(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絞り羽根および前記シャッタ羽根のそれぞれの前記被支持部は、前記光軸方向に対して傾いた軸回りで回動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光量調節装置。
前記絞り羽根と前記第1および第2のシャッタ羽根のそれぞれの前記被支持部は、前記光軸方向に対して傾いた軸回りで回動することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の光量調節装置。
前記光量調節羽根は、前記被支持部から前記光量調節部に向かって前記開口面に対する前記傾きが小さくなるように曲面形状または折れ曲がり形状を有することを特徴とする請求項10または11に記載の光量調節装置。
前記光量調節羽根を複数有し、これら複数の光量調節羽根を回動させて前記光通過開口の大きさを変化させることにより前記光の量を調節することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の光量調節装置。
前記光量調節部に絞り開口が形成された1枚の前記光量調節羽根を有し、該光量調節羽根を回動させて前記絞り開口を前記光通過開口に対して移動させることにより前記光の量を調節することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の光量調節装置。
前記光量調節羽根の前記光量調節部はNDフィルタにより形成されており、該光量調節羽根を回動させて前記NDフィルタを前記光通過開口に対して移動させることにより前記光の量を調節することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1および
図2(a),(b)には、本発明の実施例1である光量調節装置としての虹彩型の絞りシャッタ装置10を示している。これらの図において、1はリング形状に形成されたベース部材としての地板であり、その内周には開口6が形成されている。以下の説明において、絞りシャッタ装置10の中心を通る軸であって、地板1に形成された開口6の開口面および後述する各固定開口のそれぞれの開口面に直交する軸を光軸AXといい、該光軸AXが延びる方向を光軸方向という。さらに、光軸方向に対して直交する方向を径方向という。
【0020】
地板1において開口6の周囲を囲むリング部の周方向複数箇所には、支持部としての絞り支持ボス部(凸部)7が形成されている。各絞り支持ボス部7の中心軸BXは、光軸方向(光軸AX)に対して傾きθBを有する。
【0021】
2は駆動部材としての絞り駆動リングである。絞り駆動リング2は、地板1(開口6)側に向かって凹(言い換えれば、地板1とは反対側に向かって凸)のドーム形状に形成されたドーム壁部2aを有する。
【0022】
ドーム壁部2aの最内周部(径方向中央部)には、光通過開口としての第1の固定開口12が形成されている。また、絞り駆動リング2におけるドーム壁部2aよりも外周側の部分における周方向一部には、被駆動ギア2bが形成されている。ドーム壁部2aにおける地板1側の凹面およびそれとは反対側の凸面(以下、絞りガイド面という)2cはそれぞれ、曲面(例えば、球面)として形成されている。光軸方向において、第1の固定開口12の開口面の位置は、絞り駆動リング2におけるドーム壁部2aの外周縁に比べて、地板1(開口6の開口面)から離れている。つまり、絞り駆動リング2において、ドーム壁部2aは、光軸方向において地板1から離れる方向に突出する(すなわち、絞り駆動リング2の外周側から内周側にかけて光軸方向における一方の側に凹んだ形状を有する)ように形成されている。
【0023】
また、ドーム壁部2aの絞りガイド面2cにおける周方向複数箇所(第1の固定開口12の周囲の複数箇所)には、カムボス部8が形成されている。各カムボス部8の中心軸CXは、絞りガイド面2cの法線方向に延びるように、光軸方向(光軸AX)に対して傾きθCを有する。
【0024】
3は遮光羽根としての絞り羽根であり、本実施例では、複数(6枚)設けられている。各絞り羽根3は、絞り駆動リング2に形成された第1の固定開口12の径方向内側に、その周囲が遮光された絞り開口Aを形成するための遮光性を有する薄板状の部材である。
図4(a)に詳しく示すように、絞り羽根3は、絞り開口Aを形成するための遮光部としての絞り部3aと、地板1の絞り支持ボス部7が挿入される穴部3cが形成された被支持部3cとを有する。被支持部3b(つまりは絞り羽根3)は、穴部3cに絞り支持ボス部7が挿入されることによって、地板1に対して、該絞り支持ボス部7を中心として回動可能に支持される。さらに、絞り羽根3は、絞り部3aと被支持部3bとを接続する中間部3eを有する。
【0025】
各絞り羽根3は、絞り駆動リング2のドーム壁部2aの絞りガイド面2cに対向するように(又はこれに沿うように)配置されている。絞り部3aは、ドーム壁部2aの絞りガイド面2cとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。このため、絞り羽根3が回動するとき、絞り部3aは、絞りガイド面2cに沿って、つまりは絞りガイド面2cによってガイドされながら、第1の固定開口12の径方向内側の領域(第1の固定開口12に対向する領域)に進退する方向、すなわち絞り開口の大きさを変化させる方向(以下、絞り開閉方向という)に回動する。
【0026】
また、各絞り羽根3のうち中間部3eおよび被支持部3b、すなわち少なくとも絞り部3aよりも被支持部3b側の部分は、地板1の開口6の開口面(
図4(a)にPで示す)に対して光軸方向への傾きαを有する。この傾きαは、絞り駆動リング2に形成された第1の固定開口12の開口面や後述する絞りカバー板に形成された第2の固定開口の開口面に対する傾きにも相当し、さらに各開口面は径方向に沿っているので、径方向に対する傾きと言い換えることもできる。
【0027】
傾きαは、90度以下の角度であり、中間部3eおよび被支持部3bに傾きαが与えられることにより、絞り部3aは、被支持部3bに対して光軸方向に離れて位置する。また、被支持部3bに形成された穴部3cの中心軸は、絞り支持ボス部7の中心軸BXに一致するように光軸AXに対して傾きを有する。したがって、絞り羽根3は、絞り支持ボス部7の中心軸が光軸方向に延びる場合に比べて、スムーズに回動することができる。
【0028】
なお、各絞り羽根3において、絞り部3aよりも被支持部3bの方が、開口面(径方向)Pに対する光軸方向への傾きが大きい。言い換えれば、絞り部3aの開口面Pに対する光軸方向への傾きは、被支持部3bの該傾きよりも小さい。また、絞り羽根3の被支持部3bから絞り部3aにかけての全体を曲面形状(例えば、球面形状)に形成してもよい。
【0029】
さらに、各絞り羽根3には、絞り駆動リング2に形成されたカムボス部8が挿入されて係合するカム溝部3dが形成されている。前述したようにカムボス部8の中心軸CXは絞りガイド面2cの法線方向に延びている。このため、カムボス部8は、その中心軸が光軸方向に延びる場合に比べて、カム溝部3d内をスムーズに移動して絞り部3a(つまりは絞り羽根3)を絞り開閉方向に位置精度良く回動させることができる。なお、絞り部3aを曲面(例えば、球面)として形成する一方、絞りガイド面2cを曲面ではなく、円錐台面としてもよい。
【0030】
図1および
図2(a)において、4は絞りカバー板(絞りカバー部材)であり、絞り駆動リング2および絞り羽根3に対して地板1とは反対側に配置されて、絞り駆動リング2(ドーム壁部2a)との間に絞り羽根3を収容する絞り羽根室を形成する。絞りカバー板4は、地板1(開口6)側に向かって凹(言い換えれば、地板1とは反対側に向かって凸)のドーム形状を有するドーム壁部4aと、該ドーム壁部4aの外周に形成されたリング部とを有する。ドーム壁部4aは、絞り駆動リング2のドーム壁部2aとほぼ同じ曲率を持つ球面又は曲面形状に形成されている。
【0031】
ドーム壁部4aの最内周部(径方向中央部)には、光通過開口としての第2の固定開口13が形成されている。光軸方向において、第2の固定開口13の開口面の位置は、ドーム壁部4aの外周縁(リング部)に比べて、地板1(開口6)から離れている。つまり、絞りカバー板4において、ドーム壁部4aは、光軸方向において地板1から離れる方向に突出するように形成されている。
【0032】
絞りカバー板4のリング部が地板1にビスにより結合されることで、絞りカバー板4は地板1と一体化される。このため、絞りカバー板4も、地板1と同様にベース部材として扱うことができる。
【0033】
なお、地板1に、絞りカバー板4ドーム壁部4aと同様なドーム壁部を形成し、該ドーム壁部に固定開口を形成することで絞りカバー板4をなくしてもよい。
【0034】
5はステッピングモータ等のアクチュエータを含む絞り駆動部であり、その出力軸には、
図2(b)に示すように、絞り駆動リング2の被駆動ギア2bに噛み合う駆動ギア5aが取り付けられている。絞り駆動部5は、モータ地板11および絞りカバー板4を介して地板1に固定される。ここで、絞り駆動部5は、地板1および絞りカバー板4を含むベース部材のうちドーム壁部4aの周囲の部分における1カ所に配置されている。言い換えれば、絞り駆動部5は、ドーム壁部4aがその周囲の部分に対して突出する方向と同じ方向に、該周囲の部分から突出するように設けられている。
【0035】
このようにドーム壁部4aと絞り駆動部5とがベース部材から突出する方向を同じにすることにより、後述する実施例2のように、本絞りシャッタ装置10をカメラ等の光学機器に搭載した場合に、光学機器内のスペース(特に、ドーム壁部4aと絞り駆動部5とが配置された側とは反対側のスペース)を有効に使用することができ、該光学機器の小型化を図ることができる。
【0036】
絞り駆動部5に通電されて駆動ギア5aが回転すると、
図5(a),(b)に示すように、その回転力が被駆動ギア2bおよび駆動ギア5aを介して絞り駆動リング2に伝達され、これを光軸AXの回り(光通過開口の周囲)で地板1に対して回転させる。絞り駆動リング2の回転によって絞り羽根3の絞り部3aに形成されたカム溝部3d内で絞り駆動リング2に設けられたカムボス部8が移動することにより、絞り羽根3は、被支持部3bの穴部3cに挿入された絞り支持ボス部7を中心として絞り開閉方向に回動される。こうして、複数の絞り羽根3(ただし、
図5(a),(b)には1枚のみを示している)の絞り部3aが絞り開閉方向に回動されることで、これら絞り部3aにより形成される絞り開口Aの径が変化し、該絞り開口Aを通過する光の量が増減(調節)される。
【0037】
なお、本実施例では、地板1に形成された絞り支持ボス部7(の中心軸)と絞り駆動リング2に形成されたカムボス部8(の中心軸)とがそれぞれ光軸方向に対して傾いている場合について説明した。しかし、絞り支持ボス部7およびカムボス部8は光軸方向に平行に延びるように形成されてもよく、絞り羽根3(被支持部3b)が光軸方向に対して傾いた仮想の軸回りで回動すればよい。
【0038】
また、地板1に絞りカバー板4のドーム壁部4aと同様なドーム壁部を形成し、該ドーム壁部に固定開口を形成するとともに該ドーム壁部の内面(凹面)にカムボス部を形成する一方、回動可能な絞り駆動リング2に絞り支持ボス部を形成してもよい。この場合、絞り羽根3に形成された穴部3cに絞り駆動リング2に形成された絞り支持ボス部を挿入し、カム溝部3dに地板1のドーム壁部に形成されたカムボス部を挿入する。これによっても、絞り駆動リング2を回動させることで、絞り羽根3を絞り開閉方向に回動させることもできる。このように、絞り羽根3の穴部3cとカム溝部3dのそれぞれに挿入される絞り支持ボス部とカムボス部は、それらの相対位置が変化すれば、どちらが地板1に形成されて、どちらが絞り駆動リング2に形成されてもよい。そして、この場合のように絞り羽根3の被支持部3bを直接的に支持するのが絞り駆動リング2であっても、被支持部3bが地板1に対して回動可能に支持されている点では同じである。
【0039】
また、本実施例では、地板1に形成された絞り支持ボス部7と絞り駆動リング2に形成されたカムボス部8をそれぞれ、絞り羽根3に形成された穴部3cとカム溝部3dに挿入する場合について説明した。しかし、絞り羽根3に絞り支持ボス部7に相当するボス部とカムボス部8に相当するボス部とを形成し、これらを地板1に形成された穴部と絞り駆動リング2に形成されたカム溝部に挿入するようにしてもよい。
【0040】
さらに、
図1において、21,22は、地板1(および絞り駆動リング2)に対して絞り羽根3とは反対側に配置された2つのシャッタ羽根である。シャッタ羽根(第1のシャッタ羽根)21およびシャッタ羽根(第2のシャッタ羽根)22も、絞り羽根3と同様に、遮光性を有する薄板状の部材である。
【0041】
そして、23はシャッタ羽根21,22に対して地板1および絞り駆動リング2とは反対側に配置されたシャッタカバー板(シャッタカバー部材)である。シャッタカバー板23は、地板1に取り付けられて、絞り駆動リング2(ドーム壁部2a)との間にシャッタ羽根21,22を収容するシャッタ羽根室を形成する。シャッタカバー板23は、地板1(開口6)側に向かって凸(言い換えれば、地板1とは反対側に向かって凹)のドーム形状を有するドーム壁部23aと、該ドーム壁部23aの外周に形成されたリング部とを有する。ドーム壁部23aは、絞り駆動リング2のドーム壁部2aとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。
【0042】
ドーム壁部23aの最内周部(径方向中央部)には、光通過開口としての第3の固定開口28が形成されている。光軸方向において、第3の固定開口28の開口面の位置は、ドーム壁部23aの外周縁の部分(リング部)に比べて、地板1(開口6)から離れている。つまり、シャッタカバー板23において、ドーム壁部23aは、光軸方向において地板1から離れる方向に突出するように形成されている。
【0043】
シャッタカバー板23は、そのリング部が地板1に接着されて結合されることで、地板1と一体化される。このため、シャッタカバー板23も、地板1および絞りカバー板4と同様にベース部材として扱うことができる。
【0044】
シャッタ羽根21は、
図4(b)に詳しく示すように、遮光部としてのシャッタ部21aと、被支持部21bとを有する。シャッタ部21aは、シャッタカバー板23の第3の固定開口28に対向する領域に進退して第3の固定開口28を開放したり閉塞したり(すなわち開閉)する。第3の固定開口28を閉じることで、該第3の固定開口28(および第1、第2の固定開口12,13)における光の通過を遮断する。
【0045】
被支持部21bには穴部21cが形成されており、該穴部21cには、地板1に形成されたシャッタ支持ボス部26が挿入される。これにより、被支持部21b(つまりはシャッタ羽根21)は、地板1に対して、シャッタ支持ボス部26を中心として回動可能に支持される。さらに、シャッタ羽根21には、後述するシャッタ駆動ピンが挿入されて係合する穴部21dが形成されている。
【0046】
もう1つのシャッタ羽根22も、シャッタ羽根21と同様に形成され、
図6(a),(b)に示すように、シャッタ部22aと、支持ボス部が挿入される穴部22cが形成された被支持部22bと、シャッタ駆動ピンが挿入される穴部22dとを有する。
図6(a),(b)には、シャッタカバー板23を除いた状態でのシャッタ羽根21,22を示している。
【0047】
これらシャッタ羽根21,22は、絞り駆動リング2のドーム壁部2aの凹面2eおよびシャッタカバー板23のドーム壁部23aの凸面23cに対向するように(又はこれに沿うように)配置され、これら凹面および凸面とほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。このため、シャッタ羽根21,22が回動するとき、シャッタ部21a,22aは、絞り駆動リング2のドーム壁部2aの凹面2eおよびシャッタカバー板23のドーム壁部23aの凸面23cに沿って、つまりはこれら凹面2eおよび凸面23c(以下、これらをまとめてシャッタガイド面という)によりガイドされながら、第3の固定開口28を開閉する方向(以下、シャッタ開閉方向という)に回動する。
【0048】
このとき、絞り駆動リング2のドーム壁部2aは、シャッタ羽根21,22の回動スペースと、絞り羽根3の回動スペースとを仕切る役割も有し、シャッタ羽根21,22と絞り羽根3とが互いに干渉することを回避している。このように、絞り駆動リング2のドーム壁部2aは、シャッタ羽根21,22と絞り羽根3の回動をガイドする機能と、シャッタ羽根21,22と絞り羽根3の回動スペースを仕切る機能とを有する。したがって、絞り駆動リング2とは別に、上記ガイド機能や仕切り機能を有する部材を設ける場合に比べて、部品点数を減少させたり絞りシャッタ装置10の光軸方向での厚みを減少させたりすることができる。
【0049】
また、シャッタ羽根21,22のうちシャッタ部21a,22aよりも被支持部21b,22b側の部分は、前述した開口面Pに対して光軸方向への傾きβを有する。この傾きβは、90度以下の角度であり、被支持部21b,22bに傾きβが与えられることにより、シャッタ部21a,22aは、被支持部21b,22bに対して光軸方向に離れて位置する。なお、シャッタ羽根21,22のうち、被支持部21b,22bの開口面Pに対する光軸方向への傾きβは、シャッタ部21a,22aの開口面Pに対する光軸方向への傾きよりも大きい。言い換えれば、シャッタ部21a,22aの開口面Pに対する光軸方向への傾きは、被支持部21b,22bの該傾きβよりも小さい。
【0050】
24はシャッタ羽根21,22を、シャッタ開閉方向に回動させるシャッタ駆動部であり、25はシャッタ駆動部24を地板1に固定するための固定部材である。シャッタ駆動部24は、例えば、二極に着磁されたマグネットと、それを取り囲むステータヨークと、該ステータヨークを励磁するコイル等により構成され、コイルへの通電によりマグネットを2位置間で往復回動させる。
【0051】
本実施例では、シャッタ駆動部24および固定部材25は、地板1のうちシャッタ羽根21,22の被支持部21b,22bを支持するシャッタ支持ボス部26,27が設けられた側の面とは反対側の面(絞り駆動部5と同じ側の面)に取り付けられる。
【0052】
シャッタ駆動部24のマグネットには、シャッタ駆動ピン24aが一体的に設けられており、該シャッタ駆動ピン24aは、地板1に形成された穴部を貫通し、シャッタ羽根21,22の駆動穴部21d,22dに挿入されて係合する。このため、コイルへの通電によりシャッタ駆動ピン24aが回動すると、
図6(a),(b)に示すように、シャッタ羽根21,22は、シャッタ支持ボス部26,27を中心としてシャッタ開閉方向に回動される。
【0053】
シャッタ羽根21,22(少なくともシャッタ部21a,22b)は、絞り駆動リング2のドーム壁部2aおよびシャッタカバー板23のドーム壁部23aのガイド面2e,23cとほぼ同じ曲率を持つ球面(曲面)形状に形成されている。このためシャッタ羽根21,22が回動するときは、これらのガイド面2e,23cに沿って、つまりはこれらのガイド面2e,23cによりガイドされながら、シャッタ開閉方向に回動する。
【0054】
図1および
図4(b)に示すように、シャッタ駆動ピン24aの中心軸DXは、光軸方向(光軸AX)に対してドーム壁部23a(ガイド面2e)の法線方向に延びる傾きθDを有する。また、シャッタ羽根21,22におけるシャッタ駆動ピン24aと係合する駆動穴部21d,22dの中心軸は、シャッタ駆動ピン24aの中心軸DXに一致するように光軸AXに対して傾きを有する。さらに、シャッタ支持ボス部26,27は、光軸方向(光軸AX)に対して傾きθEを有し、シャッタ支持ボス部26,27と係合する穴部21c,22cの中心軸は、シャッタ支持ボス部26,27の中心軸EXに一致するように光軸AXに対して傾きを有する。したがって、シャッタ羽根21,22は、シャッタ駆動ピン24aおよびシャッタ支持ボス部26,27の中心軸が光軸方向に延びる場合に比べてスムーズに、かつ高速で回動してシャッタ動作を行うことができる。
【0055】
なお、本実施例では、地板1に形成されたシャッタ支持ボス部26,27を、シャッタ羽根21,22に形成された穴部21c,22cに挿入する場合について説明した。しかし、シャッタ支持ボス部をシャッタカバー板4に設けてもよい。また、シャッタ羽根21,22にシャッタ支持ボス部26,27に相当するボス部を形成し、これらを地板1に形成された穴部に挿入するようにしてもよい。
【0056】
以上のように、本実施例の絞りシャッタ装置10では、
図3に示すように、絞り羽根3およびシャッタ羽根21,22において、それぞれの被支持部3b,21b,22bに対して絞り部3aおよびシャッタ部21a,22aが光軸方向に離れて位置するように、各被支持部が開口面Pに対して光軸方向における同じ一方の側への傾きα,βを有する。さらに、絞り駆動リング2およびシャッタカバー板23が、該一方の側に凹んだ形状(ドーム壁部2a,23a)を有する。これにより、絞り羽根3、絞り駆動リング2、シャッタカバー板23およびシャッタ羽根21,22よりも径方向の内側に、第1〜第3の固定開口(光通過開口)12,13,28に面した凹空間Sが形成される。
【0057】
この凹空間Sは、実際には第3の固定開口28を有するシャッタカバー板23の径方向内側に、光軸方向において、絞り駆動リング2および絞りカバー板4に形成された第1および第2の固定開口12,13の側に向かって奥行きを有する空間として形成される。凹空間Sは、第1〜第3の固定開口12,13,28の側においてこれら第1〜第3の固定開口12,13,28に向かって開口しており(つまり第1〜第3の固定開口12,13,28に面しており)、その反対側に向かって内径が増加して絞りシャッタ装置10の光軸方向外部に向かって開口している。
【0058】
凹空間Sには、
図3に示すように、レンズ51の少なくとも一部を入り込ませることが可能である。すなわち、本実施例によれば、絞り羽根3とシャッタ羽根21,22を開放状態まで開くことなく、これらの羽根3,21,22よりも径方向内側に、レンズ51の少なくとも一部を入り込ませることが可能な凹空間Sを形成することができる。このとき、絞り駆動リング2およびシャッタカバー板23にドーム壁部2a,23aを形成したことで、絞り駆動リングおよびシャッタカバー板を平板リング状に形成する場合に比べて、凹空間Sにおけるレンズ51が挿入される開口の径を大きくすることができる。つまり、凹空間Sに挿入可能なレンズ径を大きくすることができる。
図3には、凹空間Sに、レンズ51およびこれを保持するレンズ保持部材55の大部分が凹空間Sに入り込んでいる様子を示している。
【0059】
また、本実施例では、絞り羽根3およびシャッタ羽根21,22のうち一方の羽根(本実施例では絞り羽根3)が他方の羽根(本実施例ではシャッタ羽根21,22)に対して光軸方向における凹空間Sとは反対側に配置され、該絞り羽根3が、地板1よりも凹空間Sとは反対側に凸となるように配置されている。そして、このような絞り羽根3の配置により、
図3に示すように、絞り羽根3(絞りカバー板4のドーム壁部4a)の凸面とレンズ53の凹面とを近接させることが可能であり、絞り羽根3およびシャッタ羽根21,22を、レンズ51の凸面とレンズ53の凹面との間の狭い空間に配置することができる。
【0060】
さらに、本実施例では、シャッタ羽根21,22、地板1および絞り羽根3を、凹空間Sの凹み方向(第1〜第3の固定開口12,13,28に向かう奥行き方向)にこの順で配置している。言い換えれば、複数の絞り羽根3を、絞りシャッタ装置10が光軸方向に凸となっている側に配置し、シャッタ羽根21,22を凹となっている面に配置している。この理由は、以下の通りである。絞り羽根3の数(本実施例では6枚)は、シャッタ羽根21,22の数よりも多く、地板1や絞り駆動リング2に形成する支持ボス部7やカムボス部8の数もこれに応じて多くなる。このような軸部をドーム形状の壁部に形成する場合、凹面に形成するより凸面に形成する方が、金型構造が簡単になり成形が易く、生産性も高めることが可能であるためである。
【0061】
ただし、これとは逆に、シャッタ羽根、地板および絞り羽根を、凹空間の凹み方向とは反対方向にこの順で配置する、つまり絞り羽根を絞りシャッタ装置が光軸方向に凹となっている側に配置し、シャッタ羽根を凸となっている面に配置してもよい。
【0062】
さらに、本実施例では、シャッタ羽根21,22が、被支持部21b,22bからシャッタ部21a,22bにかけて滑らかにつながる曲面形状に形成されている場合について説明した。しかし、シャッタ部21a,22bが、被支持部21b,22bに対して折れ曲がった形状を有していてもよい(
図7(b)参照)。この場合でも、開口面(
図4(b)中のP)に対するシャッタ部21a,22aの光軸方向への傾きが被支持部21b,22bの該傾き(
図4(b)中のβ)よりも小さい点については同じである。
【0063】
ここで、
図7(a)には、絞り駆動リング2とシャッタ羽根21,22とシャッタカバー板23の断面を示している。この図に示すように、シャッタ羽根22に対して凹空間Sとは反対側にて重なるように配置されたシャッタ羽根21における曲面形状の曲率C1は、シャッタ羽根22における該曲率C2よりも大きい。言い換えれば、シャッタ羽根21における曲面形状の曲率半径は、シャッタ羽根22における該曲率半径よりも小さい。
【0064】
本実施例では、
図6(a)に示したように、シャッタ開放状態では、シャッタ羽根21,22における被支持部21b,22bよりも先端側の部分がシャッタ開方向に互いに離れ、光軸方向にて互いに重ならない。このため、仮にシャッタ羽根21,22の曲率C1,C2が互いに同じ又は曲率C2が曲率C1より大きいと、シャッタ閉じ動作において、シャッタ羽根21,22の先端側の部分同士が引っ掛かるおそれがある。これに対して、本実施例のようにシャッタ羽根21の曲率C1がシャッタ羽根22の曲率C2より大きくすることで、シャッタ閉じ動作におけるシャッタ羽根21,22の先端側の部分同士の引っ掛かりを回避することができ、スムーズなシャッタ閉じ動作(つまりはシャッタ動作)を確保することができる。
【0065】
なお、上述したように、シャッタ羽根21,22が折れ曲がり形状を有する場合には、同じ理由により、
図7(b)に示すように、シャッタ羽根21における折れ曲がり形状の折れ曲がり角B1が、シャッタ羽根22における該折れ曲がり角B2よりも大きくするとよい。
【0066】
また、
図8には、絞り駆動リング2と絞り羽根3と絞りカバー板4の一部の断面を拡大して示す。この図に示すように、絞り駆動リング2に設けられたカムボス部8における一方の側(ドーム壁部2aおよび絞り羽根3が凸となっている側)の先端が、絞り羽根3の回動位置にかかわらず、絞り部3aにおける該一方の側の先端よりも該一方の側とは反対側に退避している。
【0067】
図8中のHは、絞り羽根3が開放状態にあるときのカムボス部8の先端の絞り部3aの先端に対する退避量を示している。絞り部3aの先端の位置を
図8において「高さ」と表現する場合、この絞り開放状態が最も絞り部3aの高さが低くなる状態であり、この状態においてもカムボス部8の先端は、絞り部3aの先端よりも退避している(低い位置にある)。図中には、一点鎖線で、絞り羽根3が閉じたときの絞り部3aの位置を示している。このため、上述した「絞り羽根3の回動位置にかかわらず」とは、本実施例では、絞り開放状態においてもと言い換えることができる。
【0068】
このように、絞り羽根3の回動位置にかかわらずカムボス部8の先端が絞り部3aの先端よりも退避する構成とすることで、絞り羽根3の開閉状態にかかわらず(開放状態においても)カムボス部8が邪魔になることなく、
図3に示すように、絞り羽根3(絞りカバー板4のドーム壁部4a)の凸面とレンズ53の凹面とを近接させることができる。この結果、絞りシャッタ装置10を挟むレンズ51,53間の間隔をより狭めることができる。
【実施例2】
【0069】
上記実施例1にて説明した絞りシャッタ装置10が搭載された光学機器としてのカメラ(ビデオカメラ又はスチルカメラ)を
図17に示す。50はカメラ本体であり、51,53は撮影光学系を構成する複数のレンズである。52はCCDセンサやCMOSセンサ等により構成される撮像素子であり、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する。
54はCPU等により構成されるコントローラであり、絞りシャッタ装置10の駆動部5,24や撮像素子52の動作を制御する。
【0070】
このようなカメラにおいて、
図3を用いて実施例1にて述べたように、絞りシャッタ装置10の凹空間Sには、該絞りシャッタ装置10に対して光軸方向にて隣接配置されたレンズ51の少なくとも一部(凸面)、さらにはレンズ51を保持するレンズ保持部材55までもが入り込むことができる。
【0071】
凹空間Sへのレンズ51の入り口となる開口の大きさ(内径)は、絞り駆動リング2およびシャッタカバー板23にドーム壁部2a,23aを形成することを前提とすれば、複数の絞り羽根3の被支持部3b(支持ボス部7)を通る円の径(又は該円に対応する地板1の開口6の内径)によって決まり、複数の絞り羽根3により形成される絞り開口Aの大きさ(およびシャッタ羽根21,22の開きの大きさ)には依存しない。このため、絞り開口Aを絞り込んだ状態でも、つまりは絞り開口Aを開放開口径に設定したりそれよりもさらに拡げたりすることなく、凹空間Sにレンズ51を入り込ませることができる。したがって、絞り開口Aの最大径をレンズ51の外径に合わせて大きくする必要がなく、内部の空間にレンズを入り込ませることが可能な絞り装置において径方向の大型化を回避することができる。
【0072】
なお、凹空間Sへのレンズ51の入り口を被写体方向に向けて、絞りシャッタ装置10に対して被写体側に隣接配置されたレンズ53が凹空間Sに入り込むようにしてもよい。
【0073】
このような配置とすることにより、特に光軸方向においてカメラの撮影光学系の小型化を図ることが可能となる。
【0074】
また、
図3には、実施例1でも触れたが、絞りシャッタ装置10の絞りカバー板4のドーム壁部4aの被写体側の凸面と絞りシャッタ装置10に対して被写体側に隣接配置されたレンズ53の像面側の凹面とが近接している様子も示している。このように、絞りシャッタ装置10の絞り羽根3およびシャッタ羽根21,22を、レンズ51の被写体側の凸面とレンズ53の像面側の凹面との間の狭い空間に配置することも可能である。
【0075】
さらに、
図3に示すように、絞りシャッタ装置10とその両側のレンズ51,53とが近接した状態で、撮影光学系を保持するレンズ鏡筒がカメラ本体内に収納(沈胴)されるようにしてもよい。
【0076】
また、絞りシャッタ装置10は、
図17に示したカメラだけでなく、交換レンズ等の他の光学機器にも搭載することができる。
【実施例3】
【0077】
図9および
図10には、本発明の実施例3である光量調節装置としての虹彩絞り装置110を示している。これらの図において、101はベース部材としての地板であり、その径方向中央には固定の光通過開口としての第1の固定開口106が形成されている。以下の説明において、第1の固定開口106の開口面106aの中心を通り、該開口面106aに直交する軸を光軸AXといい、該光軸AXが延びる方向を光軸方向という。
【0078】
また、地板101における第1の固定開口106の周囲のリング部の周方向複数箇所には、支持ボス部(凸部)107が形成されている。各支持ボス部107の中心軸BXは、光軸方向(光軸AX)に対して傾きθBを有する。
【0079】
102は駆動部材としての駆動リングであり、その内周側の部分には、地板101(第1の固定開口106)側に向かって凹のドーム形状を有する(すなわち、駆動リング102の外周側から内周側にかけて光軸方向における一方の側に凹んだ形状を有する)ドーム壁部102aが形成されている。ドーム壁部102aは、光軸方向において地板1から離れる方向に突出する。ドーム壁部102aの外径は、地板1の第1の固定開口106の内径とほぼ同じに設定されている。
【0080】
また、駆動リング102におけるドーム壁部102aよりも外周側の部分における周方向一部には、被駆動ギア102bが形成されている。ドーム壁部102aにおける地板101側の面およびそれとは反対側の面(ガイド面)102cはそれぞれ、曲面(例えば、球面)として形成されている。ドーム壁部102aの径方向中央には、開放絞り開口に対応する第2の固定開口112が形成されている。第2の固定開口112の開口面の位置は、駆動リング102におけるドーム壁部102aより外周の部分に比べて、地板101(第1の固定開口106の開口面106a)から離れている。
【0081】
また、ドーム壁部102aのガイド面102cにおける周方向複数箇所(第2の固定開口112の周囲の複数箇所)には、カムボス部108が形成されている。各カムボス部108の中心軸CXは、ガイド面102cの法線方向に延びるように、光軸方向(光軸AX)に対して傾きθCを有する。
【0082】
103は複数の光量調節羽根(遮光羽根)としての絞り羽根である。各絞り羽根103は、地板101の第1の固定開口106および駆動リング102の第2の固定開口112の径方向内側に、周囲が遮光された絞り開口(開口径が可変である光通過開口)Aを形成するための遮光性を有する薄板状の部材である。
【0083】
図12に示すように、絞り羽根103は、絞り開口Aを形成するための光量調節部(絞り部)としての遮光部103aと、地板101および駆動リング102に対して回動可能に支持される被支持部103bと、これら遮光部103aおよび被支持部103bを接続する中間部103eとを有する。被支持部103bには、地板101に形成された支持ボス部107が挿入される穴部(凹部)103cが形成されており、絞り羽根103は、該支持ボス部107と穴部103cとを中心として地板101および駆動リング102に対して回動可能である。
【0084】
複数の絞り羽根103は、駆動リング102のドーム壁部102aのガイド面102cに対向するように配置されている。遮光部103aは、駆動リング102のドーム壁部102aのガイド面102cとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。このため、絞り羽根103が回動するとき、遮光部103aは、ガイド面102cに沿って、つまりはガイド面102cによりガイドされながら、第2の固定開口112の径方向内側の領域(第1および第2の固定開口106,112に対向する領域)に進退する方向、すなわち絞り開口の大きさを変化させる方向(以下、開閉方向という)に移動して第1および第2の固定開口106,112を通過する光の量を調節する。このように、駆動リング102のドーム壁部102aは、絞り羽根103の回動をガイドする機能を有する。したがって、駆動リング102とは別に、上記ガイド機能を有する部材を設ける場合に比べて、部品点数を減少させたり絞り装置110の光軸方向での厚みを減少させたりすることができる。
【0085】
さらに、遮光部103aには、駆動リング102に設けられたカムボス部108が挿入されて係合するカム溝部103dが形成されている。前述したようにカムボス部108の中心軸CXはガイド面102cの法線方向に延びている。このため、カムボス部108は、その中心軸が光軸方向に延びる場合に比べて、カム溝部103d内をスムーズに移動して遮光部103a(絞り羽根103)を開閉方向に位置精度良く回動させることができる。なお、遮光部103aを曲面(例えば、球面)として形成する一方、ガイド面102cを、曲面とせずに、円錐台面としてもよい。
【0086】
また、絞り羽根103のうち中間部103eおよび被支持部103b、すなわち少なくとも遮光部103aよりも被支持部103b側の部分は、地板101に形成された第1の固定開口106の開口面106aに対して光軸方向への傾きαを有する。この傾きαは、駆動リング102に形成された第2の固定開口112や後述するカバー板に形成された第3の固定開口の開口面に対しても同様である。傾きαは90度を含む角度であり、中間部103eおよび被支持部103bに傾きαが与えられることにより、遮光部103aは、被支持部103bに対して光軸方向に離れて位置する。また、被支持部103bに形成された穴部103cの中心軸は、支持ボス部107の中心軸BXに一致するように光軸AXに対して傾きを有する。したがって、絞り羽根103は、支持ボス部107の中心軸が光軸方向に延びる場合に比べて、スムーズに回動することができる。
【0087】
なお、絞り羽根103において、遮光部103aよりも被支持部103bの方が開口面106aに対する光軸方向への傾きが大きい。言い換えれば、遮光部103aの開口面106aに対する光軸方向への傾きは、被支持部103bの該傾きαよりも小さい。
また、絞り羽根103の被支持部103bから遮光部103aにかけての全体を曲面形状(例えば、球面形状)に形成してもよい。また、絞り羽根103の中間部103eと遮光部103aとを折れ曲がり形状に形成してもよい。
【0088】
図9および
図10において、104はカバー板(カバー部材)であり、地板101との間に、駆動リング102と絞り羽根103を収容する羽根室を形成する。カバー板104の内周側の部分には、地板101側に向かって凹のドーム形状を有するドーム部(カバー部)104aが形成されている。
【0089】
ドーム部104aは、駆動リング102のドーム壁部102aとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。ドーム部104aの径方向中央には、開放絞り開口に対応する第3の固定開口113が形成されている。光軸方向において、第3の固定開口113の開口面の位置は、カバー板104のドーム部104aより外周の部分に比べて、地板101(第1の固定開口106の開口面106)から離れている。言い換えれば、カバー板104において、ドーム部104aは、その周囲の部分に対して、光軸方向における絞り羽根3の被支持部(103b)側から遮光部(103a)側に突出するように形成されている。
【0090】
カバー板104は、その外周の部分において地板101にビスにより結合され、地板101と一体化される。このため、カバー板104も、地板101と同様にベース部材として扱うことができる。なお、地板101にドーム部104aと同様なドーム部を形成するとともに、カバー板104のドーム部104aをなくす等して、地板101とカバー板104の位置を入れ替えてもよい。
【0091】
105はステッピングモータ等のアクチュエータを含む駆動部であり、その出力軸には、駆動リング102の被駆動ギア102bに噛み合う駆動ギア105aが取り付けられている。駆動部105は、モータ地板111およびカバー板104を介して地板101に固定される。ここで、駆動部105は、地板101およびカバー板104を含むベース部材のうちドーム部104aの周囲の部分に配置されている。言い換えれば、駆動部105は、ドーム部104aがその周囲の部分に対して突出する方向と同じ方向に該周囲の部分から突出するように設けられている。このようにドーム部104aと駆動部105がベース部材から突出する方向を同じにすることにより、後述する実施例7のようにこの絞り装置をカメラ等の光学機器に搭載した場合に、光学機器内のスペース(特に、ドーム部104aと駆動部105が配置された側とは反対側のスペース)を有効に使用することができ、光学機器の小型化を図ることができる。
【0092】
駆動部105に通電されて駆動ギア105aが回転すると、
図13(a),(b)に示すように、その回転力が被駆動ギア102bを介して駆動リング102に伝達され、これを光軸AX回りで地板101に対して回転させる。そして、前述したように、遮光部103aに形成されたカム溝部103d内で駆動リング102に設けられたカムボス部108が移動することにより、絞り羽根103は、被支持部103bの穴部103cとこれに挿入された支持ボス部107を中心として開閉方向に回動される。
【0093】
なお、本実施例では、地板101に形成された支持ボス部107(の中心軸)と駆動リング102に形成されたカムボス部108(の中心軸)がそれぞれ光軸方向に対して傾いている場合について説明した。しかし、支持ボス部107およびカムボス部108は光軸方向に平行に延びるように形成されてもよく、絞り羽根103(被支持部103b)が光軸方向に対して傾いた仮想の軸回りで回動すればよい。
【0094】
また、地板101にカバー板104のドーム部104aと同様なドーム部を形成するとともに、そこにカムボス部108を形成し、ドーム部における固定開口112の径方向外側に駆動リング102を回動可能に配置するとともに、そこに支持ボス部107を形成してもよい。そして、絞り羽根103に形成された穴部103cに駆動リング102に形成された支持ボス部107を挿入し、カム溝部103dに地板101に形成されたカムボス部108を挿入するようにしてもよい。すなわち、絞り羽根3の穴部103cとカム溝部103dに挿入される支持ボス部107とカムボス部108は、それぞれの相対位置が変化するように構成されれば、どちらが地板101に形成され、どちらが駆動リング102に形成されてもよい。
【0095】
また、本実施例では、地板101に形成された支持ボス部107と駆動リング102に形成されたカムボス部108をそれぞれ、絞り羽根103に形成された穴部103cとカム溝部103dに挿入する場合について説明した。しかし、絞り羽根103に支持ボス部107に相当するボス部とカムボス部108に相当するボス部を形成し、これらを地板101に形成された穴部と駆動リング102に形成されたカム溝部に挿入するようにしてもよい。
【0096】
以上のように構成された絞り装置110では、前述したように、各絞り羽根103の中間部103eおよび被支持部103bが、光軸方向における一方の側への傾きαを有する。さらに、駆動リング102が、該一方の側に凹んだ形状(ドーム壁部102a)を有する。これにより、
図11に示すように、複数の絞り羽根103および駆動リング102よりも径方向の内側に、第1〜第3の固定開口(光通過開口)112,113,128に面した凹空間Sが形成される。
【0097】
凹空間Sは、光軸方向において複数の絞り羽根103の被支持部(103b)側から遮光部(103a)側に奥行きを有する空間である。凹空間Sの被支持部側の端は、地板101に形成された第1の固定開口106にて開口している。一方、凹空間Sの遮光部側の端は、駆動リング102に形成された第2の固定開口112(さらには絞り開口Aおよびカバー板104に形成された第3の固定開口113)にて開口している。すなわち、凹空間Sは、第1〜第3の固定開口106,112,113に面している。
【0098】
凹空間Sには、
図11に示すように、レンズ51の少なくとも一部を入り込ませることが可能である。すなわち、本実施例によれば、絞り羽根103を開放状態まで開くことなく、絞り羽根103よりも径方向内側に、レンズ51の少なくとも一部を入り込ませることが可能な凹空間Sを形成することができる。
【0099】
このとき、駆動リング102にドーム壁部102aを形成したことで、駆動リングを平板リング状に形成する場合に比べて、凹空間Sにおけるレンズ51が挿入される開口の径を大きくすることができる。つまり、凹空間Sに挿入可能なレンズ径を大きくすることができる。
【0100】
凹空間Sは、その外周が複数の絞り羽根103の羽根面により囲まれた空間と言うこともできるが、本実施例では、複数の絞り羽根103の羽根面が凹空間Sに直接面しておらず、絞り羽根103の羽根面と凹空間Sとの間には、凹空間Sを囲む駆動リング102のドーム壁部102aが介在している。なお、ドーム壁部102aは必ずしも必要ではなく、径方向に放射状に延びるレール等によって絞り羽根103を安定して開閉方向にガイドすることができれば、ドーム壁部102aをなくして絞り羽根103の羽根面が凹空間Sに直接面するようにしてもよい。
【0101】
また、実施例1にて
図8を用いて説明したのと同様に、本実施例でも、駆動リング102に設けられたカムボス部108における一方の側(ドーム壁部102aおよび絞り羽根103が凸となっている側)の先端が、絞り羽根103の回動位置にかかわらず、絞り部としての遮光部103aにおける該一方の側の先端よりも該一方の側とは反対側に退避している。
【実施例4】
【0102】
図14には、本発明の実施例4である光量調節装置としての絞り装置を示している。この図において、実施例3と共通する構成要素については、実施例3と同符号を付して説明に代える。実施例3では、複数の遮光羽根を回動させて絞り開口を変化させることで光量を調節する構成を採用しているのに対して、本実施例では、光量調節部がNDフィルタ部として形成された1枚のND羽根(光量調節羽根)を回動させることで光量を調節する。
【0103】
本実施例の地板101には、1つの支持ボス部(凸部)107が形成されている。支持ボス部107の中心軸は、実施例3と同様に、光軸方向に対して傾きを有する。また、本実施例の駆動リング102のガイド面102c(ドーム部102a)には、1つのカムボス部108が形成されている。このカムボス部108の中心軸は、実施例3と同様に、ガイド面102cの法線方向に延びるように光軸方向に対して傾きを有する。これら地板101および駆動リング102については、後述する実施例5,6においても同じである。
【0104】
ND羽根123は、NDフィルタ部123aと、地板101および駆動リング102に対して回動可能に支持される被支持部123bと、これらNDフィルタ部123aおよび被支持部123bを接続する中間部とを有する。被支持部123bには、地板101に形成された支持ボス部107が挿入される穴部(凹部)123cが形成されており、ND羽根123は、該支持ボス部107と穴部123cとを中心として地板101および駆動リング102に対して回動可能である。また、ND羽根123には、駆動リング102に設けられたカムボス部108が挿入されて係合するカム溝部123dが形成されている。このため、駆動リング102が回転すると、
図14(a),(b)に示すように、カムボス部108がカム溝部123dに沿って移動しながらND羽根123が回動される。
【0105】
ND羽根123は、
図14(a)に示すようにNDフィルタ部123aによって地板101および駆動リング102に形成された固定開口(図では駆動リング102の第2の固定開口112のみを示す)の全体を覆う位置と、
図14(b)に示すようにNDフィルタ部123aが該固定開口に対向する領域から完全に退避する位置との間で回動して、該固定開口を通過する光の量を調節する。
【0106】
NDフィルタ部123aは、駆動リング102のドーム壁部102aのガイド面102cとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。このため、ND羽根123が回動するとき、NDフィルタ部123aは、ガイド面112cに沿って(ガイドされながら)移動する。
【0107】
そして、本実施例でも、ND羽根123の被支持部123b(および中間部)が有する、固定開口の開口面に対する光軸方向への傾きによって、ND羽根123よりも径方向内側に、光軸方向において被支持部(123b)側からNDフィルタ部(123a)側に奥行きを有し、各固定開口に面した凹空間が形成される。しかも、駆動リング102にドーム壁部102aを形成したことで、駆動リングを平板リング状に形成する場合に比べて、凹空間Sにおけるレンズが挿入される開口の径を大きくすることができる。このことは、後述する実施例5,6においても同じである。
【0108】
なお、図示していないが、本実施例の絞り装置も、実施例3のカバー板104と同様に、地板101との間に駆動リング102とND羽根123を収容する羽根室を形成するカバー板が設けられている。このことは、後述する実施例5,6においても同じである。
【0109】
また、本実施例でも、駆動リング102に設けられたカムボス部108における一方の側(ドーム壁部102aおよびND羽根123が凸となっている側)の先端が、ND羽根103の回動位置にかかわらず、絞り部としての遮光部103aにおける該一方の側の先端よりも該一方の側とは反対側に退避している。このことも、後述する実施例5,6においても同じである。
【実施例5】
【0110】
図15には、本発明の実施例5である光量調節装置としての絞り装置を示している。この図において、実施例3と共通する構成要素については、実施例3と同符号を付して説明に代える。実施例3では、複数の絞り羽根を回動させて絞り開口を変化させて光量を調節する構成を採用しているのに対して、本実施例では、大きさが固定である絞り開口を有する1枚の絞り羽根を回動させることで光量を調節する。
【0111】
絞り羽根133は、地板101および駆動リング102に形成された固定開口(図では駆動リング102の第2の固定開口112のみを示す)よりも大きさが小さい小絞り開口133fを有する光量調節部としての絞り部133aと、地板101および駆動リング102に対して回動可能に支持される被支持部133bと、これら絞り部133aおよび被支持部133bを接続する中間部とを有する。被支持部133bには、地板101に形成された支持ボス部107が挿入される穴部(凹部)133cが形成されており、絞り羽根133は、該支持ボス部107と穴部133cとを中心として地板101および駆動リング102に対して回動可能である。
【0112】
また、絞り羽根133には、駆動リング102に設けられたカムボス部108が挿入されて係合するカム溝部133dが形成されている。このため、駆動リング102が回転すると、
図15(a),(b)に示すように、カムボス部108がカム溝部133dに沿って移動しながら絞り羽根133が回動される。絞り羽根133は、
図15(a)に示すように、絞り部133aの小絞り開口133fが地板101および駆動リング102に形成された光通過開口である固定開口に対向する位置に配置される位置と、
図15(b)に示すように絞り部133aが該固定開口に対向する領域から完全に退避する位置との間で回動して、該固定開口を通過する光の量を調節する。
【0113】
絞り部133aは、駆動リング12のドーム壁部102aのガイド面2cとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。このため、絞り羽根133が回動するとき、絞り部133aは、ガイド面102cに沿って(ガイドされながら)移動する。
【0114】
そして、本実施例でも、絞り羽根133の被支持部133b(および中間部)が有する、固定開口の開口面に対する光軸方向への傾きによって、絞り羽根133よりも径方向内側に、光軸方向において被支持部(133b)側から絞り部(133a)側に奥行きを有し、各固定開口に面した凹空間が形成される。
【実施例6】
【0115】
図16には、本発明の実施例6である光量調節装置としての絞り装置を示している。この図において、実施例3と共通する構成要素については、実施例3と同符号を付して説明に代える。本実施例では、1枚の絞り羽根を回動させることで光量を調節する。
【0116】
絞り羽根143は、絞り開口を形成するための遮光部143aと、地板101および駆動リング102に対して回動可能に支持される被支持部143bと、これら遮光部143aおよび被支持部143bを接続する中間部とを有する。被支持部143bには、地板101に形成された支持ボス部107が挿入される穴部(凹部)143cが形成されており、絞り羽根143は、該支持ボス部107と穴部143cとを中心として地板101および駆動リング102に対して回動可能である。
【0117】
また、絞り羽根143には、駆動リング102に設けられたカムボス部108が挿入されて係合するカム溝部143dが形成されている。このため、駆動リング102が回転すると、
図16(a),(b)に示すように、カムボス部108がカム溝部143dに沿って移動しながら絞り羽根143が回動される。絞り羽根143は、
図16(a)に示すように、遮光部143aが地板101および駆動リング102に形成された光通過開口である固定開口(図では駆動リング102の第2の固定開口112のみを示す)を覆う位置と、
図16(b)に示すように遮光部143aが該固定開口に対向する領域から完全に退避する位置との間で回動して、該固定開口を通過する光の量を調節する。
【0118】
遮光部143aは、駆動リング102のドーム壁部102aのガイド面102cとほぼ同じ曲率を持つ曲面形状(例えば、球面形状)に形成されている。このため、絞り羽根143が回動するとき、遮光部143aは、ガイド面102cに沿って(ガイドされながら)移動する。
【0119】
そして、本実施例でも、絞り羽根143の被支持部143b(および中間部)が有する、固定開口の開口面に対する光軸方向への傾きによって、絞り羽根143よりも径方向内側に、光軸方向において被支持部(143b)側から遮光部(143a)側に奥行きを有し、各固定開口に面した凹空間が形成される。
【実施例7】
【0120】
上記実施例3〜6にて説明した絞り装置110が搭載された光学機器としてのカメラ(ビデオカメラ又はスチルカメラ)を
図17に示す。実施例2でも説明した通り、50はカメラ本体であり、51,53は撮影光学系を構成する複数のレンズである。52は撮像素子である。54はCPU等により構成されるコントローラであり、絞り装置110(駆動部105)や撮像素子52の動作を制御する。なお、絞り装置110が、シャッタ機能を有していてもよい。
【0121】
実施例3でも説明したように、
図11に示した絞り装置110の凹空間Sには、該絞り装置110に対して光軸方向にて隣接配置されたレンズ51の少なくとも一部(凸面)が入り込むことができる。なお、
図11には、凹空間Sへのレンズ51の入り口(第1の固定開口106)が像面方向に向かって開口し、絞り装置110に対して像面方向に隣接配置されたレンズ51が凹空間Sに入り込んでいる様子を示している。凹空間Sへのレンズ51の入り口を被写体方向に向け、絞り装置110に対して被写体方向に隣接配置されたレンズ53が凹空間Sに入り込むようにしてもよい。
【0122】
凹空間Sへのレンズ51の入り口となる開口の大きさ(内径)は、駆動リング102にドーム壁部102aを形成することを前提とすれば、複数の絞り羽根103の被支持部103b(支持ボス部107)を通る円の径(又は該円に対応する第1の固定開口106の内径)によって決まり、複数の絞り羽根103により形成される絞り開口Aの大きさには依存しない。このため、絞り開口Aを絞り込んだ状態でも、つまりは絞り開口Aを開放開口径に設定したりそれよりもさらに拡げたりすることなく、凹空間Sにレンズ51を入り込ませることができる。したがって、絞り開口Aの最大径をレンズ51の外径に合わせて大きくする必要がなく、内部の空間にレンズを入り込ませることが可能な絞り装置において径方向の大型化を回避することができる。
【0123】
また、
図11には、絞り装置110のカバー板104のドーム部104aの被写体側の凸面と絞り装置110に対して被写体方向に隣接配置されたレンズ53の像面側の凹面とが近接している様子も示している。このように、絞り装置110の絞り羽根103を、レンズ51の被写体側の凸面とレンズ53の像面側の凹面との狭い空間の間に配置することも可能である。
【0124】
さらに、
図11に示すように絞り装置110とその両側のレンズ51,53とが近接した状態で撮影光学系を保持するレンズ鏡筒がカメラ本体内に収納(沈胴)されるようにしてもよい。
【0125】
また、絞り装置110は、
図17に示したカメラだけでなく、交換レンズ等の他の光学機器にも搭載することができる。
【0126】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。