(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270428
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】MRT画像処理用の信号圧縮度のダイナミックマッチング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
A61B5/05 376
A61B5/05 355
A61B5/05 311
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-241937(P2013-241937)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-104357(P2014-104357A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】10 2012 221 465.8
(32)【優先日】2012年11月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ビーバー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン カネンギーサー
【審査官】
姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−289686(JP,A)
【文献】
特表2011−513022(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0284812(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0013375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像(IMG)を形成する(KR、REKON)方法であって、
磁気共鳴トモグラフィ装置(101)の複数個(N)のコイル(40)から、それぞれ、体(105)の検査領域(K)から受信された信号(SIG)に基づいて作成されたN個の受信信号データセット(EDS)によって、画像処理計算器(REKON)を用いて、前記画像(IMG)を形成し、
圧縮度決定装置(KBE)によって、複数のコイル(40)によって受信された信号(SIG)から形成されたN個の受信信号データセット(EDS)の数Nと、低減された数M(M<N)個のモードデータセット(MDS)の数Mとの比N/Mを、少なくとも、画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)も表す複数のパラメータ(SY、SR、VG)を考慮して定め、
圧縮計算器(KR)によって、前記N個の受信信号データセット(EDS)を、M個のモードデータセット(MDS)(マトリクスCMまたは[CM]NXM)に圧縮し、
その後、前記M個のモードデータセット(MDS)を使用して、画像処理計算器(REKON)によって、前記体(105)の領域(K)の画像(IMG)を形成する、
ことを特徴とする、画像を形成する(KR、REKON)方法。
【請求項2】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を表すパラメータ(SY、SR、VG)として、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のメモリ(SP)のみを考慮する、または少なくとも、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のメモリ(SP)も考慮する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を表すパラメータとして、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器の少なくとも1つのプロセッサ(PR)の計算性能またはプロセッサ性能のみを考慮する、または少なくとも、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器の少なくとも1つのプロセッサ(PR)の計算性能またはプロセッサ性能も考慮する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を表すパラメータとして、予期される、前記画像処理計算器(REKON)による画像再構築に必要な画像再構築時間を考慮する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
パラメータとして、前記磁気共鳴トモグラフィ装置(101)のユーザーの入力として受信された、ユーザーによって受け入れられる最長の、必要な画像再構築時間を考慮する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
パラメータとして、前記画像形成(KR、REKON)による、許容される信号対雑音比損失を考慮する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
推測される、予期される、前記画像処理計算器(REKON)による画像再構築に必要な画像再構築時間を、前記圧縮度(N/M)を決める前に求める、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を所定の程度または所定のパーセンテージで、前記体(105)の領域(K)の画像(IMG)を形成するために使用し、
殊にシステムリソース(SR)は、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のプロセッサ性能(PR)の形態、および/または、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のメモリ(SP)の形態である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記M個のモードはそれぞれ、さらなる処理のチャネルおよび/または主成分および/またはk空間データセットである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
Partially Parallel Acquisition(PPA)に基づいて、画像再構築を行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
低減マトリクス(CM(NXM))によって、MRTローカルコイルアレイ(4)のN個のコイル(40)によって作成された受信信号データセット(EDS)を、N個よりも少ない、前記後続のMRT画像再構築(REKON)に使用可能なM個のモードデータセット(MDS)に、マトリクス乗算(CM;CM(NXM))によって圧縮する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記低減マトリクス(CM;CM(NXM))は、固有ベクトルマトリクスであり、
殊に、PCAに基づいた圧縮方法のためのものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記M個のモードデータセット(MDS)は、主成分データセットであり、殊に主成分分析の主成分である、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
磁気共鳴トモグラフィ装置(101)のコイル(40)によって受信された信号(SIG)によって画像(IMG)を形成する(KR、REKON)ための装置(KBE、KR、IMG)であって、
・N個のコイル(40)を有しており、前記コイルは、体(105)の検査領域(K)から信号(SIG)を受信するように構成されており、前記信号(SIG)からN個の受信信号データセット(EDS)が形成可能であり、
・圧縮度決定装置(KBE)を有しており、前記圧縮度決定装置は、受信信号データセット(EDS)の数Nと、さらに処理されるべき(REKON)、より少ない数M(M<N)個のモードデータセット(MDS)の数Mとの比N/Mを、少なくとも、画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR、SP、PR)も表す複数のパラメータ(SY、SR、VG)を考慮して定めるように構成されており、
・圧縮計算器(KR)を有しており、前記圧縮計算器は、N個のコイルの受信信号データセット(EDS)から、M個のモードデータセット(MDS)を形成する(CM(NXM))ように構成されており、
・画像処理計算器(REKON)を有しており、前記画像処理計算器は、前記モードデータセット(MDS)から、前記体(105)の前記領域(K)の画像(IMG)を形成するように構成されている、
ことを特徴とする、画像を形成するための装置。
【請求項15】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を表すパラメータ(SY、SR、VG)は、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のメモリ(SP)のみである、または少なくとも、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のメモリ(SP)でもある、請求項14記載の装置。
【請求項16】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を表すパラメータ(SY、SR、VG)は、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器のプロセッサ(PR)の計算性能またはプロセッサ性能のみである、または少なくとも、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器のプロセッサ(PR)の計算性能またはプロセッサ性能でもある、請求項14から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)を表すパラメータ(SY、SR、VG)は、予期される、前記画像処理計算器(REKON)による画像再構築に必要な画像再構築時間である、請求項14から16までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
パラメータは、前記磁気共鳴トモグラフィ装置(101)のユーザーの入力として受信された、ユーザーによって受け入れられる最長の、必要な画像再構築時間である、請求項14から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
パラメータは、前記画像形成(KR、REKON)による、許容される信号対雑音比損失である、請求項14から18までのいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
画像処理計算器(REKON)のシステムリソース(SR)は所定の程度または所定の割合で、前記体(105)の前記領域(K)の画像(IMG)を形成するのに使用可能であり、
殊にシステムリソース(SR)は、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のプロセッサ性能(PR)の形態、および/または、画像再構築に使用可能な、前記画像処理計算器(REKON)のメモリ(SP)の形態である、請求項14から19までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記M個のモードはそれぞれ、さらなる処理のチャネルおよび/または主成分および/またはk空間データセットである、請求項14から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記画像を再構築するための装置は、Partially Parallel Acquisition(PPA)用に構成されている、請求項14から21までのいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
MRTローカルコイルアレイ(4)のN個のコイル(40)によって作成されたN個の受信信号データセット(EDS)を、N個よりも少ない、前記後続のMRT画像再構築に使用可能なM個のモードデータセット(MDS)に、低減マトリクス(CM(NXM))を用いたマトリクス乗算(CM(NXM))によって、圧縮するように構成されている、請求項14から22までのいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
前記低減マトリクス(CM(NXM))は、固有ベクトルマトリクスであり、
殊に、PCAに基づいた圧縮である、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記M個のモードデータセット(MDS)は主成分データセットであり、殊にPCAまたは主成分分析の主成分である、請求項14から24までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRT画像形成のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴トモグラフィ装置(MRT)ないしは圧縮方法は例えば以下の文献から公知である:
・DE102005018814A1号
・DE102009012109A1号
・「A software channel compression technique for faster reconstruction with many channels」(Huang, Vijayakumar, Li, Hertel, Duensing等著)/「Magnetic Resonance Imaging」
・
http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdf(第3章)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE102005018814A1号
【特許文献2】DE102009012109A1号
【特許文献3】US2004/019308A1号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「A software channel compression technique for faster reconstruction with many channels」(Huang, Vijayakumar, Li, Hertel, Duensing等著)
【非特許文献2】「Magnetic Resonance Imaging」
【非特許文献3】http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdf(第3章)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、MRTを最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題は、画像を形成する方法であって、磁気共鳴トモグラフィ装置の複数個のコイルから、それぞれ、体の検査領域から受信された信号に基づいて作成されたN個の受信信号データセットによって、画像処理計算器を用いて、前記画像を形成し、圧縮度決定装置によって、複数のコイルによって受信された信号から形成されたN個の受信信号データセットの数Nと、低減された数M(M<N)個のモードデータセット(MDS)の数Mとの比N/Mを、少なくとも、画像処理計算器のシステムリソースも表す複数のパラメータを考慮して定め、圧縮計算器によって、前記N個の受信信号データセットを、M個のモードデータセットに圧縮し、その後、前記M個のモードデータセットを使用して、画像処理計算器によって、体の領域の画像を形成する、ことを特徴とする、画像を形成する方法によって解決される。さらに、上述の課題は、磁気共鳴トモグラフィ装置のコイルによって受信された信号によって画像を形成するための装置であって、・N個のコイルを有しており、前記コイルは、体の検査領域から信号を受信するように構成されており、前記信号からN個の受信信号データセットが形成可能であり、・圧縮度決定装置を有しており、前記圧縮度決定装置は、受信信号データセットの数Nと、さらに処理されるべき、より少ない数M(M<N)個のモードデータセット(MDS)の数Mとの比N/Mを、少なくとも、画像処理計算器のシステムリソースも表す複数のパラメータを考慮して定めように構成されており、・圧縮計算器を有しており、前記圧縮計算器は、N個のコイルの受信信号データセットから、M個のモードデータセットを形成するように構成されており、・画像処理計算器を有しており、前記画像処理計算器は、前記モードデータセットから、前記体の前記領域の画像を形成するように構成されている、ことを特徴とする、画像を形成するための装置によって解決される。
【0007】
有利な発展形態は、従属請求項および明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】GRAPPAに従った画像再構築の基本的な方法の概略図
【
図3】
図3Aは基準行を含む、低減された3つのデータセットに対するkマトリクスの記録特徴の詳細図であり、
図3Bは、
図3Aからの、再構築された(完成された)データセット
【
図4】
図4Aは不完全なデータセットのブロックへの、従来のGRAPPA再構築マトリクスの作用の概略図であり、
図4Bは低減されたGRAPPA再構築マトリクスの、不完全なデータセットのブロックへの作用
【
図5】4×2の低減マトリクスを求めるためのPCAアルゴリズムの概略図
【
図6】低減マトリクス並びにGRAPPA再構築マトリクスを用いた、3つの入力チャネルから2つの出力チャネルへの本発明による低減の概略図
【
図7】PPA符号化方向に対して直交する中央のk空間セグメントであり、これは最大のPPA符号化情報を得ることを顧慮して、PCAアルゴリズムにおいて使用される
【
図8】MRTアレイのN個のコイルによって作成された信号データセットの、低減マトリクスCM
(NXM)による、N個よりも少ない、後続のMRT画像構築に使用されるM個のモードデータセットへの圧縮のための、圧縮度K=M/Nを求める本発明の方法の概略図
【
図9】MRTアレイのN個のコイルによって作成された信号データセットを、N個より少ない、後続のMRT画像再構築に使用されるM個のモードデータセットに圧縮するための低減マトリクスCM
(NXM)の本発明による使用の概略図
【実施例】
【0009】
本発明の可能な実施形態のさらなる特徴および利点を実施例の以降の説明において、図面に基づいて記載する(
図1〜7は、実質的に、DE102005018814A1に記載されているバックグラウンドとしても示されている)。
【0010】
多チャネルコイルの使用時に、殊に、並行する画像形成(SENSE、GRAPPA、SMASH等)と組み合わせた使用時に、極めて高い計算性能と記憶量が要求されることがある。これは、殊に、画像再構築計算器のメインメモリのデザインおよびその計算性能においてもコストを生じさせる。計算性能が低い場合には、格段に長い待ち時間が画像の再構築のために生じる。これは例えば、3分〜20分の時間範囲に及ぶことがあり、不所望に高い。多チャネルコイルはこの測定時間を短くすることができるが、画像の可用性は大部分、再構築時間によって決まるのであり、測定時間によって決まるのではない。
【0011】
予備知識(プレスキャン測定または較正データ)に基づいてチャネルを圧縮する方法は、例えばDE102005018814A1号;Griswold、Kannengiesser、Jellusまたは208E15617DE、Biberに記載されている。
【0012】
ここでは殊に主成分分析(PCA principal component analysis)が使用される。
【0013】
これは例えば、刊行物「A software channel compression technique for faster reconstruction with many channels」(Huang, Vijayakumar, Li, Hertel, Duensing等著) Magnetic Resonance Imagingおよびここに挙げられた文献に記載されており、殊に、Griswold、Kannengiesser等著DE102005018814A1号に詳細に記載されている。ここでは、N個の入力チャネル(例えばコイルアレイのN個のコイル)が、大きさNxMの圧縮マトリクスによる乗算によって、M個の「モード」(ここではさらなる処理のデータセットまたはさらなる処理のチャネルまたは殊にPCAの場合には、「主成分」とも称される)に圧縮されることが説明されている。ここでは、多くのデータを圧縮することが可能であり、例えばN=32個のコイルチャネルを、わずかM=16個の主成分に圧縮することができ(DE102005018814A1号の
図5、6を参照)、ここでは、僅か数%の、画像にわたって平均化されたSNR損失だけ甘受されればよい。
【0014】
このSNR圧縮は、チャネルの半減時に、メモリ需要および計算需要がほぼ2〜4倍低下するという事実を鑑みると、許容される。
【0015】
しかし、これまでの刊行物では、どれ位多くのモードまたは主成分がさらなる処理に使用されるべきであるのかという問いが残されたままである。これはすなわち、圧縮マトリクスの大きさの数Mの特定に関する。さらに、DE102005018814A1号には、この数Mの特定に使用され得る判断基準は正確に記載されていない。
【0016】
主成分の数を選択するための別種の方法が、文献から既知である。これに関しては、http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdfの第3章を参照されたい。しかしこれらは全て、どれ位多くの情報が特定数の主成分内に含まれているのかを記載している品質判定基準の開発に関する。
【0017】
しかし、医療技術、殊にMRTに対する用途の関連では、技術的な周辺条件も考慮されるべきである。ここで向けられている質問は、どのような判断基準が主成分またはモードの数の選択に使用可能であり、この選択がシステムのハードウェア装備を最適に利用するのにどのように寄与し得るのか、というものである。
【0018】
少なくとも内部で既知の解決方法では、ソフトウェアである圧縮方法の実装が、内部でVD13と称されているバージョンとともに提供可能である。ここでは、主成分の数Mは、http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdf第3章に記載されている品質判定基準の1つによって求められる。
【0019】
同様に、少なくとも内部で公知であるのは、ソフトウェア方法である。これは、測定のパラメータ化を制限して、使用可能な計算性能または一般的なMRTインストール性能(例えばHF増幅器の性能、時間の関数としての勾配増幅器の性能、振幅および上昇時間)を超えない。このために、ソフトウェアコンポーネントは、測定パラメータに依存してシステムへの性能要求を事前に計算することができるモデルを有しており、これによって、技術的に実現不可能な測定パラメータの設定を阻止することができる。従って、例えば、使用可能なメモリは、測定可能なスライスの数も制限し得る(例えば3D画像形成時に)。
【0020】
本発明の構成では、圧縮度M/N(N個のコイルエレメントからM個の主成分;M<N)の計算のための判断基準として、殊に画像処理計算器のシステムリソースSRも表すことができるパラメータも使用可能である。これは例えば:
1.画像再構築のために、画像処理計算器によって使用可能な、画像処理計算器REKONのメモリSPは、選択された主成分またはモードの数に影響を及ぼすことがある。これによって、しかし、例えば、より低い計算性能/より小さいメモリサイズを有する計算器の場合であるのにもかかわらず、例えば、多くのスライス数または大きいマトリクスサイズ(例えば512×512ピクセル)を有する画像が再構築可能である。ここで歩み寄り可能であるだろう妥協は、メモリが僅かな場合の若干高いSNR損失である。なぜならこれはより少ない主成分を処理することができるからである。しかし有利には、ほぼM>N/5の間はSNR損失は、数Mの低減に伴って極めて恒常的に上昇し、大きい変化を有していない、ということが事実である(以降で、下回ってはいけない下方の限界M_minを、最低の質に対する既知の判断基準から求めることができる。この第2の条件が犯される場合には、例えば、システムによるこの測定の実施は認められるべきではない)。
これによって、所与のメモリの場合に、測定パラメータ、例えばスライス数およびマトリクスサイズ並びに加速係数を、段階的なSNR損失と交換することができる。これは、http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdfに記載されている方法では不可能であろう。なぜなら、これは常に固定数の主成分を、品質判定基準を満たすために必要とするからである。しかしこの数がメモリの上書きを生起させるならば、この方法との上述の妥協は実現不可能であるだろう。
2.実施は例えば、元来のチャネルの再構築が、再構築計算器REKONの性能を超えてはじめてPCAを使用するだろう。使用される主成分の数Mおよびそもそもこの方法が使用されるか否かの問いを、再構築システムの特性に依存させることができる。計算性能/メモリ需要を予想することができるモデルは、再構築が所定のメモリで行われる程度に主成分の数を制限するために使用される。
3.メモリ量の他に、(単独でまたは付加的に)、別の判断基準、例えば再構築時間(プロセッサ性能)も、数Mを求めるために使用可能である。
4.この方法はさらに、http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdfに記載されている方法に対して次の利点を提供する。すなわち、メモリ(オリジナルチャネルの使用がメモリ需要を超えるであろう限り)を常に完全に読み出すことができ、SNR損失がhttp://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdfの固定した判断基準(これは場合によっては、メモリが処理できる主成分よりも少ない主成分を選択することがある)の使用と比べて低減されるという利点である。
5.さらに、カスタマーによってもパラメータ(以降ではハイレベルパラメータとも称する)、例えば速度(Speed)および/または品質(Quality)が調整可能である。これに基づいて、システムは、どの位の数の主成分が使用されるのかを判断する(ここで例えば、http://epub.ub.uni-muenchen.de/12456/1/BA_Berger.pdfの方法が使用される)。
6.周辺条件が測定の性質から得られる。従って相互作用的な特性を有する測定は典型的に、画像計算後にはじめに、保存システム(PACS)内に後の診断のために伝達されるものよりも迅速に再構築される。
【0021】
本発明の1つの形態では、選択されたモードまたは主成分の数とMRT測定システムの別の特性との間にダイナミックな関係が生じる。これによって、既存のシステムリソースに依存した画質の最適化を可能にするダイナミックな圧縮度制御が可能である。
【0022】
図8に記載された、本発明の1つの実施例では、受信器R(ここでは例えば複数のコイル40を備えたコイルアレイ4、例えばローカルコイルアレイおよび/またはボディコイルから成る)が、信号(SIG)を、検査領域K、例えば(
図1において、MRT外に示されており、空間V内に移動可能な)、体105の胴体Kから受信し、この信号を受信信号データセットEDS(インプットデータ)としてさらに圧縮度決定装置KBEと圧縮計算器KRに転送する。
【0023】
圧縮度決定装置KBEは、1つまたは複数の種々の自身に既知の、またはユーザーによって手動で入力されたパラメータVG、SY、SRに基づいて、(目標)比N/Mを求める。これは、ボディ領域Kから複数のコイル40によって受信された信号SIGから(場合によっては増幅、AD変換等によって)形成されたN個の受信信号データセットEDSの数Nと、より少ない(M<N)モードデータセットMDSの数Mとの比である(Mはモードまたはさらなる処理チャネルまたは主成分とも称される)。
【0024】
(目標)比N/Mを決定するための可能なパラメータは、例えば
・システムリソースSR、例えば画像再構築に使用可能な、画像処理計算器REKONのメモリSPおよび/または画像再構築に使用可能な、画像処理計算器REKONの少なくとも1つのプロセッサPR(例えばCPU、GPU)の計算性能またはプロセッサ性能、および/または
・設定(ハイレベルパラメータとも称される)VG、例えば、予期される、画像処理計算器による画像再構築に必要な画像再構築時間、MRTのユーザーの入力として受信されたまたは選択された、ユーザーの許容される最大の必要な画像再構築時間、画像再構築の許容される信号対雑音比損失および/または
・システムモデル(画像処理)からのパラメータSYおよび/または
・(ローカルコイル)アレイLのコイル40の数
【0025】
殊に、圧縮方法がPCAに基づく場合にはさらにマトリクスCを固有ベクトルの形態で求めることができる。
【0026】
圧縮度決定装置KBEによる(目標)比N/Mの決定後に、マトリクスCMが計算される。これはマトリクスCM(以降で[CM]
NXMとも称される)を、受信信号データセットEDSの形の淫風とデータから、圧縮計算器KPによって、モードデータセットMDSの形でのアウトプットデータを形成するために使用する。M個のモードデータセットから、(それ自体公知のMRT)画像処理計算器REKON(これは、概略的に示されたメモリSPとプロセッサPRとを有する)によって、体105の領域Kの画像IMGが形成(再構築)される(その後、これは記憶される、またはモニター上に出力される)。
【0027】
図9は、概略的に、低減マトリクス[CM]
NXMの、圧縮のための使用を概略的に示している。この圧縮は、MRTコイルアレイ4のN個のコイル(1、2・・・N)によって、体の領域(例えば胴体K)から受信された(および場合によっては増幅され、デジタル化等がされた)N個の信号データセットEDSから、M(Nよりも少ない)個の、後続のMRT画像再構築に使用可能な、モードデータセットMDSへの圧縮である。このモードデータセットMDSは、画像構築のために例えばGRAPPA、SENSE等の方法とともに使用可能である。
【0028】
本発明のバックグラウンドおよび可能な用途に対する詳細は、DE102005018814A1に記載されており、この文献は、参照によって本発明の一部として組み込まれており、以下に引用する。
【0029】
図1は、磁気共鳴画像形成ないしは核スピントモグラフィ機器を概略的に示している。これは、対象物の核スピン画像を本発明に即して形成する。ここで核スピントモグラフィ機器の構造は、従来のトモグラフィ機器の構造に相応している。基本磁界磁石1は、時間的に一定の強さの磁界を形成する。これは核スピンを対象物の検査領域、例えば人体の検査部分において偏向ないしは配向するためのものである。基本磁界磁石の、核スピン共鳴測定に必要な高い均一性は、人体の検査部分が入れられる測定空間V内で決められる。均一性要求のサポートのため、および殊に、時間的に不変の影響を除去するため、適切な箇所に、強磁性材料から成るいわゆるシムプレートが取り付けられる。時間的に不変の影響は、シムコイル2によって除去される。このシムコイルは、シム電流供給によって駆動制御される。
【0030】
基本磁界磁石1内には、勾配磁場コイルシステム3が組み込まれている。これは複数の巻き線、いわゆる部分巻き線から成る。各部分巻き線には、増幅器によって、電流が、デカルト座標系の各方向において、線形勾配磁場を形成するために、供給される。勾配磁場システム3の第1の巻き線はここで勾配Gxをx方向において形成し、第2の巻き線は勾配Gyをy方向において形成し、第3の巻き線は勾配Gzをz方向において形成する。各増幅器はデジタルアナログ変換器を有している。このアナログデジタル変換器は、シーケンス制御部18によって、勾配パルスの適時形成のために駆動制御される。
【0031】
勾配磁場システム3内には、高周波アンテナ4が配置されている。これらの高周波アンテナは高周波パワー増幅器から出力された高周波パルスを交番磁界に、検査される対象物ないしは対象物の検査されるべき領域の核の励起のためおよび核スピンの配向のために、変える。これらの高周波アンテナ4は、1つまたは複数のHF送信コイルと複数のHF受信コイルとから成る。これらは、例えば、PPA画像形成システムではコンポーネントコイルの線形の配置の形態である。高周波アンテナ4のHF受信コイルによって、歳差運動をしている核スピンから出る交番磁界も、すなわち通常は、1つまたは複数の高周波パルスおよび1つまたは複数の勾配パルスから成るパルスシーケンスによって生起される核スピンエコー信号も電圧に変換される。この電圧は、増幅器7を介して、高周波システム22の高周波受信チャネル8に供給される。高周波システム22は、さらに送信チャネル9を有している。ここでは、高周波パルスが、核磁気共鳴を形成するために形成される。ここでは、各高周波パルスが、インストール計算器20によって設定された、シーケンス制御部18内のパルスシーケンスに基づいて、デジタルに、複素数の例として示される。この数列は、実数部および虚数部として、各入力側12を介して、高周波システム22内のアナログデジタル変換器に供給され、これから送信チャネル9に供給される。送信チャネル9内では、このパルスシーケンスが高周波搬送信号に変調される。その基本周波数は、測定空間内の核スピンの共振周波数に相応する。
【0032】
送信モードと受信モードとの切り替えは、送受信スイッチ6を介して行われる。高周波アンテナ4のHF送信コイルは、測定空間V内で核スピンを励起させるために高周波パルスを放出し、結果として生じるエコー信号を、HF受信コイルを介してテストする。この相応に得られた核共鳴信号は、高周波システム22の受信チャネル8内で、位相センシティブに変調され、各アナログデジタル変換器を介して、測定信号の虚数部と実数部に変換される。画像計算器17によって、このように得られた測定データから、画像が再構築される。測定データ、画像データおよび制御プログラムの管理は、インストール計算器20を介して行われる。制御プログラムによる設定に基づいて、シーケンス制御部18は、各所望のパルスシーケンスの生成と、k−空間の相応のサンプリングをコントロールする。殊に、シーケンス制御部18はここで、勾配の適時のスイッチング、所定の位相および振幅を有する高周波パルスの送出と、核共鳴信号の受信を制御する。高周波システム22およびシーケンス制御部18に対する時間基準は、合成装置19によって提供される。核スピン画像の形成のための相応する制御プログラムの選択並びに形成された核スピン画像の表示は、端末21を介して行われる。この端末はキーボード並びに1つまたは複数のモニターを含んでいる。
【0033】
MRT機器によってPPA測定を実施するために、殊に位相符号化方向において(y方向、LIN)、個々のコイルを使用するのではなく、複数のコイルから成る装置を使用するのが今日の常識である。これらのいわゆるコンポーネントコイルは接続されて、コイルアレイになり、相互に隣接して、ないしは重なって配置されており、これによって、場合によっては、接して重なったコイル画像が撮影される。SNRの改善時に、収集時間が長くされるべきでない場合には、コイルアレイの複数のコイルは同時に受信しなければならない。従って、各コイルは自身の独自の受信器を必要とする。これは例えば、上述した、前置増幅器と、混合器とアナログデジタル変換器とから成る。このようなハードウェアは、非常に高価であり、これによって実際には、アレイ内のコイルの数が制限されてしまう。今日では、アレイは最大で32個の個別コイルを有しているのが通常である。
【0034】
しかし、PPAコイルアレイのコンポーネントコイルの数を著しく増やすことが目指されている。96個までの入力チャネルを有するシステムが、試験段階にある。ここでは次のことが判明した。すなわち、この多数のPPAコイルが、インストール計算器ないしはシステム制御部のハードウェアおよびソフトウェアへの要求を例えば、計算性能および記憶場所に関して著しく高くすることが判明した。幾つかのPPA方法では、例えばGRAPPAでは性能要求のこの上昇は、特に高い。GRAPPAは、関与しているコンポーネントコイルの数に対する、画像再構築計算時間の二乗を超える依存性を有している。本発明の目的は、コイルの数が多い場合でも、計算時間が許容可能な範囲に収まるように、GRAPPA画像再構築方法を加速することである。
【0035】
これは次のことによって実現される。すなわち、GRAPPA画像再構築に関与するチャネル(PPAコイル)の総数が出力側で低減されることによって実現される。これは、もはや、全ての関与しているN個のコイルがNxM−GRAPPA−再構築マトリクス(X)によって再びN個のコイルにマッピングされるのではなく(例えば
図4A)、
図4Bに示されているように、N個の入力チャネル40から出発して(
図5)、低減されたNxM−GRAPPA再構築マトリクス(X’)によって、より少ない数Mの出力チャネルにマッピングされることによって行われる。出力チャネルの僅かな低減によって既に、GRAPPA再構築マトリクスの複雑性が低減し、これによって、GRAPPA再構築に必要とされる計算時間が著しく低減される。
【0036】
すなち、もはや全てのN個の不完全に測定されたデータセットがGRAPPA再構築によって完成され、フーリエ変換されるのではなく、N個の不完全に測定されたデータセットから、不完全なデータセットのサブセットMのみが形成され、ここで不完全なデータセットのこの低減された量が、GRAPPA再構築によって完成され、フーリエ変換され、重畳されることによって、計算時間が格段に低減される。NおよびMは正の整数であり、ここでN>Mである。
【0037】
このサブセットMの本発明の形成(これは以降では「低減」と称される)は、NxM低減マトリクス45の使用に基づいている。この低減マトリクスは、種々の様式および種々の観点で形成することができる。
【0038】
このようなNxM低減マトリクスを求める可能な方法は、共分散マトリクス41の固有ベクトル分析において生じる。これはN個の不完全に測定されたデータセットから形成される。この方法は、PCAアルゴリズムとも称され(英語ではPrincipal-Component-Analysis PCA)、以降では、N=4からM=2のチャネル低減のケースで、
図5に基づいて説明する。
【0039】
初期のベースとなるのは、位相符号化方向に配置された4つのコンポーネントコイル(4つの入力チャネル)の、N=4個の測定された不完全なデータセット40である。
【0040】
各データセット40は、参照符号A、B、CおよびDによって表されており、それぞれ同じ数の値から成る(kマトリクスの測定された周波数エントリーないしは係数)。これらのデータセットA、B、C、Dは、ここで相互に統計的に比較される。これは、共分散マトリクス41cov()が形成されることによって行われる。共分散cov(A,B,C,D)は、測定値列A、B、C、Dの相互の変数(または共分散)の度合いを表し、関与している変形の平均化された偏差積の総計である。これに続く、共分散マトリクスの固有ベクトル分析によって、PPAコイルシステムの固有ベクトル42を求めることが可能になる。これは並んで記載されて、システムの固有ベクトルマトリクス48eig()を形成し、各固有ベクトル42に対応する固有値43を形成する。固有値43の大きさは、各固有ベクトル42の情報内容を表す。
【0041】
固有ベクトル42がその入力値43に応じて、大きさに従って分類される場合(例えば、より大きい固有値が最も左に、最も小さい固有値が最も右側に)、固有ベクトルマトリクス48は、左から右への列の重要性段階(固有ベクトル42)を有する。
【0042】
ここでN=4個のチャネルから、例えばM=2個のチャネルへのチャネル低減が行われるべき場合には、M=2個の左側の固有ベクトルが選択される。これらは全体として、可能な最小損失時の、このチャネル低減のNxM低減マトリクス45を形成する(残りのN−M=4−2=2個の固有ベクトルは棄却される)。低減マトリクス45の内容は、低減係数を形成する。
【0043】
このようにして得られたNxM低減マトリクス45が、N個の不完全な測定されたデータセットA、B、C、Dに用いられる場合(マトリクス44および45のマトリクス乗算の意味で)、M個の低減されたデータセットα、βが得られる。これは、マトリクス46の形態で、M個の出力チャネルを形成するものである)。
【0044】
マトリクス44は、A、B、CおよびDの測定値を互いに接して並べることによって形成される。ここで、それが全てのチャネルA、B、C、Dに対して同様に行われる限りでは、どのような順序でこれらの測定値が列挙されるのかは重要でない。これらの測定値の数は、数千になり得、点によって示される。得られた、低減されたデータセットα、βは、それぞれ同じ数の測定値、例えばA、B、CまたはDを含んでいるが、それ自体、実際の測定の並びはもはや表していない。なぜなら、この低減によって、A、B、CおよびDの値は低減および混合されており、詳細には、この低減時に最大の画像情報が保たれているからである。
【0045】
しかし各低減されたデータセットα、βそれ自体は、例えばA、B、CまたはDと同程度、依然として不完全であり、GRAPPA再構築によってはじめて完成されなければならない。その後、フーリエ変換によって、完成された画像34のM個の変形が、位置空間において得られる。
【0046】
本発明の方法全体をより分かり易くするために、
図6を提示する。この図は、3個の入力チャネルの、2個の出力チャネルα、βへの低減を概略的に示している。
【0047】
各入力チャネルA、B、Cは、測定された10個の行31、33から成る。ここで2つの行が中央において基準行(較正データ点33)を表している。6つの行32は、PPA技術の意向において省かれている。なぜなら、A、B、Cは不完全だからである。
【0048】
NxM低減マトリクスをA、B、Cに適用することによって、A、B、Cの特定の数が選択され、次のように組み合わされる。すなわち、2つのいわゆる低減されたデータセットα、βのみが得られるように組み合わされる。α、βは、A、B、Cと同程度に不完全である(それぞれ6つの省かれた行32)。しかしαおよびβの各6つの省かれた行は、GRAPPA再構築に基づいて、NxM−GRAPPA再構築マトリクス47によって再構築され、これによっていわゆる低減されたGRAPPAデータセットα’、β’が得られる。このために、GRAPPA方法の後、再構築係数が求められ、詳細には、N個の入力チャネルA、B、Cの測定された全ての行も、低減のカットによって得られた、M個の出力チャネルα、βの行も考慮される。
図6から見て取れるように、低減されたデータセットα、βの行は、再構築されたGRAPPAデータセットα’、β’の再構築された行と、互い違いに位置している。従って、αとα’ないしはβとβ’との組み合わせは、それぞれ再び、不完全なデータセットを形成する。これは、GRAPPAに従って、フーリエ変換後に、空間領域において不完全な画像34をもたらし、これが空間領域においてピクセル毎に組み合わされる。
【0049】
これによって最終的に、GRAPPAに相応する全体画像35が得られる(高いSNR)。しかし、計算時間は全体的に低減されている。なぜなら、この低減によって、N個の代わりに、ここでM個の出力チャネルが考察されるからである。
【0050】
しかし、GRAPPA再構築の他に、本発明の低減では低減自体、すなわち、入力チャネルのデータセットへの低減マトリクスの使用(マトリクス乗算44*45)にも計算時間が再び費やされる。しかし、計算時間の短縮は全体としてそれほど妨害されない。
【0051】
この方法は、計算時間短縮の別の妨害を、低減マトリクス45をPCAアルゴリズムに基づいて求める際に受ける。なぜなら共分散マトリクス41の形成は、計算時間のかかるステップだからである(全てのN個の入力チャネルA、B、C、Dの全測定値は相互に比較されなければならない)。
【0052】
従って、本発明では、低減マトリクス45を求めるための選択肢が提案される。これによって、計算時間短縮と、結果として生じる画像の質との間の合理的な妥協が得られる。
【0053】
従って、低減マトリクス45は例えば、関与しているコンポーネントコイル40のSNRアレイに基づいて求められる。ここで同様に、計算時間を短縮するという意図において、低減係数の数を最小に保つのは有利である。低減マトリクス列毎に1つの低減係数は特に有利である。なぜなら、このような場合に低減ステップは、狭い意味での計算性能をもはや必要としないからである(マトリクス46において、データマトリクス44の相応の値をのみ引き受ければよいだけである。)。
【0054】
さらに有利には、本発明の方法はカスケード式に実施される。従って、例えばN個の出力チャネルが、既に行われた先行する低減から得られる。同様に有利には、殊にこのような場合には、各カスケードの低減マトリクスと再構築マトリクスとが組み合わされる。
【0055】
カスケード式の使用の場合には、第1の低減マトリクス45の特定時に、次のことが考慮されるべきである。すなわち、事前に低減されたN個の不完全なデータセットα、βが、記録されるべきスライスの選択に依存して、最大のPPA符号化情報を含んでいる、ということを考慮しなければならない。
【0056】
これは、PCAアルゴリズムの場合に、次のことによって行われる。すなわち、共分散マトリクス41が、kマトリクスの中央の列ないしは中央のセグメントに基づいて形成されることによって行われる。これらは、PPA符号化方向に位置している。これは
図7に示されている。ここでは中央のセグメントは、PPA符号化方向におけるkマトリクスのベクトルを表している。このベクトルの値は点によって記号化されており、詳細には、3つの異なる表示形成がある:
・周波数領域における位相符号化方向および読み出し方向(k空間)
・k空間における位相符号化方向および位置空間xにおける読み出し方向、並びに、
・位置空間yにおける位相符号化方向およびk空間における読み出し方向
【0057】
種々の、それぞれ隣接しているセグメントの観察ないしは比較がPPA符号化方向に対して直交して行われる限り、さらなる組み合わせが可能である。ここでは、本発明の方法が二次元のPPA符号化(英語ではintegrated Parallel Acquisition Technique square iPAT
2)時にも、例えば2つの相互に直交する位相符号化方向において使用可能であることに留意されたい。
【0058】
PPA測定が、モードマトリクス(英語ではTotal Imaging Matrix TIM)を備えた(TIM)コイルシステムを有しているMRT機器によって実施される場合には、低減マトリクス45の決定は、モードマトリクスの特性に基づいて行われる。(US2004/019308A1に詳細に記載されている)モードマトリクスコイルシステムは、極めて多くの数のコイルエレメント(コンポーネントコイル)を提供する。ここで通常は、隣接しているコイルは、ハードウェアに基づいて、グループにまとめられ、これによって(場合によっては種々の組み合わせ係数によって)種々に組み合わされる。このようにして、コイル感度の空間的な有効範囲における冗長性が、チャネル低減を顧慮して使用される。3つのグループ化によって例えば、第1のチャネル、第2のチャネルおよび第3のチャネルが生じる。従って低減の結果としての第1のチャネルだけの考慮によって、3倍のチャネル低減が得られる。
【0059】
モードマトリクスを有するこのようなPPAコイルシステムでは(すなわちこれはハードウェアベースの、コンポーネントコイルのグループ化を有する)、低減マトリクス45の特定は、容易に、係数の重み付けされた選択によって行うことができる。この係数は、このようなシステムのモードまたはモードのサブセットを形成する。このようなTIMシステムのモードマトリクスは、幾つかの点において、本発明の方法の低減マトリクスを表すので、低減マトリクスを特定するための計算時間が省かれる。従って、本発明の方法は、TIMシステムを用いる場合に特に有利に使用される。
【符号の説明】
【0060】
1 基本磁界磁石、 18 シーケンス制御部、 3 勾配磁場コイルシステム、 4 高周波アンテナ、 40 コイル、 41 共分散マトリクス、 45 低減マトリクス、 101 磁気共鳴トモグラフィ装置、 105 体、 REKON 画像処理計算器、 SIG 信号、 KBE 圧縮度決定装置、 EDS 受信データセット、 MDS モードデータセット、 SR システムリソース