(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270468
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラ
(51)【国際特許分類】
F23C 5/08 20060101AFI20180122BHJP
F23D 11/10 20060101ALI20180122BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20180122BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
F23C5/08
F23D11/10 A
F23C99/00 301
F23L7/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-269823(P2013-269823)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124942(P2015-124942A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】今田 潤司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 和明
(72)【発明者】
【氏名】永冨 学
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−180004(JP,A)
【文献】
特開2003−172505(JP,A)
【文献】
特開平09−159113(JP,A)
【文献】
特開平02−033506(JP,A)
【文献】
特開昭62−288404(JP,A)
【文献】
特開昭57−108503(JP,A)
【文献】
特開2015−124941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 5/08
F23C 99/00
F23D 11/10
F23L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼バーナの燃料噴霧器に重質油燃料及び微粒化流体を導入して混合し、微粒化された重質油噴霧粒子を含む混合流体を燃焼用空気とともに火炉内へ噴射投入して燃焼させる重質油焚きボイラの燃焼方法であって、
前記燃料噴霧器の先端部には、オイルアトマイザが設けられており、
前記火炉の上下方向に複数段配置されている前記燃焼バーナから噴射投入される前記重質油噴霧粒子の粒径は、下段側より上段側が小さくなるように設定されており、
前記下段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザは、前記上段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザよりも大粒径噴霧タイプであることを特徴とする重質油焚きボイラの燃焼方法。
【請求項2】
前記燃焼バーナに供給される前記重質油燃料の流量は、下段側より上段側が小量となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の重質油焚きボイラの燃焼方法。
【請求項3】
前記下段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザは、前記上段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザよりも蒸気消費が低いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重質油焚きボイラの燃焼方法。
【請求項4】
前記オイルアトマイザの噴霧粒径は、前記重質油噴霧粒子が前記火炉内にある滞留時間と前記重質油噴霧粒子の質量%との関係によって決定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の重質油焚きボイラの燃焼方法。
【請求項5】
燃焼バーナの燃料噴霧器に重質油燃料及び微粒化流体を導入して混合し、微粒化された重質油噴霧粒子を含む混合流体を燃焼用空気とともに火炉内へ噴射投入して燃焼させる重質油焚きボイラであって、
前記燃料噴霧器の先端部には、オイルアトマイザが設けられており、
前記燃焼バーナは、前記火炉の上下方向に複数段配置され、かつ、前記燃焼バーナから噴射投入される前記重質油噴霧粒子は、上段側より下段側の粒径が大きくなるように配置されており、
前記下段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザは、前記上段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザよりも大粒径噴霧タイプであることを特徴とする重質油焚きボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト等の重質油を燃料とする重質油焚きボイラに係り、特に、ボイラから排出される煤塵量を低減する重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油焚きボイラは、液体燃料を蒸気等の噴霧媒体により微粒化(霧化)させた状態で火炉内に吹き込み、火炎を形成して燃焼させている。このような油焚きバーナで使用される燃焼バーナは、液体燃料及び噴霧媒体の供給配管先端部に設けたバーナチップを備えている。このバーナチップは、液体燃料及び噴霧媒体を混合して微粒化した後、先端に形成された複数の噴出孔から微粒化燃料を噴射可能となっている。
【0003】
図6に示す実施形態の重質油焚きボイラ10Bは、アスファルト等の重質油を燃焼させるものであり、火炉11と燃焼装置12Bとを有している。
燃焼装置12Bは、火炉壁の上下方向に複数段(図示の例では5段)が装着された燃焼バーナ20Bを有している。なお、各段には、例えば周方向に沿って4個が均等間隔で配設されており、各段の燃焼バーナ20Bは全て同じ仕様である。
【0004】
各燃焼バーナ20Bは、燃料の重質油及び噴霧用蒸気を導入し、重質油と噴霧用蒸気とを混合する。この結果、重質油を微粒化して重質油噴霧粒子を含む混合流体が燃焼バーナ20Bから火炉11内に噴射され、これを燃焼させて火炎を形成する。こうして火炉11内の下部に火炎が生じると、燃焼ガス(排ガス)が火炉11内を上昇し、煙道31を通って排ガス管37に導かれる。
なお、図中の符号13は燃料供給配管、14は蒸気供給配管、32は二次過熱器、33は一次過熱器、34,35は蒸発器、36は節炭器で、40は二次空気(OFA;Over Fire Air)、50は追加空気投入部より供給される二段燃焼空気(AA;Additional Air)である。
【0005】
従来の油焚きボイラでは、例えば下記の特許文献1に開示されているように、窒素酸化物(NOx)及び煤煙を抑制するため、内部混合形高圧気流噴霧式燃焼方法及び油バーナのバーナチップを改善することが行われている。
また、下記の特許文献2に開示されているように、微粉固体を含有するスラリ状燃料の高効率、低公害燃焼を図るため、内部混合式アトマイザの空気投入方法を改善する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−172505号公報
【特許文献2】特公平8−1288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アスファルト等の重質油を燃料とする重質油焚きボイラでは、重質油の燃料特性から、燃焼後にボイラから排出される煤塵量(未燃分)が多いという問題を有している。このような煤塵対策として、従来は微粒化に用いる蒸気(噴霧媒体)の消費率をアップさせた低煤塵アトマイザを使用している。しかし、この蒸気は、ボイラで発生させた蒸気の一部を利用するものであるから、消費蒸気量が多いことはボイラ効率の悪化に繋がるため好ましくない。
【0008】
また、従来の重質油焚きバーナ10Bは、同仕様の燃焼バーナ20Bが上下方向に複数段配置されている。このため、
図6に示すように、下段側の燃焼バーナ20Bから投入された重質油噴霧粒子の粒子軌跡(実線表示)と、上段側の燃焼バーナ20Bから投入された重質油噴霧粒子の粒子軌跡(破線表示)とを比較すると、下段側の燃焼バーナ20Bから投入された重質油噴霧粒子の粒子軌跡が長くなり、この結果、重質油噴霧粒子が火炉11内にある滞留時間も長くなる。
【0009】
このような背景から、排出される煤塵量を増加させることなく、重質油の微粒化に消費される噴霧媒体の消費率を抑制できる重質油焚きボイラの燃焼方法が望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、煤塵排出量を増加させることなく噴霧媒体の消費率抑制が可能となる重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る重質油焚きボイラの燃焼方法は、燃焼バーナの燃料噴霧器に重質油燃料及び微粒化流体(噴霧媒体)を導入して混合し、微粒化された重質油噴霧粒子を含む混合流体を燃焼用空気とともに火炉内へ噴射投入して燃焼させる重質油焚きボイラの燃焼方法であって、
前記燃料噴霧器の先端部には、オイルアトマイザが設けられており、前記火炉の上下方向に複数段配置されている前記燃焼バーナから噴射投入される前記重質油噴霧粒子の粒径は、下段側より上段側が小さくなるように設定されて
おり、前記下段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザは、前記上段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザよりも大粒径噴霧タイプであることを特徴とするものである。
【0011】
このような重質油焚きボイラの燃焼方法によれば、火炉の上下方向に複数段配置されている燃焼バーナから噴射投入される重質油噴霧粒子の粒径は、火炉内における重質油噴霧粒子の粒子軌跡が長く滞留時間も長い下段側と比較して、火炉内における重質油噴霧粒子の粒子軌跡が短く滞留時間も短い上段側が小さくなるように設定されている。
すなわち、火炉内の滞留時間が長い(重質油噴霧粒子の燃焼時間が長い)下段側の燃焼バーナには、微粒化流体の消費率が低い大粒径噴霧タイプのアトマイザを採用し、火炉内の滞留時間が短い(重質油噴霧粒子の燃焼時間が短い)上段側の燃焼バーナには、微粒化流体の消費率が高い小粒径噴霧タイプのアトマイザを採用することにより、ボイラ出口の煤塵量を増加させることなく、微粒化流体の消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えることが可能になる。
【0012】
上記の発明において、前記燃焼バーナに供給される前記重質油燃料の流量は、火炉内の滞留時間が長い下段側より上段側が小量となるように設定されていることが好ましく、これにより、火炉内の粒子軌跡を有効利用したバーナ配置及び燃料分配となる。このため、ボイラ出口の煤塵量を増加させることなく、微粒化流体の消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えることが可能になる。
【0013】
本発明に係る重質油焚きボイラは、燃焼バーナの燃料噴霧器に重質油燃料及び微粒化流体を導入して混合し、微粒化された重質油噴霧粒子を含む混合流体を燃焼用空気とともに火炉内へ噴射投入して燃焼させる重質油焚きボイラであって、
前記燃料噴霧器の先端部には、オイルアトマイザが設けられており、前記燃焼バーナは、前記火炉の上下方向に複数段配置され、かつ、前記燃焼バーナから噴射投入される前記重質油噴霧粒子は、上段側より下段側の粒径が大きくなるように配置されて
おり、前記下段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザは、前記上段側の燃焼バーナが有するオイルアトマイザよりも大粒径噴霧タイプであることを特徴とするものである。
【0014】
このような重質油焚きボイラによれば、燃焼バーナは、火炉の上下方向に複数段配置され、かつ、燃焼バーナから噴射投入される重質油噴霧粒子は、上段側より下段側の粒径が大きくなるように配置されているので、火炉内の滞留時間が長い下段側の燃焼バーナに微粒化流体の消費率が低い大粒径噴霧タイプのアトマイザを採用し、火炉内の滞留時間が短い上段側の燃焼バーナに微粒化流体の消費率が高い小粒径噴霧タイプのアトマイザを採用することにより、ボイラ出口の煤塵量を増加させることなく、微粒化流体の消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、重質油を燃料とする重質油焚きボイラにおいて、火炉内の粒子軌跡(滞留時間)を有効利用することにより、ボイラ出口から排出される煤塵量を増加させることなく、蒸気等の微粒化流体消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラの一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】本発明に係る重質油焚きボイラの燃焼バーナを火炉内から見た正面図である。
【
図4】粒径が異なる重質油噴霧粒子の燃焼プロセスを示す説明図であり、(a)は質量(%)と時間の関係を示し、(b)は燃焼プロセスのイメージを示している。
【
図5】本発明に係る重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラの変形例を示す概略構成図である。
【
図6】重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラの従来例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る重質油焚きボイラの燃焼方法及び重質油焚きボイラの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態の重質油焚きボイラ10は、例えば流体燃料としてアスファルト等の重質油を用いるコンベンショナルボイラである。この重質油焚きボイラ10は、火炉11と燃焼装置12とを有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、この火炉11を構成する火炉壁の下部に燃焼装置12が設けられている。
【0018】
燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ20を有している。本実施形態の燃焼バーナ20は、周方向に沿って、例えば、4個均等間隔で配設されたものを1セットとして、例えば、5セット、すなわち5段配置されている。なお、燃焼バーナ20の配置場所や個数については、図示の構成に限定されるものではない。
各燃焼バーナ20は、燃料の重質油を導入するため、燃料供給配管13を介して燃料供給源(不図示)に連結されており、燃料供給配管13には燃料供給量の調整を行う流量調整弁(不図示)が設けられている。また、各燃焼バーナ20は、微粒化流体の噴霧用蒸気を導入するため、各蒸気供給配管14を介して蒸気供給源(不図示)に連結されており、蒸気供給配管14には蒸気供給量の調整を行う流量調整弁(不図示)が設けられている。
【0019】
従って、各燃焼バーナ20は、燃料供給源から燃料供給配管13を通して燃料の重質油が供給されるとともに、蒸気供給源から蒸気供給配管14を通して噴霧用蒸気が供給されることとなる。このため、各燃焼バーナ20は、重質油と噴霧用蒸気とを混合することにより、重質油を微粒化して重質油噴霧粒子を含む混合流体として火炉11内に噴射し、これを燃焼させて火炎を形成することができる。
【0020】
火炉11は、上部に煙道31が連結されている。この煙道31には、対流伝熱部(熱回収部)として排ガスの熱を回収するため、例えばバーナ側から順に2次過熱器32,一次過熱器33,蒸発器34,35及び節炭器(エコノマイザ)36が設けられており、火炉11での燃焼で発生した排ガスと水との間で熱交換が行われる。なお、これらの熱交換器類については、その配置や数等を例示したものであり、特に限定されるものではない。
煙道31は、その下流側に熱交換を行った排ガスを排出する排ガス管37が連結されている。この排ガス管37には、図示しない脱硫装置、電気集塵機、誘引送風機、脱硫装置が設けられ、下流端部に煙突が設けられている。
【0021】
従って、燃焼装置12に各燃焼バーナ20が重質油と噴霧用蒸気との混合流体を火炉11内に噴射すると、火炉11では、混合流体と空気とが燃焼して火炎を生じる。こうして火炉11内の下部で火炎が生じると、燃焼ガス(排ガス)がこの火炉11内を上昇し、煙道31に排出される。なお、下段側の燃焼バーナ20から投入された重質油噴霧粒子の粒子軌跡(実線表示)は、上段側の燃焼バーナ20から投入された重質油噴霧粒子の粒子軌跡(破線表示)より長くなり、従って、重質油噴霧粒子が火炉11内に滞留する時間も長くなる。
【0022】
このとき、図示しない給水ポンプから供給された水は、節炭器36によって予熱された後、図示しない蒸気ドラムを介して火炉壁の各水管(図示せず)に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、図示しない蒸気ドラムに送り込まれる。
さらに、図示しない蒸気ドラムの飽和蒸気は二次過熱器32及び一次過熱器33に導入され、燃焼ガスによって過熱される。二次過熱器32及び一次過熱器33で生成された過熱蒸気は、図示しない発電プラント(例えばタービン等)に供給される。なお、本実施形態では、火炉11をドラム型(蒸気ドラム)として説明したが、この構造に限定されるものではない。
【0023】
次に、燃焼装置12の構成例について詳細に説明する。
本実施形態の燃焼バーナ20は、例えば
図2及び
図3に示すように構成されている。図中の符号21は、燃料の重質油を微粒化して火炉11内へ噴射投入する重質油噴霧器(燃料噴霧器)である。この重質油噴霧器21の先端部には、微粒化流体として導入する噴霧用蒸気の圧力によって重質油燃料を微粒化して噴出するため、複数の噴出孔22aを有するオイルアトマイザ22が設けられている。
【0024】
また、重質油噴霧器21の外周には、空気取入孔23aを有するハウジングチューブ23が設けられ、その先端部外面には、すなわちオイルアトマイザ22の近傍には、一次空気(図中の矢印A1)を旋回させて供給するためのスワラー24が円周方向に複数設けられている。
ハウジングチューブ23及びスワラー24の周囲は、二次空気(図中の矢印A2)の空気通路25を形成するため、筒状のバーナスロート26で覆われている。さらに、バーナスロート26の外周には、三次空気(図中の矢印A3)を供給する空気通路27が設けられており、この空気通路27内には可変式空気ダンパ28を装備している。
【0025】
このような構成の燃焼バーナ20において、燃料の重質油と噴霧用蒸気は、重質油噴霧器21の内部を通って先端部のオイルアトマイザ22に至り、例えば径の異なる大小複数の噴出孔22aから重質油を微粒化した混合流体が所定の方向(例えば斜め前方)へ噴出する。この混合流体は、ハウジングチューブ23内を通ってくる燃焼用空気及びスワラー24によって旋回しながら供給される一次空気と最初に接触し、互いに混合しつつ火炎域を形成する。
【0026】
一方、スワラー24とバーナスロート26との隙間を通過してくる二次空気、及びバーナスロート26の外側より供給される三次空気は、一次空気による火炎領域より逸脱した未燃分と混合しつつ、主火炎下流部に安定した火炎域を形成する。
このとき、火炎の状態と、排ガス中のNOx濃度及び酸素濃度とに応じて、可変式空気ダンパ28の開度操作をして、三次空気の供給量を調節する。なお、NOx濃度及び酸素濃度は、煙道31の後部適所に設けられた図示しないNOx濃度計及び酸素濃度計の計測値である。
【0027】
さて、上述した構成の燃焼バーナ20において、本実施形態では、以下に説明する燃焼方法を採用する。
すなわち、燃焼バーナ20の重質油噴霧器21に重質油燃料及び微粒化流体の蒸気を導入して混合し、微粒化された重質油噴霧粒子を含む混合流体を燃焼用空気とともに火炉内へ噴射投入して燃焼させる重質油焚きボイラ10において、火炉11の上下方向に複数段配置されている燃焼バーナ20から噴射投入される重質油噴霧粒子の粒径が、下段側より上段側を小さく設定した燃焼方法を採用する。
【0028】
図示の構成例では、上下方向に5段の燃焼バーナ20が配置され、各段には、例えば周方向に沿って4個が均等間隔で配設されている。
このような燃焼バーナ20について、例えば下段側の2段に配置する重質油噴霧器21には、オイルアトマイザ22に低蒸気消費率の大粒径噴霧タイプを採用し、上段側の2段に配置する重質油噴霧器21には、オイルアトマイザ22に高蒸気消費率の小粒径噴霧タイプを採用する。また、中間の1段については、蒸気消費率及び噴射粒径が大粒径噴霧タイプ及び小粒径噴霧タイプの中間となるオイルアトマイザ22を採用している。なお、各段に配置される複数の燃焼バーナ20においては、全てに同じオイルアトマイザ22が採用されている。
【0029】
この結果、火炉11の上下方向に5段配置されている燃焼バーナ20は、火炉11内に噴射された重質油噴霧粒子の粒子軌跡が長く滞留時間も長い下段側で大きな粒径となるように設定され、かつ、火炉11内に噴射された重質油噴霧粒子の粒子軌跡が短く滞留時間も短い上段側で小さな粒径となるように設定されている。すなわち、火炉11内に噴射投入される重質油粒子の粒径は、下段側に配置した燃焼バーナ20から上段側に配置した燃焼バーナ20へ段階的に小さくなるように設定されている。換言すれば、上下方向に複数段配置されている燃焼バーナ20から噴射投入される重質油噴霧粒子の粒径は、滞留時間の長い下段側より滞留時間の短い上段側が小さくなるように設定されている。
【0030】
このような燃焼方法を採用すれば、微粒化流体として使用される蒸気の消費率は、各バーナ段に必要十分な値に抑えることができ、しかも、ボイラ出口の排ガス管37から排出される煤塵量を増加させることもない。
これは、
図4に基づいて以下に説明する重質油噴霧粒子(以下、「油粒子」ともいう)の燃焼プロセスによるものである。
【0031】
図4(b)に示す燃焼プロセスの第1段階においては、重質油噴霧器21から火炉11内へ向けて流出した油粒子PL,PSが、重質油噴霧器21の周囲に投入される一次空気と混合され、さらに、これと同時に火炉11内の輻射熱を受けて急激に温度上昇する。温度上昇した油粒子PL,PSでは、熱分解によりガス燃料(揮発分)Gを放出するガス化が行われる。
【0032】
燃焼プロセスの第2段階において、油粒子PL,PSは、時間経過に伴って火炉11内のさらに高温の領域へ移動し、ガス化したガス燃料Gが燃焼する。また、ガス燃料Gの燃焼と同時に、油粒子PL,PSの残留固形物である粒子状のチャーCが温度上昇して高温化する。この時点が最も高温の領域となり、揮発分Gの燃焼は完了し、さらに、炭素分を主体とするチャーCの燃焼が開始される。
【0033】
そして、さらに時間が経過した第3段階において、チャーC及びガス燃料Gに分解された油粒子PL,PSは、ガス燃料Gの消失により残ったチャーCが火炉11内を移動し、第2段階より温度の低い領域に到達する。このため、チャーCの燃焼は、最も高温の領域から温度低下した領域で行われることとなり、最終段階では、未燃分の粒子及び灰よりなる煤塵Caが火炉11の外部へ排出される。
【0034】
図4(a)に示すように、大粒径の油粒子PL及び小粒径の油粒子PSは、横軸の滞留時間が経過することにより質量(%)が減少する。なお、滞留時間の経過は、粒子軌跡が長くなることを意味している。
【0035】
図4(a)では、大粒径の油粒子PLが質量50%の状態に到達する滞留時間と比較して、少粒径の油粒子PSは短時間の滞留時間で同じ状態に到達している。従って、滞留時間の長い下段側で微粒化に使用する蒸気量を低減して粒径を大きくしても、上述した燃焼プロセスにおいては、滞留時間が長い分だけ小粒径と略同じ状態まで燃焼が進行する。
従って、上述した燃焼方法のように、微粒化流体として使用される蒸気の消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えても、ボイラ出口の排ガス管37から排出される煤塵量が増加するようなことはない。すなわち、火炉11の粒子軌跡を有効活用して、粒径の異なる重質油噴霧粒子を確実に燃焼させることで、煤塵排出量の増加を防止できる。
【0036】
ところで、上述した実施形態では、上下方向に5段の燃焼バーナ20について、下段側から大中小の順に異なる三種類の粒子径を採用しているが、各段に異なる粒子径を採用して下段側から上段側へ小径としてもよい。
また、燃焼バーナ20の上下方向段数は5段に限定されることはなく、他の複数段(例えば2〜6段程度)においても、本実施形態と同様に下段側から上段側へ小径となるようにすればよい。
【0037】
また、
図5に示す変形例の重質油焚きボイラ10Aにおいて、燃焼装置12Aの燃焼バーナ20Aは、各段で噴射する粒径が異なるだけでなく、供給する重質油燃料の流量についても、火炉11内の滞留時間が長い下段側より上段側が小量となるように設定されている。
このようにしても、火炉11内の粒子軌跡を有効利用したバーナ配置及び燃料分配となり、滞留時間の長い下段側から噴射投入する燃料割合を増しても重質油噴霧粒子を確実に燃焼させて煤塵排出量の増加を防止できる。従って、ボイラ出口の煤塵量を増加させることなく、微粒化流体の消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えることが可能になる。
【0038】
また、本実施形態の重質油焚きボイラ10,10Aは、燃料噴霧器21に重質油燃料及び蒸気を導入して混合する燃焼バーナ20,20Aについて、噴射投入される重質油噴霧粒子の粒径が大きいものを下段側に配置し、上段側程粒径が大きくなるように配置している。すなわち、火炉11内の滞留時間が長い下段側の燃焼バー
ナ20,20Aに蒸気消費率が低い大粒径噴霧タイプのオイルアトマイザ22を採用し、火炉11内の滞留時間が短い上段側の燃焼バー
ナ20,20Aに蒸気消費率が高い小粒径噴霧タイプのオイルアトマイザ22を採用している。
【0039】
このように、火炉11内の粒子軌跡を有効利用して重質油噴霧粒子を燃焼させるバーナ配置の重質油焚きボイラ10,10Aは、ボイラ出口の煤塵量を増加させることなく、微粒化流体の蒸気消費率を各バーナ段に必要十分な値に抑えることが可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえば微粒化流体としてくうきの利用が可能であるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0040】
10,10A,10B 重質油焚きボイラ
11 火炉
12,12A,12B 燃焼装置
13 燃料供給配管
14 蒸気供給配管
20,20A,20B 燃焼バーナ
21 重質油噴霧器(燃料噴霧器)
22 オイルアトマイザ
22a 噴出孔
23 ハウジングチューブ
23a 空気取入孔
24 スワラー
25,27 空気通路
26 バーナスロート
28 可変式空気ダンパ
31 煙道