部18の中心軸上の点で互いに交差する十字形状であり、歪検出素子21に対して45度の間隔で形成されている。これによれば、歪検出素子21の間に溝33dが構成されるために、余分な接着剤や気泡は、効果的に逃がすことが出来る。また、いずれの溝33dも各歪検出素子21間の中央に均等に配置されるため、傾倒操作時の応力分布に溝33dが影響したとしても、各歪検出素子21に同等の影響を与えるために、方向検出精度は確保される。
【0040】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、基部11の下面には、検出素子部20aに対応する領域の輪郭に沿って形成された少なくとも1つ以上の外周溝33eが設けられている。これによれば、外周溝33eに余分な接着剤や気泡が流れ込むので、検出素子部20aの外側からの接着剤のはみ出し、気泡の残留を防ぐことができるようになって、検出感度の低下や誤検出が抑制される。また、余分な接着剤が接合部外部へのはみ出しも抑制されるので、外観不良や組立不良が抑えられる。
【0041】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、基部11の下面には、前記配線部20bに対応する領域の輪郭に沿って形成された少なくとも1つ以上の側溝33fが設けられている。これによれば、基部11と配線部20bの接合面からはみ出ようとする余分な接着剤及び気泡は、側溝33fに流れ込んで、製品の外にもれ出ることはなくなるので、座標入力装置1の外観不良は抑制される。また、配線収納凹部33bでの接着剤のはみ出しが検出素子収納凹部33aへ回り込んで固着することを、防ぐことができる。
【0042】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、基部11は、他方の面に凹部33を有し、凹部33は検出素子部20aおよび配線部20bに対応する形状で形成されている。これによれば、凹部に検出素子部20aおよび配線部20bの一部を収納することにより、基部11を外部装置へ取り付ける際に、外部装置が基板20へ接触しにくくなり、接触による歪み等を発生させることがないため、座標入力装置1の検出精度の低下や誤検出が抑制される。また基板20の仮位置決めがしやすくなる。
【0043】
また、本発明の第1実施形態の座標入力装置1は、凹部33を形成する基部11の内側壁15には、基板20を位置決めするための突起部15aが形成されている。これによれば、基板を凹部に取り付ける際に、突起部15aに突き当てることにより、所定の位置で位置決めすることができ、部品形状によるばらつきを小さくでき、また組立性を向上できる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0045】
上記実施形態では、接着剤は、
図7に破線で示す円Aと、
図7に長一点鎖線で示す直線Bに沿って塗布されているが、これに限るものではなく凹部33や基板20の形状や接着剤の特性によって、塗布位置は変更されて実施される。
【0046】
上記実施形態では、
図7に示すように、溝33dと外周溝33eはつながっていることが好ましいが、検出素子部20aの形状や接着剤の特性等によってはつながっていなくてもよい。また、外周溝33eと側溝33fとは、つながっていない構成となっていたが、これらは、つながっていてもよい。また、側溝33fのY2側の端部は基部11の下向きの側面を貫通せずに閉じた構造になっていてもよい。
【0047】
その他、本発明は要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。