特許第6270101号(P6270101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エルイーテックの特許一覧

特許6270101暗号回路のための切替手段を有するコンピュータチップ
<>
  • 特許6270101-暗号回路のための切替手段を有するコンピュータチップ 図000002
  • 特許6270101-暗号回路のための切替手段を有するコンピュータチップ 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270101
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】暗号回路のための切替手段を有するコンピュータチップ
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/10 20060101AFI20180122BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   H04L9/00 621Z
   A63F7/02 304Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-168677(P2013-168677)
(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公開番号】特開2015-37266(P2015-37266A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591107481
【氏名又は名称】株式会社エルイーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 絵里
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
【審査官】 青木 重徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−076566(JP,A)
【文献】 特開2008−148851(JP,A)
【文献】 特開2007−027937(JP,A)
【文献】 特開平11−221329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/10
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵ROMに書き込まれたユーザプログラムに基づきCPUにより作成されたデータに対する暗号化又は非暗号化を切換える遊技機用コンピュータチップであって、
前記遊技機用コンピュータチップが開発用チップであるか若しくは量産用チップであるかに基づき暗号回路をイネーブルにするか否かを決定する切換回路と、
前記切換回路で前記暗号回路をイネーブルにすると決定された場合、前記データを暗号化する暗号回路と、
前記暗号回路で暗号化された暗号データ、若しくは暗号化されていない前記データを外部機器へ送信するための通信回路と、
を備えた前記遊技機用コンピュータチップ。
【請求項2】
前記切換回路は、前記遊技機用コンピュータチップが量産用チップの場合、前記暗号回路をイネーブルにして前記データが暗号回路に送出されるようにし、前記通信回路は前記暗号回路で暗号化された前記データを伝送する、請求項1に記載の遊技機用コンピュータチップ。
【請求項3】
前記切換回路は、前記遊技機用コンピュータチップが開発用チップの場合、前記暗号回路をイネーブルにしないことにより前記データを暗号化せず、前記通信回路は前記CPUにより作成された平文の前記データを伝送する、請求項1に記載の遊技機用コンピュータチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシン等で代表される遊技機を制御するための遊技機制御用コンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ台等の遊技機は、風俗営業法に基づき国家公安委員会の規則に従い遊技機の認定及び型式の検定を受けて合格しなければならない。すなわち、ICチップメーカーにより生産されたEPROM内蔵のいわゆる開発用チップは、遊技機用マイクロコンピュータチップメーカーから遊技機開発メーカーに卸され、この開発用チップを用いて遊技機アプリケーションプログラムの開発や動作検証が行われるものであって、修正したプログラムをROM内に何度も書き込むことができる。
【0003】
開発用チップによる遊技機アプリケーションプログラムが、警察等の公的な監督機関から委託された第三者試験機関による検定に合格すると、遊技機開発メーカーは合格済みのアプリケーションプログラムをROMに書き込む量産用チップの製造段階に進むことになる。この量産用チップは、一旦ROMにプログラムを書き込んだ後では再書き込みはできず、所定のセキュリティコードがなければ正常にプログラムは動作しないようにすることによって、プログラムの不正な書き換え防止を図っている。
【0004】
遊技機開発メーカーが遊技機アプリケーションプログラムを開発するとき、通信回路が送出する通信データがきちんと送受信されているかを確認する必要がある。この通信データは、例えば遊技機ホールのサーバコンピュータに送られて出玉数の管理等に使用される。
【0005】
従来、遊技機と遊技機ホールのサーバコンピュータとの間で通信されるデータは暗号処理されていなかったが、任意の不正な手段によって通信経路上でデータが改ざんされてしまうリスクがあるため、暗号化のニーズが高まってきた。セキュリティ性を考慮すると、通信経路上で伝送されるデータを暗号化することが望ましいことは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通信データの暗号化によって確かにセキュリティ性は向上する。しかしながら、開発用チップも量産用チップと同じ様にデータ信号を暗号処理して送信すると、線間の信号を測定機器(例えば、デジタルアナライザー等)で捕捉し信号値の高低を検証しても、通信データが意図した通りに正常に送信されているかは、データが暗号化されていることから直接的には確認することができない。上述したように開発用チップの場合、遊技用アプリケーションプログラムの動作確認が何度も行うため、その度に暗号化データを復号化処理して暗号前の平文に戻してから検証をするとなると、非常に時間と手間がかかってしまい、アプリケーションプログラムの開発を効率的に行う上で支障が生じてしまう。
一方で、通信データの暗号化を行ってセキュリティ性の維持は確保したいというニーズを満たす必要もある。
【0007】
そこで、本発明は、開発用チップの場合に、チップ上に搭載された暗号化回路によって通信データが暗号処理されないようにし、開発用チップと量産用チップに応じて通信線に流すデータの暗号化/非暗号化が柔軟に切替えできるコンピュータチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遊技機用コンピュータチップは、内蔵ROMに書き込まれたユーザプログラムに基づきCPUにより作成されたデータを暗号化するか否かを判断する切換回路と、前記遊技機用コンピュータチップが開発用チップであるか若しくは量産用チップであるかに基づき暗号回路をイネーブルにするか否かを決定する切換回路と、前記切換回路で暗号回路をイネーブルにすると決定された場合、前記データを暗号化する暗号回路と、前記暗号回路で暗号化された暗号データ、若しくは暗号化されていない前記データを外部機器へ送信するための通信回路とを備えていることを特徴とする。
【0009】
特に、切換回路は、遊技機用コンピュータチップが量産用チップの場合、暗号回路をイネーブルにしてCPUにより作成されたデータが暗号回路に送出されるようにし、通信回路は暗号回路で暗号化されたデータを伝送するように制御する。これに対し、遊技機用コンピュータチップが開発用チップの場合、切換回路は暗号回路をイネーブルにしないことによりデータを暗号化しないように制御するため、通信回路はCPUにより作成された平文のままのデータを伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遊技機用コンピュータチップによれば、開発チップのときの通信データは平文であるため通信データを復号化することなく意図した通りにデータ送信が行われているかを検証することができる。したがって、開発チップの段階で、ユーザプログラムの不具合があってプログラム修正の度にこの検証を行うことになっても生じる手間は従来より増加することはない。
【0011】
さらに、量産用チップと開発チップで暗号回路を搭載するかを区別しているわけではないため、チップメーカーは同一構成のコンピュータチップを製造すればよい。しかも、遊技機開発メーカーにとっても量産用チップと開発チップそれぞれに応じた通信データを遊技機アプリケーションプログラムで生成する必要もないので、量産用チップでセキュリティ性を向上するために暗号処理を追加することが遊技用アプリケーションプログラムの開発に影響することはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】遊技機に設置される制御基板内のコンピュータチップのブロック構成図である。
図2】コンピュータチップ内の切換回路における暗号/未暗号処理の切りわけを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、遊技機に設置される制御基板内のコンピュータチップ10のブロック構成図である。なお、実際の遊技機用コンピュータチップは、クロック発生回路、リセット回路、カウンタ・タイマー回路、メモリ制御回路、ROMチェック回路などの回路を搭載しているが、これらは本願発明とは直接的な関係がないために図示を省略している。
【0014】
CPU1は、センサ駆動やモータ回転を含む各種動作を実現する複数の回路を制御し、遊技機プログラムが所定の処理を行えるようにするよう司っている。
遊技機プログラム用ROM2は、遊技機上で実行すべきアプリケーションプログラムを格納する。開発用チップの場合、プログラム上に不具合があれば修正後のプログラムが再度ROM2に書き込まれる。CPU1は、ROM2内のアプリケーションプログラムに従ってデータを生成する。
【0015】
暗号/復号化回路4は、CPU1が生成したデータを必要に応じて暗号処理を行い、暗号化されたデータを平文データに復号化処理する。本実施の形態では、CPU1により生成したデータを暗号化するか否かを説明するため、特に断りのない限り、暗号/復号化回路4は暗号回路に等しいものである。
【0016】
暗号/復号化回路4で処理された暗号データは通信回路に出力される。
通信回路5は、I/Oポート(不図示)を介して暗号データを通信線6に送出して外部機器7に渡す。外部機器7とは、例えば、遊技機が設置されたホールにある出玉を管理するなどの処理を行うサーバコンピュータである。サーバコンピュータは、例えば、通信線6に送出された遊技機からの暗号データが入賞玉のカウント数であれば、所定の閾値を超えたカウント数であるか否かをチェックしたりする。
【0017】
切換回路3は、ROM2に格納されたアプリケーションプログラムが量産用チップのものか、開発用チップのものかを識別すると、CPU1により生成されたデータを暗号処理するか否かを切り分ける。開発用チップのアプリケーションプログラムの場合、通信回路5から送出する通信データは暗号化しないデータにしておく必要があるため、切換回路3は暗号/復号化回路4をディスエーブル状態に設定してCPU1が生成した生データが暗号化されないようにする。一方、量産用チップのアプリケーションプログラムの場合、通信データは暗号化する必要があるので、切換回路3は暗号/復号化回路4をイネーブル状態に設定し、所定の暗号アルゴリズムに従ってデータを暗号処理する。なお、暗号アルゴリズムは任意のものであってよい。
【0018】
したがって、通信回路5により外部機器7へ渡される通信データは、開発用チップか量産用チップかに応じて暗号データか未暗号データかの何れかとなる。図2は、上述した切換回路3における暗号化処理の切りわけをフローチャートで示したものである。
【0019】
なお、量産用チップのアプリケーションプログラムか、開発用チップのアプリケーションプログラムであるかの識別は、例えば、ROM2にアプリケーションプログラムを格納する際に、どちらのプログラムであるかを示す識別子を追加データとしてアプリケーションプログラムとともに記憶したり、或いはROM2にアプリケーションプログラムを格納後に任意の方法でCPU1に渡すようにする。
【0020】
また、切換回路3は、開発用チップの場合に暗号/復号化回路4をディスエーブル状態に設定すると説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、暗号/復号化回路4をデフォルトとしてディスエーブル状態にしておき、量産用チップの場合にはイネーブル状態にするように切換制御しても結果としては同一である。さらにまた、暗号/復号化回路4に対するイネーブル状態又はディスエーブル状態への設定を省略して、単に、開発用チップの場合はデータがダイレクトに通信回路5に渡されるようにしてもよい。
【0021】
いま、仮に、開発用チップにはそもそも暗号/復号化回路を備えず、量産用チップのみに暗号/復号化回路4を搭載するという構成にすれば、開発用チップにおける通信データは暗号化されず平文のままなので、通信線6上の通信データの検証は暗号化データよりも手間がかからないが、暗号/復号化回路を含む量産用チップが別途必要となってしまう。これに対して、本願発明の遊技用コンピュータチップ10は、開発用チップには暗号/復号化回路を搭載しないというチップ構造にするのではなく、開発用チップであっても量産用チップと同じ暗号/復号化回路4を搭載した同一チップ構成である。しかし、開発用チップの場合には、暗号/復号化回路4にデータが渡されず若しくは渡されたとしても暗号処理がされないように制御されており、暗号化/復号化回路4が実質的に機能していない状態を作り出す構成にすることで、同一の回路構成のコンピュータチップが開発用と量産用の両方にフレキシブルに対応できるという効果を生じさせている。
【0022】
なお、本実施形態では、暗号化を暗号/復号化回路4で行うものとして説明したが、ソフト処理によってデータの暗号化を行うようにしてもよい。
【0023】
暗号/復号化回路4における復号化機能について特に詳細な説明はしていないが、外部機器7等からの暗号データが通信回路5で受信されたときは、暗号/復号化回路4はこの暗号データを復号することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1 CPU
2 ROM
3 切換回路
4 暗号/復号化回路
5 通信回路
6 通信線
7 外部機器
8 バス
10 コンピュータチップ
図1
図2