(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270561
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ワーク加工装置およびワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B23B 13/00 20060101AFI20180122BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
B23B13/00 Z
B23B3/30
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-52078(P2014-52078)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-174179(P2015-174179A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】並木 龍也
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−136806(JP,A)
【文献】
特開2002−187001(JP,A)
【文献】
特開平02−041804(JP,A)
【文献】
特開2012−056000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 3/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の棒材を主軸によって把持し、前記棒材から複数の製品を加工するために前記棒材に対して所定の加工および突っ切りを連続的に行い、前記棒材の加工完了後に、前記主軸から前記棒材を旧材として脱抜し、前記主軸に対して新材である棒材が供給されるワーク加工装置において、
前記主軸と対向する背面主軸と、前記主軸及び前記背面主軸を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記主軸から前記旧材を脱抜し、前記旧材を前記背面主軸で把持するように前記主軸と前記背面主軸とを作動させることにより、前記旧材を前記主軸から前記背面主軸に受け渡す旧材授受手段と、前記主軸に供給される前記新材を前記旧材授受手段により前記旧材が脱抜された前記主軸で把持し、前記旧材授受手段により前記主軸から受け渡された前記旧材を前記背面主軸で把持し、前記旧材と前記新材とを連結する結合部が、前記新材と前記旧材の互いに対向する端部に加工されるように、両主軸を作動させる結合部加工手段と、前記結合部を介して前記旧材と前記新材とが連結されるように、前記主軸と前記背面主軸とを相対移動させ、前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成する連結手段と、を有し、
前記旧材と前記新材とによって形成された前記1つの材料に対して、前記結合部が設けられた部分を除いて前記所定の加工を行うことを特徴とするワーク加工装置。
【請求項2】
前記結合部加工手段は、前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部として、一方を凹形状に形成し、他方を前記凹形状に圧入される凸形状に形成する請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記結合部加工手段は、前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部として、一方をおねじ、他方を前記おねじに螺合するめねじとして形成する請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記1つの材料に対して行われる前記所定の加工が完了した後、前記新材および前記旧材に形成された前記結合部が除去されるよう、前記背面加工工具により前記1つの材料の一部分を切り落とし、
前記切り落とし後の材料に対して前記所定の加工が再開される請求項1〜3のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記結合部の形成は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行される請求項1〜4のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項6】
前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成する工程は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行される請求項1〜5のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項7】
長尺の棒材を主軸によって把持し、前記棒材から複数の製品を加工するために前記棒材に対して所定の加工および突っ切りを連続的に行い、前記棒材の加工完了後に、前記主軸から前記棒材を旧材として脱抜し、前記主軸に対して新材である棒材を供給するワーク加工方法において、
前記主軸から前記旧材を脱抜し、前記旧材を前記主軸と対向する背面主軸で把持するように、前記主軸と前記背面主軸を作動させて、前記旧材を前記主軸から前記背面主軸に受け渡し、
前記主軸に供給される前記新材を、前記旧材が脱抜された前記主軸で把持し、前記主軸から受け渡された前記旧材を前記背面主軸で把持し、前記新材と前記旧材との互いに対向する端部に、前記旧材と前記新材とを連結する結合部を加工し、
前記結合部を介して前記旧材と前記新材とが連結するように、前記主軸と前記背面主軸とを相対移動させることによって、前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成し、
形成された前記1つの材料に対して、前記結合部が設けられた部分を除いて前記所定の加工を行うことを特徴とするワーク加工方法。
【請求項8】
前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部は、一方が凹形状に形成され、他方が前記凹形状に圧入される凸形状に形成される請求項7に記載のワーク加工方法。
【請求項9】
前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部は、一方がおねじ、他方が前記おねじに螺合するめねじとして形成される請求項7に記載のワーク加工方法。
【請求項10】
前記1つの材料に対して行われる前記所定の加工が完了した後、前記新材および前記旧材に形成された前記結合部が除去されるよう、加工工具により前記1つの材料の一部分を切り落とし、
前記切り落とし後の材料に対して前記所定の加工が再開される請求項7〜9のいずれか一項に記載のワーク加工方法。
【請求項11】
前記結合部の形成は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行される請求項7〜10のいずれか一項に記載のワーク加工方法。
【請求項12】
前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成する工程は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行される請求項7〜11のいずれか一項に記載のワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正面主軸とこの正面主軸に対向する背面主軸とを有し、長尺の棒材から所定の形状の製品を加工するワーク加工装置およびワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の棒材を把持する主軸を備え、前記棒材から複数の製品を加工するように、前記棒材に所定の加工を順次突っ切りながら連続的に行い、前記棒材の加工時に、加工中の前記棒材の長さが前記製品の加工が困難となる長さとなると前記棒材の加工を完了し、順次前記主軸に対して新材が供給されるワーク加工装置が公知となっている。
【0003】
ワーク加工装置に対して、加工完了した棒材(旧材)と新材とを、棒材継ぎ足し装置によって接合して1つの材料とし、この材料を加工することによって残材を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2639403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1(特許第2639403号公報)によれば、旧材と新材とを接合するための前記棒材継ぎ足し装置を別途設ける必要があり、コストがかかる他、旧材と新材との接合が、ワーク加工装置の外側で行われるので、ワーク加工装置全体が大きくならざるを得ない。また、旧材と新材については、その後端および先端に、互いに嵌合できるような形状の穴および突起等を、予め形成しておかなければならず、旧材と新材との結合を容易に行うことができないという欠点があった。
【0006】
従って本発明の目的は、長尺の棒材を加工する際に発生する残材を抑制することができ、ワーク(棒材)を有効利用することができる小型で低コストのワーク加工装置およびワーク加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明においては、長尺の棒材を主軸によって把持し、前記棒材から複数の製品を加工するために前記棒材に対して所定の加工および突っ切りを連続的に行い、前記棒材の加工完了後に前記主軸に対して新材である棒材が供給されるワーク加工装置において、前記主軸と対向する背面主軸と、前記主軸及び前記背面主軸を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段が、前記加工完了した旧材を前記主軸から前記背面主軸に受け渡すように前記主軸と前記背面主軸とを作動させる旧材授受手段と、前記新材と前記旧材とを各々前記主軸又は前記背面主軸で把持し、前記旧材と前記新材とを連結する結合部を前記背面加工工具により前記新材と前記旧材との間に加工するように両主軸を作動させる結合部加工手段と、前記結合部を介して前記旧材と前記新材とが連結されるように、前記主軸と前記背面主軸とを相対移動させる連結手段と、を有し、前記旧材と前記新材とによって形成された前記1つの材料に対して前記所定の加工を行う。
【0008】
ここで、前記結合部加工手段は、前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部として、一方を凹形状に形成し、他方を前記凹形状に圧入される凸形状に形成するようにしてもよい。
【0009】
またあるいは、前記結合部加工手段は、前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部として、一方をおねじ、他方を前記おねじに螺合するめねじとして形成するようにしてもよい。
【0010】
また、前記1つの材料に対して行われる前記所定の加工が完了した後、前記新材および前記旧材に形成された前記結合部が除去されるよう、前記背面加工工具により前記1つの材料の一部分を切り落とし、前記切り落とし後の材料に対して前記所定の加工が再開される。
【0011】
また、前記結合部の形成は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行されるのが好ましい。
【0012】
また、前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成する工程は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行されるのが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、長尺の棒材を主軸によって把持し、前記棒材から複数の製品を加工するために前記棒材に対して所定の加工および突っ切りを連続的に行い、前記棒材の加工完了後に前記主軸に対して新材である棒材を供給するワーク加工方法は、前記加工完了した棒材である旧材を前記主軸から、前記主軸と対向する背面主軸に受け渡すように、前記主軸と前記背面主軸を作動させ、前記新材と前記旧材とを各々前記主軸又は前記背面主軸で把持して、前記新材と前記旧材とに、前記旧材と前記新材とを連結する結合部を加工し、前記結合部を介して前記旧材と前記新材とが連結するように、前記主軸と前記背面主軸とを相対移動させることによって、前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成し、形成された前記1つの材料に対して前記所定の加工を行う。
【0014】
ここで、前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部は、一方が凹形状に形成され、他方が前記凹形状に圧入される凸形状に形成されるようにしてもよい。
【0015】
またあるいは、前記新材と前記旧材とに形成される各前記結合部は、一方がおねじ、他方が前記おねじに螺合するめねじとして形成されるようにしてもよい。
【0016】
また、前記1つの材料に対して行われる前記所定の加工が完了した後、前記新材および前記旧材に形成された前記結合部が除去されるよう、加工工具により前記1つの材料の一部分を切り落とし、前記切り落とし後の材料に対して前記所定の加工が再開されるようにしてもよい。
【0017】
また、前記結合部の形成は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行されるのが好ましい。
【0018】
また、前記新材と前記旧材とを連結して1つの材料を形成する工程は、前記棒材に対して前記所定の加工がおこなわれる加工室内で実行されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、長尺の棒材を加工する際に発生する残材を抑制することができ、ワーク(棒材)を有効利用することができる小型で低コストのワーク加工装置およびワーク加工方法を実現することができる。
【0020】
本発明によれば、加工完了した旧材を、主軸から背面主軸に受け渡し、背面主軸が把持する旧材と、主軸が把持する新材との間に、旧材と新材とを連結する結合部を形成した後、該連結部を介して旧材と新材とを連結して1つの材料を形成し、この材料を加工することで、旧材に対して製品加工ができるようになり、残材の抑制を図ることができる。
【0021】
また、本発明では、ワーク加工装置内で、旧材と新材との間に結合部を加工して形成するので、棒材(新材および旧材)に結合部を予め形成しておく必要はなく、また結合部を形成するための加工装置を別途設ける必要はないので、低コストであり、また従来から使用される一般的な棒材を使用することができる。また、これら結合部の形成はワーク加工装置の加工室内で行うことができるので、ワーク加工装置全体が大型化することもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例によるワーク加工装置の概略的な構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程を説明する図(その1)である。
【
図3】本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程を説明する図(その2)である。
【
図4】本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程を説明する図(その3)である。
【
図5】本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程を説明する図(その4)である。
【
図6】本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程を説明する図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施例によるワーク加工装置の概略的な構造を示す図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0024】
ワーク加工装置100は、長尺の棒材をワークWとして加工する自動旋盤であり、ワークWを把持する正面主軸1と、正面主軸1に対向する背面主軸2と、正面主軸1の前方側に配置されるガイドブッシュ12と、ワークWを加工する加工工具4と、同じくワークWを加工する背面加工工具8および9と、加工工具4を保持する刃物台24と、背面加工工具8を保持する背面刃物台25と、を備える。ワークWは、ワーク加工装置100の後方に配置される従来公知の棒材供給手段3(バーフィーダ)によって、正面主軸1に対して供給される。ワーク加工装置100は、その動作を統括制御するための制御手段5を備える。制御手段5は、正面主軸1、背面主軸2、刃物台24の各動作の他、棒材供給手段3の制御も行う。ワーク加工装置100と棒材供給手段3とによってワーク加工システムが構成されている。
【0025】
正面主軸1および背面主軸2は、正面主軸1の軸線と背面主軸2の軸線とが同一方向となるように、互いに対向して設けられる。以下、正面主軸1および背面主軸2の軸線方向を「Z軸方向」として表し、Z軸方向に直交する方向を「X軸方向」、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向を「Y軸方向」として表す。
【0026】
正面主軸1は、従来公知の自動旋盤同様、ワーク加工装置100の図示しないベッド側にZ軸方向に移動自在に設置された主軸台(図示せず)に回転自在に支持されている。背面主軸2は、従来公知の自動旋盤同様、前記ベッド上に、Z軸方向やX軸方向等に移動可能に設置された背面主軸台(図示せず)に回転自在に支持されている。正面主軸1および背面主軸2は、それぞれ主軸モータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0027】
背面主軸台を介して背面主軸2を移動させることによって、正面主軸1と背面主軸2を、互いの軸線が一致するように対向させることができる。正面主軸1と背面主軸2の移動機構(主軸台、背面主軸台)自体は本発明を限定するものではなく、例えば公知のものを用いればよい。
【0028】
正面主軸1の先端には、開閉自在にチャック(正面チャック)11が設けられる。正面チャック11は、チャックスリーブ21内に収容される。背面主軸2の先端には、開閉自在にチャック(背面チャック)13が設けられる。背面チャック13は、チャックスリーブ22内に収容される。
【0029】
正面チャック11は、チャックスリーブ21を正面主軸1の先端方向にスライドさせると、チャックスリーブ21のテーパ面が正面チャック11のテーパ面を押圧することによって閉じる。チャックスリーブ21を正面主軸1の基端部方向にスライドさせると、テーパ面同士の押圧が解除され、正面チャック11は開く。
【0030】
同様に、背面チャック13は、チャックスリーブ22を背面主軸2の先端方向にスライドさせると、チャックスリーブ22のテーパ面が背面チャック13のテーパ面を押圧することによって閉じる。チャックスリーブ22を背面主軸2の基端部方向にスライドさせると、テーパ面同士の押圧が解除され、背面チャック13は開く。
【0031】
正面主軸1および背面主軸2は、開状態の正面チャック11および背面チャック13にワークを挿入し、正面チャック11および背面チャック13を閉じることによってワークWを把持することができる。なお、チャックスリーブのスライド駆動機構(図示せず)自体は本発明を限定するものではなく、例えば公知のものを用いることができる。
【0032】
ガイドブッシュ12は、従来公知の自動旋盤同様、前記ベッド側に立設されたガイドブッシュ支持台23に装着されている。ガイドブッシュ12は、正面主軸1と同軸で配置されている。ガイドブッシュ12は、ガイドブッシュ支持台23に対して軸線方向に位置調節されることで、内径が調節される。
【0033】
刃物台24は加工工具4がガイドブッシュ12の前方に配置されるようにガイドブッシュ支持台23にX軸方向及びY軸方向に、移動自在に支持されている。刃物台24には、加工工具4として、例えば外径切削バイトや突っ切りバイトなどが搭載されており、これらは、刃物台24の例えばY軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えられる。また、背面加工工具8は、背面刃物台25を介して前記ベッド側に固定的に設けられている。各背面加工工具8は、背面主軸2(背面主軸台)の例えばX軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えることができる。
【0034】
正面主軸1に、正面主軸1の基端部側からワークWが棒材供給手段3によって供給されると、ワークWは、正面チャック11によって把持される。正面主軸1(正面チャック11)に把持されたワークWは、ガイドブッシュ12から所定の長さ突き出され、前記自動旋盤は、正面主軸1を主軸モータにより回転駆動してワークWを回転させ、選択された加工工具4をX軸線方向に移動させてワークWを切り込み、正面主軸1(主軸台)をZ軸線方向に移動させることによって、ワークWの切削加工を行うことができる。
【0035】
正面主軸1でのワークWの加工終了後、背面主軸2を正面主軸1と同軸上に配置し、正面主軸1に把持されたワークWの端部を背面主軸2によって把持した状態でワークWを突っ切ることによって、突っ切ったワークを正面主軸1から背面主軸2に受け渡すことができる。背面チャック13によって背面主軸2に保持されたワークは、背面主軸2のX軸方向やZ軸方向への移動によって、選択された背面加工工具8により切削加工される。背面主軸2によるワークの加工中、正面主軸1側では、ワークWが繰り出され、前記のように再度加工が行われる。ワークWに対して順次繰り返して加工が行われ、一本のワークWから、所定の形状の製品が複数繰り返して加工される。
【0036】
次に、本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程について説明する。
図2〜
図6は、本発明の実施例によるワーク加工装置におけるワーク加工方法の加工工程を説明する図である。
図2〜
図6において、棒材供給手段3および制御手段5は省略する。
【0037】
図2(A)に示されるように、ワークWから複数の製品が加工され、ワークWが正面主軸1によって把持された状態では前記製品の加工を行うことができない長さとなると、ワークWの加工が完了し、ワークWは残材として旧材W1となる。旧材W1が発生すると、
図2(B)に示されるように、背面主軸2を正面主軸1に近接するように移動させ、新たにワークWとなる新材W2を、棒材供給手段3により、正面主軸1に供給し、旧材W1の正面主軸1(正面チャック11)による把持を解除し、新材W2によって旧材W1を正面主軸1から押し出して、旧材W1を正面主軸1から脱抜し、
図2(C)に示すように、背面主軸2(背面チャック13)により旧材W1を把持することによって、旧材W1を正面主軸1から背面主軸2に受け渡す。
【0038】
次に、
図3(A)に示すように、背面主軸2が旧材W1を把持した状態で、正面主軸1から離れる向きに移動するとともに、新材W2が、正面主軸1(正面チャック11)により把持される。
【0039】
次に、
図3(B)に示すように、背面主軸2の移動によって、背面加工工具8により、旧材W1の端部に第1の結合部C1を形成加工し、正面主軸1と刃物台24の移動によって、加工工具4により、新材W2の先端部分に第2の結合部C2を形成加工する。図示の例では、一例として、第1の結合部C1を凹形状に形成し、第2の結合部C2を、第1の結合部C1の凹形状に嵌合する凸形状に形成している。第1の結合部C1および第2の結合部C2は、旧材W1や新材W2が、正面主軸1や背面主軸2に把持され、加工工具4や背面加工工具8によって加工されるため、ワークWを製品形状に加工する場合と同様に、加工室内で加工が行われる。なお、この変形例として、第1の結合部C1を凸形状に形成し、第2の結合部C2を、第1の結合部C1の凸形状に嵌合する凹形状に形成してもよい。
【0040】
その後、正面主軸1と背面主軸2とを同軸上に配置し、
図4(A)に示すように、背面主軸2と正面主軸1とを相対的に近づく向きに移動させて近接させ、第1の結合部C1と第2の結合部C2とを結合させて、旧材W1と新材W2とを連結させる。第1の結合部C1と第2の結合部C2との結合工程は、正面主軸1から背面主軸2へのワークの受け渡しと同様に、前記加工室内で実行される。図示の例では、第1の結合部C1および第2の結合部C2を、それぞれ凹形状および凸形状に形成しているので、第2の結合部C2を第1の結合部C1に圧入することによって、旧材W1と新材W2とが連結される。以上のように第1の結合部C1および第2の結合部C2が、旧材W1と新材W2とを連結する結合部を構成し、残材W1と新材W2は、前記結合部を介して一体的に連結され、1つの材料を形成する。
【0041】
次に、
図4(B)に示すように、正面主軸1による新材W2の把持及び背面主軸2による旧材1の把持を解除し、棒材供給手段3によって新材W2を正面主軸1から引き抜く方向に移動させること等によって、互いに結合された旧材W1および新材W2からなる材料を正面主軸1へ押し戻し、
図5(A)に示すように、前記旧材W1および新材W2からなる材料の所定の部分を正面主軸1により把持する。
【0042】
その後、前記材料の旧材W1の部分に対して、第1の結合部C1が設けられた部分を除いて加工工具4や背面加工工具8および9等により所定の製品形状への加工を実行する。なお前記旧材W1および新材W2からなる材料の正面主軸1への押し戻しは、正面主軸1によって前記材料を掴み換えながら徐々に正面主軸1側に押し戻すこともできる。
【0043】
これにより、前述のように旧材W1が新材W2に一体的に連結され、前記製品の加工を行うことが可能となる。なお旧材W1と新材W2との連結部分は、製品として加工することができないため、
図5(B)および
図6(A)に示すように、第1の結合部C1およびこれに結合された第2の結合部C2が除去されるよう、加工工具4として突っ切りバイトを選択し、突っ切りバイトにより前記材料における新材W2の一部分を突っ切り落とす。
【0044】
そして、
図6(B)に示すように、第2の結合部C2が切り落とされた前記材料の新材W2の部分に対して、加工工具4や背面加工工具8等による前記製品への加工が再開され、必要に応じて上述の処理を繰り返し実行する。
【0045】
このように、本発明によれば、旧材W1の第1の結合部C1と新材W2の第2の結合部C2とを結合させて1本の材料を形成し、これを被加工材(加工対象)として利用するので、従来は全てが残材として廃棄されていた旧材W1も一部を製品として加工ができるようになり、ワーク(棒材)の有効利用を図ることができる。また、その際には旧材W1については第1の結合部C1が設けられた部分を除いて所定形状の製品への加工が実行され、第1の結合部C1およびこれに結合された第2の結合部C2が除去されるよう、新材W2の一部分を切り落とすので、旧材W1の第1の結合部C1および新材W2の第2の結合部C2が製品となることはなく、製造品質に何ら影響を及ぼさない。
【0046】
また、上述の自動旋盤(正面主軸1、背面主軸2、刃物台24、背面刃物台25等)と棒材供給手段3の動作は、
図1に示す制御手段5によって制御される。制御手段5は、正面主軸1、背面主軸2、棒材供給手段3、刃物台24等の各動作内容を規定する制御プログラムに従って動作する。制御手段5がこの制御プログラムに従って動作することで、加工完了した旧材W1を正面主軸1から背面主軸2に受け渡すように正面主軸1と背面主軸2とを作動させる旧材授受手段と、新材W2と旧材W1とを各々正面主軸1又は背面主軸2で把持し、旧材W1と新材S2とを連結する結合部C1およびC2を背面加工工具8により新材W2と旧材W1との間に加工する結合部加工手段と、結合部C1およびC2を介して旧材W1と新材W2とが連結されるように、正面主軸1と背面主軸2とを相対移動させる連結手段と、を機能的に実現する。
【0047】
上述の第1の結合部C1および第2の結合部C2の形成工程および結合工程は、自動旋盤および棒材供給手段3を用いて行われるので、結合部をワークに予め形成しておく必要はなく、また結合部を形成するための加工装置を別途設ける必要もないので、低コストである。また、これら結合部の形成構成および結合工程は自動旋盤の加工室内で行うことができるので、ワーク加工装置全体が大型化することもない。このように本発明によれば、各工程は、自動旋盤に設けられた正面主軸1や背面主軸2、刃物台、背面刃物台と棒材供給手段3により実現されるので、加工対象である長尺の棒材を加工する際に発生する残材を短くすることができ、ワーク(棒材)を有効利用することができる小型で低コストのワーク加工装置およびワーク加工方法を実現することができる。
【0048】
なお、上述の実施例では、第1の結合部C1および第2の結合部C2をそれぞれ凹形状および凸形状に形成して第2の結合部C2が第1の結合部C1に圧入されることで、旧材W1と新材W2とを結合したが、その変形例として、旧材W1と新材W2との結合をネジ機構により実現してもよい。この場合、第1の結合部C1および第2の結合部C2として、一方がボルト(おねじ)、他方がめねじとなるように、加工工具4又は背面加工工具8により旧材W1および新材W2の先端部分を加工すればよい。またこの場合における旧材W1と新材W2との結合は、主軸モータにより正面主軸1および背面主軸2を回転駆動させかつ背面主軸2と正面主軸1とを互いに近づく方向に移動させ、正面チャック11および背面チャック13がそれぞれ把持した旧材W1および新材W2を回転させておねじとめねじとを螺合させることで実現される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、正面主軸とこの正面主軸に対向する背面主軸とを有し、正面主軸により把持された棒状のワークを所定の製品形状へ加工するワーク加工方法およびワーク加工装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 正面主軸
2 背面主軸
3 棒材供給手段
4 加工工具
5 制御手段
8 背面加工工具
11 正面チャック
12 ガイドブッシュ
13 背面チャック
21、22 チャックスリーブ
23 ガイドブッシュ支持台
24、 刃物台
25 背面刃物台
100 自動旋盤(ワーク加工装置)
C1 第1の結合部
C2 第2の結合部
W1 旧材
W2 新材