特許第6270167号(P6270167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6270167排気管保護リング及び/又はキャップを含む真空断熱ガラス(VIG)窓ユニット、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270167
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】排気管保護リング及び/又はキャップを含む真空断熱ガラス(VIG)窓ユニット、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20180122BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20180122BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C03C27/06 101D
   C03C27/06 101E
   C03C27/12 Z
   C03C27/06 101A
   E06B3/66
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-511505(P2015-511505)
(86)(22)【出願日】2013年4月29日
(65)【公表番号】特表2015-523300(P2015-523300A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】US2013038575
(87)【国際公開番号】WO2013169504
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】13/466,356
(32)【優先日】2012年5月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593005002
【氏名又は名称】ガーディアン・インダストリーズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ ジェフェリー エー.
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−058852(JP,A)
【文献】 特開平11−278877(JP,A)
【文献】 国際公開第03/084892(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第2835403(CN,Y)
【文献】 特開2001−253724(JP,A)
【文献】 特開昭61−029035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱窓組立品であって、
行で離隔された透明な第1及び第2基板と、
少なくとも離隔された前記第1基板と前記第2基板との間に配置されたシールであって、前記シールと前記第1及び第2基板がその間に大気圧未満の気圧のキャビティを規定している、シールと、
前記キャビティと連通できるように少なくとも部分的に前記第1基板のを通って延び、前記第1基板の主要外表面を超えて延びる排気管と、
前記真空断熱窓組立品の前記排気管を少なくとも部分的に囲むように前記第1基板の前記主要外表面に近接する位置に配置された保護リングと、
前記第1基板の上に積層された第3基板と、
前記排気管と、前記保護リングと、前記第3基板に形成された開口部と、のそれぞれの上に配置され、前記キャップにおける前記第3基板に対向する側に位置決め隆起部を備えているキャップと、
を含み、
前記位置決め隆起部は、前記第3基板に形成された開口部の内表面に係合している
真空断熱窓組立品。
【請求項2】
少なくとも前記第1基板と前記第2基板を互いに積層するため、前記第1基板と前記第3基板の間に配置されたポリマーを含む積層フィルムを更に含む
請求項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項3】
前記保護リングの高さが、前記排気管における前記第1基板の前記主要外表面を超えて延びる部分の高さより小さいか等しい
請求項1又は2に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項4】
前記保護リングが前記第1基板に接触及び/又は非接触で配置される際、前記保護リングの内径が、前記排気管における前記第1基板の前記主要外表面を超えて延びる部分を収容できるように十分に大きく、前記保護リングが、前記排気管における前記第1基板の前記主要外表面を超えて延びる前記部分とは接触しない、
請求項1〜のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項5】
前記排気管は、ガラスを含む、
請求項1〜のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項6】
前記保護リングは、前記第1基板の前記主要外表面に接着テープで固定される、
請求項1〜のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項7】
前記キャップは、前記第3基板の主要外表面に接着剤で固定される、
請求項のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項8】
前記第1及び第2基板は、ガラス基板である、
請求項1〜のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項9】
前記排気管における前記第1基板の前記外表面を超えて延びる部分は、封止されている、
請求項1〜のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項10】
前記第1基板と前記第2基板の間の前記キャビティに配置された複数のスペーサーを更に含む、
請求項1〜のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項11】
前記シールが端部シールである、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項12】
前記シールがガラスフリットを含む、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項13】
前記保護リングが全体的に円柱形状となる、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項14】
前記シールがバナジウム及び/又ははんだガラスを含む、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項15】
前記第1基板、前記第2基板、及び前記第3基板は、ガラスを含む、
請求項に記載の真空断熱窓組立品。
【請求項16】
行で離隔された第1及び第2ガラス基板と、
離隔された前記第1及び前記第2ガラス基板の外周部に近接する位置に配置された外周端部シールであって、前記端部シールと前記第1及び第2ガラス基板がその間にキャビティを規定し、前記キャビティが大気圧未満の気圧となっている、外周端部シールと、
前記第1ガラス基板から延び、前記第1ガラス基板の少なくとも一部を通って、前記第1ガラス基板の外表面を超えて延びる排気管と、
前記排気管の一部の周囲に配置された保護リングと、
前記第1ガラス基板の上に積層され、前記排気管と前記保護リングがその中に配置される開口部を備える第3ガラス基板と、
前記第3ガラス基板の前記開口部を覆い、前記キャップにおける前記第3ガラス基板に対向する側に、位置決め隆起部を備えているキャップと、
を含み、
前記位置決め隆起部は、前記第3ガラス基板に形成された前記開口部の内表面に係合している
積層真空断熱ガラス組立品。
【請求項17】
前記第1ガラス基板と前記第3ガラス基板の間に配置された積層フィルムを更に含む
請求項16に記載の真空断熱ガラス組立品。
【請求項18】
前記保護リングの高さが、前記排気管における前記第1ガラス基板の外表面を超えて延びる部分の高さより小さいか等しい、
請求項16又は17に記載の真空断熱ガラス組立品。
【請求項19】
前記シールは、バナジウム、バリウム、亜鉛の1つ又は複数を含む、
請求項1618のいずれか一項に記載の真空断熱ガラス組立品。
【請求項20】
ガラス基板を提供するステップと、
前記ガラス基板に複数のスペーサーを配置するステップと、
ガラス基板の第1表面の外周部に沿って端部シール材料を配置するステップと、
前記スペーサーと端部シール材料をその間に挟み込むように前記第1ガラス基板の上に別のガラス基板を設けるステップと、
前記ガラス基板間にキャビティを形成するためのシールを形成するために前記端部シール材料を加熱するステップと、
前記ガラス基板の1つに設けられた排気管を介して前記キャビティを真空引きするステップと、
前記排気管の一部を溶融させることで前記排気管を封止するステップと、
前記排気管の外周部を囲むように保護リングを配置するステップと、
前記排気管の少なくとも一部がその中を通って延びるように規定された開口部を備えた第3ガラス基板を、前記ガラス基板の少なくとも1つに積層するステップと、
前記保護リングと前記排気管の少なくとも前記一部とが配置され、前記第3ガラス基板に対向する前記キャップ側に位置決め隆起部を備えているキャップを前記第3ガラス基板の前記開口部の上に設けるステップと、
を含み、
前記位置決め隆起部は、前記第3ガラス基板に形成された前記開口部の内表面に係合している、
真空断熱ガラス組立品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年9月28日に出願された『真空断熱ガラス(VIG)窓ユニット排気管保護技術、及び/又はそれを組み込んだ真空断熱ガラス(VIG)窓ユニット』という標題の本発明の譲受人に譲渡された同時係属中米国特許出願第13/246,980号に関する。この特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。
【0002】
本開示内容は、全体として、排気管を含む真空断熱ガラスユニット構成に関する。開示内容は、より詳細には、VIGユニットに追加積層基板を装備することができる工程を含むがこれには限定されない様々な製造工程中に生じる損傷から排気管を保護するための、例えば、リングのような保護構成要素を含むVIGユニット構成に関する。開示内容はまた、追加積層基板上、排気管と保護リングの上を覆うように設けることができるキャップにも関する。開示内容は更には、損傷からVIGユニットの排気管を保護するための、保護構成要素又はリングを含むVIGユニットの例示的製造方法を説明する。
【背景技術】
【0003】
真空断熱ガラス(VIG)ユニットには、典型的には、その間に真空引きした又は低圧の空間を囲い込む、離隔された少なくとも2枚のガラス基板が含まれる。基板は外周端部シールで相互に連結するが、ガラス基板間の間隔を維持し、また基板間に存在する低圧環境のために生じる恐れのあるガラス基板の圧壊を回避するため、ガラス基板間にスペーサーを設けるのが典型的である。いくつかの例示的VIG構成は、例えば、米国特許第5,664,395号や第5,657,607号、第5,902,652号で開示されており、これら特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。
【0004】
図1図2に典型的なVIGユニット1とVIGユニット1を形成する構成要素を例示する。例えば、VIGユニット1は、その間に真空引きされた又は低圧の空間6を囲い込む、離隔された2枚のガラス基板2と3を含むことができる。ガラスシート又は基板2と3を、例えば、溶融はんだガラス製とすることができる外周端部シール4により相互に連結する。ガラス基板2と3の間の低圧空間/間隙の存在を考慮に入れた上でVIGユニット1の基板2と3の間隔を維持するため、ガラス基板2と3の間に支持柱/スペーサー5を配列したものを設けることができる。
【0005】
排気管8は、ガラス基板2の1枚の内表面からガラス基板2の外表面にある凹部11の底面に通じる開口部/穴10に、例えば、はんだガラス9により気密封止することができる。キャビティ6の内部を、真空引きし低圧状態とするため、吸引装置を排気管8に接続する。キャビティ6の真空引き後、真空空間を封止するため排気管8を溶接する。凹部11には封止済み排気管8は取り付けられたままとなる。例えば、ガラス基板2のような、ガラス基板の1枚の内表面に配置される凹部13内には、任意で化学ゲッター12を付けることができる。
【0006】
溶融はんだガラス外周端部シール4を備えたVIGユニットは、典型的には、基板2の外周部付近に溶体状ガラスフリットを置くことによって製造する。このガラスフリットペーストは、最終的にはガラスはんだ端部シール4を形成する。スペーサー/柱5とガラスフリット溶体を2枚の基板2と3の間に挟み込むように、基板2の上に第2基板3を置く。次に、ガラス基板2と3、スペーサー又は柱5とシール材料(例えば、溶体状ガラスフリット)を含む組立品全体を、少なくとも約500℃の温度に加熱する。その温度でガラスフリットは溶け、ガラス基板2と3の表面を濡らし、最終的に気密な外周部又は端部シール4を形成する。
【0007】
端部シール4の形成後、基板2と3の間に低圧空間6を形成するため、排気管8を通して真空引きを行う。空間6の気圧は、真空引き工程を経て、例えば、約10−2Torr未満のような大気圧未満の水準となるようにすることができる。空間又はキャビティ6における低圧を維持するために、基板2と3を気密封止する。大気圧に抗して、おおよそ平行な基板の間隔を維持するため、小型の高強度スペーサー又は柱5を基板間に設ける。基板2と3の間の空間6を一旦真空引きした後は、排気管8を、例えば、レーザー等を使用し溶融することで封止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
排気管8は、例えば、図1図2に例示するような基板の1枚の隅に配置することが多い。排気管8はガラス製とすることが可能で、ポンプ操作やその後の溶融作業を容易にするため、取り付けられているガラス基板の表面上に突出してもよい。排気管8はガラス製となるのが典型的であり、基板表面上に延びることとなるため、非常に壊れやすく損傷を受けやすい。この及び他の脆弱性の問題に対処するため、真空引きと溶融後に、管の上に保護キャップを配置することが時にある。保護キャップの形状と取付方法には多くのものがある。取り合わせには、援用し本明細書の一部としている上述の米国特許出願第13/246,980号で特定されているような短所を抱えているものがいくつかある。
【0009】
更には、多くの新しいVIG構成が開発されてきた。これらの構成のいくつかにより、例えば、図1図2を参照し上で説明したようなVIGユニット1に、例えば、排気口を備えた基板上に又は同基板を覆うように配置することができる追加積層板又は基板を装備することができる。例えば、PVB(ポリビニルブチラール)等のようなポリマーを主成分とする接着剤製の又は同接着剤を含有する積層フィルムの形状の積層用接着剤を用いて、従来型VIGユニットの基板の1枚に、追加積層板を接着することができる。
【0010】
その上に追加基板を積層したVIG構成における排気管の取り扱いについては更に別の問題が生じる。例えば、排気口が設けられているVIGユニットの片面に追加基板を積層する場合、追加積層基板と積層フィルムには、突出する排気管を収容する穴が設けられていなければならない。穴の直径は、積層基板と積層フィルムをVIGユニットの基板上に配置した時に、排気管周りに十分なゆとりをもたらすようなものでなければならない。穴を形成する際の製造許容差だけではなく、その後の保護キャップ取り付けのため、穴と保護キャップが同心円状の配置に、又は実質的に同心円状の配置にならない可能性がある。更には、追加積層基板に形成されるアクセス穴のガラス端は粗い仕上げものとなる可能性もある。例えば、穴と使用可能な保護キャップの位置合わせが満足にできていない、積層基板のアクセス穴周りの粗い仕上げの端部のような、これら要因は両方とも、最終的な積層VIGユニットの美的外観に望ましくない影響をもたらす。
【0011】
1つの可能な解決策は、積層VIGユニット形成のために下になるVIGユニットに積層基板をあてがう積層工程後、追加積層基板の穴の上にキャップをただ配置することとなろう。しかしながら、この提案した解決方法には数多くの欠点がある。例えば、上で特に述べたように、排気管は脆弱であり、積層工程中は露出状態となるため同工程中はより一層損傷を受けやすい状態となってしまう。別の解決方法は、積層工程完了時点で、単純に第1キャップの上に第2キャップを配置してしまうというものもあろう。この解決方法にもまた、例えば、最終的な積層VIGユニットにおいて、保護キャップを重ねた部分が相当な積層高さとなってしまうということを含め、多くの欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書で開示の発明のある例示的実施形態により、積層工程に先立って排気管の周りに工程用保護リングを設けることができる。これは上述の他のいずれの可能性のある手段との組み合わせでも実行することがおそらく可能であろう。積層工程中、工程用保護リングは、積層工程中に生じる恐れのある損傷から排気管を保護するバリアを提供する。例えば、積層フィルム及び/又は積層基板に形成する穴の端部が排気管に係合する場合、その際加わる力により排気管が壊れる又は損傷する恐れがある。工程用保護リングを排気管の露出部周りに装備する場合、工程用保護リングは、リングが無い場合に排気管に対して掛かってしまっていたかもしれない力を吸収し、それにより排気管に対する損傷可能性を軽減する。この関連で、工程用保護リングの高さを排気管の露出部に保護を与えるに十分な高さとするこができる。発明のある例示的実施形態によれば、工程用保護リングの高さは、封止済み排気管とほぼ同じ高さであることが好ましいといえよう。あるいは、工程用保護リングの高さは、工程用保護リングの高さが排気管を保護できるのに十分な高さである限りは、封止済み排気管の高さより低いもの又は僅かに低い高さとすることもできる。発明のある例示的実施形態により、完成状態の保護キャップの積層高さが更に高くなることを回避するため、工程用保護リングの高さを封止済み排気管の高さよりも実質的に大きくならないようにすることもまた好ましいといえよう。
【0013】
更には、工程用保護リングを設けることにより、積層工程中にキャップを設ける必要性を少なくし、発明のある例示的で非限定的な実施形態においては完全に無くしてしまうこともおそらく可能であるかもしれない。したがって、積層工程後、突出した排気管を収容すべく設けた積層フィルム及び積層基板の穴の上に、単一キャップを配置することができる。発明のある例示的実施形態において、積層フィルム及び積層基板の排気管、工程用保護リングと穴の上に、単一の不透明又は実質的に不透明な保護キャップを設けることによる更なる利点には、単一の外側の保護キャップが穴とその露出端部を覆い、それにより、それが無ければ見えてしまう排気管と穴の潜在的芯ずれ、即ち非同心円状配置を隠し、より望ましい美的外観をもたらすという点がある。
【0014】
発明の更なるある例示的実施形態により、保護キャップには更に、キャップの積層ガラス基板に対向する側の外周部付近に少なくとも1つの位置決め隆起部を、隆起部が積層基板に形成された穴の内側端部に係合するように設けることができる。この位置決め隆起部は、保護キャップへの追加保護強度をもたらし、一旦積層基板の穴の上に取り付けられた後は、保護キャップの移動量を更に少なくすることができる。更には、積層VIGユニットの美的外観を改善するため、横から見た高さが従来型保護キャップよりも低い保護キャップを設けることもまた有利となるといえよう。
【0015】
これら及び他の利点を提供するため、離隔された実質的に平行な第1及び第2基板と、離隔された前記第1及び第2基板の外周部付近に配置された外周端部シールであって、端部シールと第1及び第2基板がその間にキャビティを規定している、外周端部シールと、前記キャビティに隣接する前記第1基板の内表面から延び前記第1基板を通って前記第1基板の外表面を超えて延びる排気管と、前記第1基板の外表面を超えて延びる前記排気管の一部の周りに配置される保護リングとを含む例示的真空断熱ガラス(VIG)組立品がある。
【0016】
発明の更なる例示的実施形態により、積層真空断熱ガラス組立品を提供する。例示的積層真空断熱ガラス組立品には、離隔された実質的に平行な第1及び第2基板と、離隔された前記第1及び第2基板の外周部付近に配置された外周端部シールであって、その端部シールと第1及び第2基板がその間にキャビティを規定し、前記キャビティが真空引きされ大気圧未満の気圧となっている、外周端部シールと、前記キャビティに隣接する前記第1基板の内表面から延び前記第1基板を通って前記第1基板の外表面を超えて延びる排気管と、前記第1基板の外表面を超えて延びる前記排気管の一部の周りに配置された保護リングと、前記第1基板上に積層された第3基板であって、前記第3基板に前記排気管の一部と前記保護リングが延びる開口部を含む、第3基板と、前記第3基板の前記開口部の上に配置されたキャップとが含まれる。
【0017】
発明のある例示的実施形態による、真空断熱ガラス組立品のある例示的製造方法も提供する。例示的方法には、第1ガラス基板を提供するステップと、前記第1基板に複数のスペーサーを配置するステップと、前記第1基板の第1表面の実質的に外周部に沿って端部シール材料を配置するステップと、その間に前記スペーサーと端部シール材料を挟み込むように前記第1ガラス基板の上に第2ガラス基板を提供するステップと、前記第1及び第2ガラス基板と前記端部シール材料を加熱し前記第1と第2ガラス基板の間に気密封止したキャビティを形成するステップと、第1及び第2基板の1枚に設けた排気管を使用して前記キャビティを真空引きするステップと、前記排気管をその一部を溶融させることによって封止するステップと、前記第1及び第2基板の1枚の上に保護リングを配置し前記排気管の一部を囲み、前記保護リングを前記第1及び第2ガラス基板の1枚に接着連結するステップと、前記排気管の一部がそれを通して延びる前記第1基板又は第2基板の上に第3ガラス基板を積層するステップと、前記保護リングと前記排気管一部を配置する前記第3ガラス基板の開口部上にキャップを設けるステップとが含まれる。
【0018】
これら及び他の発明の実施形態と利点を、発明のある実施形態に関して以下図面を参照し本明細書では説明する。図面においては同じ参照番号は同じ構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来型VIGユニットの断面概略図を示す。
図2】従来型VIGユニットの上から見た平面図を示す。
図3】発明の例示的実施形態による積層VIGユニットの断面概略図を示す。
図4A】発明の例示的実施形態による工程用保護リングの上から見た平面図を示す。
図4B】発明の例示的実施形態による工程用保護リングと接着剤の底から見た平面図を示す。
図5】保護キャップを含む、発明の例示的実施形態による積層VIGユニットの断面概略図を示す。
図6A】発明の例示的実施形態による保護キャップと接着剤の底から見た平面図を示す。
図6B】発明の例示的実施形態による保護キャップの断面概略図を示す。
図7】発明のある例示的実施形態による積層VIGユニットの製造方法を説明するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明のある例示的実施形態を、前述の図面を参照し本明細書で詳細に説明する。図面では同じ参照番号は同じ構成要素を指す。本明細書に記載の発明の実施形態は、例示的であることを意図し、限定的ではないこと、また、添付の請求項の真の趣旨及び範囲全体から逸脱することなく、様々な変更が実施可能であることは当分野技術者には理解される、ということは理解されよう。
【0021】
発明のある例示的実施形態により、VIG窓ユニットには、VIG窓ユニットの第1及び第2透明ガラス基板の間のキャビティ内を低圧状態(例えば、大気圧未満)にする真空引き工程での使用後に封止した排気管の露出部を囲う、少なくとも1つの工程用保護リングを設ける。例示的工程保護リングは、特にVIGユニットを、例えば、積層フィルムを使用した追加ガラス基板の積層などの追加製造工程にかける場合、排気管(例えば、排気管の露出部)への損傷可能性に対して更なる保護をもたらす。VIG窓ユニットは、住宅、アパート建物、及び/又は商業用事務所建物のような建物において、窓として装備することができる。VIG窓ユニットはまた、建物ドア、冷凍庫ドア等においても窓として使用することができる。発明のある例示的実施形態では、VIG窓ユニットは、少なくとも約30%の可視光透過率を、より好ましくは少なくとも約40%の、更により好ましくは少なくとも約50%の、更にもっとより好ましくは少なくとも約60%又は70%の可視光透過率を備える。
【0022】
なお更に例示的実施形態により、追加透明ガラス基板の積層後、工程用保護リングと封止済み排気管の上に保護キャップを設けることができる。保護キャップは、積層高さを低くするため、及び、例えば、これらに限定されるものではないが、穴を覆いそれによって積層板、積層フィルム、排気管にある穴の芯ずれ、穴の仕上げの粗い端部等のため生じる可能性のある視覚的魅力に乏しい人工物を隠し、製品の美的外観を改善するため、横から見た高さを低くできることが好ましい。更には、保護キャップには、排気管と工程用保護リングを収容し、又は一旦穴に取り付けた後の保護キャップの移動量を制限するために設けた積層基板及び/又は積層フィルムの穴に、隆起部が係合するような位置と大きさに調整した位置決め隆起部を設けることができる。
【0023】
図3に発明の例示的実施形態による積層VIG窓ユニットの断面概略図を例示する。積層VIG窓ユニット20には、例えば、溶融はんだガラスの気密封止端部シール製の又は同シールを含有しうる端部シール4で互いに連結することができる、離隔された第1及び第2透明ガラス基板2と3が含まれる。発明のある実施形態においては、基板2と3はおおよそ同じ大きさであるか、及び/又は発明のある例示的実施形態においては同じ大きさとなることができる。しかしながら、発明の他のある例示的実施形態においては、例えば、VIGユニットの端部に近接する位置でおおよそL字型の段となるように、1枚のガラス基板は別のガラス基板より大きくなってもよい。従来型端部シール組成物は当技術分野で知られている。例えば、米国特許第3,837,866号、第4,256,495号、第4,743,302号、第5,051,381号、第5,188,990号、第5,336,644号、第5,534,469号、第7,425,518号、及び米国特許出願公開第2005/0233885号を参照のこと。これら特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。追加の適切な端部シール組成物は、2012年1月20日に出願された『バナジウムを主成分とするフリット材料向け熱膨張率フィラー及び/又はその製造及び/又は使用方法』という表題の米国特許出願第13/354,963号にて開示されている。この特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。これらの端部シール組成物は、VBZ(例えば、バナジウム、バリウム、亜鉛)を主成分とする組成物と呼称されることも時にはあろう。なお更なる例示的端部シール材料は、2011年2月11日に出願された米国特許出願第12/929,875号及び/又は2011年9月21日に出願された米国特許出願第13/238,358号にて開示されている。それぞれの特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。例えば、Ferro 2824Bや2824Gフリットを含む他のフリット材料を使用することもできる。例えば、2011年2月22日に出願された米国特許出願第12/929,874号を参照のこと。この特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。発明の異なる例示的実施形態では、シール4に他のいわゆる『無鉛』フリットを使用することもできる。
【0024】
基板2と3の間のキャビティ6に最終的に設定する大気圧未満の気圧を考慮に入れた上で基板2と3間の間隔を維持するために、支持柱/スペーサーを配列したもの5を、ガラス基板2と3の間に設けることもできる。発明のある例示的実施形態では、スペーサーの高さを、例えば、約0.1から1.0mmに、より好ましくは約0.2から0.4mmにすることができる。スペーサー5の大きさは、視覚的に目立つことがないように、十分に小さいものであることが好ましい。発明のある例示的実施形態によれば、スペーサーは、はんだガラス、ガラス、陶磁器、金属、ポリマー、サファイア、又はその他適切な材料製とするか又はそれらを含有するものとすることができる。更には、スペーサー5は、例えば、全体的に、円柱状、円状、球状、10セント硬貨形状、文字C形状、枕形状、又はその他の適切な形状をとることができる。
【0025】
排気管8は、例えば、はんだガラス9製の又ははんだガラス9を含有する(シール材料を使用して)気密封止することができるが、例えば、図3の基板3のようなガラス基板の1枚の内表面を通る穴を通りガラス基板3を通り抜けその外表面を超えて延びるように設けることができる。排気管8は(その先端を封止/閉鎖する前に)、例えば、真空ポンプを排気管8につなぎ、キャビティ6を真空引きし、例えば、大気圧より低い低圧状態にするというような、基板2と3の間のキャビティ6を真空引きする工程で使用する。好ましい例では、排気工程後、キャビティ6の気圧を、例えば、好ましくは約10−2Torr未満に、より好ましくは約10−3Torr未満に、更により好ましくは約5×10−4Torr未満にする。発明のある例示的実施形態では、排気管8の直径、即ち中心を通る距離は、例えば、約0.1から1.0mm、より好ましくは約0.3から0.7mm、更により好ましくは約0.5mmからとすることができる。
【0026】
溶融はんだガラスの外周端部シール4を使用しているVIG窓ユニットは、例えば、溶体状の、例えば、上述のものであればいずれでもよいが、そのようなガラスフリットを、例えば、基板2のような基板の1枚の外周部付近に配置することにより製造することができる。このガラスフリットは、最終的には、硬化後ガラスはんだ端部シール4を形成する。例えば、基板3のような第2基板を基板2の上に、2枚の基板2と3の間にスペーサー/柱5と溶体状ガラスフリットを挟み込むように置く。次に、ガラス基板2と3、スペーサー又は柱5、シール材料(例えば、溶体状ガラスフリット)を含む組立品全体を、シール材料(例えば、ガラスフリット)が溶融しガラス基板2と3の表面に濡れ、外周部/端部気密シール4を形成するのに十分な温度まで加熱する。次に、基板2と3の間に形成するキャビティ6を、上で説明の例示的方法で真空引きした基板2と3の間に低圧状態(例えば、大気圧未満の)を設定するため、排気管8と吸引装置を使用することができる。キャビティ6を、例えば、大気圧未満のような低圧状態にまで真空引きした後、ガラス排気管8の上部又は先端を、レーザー等を使用し管の露出部を溶融させることで封止することができる。排気管8(図3で例示)を封止することでキャビティ6を低圧状態に維持する。管8を封止後、管8の中央部はまだキャビティ6と流体連通しているが、管8の先端/上部は封止済みとなってしまっているため、外気は流体連通しない。
【0027】
上で説明したように、追加の透明ガラス基板15を、キャビティ6の境界を規定する基板2と3を覆うように又はその上に積層することができる場合が時にある。図3の実施形態においては、第3ガラス基板15は基板3と同じ大きさになってもよい。発明の好ましい例示的実施形態では、追加の積層ガラス基板15を、例えば、基板3のようなガラス基板の1枚の外表面に、例えば、PVB等のようなポリマーを主成分とする接着剤製の又は同接着剤を含有することができる積層フィルム14を使用して、接着することができる。追加積層ガラス基板15を提供するために、上で説明の封止済み排気管8の露出部を収容するために、追加ガラス基板15と積層フィルム14に穴11を開けることができる。穴11は、積層基板15と積層フィルム14をVIG窓ユニット20の基板3上に配置する際、排気管8周りに十分なゆとりをもたらす大きさとなる。穴11を作る際の製造許容差のため、基板の穴と突出する排気口8は同心円状の、又は実質的に同心円状の配置とならない可能性がある。更には、積層基板15に形成されるアクセス穴11のガラス端部が粗い端部となる可能性もあろう。例えば、基板3と15と排気口8の穴の位置が正しく配置されないことや積層基板15のアクセス穴11周りの粗い端部のような、これら要素は、最終的な積層VIGユニットの美的外観に望ましくない影響を与える可能性があろう。
【0028】
これら及び他の問題を克服するため、追加積層基板15を提供する積層工程後、排気管8を覆うように保護キャップ47を設けることが望ましいといえよう。しかしながら、これを実施するためには、上で考察したように、積層フィルム14と追加積層ガラス基板15を排気管8の露出部を覆うように配置し、それにより排気管8を、例えば、これらに限定されるものではないが、積層フィルム14及び/又は追加積層基板15の穴11の端部と脆弱なガラスの排気管8との接触によるような、積層工程中の損傷をもたらす危険性にさらすような製造工程に、排気管8をさらさなければならない。積層工程中の破損又は損傷から露出排気管8を保護するため、発明のある例示的実施形態により、図3のユニットを上から見て管8を囲むように、積層中に露出排気管8の周りに工程用保護リング16を設けることができる。
【0029】
発明のある例示的実施形態によれば、工程用保護リング16を、基板3に、排気管8を囲むように、例えば、3M VHB接合テープのような接着テープを、追加ガラス基板15を基板3に積層する積層工程に先立って使用して、接着することができる。好ましい事例によれば、工程用保護リング16の高さは、排気管8の露出部の高さと実質的に等しいものとすることができる。発明の更なる例示的実施形態によれば、工程用保護リングの高さを、工程用保護リングの寸法が排気管8に十分な保護をもたらす限りは、排気管8の露出部の高さより若干低くしても構わない。発明のなお更なる実施形態によれば、工程用保護リング16の高さは、積層VIGユニット20の外観に影響を与える恐れがある相当な積層高さとなることを回避するため、排気管8の高さよりも高くならないことが好ましい。図3図6の設定で上から見た場合、リング16は図4A〜4Bに示すように円形状となるか、或いは長円形状、実質的に円形状、実質的に正方形状、及び/又は実質的に長方形状となってもよい。
【0030】
図4A及び図4Bには、例示的工程用保護リング16の底から見た平面図を示している。工程用保護リング16は、発明のある例示的実施形態によれば、断面は全体的に円形で、それ以外は全体的に円柱形状であってよい。もちろん、上述の積層工程中に排気管8に十分な保護を与えることができる限り、他の適切な幾何学形状をとることもできる。図4Bは例示的工程用保護リング16の底から見た平面図であり、積層工程に先立ってVIGユニット20の、例えば、基板3のような基板の表面に工程用保護リング16を接着するために使用する、例えば、3M VHB接合テープ等のような接着剤17を示している。上で考察したように、発明のある例示的実施形態によれば、工程用保護リングの好ましい高さを、排気管8の露出部の高さより低く又は実質的に等しく設定することができるが、積層工程中に排気管8の露出部まで保護をもたらすに十分な高さとなることが好ましいといえよう。尚、積層に先立って工程用保護リング16を設けることにより、ある例示的事例では積層工程中にキャップを設ける必要性も回避される。したがって、以下で考察するように、排気管8の突出部を収容するために設ける積層フィルム14と積層基板15の穴11の上に単一キャップを配置することもできる。
【0031】
上で考察したように、積層工程完了後(即ち、ポリマーを主成分とする接着剤14を使用し基板15を基板3に積層した後)、露出排気管8を覆うことによって更なる保護を与えるために、また、例えば、処置をしない場合目につく恐れのある排気管8と穴の潜在的芯ずれ、即ち非同心円状配置を隠すことによってのように、積層中に露出排気口8を収容するために形成した積層フィルム14と追加積層基板15の穴11を覆うことによって、更なる美観改善を可能とするため、上で考察したように穴11の上に保護キャップを設けることができる。
【0032】
図5には、積層基板15、積層フィルム14、工程用保護リング16、及び保護キャップ47を含む、積層VIG窓ユニット20の断面図を例示する。図5図3と同様のものであるが、保護キャップ47の例示を含む。排気管8の露出部と上で考察した工程用保護リング16を収容する穴(図3の11を参照)の上に、保護キャップ47を配置することができる。保護キャップ47を、追加積層ガラス基板15の外表面に、例えば、3M VHB接合テープ等のような接着テープ19を経由して接着することができる。保護キャップ47の大きさは、穴11を完全に覆うことが可能で、積層VIGユニット20の美的外観が更に望ましいものとなるように横から見た高さが十分に低いものであることが好ましい。例えば、保護キャップ47は、排気管8、工程用保護リング16を収納し、積層基板15の穴11を完全に覆うに十分な直径と奥行きを備えた内部キャビティ21を備えている。キャップ基部の表面積は、積層基板15にしっかりと結合できるようにするため十分な接着テープを収容するに十分な面積でなければならない。
【0033】
保護キャップ47には任意で、全体的に円形である保護キャップ47の積層ガラス基板15に対向する側の外周部付近に、位置決め隆起部18も設けることができる(例としては、図5図6を参照のこと)。位置決め隆起部18は、保護キャップに更なる保護強度をもたらすため、積層基板15の穴11の内側部分の非常に近くに係合させるか、又は配置することが可能で好ましく、また更には、一旦積層基板15の穴の上に取り付けた後は、保護キャップの移動量を小さくすることができる(例としては、図5を参照のこと)。
【0034】
図6A図6Bは、それぞれ保護キャップ47の例示的実施形態の底から見た平面図と断面図である。図6Aに示すように、保護キャップ47は全体的に円形状となってよい。位置決め隆起部18は全体的にこの形状に合わせたものとなるが、保護キャップ47の積層基板15の穴と係合する側の外周部にその隆起部を設ける。図6Aに例示する発明の例示的実施形態による、例えば、3M VHB接合テープ等のような接着テープ19を示す。図6Bには、発明の例示的実施形態による保護キャップ47の断面図を例示する。図6Bに示すように、任意の位置決め隆起部18を、上で説明した保護キャップ47と一緒に提供することもできる。発明の好ましい例示的実施形態によれば、位置決め隆起部18の外径D2を、積層基板15に形成する穴と係合するように、又は穴とほぼ係合するようにすることができる。位置決め隆起部18の内径D1を、工程用保護リング16と排気管8の露出部を、保護キャップ47上部と位置決めリング18によって境界が規定されるキャビティ21に収容するに十分な大きさとなるようにすることができる。
【0035】
保護キャップ47は、全体的に円形状のものとして例示しているが、適切なものであればどのような形状でも使用することができることは理解されよう。更には、全体的に円形状の位置決め隆起部18との組み合わせで、全体的に多角形の外形のものを使用することができる。位置決め隆起部18は、追加積層基板15に形成する穴の内部に十分に係合する形状であることが好ましいことは理解されよう。別の例によれば、位置決めリング18は切れ目のない構造である必要性は無く、例えば、保護キャップ47の内部キャビティ21の外周部付近の複数の突出部として設けることもできる。発明のある例示的実施形態によれば、保護キャップ47を、例えば、金属、プラスチック、シリコン、又はその他いくつかの適切な材料製とするか又はこれら材料を含有するものとすることができる。更には、キャップ47とガラス基板の熱膨張率は、例えば、約25%以内の範囲で、より好ましくは約20%以内の範囲で、更により好ましくは約10〜20%の範囲内で互いに一致させることができよう。
【0036】
図7は、発明の例示的実施形態による積層VIGユニットの例示的製造方法を例示するフローチャートである。例えば、ガラス製の又はガラスを含有する基板のような第1基板をステップS1で提供する。次に、上で考察したようなスペーサー又は柱を、第1基板の第1主要面に設け、第1基板とステップS3で提供する第2基板との間の間隔を維持するに十分となるように離隔された位置に設置する。ステップS5では、例えば、上で考察したような端部シールを提供するフリット材料を、第1基板の外周端部付近に配置する(例えば、プリントする又は別の方法で塗布する)。例えば、ガラス製の又はガラスを含有する基板のような第2基板を、第1基板の上に設置し、柱又はスペーサーとフリット材料を挟み込み、それによって2枚の基板の間にキャビティを定める(S7)。次に、第1及び第2基板、スペーサー、及びフリット材料を含む組立部品を、気密端部シールを形成するに十分な水準まで加熱する(S9)。次に、2枚の基板の間に定めたキャビティを、例えば、大気圧未満となるような適切な真空水準まで、例えば、排気管8を使用して真空引きする(S11)。次に、キャビティを任意で、例えば、これに限定されるものではないが、2011年5月31日に出願された米国特許出願第13/149,085号や米国特許第6,692,600号で開示されているような、例えば、プラズマクリーニングのような適切な工程を使用してクリーニングすることができる(S13)。これら特許の開示内容は全て本明細書に援用し本明細書の一部とする。
【0037】
次に、排気管を、例えば、これらに限定されるものではないが、レーザー使用、管を他の熱エネルギーに曝露等により溶融するというような任意の適切な手段により、封止することができる(S15)。次に、上で開示及び説明した種類の工程用保護管を、露出した封止済み排気管周りに配置することができる(S17)。工程用保護管は、例えば、これらに限定されるものではないが、例えば、3M VHB接合テープのような接着テープによって第2基板に貼り付けることができる。ステップS19では、積層フィルムと追加基板を第2基板の上に配置し、封止済みの露出排気管と工程用保護リングを収容するための穴を設ける。例えば、積層フィルムは、例えば、PVBのようなポリマーを主成分とする接着剤製のもの又は同接着剤を含有するものであってよい。尚、そのようにして形成した積層VIGユニットは、露出排気管とそれを囲む工程用保護リングを収容する実質的に位置を揃えた穴を多く備える。次に、穴と露出排気管、工程用保護リングを覆うため、保護キャップ47を提供することができる(S21)。任意で、保護キャップの位置決め隆起部を積層ガラス基板の穴の内表面に係合させるべく配置することができる。
【0038】
本発明のある実施形態では、実質的に平行で離隔された実質的に透明な第1及び第2基板と、少なくとも離隔された第1基板と第2基板との間に配置されたシールであって、そのシールと第1及び第2基板でその間に大気圧未満の気圧のキャビティを定めている、シールと、キャビティと連通できるように前記第1基板の開口部を通って少なくとも部分的に延び前記第1基板の外表面を超えて延びる排気管と、真空断熱窓組立品の前記排気管を少なくとも部分的に囲むように第1基板の外表面に近接する位置に配置された保護リングと、を含む真空断熱窓組立品を提供する。
【0039】
直前の段落に記載の真空断熱窓組立品において、窓組立品は少なくとも前記第1基板の上に積層した第3基板を更に含むことができる。
【0040】
前2段落のいずれに記載の真空断熱窓組立品においても、少なくとも第1基板と第2基板とを互いに積層するため、前記第1基板と前記第3基板の間に配置されたポリマーを含む積層フィルムが存在することができる。
【0041】
前3段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、少なくとも前記排気管と前記保護リングの上に配置するキャップが含まれてもよい。前記排気管、前記保護リング、及び前記第3基板に形成した開口部の上にキャップを配置することができる。
【0042】
前4段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、キャップには前記キャップの前記第3基板に対向する側に位置決め隆起部を設けることができる。位置決め隆起部は、前記第3基板に形成する穴の内表面の非常に近い位置に係合させる及び/又は配置することができる。
【0043】
前5段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、前記保護リングの高さを、前記第1基板の外表面を超えて延びる前記排気管の一部の高さより低くするか又は実質的に等しくすることができる。
【0044】
前6段落のいずれに記載の真空断熱窓組立品においても、前記保護リングが前記第1基板に接触及び/又は非接触で配置される際、前記保護リングの内径を、前記第1基板の外表面を超えて延びる前記排気管の一部を収容できるように十分に大きく、前記第1基板の外表面を超えて延びる前記排気管の前記部分とはできる限り接触をしないようにすることができる。
【0045】
前7段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、前記排気管はガラスを含むことができる。
【0046】
前8段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、前記第1基板の外表面に接着テープで前記保護リングを固定することができる。
【0047】
前9段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、前記第1及び第2基板はガラス基板であってよい。
【0048】
前10段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、第1基板の外表面を超えて延びる排気管の一部を封止することができる。
【0049】
前11段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、前記第1基板と第2基板の間の前記キャビティに、複数のスペーサーを配置することができる。
【0050】
前12段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、シールは端部シールとすることができる。
【0051】
前13段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、シールにはガラスフリットを含むことができる。
【0052】
前14段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、保護リングは全体的に円柱形状をとることができる。
【0053】
前15段落のいずれかに記載の真空断熱窓組立品においても、前記シールにはバナジウム及び/又ははんだガラスを含むことができる。
【0054】
この明細書において発明のある例示的実施形態を説明及び開示しているが、本明細書に記載の発明の実施形態は、例示的であることを意図し、限定的ではないこと、また、添付特許請求の真の趣旨及び範囲全体から逸脱することなく、様々な変更が実施可能であることは当分野技術者には理解される、ということは理解されよう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7