特許第6270622号(P6270622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6270622繊維用抗菌抗かび剤及び抗菌抗かび性繊維製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270622
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】繊維用抗菌抗かび剤及び抗菌抗かび性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/40 20060101AFI20180122BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20180122BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20180122BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20180122BHJP
   D06M 13/415 20060101ALI20180122BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20180122BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20180122BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   A01N37/40
   A01P3/00
   A01N25/30
   D06M13/262
   D06M13/415
   D06M13/17
   D06M13/256
   D06M15/53
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-104478(P2014-104478)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-218148(P2015-218148A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 賢一
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭31−001700(JP,B1)
【文献】 特表2004−503568(JP,A)
【文献】 実公昭50−040688(JP,Y1)
【文献】 特開平09−273073(JP,A)
【文献】 特開昭50−048073(JP,A)
【文献】 特開平02−036104(JP,A)
【文献】 特公昭42−016180(JP,B1)
【文献】 特表2003−521466(JP,A)
【文献】 特表2010−501671(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00874027(GB,A)
【文献】 米国特許第02416460(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/40
A01N 25/30
A01P 3/00
D06M 13/17
D06M 13/256
D06M 13/262
D06M 13/415
D06M 15/53
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物(A)と、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)と、乳化分散媒(C)と、を含有する乳化分散物であって、下記一般式(I)で表される化合物(A)100質量部に対して、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)の配合量が1〜99質量部であることを特徴とする繊維用抗菌抗かび剤であって
【化1】
(式中、Yはハロゲン原子及びアセチル基からなる群から選択される。0〜の整数であり、nは0である。)、
前記界面活性剤(B)のアニオン界面活性剤がα−オレフィンスルホン酸塩またはスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩であり、そして非イオン界面活性剤がスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物または炭素数16〜24のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であり、
前記繊維用抗菌抗かび剤を基準として、前記化合物(A)を3質量%以上かつ0質量%以下含む、繊維用抗菌抗かび剤。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維用抗菌抗かび剤を用いて、繊維製品に抗菌抗かび加工を施すことを特徴とする抗菌抗かび性繊維製品の製造方法。
【請求項3】
繊維製品に抗菌抗かび加工を施すと同時に、染色加工を施すことを特徴とする請求項2に記載の抗菌抗かび性繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用抗菌抗かび剤及び抗菌抗かび性繊維製品の製造方法に関する。より詳しくは特定の繊維用抗菌抗かび剤、及びこれを用いて、繊維製品に抗菌抗かび加工を施すことを特徴とする抗菌抗かび性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等による院内感染や病原性大腸菌O−157等による食中毒など、菌を原因とする事故が多発し社会問題化している。また、一般家庭においては、居住空間の気密性の高まりや空調設備の普及により、これまで以上にかびが繁殖しやすい環境となり、かび由来のアレルギーの発生や日用品の変色といった問題が増加している。これらの問題に対応するために抗菌抗かび剤等を配合した各種繊維製品が上市されている。
【0003】
用いられる抗菌抗かび剤としては、まずは塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、5−クロロ−2−[2,4−ジクロロフェノキシ]フェノール等の低分子有機系抗菌抗かび剤が挙げられる。しかしながら、処理された繊維製品は抗菌性及び抗かび性を示すものの、台所、洗面所等の水回りで使用したり、洗濯を繰り返したりした場合に容易に抗菌抗かび剤が脱落し、抗菌性や抗かび性が著しく低下する問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1〜3において、塩酸ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド]、シアノグアニジンとポリエチレンポリアミンの重合物等の高分子有機系抗菌抗かび剤が提案されている。
【0005】
また、特許文献4において、ジンクピリチオン、銀ゼオライト、酸化亜鉛等の金属系抗菌抗かび剤において、特定の界面活性剤を用いて分散することによって、処理浴の安定性を向上させることができ、染色加工と同じ処理浴中で抗菌抗かび加工を行う処理(以降、「染色同浴加工」ともいう)においても使用可能であることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−60509号公報
【特許文献2】特開平5−310505号公報
【特許文献3】特開平9−195171号公報
【特許文献4】特開2012−180323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載の抗菌抗かび剤では、洗濯を繰り返しても性能の低下が少ない(以降、「洗濯耐久性のある」ともいう)抗菌性が得られるものの、洗濯耐久性のある抗かび性を得ることは困難である。また抗菌抗かび性を示す成分がカチオン性化合物であるため、染色同浴加工に適しておらず、染料との凝集による染色不良などのトラブルを起こすという問題がある。
【0008】
特許文献4に記載の抗菌抗かび剤では、抗菌性については、洗濯耐久性のある十分な性能が得られるものの、より良好な抗かび性が求められていた。さらに満足できる抗かび性とともに、得られる繊維製品のより良好な耐光堅牢性が求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、得られる繊維製品の耐光堅牢性を低下させることなく、洗濯耐久性のある抗菌性及び抗かび性を同時に繊維製品に付与することができ、染色同浴加工における染色への阻害の少ない繊維用抗菌抗かび剤及びそれを用いる抗菌抗かび性繊維製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、以下のようである。
(1)下記一般式(I)で表される化合物(A)と、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)と、乳化分散媒(C)と、を含有する乳化分散物であって、下記一般式(I)で表される化合物(A)100質量部に対して、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)の配合量が1〜99質量部であることを特徴とする繊維用抗菌抗かび剤。
【化1】
(式中、Yはハロゲン原子及びアセチル基からなる群から選択され、Yが複数である場合は、同一であっても、異なっていてもよい。m及びnはそれぞれ独立して、0〜2の整数である。)
(2)前記界面活性剤(B)のアニオン界面活性剤がα−オレフィンスルホン酸塩またはスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩であり、そして非イオン界面活性剤がスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物または炭素数16〜24のアルコールのアルキレンオキサイド付加物である、(1)に記載の繊維用抗菌抗かび剤。
(3)前記繊維用抗菌抗かび剤を基準として、前記化合物(A)を3質量%以上かつ50質量%以下含む、(1)または(2)に記載の繊維用抗菌抗かび剤。
(4)(1)〜(3)のいずれか一項に記載の繊維用抗菌抗かび剤を用いて、繊維製品に抗菌抗かび加工を施すことを特徴とする抗菌抗かび性繊維製品の製造方法。
(5)繊維製品に抗菌抗かび加工を施すと同時に、染色加工を施すことを特徴とする(4)記載の抗菌抗かび性繊維製品の製造方法。
【0011】
詳細に説明すると、本発明は、下記一般式(I)で表される化合物(A)と、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)と、乳化分散媒(C)と、を含有する乳化分散物であって、下記一般式(I)で表される化合物(A)100質量部に対して、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)の配合量が1〜99質量部であることを特徴とする繊維用抗菌抗かび剤を提供する。
【0012】
【化2】
(式中、Yはハロゲン原子及びアセチル基からなる群から選択され、Yが複数である場合は、同一であっても、異なっていてもよい。m及びnはそれぞれ独立して、0〜2の整数である。)
【0013】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤によれば、得られる繊維製品の耐光堅牢性を低下させることなく、洗濯耐久性のある抗菌性及び抗かび性を同時に繊維製品に付与することができる。また、染色阻害が少ないため、これまで困難だった染色同浴加工においても使用することができる。
【0014】
本発明はまた、下記一般式(I)で表される化合物(A)と、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)と、乳化分散媒(C)と、を含有する乳化分散物であって、下記一般式(I)で表される化合物(A)100質量部に対して、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)の配合量が1〜99質量部である繊維用抗菌抗かび剤を用いて、繊維製品に抗菌抗かび加工を施すことを特徴とする抗菌抗かび性繊維製品の製造方法を提供する。
【0015】
【化3】
(式中、Yはハロゲン原子及びアセチル基からなる群から選択され、Yが複数である場合は、同一であっても、異なっていてもよい。m及びnはそれぞれ独立して、0〜2の整数である。)
【0016】
本発明はさらに、繊維製品に抗菌抗かび加工を施すと同時に、染色加工を施すことを特徴とする抗菌抗かび性繊維製品の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の抗菌抗かび性繊維製品の製造方法によれば、本発明に係る繊維用抗菌抗かび剤を用いることによって、耐光堅牢性に優れ、洗濯耐久性のある抗菌抗かび性繊維製品を安定して製造することができる。また、染色加工と同じ処理浴中で抗菌抗かび加工でも使用することができるため、工程短縮、コスト低減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤は、各種繊維製品に処理することにより、得られる繊維製品の耐光堅牢性を低下させることなく、様々な菌やかびに対する優れた抗菌性及び抗かび性を同時に付与することができる。また、洗濯を繰り返した場合においても、その効果を充分に維持することができる。さらには、繊維製品に処理する際に、本発明の繊維用抗菌抗かび剤の単独処理での使用は勿論のこと、染色阻害が少ないため、染色同浴加工にも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤は、下記一般式(I)で表される化合物(A)と、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)と、乳化分散媒(C)と、を含有する乳化分散物であり、下記一般式(I)で表される化合物(A)100質量部に対して、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)の配合量が1〜99質量部である。
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、Yはハロゲン原子及びアセチル基からなる群から選択され、Yが複数である場合は、同一であっても、異なっていてもよい。m及びnはそれぞれ独立して、0〜2の整数である。)
【0022】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤に用いられる上記一般式(I)で表される化合物(A)としては、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、4−クロロサリチルアニリド、3’,4’−ジクロロサリチルアニリド、3’,4’,5−トリクロロサリチルアニリド、5−アセチルサリチルアニリド、4−アセチルサリチルアニリド等が挙げられる。得られる繊維製品の抗菌性及び抗かび性の点で、サリチルアニリド(一般式(I):m、n=0)または一般式(I)におけるYがハロゲン原子である置換体(一般式(I):Y=ハロゲン原子、m及びnが0でない)が好ましく、サリチルアニリド及び5−クロロサリチルアニリドや4−クロロサリチルアニリドのような置換体(一般式(I):Y=ハロゲン原子、m=1、n=0)がより好ましく、サリチルアニリドがさらに好ましい。これらの化合物は、例えば、特開昭60−136547号公報に記載の方法により、アニリンもしくは、ハロゲン原子又はアセチル基で置換されたアニリンに、サリチル酸もしくは、ハロゲン原子又はアセチル基で置換されたサリチル酸を150℃以上で反応させ、溶媒で再結晶することにより得ることができる。また市販品を用いることもできる。
【0023】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤が染色同浴加工においても使用可能な理由の一つとして、上記一般式(I)で表される化合物(A)が、従来の高分子有機系抗菌抗かび剤に含まれるカチオン性の抗菌抗かび成分と比較して、染料との凝集を起こしにくく、染色同浴加工における染色阻害が少ないことが考えられる。
【0024】
また、本発明の繊維用抗菌抗かび剤に用いられる上記一般式(I)で表される化合物(A)の配合量は、特に限定されるものではないが、得られる繊維製品の抗菌性及び抗かび性と繊維用抗菌抗かび剤の貯蔵安定性の点で、繊維用抗菌抗かび剤全体を基準として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。かつ50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。1質量%未満であると、繊維用抗菌抗かび剤を大量に使用しなければ十分な抗菌性及び抗かび性が得られないおそれがある。50質量%を超えると、上記一般式(I)で表される化合物(A)の乳化分散状態を安定に保つ効果が低下し、繊維用抗菌抗かび剤の貯蔵安定性が不十分となる傾向がある。
【0025】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤に用いられるアニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)としては、特に限定されるものではなく、公知のものが挙げられる。
【0026】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン等のカルボン酸塩型アニオン界面活性剤;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルポリアルキレングリコールエーテル硫酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、ベンジル化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸、硫酸化オレフィン等の硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤;スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物スルホン酸塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、クレゾールスルホン酸塩やナフタレンスルホン酸塩等のホルマリン縮合物、α−オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩等のスルホン酸塩型アニオン界面活性剤;高級アルコールリン酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、ベンジル化フェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のリン酸エステル塩型アニオン界面活性剤;N−メチルタウリンオレイン酸塩、N−メチルタウリンステアリン酸塩等のアニオン界面活性剤が挙げられる。
【0027】
その中でも、上記一般式(I)で表される化合物(A)の乳化分散状態を安定に保つ効果の点で、α−オレフィンスルホン酸塩やスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩が好ましい。α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数8〜18のα−オレフィンスルホン酸塩がより好ましく、対塩はナトリウムがより好ましい。スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩としては、スチレンの付加モル数は2〜4、アルキレンオキサイドの炭素数は2〜4、アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜30のスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩がより好ましく、対塩はナトリウムがより好ましい。
【0028】
非イオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、炭素数16〜24のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、ベンジルフェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物等のエーテル型非イオン界面活性剤;脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、油脂のアルキレンオキサイド付加物等のエーテルエステル型非イオン界面活性剤;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリアルキレングリコール型非イオン界面活性剤;グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル等のエステル型非イオン界面活性剤;多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0029】
その中でも、上記一般式(I)で表される化合物(A)の乳化分散状態を安定に保つ効果の点で、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物または炭素数16〜24のアルコールのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、染色同浴処理における染色阻害が少ない点でスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物がより好ましい。スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物としては、スチレンの付加モル数は2〜4、アルキレンオキサイドの炭素数は2〜4、アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜30がより好ましい。炭素数16〜24のアルコールのアルキレンオキサイドの付加物としては、アルキレンオキサイドの炭素数は2〜4、アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜30がより好ましい。アルコールの炭素数は、16〜24であり、16〜20がより好ましい。
【0030】
アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)として、得られる繊維製品の抗菌性および抗かび性の点で、アニオン界面活性剤の使用が好ましく、本発明の抗菌抗かび剤の貯蔵安定性を向上する目的で、非イオン界面活性剤を併用することができる。
【0031】
また、本発明の繊維用抗菌抗かび剤におけるアニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)の配合量は、上記一般式(I)で表される化合物(A)100質量部に対して、1〜99質量部である。好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは10〜70質量部である。上記範囲内であると、上記一般式(I)で表される化合物(A)の乳化分散状態を安定に保つ効果に優れ、染色同浴処理での染着濃度の低下などの染色阻害を起こしにくい。1質量部未満であると、上記一般式(I)で表される化合物(A)の乳化分散状態を安定に保つ効果が低下し、繊維用抗菌性抗かび剤の貯蔵安定性が低下する傾向にある。99質量部を超えると、上記一般式(I)で表される化合物(A)の乳化分散状態を過剰に安定化させ、繊維製品への付着を阻害し、得られる繊維製品の抗菌性及び抗かび性を低下させる傾向にある。さらには、染色同浴加工にて、染料の分散状態も過剰に安定化させ、染着濃度の低下などの染色阻害を起こす傾向にある。
【0032】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤に用いられる乳化分散媒(C)としては、水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコール系溶剤や、モノメチルグリコール、モノメチルジグリコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、イソブチルトリグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール等のグリコール系溶剤、などが挙げられる。得られる繊維製品の洗濯や摩擦に対する堅牢性の点で、水、エタノール、ブチルグリコールが好ましい。さらに繊維用抗菌抗かび剤のハンドリング性の点で、水がより好ましい。
本発明においては、繊維用抗菌抗かび剤中において、上記化合物(A)、上記界面活性剤(B)および下記の任意選択的添加剤に対して、残余を占める量で加えることができる。
【0033】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤の形態は、乳化分散物であり、処理浴への展開性が良く、抗菌抗かび加工時のハンドリング性に優れる。例えば、処理浴に添加した場合に、すばやく処理浴全体に拡散し、一般式(I)で表される化合物(A)を繊維製品に均一に付着させることができ、無駄の少ない効率的な抗菌抗かび性の付与が可能となる。
【0034】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤には、必要に応じて、添加剤として、上記アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤以外の各種界面活性剤、本発明以外の抗菌剤及び抗かび剤、柔軟剤、平滑剤、浸透剤、均染剤、制電剤、キレート剤、酸化防止剤、消泡剤、溶剤、合成樹脂、架橋剤、粘度調整剤、pH調整剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲において、配合しても良い。
【0035】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば、上記一般式(I)で表される化合物(A)と、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(B)と、乳化分散媒(C)とを混合し、乳化分散することにより得ることができる。必要に応じて、ビーズミル、ボールミル、サイドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式乳化分散機、超音波乳化分散機、及び薄膜旋回型乳化分散機を使用しても良い。
【0036】
上記メディアミル等を用いて湿式分散する場合には、50%積算粒径が0.05〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましく、0.1〜3μmであることがさらに好ましい。50%積算粒径が0.05μm未満であると、繊維用抗菌抗かび剤の貯蔵安定性の向上効果が少なく、また、微粒子化に時間がかかるため経済的に不利となる傾向にある。一方、10μmを超えると、繊維用抗菌抗かび剤の貯蔵安定性が低下する傾向にある。さらに、本発明の繊維用抗菌抗かび剤としては、繊維用抗菌抗かび剤の貯蔵安定性がさらに向上する傾向にあるという点から、90%積算粒径が10μm以下であることが好ましい。
【0037】
本発明において、50%積算粒径及び90%積算粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)を用い、繊維用抗菌抗かび剤の粒径の百分率積算値が小粒径側から50%の粒径を50%積算粒径。百分率積算値の小粒径側から90%の粒径を90%積算粒径とすることで測定することができる。
【0038】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤を適用できる繊維製品の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、テンセル(商標)等の半合成繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリイミド繊維、ウレタン繊維等の合成繊維、及びこれらの繊維を含む混紡繊維や複合繊維を挙げることができる。また、素材の形態としても、特に限定されるものではなく、例えば、短繊維、長繊維、糸、織物、編物、不織布等が挙げられる。これらの繊維の太さ、断面形状や繊維の減量工程等の表面処理の有無など特に限定されるものではない。
【0039】
本発明の抗菌抗かび性繊維製品の製造方法について説明する。
本発明の繊維用抗菌抗かび剤を用いて、繊維製品に抗菌抗かび加工を施すということは、基材となる繊維製品に本発明の繊維用抗菌抗かび剤を処理して、上記一般式(I)で表される化合物(A)を付着させ(以降、「付着工程」ともいう)、熱処理を加えることによって、上記一般式(I)で表される化合物(A)を繊維製品に吸尽(固着)させる(以降、「吸尽工程」ともいう)ことである。
【0040】
付着工程に用いる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の繊維用抗菌抗かび剤をそのままあるいは適宜希釈して処理液とし、織物や編物等を浸漬等により接触させることにより、上記一般式(I)で表される化合物(A)を付着させることができる。接触させる方法としては、浸漬処理、パディング(dip−nip)処理、コーティング処理、スプレー処理等が挙げられる。
【0041】
浸漬処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の196〜247頁に記載のバッチ式染色機を用いる方法が挙げられ、液流染色機、気流染色機、ドラム染色機、ウインス染色機、ワッシャー染色機、チーズ染色機等を用いて、繊維製品を処理液に浸漬した後、脱水することにより上記一般式(I)で表される化合物(A)を付着させることができる。パディング処理としては、例えば、繊維染色加工辞典(昭和38年、日刊工業新聞社発行)の396〜397頁や色染化学III (1975年、実教出版株式会社発行)の256〜260頁に記載のパディング装置を用いた方法が挙げられ、繊維製品を処理液に浸漬し、マングル、ロール等を用いて所定のピックアップ量に調整することにより上記一般式(I)で表される化合物(A)を付着させることができる。コーティング処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の473〜477頁に記載のコーティング機を用いる方法が挙げられ、繊維製品に処理液を塗布することにより上記一般式(I)で表される化合物(A)を付着させることができる。スプレー処理としては、例えば、圧搾空気で処理液を霧状にして吹き付けるエアースプレーや、液圧霧化方式のエアースプレーを用いた方法が挙げられ、繊維製品に処理液を噴霧することにより上記一般式(I)で表される化合物(A)を付着させることができる。
【0042】
パディング処理やコーティング処理にて付着工程を行う場合、処理液を加工に適した粘度に調整して用いることができる。使用可能な粘度調整剤は特に限定されるものではないが、例えば、グアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、デキストリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどの非イオン性高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アルギン酸などのアニオン性高分子化合物を挙げることができる。
【0043】
吸尽工程については、上記一般式(I)で表される化合物(A)が付着した繊維製品に熱処理を加え、上記一般式(I)で表される化合物(A)を吸尽できれば良く、付着工程と同時に実施しても、付着工程の後に施しても良い。
【0044】
付着工程と吸尽工程とを同時に施す方法としては、高温吸尽法が挙げられる。高温吸尽法としては、上記一般式(I)で表される化合物(A)を浸漬処理により繊維製品の素材に付着させ、同処理浴中にて、80〜135℃の温度範囲で熱処理することが好ましく、100〜130℃の温度範囲で熱処理することがより好ましい。80℃未満では、上記一般式(I)で表される化合物(A)が繊維に充分に吸尽されずに得られる繊維製品の抗菌性及び抗かび性を低下させる傾向にある。135℃を超えると、得られる繊維製品の脆化や変色等が起こる傾向にある。
【0045】
付着工程の後に吸尽工程を施す方法としては、上記一般式(I)で表される化合物(A)を繊維製品の素材に付着させる付着工程の後、ドライヤー等での乾燥処理や飽和常圧スチーム処理、加熱スチーム処理、高圧スチーム処理等の蒸熱処理を施すことによって、上記一般式(I)で表される化合物(A)を吸尽させる方法が挙げられる。乾燥処理及び蒸熱処理のいずれにおいても、素材によって異なるが、通常80〜210℃の範囲内であることが好ましく、100〜190℃の範囲内であることがより好ましい。80℃未満では、上記一般式(I)で表される化合物が繊維製品に充分に吸尽されずに得られる繊維製品の抗菌性及び抗かび性を低下させる傾向にある。135℃を超えると、得られる繊維製品の脆化や変色等が起こる傾向にある。
【0046】
付着工程及び吸尽工程を施す際の処理液の濃度や熱処理等の処理条件は、その目的や要求性能等の諸条件を考慮して、適宜調整することができる。しかしながら、得られる繊維製品において、上記一般式(I)で表される化合物(A)の吸尽量が素材重量に対して0.01〜10質量%であることが好ましい。0.01質量%未満であると、抗菌抗かび性が十分に得られない傾向にある。10質量%を越えると、得られる繊維の風合等の繊維物性が低下したり、粉吹き等の製造上のトラブルにつながったりする傾向にある。
【0047】
さらに、本発明の製造方法においては、吸尽工程の後に、通常の公知方法によってソーピング処理を行い、繊維製品に吸尽されずに表面に付着しているに過ぎない余剰の抗菌抗かび性付与成分や染料を除去することが好ましい。余剰の抗菌抗かび性付与成分や染料は、得られる繊維製品の洗濯や摩擦に対する堅牢性を低下させる傾向にある。このようなソーピング処理に用いられるソーピング剤としては、例えば、アニオン性、非イオン性、両性界面活性剤、及びこれらが配合されたソーピング剤を用いることができ、また、サンモールRC−700E(日華化学株式会社製)、エスクードFRN(日華化学株式会社製)、エクスードFZ(日華化学株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0048】
また、本発明の製造方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、帯電防止剤、撥水撥油剤、防汚剤、硬仕上げ剤、風合調整剤、柔軟剤、吸水剤、スリップ防止剤、耐光向上剤等の機能性薬剤を併用することができる。得られる繊維製品の抗菌抗かび性の持続性向上のために、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、メラニン樹脂、グリオキザール系樹脂などの樹脂成分を併用することができる。さらに、繊維製品の表面pHを4〜8に調整するために、クエン酸やリンゴ酸などの揮発性の低い酸を併用することができる。
【0049】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤は、染着濃度の低下などの染色阻害を起こしにくく、抗菌抗かび加工を施すと同時に、染色加工を施すことができる。つまり染色同浴加工でも使用することができる。例えば、ポリエステル繊維製品に上記染色機を用いて、繊維製品の抗菌抗かび加工を染色加工と同じ処理浴中で同時に施す場合、本発明の繊維用抗菌抗かび剤と、分散染料と、分散均染剤とを含む処理浴に、繊維製品を浸漬し、110〜140℃にて15〜60分間の加熱処理を施すことにより、抗菌抗かび加工と染色加工とが同時に施された繊維製品を得ることができる。このような加工が施されたポリエステル繊維を、ソーピング又は水洗し、未固着の抗菌抗かび成分や染料などを洗い落として脱水した後、100〜180℃で乾燥してもよい。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
<繊維用抗菌抗かび性繊維製品の評価項目>
(1)抗菌性
社団法人繊維評価技術協議会(以下、繊技協という)の抗菌性の評価方法及び基準に準拠して、以下のように試験を行った。
洗濯前(L−0)及び洗濯10回後(L−10)の繊維製品の抗菌性について、JIS L 1902(2008)の定量方法である菌吸収法に準拠して、黄色ブドウ球菌(NBRC13942)を供試菌として、繊技協が認証している抗菌防臭加工を想定した静菌活性値にて評価を行った。
なお、洗濯については、繊技協が定める洗濯方法マニュアル(JIS L 0217(1995)付表1の103法)に準拠した。繊技協基準として静菌活性値が洗濯前(L−0)及び洗濯10回後(L−10)の繊維製品について2.2より大きい場合には効果があると判定した。
【0052】
(2)抗かび性(JIS法)
洗濯前(L−0)及び洗濯10回後(L−10)の繊維製品の抗かび性(JIS法)について、JIS Z 2911(2010)のかび抵抗性試験「7.繊維製品の試験方法」に準拠して行った。7.c)2)の水道水による注水濯ぎ工程は行わなかった。
なお、洗濯については、繊技協が定める洗濯方法マニュアル「JIS L 0217(1995)付表1の103法」に準拠した。洗濯前(L−0)及び洗濯10回後(L−10)の繊維製品について、結果表示が0又は1である場合には効果があると判定した。
【0053】
(3)抗かび性(繊技協法)
洗濯前(L−0)及び洗濯10回後(L−10)の繊維製品の抗かび性(繊技協法)について、繊技協のJECF301の「抗かび加工繊維製品認証基準」に準拠して行った。黒コウジカビを供試菌として、繊技協が認証しているA.nに対する抗かび活性値を求めた。
なお、洗濯については、繊技協が定める洗濯方法マニュアル(JIS L 0217(1995)付表1の103法)に準拠した。洗濯前(L−0)及び洗濯10回後(L−10)の繊維製品について、抗かび活性値が2.0以上の場合には効果があると判定した。
【0054】
(4)耐光堅牢度
洗濯前(L−0)の繊維製品の耐光堅牢度について、JIS L 0842(2004)の日光に対する染色堅ろう度試験方法の第5露光法の2級に準拠して行い、変退色用グレースケール(一般社団法人 日本規格協会製)を基準として1級〜5級の判定を行った。5級が最も変退色が少なく、1級が最も変退色が多く、3級以上を耐光堅牢性が良好と判定した。
【0055】
<浸漬処理によるポリエステル繊維製品の染色同浴抗菌抗かび加工における性能評価>
実施例1
サリチルアニリド10gとα−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)5gにエタノール85gを加えながら乳化し、抗菌抗かび剤1を得た。
ミニカラー染色機(テキサム技研製)を用いて、上記抗菌抗かび剤1を表1記載の所定の使用濃度、分散染料ダイアニックスレッドACE(ダイスタージャパン株式会社製)を0.5%o.w.f.、ニッカサンソルトRM−3406(分散均染剤、日華化学株式会社製)を1g/L、80質量%の酢酸を0.5g/L、となるように水に希釈し処理液とし、浴比(ポリエステルニット白布:処理液)1:15にて、ポリエステルニット白布(ポリエステル100%、目付:180g/m、未染色)を入れ、130℃にて30分間加熱処理し、80℃まで冷却し、処理液を排出した。次いで、サンモールRC−700E(ソーピング剤、日華化学株式会社製)を1g/L、ハイドロサルファイトを1g/L、ソーダ灰を1g/Lとなるように水に希釈した処理液を、浴比1:20になるように加え、80℃にて10分間加熱処理し、水洗した後、120℃にて3分間乾燥した。得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例2
サリチルアニリド10gとα−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)5gにブチルグリコール40gと水45gを加えながら乳化し、抗菌抗かび剤2を得た。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
サリチルアニリド10g、α−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)5gと水85gの混合物を、直径0.5mmガラスビーズを用いてビーズミル(アイメックス株式会社製)にて湿式分散し、抗菌抗かび剤3を得た。50%積算粒径は0.45μmであった。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例4
サリチルアニリド10g、α−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)3.5gとトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド16モル付加物3.5gに、ブチルジグリコール40gと水43gを加えながら乳化し、抗菌抗かび剤4を得た。抗菌抗かび1の代わりに、抗菌抗かび剤4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例5
5−クロロサリチルアニリド10gとトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物硫酸エステルナトリウム塩5gにエタノール85gを加えながら乳化し、抗菌抗かび剤5を得た。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤5を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例6
5−クロロサリチルアニリド10g、α−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)3.5gとステアリルアルコールエチレンオキサイド8モル付加物3.5gにブチルグリコール40gと水43gを加えながら乳化し、抗菌抗かび剤6を得た。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤6を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
10%塩化ベンザルコニウム水溶液を抗菌抗かび剤7とした。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤7を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例2
ジンクピリチオン10g、α−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)5gと水85gの混合物を、直径0.5mmガラスビーズを用いてビーズミル(アイメックス株式会社製)にて湿式分散し、抗菌抗かび剤8を得た。50%積算粒径は0.46μmであった。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤8を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例3
サリチルアニリド10gとα−オレフィン(C14−16)スルホン酸ナトリウム(ネオゲンAO−90、第一工業製薬株式会社製)15gにエタノール75gを加えながら乳化し、抗菌抗かび剤9を得た。
抗菌抗かび剤1の代わりに、抗菌抗かび剤9を用いた以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例4
抗菌抗かび剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
<パディング処理によるポリエステル繊維製品の抗菌抗かび加工における性能評価>
実施例7
実施例1記載の抗菌抗かび剤1を表2記載の所定の使用濃度、ベッカミンM−3(メラニン系樹脂、DIC株式会社製)を3g/L、キャタリストM(金属塩系触媒、DIC株式会社製)を3g/Lとなるように水に希釈し処理液とし、その処理液をパッド浴として、ポリエステルニット白布(ポリエステル100%、目付:180g/m、未染色)を通し、マングルにて絞り率100質量%になるように絞り、120℃にて3分間乾燥し、さらに180℃にて30秒間乾燥した。得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表2に示す。
【0067】
実施例8〜11、比較例5〜7
抗菌抗かび剤1の代わりに、各々表2記載の所定の抗菌抗かび剤を用いた以外は、実施例7と同様の方法で加工し、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
<パディング処理による綿繊維製品の抗菌抗かび加工における性能評価>
実施例12
実施例1記載の抗菌抗かび剤1を表3記載の所定の使用濃度、ベッカミンNS−11(グリオキザール系樹脂、DIC株式会社製)を50g/L、キャタリストACX(アミン系触媒、DIC株式会社製)を20g/Lとなるように水に希釈し処理液とし、その処理液をパッド浴として、綿ニット白布(綿100%、目付:150g/m、未染色)を通し、マングルにて絞り率100質量%になるように絞り、120℃にて3分間乾燥し、さらに150℃にて60秒間乾燥した。得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表3に示す。
【0070】
実施例13〜16、比較例8〜10
抗菌抗かび剤1の代わりに、各々表3記載の所定の抗菌抗かび剤を使用した以外は実施例12と同様の方法で加工を行い、得られた抗菌抗かび性繊維製品の性能評価を行い、評価結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表1〜3に示すように、本発明の繊維用抗菌抗かび剤を用いた実施例1〜16の抗菌抗かび性繊維製品は、抗菌性及び抗かび性を有しており、洗濯10回後でも充分にその効果が得られている。また、耐光堅牢性の低下も無く、良好な結果であった。つまり本発明の繊維用抗菌抗かび剤は得られる繊維製品の耐光堅牢性を低下させることなく、洗濯耐久性のある抗菌性及び抗かび性を繊維製品に付与することができる。また、実施例1〜6のように浸漬処理における染色同浴加工においても洗濯耐久性のある抗菌性及び抗かび性を付与できており、本発明の繊維用抗菌抗かび剤は、染色同浴加工においても使用可能である。
【0073】
一方、従来の低分子有機系抗菌抗かび剤を浸漬処理による染色同浴加工に用いた比較例1では、処理浴中に凝集物が発生し、評価しうる抗菌抗かび性繊維を得ることができなかった。また、パディング処理による加工に用いた比較例5及び8では、洗濯耐久性のある抗かび性が得られなかった。
【0074】
従来の金属系抗菌抗かび剤を用いた比較例2、6、9では、洗濯耐久性のある抗かび性が得られず、耐光堅牢性が劣る結果であった。
【0075】
一般式(I)で表される化合物(A)に対する界面活性剤(B)の配合量が本発明の請求の範囲外である比較例3の抗菌抗かび性繊維製品は、全体的に抗菌性及び抗かび性が劣り、洗濯耐久性も得られない結果であった。
抗菌抗かび剤を使用せずに加工を施した比較例4、7、10では、抗菌性及び抗かび性ともに得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の繊維用抗菌抗かび剤は、各種繊維製品に対し、得られる繊維製品の耐光堅牢性を低下させることなく、洗濯耐久性のある抗菌性及び抗かび性を付与することができ、本発明の抗菌抗かび性繊維製品の製造方法によると、耐光堅牢性に優れ、洗濯耐久性のある抗菌抗かび性繊維製品を安定して製造することができる。さらに、本発明の繊維用抗菌抗かび剤は、染色阻害を起こしにくく、染色同浴加工においても使用することができ、工程短縮や加工コストの低減を図ることができる。