【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した接合材料は以下の方法により調製した。
【0068】
(調製例1−1)
<Cuナノ粒子の調製1−1>
Cuナノ粒子は、特開2012−46779号公報に記載の方法に従って調製した。すなわち、フラスコにエチレングリコール(HO(CH
2)
2OH)300mlを入れ、これに炭酸銅(CuCO
3・Cu(OH)
2・H
2O)30mmolを添加したところ、炭酸銅はエチレングリコールにほとんど溶解せずに沈殿した。これに、オクタン酸(C
7H
15COOH)30mmol及びオクチルアミン(C
8H
17NH
2)30mmolを添加した後、窒素ガスを1L/minで流しながら、エチレングリコールの沸点で1時間加熱還流させたところ、微粒子が生成した。得られた微粒子をヘキサン中に分散させて回収し、アセトン及びエタノールを順次添加して洗浄した後、遠心分離(3000rpm、20min)により回収し、真空乾燥(35℃、30min)を施した。
【0069】
得られた微粒子について、X線回折装置((株)リガク製「試料水平型強力X線回折装置RINT−TTR」)を用い、X線源:CuKα線(λ=0.15418nm)、管電圧:50kV、管電流:300mAの条件で粉末X線回折(XRD)測定を行なった。得られたXRDスペクトルから金属成分を同定し、Cuが主成分であることを確認した。
【0070】
また、得られたCu微粒子をヘキサンに分散させ、この分散液をエラスチックカーボン支持膜(高分子材料膜(15〜20nm厚)+カーボン膜(20〜25nm厚))付きCuマイクログリッド(応研商事(株)製)上に滴下した後、自然乾燥させて観察用試料を作製した。この観察用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子(株)製「JEM−2000EX」)を用いて加速電圧200kVで観察した。このTEM観察において、無作為に200個のCu微粒子を抽出し、その直径を測定したところ、これらの平均粒子径は300nmであった。得られた結果を表1に示す。なお、Cu微粒子の粒子径は全て1000nm以下であった。
【0071】
【表1】
【0072】
(調製例1−2〜1−4)
<Cuナノ粒子の調製1−2〜1−4>
オクタン酸に代えて表1に示す脂肪酸を、オクチルアミンに代えて表1に示す脂肪族アミンを用い、表1に示す割合とした以外は調製例1−1と同様にしてCu微粒子を調製した。得られた微粒子について、調製例1−1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定を行ない、いずれもCuが主成分であることを確認した。次に、得られたCu微粒子を用い、調製例1−1と同様にして観察用試料を作製し、調製例1−1と同様にしてTEM観察を行い、平均粒子径を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、Cu微粒子の粒子径は調製例1−2〜1−4のいずれにおいても全て1000nm以下であった。
【0073】
(調製例2−1〜2−5)
<微細CuNi合金ナノ粒子の調製2−1〜2−5>
フラスコにオレイルアミン(OA、C
18H
35NH
2)30mmol及びCuアセチルアセトナト(Cu(acac)
2、Cu(C
5H
7O
2)
2)1.7mmolを入れ、窒素ガスを0.4L/minで流しながら、200℃で1時間撹拌して合成反応を行い、Cu微粒子を含むオレイルアミン分散液を得た。
【0074】
得られたオレイルアミン分散液を水冷した後、トリオクチルホスフィン(TOP、P(C
8H
17)
3)2.4mmol及び塩化ニッケル(NiCl
2)を表2に示す量を添加し、窒素ガスを0.4L/minで流しながら200℃で1時間撹拌して合成反応を行い、生成物を得た。得られた生成物をヘキサンで洗浄後、遠心分離(3000rpm、20min)を施して微粒子を回収し、真空乾燥(35℃、30min)を施した。
【0075】
【表2】
【0076】
(調製例2−6)
<比較用微細Cuナノ粒子の調製2−6>
塩化ニッケル(NiCl
2)を添加しない以外は調製例2−1〜2−5と同様にして、比較用微細Cuナノ粒子を調製した。
【0077】
(調製例2−7)
<比較用Cu
6Sn
5ナノ粒子の調製2−7>
フラスコにテトラヒドロフラン(THF)10mlを入れ、これに塩化スズ(SnCl
2)1.7mmol、オレイルアミン(C
18H
35NH
2)32mmol及びテトラブチルアンモニウムボロハイドライド(TBABH)3.6mmolを添加した後、窒素ガスを0.1L/minで流しながら、60℃で1時間撹拌して合成反応を行い、微粒子を含むTHF分散液を得た。
【0078】
このTHF分散液に遠心分離(3000rpm、20min)を施し、得られた沈殿物をエタノールに分散させた後、再度、遠心分離(3000rpm、20min)を施して微粒子を回収し、真空乾燥(35℃、30min)を施して、Sn微粒子を得た。
【0079】
次に、フラスコにエチレングリコール18mLを入れ、これに得られたSn微粒子0.17g(1.4mmol)を添加し、Cuアセチルアセトナト1.2mmolを添加した後、超音波処理(出力:100W)を施してSnナノ粒子を分散させた。次に、窒素ガスを0.1L/minで流しながら、100℃で3時間撹拌して合成反応を行い、Cu
6Sn
5ナノ粒子を含むエチレングリコール分散液を得た。
【0080】
このエチレングリコール分散液に遠心分離(3000rpm、20min)を施して洗浄し、得られた沈殿物をエタノールに分散させた後、再度、遠心分離(3000rpm、20min)を施して微粒子を回収し、真空乾燥(35℃、30min)を施した。
【0081】
(調製例2−1〜2−7の評価試験)
調製例2−1〜2−7により得られた微粒子について、評価試験を行った。
【0082】
先ず、調製例2−1〜2−6により得られた微粒子について、各微粒子の成分の同定を、調製例1−1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定により行った。得られたXRDスペクトルを、
図5に示す。
【0083】
図5に示した結果から明らかなように、Niを添加しなかったCuナノ粒子(調製例2−6)はCu以外にもCu
2Oが見られたが、塩化ニッケルの添加量が0.05mmol(調製例2−1)ではCu
2Oのピークが弱くなり、塩化ニッケルの添加量が0.3mmol以上(調製例2−2〜2−5)のNi添加量ではCu
2Oのピークはほとんど見られなくなり、耐酸化性が向上することが確認された。また、Ni添加量を増やすにつれて、各粒子のピークはCuからNiのピーク位置に徐々にシフトしていくことが確認された。
【0084】
次に、調製例2−1〜2−6により得られた微粒子について、各微粒子の平均粒子径を、調製例1−1と同様にしてTEM観察を行い、平均粒子径を求めた。得られた結果を表2に示す。また、調製例2−1〜2−6で作製した微細CuNi合金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(スケールバー:50nm)を、調製例2−1は
図6に、調製例2−2は
図7に、調製例2−3は
図8に、調製例2−4は
図9に、調製例2−5は
図10に、調製例2−6は
図11に、それぞれ示す。
【0085】
また、調製例2−7により得られた比較用Cu
6Sn
5ナノ粒子について、上記と同様にして測定試験を行い、XRDスペクトルからCu
6Sn
5が主成分であることが、TEM観察の結果から平均粒子径が10nmであることが確認された。
【0086】
次いで、調製例2−1〜2−6により得られた微粒子について、ナノ粒子中のNi比率の組成分析を、高周波誘導結合プラズマ発光(ICP)分析装置(リガク社製、型式:CIROS−120EOP)を用い、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES)により行った。得られた結果を表2に示す。
【0087】
(実施例1−1)
調製例1−2で調製したCuナノ粒子と調製例2−3で調製した微細CuNi合金ナノ粒子とを乳鉢ですりつぶして混合し、全金属ナノ粒子に対して95質量%のCuナノ粒子と5質量%の微細CuNi合金ナノ粒子を含有する混合粉末を調製した。この混合粉末0.4gにデカノール20μL及びテルピネオール20μLを添加し、自転・公転ミキサーにより撹拌して接合材料ペーストを調製した。
【0088】
<接合強度測定>
リードフレームや半導体素子などにより構成される半導体装置において、接合層の接合強度を直接測定することは困難である。従って、得られた接合材料により形成される接合層の接合強度は、
図12に示すせん断強度測定用接合体を用いて、以下の方法により測定した。
【0089】
先ず、無酸素銅(C1020)からなる試験片8a(直径5mmφ×高さ2mm)の一方の面及び無酸素銅(C1020)からなる試験片8b(10mm×22mm×3mm)の一方の面にそれぞれRFスパッタリング法により厚さ40nmのNi密着層10a及び10bを形成した。
【0090】
次に、試験片8b上のNi密着層10bの表面に、メタルマスク(直径5mmφ×厚さ0.15mm)を用いて接合材料ペーストを塗布し、接合材料層(直径5mmφ×厚さ150μm)を形成した。この接合材料層と試験片8a上のNi密着層10aとが接するように試験片8aと試験片8bとを貼り合わせ、水素雰囲気中、無加圧の条件下、200℃で10分間予備加熱した後、接合温度250℃で5分間の加熱処理を施し、試験片8aと試験片8bが接合層9により接合された、せん断強度測定用接合体(
図12)を作製した。
【0091】
このようにして3個のせん断強度測定用接合体を作製し、これらのせん断強度を、インストロン型万能試験機(インストロン社製)を用いて、室温(20℃)、剪断速度1mm/分でそれぞれ測定し、これらの平均値を接合材料により形成された接合層の接合強度とした。その結果を表3に示す。また、接合層(混合物層)に含まれるNiの含有量を表3に示す。
【0092】
(実施例1−2〜1−5)
Cuナノ粒子として表3の「Cuナノ粒子(A)」に示したもの及び微細CuNi合金ナノ粒子として表3の「微細CuNi合金ナノ粒子又は微細Cuナノ粒子(B)」に示した微細CuNi合金ナノ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製した。得られた接合材料ペーストについて、実施例1−1と同様にして接合強度測定を行なった。得られた結果を表3に示す。
【0093】
(実施例1−6〜1−10)
Cuナノ粒子として表3の「Cuナノ粒子(A)」に示したもの及び微細CuNi合金ナノ粒子として表3の「微細CuNi合金ナノ粒子又は微細Cuナノ粒子(B)」に示した微細CuNi合金ナノ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製した。得られた接合材料ペーストについて、接合温度を300℃とした以外は実施例1−1と同様にして接合強度測定を行なった。得られた結果を表3に示す。
【0094】
(比較例1−1)
微細CuNi合金ナノ粒子を混合しなかった以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表3に示す。
【0095】
(比較例1−2)
微細CuNi合金ナノ粒子に代えて調製例2−6の微細Cuナノ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表3に示す。
【0096】
(比較例1−3)
微細CuNi合金ナノ粒子に代えて調製例2−7のCu
6Sn
5ナノ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表3に示す。
【0097】
(比較例1−4)
調製例1−2のCuナノ粒子に代えて調製例1−4のCuナノ粒子を用い、調製例2−4の微細CuNi合金ナノ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表3に示す。
【0098】
(比較例1−5)
微細CuNi合金ナノ粒子を混合しなかった以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製した。得られた接合材料ペーストについて、接合温度を300℃とした以外は実施例1−1と同様にして接合強度測定を行なった。得られた結果を表3に示す。
【0099】
(比較例1−6)
微細CuNi合金ナノ粒子に代えて調製例2−6の微細Cuナノ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にして接合材料ペーストを調製した。得られた接合材料ペーストについて、接合温度を300℃とした以外は実施例1−1と同様にして接合強度測定を行なった。得られた結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
<接合強度測定試験の結果>
表3に示した実施例1−1〜1−10の結果と比較例1−1〜1−6の結果との比較から明らかなように、実施例1−1〜1−10の接合材料ペーストは、接合温度が同じ比較用接合材料ペーストに対して接合強度が高い接合層が得られていることが確認された。この結果から、本実施例では、接合強度が高い接合層を低温(具体的には300℃以下)で形成することが可能な接合材料が得られていることが確認された。
【0102】
一方、比較例では、Cuナノ粒子(平均粒子径150nm)のみの接合材料により形成された接合層は、接合温度250℃で接合強度が11.7MPa(比較例1−1)、接合温度300℃で接合強度が18.6MPa(比較例1−5)であり、いずれも接合強度が低いことが確認された。また、調製例1−2のCuナノ粒子に対してNiを添加していない調製例2−6の微細Cuナノ粒子を添加した接合材料により形成された接合層は、接合温度250℃で接合強度が3.6MPa(比較例1−2)、接合温度300℃で接合強度が14.8MPa(比較例1−6)であり、いずれも接合強度が低いことが確認された。更に、調製例1−2のCuナノ粒子に対して、調製例2−7のCu
6Sn
5ナノ粒子を添加した接合材料により形成された接合層(比較例1−3)は、接合温度250℃で接合強度が7.4MPaと接合強度が低いことが確認された。これに対して、調製例1−2のCuナノ粒子に対して、微細CuNi合金ナノ粒子を添加した接合材料により形成された接合層は、接合温度250℃(実施例1−1〜1−3)及び接合温度300℃(実施例1−6〜1−10)ともにいずれの場合も、調製例1−2のCuナノ粒子のみの接合材料により形成された接合層(比較例1−1)の場合よりも接合強度が向上することが確認された。
【0103】
以上の結果から、粒子径及び平均粒子径が特定の範囲のCuナノ粒子と平均粒子径が特定の範囲の微細CuNi合金ナノ粒子とからなる金属ナノ粒子混合物を含有する接合材料は、該材料により形成される接合層の接合強度が向上することが確認された。これは、Niを添加することにより、微細Cuナノ粒子の耐酸化性が向上するためによると考えられる。一方、Niを添加しなかった微細Cuナノ粒子や、Ni以外のSnを添加した微細Cuナノ粒子では、粒子が酸化しやすいため、接合強度の向上は期待できないことが確認された。
【0104】
次に、接合材料における金属ナノ粒子混合物中のCuナノ粒子の粒子径に着目し、調製例1−2のCuナノ粒子(平均粒子径150nm)から粒子径が変化した場合について考察する。調製例1−4のCuナノ粒子(平均粒子径20nm)に対して調製例2−4の微細CuNi合金ナノ粒子(平均粒子径15.1nm)を添加した接合材料により形成された接合層(比較例1−4)は、接合温度250℃で接合強度が0.93MPaであったのに対し、調製例1−1のCuナノ粒子(平均粒子径300nm)及び調製例1−3のCuナノ粒子(平均粒子径60nm)に対して調製例2−4の微細CuNi合金ナノ粒子(平均粒子径15.1nm)を添加した接合材料により形成された接合層は、接合温度250℃で接合強度が13.1MPa(実施例1−4)及び接合温度250℃で接合強度が11.8MPa(実施例1−5)と、いずれも調製例1−2のCuナノ粒子のみの接合材料により形成された接合層(比較例1−1)よりも接合強度が高くなることが確認された。また、微細CuNi合金ナノ粒子の平均粒子径に対するCuナノ粒子の平均粒子径の比が4〜20の場合において接合強度の向上が見られることが確認された。
【0105】
以上の結果から、Cuナノ粒子の平均粒子径が50nm〜1000nmの範囲でかつ微細CuNi合金ナノ粒子の平均粒子径が1nm〜50nmの範囲にある接合材料の場合、該材料により形成された接合層の接合強度の向上が見られることが確認された。なお、Cuナノ粒子の粒子径が50nm未満の場合は、Cuナノ粒子の耐酸化性が不十分であるため、接合層の焼結が不十分となり強度が低下したと考えられる。また、Cuナノ粒子と微細CuNi合金ナノ粒子の平均粒子径の比が4〜20である接合材料において、該材料により形成された接合層の接合強度の向上が見られることが確認された。
【0106】
(実施例2−1〜2−9)
調製例1−2で調製したCuナノ粒子と調製例2−4で調製した微細CuNi合金ナノ粒子とを乳鉢ですりつぶして混合し、全金属ナノ粒子に対して99.9〜71.0質量%のCuナノ粒子と0.1〜29.0質量%の微細CuNi合金ナノ粒子を含有する混合粉末を調製した(実施例2−1〜2−9)。この混合粉末0.4gにデカノール20μL及びテルピネオール20μLを添加し、自転・公転ミキサーにより撹拌して接合材料ペーストを調製した。得られた接合材料ペーストについて、実施例1−1と同様にしてせん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度測定を行なった。得られた結果を表4に示す。
【0107】
(比較例2−1)
微細CuNi合金ナノ粒子を混合しなかった以外は実施例2−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表4に示す。
【0108】
(比較例2−2)
調製例1−2で調製したCuナノ粒子の含有量が70.0質量%及び調製例2−4で調製した微細CuNi合金ナノ粒子の含有量が30.0質量%からなる混合粉末を調製した以外は、実施例2−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表4に示す。
【0109】
(比較例2−3)
Cuナノ粒子を混合しなかった以外は実施例2−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
<接合強度測定試験の結果>
表4に示した実施例2−1〜2−9の結果と比較例2−1〜2−3の結果との比較から明らかなように、実施例2−1〜2−9の接合材料ペーストは、微細CuNi合金ナノ粒子の含有量を0.1〜29質量%の範囲とすることにより、すなわち、Cuナノ粒子の含有量をCuナノ粒子及び微細CuNi合金ナノ粒子の合計量に対して99.9〜71質量%の範囲とすることにより、低温において接合強度が高い接合層が得られることが確認された。この結果から、本実施例では、接合強度が高い接合層を低温(具体的には300℃以下)で形成することが可能な接合材料が得られることが確認された。
【0112】
一方、調製例2−4の微細CuNi合金ナノ粒子を添加しなかった接合材料により形成された接合層(比較例2−1)、及び、微細CuNi合金ナノ粒子の添加量を30質量%とした接合材料により形成された接合層(比較例2−2)は、いずれも接合強度が低いことが確認された。また、調製例2−4の微細CuNi合金ナノ粒子のみからなる接合材料により形成された接合層(比較例2−3)は、ほとんど強度が出ず、容易に破断したことが確認された。
【0113】
以上の結果から、微細CuNi合金ナノ粒子の含有量を0.1〜29質量%とすることにより、低温において接合強度が高い接合層が得られることが確認された。また、微細CuNi合金ナノ粒の含有量は0.1〜29質量%であることが好ましく、1〜27質量%であることがより好ましいことが確認された。
【0114】
(実施例3−1〜3−3)
調製例1−2で調製したCuナノ粒子と調製例2−4で調製した微細CuNi合金ナノ粒子とを乳鉢ですりつぶして混合し、全金属ナノ粒子に対して95.0質量%のCuナノ粒子と5.0質量%の微細CuNi合金ナノ粒子を含有する混合粉末を調製した。
【0115】
次に、このCuナノ粒子−微細CuNi合金ナノ粒子混合粉末に、粒子径が1μm超のCu粒子からなりかつ平均粒子径が5μmのCuミクロン粒子を表5に示す量で混合した粉末0.3gに対して、デカノール15μL、テルピネオール15μLを添加し、自転・公転ミキサーにより撹拌して接合材料ペースト(金属ナノ粒子混合物)を調製した。得られた接合材料ペーストについて、実施例1−1と同様にしてせん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度測定を行なった。得られた結果を表5に示す。
【0116】
(比較例3−1)
Cuナノ粒子−微細CuNi合金ナノ粒子混合粉末に対してCuミクロン粒子の混合量を90.0質量%とした以外は実施例3−1と同様にして接合材料ペーストを調製し、更に、せん断強度測定用接合体を作製して接合層の接合強度を求めた。その結果を表5に示す。
【0117】
【表5】
【0118】
<接合強度測定試験の結果>
表5に示した結果から明らかなように、接合材料(Cuナノ粒子−微細CuNi合金ナノ粒子混合粉末からなる金属ナノ粒子混合物+Cuミクロン粒子)におけるCuミクロン粒子の含有量を25〜85質量%とした接合材料により形成された接合層(実施例3−1〜3−3)の接合強度は、Cuミクロン粒子の含有量を90.0質量%とした接合材料により形成された接合層(比較例3−1)、及び調製例1−2で調製したCuナノ粒子のみの接合材料により形成された接合層(比較例2−1)の接合強度に比べて、高くなることが確認された。
【0119】
以上の結果から、接合材料におけるCuミクロン粒子の含有量を全金属粉末の85質量%以下とした接合材料に場合においても、調製例1−2で調製したCuナノ粒子のみの接合材料(比較例2−1)よりも、接合強度が高い接合層を低温(具体的には300℃以下)で形成することが可能であることが確認された。
【0120】
以上より、表3及び表4に示した実施例1−1〜1−10及び実施例2−1〜2−9の結果と、比較例1−1〜1−6及び比較例2−1〜2−9の結果との比較から明らかなように、実施例1−1〜1−10及び実施例2−1〜2−9の接合材料ペーストは、粒子径が1000nm以下のCu粒子からなりかつ平均粒子径が50nm〜1000nmであるCuナノ粒子と、平均粒子径が1nm〜50nmである微細CuNi合金ナノ粒子とからなる金属ナノ粒子混合物を含有しており、金属ナノ粒子混合物における微細CuNi合金ナノ粒子の含有量が0.1〜29質量%であり、かつ、金属ナノ粒子混合物の含有量が15質量%以上の範囲に含有する接合材料とすることにより、接合強度が高い接合層を低温(具体的には300℃以下)で形成することが可能な接合材料とすることができることが確認された。