(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される秒同期検出装置及び電波時計は、タイムコード信号の波形レベルのサンプリング及び数値化の処理を1秒周期で複数回、例えば10回、10秒間分行っている。そして、このサンプリングにより得られた波形レベルを数値化した値について積算処理と合算処理を行うため、マイコン等の処理装置には大きな負荷が掛かり、処理装置の高機能化が必要になる場合もある。
【0006】
本発明の目的は、精度良く秒同期点を検出しつつ、この検出に係る処理装置の負担を小さくして他の処理と合わせて正確迅速な処理を可能とする電波時計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電波時計は、標準電波を受信してタイムコード信号を出力する電波受信部と、デコーダ部と、現在時刻データに基づいて時計表示データを出力して計時を継続する時刻計時部と、前記時計表示データに基づいて時計表示をする表示部と、を有し、前記デコーダ部は、前記タイムコード信号から秒同期点を同定する秒同期処理部と、該秒同期処理部により同定された秒同期点に基づいて、前記タイムコード信号から受信時刻を確定して前記現在時刻データを出力する受信時刻確定部とで構成され、前記秒同期処理部は、前記タイムコード信号のうちの1秒間を所定個数に等分した周期で連続的に前記タイムコード信号の波形レベルを取得し、前記波形レベルの変化点となるタイミング及びそれ以外のタイミングにおける計算値をそれぞれ算出し、前記波形レベルの前記変化点におけるタイミングの前記計算値を前記周期毎に加算して、各タイミングにおける評価値を取得し、前記評価値から秒同期点を算出するとともに、各タイミングの前記評価値の何れかが規定値以上である場合には、全ての前記評価値を除算処理する。
【0008】
また、前記秒同期処理部は、電源ON時には、電源ON時から8秒以上経過後に前記評価値から秒同期点を算出する。
【0009】
また、前記秒同期処理部は、取得した前記タイムコード信号の波形レベルの変化点となる各タイミングにおける計算値を+1とし、それ以外の各タイミングにおける計算値を0とする。
【0010】
また、前記秒同期処理部の前記除算処理は、全ての前記各タイミングの評価値を1/2とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タイムコード信号のうちの1秒間を所定個数で等分した周期で連続的にタイムコード信号の波形レベルを取得する。そして、この取得した波形レベルの変化点となるタイミング及びそれ以外のタイミングにおける計算値を算出し、波形レベルの変化点となるタイミングにおける計算値を1秒周期毎に加算して各タイミングの評価値を取得し、この評価値の最大値位置を秒同期点とする。従って、1秒毎に生じる正数の変化点は検出遅れとされる可能性が少なく、1秒周期で繰り返し持続するノイズ以外は検出回数値が低くなって検出され、正数の変化点から正しく秒同期を検出することができる。
【0012】
このように電波時計を構成することによって、継続的に評価値を取得し続けることができる。そして、継続的に評価値を取得し続けることによって、電波時計の電源がONされてからの経過時間が長くなればなるほど、ノイズの影響が除去されて、秒同期点がより際立って現れることとなり、より正確な秒同期点を同定することができる。
【0013】
さらに、各タイミングの評価値の何れかの評価値が規定値以上である場合には、全ての評価値について除算処理がなされる。このため、各タイミングにおける計算値が加算される評価値が大きくなりすぎて、電波時計のマイコン等の処理装置の処理を圧迫することがない。従って、電波時計のマイコン等の処理装置の能力を高くする必要がないので、製造に掛かるコストを低減させた電波時計を提供することができる。
【0014】
また、秒同期処理部は、電源ON時には、電源ON時から8秒以上経過後に秒同期点を取得する。これにより、8秒以上の間継続して算出された評価値に基づいて秒同期点を算出することができるので、ノイズによる影響を除去して同期点を算出することができる。
【0015】
また、秒同期処理部は、タイムコード信号の波形レベルの変化点となる各タイミングにおける計算値を+1とし、それ以外の各タイミングにおける計算値を0とした。これにより、各タイミングにおける計算値の算出に減算処理を必要としないので、より低負荷で電波時計のマイコン等を動作させることができる。
【0016】
また、秒同期処理部の除算処理は、全ての各タイミングにおける評価値を1/2とする除算処理を行うものとした。これにより、マイコン等の処理装置を小型としつつ、除算処理後の評価値によっても十分に秒同期点を同定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の電波時計10の構成を示すブロック図である。電波時計10は、電波塔1から発信される標準電波2を受信するアンテナ11が設けられている。アンテナ11は電波受信部12と接続されている。電波受信部12は、アンテナ11により受信された標準電波2を復調してタイムコード信号(TCO信号)を生成する。生成されたタイムコード信号は、マイコン20の波形読み込み部21を介してデコーダ部30に読み込まれる。
【0019】
デコーダ部30では、読み込まれたタイムコード信号に基づいて、秒同期処理部31により秒同期点の同定が行われる。この際、タイムコード信号における1秒を32等分した各ブロックのブロック番号m、評価値Em、秒同期点Tmがメモリ部32に適宜記憶される。デコーダ部30の受信時刻確定部33は、秒同期点Tmに基づいてタイムコード信号から時刻情報を取り出し、受信時刻を確定して現在時刻データを出力する。そして、時刻計時部22により、現在時刻データにより修正された時計表示データが表示部23に送出されて、表示部23により時刻がデジタル表示またはアナログ表示される。
【0020】
標準電波2は、時刻情報(タイムコード)をのせた長波信号である。本実施形態においては、標準電波2は、
図6の例に示す日本のJJY標準電波(40kHz/60kHz)である。
【0021】
図6に示すJJY標準電波は、1周期60秒のフォーマットからなる時刻情報を1フレームとして1分毎に電波塔1から送信される。そして、1つのフレーム内には、データの時間間隔が1秒ごとに区分された2値で表されるタイムコードが配列されている。具体的には、フレームの開始を認識するための先頭のマーカー(M)及びポジションマーカー(P0〜P5)、分、時、1月1日からの通算日、年(西暦下2桁)、曜日、うるう秒、予備ビット等の各データを示すフィールドが符号化されて配されている。
【0022】
JJY標準電波では、時刻情報が40kHz又は60kHzの搬送波に変調され、時刻情報があるときに100%の振幅、ないときに10%の振幅として送信される。そして、上記の各データを示すフィールドの符号化は、そのパルス幅が0.8s±5msのものが「0」、パルス幅が0.5s±5msのものが「1」、パルス幅が0.2s±5msのものがマーカー「M」又はポジションマーカー「P0」〜「P5」と表されている。
【0023】
図1に示す電波受信部12は、アンテナ11で受信した信号を復調し、フィルタ部による標準電波2の抽出等の所定の信号処理を行って、標準電波2に応じたパルス信号とされるタイムコード信号(TCO信号)を出力する。なお、このタイムコード信号は、標準電波2の振幅が大きいときはローレベルの出力がされ、標準電波2の振幅が小さいときはハイレベルの出力がされるようローアクティブで出力されるものである。
【0024】
電波受信部12から出力されたタイムコード信号は、波形読み込み部21を介してマイコン20に読み込まれる。マイコン20に読み込まれたタイムコード信号は、マイコン20のデコーダ部30における秒同期処理部31に入力される。秒同期処理部31では、タイムコード信号における1秒毎の秒同期点Tm(1.00秒≦Tm≦59.00秒)を検出し、同定される。
【0025】
ここで、秒同期処理部31における秒同期点Tmを同定する処理工程を
図2のフローに基づいて、適宜
図3〜
図5を参照しつつ説明する。先ず、電波時計10の電源をONすると(ステップS10)、メモリ部32がクリアされる初期化処理(ステップS20)が行われる。
【0026】
すると、「TCO信号レベル取得」(ステップS30)として、秒同期処理部31にタイムコード信号の波形レベルが読み込まれ、
図3に示す各タイミングにおける計算値Pmが算出される。ここで、
図3は、電源投入直後におけるタイムコード信号の波形レベルとその処理を示す。本実施形態では、TCO波形で示されるタイムコード信号のうちの1秒間を32等分し、m=0〜31のブロック番号(m)で表されるタイミング毎にタイムコード信号の波形レベルを取得する。そして、波形レベルの変化点である波形レベルの立下り点となるタイミングでは計算値Pmを「+1」として算出し、波形レベルの立下り点以外のタイミングにおいては計算値Pmを「0」として算出する。
【0027】
例えば、
図3においては、波形レベルの立下り点であるブロック番号m=5やm=16の各タイミングでは、計算値PmはP
5=+1,P
16=+1が算出され、それら以外のタイミングでは「0」が算出されている。
【0028】
図2に戻り、ステップS30の次に、「ブロック番号m=m+1」(ステップS40)として、ブロック番号mが加算処理されメモリ部32に記憶される。そして、ブロック番号mが「m≧32」となるまで繰り返し本フローが実施される(ステップS50)。すなわち、ブロック番号(m)はカウンタの役割を果たし、1秒間を32等分した1周期が終了するまで本フローを実施する。1周期分の処理が終了した場合には、「m=0」(ステップS60)が実行され、ブロック番号(m)は初期化される。
【0029】
次に、ステップS30にて取得した計算値Pmがタイムコード信号の波形レベルの立下り点か否かが判定される(ステップS70)。ステップS30にて取得した計算値Pmが波形レベルの立下り点である場合(すなわち計算値Pmの値が「+1」である場合)には、前回分の評価値Emに「+1」が加算され(ステップS80)、メモリ部32に記憶される。
【0030】
例えば、
図3において、ブロック番号(m)がm=5においては、波形レベルの立下り点であるので、ステップS30にて計算値P
5=+1とされる。そして、ステップS70において、波形レベルの立下り点であると判定されるので、ステップS80にて前回分の評価値E
5に「+1」が加算される。ここで、前回分の評価値は、ステップS20によりE
5=0とされているので、ステップS80における評価値E
5は「1」が算出される。このようにして、1秒間の周期毎に、波形レベルの立下り点においては、前回分の評価値Emに「+1」が加算されていく。
【0031】
そして、波形レベルの立下り点における評価値Emに「+1」が加算され続けた結果、n秒後に評価値Em(E
0〜E
31)のうち何れかの評価値Emが規定値である「16」以上となる場合(ステップS82)、全ての評価値Emの値が除算処理される(ステップS85)。
【0032】
例えば、
図4のn秒後のタイムコード信号の波形処理に示すように、n秒後における評価値Emのうち、ブロック番号m=5における評価値E
5が「15」となったとする。すると、次の周期(n+1秒後)でもブロック番号m=5における波形レベルが立下り点である場合には、
図2のステップS80で前回分の評価値Emに「+1」が加算されてE
5=16となる。そして、ステップS82ではE
5≧16となるので条件を満たし、すべての評価値Em(E
0〜E
31)が除算処理される(ステップS85)。
【0033】
本実施形態においては、この除算処理は、全ての評価値Emを1/2としている。具体的には、4ビットで算出された評価値Emについて右シフト演算処理を行っている。例えば、
図4において、ブロック番号m=5においてはE
5=15であったが、除算処理によって、除算処理後評価値Emは、E
5=7となる。
【0034】
このようにして、何れかの評価値Emが規定値(本実施形態においては「16」)以上となった場合には、除算処理(本実施形態においては「1/2」)を行うことで、電波時計10の電源がONされている間中、タイムコード信号における波形レベルの立下り点の計算値Pmを取得し、評価値Emを算出し続けることができる。
【0035】
なお、除算処理は、「1/3」や「1/4」とすることもできるが、分母を大きくすると、秒同期点における評価値Emと、他の立下り点における評価値Emとの差が小さくなってしまう。従って、除算処理は、「1/2」とするのが好適である。
【0036】
一方、電源投入後においては、8秒間経過するまで評価値Emの算出が続けられる(ステップS90)。そして、電源投入から8秒経過後の評価値Emに基づいて、秒同期点Tmが同定される(ステップS100)。
【0037】
秒同期点Tmの同定は、電源投入してから8秒後の評価値Emのうち一番大きい値の評価値Emを秒同期点Tmとして同定する。例えば、
図5の8秒後のタイムコード信号の波形処理に示すように、ブロック番号m=5の評価値E
5=8が一番大きい値であるので、ブロック番号(m)がm=5のタイミングが秒同期点Tmであると同定する。他のタイミングのブロック番号(m)、例えば、m=13,16,22,25における評価値Emは、それぞれ3,4,2,5であり、タイムコード信号(TCO信号)の波形レベルの立下り点が検出されたことが分かる。しかしながら、電源投入後8秒間の間に一番多く波形レベルの立下り点が現れたのは評価値Emが一番大きいm=5のタイミングであり、このm=5のタイミングが真の秒同期点Tmと考えられ、他のタイミングに現れた波形レベルの立下り点はノイズであると考えられる。
【0038】
このようにして、評価値Emを連続して蓄積することによって、ノイズの混入等により、瞬間的に波形レベルの立下り点が検出されたとしても、精度よく秒同期点Tmを同定することができる。また、秒同期点Tmの同定には、8秒間程度の評価値Emの蓄積があれば、ノイズにより検出された波形レベルの立下り点を誤って秒同期点Tmとして検出してしまう恐れを低減させることができる。
【0039】
このようにして取得された秒同期点Tmは、メモリ部32に記憶される。そして、デコーダ部30の受信時刻確定部33により、この秒同期点Tmを基準として時刻データが読み込まれる受信タイムコードの取得が実施される(ステップS110)。
【0040】
ステップS110の受信タイムコードの取得が実施されると、次の受信タイムコードの取得に備えて使用済の秒同期点Tmのデータがクリアされる。受信時刻が確定されると(ステップS120)、時刻計時部22を介して表示部23により時刻が表示され、本フローが終了される(ステップS130)。受信時刻が確定されていない場合には、ステップS30に戻り、引き続きTCO信号レベルの取得がされ続ける(ステップS120)。
【0041】
なお、秒同期処理部31による秒同期の実施は、
図6のJJY標準電波においては、40秒以降のうち、電波時計10で使用しない時刻データの時間帯に一分間に一回行うのが好適である。例えば、置時計型の電波時計10である場合には、年や曜日が使用されない場合があるからである。
【0042】
このようにして、電波時計10の電源がONされている間中、連続して継続的に波形レベルの変化点を取得して評価値Emを算出し続けて、定期的に(例えば一分間に一回)評価値Emから秒同期を実施することができる。そして、評価値Emを連続して算出し続けることができるので、電源がONされている時間が長くなればなるほど、ノイズによるタイムコード信号の波形レベルの変化点、すなわち立下り点の影響が除去されることとなり、真の秒同期点が際立って現れることとなるので、より精度よく秒同期点を同定することができる。
【0043】
なお、評価値Em(E
0〜E
31)のうち、最も大きい評価値Emが複数ある場合には、ブロック番号m=0に最も近い評価値におけるタイミングを秒同期点Tmとする。これは、ブロック番号m=0に近い評価値Emが最も真の秒同期点である可能性が高いし、その後に蓄積される評価値Emの値に基づいて真の秒同期点Tmを同定することができるからである。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は以上の実施形態によっては限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記の実施形態においては、タイムコード信号のうちの1秒間を32等分した周期で連続的に波形レベルを取得したが、この32等分に限られず、64等分や128等分などの所定個数で等分すればよい。
【0045】
また、上記の実施形態においては、タイムコード信号の波形レベルの変化点である立下り点となるタイミングにおける計算値Pm及びそれ以外のタイミングにおける計算値Pmを、それぞれ「+1」及び「0」として算出したが、それぞれ「+1」及び「−1」とすることもできる。但し、減算処理は装置に負担がかかるので、本実施形態のように構成した方が好適である。
【0046】
また、一度秒同期を実施した後は、2回目以降における秒同期点Tmにおけるタイミング(ブロック番号(m))における計算値Pmを「+2」として算出することもできる。これにより、一度取得した秒同期点Tmの重みづけをして評価値Emを算出することができ、ノイズの影響をさらに良く除去することができる。