(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270322
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】外壁面材の取り付け構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
E04F13/08 101G
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-44586(P2013-44586)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-173261(P2014-173261A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】山内 正康
(72)【発明者】
【氏名】黒田 宏
(72)【発明者】
【氏名】広沢 建二
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠樹
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−091525(JP,A)
【文献】
特開2008−285887(JP,A)
【文献】
実公昭58−050097(JP,Y2)
【文献】
特開平08−177200(JP,A)
【文献】
特開2011−069454(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0267525(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/07−13/30
F16B 21/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面材を取り付ける支持材に係合突起部が設けられており、上記外壁面材の背面部に凹所が設けられており、上記凹所に上記係合突起部の先端部を受け止める受け部材が装着されており、
上記外壁面材の上記凹所は、上記受け部材が挿入される挿入凹部と、この挿入凹部よりも開口が小さくて上記受け部材が保持される保持凹部とが連接されて成り、上記受け部材には上記係合突起部の先端部を案内する案内部が形成されており、上記受け部材が上記保持凹部に装着された状態で、上記案内部が上記挿入凹部の縁から連続するように形成されていることを特徴とする外壁面材の取り付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁面材の取付け構造において、上記受け部材は、上記凹所の底側に位置する奥側部と上記支持材の側に位置する前側部とからなることを特徴とする外壁面材の取付け構造。
【請求項3】
請求項2に記載の外壁面材の取付け構造において、上記奥側部は上記係合突起部の先端面の面積よりも大きな面積を有することを特徴とする外壁面材の取付け構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の外壁面材の取付け構造において、上記受け部材の上記奥側部と上記前側部とが弾性的に接続されていることを特徴とする外壁面材の取付け構造。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の外壁面材の取付け構造において、上記受け部材の上記前側部には、上記係合突起部の先端部の首部が位置する切欠き部と、上記係合突起部の先端部の頭部が収容される収容部とが形成されていることを特徴とする外壁面材の取付け構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の外壁面材の取付け構造において、上記係合突起部の先端部と上記受け部材との間に接着剤が充填されていることを特徴とする外壁面材の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁面材を支持材に取り付ける外壁面材の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外壁面材の凹所の挿入部に挿入した掛け金物の掛け部を、スライド部を通じてスムーズに受け部に移行させることができて、取付け側への外壁面材の取付けを容易にすることができる外壁面材の取付け構造が開示されている。具体的には、外壁面材を取り付ける取付け側に、ビスからなる掛け金物が複数互いに間隔をおいて設けられ、外壁面材の背面部に、上記掛け金物の掛け部を掛けさせる対応数の凹所が設けられ、各凹所は、掛け部を挿入する挿入部と挿入部よりも狭幅で掛け部を受ける受け部を有し、それらをつなぐ中間部をスライド部とし、スライド部が、その幅寸法を挿入部から受け部にわたって漸次小さくしていくよう形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−285887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された外壁面材の取付け構造では、上記外壁面材の凹所に上記掛け金物であるビスの頭部を挿入してスライドさせる際に、上記頭部が上記凹所に接触して上記外壁面材にクラックを生じさせるおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、上記外壁面材の凹所に係合突起部を挿入してスライドさせる際に上記外壁面材にクラックを生じさせない外壁面材の取付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の外壁面材の取付け構造は、上記の課題を解決するために、外壁面材を取り付ける支持材に係合突起部が設けられており、上記外壁面材の背面部に上記係合突起部が掛けられる凹所が設けられており、上記凹所に上記係合突起部の先端部を受け止める受け部材が装着されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記外壁面材の上記凹所に上記係合突起部を挿入してスライドさせる際に、上記係合突起部の先端部が上記受け部材によって受け止められるので、上記外壁面材にクラックを生じさせないようにできる。
【0008】
上記受け部材は、上記凹所の底側に位置する奥側部と上記支持材の側に位置する前側部とからなっていてもよい。これによれば、上記係合突起部の先端部を上記奥側部と上記前側部とで挟み込むようにして保持することができる。
【0009】
上記奥側部は上記係合突起部の先端面の面積よりも大きな面積を有していてもよい。これによれば、上記係合突起部の先端部が上記凹所に与える衝撃を上記大きな面積の奥側部によって緩和することができる。
【0010】
上記受け部材の上記奥側部と上記前側部とが弾性的に接続されていてもよい。これによれば、上記受け部材を上記凹所に弾性保持させておくことが可能になる。したがって、外壁パネルの製作段階で上記受け部材が上記凹所内で位置ずれするのを防止できる。
【0011】
上記受け部材の上記前側部には、上記係合突起部の先端部の首部が位置する切欠き部と、上記係合突起部の先端部の頭部が収容される収容部とが形成されていてもよい。これによれば、上記係合突起部の先端部の頭部が上記受け部材の上記前側部で適切に係合される。
【0012】
上記外壁面材の上記凹所は、上記受け部材が挿入される挿入凹部と、この挿入凹部よりも開口が小さくて上記受け部材が保持される保持凹部とが連接されて成り、上記受け部材には上記係合突起部の先端部を案内する案内部が形成されており、上記受け部材が上記保持凹部に装着された状態で、上記案内部が上記挿入凹部の縁から連続するように形成されていてもよい。これによれば、上記係合突起部の先端部を上記挿入凹部の箇所から上記受け部材へ上記案内部によってスムーズに導くことができる。
【0013】
上記係合突起部の先端部と上記受け部材との間に接着剤が充填されていてもよい。これによれば、上記係合突起部を上記接着剤によって上記受け部材に強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明であれば、上記外壁面材の凹所に係合突起部を挿入してスライドさせる際に上記外壁面材にクラックを生じさせないようにできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の外壁面材の取付け構造を示した断面図である。
【
図2】
図1の外壁面材およびフレームを示した斜視図である。
【
図3】同図(A)は
図1の外壁面材の取付け構造における凹所を示した正面図であり、同図(B)は縦断面図である。
【
図4】同図(A)は
図1の外壁面材の取付け構造における受け部材を示した正面図であり、同図(B)は背面図であり、同図(C)は同図(A)のA−A断面図である。
【
図5】同図(A)、同図(B)および同図(C)は
図1の外壁面材の取付け構造における受け部材を凹所に装着する操作を示した説明図である。
【
図6】同図(A)は
図1の外壁面材の取付け構造を示した正面図であり、同図(B)は縦断面図である。
【
図7】同図(A)および同図(B)は
図1の外壁面材の取付け構造における受け部材に裏面固定ビスの頭部を装着する操作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、外壁パネル1は、外壁面材2と、板部材3と、面板材(グラスウール板等)4と、上記外壁面材2を取り付ける支持材となるフレーム5とを備えている。
【0017】
上記板部材3および上記面板材4は、釘11によって上記フレーム5に固定されている。また、上記面板材4には、上記板部材3方向に沈み込み防止樹脂ピン12が設けられており、上記釘11が打ち込まれるときに上記面板材4が沈み込むのを防止するようにしている。
【0018】
上記フレーム5は鋼製または木製である。上記フレーム5には、裏面固定ビス(係合突起部)6がねじ込まれている。上記裏面固定ビス6は、例えば、ねじ部61の直径が4.2mm程度、長さが70mm程度、頭部62の直径が12mm程度とされている。上記裏面固定ビス6が上記フレーム5にねじ込まれた状態において、上記板部材3の上面からの上記裏面固定ビス6の頭部突出量は、例えば6mm程度とされる。
【0019】
上記外壁面材2は、例えば、窯業系の面材であり、横900mm、高さ2550mmの大きさを有する。このような大きさの外壁面材2の裏面には、縦に所定間隔で例えば6個の凹所21が並ぶ列が3列形成されている。上記凹所21に上記裏面固定ビス6が掛けられる。上記裏面固定ビス6は、上記凹所21の配置個数および配置間隔に一致して設けられる。上記凹所21には、上記裏面固定ビス6の先端部である頭部62を受け止める受け部材7が設けられている。
【0020】
図3(A)および
図3(B)に示すように、上記凹所21は、上記受け部材7が挿入される径大凹部21aと(挿入凹部)と、この径大凹部21aよりも開口が小さくて上記受け部材7が保持される径小凹部21b(保持凹部)とが連接されて成る。上記径小凹部21bの底側には、上記径大凹部21aと同径の掘り部21cが形成されている。
【0021】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)に示すように、上記受け部材7は、奥側部71と前側部72とこれらを接続する接続部73とからなる。上記奥側部71は上記凹所21の底側に位置し、上記前側部72は上記フレーム5の側に位置する。上記奥側部71は平板形状を有し、その面積は上記裏面固定ビス6の頭部62の先端面積よりも大きくされている。また、上記受け部材7の上記奥側部71と上記前側部72とが上記接続部73によって弾性的に接続されている。このような受け部材7は、例えば、金属板をプレス加工することで作製することができる。
【0022】
また、上記受け部材7の上記前側部72には、上記裏面固定ビス6の頭部62下の首部(ねじ部61と頭部62との接続部位)が位置する切欠き部72aと、上記裏面固定ビス6の頭部62が収容される収容部72bとが形成されている。この収容部72bは上記径小凹部21bよりも小さくて凸状をなしている。
【0023】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)に示すように、上記凹所21に上記受け部材7を装着するときには、この受け部材7を、上記径大凹部21aに入れて、上記径小凹部21bの側へスライドさせる。このとき、上記収容部72bが上記径小凹部21bの箇所に位置する。上記収容部72bには、上記裏面固定ビス6を上記切欠き部72aへ案内する案内部72cが形成されている。上記案内部72cは、
図5(C)に示したように、上記受け部材7が上記径小凹部21bに装着された状態で、上記径大凹部21aの縁から段を生じさせないで連続するように形成されている。
【0024】
上記外壁面材2が上記フレーム5に装着された状態においては、
図6(A)および
図6(B)に示すように、上記裏面固定ビス6の頭部62が上記受け部材7の収容部72bに収容される。そして、上記裏面固定ビス6の首部は、上記切欠き部72aの箇所に位置する。また、
図1にも示したが、上記収容部72b内であって、上記裏面固定ビス6の首部の箇所および上記凹所21の周囲となる箇所等には、接着剤9が充填される。上記接着剤9は、例えば、上記外壁面材2を上記フレーム5に装着する前に、上記板部材3上であって上記凹所21の周囲となる箇所等に塗布される。
【0025】
上記裏面固定ビス6の頭部62を上記受け部材7に掛けるときには、上記フレーム5と上記外壁面材2とを対面させた状態で、当該外壁面材2をスライドさせる。このとき、
図7(A)および
図7(B)に示すように、上記裏面固定ビス6の頭部62が上記受け部材7の収容部72bに収容される。
【0026】
このように、上記外壁面材2の上記凹所21に上記裏面固定ビス6を挿入してスライドさせる際に、上記裏面固定ビス6の先端部は上記受け部材7によって受け止められるので、上記外壁面材2にクラックを生じさせることがない。
【0027】
上記受け部材7が上記奥側部71と上記前側部72とからなっていると、上記裏面固定ビス6の頭部62を上記奥側部71と上記前側部72とで挟み込むようにして保持することができる。
【0028】
上記奥側部71が上記裏面固定ビス6の頭部62の先端面積よりも大きな面積を有していると、上記裏面固定ビス6の頭部62が上記凹所21に与える衝撃を上記大きな面積の奥側部71によって緩和することができる。
【0029】
上記受け部材7の上記奥側部71と上記前側部72とが弾性的に接続されていると、上記受け部材7を上記凹所21に弾性保持させておくことができる。したがって、外壁パネル1の製作段階で上記受け部材7が上記凹所21で位置ずれするのを防止できる。
【0030】
上記受け部材7の上記前側部72に、上記裏面固定ビス6の頭部62下の首部が係止される切欠き部72aと、上記裏面固定ビス6の頭部62が収容される収容部72bとが形成されていると、上記裏面固定ビス6の頭部62を上記受け部材7の上記前側部72に適切に係合させることができる。上記裏面固定ビス6の頭部62が上記受け部材7の上記前側72で適切に係合される。
【0031】
上記外壁面材2の凹所21が、上記受け部材7が挿入される径大凹部21aと(挿入凹部)と、この径大凹部21aとよりも開口が小さくて上記受け部材7が保持される径小凹部21b(保持凹部)とが連接されて成り、上記受け部材7が上記径小凹部21bに装着された状態で上記案内部72cが上記径大凹部21aの縁から連続するように形成されていると、上記裏面固定ビス6の先端部を上記径大凹部21aとの箇所から上記受け部材7の上記収容部72bへ上記案内部72cによってスムーズに導くことができる。
【0032】
また、上記裏面固定ビス6の頭部62下の首部と上記受け部材7との間に接着剤9が充填されていると、上記裏面固定ビス6を上記接着剤9によって上記受け部材7に強固に固定することができる。
【0033】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 外壁パネル
2 外壁面材
21 凹所
21a 径大凹部(挿入凹部)
21b 径小凹部(保持凹部)
5 フレーム(支持材)
6 裏面固定ビス(係合突起部)
61 ねじ部
62 頭部
7 受け部材
71 奥側部
72 前側部
72a 切欠き部
72b 収容部
72c 案内部
9 接着剤