特許第6270143号(P6270143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270143
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20180122BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180122BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180122BHJP
【FI】
   C09D133/14
   C09D175/04
   C09D7/12
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-75038(P2014-75038)
(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-196762(P2015-196762A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直之
(72)【発明者】
【氏名】山下 文男
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−064570(JP,A)
【文献】 特開2010−227753(JP,A)
【文献】 特開平07−316440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)2級水酸基含有重合性不飽和モノマー20〜50質量%及び(b)その他の重合性不飽和モノマー50〜80質量%からなるモノマー成分の共重合体である2級水酸基含有アクリル樹脂、(B)ポリイソシアネート化合物、(C)チタン化合物、及び(D)β−ジケトン類、β位に水酸基を持つケトン類、β位に水酸基を持つアルデヒド類及びβ位に水酸基を持つエステル類から選ばれる少なくとも1種のブロック剤を含有し、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の総量を基準として、ブロック剤(D)の量が0.7〜25質量%の範囲内であり、チタン化合物(C)とブロック剤(D)とのモル比((D)のモル数/(C)のモル数、の値)が、10〜100であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
上記チタン化合物(C)が、配位子の少なくとも1つとして、β−ジケトンを有するチタン化合物である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
ブロック剤(D)が、β−ジケトン類である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
2級水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準として、チタン化合物(C)が0.05〜5質量%の範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して得られる塗膜を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温かつ短時間での硬化性に優れ、ポットライフ(可使時間)も両立することができ、さらに、仕上り外観にも優れる硬化塗膜を得ることができる塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の他、工業製品の塗装において、近年、省エネルギー及び環境負荷の軽減の観点から、焼付硬化工程の短縮及び工程削減に向けての開発が活発になされている。
【0003】
自動車車体の塗装における工程削減としては、例えば、電着塗装がされた後、通常、中塗塗料及び上塗塗料が順に塗装され、従来は中塗塗料、上塗塗料が塗装された後、その都度、焼付が行われていたが、上塗塗料塗装後に、中塗塗膜と上塗塗膜の焼付を一度で行う焼付工程の削減の開発が進められており、今後はこの焼付工程が削減された塗装方式が主流になりつつある。
【0004】
焼付硬化工程そのものの短縮においては、硬化工程の低温化及び短時間化の要求が高まっている。
【0005】
このような低温短時間硬化の要求を満足させるための塗料としては、コスト面も勘案すると、水酸基含有樹脂を、ポリイソシアネート化合物を架橋剤として硬化させる、水酸基/イソシアネート基架橋系塗料が有力と考えられ、これまでにも検討がなされている。
しかしながら、従来技術では、低温短時間の硬化性の向上において、ポットライフ(可使時間(貯蔵性))との両立が困難であり、また、特に自動車塗装等において要求される高度の仕上り外観も満足させることは困難であった。
【0006】
特許文献1には、低温硬化性に優れた塗料組成物として、ピラゾール化合物でブロックされた3級イソシアネート基を1分子中に2個以上含有するピラゾールブロックポリイソシアネート化合物と、特定の水酸基価及び重量平均分子量を有する水酸基含有樹脂を必須成分として含有することを特徴とする塗料組成物が開示されている。しかしながら、この塗料組成物は、短時間条件での硬化性が不十分であった。
【0007】
特許文献2には、低温硬化性に優れた塗料組成物として、特定の水酸基価を有する、ポリエステルポリオールおよびアクリルポリオールを含む樹脂成分、ブロックイソシアネートを必須成分としメラミンを含有することがある架橋剤、少なくともジブチル錫のジカルボン酸塩からなるブロックイソシアネート解離触媒、および、顔料を含有する一液低温硬化型着色エナメル塗料が開示されている。しかしながら、この塗料組成物は、低温焼付条件での硬化性が不十分であった。
【0008】
特許文献3には、ポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含有し、ポリオール(A1)が環構造を有することを主たる特徴とする塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物とを含む硬化性塗料組成物、及び、更に、該硬化性塗料組成物に、金属有機化合物及び酸性物質を含むことを特徴とする硬化性塗料組成物が開示されている。
【0009】
しかしながら、この塗料組成物は、該金属有機化合物及び酸性物質を含む態様において、低温短時間硬化性には優れるが、ポットライフが不十分であり、また、得られる塗膜の仕上り外観が不十分となる場合があった。
【0010】
【特許文献1】特開2005−225907号公報
【特許文献2】特開平10−101996号公報
【特許文献3】特開2002−97412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低温かつ短時間での硬化性及びポットライフ(可使時間)に優れ、さらに、仕上り外観にも優れる硬化塗膜を得ることができる塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、特定の、2級水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分とする水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物、チタン化合物、及びβ−ジケトン等の特定の化合物から選ばれる少なくとも1種のブロック剤を含有する塗料組成物によれば上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、(A)(a)2級水酸基含有重合性不飽和モノマー20〜50質量%及び(b)その他の重合性不飽和モノマー50〜80質量%からなるモノマー成分の共重合体である2級水酸基含有アクリル樹脂、(B)ポリイソシアネート化合物、(C)チタン化合物、及び、(D)β−ジケトン類、β位に水酸基を持つケトン類、β位に水酸基を持つアルデヒド類及びβ位に水酸基を持つエステル類から選ばれる少なくとも1種のブロック剤を含有し、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の総量を基準として、ブロック剤(D)の量が0.7〜25質量%の範囲内であることを特徴とする塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋反応の触媒として、チタン化合物を含有するものであることから、低温かつ短時間での硬化性に優れている。さらに、β−ジケトン等の特定の化合物から選ばれるブロック剤が、特にチタン化合物に対して、高いブロック効果を有することから、極めてポットライフ(可使時間)にも優れた塗料組成物を得ることができる。
【0015】
これはチタン化合物が、低温短時間での硬化性に優れ、さらに、β−ジケトン等の特定の化合物から選ばれるブロック剤は、チタン化合物に対して、特異的に高いブロック効果を有するためであると考えられる。
【0016】
さらに、水酸基含有樹脂は2級水酸基を含有するものであり、その2級水酸基は通常、水酸基として用いられる1級水酸基と比べ、その反応速度が緩やかであり、金属化合物を触媒とするウレタン化反応の速度を、仕上り性の確保を十分たらしめる程に制御することができることから、仕上り外観にも優れた硬化塗膜を得ることができると考えられる。
【0017】
以上、本発明の塗料組成物によれば、低温かつ短時間での硬化性及びポットライフ(可使時間)に極めて優れ、さらに、仕上り外観にも優れる硬化塗膜を得ることができる塗料組成物が提供されるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の塗料組成物(以下、「本塗料」ということがある。)について詳細に説明する。
【0019】
本発明の塗料組成物は、特定の2級水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分とする水酸基含有アクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、チタン化合物、及びβ−ジケトン等の特定の化合物から選ばれる少なくとも1種のブロック剤(以下、ブロック剤(D)ということがある。)を含有する塗料組成物である。
【0020】
2級水酸基含有アクリル樹脂(A)
2級水酸基含有アクリル樹脂(A)は、(a)2級水酸基含有重合性不飽和モノマー及び(b)その他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を常法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0021】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、1分子中に2級水酸基と重合性不飽和結合とを各々1個有する化合物である。
【0022】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、塗膜の仕上り外観や塗料組成物のポットライフの観点から、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル部のアルキル基の炭素数が2〜8、特に3〜6、さらに特に3または4の2級水酸基を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸とエポキシ基含有化合物(例えば、カージュラE10(商品名)、ヘキシオン・スペシャリティー・ケミカル社製、ネオデカン酸グリシジルエステル)との付加物等を挙げることができる。これらの中でも特に、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。上記モノマー(a)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0023】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。
【0024】
その他の重合性不飽和モノマー(b)は、上記2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外のモノマーであり、具体的には、1分子中に1個の重合性不飽和結合を有する化合物である。不飽和モノマー(b)の具体例を、下記(1)〜(8)に列挙する。
【0025】
(1)酸基含有重合性不飽和モノマー
酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に酸基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物である。該モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を使用することができる。酸基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、アクリル樹脂(A)の酸価が、0.5〜30mgKOH/g程度、特に1〜20mgKOH/g程度となる量とすることが好ましい。
【0026】
(2)水酸基(2級水酸基を除く)含有重合性不飽和モノマー
1分子中に水酸基(2級水酸基を除く)と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物である。該モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物(2級水酸基を有するものを除く);ε−カプロラクトンを開環重合反応させることにより変性した水酸基含有モノマー(2級水酸基を有するものを除く)等を挙げることができる。
【0027】
ε−カプロラクトンを開環重合反応させることにより変性した水酸基含有モノマーとしては、市販品を使用することができ、市販品としては、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0028】
(3)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのエステル化物
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
上記アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのエステル化物のうち、仕上り外観の向上及び塗膜硬度の両立の観点から、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマー(b1)を使用することができる。
【0030】
炭素数6〜20の脂環式炭化水素基の代表例としては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基及びトリシクロデカニル基等を挙げることができる。
【0031】
不飽和モノマー(b1)の具体例としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等の有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。
【0032】
不飽和モノマー(b1)を使用する場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して、10〜60質量%、特に15〜50質量%、さらに特に20〜45質量%の範囲内であることが好ましい。
【0033】
(4)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等をあげることができる。これらのうち好ましいアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとして、ビニルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0034】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを構成成分とすることにより、水酸基とイソシアネート基との架橋結合に加え、アルコキシリル基同士の縮合反応及びアルコキシシリル基と水酸基との反応による架橋結合を生成することから硬化性を向上させることができる。
【0035】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して1〜20質量%、特に、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0036】
(5)芳香族系重合性不飽和モノマー
具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とすることにより、得られる樹脂のガラス転移温度が上昇し、また、高屈折率で疎水性の塗膜を得ることができることから、塗膜の光沢向上による仕上り外観の向上効果を得ることができる。
【0037】
芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して3〜40質量%、特に、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
【0038】
(6)グリシジル基含有重合性不飽和モノマー
グリシジル基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にグリシジル基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であり、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
【0039】
(7)重合性不飽和結合含有窒素原子含有化合物
例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0040】
(8)その他のビニル化合物
例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステル等を挙げることができる。バーサティック酸ビニルエステルとしては、市販品である「ベオバ9」、「ベオバ10」(以上、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を挙げることができる。
【0041】
その他の重合性不飽和モノマー(b)としては、前記(1)〜(8)で示されるモノマーを1種で、又は2種以上を用いることができる。
【0042】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の配合割合は、全モノマー量に対して、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)が20〜50質量%程度、好ましくは25〜45質量%程度であり、その他の不飽和モノマー(b)が、50〜80質量%程度、好ましくは55〜75質量%程度である。2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)の量が、20質量%未満であると、硬化性及び硬化塗膜の仕上り外観が不充分な場合があり、50質量%を超えると、硬化塗膜の仕上り外観が不充分な場合がある。
【0043】
塗膜の仕上り外観向上の観点から、アクリル樹脂(A)中の水酸基含有重合性不飽和モノマー全量のうち、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)を50〜100質量%含むことが好ましく、80〜100質量%含むことがより好ましい。
【0044】
上記重合性不飽和モノマー(a)及び(b)からなるモノマー混合物を共重合して2級水酸基含有アクリル樹脂(A)を得ることができる。
【0045】
上記モノマー混合物を共重合して2級水酸基含有アクリル樹脂(A)を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を好適に使用することができる。
【0046】
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール1000(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどを挙げることができる。
【0047】
これらの有機溶剤は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができるが、アクリル樹脂の溶解性の点から高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用することが好ましい。また、さらに高沸点の芳香族系溶剤を好適に組合せて使用することもできる。
【0048】
2級水酸基含有アクリル樹脂(A)の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のそれ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0049】
アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、塗膜の仕上り外観及び硬化性の観点から、2000〜50000程度、特に、5000〜30000程度であることが好ましい。
【0050】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。 ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、塗膜の硬化性及び仕上り外観の観点から、−10〜30℃程度、特に、−5〜20℃程度であることが好ましい。
【0051】
本明細書において、アクリル樹脂のガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出した。
【0052】
1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・・・ (1)
Tg(℃)=Tg(K)−273 (2)
各式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの質量分率、T1、T2、・・はそれぞれの単量体のホモポリマ−のTg(K)を表わす。
【0053】
また、アクリル樹脂(A)の水酸基価は、硬化性の観点から、90〜250mgKOH/g、特に120〜220mgKOH/g、さらに特に140〜200mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
【0054】
また、アクリル樹脂(A)の酸価は、塗料組成物の硬化性の観点から、0.5〜30mgKOH/g程度、特に1〜20mgKOH/g程度であることが好ましい。
【0055】
2級水酸基含有アクリル樹脂(A)は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0056】
本発明の塗料組成物において、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)以外の樹脂も必要に応じて併用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂(A)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂等をあげることができ、好ましいものとして、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有ポリウレタン樹脂をあげることができる。
【0057】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、常法により、例えば、多塩基酸と多価アルコ−ルとのエステル化反応によって製造することができる。該多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物などが挙げられ、また、該多価アルコ−ルは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0058】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステ)などのモノエポキシ化合物などを酸と反応させて、これらの化合物をポリエステル樹脂に導入しても良い。
【0059】
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0060】
水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは100〜250mgKOH/g、さらに好ましくは120〜220mgKOH/gの範囲内である。水酸基含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2500〜40000、さらに好ましくは5000〜30000の範囲内である。
【0061】
水酸基含有ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる水酸基含有ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0062】
ポリオールとしては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のアルコールなどをあげることができる。高分子量のものとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどをあげることができる。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどがあげられる。ポリエステルポリオールとしては前記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸などの2塩基酸との重縮合物、ポリカプロラクトンなどのラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオールなどをあげることができる。また、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ポリオールも使用することができる。
【0063】
上記のポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;等を挙げることができる。
【0064】
水酸基含有ポリウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは100〜250mgKOH/g、さらに好ましくは120〜220mgKOH/gの範囲内である。水酸基含有ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2500〜40000、さらに好ましくは5000〜30000の範囲内である。水酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−40℃〜85℃、さらに好ましくは−30℃〜80℃の範囲内である。
【0065】
上記の2級水酸基含有アクリル樹脂(A)以外の樹脂(より具体的には、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂等)を併用する場合、該2級水酸基含有アクリル樹脂(A)以外の樹脂は、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)の固形分総量に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは10〜50質量%の範囲内である。
【0066】
ポリイソシアネート化合物(B)
ポリイソシアネート化合物(B)は、本塗料組成物の硬化剤であり、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物(B)としては、ポリウレタン製造用として公知のもの、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0067】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、具体的には例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0068】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0069】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0070】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0071】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等をあげることができる。
【0072】
上記のうち、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HMDIということがある)、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIということがある)及びこれらの誘導体を特に好適に使用することができる。
【0073】
上記ポリイソシアネート化合物は、単独で、又、2種以上併用して使用することができる。
【0074】
ポリイソシアネート化合物(B)において、25℃における粘度は好ましくは200〜4000mPa・sであり、さらに好ましくは、250〜3500mPa・s、さらに特に好ましくは、300〜3000mPa・sである。200mPa・s未満であると、本発明の塗料組成物の硬化性が低下する場合がある。また、4000mPa・sを超えると、得られる塗膜の仕上り外観が低下する場合がある。
【0075】
ポリイソシアネート化合物(B)として、ジイソシアネート化合物の2量体以上の多量体を含有するものを低温短時間硬化性及び仕上り外観の観点から好適に使用することができる。
【0076】
ポリイソシアネート化合物(B)が、上記のような2量体以上の多量体を含有する場合、特に、ポリイソシアネート化合物の総量を基準にして、イソシアヌレート3量体の含有量が、30〜70質量%、特に40〜70質量%、さらに特に50〜70質量%、ウレトジオン2量体の含有量が、3〜30質量%、特に5〜25質量%、さらに特に8〜20質量%、その他の3量体以上の多量体の含有量が、0〜67質量%、特に5〜55質量%、さらに特に10〜42質量%の範囲内であるものを好適に使用することができる。
【0077】
上記において、イソシアヌレート3量体とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなる、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであり、ウレトジオン2量体とは、ジイソシアネートモノマー2分子からなる、ウレトジオン基を有するポリイソシアネートである。
【0078】
上記ポリイソシアネート化合物において、未反応のジイソシアネートモノマーは含まないことが好ましく、残存ジイソシアネートモノマー濃度は、好ましくは、1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0079】
チタン化合物(C)
チタン化合物(C)としては、具体的には、以下の式(1)で表されるチタン化合物を挙げることができる。
【0080】
Ti(L)n ・・・式(1)
式(1)において、Lは配位子であって、β−ジケトン、ハロゲン原子、アルキル基、アシルオキシ基、アシル基又はアルコキシ基を表す。nはチタンの価数と配位子の配位座数により定まる整数値である。
【0081】
β−ジケトンとしては、例えば、2,4−ペンタンジオン(別名;アセチルアセトン)、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ノナンジオン、2,8−ジメチルノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニルtert−ブチル及びヘキサフルオロアセチルアセトン等を挙げることができる。反応活性の点から、2,4−ペンタンジオン、またはヘキサフルオロ2,4−ペンタンジオンであることが好ましい。
【0082】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0083】
アルキル基としては、例えば、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。
【0084】
アシルオキシ基としては、例えば、炭素数3〜20のアシルオキシ基が好ましく、具体的には、ペンタノイロキシ基、ヘキサノイロキシ基、2−エチルヘキサノイロキシ基、オクタノイロキシ基、ノナノイロキシ基、デカノイロキシ基、ドデカノイロキシ基及びオクタデカノイロキシ基等が挙げられる。
【0085】
アシル基としては、例えば、炭素数3〜20のアシル基が好ましく、具体的には、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基及びオクタデカノイル基等が挙げられる。
【0086】
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及び2−エチルヘキシロキシ基等を挙げることができる。
【0087】
Lは、上記のいずれか1種でも良く、2種以上の組み合わせでも良い。これらの中でも、β−ジケトンまたはハロゲン原子が好ましい。
【0088】
さらに、2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロ2,4−ペンタンジオン、塩素原子または臭素原子がより好ましく、反応液や組成物への溶解性に優れる点から、2,4−ペンタンジオンが最も好ましい。
【0089】
配位子として、β−ジケトンが配位したチタン化合物のβ−ジケトン錯体としては、特に限定するものではないが、1種又は2種以上のβ−ジケトン配位子を含む化合物が好ましく、具体的には、チタニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)(別名;チタニウムテトラアセチルアセトネート)、チタニウムテトラ(3−メチル−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムテトラ(2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムテトラ(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(6−メチルヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、チタニウムオキシビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムオキシビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムオキシビス(2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムオキシビス(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムオキシビス(3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムオキシビス(6−メチルヘプタンジオネート)、チタニウムオキシビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムオキシビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0090】
これらのうち、チタニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)(別名;チタニウムテトラアセチルアセトネート)、チタニウムオキシビス(2,4−ペンタンジオネート)が特に好ましい。
【0091】
配位子として、アルコキシ基が配位したチタニウムアルコキサイドとしては、特に限定するものではないが、具体的には、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトラt−ブトキシド、チタニウムテトラ2−エチルヘキソキシド等を挙げることができる。
【0092】
これらの中で、触媒性能に優れ工業的に入手可能なことから、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシドを好適に使用することができる。
【0093】
配位子として、アシルオキシ基が配位したチタニウムアシルオキサイドとしては、特に限定するものではないが、具体的には、チタニウムジプロポキシビス(イソステアレート)等を挙げることができる。
【0094】
配位子として、ハロゲン原子が配位したチタン塩化物としては、特に限定するものではないが、具体的には、塩化チタニウム等を挙げることができる。
【0095】
チタン化合物(C)は、単独で又は、2種類以上を使用することができる。
【0096】
(C)成分の量は、低温短時間硬化性、ポットライフ及び仕上り外観の観点から、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対して、0.05〜5質量%、特に0.1〜4質量%、さらに特に0.2〜3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0097】
0.05質量%より少ないと低温短時間硬化性が不十分となる場合がある。また、5質量%を超えると、得られる塗膜の仕上り外観が不十分となる場合がある。
【0098】
チタン化合物(C)は、溶媒に溶解して使用することもできる。溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール類、トルエン、キシレン、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒等の溶媒を挙げることができる。
【0099】
本発明の塗料組成物において、触媒として、チタン化合物(C)に加えて、必要に応じて、チタン化合物(C)以外の触媒を使用することができる。
【0100】
上記チタン化合物(C)以外の触媒としては、ポリウレタン製造用触媒として従来公知の有機金属であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒等を挙げることができる。これらのうちスタナスジオクトエート、ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0101】
ブロック剤(D)
ブロック剤(D)は、β−ジケトン類、β位に水酸基を持つケトン類、β位に水酸基を持つアルデヒド類及びβ位に水酸基を持つエステル類から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0102】
具体的には、例えば、
β−ジケトン類:2,4−ペンタンジオン(別名;アセチルアセトン)、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2−メチルヘプタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2−ジメチルヘキサン−3,5−ジオン、2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、3−メチルペンタン−2、4−ジオン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸ブチル、プロピオニル酢酸tert−ブチル、ブチリル酢酸メチル、ブチリル酢酸エチル、ブチリル酢酸プロピル、ブチリル酢酸イソプロピル、ブチリル酢酸ブチル、ブチリル酢酸tert−ブチル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸ブチル、イソブチリル酢酸tert−ブチル、3−オキソヘプタン酸メチル、3−オキソヘプタン酸エチル、3−オキソヘプタン酸プロピル、3−オキソヘプタン酸イソプロピル、3−オキソヘプタン酸ブチル、3−オキソヘプタン酸tert−ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸メチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸エチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸プロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸イソプロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸tert−ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸プロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸tert−ブチル、ベンゾイル酢酸メチル、ベンゾイル酢酸エチル、ジベンゾインメタン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジtert−ブチル、マロン酸メチルtert−ブチル、
β位に水酸基を持つケトン類:ダイアセトンアルコール、
β位に水酸基を持つアルデヒド類:サリチルアルデヒド、
β位に水酸基を持つエステル類:サリチル酸メチル等を挙げることができる。
【0103】
上記した中でも、特にポットライフ延長効果が高く、且つ低温硬化性に優れた効果を発揮することから、β−ジケトン類が好ましく、なかでも、触媒活性に優れ工業的に入手可能なことから、2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を好適に使用することができる。
【0104】
上記ブロック剤(D)は単独で、又は2種類以上を使用することができる。
【0105】
ブロック剤(D)の量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対して0.7〜25質量%、好ましくは1.0〜20質量%、さらに好ましくは2.0〜15質量%である。
【0106】
ブロック剤(D)の量が、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対して、0.7質量%未満であるとポットライフ延長効果が不十分となる場合があり、25質量%を超えるとポットライフ延長効果は頭打ちになる上、得られる塗膜の硬化性が不十分となる場合がある。
【0107】
本発明の塗料組成物において、低温短時間硬化性及び得られる塗膜の仕上り外観ならびに硬化塗膜の耐水性、耐酸性等の観点から、ポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基と、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)中の水酸基との当量比(NCO/OH)は好ましくは0.8〜1.8、さらに好ましくは0.8〜1.2、さらに特に好ましくは0.80〜1.15の範囲内である。
【0108】
本発明の塗料組成物において、特に水分による影響(触媒能の失活等)を軽減する観点から、チタン化合物(C)とブロック剤(D)とを予め混合した仕掛品とし、該仕掛品を使用して、本発明の塗料組成物を配合することが好ましい。
【0109】
水分による影響の少ないチタン化合物(C)とブロック剤(D)との混合は、仕掛品を使用することなく塗料組成物を配合する際に混合してもさしつかえない。
【0110】
チタン化合物(C)とブロック剤(D)との混合は、例えば、常温で数時間(1〜3時間程度)攪拌して混合することにより行うことができる。その際、必要に応じて、窒素雰囲気下で行うことができる。
【0111】
チタン化合物(C)とブロック剤(D)とのモル比((D)のモル数/(C)のモル数、の値)は、10〜100、特に、15〜90、さらに特に、20〜80の範囲とすることが好ましい。
【0112】
上記モル比が10〜100の範囲外であると、低温短時間硬化性、ポットライフ及び仕上り外観のいずれかが不十分となる場合がある。
【0113】
その他の成分
本塗料は、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、チタン化合物(C)及びブロック剤(D)を必須成分とする塗料組成物であって、通常、有機溶剤を含有し、さらに必要に応じて、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤等通常、塗料の分野で用いられる塗料用添加剤を含有することができる。
【0114】
顔料としては、特に制限なく使用することができ、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カー
ボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等の体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等のメタリック顔料等をあげることができる。
【0115】
上記したこれらの顔料は単独で又は2種以上を使用することができる。顔料の含有量はその種類により異なるが、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対し、通常、0〜200質量%、好ましくは1〜100質量%程度である。
【0116】
また、着色顔料の含有量はその種類により異なるが、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対し、通常、0〜150質量%、好ましくは1〜100質量%程度である。
【0117】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤をあげることができる。
【0118】
紫外線吸収剤の塗料組成物中の含有量としては、通常、樹脂固形分総量に対して、0〜10質量%、特に0.2〜5質量%、さらに特に0.3〜2質量%の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
【0119】
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤をあげることができる。
【0120】
光安定剤の塗料組成物中の含有量としては、通常、樹脂固形分総量に対して、0〜10質量%、特に0.2〜5質量%、さらに特に0.3〜2質量%の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
【0121】
本発明の塗料組成物は貯蔵安定性の観点から、2級水酸基含有アクリル樹脂(A)、チタン化合物(C)及びブロック剤(D)と、ポリイソシアネート化合物(B)とが分離した2液型塗料とすることが好ましく、使用直前に両者を混合して使用することが好ましい。
【0122】
塗料組成物の塗装方法
本塗料を適用する被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等が好ましい。また、該金属基材又はプラスチック素材により形成された、自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両等の車体であってもよい。
【0123】
また、被塗物としては、上記金属基材や車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材、車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたもの、バンパー等プラスチック基材にプライマー塗膜が形成されたものであってもよい。
【0124】
本塗料の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装が特に好ましい。本塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0125】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行なう場合には、本塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0126】
被塗物に本塗料を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行われ、加熱は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用することができる。加熱保持温度(キープ温度)は、低温での硬化性に優れることから、60〜120℃、特に70〜110℃、さらに特に80〜100℃の範囲内であることが適している。加熱保持時間(キープ時間)は、本発明の塗料組成分は短時間での硬化性に優れることから、5〜15分間、特に、5〜12分間、さらに特に、5〜10分間の範囲内であることが適している。
【0127】
本塗料は、低温かつ短時間での硬化性及びポットライフ(可使時間)に優れ、さらに、仕上り外観にも優れる硬化塗膜を得ることができることから、工業製品全般の上塗りトップクリヤコート塗料として好適に使用することができる。本塗料は、自動車用塗料として特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また、塗膜の膜厚はいずれも硬化塗膜に基づくものである。
【0129】
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例1〜4
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で155℃に昇温した。155℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記表1に示すモノマーと重合開始剤からなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。ついで、155℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、酢酸ブチル32.5部で希釈することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(A−1)〜(A−4)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の質量固形分濃度(%)及び樹脂性状値を下記表1に示す。
【0130】
なお、水酸基含有アクリル樹脂(A−3)及び(A−4)は、比較例用の樹脂である。
【0131】
【表1】
【0132】
仕掛品(チタン化合物(C)とブロック剤(D)の混合)の製造
製造例5
攪拌器、冷却器、温度制御器、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に窒素雰囲気下、5g(18mmol)のチタニウムテトライソプロポキシドを仕込み、攪拌しながら、53g(528mmol)のアセチルアセトンを1時間かけて滴下した。常温で3時間攪拌して得られた仕掛品1はチタン含有量が1.5質量%、(D)/(C)のモル比が30であった。
【0133】
製造例6〜18
下記表2に示す組成で、製造例5と同様にして、各仕掛品2〜14を得た。
【0134】
併せて、仕掛品1〜14の(D)/(C)のモル比及び質量金属濃度(%)を下記表2に示す。
【0135】
なお、仕掛品10〜13は、比較例用の触媒である。また、仕掛品14は便宜上、仕掛品としているが、チタン化合物(C)そのものであり、ブロック剤(D)を混合していないものである。
【0136】
表2中の(*1)、(*2)はそれぞれ下記のとおりである。
【0137】
ニッカオクチックス錫(*1):商品名、オクチル酸錫、錫含有量28%、日本化学産業社製。
【0138】
K−KAT348(*2):商品名、オクチル酸ビスマス、ビスマス含有量25%、キングインダストリーズ社製。
【0139】
【表2】
【0140】
塗料組成物の製造
実施例1〜13及び比較例1〜7
前記製造例1〜4で得られた水酸基含有アクリル樹脂、上記製造例5〜18で得られた仕掛品及び後記表3に記載の原材料を用いて、後記表3に示す配合にて羽根型撹拌機を用いて攪拌して混合し、塗料化を行い各塗料組成物No.1〜20を得た。なお、表3に示す塗料組成物の配合は各成分の固形分質量比(ブロック剤(D)を除く)である。併せて(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対する、(C)成分及び(D)成分、それぞれの含有割合(質量%)も示す(表3中の、(A+B)に対するCの質量%、(A+B)に対するDの質量%の欄にそれぞれ記載)。
【0141】
表3におけるポリイソシアネート化合物(B−1)及び(B−2)は、それぞれ下記の意味を有する。
【0142】
ポリイソシアネート化合物(B−1):ヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリイソシアネート化合物、多量体の組成比は、イソシアヌレート3量体が53%、その他の3量体以上の多量体が47%。固形分100%、NCO含有率21.8%、粘度は25℃において3000mPa・s。
【0143】
ポリイソシアネート化合物(B−2):N3200、商品名、バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、固形分100%、NCO含有率23.0%、粘度は25℃において2500mPa・s。
【0144】
上記実施例1〜13及び比較例1〜7で得られた各塗料組成物No.1〜20は、酢酸ブチルを添加してフォードカップ#No.4を用いて20℃で25秒の粘度に調整した。
得られた各塗料組成物及び各塗料組成物を塗装して得られた試験板について以下の試験を行った。
【0145】
NCO反応率:FT−IR装置「FT/IR−420」(日本分光社製)を用い、塗料配合・粘度調整直後については液膜法により、また、加熱硬化(100℃で7分間キープ)後については試験板表面をATR法により測定することにより評価した。イソシアネートピーク(1690cm−1)強度とイソシアヌレートピーク(2271cm−1)強度を算出し、これらの比を算出することにより、NCO反応率を求めた。
【0146】
NCO反応率(%)=100−NCO残存率(%)
NCO残存率(%)=(加熱硬化後のイソシアネートピーク強度/イソシヌレートピーク強度)/(塗料配合直後のイソシアネートピーク強度/イソシヌレートピーク強度)×100
可使時間(ポットライフ):前記のごとく、製造、粘度調整した各塗料組成物の、初期、4時間後、及び6時間後の20℃における粘度をフォードカップ#No.4を用いて測定した。なお、ゲル化したものは下記表3中に、ゲルと記載した。
【0147】
試験板の作成
リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱し硬化させ、その上にアミラックTP−65−2(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料、白塗色)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた塗膜上に、上記実施例及び比較例にて製造・粘度調整した各塗料組成物を膜厚40μmとなるように塗装し、室温で7分間放置してから、100℃で7分間(塗板温度100℃のキープ時間)加熱して硬化させることにより各試験板を得た。
【0148】
ヌープ硬度:各試験板を20℃の恒温室に24時間放置後、TUKON(American Chain&Cable Company社製、micro hardness tester)にて「ツーコン硬度」を測定した。
【0149】
Knoop Hardness Number(KHN)とも言われるツーコン硬度は、四角錘ダイヤモンド圧子を一定の試験荷重で材料の試験面に押し込み、生じた菱形のくぼみの大きさから読み取られる塗膜の硬さを表したものであり、数値が大きいほど硬度が高いことを表す。
【0150】
仕上り外観:各試験板の塗膜表面の光の明暗パタ−ンを光学的に走査し反射光のコントラスト(強弱)を解析する装置であるBYK社製「Wave−Scan」により、波長領域600〜1000μmで測定される長波長値(longterm waviness)及び波長領域100〜600μmで測定される短波長値(shortterm waviness)を求め、夫々、仕上り肌のパラメ−タとして評価した。これらは、測定される光強度の分散値である。値が小さいほど仕上り肌(塗装面の平滑性)が良好であることを示す。
【0151】
試験結果を塗料配合とあわせて下記表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】