(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6270301
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】液体塗布具
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20180129BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20180129BHJP
B05C 17/005 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A45D34/04 530
B05C17/005
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-549105(P2017-549105)
(86)(22)【出願日】2016年6月1日
(86)【国際出願番号】JP2016066169
【審査請求日】2017年9月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591240685
【氏名又は名称】ハクゾウメディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147661
【氏名又は名称】日本ベクトン・ディッキンソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100203068
【弁理士】
【氏名又は名称】浅尾 遼
(72)【発明者】
【氏名】一橋 俊司
(72)【発明者】
【氏名】及川 昭彦
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−18411(JP,U)
【文献】
特表2005−527266(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0234711(US,A1)
【文献】
特表2010−524517(JP,A)
【文献】
特表2006−512975(JP,A)
【文献】
米国特許第4525091(US,A)
【文献】
特開平10−201791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A45D 34/04
B05C 17/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を内部に含む容器と、前記容器を収容する中空体と、前記中空体の外面に設けられた操作部と、前記中空体と連通し且つ前記液体を人体等に塗布する塗布部と、前記操作部が前記中空体の内側へ向けて押下されることで前記容器を破壊し前記液体を前記容器から流出させる液体流出機構とを備えた液体塗布具であって、
前記容器は、前記液体が充填された充填部と、前記充填部の口部をシールしたシール部とを有する袋状物であり、
前記液体流出機構は前記中空体の内部で且つ前記袋状物の外部に位置すると共に、前記シール部にテンションを付与した状態でこのシール部を挟持する板状部材を有する保持部と、前記操作部の押下によって前記シール部に当接する当接部とを有し、
前記保持部には前記当接部の下降を許容する間隙が形成されており、前記操作部を前記中空体の内側へ向けて押下することで前記当接部が前記間隙内で前記シール部に切れ目を形成し前記液体を前記充填部から流出させる液体塗布具。
【請求項2】
前記当接部は、前記中空体の軸方向に沿う長尺部材であり、前記当接部の下端部は、その幅が前記間隙の幅より大きくなるように前記軸方向視で略V字形に形成されている請求項1記載の液体塗布具。
【請求項3】
前記当接部の内側には、前記軸方向に沿って空間が形成されている請求項1又は2に記載の液体塗布具。
【請求項4】
前記シール部は一対の第一貫通孔を有し、前記板状部材は前記第一貫通孔を貫通する一対の突条を有し、前記一対の第一貫通孔及び前記一対の突条は、前記間隙を挟んで対向して配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の液体塗布具。
【請求項5】
前記板状部材は、前記突条が形成された第一板状部材と前記突条を貫通させる第二貫通孔を有する第二板状部材からなり、前記シール部を前記第一板状部材と前記第二板状部材で挟持する請求項4記載の液体塗布具。
【請求項6】
前記第一板状部材は、前記突条と前記間隙との間に上方に向けて突出する突出部をさらに有する請求項5記載の液体塗布具。
【請求項7】
前記操作部は、前記中空体の外面に設けられた基端部から前記軸方向に沿って延設されたハンドル部を有し、前記ハンドル部の一端のみが前記中空体に固定され、前記一対の第一貫通孔、第二貫通孔及び突条は、前記基端部の直下又は直下より前記ハンドル部の他端側に配置されている請求項5又は6記載の液体塗布具。
【請求項8】
前記保持部は、前記中空体に向けて突出し前記間隙を形成する脚部を有し、前記中空体は、その内面に前記脚部を係止させる係止部が形成され、前記係止部が前記保持部を前記操作部の直下に位置させる請求項1〜7のいずれかに記載の液体塗布具。
【請求項9】
前記シール部は、前記切れ目を前記軸方向に沿って形成した易開封処理部を有する請求項1〜8のいずれかに記載の液体塗布具。
【請求項10】
前記易開封処理部は、前記間隙に沿って形成されたミシン目である請求項9記載の液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布具に関する。さらに詳しくは、液体を内部に含む容器と、前記容器を収容する中空体と、前記中空体の外面に設けられた操作部と、前記中空体と連通し且つ前記液体を人体等に塗布する塗布部と、前記操作部が前記中空体の内側へ向けて押下されることで前記容器を破壊し前記液体を前記容器から流出させる液体流出機構とを備えた液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き液体塗布具としては、例えば特許文献1に記載の如きものが知られている。この塗布具は、内部に少なくとも1本のアンプルを備えるが、そのアンプルはガラス製であるため、アンプルを破割し液体を塗布する際に必ず破片が生じてしまう。そのガラス片が人体等の塗布対象に触れないように安全対策を講じなければならず、塗布具の構造が複雑となっていた。また、ガラスを破壊するため、力強く押さなければならず、作業性の向上も望まれていた。
【0003】
一方で、当該文献の段落0013には「他のアンプルには、破壊可能なプラスチック、ホイル、またはプラスチック薄膜袋を含んでよい。」と記載されている。しかし、当該文献に開示された破割機構はガラス製アンプルを対象としており、上述の如きガラス製以外のアンプルに適用したとしても、スムースにアンプルを破壊して液体を流出させることができず、作業性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−524517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡素な構造でありながら、迅速に液体を流出させて塗布することが可能な液体塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る液体塗布具の特徴は、液体を内部に含む容器と、前記容器を収容する中空体と、前記中空体の外面に設けられた操作部と、前記中空体と連通し且つ前記液体を人体等に塗布する塗布部と、前記操作部が前記中空体の内側へ向けて押下されることで前記容器を破壊し前記液体を前記容器から流出させる液体流出機構とを備えた構成において、前記容器は、前記液体が充填された充填部と、前記充填部の口部をシールしたシール部とを有する袋状物であり、前記液体流出機構は前記中空体の内部で且つ前記袋状物の外部に位置すると共に、前記シール部にテンションを付与した状態でこのシール部を挟持する板状部材を有する保持部と、前記操作部の押下によって前記シール部に当接する当接部とを有し、前記保持部には前記当接部の下降を許容する間隙が形成されており、前記操作部を前記中空体の内側へ向けて押下することで前記当接部が前記間隙内で前記シール部に切れ目を形成し前記液体を前記充填部から流出させることにある。
【0007】
上記構成によれば、容器は液体が充填された充填部と充填部の口部をシールしたシール部とを有する袋状物であり、液体流出機構は中空体の内部で且つ袋状物の外部に位置すると共に、シール部にテンションを付与した状態でシール部を挟持する板状部材を有する保持部とシール部に当接する当接部を有する。そして、この保持部には、当接部の下降を許容する間隙が形成されている。これにより、間隙部分に位置するシール部にはテンションが付与されるので、操作部を小さな力で押下しても下降した当接部によってシール部に切れ目を形成することできる。しかも、シール部を緊張させてあるので、形成された切れ目を発端としてシール部が引裂かれていくことで充填部が開放され、迅速に液体を流出させることができる。しかも、容器は袋であり且つ液体流出機構は切れ目を形成するだけである。従って、中空体内部に容器の破片が生じることがないので、清潔で且つ安全性も高く、特別な安全対策も不要で構造も簡素である。
【0008】
また、前記当接部は、前記中空体の軸方向に沿う長尺部材であり、前記当接部の下端部は、その幅が前記間隙の幅より大きくなるように前記軸方向視で略V字形に形成されているとよい。下端部が略V字形状であるので、より小さな力であっても切れ目を形成できる。しかも、略V字形状は間隙の幅より大きくなるように形成されているので、操作部を中空体の内側へ向けて押下することで、当接部がシール部を引き裂くこととなり、よりスムースに充填部を開放させることができる。
【0009】
係る場合、前記当接部の内側には、前記軸方向に沿って空間が形成されているとよい。これにより、当接部が降下し間隙部分を通過しても、充填部から流出した液体の多くが当接部の内側空間を通過して流動するので、液体の流出が当接部自体で阻害されることが少なく、液体をよりスムースに流通させることができる。
【0010】
前記シール部は一対の第一貫通孔を有し、前記板状部材は前記第一貫通孔を貫通する一対の突条を有し、前記一対の第一貫通孔及び前記一対の突条は、前記間隙を挟んで対向して配置されているとよい。これにより、間隙部分でのシール部のずれ(移動やたるみ)を防止し、間隙内のシール部にテンションを掛けることができる。
【0011】
係る場合、前記板状部材は、前記突条が形成された第一板状部材と前記突条を貫通させる第二貫通孔を有する第二板状部材からなり、前記シール部を前記第一板状部材と前記第二板状部材で挟持するとよい。これにより、より強固にシール部のずれを防止し且つ間隙内のシール部にテンションを掛けることができる。
【0012】
また、前記第一板状部材は、前記突条と前記間隙との間に上方に向けて突出する突出部をさらに有するとよい。突出部により第一板状部材と第二板状部材で挟持されたシール部の中央部分が盛り上げられるので、当該部分にさらにテンションが付加され、より迅速且つ容易にシール部を引き裂くことができる。
【0013】
前記操作部は、前記中空体の外面に設けられた基端部から前記軸方向に沿って延設されたハンドル部を有し、前記ハンドル部の一端のみが前記中空体に固定され、前記一対の第一貫通孔、第二貫通孔及び突条は、前記基端部の直下又は直下より前記ハンドル部の他端側に配置されているとよい。ハンドル部の操作によって生じる下方への押圧力は、操作部の基端部又はその後方の自由端であるハンドル部の他端側に掛かりやすい。従って、そのような加重の掛りやすい位置に一対の第一貫通孔、第二貫通孔及び突条を設けることで、加重(押圧力)によって生じるシール部のずれやたるみを強固に阻止し、シール部のテンションを維持することができる。
【0014】
前記保持部は、前記中空体に向けて突出し前記間隙を形成する脚部を有し、前記中空体は、その内面に前記脚部を係止させる係止部が形成され、前記係止部が前記保持部を前記操作部の直下に位置させるとよい。これにより、保持部の操作部に対する位置ずれを防止して、シール部を緊張させて保持することができる。しかも、保持部を操作部の直下に位置させることで、操作部の押圧力をより効率よく切れ目の形成に利用することができる。
【0015】
前記シール部は、前記切れ目を前記軸方向に沿って形成した易開封処理部を有するとよい。これにより、より小さな力で切れ目を形成することができる。係る場合、前記易開封処理部は、前記間隙に沿って形成されたミシン目であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明に係る液体塗布具の特徴によれば、簡素な構造でありながら、迅速に液体を流出させて塗布することが可能となった。
【0017】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図8】液体流出機構の動きを説明する説明図である。
【
図10】本発明のさらに他の実施形態を示す
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、
図1〜8を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る液体塗布具1は、
図1〜3に示すように、大略、液体Lを内部に含む容器2と、容器2を収容する中空体3と、中空体3の外面31に設けられた操作部4と、中空体3と連通し且つ液体Lを人体等に塗布する塗布部5と、操作部4が中空体3の内側へ向けて押下されることで容器2を破壊し液体Lを容器2から流出させる液体流出機構10とを備える。
【0020】
容器2は、
図2,7に示すように、例えば合成樹脂製のフィルムを貼り合わせてその周囲を熱溶着等で密封された袋状物20である。この袋状物20は、中空体3の軸方向Xに沿う略長方形状を呈し、液体Lが充填された充填部21と、充填部21の口部22をシールしたシール部23とを有する。シール部23には、その中間部に中空体3の軸方向Xに沿ってミシン目24が形成されている。本実施形態では、このミシン目24が易開封処理部として機能する。また、シール部23には、ミシン目24を挟んで一対の第一貫通孔25,25が形成されており、後述する保持部6の一対の突条64,64が貫通する。
【0021】
なお、本発明において、袋状物20に充填される液体Lは、特に限定されるものではないが、例えば、手術前に患者の皮膚に塗布される消毒液や薬液などである。また、袋状物20のフィルムの材質は、充填する液体Lの物性や滅菌処理等に応じて適宜選択可能であり、特に限定されるものではない。
【0022】
中空体3は、
図1〜3に示すように、例えば合成樹脂をプレス成形等によって扁平状に成形され、内部に容器2を収容する収容空間30が形成されている。中空体3の外面31には後述の操作部4が一体に形成されている。また、内面32には、
図6に示すように、軸方向Xに直交する直交方向Yに沿って段差部33aと突出部33bとが形成されている。
図3に示すように、段差部33aと突出部33bは、後述の基端部41に対して略対称の位置に形成されている。本実施形態では、この段差部33aと突出部33bが係止部33を構成する。また、開口部34には後述の塗布部5が取り付けられ、後端部35には収容空間30の空気を外部へ放出する通気孔36が形成されている。
【0023】
操作部4は、
図1〜5に示すように、中空体3の外面31から立設された基端部41と、基端部41から軸方向Xに沿って延設された平面視で略板状のハンドル部42を有する。ハンドル部42の先端部42aは開口部34で中空体3に固定されているが、後端部42bは中空体3に固定されていない。これにより、後端部42bを中空体3へ向けて押圧すると、基端部41が中空体3を変形させ、当接部7を降下させる。なお、図示省略するが、中空体3の外面31に押圧した後端部42bを掛止させる掛止部を設けることも可能である。但し、係る場合、袋状物20に切れ目が形成された後も当接部7がシール部23近傍の位置で保持されるため、液体Lの流動性は低下する。
【0024】
塗布部5は、
図1〜3に示すように、液体Lを人体等に塗布するスポンジ51と、スポンジ51と収容空間30とを接続させ液体Lを流通させる流通通路52とを有する。スポンジ51は、例えばフェルトや連続気泡材料等の多孔質材料より構成され、接着等により台座53に固定される。また、流通通路52は、台座53の中央部に形成した孔54でスポンジ51に連通する。なお、本発明において、スポンジ51、流通通路52、台座53及び孔54の材料、構造、形状、大きさ、数、位置等は、充填する液体Lの物性や液体の流出量等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。また、図示省略するが、スポンジ51表面に単数又は複数のスリットを形成してもよく、その形状、大きさ、数、位置等も適宜選択すればよい。
【0025】
液体流出機構10は、
図2,5に示すように、袋状物20のシール部23を保持する保持部6と、操作部4の押下によってシール部23に当接する当接部7とを備える。本実施形態では、保持部6及び当接部7は、中空体3とは別体であり、収納空間30に内蔵されている。
【0026】
保持部6は、
図5,7に示すように、シール部23を挟持する第一、第二板状部材61,62を有する。第一、第二板状部材61,62には、後述する当接部7の下降を許容する間隙63が軸方向Xに沿って形成され且つ直交方向Yの中央部に位置する。第一板状部材61は、シール部23の一対の第一貫通孔25,25を貫通する一対の突条64,64が間隙63を挟んで対向して配置されている。これにより、間隙63上のシール部23にはテンションが付与される。また、第一板状部材61には、中空体3に向けて突出し間隙63を形成する脚部65が形成されている。この脚部65の底部65aが、
図6に示すように、中空体3の段差部33a及び突出部33bに係止するので、シール部23の基端部41に対する位置決めがなされ、軸方向Xへの位置ずれを防止する。
【0027】
第二板状部材62には、突条64が貫通する第二貫通孔66が形成されている。端部62aは、下方に向けて屈曲させた屈曲部67を有し、その先端は間隙63側に向けて突出する突起部67aを有する。これにより、端部61a,62aが嵌合しシール部23を構成するフィルムのずれやたるみを防止すると共に確実に保持する。また、第二板状部材62の四隅には、当接部7を間隙63の上方に位置させる支持部68が形成されている。
【0028】
当接部7は、
図5,7,8に示すように、中空体3の軸方向Xに沿って長尺状に形成され、下端部71は、その幅W1が間隙63の幅W2より大きくなるように軸方向視で略V字形に形成されている。また、下端部71の先端72は、鋸刃状に形成されている。当接部7の内側は、軸方向Xに沿って空間73が形成されている。
【0029】
ここで、操作部4の基端部41は、
図3に示すように、軸方向Xに沿って形成され且つ、基端部41の軸方向Xの中央部は直交方向Yに沿って幅広に形成されている。そのため、ハンドル部42を押圧すると、後端42b側の基端部41から順次加重される。また、ハンドル部42の先端部42aは開口部34に固定されているので、基端部41での押圧力は僅かながら開口部34へ負荷される。そのため、シール部23の第一貫通孔25、第二板状部材62の第二貫通孔66及び第一板状部材61の突条64は、基端部41の軸方向Xの中央部又はその直下よりハンドル部42の後端部42b側に配置している。このような加重の掛りやすい位置にシール部23を保持するための第一貫通孔25、第二貫通孔66及び突条64を位置させることで、押圧時に生じるシール部23のずれやたるみを強固に阻止し、シール部23のテンションを維持することができる。また、押圧力を効率よく利用することができる。
【0030】
次に、
図8を参照しながら、液体流出機構10の動作について説明する。
操作部4のハンドル部42を押圧すると、その押圧力によって中空体3が変形して当接部7が降下し、
図8(a)に示すように、当接部7の先端72が間隙63上に位置するシール部23に当接する。そして、シール部23に切れ目Cを形成され、当接部7がさらに降下すると、同図(b)に示すように、保持部6で保持されたシール部23は外側に向けて引っ張られる。よって、形成した切れ目Cからフィルム(シール部23)が引き裂かれていき、口部22が切断され、液体Lが充填部21から流出する。さらに当接部7が降下すると、下端部71の幅W1が間隙63の幅W2より大きいので、同図(c)に示すように、下端部71が間隙63を押し広げ、フィルム(シール部23)がさらに引き裂かれる。しかも、流出した液体Lの多くが当接部7の空間73を通過するので、当接部7による液体Lの流出の阻害を回避でき、充填部21からの液体Lの流出がスムースとなる。
【0031】
最後に、
図9〜11を参照しながら、本発明の他の実施形態について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、下端部71の幅W1を間隙63の幅W2より大きくなるようにテーパー状に形成した。しかし、例えば、
図9(a)に示すように、当接部7’の幅W1を間隙63の幅W2より小さくなるように形成することも可能である。但し、シール部23の切断を迅速に行う点で上記実施形態が優れている。なお、同図に示すように、間隙63を形成する脚部65に対称に一対の補助脚部69,69を設けて保持部6の安定性を向上させても構わない。
【0032】
上記実施形態において、第一板状部材61の一対の突条64,64をシール部23の第一貫通孔25,25に貫通させる構成とした。しかし、例えば、
図9(b)に示すように、一対の突条64,64を省略し、第一、第二板状部材61’,62’でシール部23を挟持すると共に接着等で接着固定させてもよい。シール部23(フィルム)が、保持部6に対して位置ずれやたるみを生じない態様であればよい。
【0033】
上記実施形態において、当接部7を第二板状部材62の支持部68で支持する構成としたが、例えば、
図9(c)に示すように、中空体3の内面32に当接部7”を設け、保持部6とは別体に形成することも可能である。なお、
図9(a)(c)に示す如き当接部7’,7”は内部空間73を有さない。特に、
図9(c)の当接部7”は幅広である。そのため、これらの態様では、袋状物20の充填部21から流出した液体Lは、当接部7’,7”を回避して間隙63へ流れる。そのため、上記実施形態の方が、流出の迅速さの点で優れている。
【0034】
中空体3や操作部4等の寸法や形状は、上記実施形態に限られるものではなく、例えば
図10に示す如き態様も可能である。同図に例示するように、中空体3’を断面視でほぼ方形に形成し呈し、平面視で操作部4’の基端部41近傍を後端部35側よりも幅広に形成してもよい。また、操作部4’の先端部42a’の形状を湾曲させることなく後端部42bからほぼ直線状に形成しても構わない。これにより、後端部42bに生じる押圧力を効率よく基端部41に伝達させることができ、スムースに袋状物20に切れ目を入れることができる。
【0035】
また、
図11に示す如く、第一板状部材61と脚部65との交差部分に上方へ向けて突出する突出部61bを設けても構わない。これにより、袋状物20の帯状のシール部23中央のミシン目24近傍にテンションをさらに付加することができ、より容易に切れ目を形成することができる。なお、突出部61bは、第一板状部材61の突条64と間隙63との間に設けるのが好ましく、シール部23にテンションを付与しミシン目24を容易に且つ迅速に切断可能な態様であれば特に形状や個数は限定されない。
【0036】
上記実施形態において、中空体3の内面32に形成した段差部33a及び突出部33bにより係止部33を構成した。しかし、係止部の構成は、保持部6の操作部4に対する位置ずれを防止し得る態様であれば、これに限定されるものではない。
【0037】
また、上記実施形態において、シール部23に軸方向Xに沿ってミシン目24を形成した。しかし、易開封処理部としてはミシン目に限られるものではなく、例えばシール部23に微細な孔やエンボス、傷を施しておくことでフィルムを弱化させてもよい。係る場合、中空体3の軸方向Xに沿って切断容易となるように加工を施すとよい。これらの弱化加工やミシン目(ジッパー)は、組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1:液体塗布具、2:容器、3,3’:中空体、3a:外面、4,4’:操作部、5:塗布部、6:保持部、7,7’,7’’:当接部、10:液体流出機構、20:袋状物(容器)、21:充填部、22:口部、23:シール部、24:ミシン目(易開封処理部)、25:第一貫通孔、30:収容空間、31:外面、32:内面、33:係止部、33a:段差部、33b:突出部、34:開口部、35:後端部、36:通気孔、41:基端部、42:ハンドル部、42a,42a’:先端部、42b:後端部、51:スポンジ、52:流通通路、53:台座、54:孔、61,61’:第一板状部材、61a:端部、61b:突出部、62,62’:第二板状部材、62a:端部、63:間隙、64:突条、65:脚部、65a:底部、66:第二貫通孔、67:屈曲部、67a:突起部、68:支持部、69:補助脚部、71:下端部、72:先端、73:空間、C:切れ目、F:引張力、L:液体、W1,W2:幅、X:軸方向、Y:直交方向(幅方向)
【要約】
簡素な構造でありながら、迅速に液体を流出させて塗布することが可能な液体塗布具を提供すること。
容器は、液体(L)が充填された充填部(21)と、充填部(21)の口部をシールしたシール部(23)とを有する袋状物である。液体流出機構(10)は、シール部(23)にテンションを付与した状態でシール部(23)を保持する保持部(6)と、操作部(4)の押下によってシール部(23)に当接する当接部とを有する。保持部(6)には当接部の下降を許容する間隙が形成されている。操作部(4)を中空体(3)の内側へ向けて押下することで当接部が間隙内でシール部(23)に切れ目を形成し液体(L)を充填部(21)から流出させる。