特許第6270107号(P6270107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本信号株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人埼玉大学の特許一覧

<>
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000002
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000003
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000004
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000005
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000006
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000007
  • 特許6270107-自動列車制御装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270107
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】自動列車制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/40 20060101AFI20180122BHJP
   B61L 3/08 20060101ALI20180122BHJP
   B61L 23/16 20060101ALI20180122BHJP
   H04L 27/12 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   B60L15/40 A
   B61L3/08 A
   B61L23/16 Z
   H04L27/12 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-203251(P2013-203251)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70710(P2015-70710A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】岩上 顕夫
(72)【発明者】
【氏名】島村 徹也
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−178920(JP,A)
【文献】 特開2011−193632(JP,A)
【文献】 特開2005−86552(JP,A)
【文献】 特開2012−134981(JP,A)
【文献】 特開昭50−81212(JP,A)
【文献】 特開平7−107128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/00−15/42
B61L 3/00− 3/24
B61L 23/00−23/34
H04L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上装置から軌道回路に送信されたATC信号を車上装置で受信し、この受信したATC信号に基づいて列車制御を行う自動列車制御装置であって、
前記車上装置は、前記受信したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトし、シフトされた信号波形を所定区間で抽出し、その信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する復調処理手段を備えたことを特徴とする自動列車制御装置。
【請求項2】
前記復調処理手段は、受信したATC信号の入力部と、該入力したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトする周波数シフト部と、シフトされた信号波形を所定区間で抽出する信号抽出部と、その信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求めるフーリエ変換部と、周波数スペクトル上で信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する信号判別部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の自動列車制御装置。
【請求項3】
前記周波数シフト部と信号抽出部との間に、サンプリング周波数を低くする間引きを行うデシメーション部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の自動列車制御装置。
【請求項4】
前記信号抽出部で抽出する信号波形の所定区間は、1ビットであることを特徴とする請求項2又は3に記載の自動列車制御装置。
【請求項5】
前記信号抽出部で抽出された1ビットの信号波形は、その1ビットを前半と後半とに分けてその後の処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の自動列車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上装置から送信されるATC(Automatic Train Control)信号を車上装置で受信し、このATC信号に基づいて列車制御を行う自動列車制御装置に関し、詳しくは、ATC信号について周波数スペクトルを用いた復調処理により、S/N比が低下した場合でも車上装置でATC信号を正確に受信可能とする自動列車制御装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
自動列車制御装置は、軌道回路にATC信号を送信する地上装置と、列車に搭載され、前記軌道回路に流れるATC信号を受信する車上装置とを備え、前記受信したATC信号に基づいて列車制御を行うもので、従来の装置は、例えば特許文献1に記載されているように、先行列車の位置情報を含むATC信号を地上装置から受信した車上装置が、自列車と先行列車との離間間隔に応じて列車の許容運転速度を算出して速度パターンを作成し、速度パターンと実速度とを比較照査することにより自列車の速度制御を自動的に行うようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動列車制御装置においては、例えば駅に設置された地上装置からATC信号を軌道回路を介して列車の車上装置に送信しているが、ATC信号の送受信ケーブルの長さは約10kmである。ここで、ATC信号を伝送できる距離は、ノイズに対する信号のレベル(S/N比)によって決まる。ATC信号を車上装置で受信する際の信号レベルにより、ATC信号の伝送距離が制限される。駅間の距離が大きい(例えば、20kmを超える)場合には、両端のどちらの駅からもATC信号が届かないことがあり、そのため、駅間に地上装置を設置する必要がある。このように、駅間に地上装置を設置すると、その地上装置が故障した場合の修理、保守等が困難になることがあった。
【0005】
従来装置において、例えば、東海道新幹線で用いられているデジタルATC信号は、最小偏移(Minimum Shift Keying;以下“MSK”と略称する)変調方式を採用している。このMSK変調は、周波数変調の一種で、2種類の周波数にビットデータを対応させる。具体的には、中心周波数と、これに対する周波数偏移を定め、デジタル信号のうち、「中心周波数+周波数偏移」を情報「0」に対応させ、「中心周波数−周波数偏移」を情報「1」に対応させて、例えば速度情報を表したビット列を1フレームとして繰り返した波形を送信するようになっている。
【0006】
ここで、MSK変調方式で変調されたATC信号の復調方式としては、周波数検波が用いられている。この周波数検波においては、抽出帯域の異なる2個の帯域通過フィルタ(BPF)を用いることにより、前記「0」、「1」の情報を割り当てられた周波数成分を抽出し、BPFで抽出後のレベルによりビットデータを判別していた。このような復調方式に関連する先行技術として、特開2010−50546号公報に記載された、周波数偏移変調された信号を復調する復調手段がある。
【0007】
前記周波数検波では、中心周波数はノイズの少ないところを選んでいるが、適宜に選択した中心周波数によってはノイズが出る場合があり、前記2種類の周波数の波形を判別する際に、BPFを通過するノイズの影響により、他方の周波数の波形をノイズとして含んで出力することがある。その結果、「0」、「1」の情報を正確に判別できないことがあった。
【0008】
このように、前記周波数検波によるATC信号の復調方式では、BPFを通過するノイズの影響により、「0」、「1」の情報を正確に判別できないことがあり、車上装置のATC信号の受信距離が制限されていた。したがって、前述のように、駅間の距離が大きい場合には、駅間に地上装置を設置する必要があった。そして、駅間に地上装置を設置すると、その地上装置が故障した場合の修理、保守等が困難になることがあった。
【0009】
そこで、このような問題点に対処し、本発明が解決しようとする課題は、ATC信号について周波数スペクトルを用いた復調処理により、S/N比が低下した場合でも車上装置でATC信号を正確に受信可能とする自動列車制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明による自動列車制御装置は、地上装置から軌道回路に送信されたATC信号を車上装置で受信し、この受信したATC信号に基づいて列車制御を行う自動列車制御装置であって、前記車上装置は、前記受信したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトし、シフトされた信号波形を所定区間で抽出し、その信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する復調処理手段を備えたものである。
【0011】
また、前記復調処理手段は、受信したATC信号の入力部と、該入力したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトする周波数シフト部と、シフトされた信号波形を所定区間で抽出する信号抽出部と、その信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求めるフーリエ変換部と、周波数スペクトル上で信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する信号判別部と、を有するものとしてもよい。
【0012】
さらに、前記周波数シフト部と信号抽出部との間に、サンプリング周波数を低くする間引きを行うデシメーション部を設けてもよい。
【0013】
さらにまた、前記信号抽出部で抽出する信号波形の所定区間は、1ビットとしてもよい。
【0014】
また、前記信号抽出部で抽出された1ビットの信号波形は、その1ビットを前半と後半とに分けてその後の処理を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による自動列車制御装置によれば、車上装置に設けられた復調処理手段により、受信したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトし、シフトされた信号波形を所定区間で抽出し、その信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別することができる。この場合、前記フーリエ変換して周波数スペクトルを求めた状態で、信号周波数ちょうどにおいてピークを示す波形で信号出力を判別することが可能となり、従来の周波数検波に比べノイズの影響を小さくすることができ、S/N比が低下した場合でも車上装置でATC信号を正確に受信可能となる。したがって、地上装置から伸びるATC信号の送受信ケーブルの長さを従来よりも長くする(例えば、10km以上の長さ)ことができ、駅間に設置する地上装置を不要とするか、又は少なくすることができる。これにより、駅間の地上装置に対する修理、保守等を容易又は省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による自動列車制御装置の実施形態を示す全体概要図である。
図2】前記自動列車制御装置の車上装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】前記車上装置の復調処理手段の内部構成を示すブロック図である。
図4】前記復調処理手段の信号入力部に入力する、MSK変調されたATC信号の波形を示す説明図である。
図5】前記入力したATC信号の中心周波数をシフトした波形を示す図で、フーリエ変換した後の波形として示すグラフである。
図6】前記中心周波数をシフトした波形についてデータの間引きを行った状態を示す図で、フーリエ変換した後の波形として示すグラフである。
図7】前記ATC信号の波形を所定区間で抽出した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による自動列車制御装置の実施形態を示す全体概要図である。この自動列車制御装置は、地上装置から送信されるATC信号を車上装置で受信し、このATC信号に基づいて列車制御を行うもので、図1に示すように、地上装置1と、車上装置2とを備えている。なお、この実施形態では、デジタルATC信号を使用して地上装置1と車上装置2間の多情報通信を行うデジタルATC装置の例について説明する。
【0018】
前記地上装置1は、軌道回路T(T1,T2;T3,T4)に、最小偏移(MSK)変調方式で変調されたATC信号を送信するもので、列車3が走行する軌道(レール)4に沿って適当な間隔で建設された駅5(A駅、B駅)にそれぞれ設置されている。なお、駅5,5間の距離が大きい(例えば、20kmを超える)場合には、駅5,5の間に地上装置1を1個又は複数個設置することがある。地上装置1の内部構成は、例えば特開2003−226240号公報に記載された、従来公知のものと同様である。
【0019】
前記列車3には、車上装置2が搭載されている。この車上装置2は、前記軌道回路Tに流れるATC信号を受信するもので、列車3の例えば先端下部に設けられた受信コイル6を介して、列車在線中の軌道回路Tに流れるATC信号(MSK変調)を受信する。そして、前記受信したATC信号に基づいて列車制御を行うようになっている。
【0020】
図2は、前記車上装置2の内部構成を示すブロック図である。この車上装置2は、前記受信コイル6で受信したATC信号(MSK変調)のうち或る周波数より高い部分を通過させる高域通過フィルタ(HPF)10と、そのHPF10を通過した信号について、中心周波数の前後に或る範囲を有する周波数帯域の信号成分を抽出してノイズを除去する帯域通過フィルタ(BPF)11と、そのBPF11で抽出された信号を直流に直す整流回路12と、その整流回路12の出力信号のうち或る周波数より低い部分を通過させる低域通過フィルタ(LPF)13と、前記BPF11で抽出された信号について復調処理を行う復調回路14と、所定の周期のクロック信号を発生するクロック発生器15と、前記復調回路14で復調処理された結果を前記クロック発生器15のクロック周期に同期させて出力する同期回路16とを有している。そして、前記LPF13の出力は、列車の在線の有無を判断するデジタルATC信号の受信レベルであり、前記同期回路16の出力は、デジタルATC信号に含まれる一連の情報である電文信号である。
【0021】
ここで、本発明においては、前記車上装置2の復調回路14が、前記受信したATC信号の波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する復調処理手段とされている。この復調回路14は、図3に示すように、信号入力部20と、周波数シフト部21と、デシメーション部22と、信号抽出部23と、フーリエ変換部24と、信号判別部25とを有して成っている。
【0022】
前記信号入力部20は、図2に示すBPF11で抽出されたATC信号(MSK変調)を入力する入力部となるものである。周波数シフト部21は、前記入力したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトするものである。デシメーション部22は、前記シフトされた信号波形についてサンプリング周波数を低くする(整数分の1に下げる)間引きを行うもので、例えば間引きフィルタから成る。信号抽出部23は、前記シフトされ、間引きされた信号波形を所定区間で抽出するもので、例えば1ビットちょうどの区間の波形を抽出するようになっている。フーリエ変換部24は、前記抽出された信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求めるもので、例えば高速フーリエ変換(FFT)回路から成る。信号判別部25は、前記求められた周波数スペクトル上で信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別するものである。
【0023】
次に、このように構成された復調回路14の動作について、図4図7を参照して説明する。図4は、復調回路14の信号入力部20(図3参照)に入力する、MSK変調されたATC信号の波形を示す。MSK変調は、周波数変調の一種で、2種類の周波数にビットデータを対応させる。具体的には、或る周波数(mを任意の整数としてmHz)からなる中心周波数と、これに対する周波数偏移(nを任意の整数としてnHz)を定め、デジタル信号のうち、「中心周波数+周波数偏移」(m+n)Hzに情報「0」を割り当て、「中心周波数−周波数偏移」(m−n)Hzに情報「1」を割り当てて、例えば速度情報を表したビット列を1フレームとして繰り返した波形を送信するようになっている。図4では、横軸を時刻とし縦軸を振幅として、MSK変調方式で周波数変調されて入力した波形を示しており、その下部にMSK変調されたATC信号の中に含まれる電文信号のビット列を示している。
【0024】
前記のように入力したATC信号は、図3の信号入力部20から周波数シフト部21へ送られる。図5は、周波数シフト部21へ入力したATC信号の中心周波数をシフトした波形を示す図で、周波数シフトの状態を説明する便宜上、後段のフーリエ変換部24でフーリエ変換した後の波形として示す。この周波数シフトは、周波数シフト部21へ送られた、「中心周波数+周波数偏移」のATC信号、及び「中心周波数−周波数偏移」のATC信号について、「中心周波数」がゼロ(0Hz)になるようにシフトするものである。ここで、「周波数偏移」を前記のnHzとすると、「中心周波数+周波数偏移」のATC信号は「+nHz」に情報「0」が割り当てられ、「中心周波数−周波数偏移」のATC信号は「−nHz」に情報「1」が割り当てられる。この場合は、周波数分解能が1HzでなくともnHzであれば、フーリエ変換した後の波形上で信号のレベルを求めることができる。ただし、図5の状態では、サンプリング点(図中の黒丸)が少ないため、「+nHz」又は「−nHz」ちょうどにおいてピークを示す信号レベルを求めることはできない。
【0025】
前記のように周波数シフトされたATC信号は、図3のデシメーション部22へ送られる。図6は、前記中心周波数を0Hzにシフトした波形について、デシメーション部22でデータの間引きを行った状態を示す図で、間引きの状態を説明する便宜上、後段のフーリエ変換部24でフーリエ変換した後の波形として示す。このデータの間引きは、デシメーション部22へ送られたATC信号についてサンプリング周波数を低くするもので、サンプリング点(図中の黒丸)が多くなる。これにより、図5に示す状態に比べ周波数分解能が上がり、情報「0」、「1」が割り当てられた周波数ちょうどである「+nHz」又は「−nHz」においてピークを示す信号レベルを求めることができる。
【0026】
前記のようにデータの間引きが行われたATC信号は、図3の信号抽出部23へ送られる。この信号抽出部23では、前記シフトされ、間引きされた信号波形が所定区間で抽出される。図4に示すATC信号の波形において、符号Fで示すように、例えば1ビットちょうどの区間の波形を抽出する。ここでは、電文信号のうち情報「1」の部分を抽出している。この所定区間(1ビット)で抽出した波形を、図7に示す。この場合、1ビット当たりの区間が短いため、波形の末尾に振幅「0」を加えた状態で、後段のフーリエ変換部24でフーリエ変換を行う。
【0027】
前記のように所定区間で抽出されたATC信号は、図3のフーリエ変換部24へ送られる。このフーリエ変換部24では、前記抽出された信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求める。図5で示したATC信号の中心周波数を0Hzにシフトした波形の図、及び図6で示した前記中心周波数をシフトした波形についてデータの間引きを行った状態の図、は実際にはこの段階で前記フーリエ変換部24にてフーリエ変換したもので、この段階になって図5図6に示す周波数スペクトルが得られる。
【0028】
前記のようにフーリエ変換して周波数スペクトルが求められたATC信号は、図3の信号判別部25へ送られる。この信号判別部25では、前記求められた周波数スペクトル上で信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する。例えば、図6において、実線の波形Cにおいて、「+nHz」の信号レベルと「−nHz」の信号レベルとを比較(E)して、「−nHz」の信号レベルが高い場合は情報「1」であると判別して「1」を出力する。また、破線の波形Dにおいて、「+nHz」の信号レベルと「−nHz」の信号レベルとを比較(E)して、「+nHz」の信号レベルが高い場合は情報「0」であると判別して「0」を出力する。
【0029】
前記信号判別部25で判別された情報「0」、「1」の信号は、図2に示す同期回路16へ送られる。そして、その同期回路16から電文信号として出力され、列車3の列車制御を行う。この場合、情報「0」、「1」が割り当てられた周波数ちょうどである「+nHz」又は「−nHz」においてピークを示す信号レベルを求めることができるので、ノイズの影響を小さくすることができ(例えば、3dB程度改善)、ビット誤り率(BER)を改善することができる。したがって、S/N比が低下した場合でも車上装置2でATC信号を正確に受信可能とする。これにより、地上装置1から伸びるATC信号の送受信ケーブルの長さL(図1参照)を従来よりも長くする(例えば10km以上の長さ)ことができる。
【0030】
なお、図4及び図7では、図3に示す信号抽出部23で抽出する信号波形の所定区間は1ビットとしてその後の処理を行うものとしたが、図7に示すように、その1ビットを前半G1と後半G2とに分けてその後の処理を行うようにしてもよい。この場合は、信号波形の1ビットの前半G1又は後半G2のどちらかにノイズが入ったときに、ノイズが入っていない方だけを用いてその後の処理を行うことで、前述の情報「0」、「1」を判別する精度を向上することができる。これにより、ビット誤り率(BER)を更に改善することができる。
【0031】
また、図3に示す周波数シフト部21で、図5に示すようにATC信号の中心周波数をシフトした状態で、サンプリング点(図中の黒丸)が情報「0」、「1」の割り当てられた周波数「+nHz」又は「−nHz」ちょうどに当たる場合は、周波数シフト部21と信号抽出部23との間のデシメーション部22は設けなくてもよい。この場合は、復調回路14の構成を簡単とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…地上装置
2…車上装置
3…列車
4…軌道(レール)
6…受信コイル
14…復調回路(復調処理手段)
20…信号入力部
21…周波数シフト部
22…デシメーション部
23…信号抽出部
24…フーリエ変換部
25…信号判別部
1,T2,T3,T4…軌道回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7