特許第6270188号(P6270188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270188
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】回路遮断器の取外構造
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/40 20060101AFI20180122BHJP
   H02B 1/04 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   H02B1/40 A
   H02B1/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-26(P2017-26)
(22)【出願日】2017年1月4日
(62)【分割の表示】特願2012-73178(P2012-73178)の分割
【原出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-99276(P2017-99276A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川 良
(72)【発明者】
【氏名】古本 哲男
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−136611(JP,A)
【文献】 実開昭61−100836(JP,U)
【文献】 実開昭58−125321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器が母線の両端長手方向に対して短手の幅方向両側から並設接続される分電盤において、
プラグイン端子金具が設けられたプラグインタイプの回路遮断器を
分電盤の母線に接続された状態から取外すための回路遮断器の取外構造であって、
回路遮断器の外郭を構成する器体の母線に近い側を電源端子側とし、母線から離れる側を
負荷端子側とし、前記器体に設けられた操作部の側を正面側とし、前記母線が設けられた
取付板への取付面側を底面側としたとき、
前記母線の正面側において
底面側から正面側の方向に中央部が山形に盛り上がる形に形成された弾性片を、
前記弾性片の一端を固定端とするとともに他端を自由端として、
前記弾性片の前記正面側頂上付近に、直接該弾性片を正面側から押圧するための操作部を形成するとともに、前記母線の正面側に配設され該母線との絶縁を図る母線カバーに一体形成し、
さらに、前記山形の弾性片における中央部を互いに回路遮断器の電源端子側寄りに偏って配置することにより、隣合う弾性片の操作部の、電源端子側への偏る方向が母線の短手方向に互いに反対方向に形成して、
該自由端が前記電源端子側の側壁に対峙するよう前記器体の電源端子側に対向配置する一方、
前記母線カバーにおける前記弾性片の周囲に該弾性片の正面側の高さと略同じ高さに立設して形成した誤操作防止手段を設けて、
該弾性片の中央部を正面側から底面側へ押圧していくと、
該弾性片が撓みながら前記自由端が回路遮断器の方向に移動し、
該自由端が回路遮断器の電源端子側の側壁に当接することにより、
回路遮断器が母線から外れる方向に押出され、
回路遮断器が母線から取り外された状態となることを特徴とする回路遮断器の取外構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器を分電盤の母線から取外す構造に係る。特に、前記母線とプラグイン方式で接続される分岐回路遮断器を、前記母線と電気的に接続された状態から容易に取り外すための構造に係る。
【背景技術】
【0002】
分電盤は、キャビネットの内部に、主開閉器、該主開閉器の二次側に接続される母線、該母線と各々接続される分岐回路遮断器などの回路遮断器を組み込み、電路の引込口装置として用いる。住宅等における住宅用分電盤においては、主開閉器の二次側に分岐回路遮断器が複数並設され、交流50Hz又は60Hzの単相2線式電路(100V)、もしくは単相3線式電路(100/200V)が印加されるものが一般的である。
【0003】
近年、住宅用分電盤においては、母線にプラグインタイプの分岐回路遮断器を接続して構成されたものが増加している。このような分電盤にあっては、キャビネット内部に配設される取付板に設けられた母線に対して、取付板上に載置したプラグインタイプの分岐回路遮断器を母線の方向に向かってスライド移動させていくと、母線がプラグイン端子金具に差し込まれて接続状態になる一方、母線から遠ざかる方向に分岐回路遮断器を引き抜くように移動させていくと、母線がプラグイン端子金具から抜かれて取外状態となる。
【0004】
分電盤内に並設配置された分岐回路遮断器を母線から取外す場合には、分岐回路遮断器を手で母線から遠ざかる方向に引き抜く操作を行なう必要があるが、この引き抜く操作を簡単に行なう装置として特許文献1乃至特許文献3に開示されたものがある。
【0005】
特許文献1に開示された分電盤の幹線バーからブレーカを取り外す装置は、
【0006】
特許文献2、3に開示された、支持部材(52)に操作部材(53)を軸着し、操作部材(53)の係止部(54)でブレーカ(55)の突起(56)を係止し、操作部材(53)を回動し、その押出部(57)でブレーカ(55)の接点(58)を幹線バー(59)から押出すような構成に対して、次のような、操作部材53の係止部54、押出部57、軸部60が早期に破損しやすいこと、幅狭のブレーカ55を複数配列した場合に、操作部材53の間隔が狭くなり、これを回動しにくくなること、ブレーカ55と同数の操作部材53が必要になり、部品点数および組付工数が増え、取外装置51の製作コストが高くつくこと、という課題に鑑みてなされた発明である。特許文献1に開示された、分電盤の幹線バーからブレーカを取外す装置においては、合成樹脂やゴム等の可撓性絶縁材料から構成されているので、破損しにくい等の効果が期待できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−226881号公報
【特許文献2】特開2004−147375号公報
【特許文献3】特開2004−147376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このブレーカを取外す装置は、ブロック(特許文献1の12)に形成された挿入孔(18)の内部奥側に操作部材Dを押し込んでいくと、挿入孔(18)の奥側に形成された係合部(19)に操作部材Dが係合し、可撓部(17)をブロックの外側に変形させる構造故に、操作部材Dは挿入孔(18)の一部を形成している案内壁(20)に沿って押し込まれるとともに、可撓部(17)は操作部材Dの太さに応じて外側に押し出されることによりブレーカに作用するものである。
【0009】
このため、操作部材Dはブレーカ4を幹線バー6から押し出せる程度の太さが要求され、作業者が使用に適した操作部材Dとしてのドライバーを持ち合わせていない場合には取り外し作業が難しくなることが予想される。また、作業に用いるドライバーの太さが異なると挿入量に対する可撓部(17)の外側への変形量が一義的でなくなり、また、挿入孔に対して細いドライバーを用いると案内壁20の側にドライバーを寝せてこじるような操作が必要となり操作が煩雑になる。また、可撓部(17)が上下の分岐ブレーカの相対向する一次側端面4a間に介装されており、該可撓部(17)が外側に変形する動きが視覚的に確認しづらいことから作業者の操作感が低下する可能性がある。また、ドライバーDの先端部分の形状に合わせて、挿入孔(18)奥の係合部の形状が決められているため、ブロック(12)の挿入方向に対する長さが必要となり、母線から正面側の方向の大きさが大きくなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、取外構造が破損しにくく、作業者にとって操作が簡単で、安価に製作できるとともに、使用する操作部材を限定することなく、なおかつコンパクトに回路遮断器の取外構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る回路遮断器の取外構造は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、請求項1記載の回路遮断器の取外構造は、回路遮断器が母線の両端長手方向に対して短手の幅方向両側から並設接続される分電盤において、プラグイン端子金具が設けられたプラグインタイプの回路遮断器を分電盤の母線に接続された状態から取外すための回路遮断器の取外構造であって、回路遮断器の外郭を構成する器体の母線に近い側を電源端子側とし、母線から離れる側を負荷端子側とし、前記器体に設けられた操作部の側を正面側とし、前記母線が設けられた取付板への取付面側を底面側としたとき、前記母線の正面側において底面側から正面側の方向に中央部が山形に盛り上がる形に形成された弾性片を、前記弾性片の一端を固定端とするとともに他端を自由端として、前記弾性片の前記正面側頂上付近に、直接該弾性片を正面側から押圧するための操作部を形成するとともに、前記母線の正面側に配設され該母線との絶縁を図る母線カバーに一体形成し、さらに、前記山形の弾性片における中央部を互いに回路遮断器の電源端子側寄りに偏って配置することにより、隣合う弾性片の操作部の、電源端子側への偏る方向が母線の短手方向に互いに反対方向に形成して、該自由端が前記電源端子側の側壁に対峙するよう前記器体の電源端子側に対向配置する一方、前記母線カバーにおける前記弾性片の周囲に該弾性片の正面側の高さと略同じ高さに立設して形成した撓み防止手段を設けて、該弾性片の中央部を正面側から底面側へ押圧していくと、該弾性片が撓みながら前記自由端が回路遮断器の方向に移動し、該自由端が回路遮断器の電源端子側の側壁に当接することにより、回路遮断器が母線から外れる方向に押出され、回路遮断器が母線から取り外された状態となることを特徴とするものである。
【0012】
かかる構成によれば、中央部が山形に盛り上がる形に形成された弾性片の中央部を押圧することにより、山形がつぶれる方向に撓み、自由端が回路遮断器の電源端子側の側壁に押付けられるため、正面側から底面側への押圧力が回路遮断器を母線から取外す方向に転換されて、回路遮断器が母線から外れる方向に押出される。簡単な構成で、しかも容易な操作で回路遮断器の取付構造を提供することができる。
【0013】
また、作業者は、回路遮断器を取外す際に、該操作部を目安として押圧することにより、取外し操作対象となる回路遮断器を簡単に把握して取外すことができ、取外し作業が容易になる。また、操作部を押圧することができれば操作部材としてのドライバーなどの太さは限定されない。
【0014】
また、充電部である母線近傍で行なう回路遮断器を取外す作業を、作業の安全性を保って母線カバーによって絶縁された状態で行なうことができる。また、母線カバーと一体形成されるため、取外構造を設ける別途部材を不要とできる。
【0015】
また、夫々の操作部を操作対象となる回路遮断器寄りに偏った位置に設けたため、取外し操作対象となる回路遮断器について、対象外の回路遮断器とは明確に区別して取外し作業を行なうことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明によれば、取外構造が破損しにくく、押圧部材を正面側から底面側に押圧することにより取外しが行なえるとともに、押し下げ方向への変位と回路遮断器の取外し方向への変位が視覚的に確認できて、作業者にとって操作が簡単で、安価に製作できるとともに、使用する操作部材を限定することなく、なおかつコンパクトに回路遮断器の取外構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態を示す住宅用分電盤における内器ユニット斜視図を示す。
図2】同実施形態に係る内器ユニットに分岐回路遮断器を取付ける時の斜視図を示す。
図3】同実施形態に係る分岐回路遮断器の斜視図を示す。
図4】同実施形態に係る分岐回路遮断器を取付けた時の斜視図を示す。
図5】同実施形態に係る回路遮断器の取外構造部分の要部拡大図を示す。
図6】従来例における回路遮断器を示す。
図7】従来例における回路遮断器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態を図1乃至図5を用いて詳細に説明する。
【0019】
(内器ユニットの説明)
この回路遮断器の取外構造は、住宅用分電盤のキャビネット内部に取付固定される取付板、該取付板に設けられる母線固定台、該母線固定台に取り付けられる各極の母線、母線に接続される分岐回路遮断器1、及び母線の正面側に配設されて母線と外部との絶縁を図る母線カバー2などが一体のものとなった内器ユニット100に設けられたものである。
【0020】
以降、分岐回路遮断器の外郭を構成する器体の母線に近い側を電源端子側とし、母線から離れる側を負荷端子側とし、前記器体に設けられた操作部の側を正面側とし、前記母線が設けられた取付板への取付面側を底面側とし、これら分岐回路遮断器が並設される方向を器体の幅方向として説明を行なう。
【0021】
内器ユニット100は、キャビネットに取り付けられる下部取付板3と、該下部取付板3に載置され正面側に内部機器を取り付ける上部取付板4とを備えて基部が構成される。
【0022】
前記下部取付板3は金属板を折り曲げ形成することにより構成され、前記上部取付板4は樹脂成型により構成されている。下部取付板3と上部取付板4との取り付けは、下部取付板3に設けた取付孔部に、上部取付板において該取付孔部と対応した位置に設けられた突出部が嵌合することにより行われる。
【0023】
前記上部取付板4には、略中央部に分岐回路遮断器1の器体の幅方向、即ち分岐回路遮断器1の並設方向に母線固定台41が立設され、該母線固定台41によって各極の母線(5a〜5c)が該母線の両端長手方向に亘って夫々絶縁を保った状態で保持される。また、上部取付板4における母線の両端長手方向には、母線を挟んだ両側に分岐回路遮断器1が並設載置されるとともに、前記母線からは前記並設載置された分岐回路遮断器1の夫々に向けて電源を供給するための分岐線が分岐回路遮断器1の載置位置に突出形成される。
【0024】
また、上部取付板4には、並設される分岐回路遮断器1を載置するための載置部42が形成される。載置部42は、分岐回路遮断器1の電源側−負荷側の方向において、該分岐回路遮断器1の幅方向の大きさと略同程度に突設形成され該幅方向の振れを防止するガイド部43と、
【0025】
該ガイド部43の中央部分において母線から遠ざかる方向に開放突設され分岐回路遮断器1の底面側に設けられた凹部と係合して取付面側−正面側の浮き上がりを防止する引掛部44とが形成される。
【0026】
(分岐回路遮断器について)
この載置部42に載置される分岐回路遮断器1は、その外郭を構成する器体の長手方向を電源側−負荷側とするもので、電源側には母線と接続されるプラグイン端子金具を備え、負荷側には負荷回路からの電線が接続される速結端子金具を備え、これら電源側端子と負荷側端子の間に開閉機構を介した電路が形成されるものである。該開閉機構は分岐回路遮断器の器体の外部から開閉機構に連動した操作部13を操作することによって開閉操作できるものである。
【0027】
分岐回路遮断器1の負荷端子側には、分岐回路遮断器1が母線から外れる方向に移動することを防止するために下部取付板3と係合するロックレバー16が設けられている。該ロックレバー1は、分岐回路遮断器1の器体内部において正面側−底面側の方向に摺動可能に設けられ、該器体の底面側に突出する状態と突出しない状態とを選択的にとり得るよう指掛部161を持って操作できる。突出する状態と突出しない状態との夫々の状態を安定的に保持できるよう、夫々の位置において、分岐回路遮断器の器体とロックレバーが係合する係合部を設けている。内器ユニットに分岐回路遮断器を取付けた場合、ロックレバー16が底面側から突出し、下部取付板3の端部と係合することによって、分岐回路遮断器1が母線から遠ざかる方向に移動することが規制される。
【0028】
分岐回路遮断器1の電源側には2つのプラグイン端子11が設けられており、各極の母線(5a〜5c)のうち、何れか2つの母線と接続されることにより電源が供給される。上部取付板3から立設した母線固定台41に保持された各極の母線(5a〜5c)には、該母線から分岐回路遮断器の側に延出した分岐線(図3の5a1,5b1,5c1)が設けられており、前記底面側から正面側の方向にかけて、上部取付板4に近い側に一つの分岐線5a1が配置され、該母線5a1よりも正面側に二つの母線5b1及び5c1が同じ高さで分岐回路遮断器の幅方向に配置される。分岐回路遮断器1は、これら分岐線のうち、5a1及び5b1、若しくは5a1及び5c1と接続されて電源が供給される。具体的には、図3において、5a1及び5b1が第一及び第二の電圧極(L1,L2)、5c1が中性極(N)として母線を配設しており、分岐回路遮断器1が分岐線5a1及び5b1と接続される場合は200Vの電圧が供給され、分岐回路遮断器1が5a1及び5c1と接続される場合は100Vが供給される。
【0029】
(母線カバーについて)
母線固定台41の正面側には、母線を覆う母線カバー2が配設される。該母線カバー2は、略平板上に形成された樹脂製のカバーであり、キャビネット前面側から充電部である母線への直接的な接触を防止する絶縁手段として使用される。母線カバー2は、前記母線の両端長手方向に沿って形成されており、母線固定台への固定は、母線上に設けられたねじ孔に固定ねじ23によってねじ止めされることによって固定される。また、固定ねじを外したときに母線カバーが一度に外れ落ちてしまわないように、端部においては、母線固定台側に設けられた複数のフック411と母線カバー2に設けられた前記フックとの係合孔22とを係合させている。
【0030】
母線カバー2には前記母線の両端長手方向に沿って凹部24が形成されている。該凹部24には前記ねじ孔が設けられて、母線にねじ止めされるとともに、凹部の壁部分が母線を保持する母線固定台41の縁部に係合することにより、母線カバー2が母線の両端長手方向と直交する方向の分岐回路遮断器を取付け及び取外しを行なう方向にずれることを抑制する。
【0031】
(回路遮断器の取外構造について)
前記母線カバー2における母線の両端長手方向には、前記上部取付板4に載置される夫々の分岐回路遮断器1に対応して回路遮断器の取外装置が並設された状態で母線カバー2に一体形成される。
【0032】
取外装置は、前記母線の両端長手方向に対して短手の幅方向において、該母線を挟んで対向して並設される回路遮断器器体の電源端子側の側壁(17a,17b)同士の間に配置される。より詳しくは、母線の正面側において、底面側から正面側の方向に中央部が山形に盛り上がる形に形成された弾性片21を、前記弾性片21の一端側を固定端21bとするとともに他端側を自由端21aとして、固定端21bが一方の回路遮断器の電源端子側の側壁17bに対峙するよう配置し、自由端21aが母線を挟んで他方の回路遮断器の電源端子側の側壁17aに対峙するように配置して構成している。
【0033】
また、前記弾性片21は、前記母線の両端長手方向に対して短手の幅方向に該母線を挟んで対向して並設される回路遮断器1の器体の幅方向の大きさの略半分の大きさに形成されており、該弾性片21が母線の長手方向に沿って並設配置されている。並設配置される数は、取外装置を分岐回路遮断器ごとに設けることができるよう、前記分岐回路遮断器の数を満足する数分設けている。なお,増設する分岐回路遮断器を想定して予備を設けておいてもよい。このように、母線カバーに一体形成するときにコンパクトに形成することができる。
【0034】
前記弾性片21の正面側頂上付近には、該弾性片21を正面側から押圧するための操作部213を形成している。該操作部213は弾性片21の頂上付近の表面に凹みを形成することにより構成している。該凹みは、電気工具として用いるドライバーなどの先端が係合する程度の凹みとしているので、電気工事業者が携帯している通常の電気工具などを用いて押圧することにより、弾性片21を押し下げることが可能である。また、凹みには電気工具の先端部分が係合することにより押し下げが可能となるので、操作のために用いるドライバーの太さはある程度許容できる。
【0035】
また、並設配置される取外装置は,夫々取外対象となる回路遮断器の側に互い違いにずらせて配置している。即ち、夫々取外対象となる回路遮断器の側に母線の幅方向の中央部から偏って配置している。多数並設配置された回路遮断器のうち、取外装置によってどの回路遮断器を取外対象としているのかを作業者が明確に把握することができるようにするためである。
【0036】
より詳しくは、夫々の取外装置における固定端、操作部及び自由端は、母線の幅方向の中央部から取外対象となる回路遮断器の電源端子側寄りに偏って配置されており、偏った配置によって回路遮断器の電源端子側に近い取外装置を用いて取外作業を行うことが明確に把握でき、操作対象外の分岐回路遮断器を誤って操作するおそれが低減する。
【0037】
(分岐回路遮断器の取付について)
このような回路遮断器の取外構造を操作するにあたり、まず、内器ユニットに分岐回路遮断器1を取付ける場合について説明を行なう。まず、図2図3において、分岐回路遮断器1のロックレバー16が分岐回路遮断器の底面側から突出しない状態にしておき、分岐回路遮断器1を上部取付板4のガイド部43の間に載置する。この状態である程度分岐回路遮断器の幅方向の振れが抑制される。
【0038】
続いて前記ガイド部43に沿って分岐回路遮断器を母線の方向にスライドさせていくと、上部取付板4の引掛部44が分岐回路遮断器の底面側に設けられた被引掛部16と係合していき、分岐回路遮断器の底面側−正面方向の動きが抑制される。さらにスライドさせていくと、電源側のプラグイン端子11a,11bが母線の分岐線5a1,5b1に差し込まれていき、母線とプラグイン端子との電気的な接続が完了する。
【0039】
そして、ロックレバー16の指掛部161を上部取付板の方向、即ち底面側の方向に押圧して、ロックレバーの係合部を底面側から突出させ、分岐回路遮断器が母線から外れる方向への移動を規制することにより、分岐回路遮断器を内器ユニットに取付ける作業が完了する。(図4
【0040】
(分岐回路遮断器の取外しについて)
次に、回路遮断器の取外構造を操作して、分岐回路遮断器1を内器ユニットから取外す場合について説明を行なう。まず、ロックレバー16の指掛部161をもって正面側に引き上げ、ロックレバー16と下部取付板3との係合を解除する。ロックレバー16と下部取付板3との係合を解除した場合、分岐回路遮断器1が母線から遠ざかる方向に移動する規制が解除される。この状態においては、プラグイン端子11が母線を挟み込む力によって、分岐回路遮断器1が母線から遠ざかる方向への規制が保たれている。
【0041】
続いて、前記弾性片21の操作部213を正面側から底面側に押圧する。押圧力が山形に形成された前記弾性片21の正面側−底面側方向の撓み力に勝った場合、弾性片21は底面側方向に弾性的に変化し始め、弾性片21は固定端21bを基点とし自由端21aが徐々に分岐回路遮断器の電源端子側に移動していき、前記自由端21aが分岐回路遮断器の電源端子側の側壁に当接する。
【0042】
この状態からさらに操作部213を押圧していくと、自由端21aが前記側壁を母線から回路遮断器を取り外す方向に押圧し、前記プラグイン端子11が母線を挟み込む力に抗して、ついには分岐回路遮断器1を母線から遠ざかる方向に変位させ始める。そして、分岐回路遮断器1の変位が、母線の分岐線5a1,5b1とプラグイン端子11a,11bとの差し込み量を超えたときに、母線の分岐線5a1,5b1へのプラグイン端子11a,11bとの差し込みが解除され、母線と分岐回路遮断器との電気的な接続が解除される。
【0043】
この状態においては、もはや分岐回路遮断器1が母線から遠ざかる方向への規制は行なわれず、分岐回路遮断器1を手などで軽く母線から遠ざかる方向に引き抜くことにより分岐回路遮断器1は内器ユニットから取外される。
【0044】
前記弾性片21における山形の形状は、操作部を押圧して山形の形状が変形したときに、自由端21aの変位量が、前記分岐回路遮断器1におけるプラグイン端子11の母線の分岐線5a1,5b1への差込量よりも大きくなるよう構成するとよい。本実施形態においては、正面側から底面側への変位量と、母線から分岐回路遮断器が遠ざかる方向の変位量とが約1対1になるよう山形形状の仰角が略45度となるよう角度を持たせて構成している。
【0045】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、母線カバー2において、弾性片21で構成された取外装置の周囲に周縁リブを立設して構成するとよい。該周縁リブは、その正面側−底面側方向の高さを、山形形状の弾性片21の正面側の頂上の高さと略同じ程度に設けており、指の腹などドライバー工具などの先端部よりも幅広いものによって、弾性片21の操作部213が誤って押圧されにくくなるよう構成している。また、正面側−底面側方向にリブを設けることによって、母線カバー2の母線の長手方向及び短手方向の撓み強度を向上させることができる副次効果が得られる。弾性片21を押圧操作するときに、分岐回路遮断器1のプラグイン端子による母線の差し込み力に抗して押圧部材21を押圧する必要があるが、このときの母線カバー2の撓みを軽減させることができる。
【0047】
また、前記母線カバー2に分岐回路遮断器に供給される電圧測定機能を持たせて構成してもよい。
【0048】
測定者は、電圧測定を行なう場合、電圧測定器具により測定を行なう。電圧測定器具は電圧計などを用いるが、通常は測定端子(テストリード)を備えている。該テストリードを分岐回路遮断器が接続される極(L1極とL2極、又はL1局1とN極)に接続することにより分岐回路遮断器に供給される電圧を測定することができる。
【0049】
分岐回路遮断器のプラグイン端子11bは、母線の分岐線のうち、5b1(L2極)又は5c1(N極)と選択的に接続され、プラグイン端子11aは、母線の分岐線5a1と接続されるから、これらプラグイン端子間の電圧を測定することにより分岐回路遮断器に供給される電圧の測定を行なうことができる。
【0050】
テストリードを接続するための一方の極に通ずる測定部として、前記取外装置の母線から離れる方向において、一の分岐回路遮断器に対応する孔部252が2つ形成される。該孔部252は、分岐回路遮断器1の電源端子側のプラグイン端子11bの正面側に位置するよう設けており、正面側から測定端子(テストリード)をプラグイン端子部に挿入して電気的に接触できる程度の孔径として構成している。
【0051】
この2つ形成された孔部は、分岐回路遮断器1が選択的に接続される母線の分岐線(5b1,5c1)に対応して、接続される分岐線の側の孔部にのみ正面側からテストリードをプラグイン端子に挿通し得るように構成している。
【0052】
テストリードを接続するための他方の極に通ずる測定部としては、母線の両端長手方向における母線の片側に並設された分岐回路遮断器は共通の母線に接続されることから、これらの分岐回路遮断器に共通の測定端子を母線の長手方向の延出元付近に設けるとよい。この共通の測定端子は、図1における、母線カバー2に形成される253で示した共通電圧測定端子挿入孔の底面側に設けている。
【0053】
これらの袋状形状の孔部251と共通電圧測定端子挿入孔253とは、母線の両端長手方向において対称に形成されている。測定者が電圧測定を行なう場合には、母線の両端長手方向において片側の分岐回路遮断器について、共通電圧測定端子挿入孔253に一方のテストリードを差し込み共通電圧測定端子にテストリードを接触させた状態で、他方のテストリードを夫々の分岐回路遮断器におけるプラグイン端子11bが位置する側の孔部252に差し込み該プラグイン端子11bに接触させて、該当する分岐回路遮断器に供給される電圧を測定する。
【0054】
さらに、前記周縁リブの母線から離れる方向には、分岐回路遮断器1における電圧表示(100V又は200V)が正面側から視認できるよう、分岐回路遮断器の幅方向に亘って電圧表示確認孔26が設けられている。図には、夫々の分岐回路遮断器がとり得る何れの電圧も記載しているが、分岐回路遮断器の実際の使用時には、前記プラグイン端子の配置位置に合わせていずれかの電圧表示のみ(100V又は200V)が正面側から視認可能となる構成となっているので、前記母線カバー2の電圧表示確認孔から視認できる電圧表示は一方の電圧表示だけとなる。
【0055】
電圧測定時においては、前記電圧表示確認孔26からは、供給されるべき電圧の値が表示されているから、その電圧の値と電圧測定器具によって測定された電圧の値とを比較することにより、分岐回路遮断器の接続状態が適切かどうかが簡単に把握することができる。
【0056】
このように、母線カバー2に、回路遮断器の取外構造に加えて、電圧測定機能と電圧表示機能を併せ持たせることで、電気安全的により優れた母線カバーを備えた分電盤を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
100 内器ユニット
1 分岐回路遮断器
11 電源側プラグイン端子
12 負荷端子
13 正面側
14 底面側
16 ロックレバー
2 母線カバー
21 弾性片
213 操作部
22 孔部
23 固定ねじ
3 下部取付板
4 上部取付板
411 フック
41 母線固定台
42 載置部
43 ガイド部
44 引掛部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7