(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性フィルムを用いて入力位置を検出するためのタッチパネルが知られている。このタッチパネルの構成は、従来から種々検討されているが、一例として静電容量式のタッチパネルが知られている。例えば、特許文献1に開示されたタッチパネルは、それぞれ所定のパターン形状を有する透明導電層を備えた一対の透明導電性フィルムの間に誘電体層が介在されて構成されており、指などが操作面に触れると、人体を介して接地されることによる静電容量の変化を利用して、タッチ位置を検出することができる。
【0003】
上述のタッチパネルは、液晶表示装置やCRTなどの表面に装着して用いられるが、導電性フィルム表面に設けられる透明導電層のパターン形状が目立ってしまい、視認性の低下が発生するという問題があった。
【0004】
かかる問題点を改善するために、例えば、透明導電層が形成されているパターニング部と、透明導電層が形成されていない非パターニング部との光の反射率や透過率といった光学特性を近づけることにより、色目等を合わせてパターン形状を見えにくくし、タッチパネルの見栄えを改善する試みが行われている(例えば、特許文献2)。
【0005】
ここで、このようなタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムは、例えば、以下のようにして製造されている。まず、PET等の透明基板の一方面に、スパッタリング法や真空蒸着法等の成膜技術を用いて、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性材料からなる透明導電層を形成する。次に、この透明導電層の表面に、スクリーン印刷法等により透明導電層表面にレジスト材料を所定のパターニング形状に塗布(印刷)し、硬化させることによりレジスト膜(保護膜)を形成する。塗布されたレジストは、通常、加熱による乾燥または硬化、メタルハライドランプなどを用いた紫外線硬化方法を用いる。その後、透明導電膜、及び、所定のパターン形状を有するレジスト膜が形成された透明基板を酸液等のエッチング液内に所定時間浸漬させることにより、レジスト膜により被覆されていない導電膜部分(露出部分)を除去した後、アルカリ液などによりレジスト膜を剥離または溶解させることにより、透明基板の一方面に所定のパターン形状を有する透明導電体が形成された導電性フィルムを得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、タッチパネルの視認性向上のために、透明導電体が形成されているパターニング部と透明導電体が形成されていない非パターニング部との光学特性を近づけることにより、パターン形状を見えにくくするという試みは、一定の優れた効果を発揮し、タッチパネルの視認性向上に貢献しているが、まだまだ改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、従来からのアプローチとは全く異なる観点から、タッチパネルの視認性向上に貢献できる透明導電性フィルム及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、基材が透明樹脂を含む材料からなる場合、基材の表面に形成された透明導電層上に塗布されたレジストを硬化させる段階、もしくは、透明導電層のパターニング後の加熱工程において、パターニング部と非パターニング部とでの基材の熱による収縮度合いの違いが、透明導電性フィルム表面におけるうねりを発生させ、特にパターニング部と非パターニング部との境界近傍において段差(パターン凹凸)があるようにパターン形状が視認されてしまい、視認性の悪化を招くことを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の上記目的は、透明な樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方面側に設けられ、鉛筆硬度がH以下である第1保護層と、前記第1保護層の一方面側に設けられたパターニングされた透明導電層と、を備え
、前記樹脂基板の他方面側に、2H以上の鉛筆硬度を有する第2保護層を備えており、前記第1保護層の厚みは、前記第2保護層の厚みよりも大きい透明導電性フィルムにより達成される。
【0011】
また、この透明導電性フィルムにおいて、前記第1保護層の鉛筆硬度は、前記樹脂基板の鉛筆硬度と同等以上に構成されることが好ましい。
【0013】
また、前記第1保護層の厚みが1μm〜5μmであり、前記第2保護層の厚みが前記第1保護層の厚みの20%〜90%であることが好ましい。
【0014】
また、前記第1保護層と前記透明導電層との間に光学調整層を備えるように構成してもよい。
【0015】
また、上記目的は、上述の透明導電性フィルムを少なくとも1つ備えるタッチパネルにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視認性を向上させることができる透明導電性フィルム及びタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、各構成要素を実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルムを有するタッチパネル100の概略断面図である。このタッチパネル100は、例えば、銀行端末(キャッシュディスペンサー)、券売機、パソコン、OA機器、電子手帳、PDA、携帯電話等の表示装置Zに取り付けられて使用される静電容量式のタッチパネルであり、粘着層3と、当該粘着層3の両側に配置される一対の透明導電性フィルム(以下、一方の透明導電性フィルムを第1透明導電性フィルム1とし、他方の透明導電性フィルムを第2透明導電性フィルム2とする)とを備えている。
図1に示すタッチパネル構成においては、第1透明導電性フィルム1及び第2透明導電性フィルム2は、それぞれ、樹脂基板11,21と、当該樹脂基板11,21の一方面側に設けられる第1保護層12,22と、当該第1保護層12,22の一方面側(樹脂基板11,21とは反対の面側)に配置される透明導電層13,23とを備えている。
【0020】
なお、本実施形態においては、第1透明導電性フィルム1が、タッチ入力面側に配置されるようにして、第1透明導電性フィルム1と、第2透明導電性フィルム2とは、粘着層3を介して貼着されている。
【0021】
また、
図1におけるタッチパネル構成においては、第1透明導電性フィルム1及び第2透明導電性フィルム2は、第1透明導電性フィルム1における樹脂基板11の他方面側(透明導電層13が形成されていない面側)と、第2透明導電性フィルム2における透明導電層23とが互いに対向するようにして、粘着層3を介して貼着されており、第1透明導電性フィルム1における透明導電層13が形成される面には、表面保護用の表面保護層4が、粘着層5を介して貼着されている。なお、本発明に係るタッチパネル構成は、
図1に示すような構成に限定されず、例えば、
図2(a)に示すように、第1透明導電性フィルム1の透明導電層13が形成される面と、第2透明導電性フィルム2の透明導電層23が形成される面とが、互いに対向するように、粘着層3を介して貼着してもよい。或いは、
図2(b)に示すように、第2透明導電性フィルム2における樹脂基板21の他方面側(透明導電層23が形成されていない面側)と、第1透明導電性フィルム1の透明導電層13とが互いに対向するようにして、粘着層3を介して貼着してもよい。また、
図2(c)に示すように、樹脂基板11の両側にそれぞれ第1保護層12,22を設け、更に、当該各第1保護層12,22上に透明導電層13,23を形成するようにして透明導電性フィルム10を構成し、当該透明導電性フィルム10をタッチパネル100として使用してもよい。なお、
図2(c)に示すようなタッチパネル構成を採用する場合には、タッチ入力面側に配置される透明導電層13を保護するための表面保護層4を透明導電層13上に別途設けることが好ましい。
【0022】
樹脂基板11,21は、高い誘電率を有し、透明性が高い材料からなることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアクリル(PAC)、アクリル、非晶質ポリオリフィン系樹脂、環状ポリオリフィン系樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの可撓性フィルムやこれら2種以上の積層体により形成される。樹脂基板11,21の厚みは、10μm〜500μm程度が好ましく、20μm〜300μmが更に好ましく用いられる。また、樹脂基板11,21を形成する場合、樹脂基板11,21の表面に密着性等の向上のために、易接着層を形成しり、コロナ処理などの表面処理を予め施してもよい。
【0023】
第1保護層12,22は、上述のように、樹脂基板11,21の一方面側に設けられる層であり、鉛筆硬度がH以下の特質を有している。また、当該第1保護層12,22の鉛筆硬度は、表面における傷つき防止の観点からF以上に設定することが好ましい。また、第1保護層12,22の鉛筆硬度は、上述の樹脂基板11,21の鉛筆硬度と同等以上に構成されることが好ましい。この第1保護層12,22の主成分は、放射性硬化樹脂が好ましく、なかでも紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂としてはアクリル酸またはメタクリル酸骨格を有する樹脂が好ましい。(メタ)アクリル酸系の樹脂としては、特に限定されないが、分子量が1000〜10000かつ骨格内に含まれる(メタ)アクリル酸基が1〜10程度、更に好ましくは1〜5程度含む低架橋オリゴマーであることが望ましい。このような材料として、ウレタンアクリレートを例示することができる。
【0024】
また、第1保護層12,22の主成分に対して、高硬度オリゴマーを添加してもよい。高硬度オリゴマーとしては、紫外線硬化樹脂である多官能(メタ)アクリレート化合物好ましく、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクロイル基を含有することが望ましい。多官能アクリレート化合物の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて、第1保護層12,22の主成分に添加してもよい。また、第1保護層12,22の主成分に対して、光学調整のための無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子としては、粒径1nm以上200nm以下の二酸化珪素(SiO
2)、二酸化チタン(TiO
2)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)等を例示することができる。
【0025】
なお、第1保護層12,22は、上述した材料を樹脂基板11,21の一方面上に公知の塗工法や印刷法等を用いて塗布・乾燥して形成することができる。また、第1保護層12,22の乾燥後の厚みが、例えば、1μm〜5μmの範囲となるように設定することが好ましい。
【0026】
透明導電層13,23は、上述のように、第1保護層12,22の一方面側(樹脂基板11,21とは反対の面側)に配置される層であり、所定形状にパターニングされて構成されている。具体的には、例えば、透明導電層13,23は、
図3及び
図4に示すように、平行に延びる複数の帯状導電部13a,23aの集合体としてそれぞれ形成されており、各透明導電層13,23の帯状導電部13a,23aは、第1透明導電性フィルム1及び第2透明導電性フィルム2を重ね合わせてタッチパネル100を構成した際に、平面視において、帯状導電部13a,23aの長手方向がそれぞれ互いに直交するように配置されている。また、透明導電層13,23は、導電性インクなどからなる引き廻し回路(図示せず)を介して外部の駆動回路(図示せず)に接続されている。
【0027】
透明導電層13,23のパターン形状は、本実施形態のものに限定されず、指などの接触ポイントを検出可能である限り、任意の形状とすることが可能である。例えば、
図5及び
図6に示すように、透明導電層13,23における帯状導電部13a,23aを、複数の菱形状電極部13b,23bが直線状に連結された構成とし、各帯状導電部13a,23aにおける菱形状電極部13b,23bの連結方向が互いに直交し、且つ、平面視において上下の菱形状電極部13b,23bが重なり合わないように配置してもよい。なお、タッチパネル100の分解能などの動作性能については、第1透明導電性フィルム1と第2透明導電性フィルム2とを重ね合わせた場合に、導電部が存在しない領域を少なくする構成を採用する方が優れている。このような観点から、透明導電層13,23のパターン形状として、矩形状の構成よりも、複数の菱形状電極部13b,23bが直線状に連結された構成の方が望ましい。
【0028】
透明導電層13,23の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系、酸化亜鉛、スズ酸化膜等の透明導電材料、或いは、スズ、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属材料、金属酸化物材料を例示することができ、これら2種以上を複合して形成してもよい。
【0029】
また、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細導電炭素繊維や、銀ナノワイヤーなどの極細金属繊維をポリマー材料に分散させた複合材や導電高分子材料を、透明導電層13,23の材料として用いることもできる。
【0030】
透明導電層13,23の形成方法について説明すると、まず、上述の材料を用いて、第1保護層12,22上に所定厚さの導電膜を形成する。この導電膜の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法、塗工法、印刷法などを例示することができる。導電膜の厚みは、材料によって異なるが、例えば10nm〜100nm程度が好ましく、15〜50nm程度がさらに好ましい。透明導電層13,23のパターニングは公知の方法を用いることができ、例えば第1保護層11,22上にそれぞれ形成された導電膜の表面に、所望のパターン形状を有するマスク部を形成して露出部分を酸液などでエッチング除去した後、アルカリ液などによりマスク部を溶解させて行うことができる。なお、フォトリソグラフィーによって透明導電層13,23をパターニングしてもよい。
【0031】
粘着層3は、高い誘電率を有する材料から形成することが好ましく、例えば、エポキシ系やアクリル系などの一般的な透明接着剤を用いることができ、ノルボルネン系樹脂の透明性フィルムからなる芯材を含むものであってもよい。粘着層3の厚みは、例えば700μm以下であることが好ましく、特に、10μm〜300μmであることが好ましい。更に、25μm〜200μmであることがより好ましい。また、シート状粘着材を複数枚重ね合わせることにより粘着層3を形成してもよい。なお、第1透明導電性フィルム1と表面保護層4と間に介在する粘着層5も、粘着層3と同様な材料から形成することが好ましい。
【0032】
以上の構成を備えるタッチパネル100において、タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチパネルと同様であり、表面保護層5の表面側(露出面側)に指などを接近させた際のキャパシタンスの電気的な変化を検出することで、指の位置座標が検出される。なお、検出方式としては自己容量検出方式および相互容量検出方式がある。
【0033】
本発明に係る透明導電性フィルム1,2は、樹脂基板11,21と透明導電層13,23との間に、鉛筆硬度がH以下である第1保護層12,22を備える構成を備えているため、透明導電性フィルム1,2の製造過程における透明導電層13,23の熱収縮による動きが第1保護層12,22に吸収されて、当該透明導電層13,23の収縮の影響が樹脂基板11,21側に伝播することを抑制することが可能となる。これにより、従来発生していたパターニング部と非パターニング部との境界近傍において発生し得るうねり(パターン凹凸)が緩和され、パターン形状が認識しにくい極めて良好な視認性を有する透明導電性フィルム1,2を得ることが可能となる。なお、当該透明導電性フィルム1,2を用いてタッチパネル100を構成した場合においても、パターニングされた透明導電層13,23のパターン形状が目立ちにくく、視認性が良好となる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態において、
図7に示すように、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)における樹脂基板11(21)の他方面側に、第1保護層12(22)の鉛筆硬度と同等以上の鉛筆硬度を有する第2保護層14(24)を備えるように構成してもよい。第1保護層12(22)の厚みは、第2保護層14(24)の厚みよりも大きくなるように構成することが好ましい。このような構成により、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)における樹脂基板11(21)の他方面側が第2保護層14(24)により保護されるため表面傷付きが防止される。また、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)のカール防止の効果を得ることができる。また、例えば、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)をロール状に巻回される場合に発生する巻締り痕が生じることも効果的に抑制することができる。なお、第2保護層14(24)の鉛筆硬度は、2H以上に設定することが、表面傷付き防止の観点からより一層好ましい。また、第1保護層12(22)の厚みが、第2保護層14(24)の厚みよりも大きくなるように構成する場合、透明導電層13(23)におけるパターニング部と非パターニング部との境界近傍において発生し得るうねり(パターン凹凸)をより一層緩和することが可能となり、パターン形状がより認識しにくい良好な視認性を有する透明導電性フィルム1(2)を得ることができる。
【0035】
ここで、第2保護層14(24)を形成する主成分としては、例えば、放射線硬化樹脂が好ましく、特に紫外線硬化樹脂がより好ましい。紫外線硬化樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート化合物好ましく、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクロイル基を含有することが望ましい。多官能アクリレート化合物の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、第2保護層14(24)は、上述した材料を樹脂基板11(21)の他方面上に公知の塗工法や印刷法等を用いて塗布・乾燥して形成することができる。また、第2保護層14(24)の乾燥後の厚みは、例えば、第1保護層12(22)の厚みの20%〜90%となるように設定することが好ましく、30%〜80%となるように設定することがより好ましい。
【0036】
また、上記実施形態において、
図8に示すように、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)において、透明導電層13(23)と第1保護層12(22)との間に、1層以上の薄膜層を積層した光学調整層15(25)を配置してもよい。光学調整層15(25)の材料としては、二酸化珪素(SiO
2)、二酸化チタン(TiO
2)などの金属酸化物を例示することできる。また、光学調整層15(25)は、このような金属酸化物をスパッタリング法、抵抗蒸着法、或いは、電子ビーム蒸着法などを用いたり、屈折率を制御した透明材料を塗工するなどして第1保護層12(22)の表面に形成することができる。特に、特開 2010-208169 等に記載されるようなインデックスマッチング機能を有する光学調整層15(25)とした場合、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)において、透明導電層13(23)のある部分と無い部分との光学特性の差が小さくなるため、透明導電層13(23)のパターン形状がより一層見えにくくなり、第1透明導電性フィルム1(又は第2透明導電性フィルム2)の視認性が改善される。
【0037】
また、本実施形態においては、第1透明導電性フィルム1および第2透明導電性フィルム2を粘着層3を介して貼着することにより、静電容量式のタッチパネル100を構成しているが、以下のようにして抵抗膜式のタッチパネルを構成することもできる。すなわち、スペーサーを介して所定間隔をあけて第1透明導電性フィルム1及び第2透明導電性フィルム2を対向配置することにより抵抗膜式のタッチパネルを構成することもできる。
【0038】
この抵抗膜式のタッチパネルにおけるタッチ位置の検出方法は、従来の抵抗膜式のタッチパネルと同様であり、第1透明導電性フィルム1の表面側における任意の位置を指などで押圧することで、第1透明導電性フィルム1における透明導電層13と第2透明導電性フィルム2における透明導電層23とは接触し、その接点の抵抗値を横方向と縦方向に時分割的測定をすることで接触位置の座標が演算される。
【0039】
ここで、発明者らは、本発明に係る透明導電性フィルム1(2)のサンプルA〜Dを作成し、各サンプルについて透明導電層パターンのうねり(凹凸)の発生状況の確認試験を行ったので、この試験内容及び結果について以下に示す。
【0040】
試験内容は、下記に示すサンプルA〜Dを準備し、それぞれを厚みが75μmの光学粘着シート(OCA)を介してガラス板(厚さ1mm)に貼合し、ガラス板を上側にして台上に載置し、蛍光灯下で目視によって透明導電層パターンのうねり(凹凸)の発生状況を確認した。なお、目視距離を30cm、目視角度をサンプル水平面に対して20度として確認試験を行った。
【0041】
サンプルAは、樹脂基板11(21)として、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製コスモシャインA4300)を採用し、当該樹脂基板の一方の面に、日本ペイント(株)製のハードコート塗料(ルシフラールNAB-007)をバーコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが3μmになるように塗工し、鉛筆硬度が2Hである第2保護層14(24)を形成した。
【0042】
次に、樹脂基板11(21)において第2保護層14(24)を形成した面と反対の面に、ニューフロンティアR-1306X(第一工業製薬製(株)製)100重量部にA-DPH(新中村化学工業(株)製)20重量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン製)4重量部、レベリング剤としてBYK-UV3500(ビックケミー製)0.5重量部を混合して得られた塗料を溶剤:メチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈し、バーコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが5μmになるように塗工し第1保護層12(22)を形成した。ここで、ニューフロンティアR-1306Xは上述の低架橋オリゴマーに相当し、A-DPHは上述の高硬度オリゴマーに相当する。ここで、第1保護層12(22)、第2保護層14(24)の厚みは、ニコン製デジマイクロ(型番:MH-15M)及びデジマイクロスタンド(型番:MS-5C)を用いて、膜形成前後の厚み差から算出(5点平均)した。また、膜形成後のフィルムサンプルのみで厚みを測定する場合は、SEM等を用いて断面から厚みを測定する。
【0043】
次いで、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、第1保護層12(22)上に、厚みが10nmのSiO
2からなるアンダーコート層(光学調整層15(25))を形成し、アンダーコート層(光学調整層15(25))上に酸化インジウムと酸化スズとを90:10の重量比で含有するターゲット材料を用い、厚み20nmの透明導電層13(23)(ITO膜)を形成した。透明導電層13(23)のパターン形状は、
図3に示すような、幅5mmのストライプ状の電極パターンとした。なお、アンダーコート層(光学調整層15(25))、透明導電層13(23)(ITO膜)の膜厚については、事前に求めたスパッタリングレートを用いて成膜条件を設定した。
【0044】
サンプルBは、サンプルAにおける第1保護層12(22)を、ニューフロンティアR-1306X(第一工業製薬製)100重量部にA-DPH(新中村化学工業(株)製)10重量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン製)4重量部、レベリング剤としてBYK-UV3500(ビックケミー製)0.5重量部を混合して得られた塗料を溶剤:メチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈し、バーコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが5μmになるように塗工して形成した点以外は、サンプルAと同様に形成した。
【0045】
サンプルCは、サンプルAにおける第1保護層12(22)を、ニューフロンティアR-1306X(第一工業製薬製)100重量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン製)4重量部、レベリング剤としてBYK-UV3500(ビックケミー製)0.5重量部の混合物を溶剤:メチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈し、バーコーターを用いて乾燥後の塗布厚みが5μmになるように塗工して形成した点以外は、サンプルAと同様に形成した。
【0046】
サンプルDは、サンプルAにおける第1保護層12(22)を、A-DPH(新中村化学工業(株)製)100重量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン製)4重量部、レベリング剤としてBYK-UV3500(ビックケミー製)0.5重量部の混合物を溶剤:メチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈し、バーコーターを用いて乾燥後の塗布厚みが5μmになるように塗工して形成した点以外は、サンプルAと同様に形成した。
【0047】
上述のサンプルA〜Dに関し、第1保護層12(22)の鉛筆硬度と、パターニング部と非パターニング部との境界近傍において視認され得るうねり(ITOパターン凹凸)の発生状況についての確認試験結果を表1に示す。ここで、第1保護層12(22)の鉛筆硬度の測定は、JIS K5400に準じ、付加荷重を500gとして計測した。なお、表1においては、ITOパターン凹凸が全く視認されない場合を◎とし、僅かにITOパターン凹凸が視認されるが実用上全く問題ない場合を○とし、ITOパターン凹凸が明確に視認される場合を×としている。
【0049】
表1の確認試験結果からわかるように、第1保護層12(22)の鉛筆硬度がH以下であるサンプルA、B、Cについては、ITOパターン凹凸をほとんど認識することができず、極めて優れた視認性を有する結果となった。一方、第1保護層12(22)の鉛筆硬度が2HであるサンプルDについては、ITOパターン凹凸が明確に認識され、視認性に劣る結果となった。このことから、樹脂基板11(21)と透明導電層13(23)との間に介在して配置される第1保護層12(22)の鉛筆硬度をH以下となるように構成することにより、透明導電層13(23)(ITO膜)の収縮による動きが第1保護層12(22)に吸収されて、当該透明導電層13(23)(ITO膜)の収縮の影響が樹脂基板11(21)側に伝播することが抑制され、結果として、パターニング部と非パターニング部との境界近傍において発生し得るうねり(ITOパターン凹凸)が緩和され、パターン形状を目立ちにくい状態にできることがわかる。
【0050】
また、発明者らは、上記サンプルA〜Dについて、耐傷性の評価試験も行ったので、この耐傷性試験結果について説明する。まず、耐傷性の評価試験方法は、各サンプルに対して、エタノールを染み込ませたベンコットン(登録商標)で荷重50gをかけて同一個所を1往復摺動させた後、表面にスクラッチ傷が発生しているか否かを目視確認して行った。この結果、サンプルA、サンプルB、サンプルDについては、第1保護層12(22)の表面にスクラッチ傷が発生しないことを確認した。一方、サンプルDには、第1保護層12(22)の表面にスクラッチ傷が発生していることを確認した。以上のことから、傷つき防止の観点から第1保護層12(22)の鉛筆硬度をF以上に設定することが好ましいことが分かる。なお、鉛筆硬度の測定について、JIS K5400に準じて計測(付加荷重を500g)することは既に述べたが、実際の測定では必ずしも明確に鉛筆硬度が定まらず、例えばF〜Hなどの範囲を有する場合がある。この場合は軟らかい方の鉛筆硬度(例えばF〜Hの場合はF)とする。また、第1保護層の上側に透明導電層や光学調整層などの薄膜が形成されたサンプルの場合は、これら薄膜による鉛筆硬度測定への影響は少ないため、薄膜の上から測定した値を第1保護層の鉛筆硬度とみなす。