(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズと、その像面側に当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0019】
1.ズームレンズ
1−1.光学系の構成
まず、本件発明に係るズームレンズの光学系の構成について説明する。本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に配置される、正の屈折力を有する物体側群と、負の屈折力を有する像面側群とからなるいわゆるテレフォトタイプのズームレンズである。テレフォトタイプのズームレンズとすることにより、当該ズームレンズの望遠端における焦点距離よりも当該ズームレンズの望遠端における光学全長を短くすることができる。このため、例えば、35mmフィルム換算で焦点距離300mm超等に変倍率を高くしたときも望遠端における光学全長の増加を抑制することができる。
【0020】
ここで、本件発明では、当該物体側群は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群
と、最も像面側に、当該第2レンズ群と空気間隔を隔てて、正の屈折力を有する正Cレンズ群とを備え、当該像面側群は、物体側から順に、負の屈折力を有する負Aレンズ群と、当該負Aレンズ群と空気間隔を隔てて配置される負の屈折力を有する負Bレンズ群とからなり、当該負Aレンズ群のみを像面側に移動させることにより、無限遠から近接物体への合焦を
行い、広角端から望遠端に変倍する際に、前記物体側群の正Cレンズ群と、前記像面側群の前記負Bレンズ群とが同じ軌跡で移動することを特徴としている。
【0021】
本件発明では、上記のとおりテレフォトタイプのズームレンズとすると共に、像面側群を負の屈折力を有する負Aレンズ群と、この負Aレンズ群と空気間隔を隔てて像面側に配置される負Bレンズ群とかなる構成とすることにより、像面側群における全体の負の屈折力を強くすることが容易になる。つまり、よりテレフォト傾向の強いズームレンズとすることが容易になるため、変倍率を高くしたときも望遠端における焦点距離に対して望遠端における光学全長をより短くすることができる。
【0022】
ここで、ズームレンズは、一般に、鏡筒(最外筒)内に1以上の内筒が入れ子式に収容されている。内筒は、変倍率に応じて物体側に繰り出される。望遠端と広角端とにおける光学全長の差が大きくなると、内筒収納時の鏡筒全長を短くするために、最外筒内に複数の内筒を収容させることが行われる。しかしながら、最外筒内に複数の内筒を収容させると、内筒の厚みの分だけ最外筒の径が大きくなる。そこで、本件発明では、上述のとおりよりテレフォト傾向の強いズームレンズとすることにより、変倍率を高くした場合であっても、望遠端における光学全長の増加を抑制することが可能であるため、最外筒内に収容される内筒の数の増加を抑制することができる。このため、本件発明によれば、望遠端における光学全長だけではなく、鏡筒の外径についても小型化を図ることができる。
【0023】
ここで、本件発明において、物体側群は、
その最も像面側に正の屈折力を有する正Cレンズ群を備える。物体側群の最も像面側に正の屈折力を有する正Cレンズ群を配置することにより、物体側群の全体の焦点距離を短くして、当該ズームレンズの光学全長をより短くすることができる。また、当該正Cレンズ群の収束作用により、像面側群の負Aレンズ群に入射する光の光束径を小さくすることができるため、像面側群を構成するレンズ径をより小さくすることができ、径方向の小型化を図ることができる。
【0024】
1−2.動作
次に、上記構成のズームレンズにおける合焦動作及び変倍動作について順に説明する。
【0025】
(1)合焦動作
まず、合焦動作について説明する。本件発明に係るズームレンズは、上記のとおり、負Aレンズ群をフォーカス群とし、そして、負Aレンズ群のみを像面側に移動させることにより、無限遠から近接物体への合焦を行う。物体側群を構成する各レンズと比較すると、レンズ径の比較的小さい負Aレンズ群をフォーカス群とすることにより、フォーカス群の軽量化を図ると共に、合焦時のフォーカス群の移動量を小さくすることができ、高速オートフォーカスを実現すると共に、当該ズームレンズの小型化を図ることができる。
【0026】
ここで、テレフォト傾向の強いズームレンズとするには、上記のとおり、像面側群の負の屈折力を強くすることが求められる。従来、テレフォトタイプのズームレンズでは、負Aレンズ群の屈折力を負、負Bレンズ群の屈折力を正とすることが一般的に行われていた。しかしながら、負Aレンズ群をフォーカス群としたとき、負Aレンズ群に強い屈折力を持たせると、合焦動作を行う間に負Aレンズ群の移動に伴い収差変動や画角変動が生じる。そこで、本件発明では、負Aレンズ群に後続する負Bレンズ群についても負の屈折力を配分することにより、負Aレンズ群の負の屈折力が強くなり過ぎるのを抑制しながら、上記のとおりテレフォト傾向の強いズームレンズとすると共に、合焦時の収差変動や画角変動を抑制することができる。例えば、ミラーレス一眼カメラ等の光学式ファインダーを備えていない撮像装置等では、ユーザは装置本体の背面に設けられた液晶画面等に表示されるライブビュー画像等により画像を確認しながらピント調節を行う。このとき、本件発明に係るズームレンズを用いれば、合焦の間も変倍等を抑制しながら結像性能の高い画像をライブビュー画像として表示することができる。従って、本件発明に係るズームレンズは、ミラーレス一眼カメラ等の撮像装置に好適に用いることができる。
【0027】
また、物体側群の最も像面側に上記正Cレンズ群を
備えるため、正Cレンズ群の収束作用により負Aレンズ群に入射する光の光束径をさらに小さくすることができる
。そのため、負Aレンズ群を構成するレンズの一層の小径化を図ることができる。これにより、オートフォーカスの高速化及び当該ズームレンズの小型化をより一層図ることができる。
【0028】
(2)変倍動作
次に、変倍動作について説明する。本件発明に係るズームレンズにおいて、変倍時における各レンズ群の動作は特に限定されるものではない。しかしながら、収差補正の自由度を向上させ、ズーム全域において高い結像性能を得るという観点から、変倍時に各レンズ群間の間隔をそれぞれ変化させるように、各レンズ群を相対的に移動させることが好ましい。変倍時に各レンズ群間の間隔をそれぞれ変化させることにより、各変倍率において各レンズ群の位置を収差補正上好ましい位置に調整することが容易になるためである。このとき、変倍時に全レンズ群をそれぞれ別個に移動させることにより、各レンズ群間の間隔を変化させてもよいし、全レンズ群のうち一部のレンズ群を一体に移動させ、残りのレンズ群を別個に移動させてもよい。また、全レンズ群を全て移動群とするのではなく、一部のレンズ群を固定群としてもよい。
【0029】
ここで、収差補正の自由度がより高くなるという観点からは、変倍時に全レンズ群をそれぞれ別個に移動させることが好ましい。しかしながら、製造上の観点から、本件発明では、変倍時に物体側群の正Cレンズ群と、像面側群の負Bレンズ群とを同じ軌跡を描くように一体に
移動させる。フォーカス群である負Aレンズ群の前後に配置されるこれら正Cレンズ群と負Bレンズ群とを一体に移動させることにより、この二つのレンズ群を一つのユニットとして構成することができる。このため、製造効率の向上及び組付誤差の抑制を図ることができる。その結果、正Cレンズ群と負Bレンズ群とをそれぞれ別個に移動させる場合と比較すると、レンズ移動機構を簡素に構成することができる。さらに、正Cレンズ群と負Bレンズ群とがユニット化されるため、負Aレンズ群の移動を案内するための案内軸を正Cレンズ群内の各レンズを保持するレンズ保持枠と、負Bレンズ群内の各レンズを保持するレンズ保持枠とによりその両端側から支持させることができる。このため、当該案内軸を光軸と平行に保持することが容易になり、負Aレンズ群を安定に移動させることができ、画像のブレ等を抑制することができる。
【0030】
さらに、本件発明では、広角端から望遠端に変倍する際に、負Aレンズ群が正Cレンズ群に対して一旦像面側に移動し、その後物体側に移動することが好ましい。変倍時に負Aレンズ群をこのように移動させることにより、正Cレンズ群と負Bレンズ群とを同じ軌跡で移動させた場合も、正Cレンズ群と負Aレンズ群との間隔、負Aレンズ群と負Bレンズ群との間隔を変倍率に応じて変化させることができるため、収差補正を行う上で好ましい。
【0031】
以上説明した本件発明に係るズームレンズは、本件発明に係るズームレンズの一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、その具体的なレンズ構成等を変更してもよいのは勿論である。また、上記においては詳述しなかったが、本件発明において、光学全長をより一層短くすると共に、径方向のより一層の小型化を図る上で、物体側群には、当該正Cレンズ群と、第2レンズ群との間に正の屈折力を有するレンズ群を備えてもよい。
【0032】
1−3.条件式
次に、本件発明に係るズームレンズが満足すべき、或いは、満足することが好ましい条件式について説明する。本件発明に係るズームレンズは下記条件式(1)及び条件式(2)を満足することを特徴とし、後述する条件式(3)〜条件式(5)を満足することが好ましい。
【0034】
1−3−1.条件式(1)
まず、条件式(1)について説明する。条件式(1)は、本件発明に係るズームレンズにおいて、第2レンズ群の望遠端における横倍率を規定するための条件式である。条件式(1)を満足することにより、第2レンズ群の望遠端における横倍率が適正な値となり、望遠端における光学全長と、収差補正の適正化を図ることができる。条件式(1)の下限値以下となる場合、第2レンズ群の横倍率が大きくなり過ぎて、高い結像性能を得るには、収差補正のために多くのレンズを要する。このため、望遠端における光学全長が長くなる。一方、条件式(1)の上限値以上になる場合、第2レンズ群の横倍率が小さく、高い変倍率を実現するには、像面側群における横倍率を大きくする必要が生じる。その結果、高い結像性能を得るには、収差補正のために多くのレンズを要する。つまり、ズームレンズの光学系を構成するレンズ枚数が増加するため、光学全長が長くなる。このように、当該条件式(1)の範囲を超える場合、いずれの場合も当該ズームレンズを小型化することが困難になるため好ましくない。
【0035】
これらの観点から、条件式(1)は以下の条件を満足することが上記効果を得る上で、好ましい。
-1.60 < β2t < -0.94 ・・・・・・(1)’
【0036】
さらに、条件式(1)は、以下の条件を満足することが、上記効果を得る上で、最も好ましい。
-1.50 < β2t < -0.94 ・・・・・・(1)’’
【0037】
1−3−2.条件式(2)
次に、条件式(2)について説明する。条件式(2)は、負Aレンズ群の望遠端におけるピント敏感度を規定するための条件式である。条件式(2)を満足することにより、望遠時におけるピント敏感度を適正なものとすることができ、合焦時における負Aレンズ群の移動量を適正な範囲内にすることができる。条件式(2)の上限値以上となる場合、ピント敏感度が小さくなるため、合焦時における負Aレンズ群の移動量が大きくなり、当該ズームレンズの小型化を図る上で好ましくない。
【0038】
1−3−3.条件式(3)
本件発明に係るズームレンズにおいて、像面側群が以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0040】
条件式(3)は、本件発明に係るズームレンズにおいて、像面側群における横倍率を規定するための条件式である。但し、像面側群とは、上述したとおり、負Aレンズ群及び負Bレンズ群を指す。
【0041】
当該条件式(3)を満足することにより、高い結像性能を維持しながら、高い変倍率を実現し、且つ、当該ズームレンズをコンパクトに構成することができる。また、当該条件式(3)を満足させることにより、例えば、ミラーレス一眼カメラ等の撮像装置に要求される適正なフランジバックを確保することができる。
【0042】
当該条件式(3)の下限値以下となる場合、像面側群における横倍率が小さくなるため、高い変倍率を実現するには、物体側群の横倍率を大きくする必要が生じる。その結果、物体側群を構成する各レンズのレンズ径が大きくなるため、当該ズームレンズの径方向の小型化を図ることが困難になる。また、この場合、光学全長を抑制することも困難になる。一方、当該条件式(3)の上限値以上となる場合、像面側群における横倍率が大きくなりすぎて、高い結像性能を得るには、収差補正のために多くのレンズを要する。つまり、ズームレンズの光学系を構成するレンズ枚数が増加するため、光学全長が長くなる。このように、当該条件式(3)の範囲を超える場合、いずれの場合も当該ズームレンズを小型化することが困難になるため好ましくない。
【0043】
これらの観点から、条件式(3)は、以下の条件を満足することが、上記効果を得る上で、より好ましい。
2.2 < βrt < 3.5 ・・・・・・(3)’
【0044】
また、条件式(3)は、以下の条件を満足することが、上記効果を得る上でさらに好ましい。
2.3 < βrt < 3.5 ・・・・・・(3)’’
【0045】
1−3−4.条件式(4)
本件発明に係るズームレンズにおいて、負Aレンズ群が以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0047】
条件式(4)は、負Aレンズ群の変倍比を規定するための条件式である。上述したとおり、本件発明に係るズームレンズでは、負Aレンズ群をフォーカス群とし、合焦時には負Aレンズ群のみが移動する。条件式(4)を満足することにより、負Aレンズ群の広角端から望遠端における変倍比を適正な範囲内にすることができ、上述した合焦時における収差変動や画角変動を抑制することが容易になる。その結果、負Aレンズ群をフォーカス群とすることにより得られる上記効果をより高めことができる。
【0048】
1−3−5.条件式(5)
次に、条件式(5)について説明する。本件発明に係るズームレンズにおいて、第1レンズ群が以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
【0050】
条件式(5)は、第1レンズ群の焦点距離を規定する条件式である。当該条件式(5)を満足することにより、変倍時における第1レンズ群の移動量を適正な範囲内にすることができ、収差補正のためのレンズ枚数の増加を抑制しながら、高い結像性能を実現することができる。このため、当該ズームレンズの小型化を図る上で好ましい。
【0051】
条件式(5)の下限値以下となる場合、第1レンズ群の屈折力が大きくなり過ぎるため、望遠端における軸上色収差が悪化する。このため、高い結像性能を維持するには、収差補正のために多くの枚数のレンズを要する。従って、レンズ枚数の増加により、光学全長が長くなるため、ズームレンズの小型化を図るという観点から好ましくない。一方、当該条件式(5)の上限値以上となる場合、第1レンズ群の屈折力が小さくなるため、変倍時における第1レンズ群の移動量が大きくなる。この場合、広角端と望遠端とにおける光学全長の差が大きくなる。この場合、広角端と望遠端とにおける光学全長の差が大きくなるため、外筒内に収容する内筒の数が増加したり、内筒を繰り出すための機構が複雑になる。すなわち、鏡筒構成が複雑になり、鏡筒の外径も大きくなる恐れがあるため、好ましくない。
【0052】
これらの観点から、条件式(5)は、以下の条件を満足することが、上記効果を得る上でより好ましい。
0.6 < f1/√(fw×ft) < 2.2 ・・・・・・(5)’
【0053】
また、条件式(5)は、以下の条件を満足することが、上記効果を得る上でさらに好ましい。
0.7 < f1/√(fw×ft) < 2.0 ・・・・・・(5)’’
【0054】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記ズームレンズと、その像面側に当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。ここで、撮像素子等に特に限定はない。しかしながら、上述したとおり、本件発明に係るズームレンズのフランジバックは短くすることができるため、当該ズームレンズは、光学式ファインダーやレフレックスミラ−等を備えていないタイプの撮像装置に好適である。特に、本件発明に係るズームレンズは小型で高い変倍率を実現することができるため、いわゆるミラーレス一眼カメラ等の小型の個体撮像素子を搭載した小型の撮像装置とすることが好ましい。
【0055】
次に、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではなく、下記実施例に記載するレンズ構成は本件発明の一例に過ぎず、本件発明に係るズームレンズのレンズ構成は本件発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
【実施例1】
【0056】
(1)ズームレンズのレンズ構成例
図1に、実施例1のズームレンズのレンズ構成例を示す。
図1に示すように、本実施例1のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する正Cレンズ群としての第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する負Aレンズ群としての第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する負Bレンズ群としての第5レンズ群G5とから構成されている。これらの第1レンズ群G1〜第3レンズ群は上記物体側群を構成し、第4レンズ群及び第5レンズ群は上記像面側群を構成する。
【0057】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL1と正の屈折力を有するレンズL2とを接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズL3とから構成される。第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側の面に非球面を有し、像面側の面が曲率の大きい凹面で負の屈折力を有するメニスカスレンズL4と、両凹レンズL5と、両凸レンズL6と、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL7とから構成される。第3レンズ群G3は、物体側から順に、両面が非球面である両凸レンズL8と、両凹レンズL9と、両凸レンズL10とから構成される。第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸レンズL11と像面側の面が非球面である両凹レンズL12とを接合した接合レンズから構成される。第5レンズ群G5は、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL13と、像面側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズL14とから構成される。
【0058】
上記構成を有する本実施例1のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍に際して、
図1に矢印で示すように、第1レンズ群G1は物体側に移動し、第2レンズ群G2は像面側に凸の軌跡を描きながら移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は第3レンズ群G3に対して像面側に凸の軌跡を描きながら移動し、第5レンズ群G5は物体側に移動する。また、無限遠から近接物体への合焦の際には、第4レンズ群G4が像面側に移動する。
【0059】
(2)数値実施例
当該本実施例1において、具体的数値を適用した数値実施例1のレンズデータを表1に示す。表1に示すレンズデータは次のものである。「NS」は、レンズの面番号であり、物体側から数えたレンズ面の順番を示す。「R」はレンズ面の曲率半径を示し、「D」は互いに隣接するレンズ面の光軸上の間隔を示し、「Nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率を示し、「νd」はd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数を示している。また、絞りは、
図1において、「S」の符号で示している。表1には当該絞り(開口絞り)の面番号として「STOP」を付している。また、レンズ面が非球面である場合には、面番号に「ASPH」を付して曲率半径「R」の欄には近軸曲率半径を示している。
【0060】
[表1]
NS R D Nd νd
1 64.9819 1.3000 1.90366 31.31
2 36.3975 0.0100 1.56732 42.84
3 36.3975 6.6600 1.49700 81.61
4 -1186.1757 0.2000
5 34.2934 4.2232 1.61800 63.39
6 162.5347 D( 6)
7 ASPH 33.6698 0.2000 1.51460 49.96
8 36.8067 0.8000 1.91082 35.25
9 8.1262 4.0531
10 -29.8667 0.6500 1.91082 35.25
11 20.0064 0.4000
12 15.8824 2.9802 1.92286 20.88
13 -31.7119 0.7663
14 -16.6818 0.6000 1.77250 49.62
15 -54.0405 D(15)
16 STOP 0.0000 1.2000
17 ASPH 9.0025 3.2330 1.58313 59.46
18 ASPH -17.0238 0.4600
19 -52.2330 0.5000 1.90366 31.31
20 12.6447 1.5345
21 46.2818 2.9182 1.59282 68.62
22 -9.5695 D(22)
23 100.3805 1.2000 1.80518 25.46
24 -28.6956 0.0100 1.56732 42.84
25 -28.6956 0.6000 1.80139 45.45
26 ASPH 19.7020 D(26)
27 -10.7494 0.6300 1.80518 25.46
28 -17.3803 0.2000
29 -4854.1028 2.1691 1.48749 70.44
30 -20.5041 D(30)
31 0.0000 9.8000
32 0.0000 2.8000 1.51680 64.20
33 0.0000 1.0000
【0061】
表1に示した非球面について、その形状を次式X(y)で表した場合の非球面係数及び円錐定数を表2に示す。
X(y)=(y2/R)/〔1+(1−ε・y2/R2)1/2〕+A4・y4+A6・y6+A8・y8+A10・y10
【0062】
ここで、「X(y)」は光軸から垂直方向の高さyにおける各非球面の頂点から光軸方向に沿った距離(サグ量)であり、「R」は基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)であり、「ε」は円錐係数であり、「A4,A6,A8,A10」はそれぞれ非球面係数とする。
【0063】
[表2]
ASPH ε A4 A6 A8 A10
7 1.0000 -1.81150e-006 -3.53409e-007 2.30973e-009 -1.22024e-011
17 1.0000 -1.28660e-004 1.17974e-006 -4.72888e-008 -2.76128e-009
18 1.0000 4.39407e-004 1.33550e-006 -1.82741e-007 0.00000e+000
26 1.0000 -2.01216e-005 -1.13690e-006 1.04261e-007 -2.22909e-009
【0064】
次に、表3に数値実施例1の広角端状態(f=10.31)、中間焦点距離状態(f=41.50)及び望遠端状態(f=100.60)における面間隔を、焦点距離(f)、Fナンバー(Fno)、画角(ω)と共にそれぞれ示す。
【0065】
[表3]
f 10.31 41.50 100.60
Fno 3.657 5.267 5.799
ω 40.1947 10.9138 4.5726
D( 6) 0.9310 19.9590 33.2042
D(15) 19.0512 4.6009 1.6230
D(22) 1.9788 3.7822 0.5120
D(26) 7.0763 5.2729 8.5431
D(30) 0.0000 13.7884 20.1450
【0066】
表4に数値実施例1の広角端状態(f=10.31)、中間焦点距離状態(f=41.50)及び望遠端状態(f=100.60)での近接物体合焦時の面間隔を、無限物体合焦時の焦点距離(f)、第1レンズ面から物体までの距離(D(0))と共にそれぞれ示す。
【0067】
[表4]
f 10.31 41.50 100.60
D( 0) 919.86 901.49 884.90
D(22) 2.0430 4.3047 2.5769
D(26) 7.0121 4.7504 6.4782
【0068】
上記数値実施例1のズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を
図2に示す。また、
図3には、当該ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。
図4には、当該ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。
【実施例2】
【0069】
(1)ズームレンズの構成例
図5に本実施例2のズームレンズのレンズ構成例を示す。
図5に示すように、本実施例2のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する正Cレンズ群としての第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する負Aレンズ群としての第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する負Bレンズ群としての第5レンズ群G5とから構成されている。実施例1と同様に、第1レンズ群〜第3レンズ群は上記物体側群を構成し、第4レンズ群及び第5レンズ群は上記像面側群を構成する。
【0070】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL1と、正の屈折力を有するレンズL2とを接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズL3とから構成される。第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側の面に非球面を有し、像面側の面が曲率の大きい凹面であり、負の屈折力を有するメニスカスレンズL4と、両凹レンズL5と、両凸レンズL6と、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL7とから構成される。第3レンズ群G3は、物体側から順に、両面が非球面である両凸レンズL8と、両凹レンズL9と、両凸レンズL10とから構成される。第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸レンズL11と像面側の面が非球面である両凹レンズL12とを接合した接合レンズから構成される。第5レンズ群G5は、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL13と、両凸レンズL14とから構成される。
【0071】
上記構成を有する本実施例2のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍に際して、
図5に矢印で示すように、第1レンズ群G1は物体側に移動し、第2レンズ群G2は像面側に凸の軌跡を描きながら移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は第3レンズ群G3に対して像面側に凸の軌跡を描きながら移動し、第5レンズ群G5は物体側に移動する。また、無限遠から近接物体への合焦の際には、第4レンズ群G4が像面側に移動する。
【0072】
(2)数値実施例
当該実施例2において、具体的数値を適用した数値実施例2のレンズデータを表5に示す。表5に示すレンズデータは、表1に示すレンズデータと同様のものである。
【0073】
[表5]
NS R D Nd νd
1 65.0172 1.3000 1.91048 31.31
2 36.2100 0.0100 1.57046 42.84
3 36.2100 6.0000 1.49845 81.61
4 -2179.5150 0.2000
5 35.2814 4.0027 1.62032 63.39
6 183.6531 D( 6)
7 ASPH 42.2125 0.2000 1.51700 49.96
8 42.6979 0.8000 1.91695 35.25
9 8.4806 4.0102
10 -40.2053 0.6500 1.91695 35.25
11 19.8739 0.4000
12 15.7705 2.9108 1.93323 20.88
13 -39.4484 0.7583
14 -17.4656 0.6000 1.77621 49.62
15 -52.0671 D(15)
16 STOP 0.0000 1.2000
17 ASPH 8.5883 3.0750 1.58547 59.46
18 ASPH -25.0697 0.4400
19 171.5901 0.5000 1.91048 31.31
20 10.4093 1.6207
21 25.6522 3.1313 1.59489 68.62
22 -9.9776 D(22)
23 46.2354 1.2000 1.81263 25.46
24 -53.2640 0.0100 1.57046 42.84
25 -53.2640 0.6000 1.80558 45.45
26 ASPH 13.2084 D(26)
27 -11.9913 0.6300 1.81263 25.46
28 -21.7212 0.2000
29 57.2469 2.1490 1.48914 70.44
30 -29.7248 D(30)
31 0.0000 2.8000 1.51872 64.20
32 0.0000 1.0000
【0074】
表5に示した非球面について、表2と同様にその非球面係数及び円錐定数を表6に示す。
【0075】
[表6]
ASPH ε A4 A6 A8 A10
7 1.0000 8.18698e-006 -2.73054e-007 1.74363e-009 -8.23298e-012
17 1.0000 -1.01823e-004 2.84220e-006 -6.99155e-008 -7.96183e-010
18 1.0000 4.60590e-004 3.18830e-006 -1.41926e-007 0.00000e+000
26 1.0000 -1.47382e-005 -1.68264e-006 1.30906e-007 -2.85225e-009
【0076】
次に、表7に数値実施例2の広角端状態(f=10.30)、中間焦点距離状態(f=38.91)及び望遠端状態(f=100.21)における面間隔を、焦点距離(f)、Fナンバー(Fno)、画角(ω)、と共にそれぞれ示す。
【0077】
[表7]
f 10.30 38.91 100.21
Fno 3.6579 5.0177 5.8760
ω 40.250 11.571 4.601
D( 6) 0.9300 21.0041 33.8012
D(15) 19.9939 5.7856 1.5907
D(22) 1.3754 2.5090 0.5000
D(26) 6.4996 5.3660 7.3750
D(30) 9.8031 20.7424 28.8244
【0078】
表8に数値実施例2の広角端状態(f=10.30)、中間焦点距離状態(f=38.91)及び望遠端状態(f=100.21)における近接物体合焦時の面間隔を、無限物体合焦時の焦点距離(f)、第1レンズ面から物体までの距離(D(0))と共にそれぞれ示す。
【0079】
[表8]
f 10.30 38.91 100.21
D( 0) 921.00 904.19 887.51
D(22) 1.4167 2.8588 1.9523
D(26) 6.4584 5.0162 5.9227
【0080】
上記数値実施例2のズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を
図6に示す。また、
図7には、当該ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。
図8には、当該ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。
【実施例3】
【0081】
(1)ズームレンズの構成例
図9に、実施例3のズームレンズのレンズ構成例を示す。
図9に示すように、本実施例3のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する正Cレンズ群としての第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する負Aレンズ群としての第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する負Bレンズ群としての第6レンズ群G6とから構成されている。
【0082】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズL1と、正の屈折力を有するレンズL2とを接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するレンズL3とから構成される。第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹レンズL4と、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズL5と、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するレンズL6とから構成される。
第3レンズ群G3は、物体側から順に両凸レンズL7と、両凸レンズL8と、両凸レンズL9と両凹レンズL10とを接合した接合レンズと、両凹レンズL11と物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するL12とを接合した接合レンズとから構成される。第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸レンズL13と、両凸レンズL14と両凹レンズL15とを接合した接合レンズとから構成される。第5レンズ群G5は、両凸レンズL16と両凹レンズL17とを接合した接合レンズから構成される。第6レンズ群G6は、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するレンズL18から構成される。
【0083】
上記構成を有する本実施例3のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍に際して、
図9に矢印で示すように、第1レンズ群G1は物体側に移動し、第2レンズ群G2は固定群であり像面に対し固定されており、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は物体側に移動し、第5レンズ群G5は物体側に移動し、第6レンズ群G6は物体側に移動する。また、無限遠から近接物体への合焦の際には、第5レンズ群G5が像面側に移動する。
【0084】
(2)数値実施例
当該実施例3において、具体的数値を適用した数値実施例3のレンズデータを表9に示す。
[表9]
NS R D Nd νd
1 249.5578 1.5000 1.83400 37.34
2 76.6801 0.0100 1.56732 42.84
3 76.6801 5.4040 1.49700 81.61
4 -415.9125 0.1500
5 74.9171 5.1230 1.48749 70.44
6 -373.1804 D( 6)
7 -113.5760 0.8000 1.74546 49.68
8 18.2990 0.0100 1.56732 42.84
9 18.2990 2.5665 1.80518 25.46
10 69.1683 1.9870
11 -41.5554 0.8000 1.80420 46.50
12 1027.6603 D(12)
13 34.0523 3.3030 1.49700 81.61
14 -52.3911 0.1000
15 47.0749 2.1776 1.48749 70.44
16 -106.4688 0.1000
17 30.8990 3.4205 1.48749 70.44
18 -33.1763 0.0100 1.56732 42.84
19 -33.1763 0.8000 1.90888 34.10
20 66.1108 6.8000
21 -503.4365 0.7000 1.77554 43.58
22 15.8629 0.0100 1.56732 42.84
23 15.8629 2.1182 1.90366 31.31
24 40.2035 2.4723
25 STOP 0.0000 D(25)
26 54.7228 2.3101 1.60241 37.99
27 -29.1238 0.1000
28 21.8055 2.9393 1.52364 53.81
29 -24.6681 0.0100 1.56732 42.84
30 -24.6681 0.6750 1.90366 31.31
31 80.8965 D(31)
32 49.9105 1.5000 1.80518 25.46
33 -60.6167 0.0100 1.56732 42.84
34 -60.6167 0.5880 1.76157 48.92
35 16.7139 D(35)
36 -25.3286 0.9400 1.48749 70.44
37 -95.5860 D(37)
38 0.0000 2.8000 1.51680 64.20
39 0.0000 1.0000
【0085】
次に、表10に数値実施例3の広角端状態(f=72.10)、中間焦点距離状態(f= 148.41)及び望遠端状態(f=291.00)の面間隔を、焦点距離(f)、Fナンバー(Fno)、画角(ω)と共にそれぞれ示す。
【0086】
[表10]
f 72.10 148.41 291.00
Fno 4.2519 4.9044 6.3077
ω 6.488 3.162 1.614
D( 6) 27.2994 56.7662 66.8379
D(12) 24.1336 17.3427 1.5720
D(25) 5.0483 4.0747 6.4009
D(31) 4.4201 1.5040 2.8355
D(35) 11.7641 14.6802 13.3487
D(37) 18.6600 26.4245 39.8695
【0087】
表11に数値実施例3の広角端状態(f=14.43)、中間焦点距離状態(f=57.85)及び望遠端状態(f=145.40)における近接物体合焦時の面間隔を、無限物体合焦時の焦点距離(f)、第1レンズ面から物体までの距離(D(0))と共にそれぞれ示す。
【0088】
[表11]
f 72.10 148.41 291.00
D( 0) 1055.44 1025.97 1015.90
D(31) 5.6636 4.7678 11.7660
D(35) 10.5206 11.4164 4.4182
【0089】
上記数値実施例3のズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を
図10に示す。また、
図11には、当該ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。
図12には、当該ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。
【0090】
表12に実施例1〜実施例3のズームレンズにおいて、具体的数値を適用したときの上記条件式(1)〜条件式(5)の各値を示す。
【0091】
[表12]
実施例1 実施例2 実施例3
条件式(1) -0.971 -0.975 -1.086
条件式(2) -4.905 -6.807 -8.828
条件式(3) 2.502 2.857 3.380
条件式(4) 1.348 1.370 1.180
条件式(5) 1.788 1.828 0.869