(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判別部は、前記監視領域内の各方向の検出距離の前記車幅方向の変化がなだらかである場合、前記検出物体が坂である可能性があると判定し、前記監視領域内の各方向の検出距離の前記車幅方向の変化がなだらかでない場合、前記検出物体が坂である可能性がないと判定する
請求項2に記載の物体検出装置。
前記判別部は、前記監視領域内の各方向の検出距離の前記車幅方向の変化がなだらかである場合であって、外部からの情報により前記車両の前記検出物体の方向への移動が検出されているにも関わらず、前記検出物体までの検出距離が長くなった場合、前記検出物体が坂であると判定する
請求項3に記載の物体検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0033】
<1.実施の形態>
{車載システム1の構成例}
図1は、本発明の一実施の形態である車載システム1の構成例を示している。
【0034】
車載システム1は、スイッチ11、車速センサ12、シフト位置検出器13、アクセルペダル検出器14、ブレーキペダル検出器15、衝突防止制御装置16、警報装置17、原動機制御装置18、及び、ブレーキ制御装置19を含むように構成される。
【0035】
なお、以下、車載システム1が設けられている車両を他の車両と区別する必要がある場合、自車両と称する。さらに、以下、自車両の左右方向(車幅方向)と平行な方向を水平方向と称する。
【0036】
スイッチ11は、例えば、イグニッションスイッチ又はパワースイッチ等からなる。スイッチ11は、例えば、自車両の原動機(例えば、エンジンやモータ等)の始動や停止、及び、電装品への電源の供給モードの切り替えに用いられる。スイッチ11は、設定位置や操作内容を示す信号を衝突防止制御装置16の衝突防止演算装置32に供給する。
【0037】
車速センサ12は、自車両の速度を検出し、検出結果を衝突防止制御装置16の衝突防止演算装置32に供給する。
【0038】
シフト位置検出器13は、自車両のシフトレバー(不図示)又はセレクトレバー(不図示)のポジション(設定位置)を検出し、検出結果を衝突防止制御装置16の衝突防止演算装置32に供給する。
【0039】
アクセルペダル検出器14は、自車両のアクセル開度を検出し、検出結果を衝突防止制御装置16の衝突防止演算装置32に供給する。
【0040】
ブレーキペダル検出器15は、自車両のブレーキペダル(不図示)の踏込量を検出し、検出結果を衝突防止演算装置32に供給する。
【0041】
衝突防止制御装置16は、自車両が周囲の物体に衝突することを防止する衝突防止機能の制御を行う。衝突防止制御装置16は、レーザレーダ装置31及び衝突防止演算装置32を含むように構成される。
【0042】
レーザレーダ装置31は、自車両の前方を監視し、自車両の前方の物体の有無、物体の種類、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等を検出する。また、レーザレーダ装置31は、検出結果に基づいて、自車両の発進、加速、運転者への警報等に関する指令を衝突防止演算装置32に行う。
【0043】
なお、以下、レーザレーダ装置31により物体の検出が可能な領域を監視領域と称する。
【0044】
衝突防止演算装置32は、例えば、制御プログラムが組み込まれたECU(Electronic Control Unit)であり、マイクロコンピュータ、記憶素子、入出力インタフェース等により構成される。衝突防止演算装置32は、走行制御部41及び通知制御部42を含むように構成される。
【0045】
走行制御部41は、レーザレーダ装置31からの指令に基づいて、原動機制御装置18及びブレーキ制御装置19を制御し、自車両の発進又は加速を抑制する。また、走行制御部41は、車速センサ12による車速の検出結果、及び、シフト位置検出器13によるシフトレバー又はセレクトレバーのポジションの検出結果等の外部からの情報に基づいて、自車両の移動方向を検出する。走行制御部41は、自車両の移動方向の検出結果をレーザレーダ装置31に供給する。
【0046】
通知制御部42は、レーザレーダ装置31からの指令に基づいて、警報装置17による警報の制御を行う。
【0047】
警報装置17は、例えば、カーナビゲーションシステムやインストルメントパネルに設けられているディスプレイ等の表示装置、インジケータランプ、LED(Light Emitting Diode)等の発光装置、ブザー等の音声出力装置等により構成される。
【0048】
原動機制御装置18は、自車両の原動機(例えば、エンジン、モータ等)の制御を行う。例えば、原動機制御装置18は、自車両の原動機がエンジンである場合、エンジンのスロットル開度等を制御する。また、例えば、原動機制御装置18は、自車両の原動機がモータである場合、モータの回転数等を制御する。
【0049】
ブレーキ制御装置19は、例えば、自車両のブレーキの動作の制御、及び、自動ブレーキの制御を行う。
【0050】
{レーザレーダ装置31の構成例}
図2は、レーザレーダ装置31の構成例を示している。レーザレーダ装置31は、制御部61、測定光投光部62、受光部63、測定部64、及び、演算部65を含むように構成される。
【0051】
制御部61は、衝突防止演算装置32からの指令や情報等に基づいて、レーザレーダ装置31の各部の制御を行う。
【0052】
測定光投光部62は、物体の検出に用いるパルス状のレーザ光(レーザパルス)である測定光を監視領域に投光する。
【0053】
受光部63は、測定光の反射光を受光し、水平方向のそれぞれ異なる方向からの反射光の強度(明るさ)を検出する。そして、受光部63は、各方向の反射光の強度に応じた電気信号である複数の受光信号を出力する。
【0054】
測定部64は、受光部63から供給されるアナログの受光信号に基づいて、受光部63における反射光に対する受光値の測定を行い、測定した受光値を示すデジタルの受光信号を演算部65に供給する。
【0055】
演算部65は、測定部64から供給される受光信号に基づいて、監視領域内の物体の有無、物体の種類、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等の検出を行う。演算部65は、検出結果を制御部61に供給する。また、演算部65は、検出結果に基づいて、自車両の発進、加速、運転者への警報等に関する指令を衝突防止演算装置32に行う。
【0056】
{測定光投光部62の構成例}
図3は、レーザレーダ装置31の測定光投光部62の構成例を示している。測定光投光部62は、駆動回路101、発光素子102、及び、投光光学系103を含むように構成される。
【0057】
駆動回路101は、制御部61の制御の下に、発光素子102の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
【0058】
発光素子102は、例えば、レーザダイオードからなり、駆動回路101の制御の下に、測定光(レーザパルス)の発光を行う。発光素子102から発光された測定光は、レンズ等により構成される投光光学系103を介して、自車両の前方において水平方向(車幅方向)に放射状に広がる監視領域に投光される。
【0059】
{受光部63の構成例}
図4は、レーザレーダ装置31の受光部63の構成例を示している。受光部63は、受光光学系201及び受光素子202−1乃至202−16を含むように構成される。
【0060】
なお、以下、受光素子202−1乃至202−16を個々に区別する必要がない場合、単に受光素子202と称する。
【0061】
受光光学系201は、レンズ等により構成され、光軸が車両の前後方向を向くように設置される。そして、受光光学系201は、監視領域内の物体等により反射された測定光の反射光が入射し、入射した反射光を各受光素子202の受光面に入射させる。
【0062】
各受光素子202は、例えば、入射した光電荷をその光量に応じた電流値の受光信号に光電変換するフォトダイオードからなる。また、各受光素子202は、受光光学系201に入射した反射光が集光する位置において、受光光学系201の光軸に対して垂直、かつ、自車両の車幅方向に平行(すなわち、水平方向)に一列に並ぶように設けられている。そして、受光光学系201に入射した反射光は、受光光学系201への水平方向の入射角度に応じて、各受光素子202に振り分けられて入射する。従って、各受光素子202は、監視領域からの反射光のうち、水平方向においてそれぞれ異なる方向からの反射光を受光する。これにより、監視領域は水平方向の複数の方向における複数の領域(以下、検出領域と称する)に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を個別に受光する。そして、受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部64に供給する。
【0063】
{監視領域及び検出領域の具体例}
ここで、
図5乃至
図7を参照して、監視領域及び検出領域の具体例について説明する。
図5は、レーザレーダ装置31が設けられた車両Cを横から見た場合の測定光の照射範囲を模式的に示している。
図6は、車両Cを上から見た場合の各検出領域の位置を模式的に示している。
図7は、受光部63を上から見た場合の各受光素子202と各検出領域との関係を模式的に示している。なお、
図7では、図を分かりやすくするために、各検出領域からの反射光のうち受光光学系201のレンズの中央を通る光線のみを模式的に示している。
【0064】
レーザレーダ装置31は、例えば、
図5に示されるように、車両Cのフロントガラス(不図示)の内側(車内)であって、ルームミラー(不図示)の裏側に設置される。そして、レーザレーダ装置31の測定光投光部62から車両Cの前方に、水平方向及び上下方向(垂直方向)に放射状に広がるように測定光LBが投光される。
【0065】
なお、以下、
図5に示されるように、測定光LBの出射位置を位置P1とする。また、以下、位置P1の路面からの高さを高さh0とする。さらに、以下、車両Cの前輪の下端P2と位置P1との間の距離を距離d0とする。また、以下、測定光LBの垂直方向の視野角を角度θ1とし、測定光LBの視野軸A1の傾きを角度θ2とし、測定光LBの下端の傾きを角度θ3とする。
【0066】
また、
図7に示されるように、各受光素子202は、車両Cの進行方向に向かって右から受光素子202−1、202−2、202−3・・・の順に一列に並べられている。これに対して、
図6に示されるように、レーザレーダ装置31の監視領域は、車両Cの前方に放射状に広がる検出領域A1乃至A16により構成され、各検出領域は、車両Cの進行方向に向かって左から検出領域A1、A2、A3・・・の順に並んでいる。例えば、受光素子202−1は、監視領域内の左端であって、車両Cの左前方の斜線で示される検出領域A1からの反射光を受光する。また、受光素子202−16は、監視領域内の右端であって、車両Cの右前方の斜線で示される検出領域A16からの反射光を受光する。さらに、受光素子202−8及び202−9は、監視領域の中央の網掛けで示される検出領域A8及びA9からの反射光を受光する。
【0067】
{測定部64の構成例}
図8は、レーザレーダ装置31の測定部64の構成例を示している。測定部64は、電流電圧変換部251、増幅部252、及び、サンプリング部253を含むように構成される。電流電圧変換部251は、トランス・インピーダンス・アンプ(TIA)261−1乃至261−16を含むように構成される。増幅部252は、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)262−1乃至262−16を含むように構成される。サンプリング部253は、A/Dコンバータ(ADC)263−1乃至263−16を含むように構成される。また、TIA261−i、PGA262−i及びADC263−i(i=1乃至16)は、それぞれ直列に接続されている。
【0068】
なお、以下、TIA261−1乃至261−16、PGA262−1乃至262−16、及び、ADC263−1乃至263−16をそれぞれ個々に区別する必要がない場合、それぞれ単にTIA261、PGA262、及び、ADC263と称する。
【0069】
各TIA261は、制御部61の制御の下に、受光素子202から供給される受光信号の電流−電圧変換を行う。すなわち、各TIA261は、入力された電流としての受光信号を電圧としての受光信号に変換するとともに、制御部61により設定されたゲインで変換後の受光信号の電圧を増幅する。そして、各TIA261は、増幅後の受光信号を後段のPGA262に供給する。
【0070】
各PGA262は、制御部61の制御の下に、TIA261から供給される受光信号の電圧を、制御部61により設定されたゲインで増幅し、後段のADC263に供給する。
【0071】
各ADC263は、受光信号のA/D変換を行う。すなわち、各ADC263は、制御部61の制御の下に、PGA262から供給されるアナログの受光信号のサンプリングを所定のサンプリング間隔で行うことにより、各サンプリング時刻における受光値の測定を行う。そして、各ADC263は、受光値のサンプリング結果(測定結果)を示すデジタルの受光信号を演算部65に供給する。
【0072】
{演算部65の構成例}
図9は、演算部65の機能の構成例を示している。演算部65は、検出部301、判別部302、及び、指令部303を含むように構成される。
【0073】
検出部301は、監視領域内の物体の検出を行う。検出部301は、ピーク検出部311及び物体検出部312を含むように構成される。
【0074】
ピーク検出部311は、各ADC263から供給される受光信号に基づいて、各受光素子202の受光値のピーク検出を行う。これにより、測定光の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークが検出される。ピーク検出部311は、検出結果を物体検出部312に供給する。
【0075】
物体検出部312は、受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向(距離方向)の分布並びにピークの検出結果に基づいて、監視領域内の物体の有無、物体が存在する方向、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等の検出を行う。物体検出部312は、検出結果を判別部302に供給する。また、物体検出部312は、検出領域毎の検出距離の検出結果を判別部302に供給する。
【0076】
判別部302は、自車両の移動方向の検出結果を走行制御部41から取得する。判別部302は、物体検出部312により検出された物体までの検出距離、検出領域毎の検出距離、走行制御部41により検出された自車両の移動方向等に基づいて、物体検出部312により検出された物体の判別を行う。例えば、判別部302は、例えば、物体検出部312により検出された物体が坂の可能性があるか否か、及び、登坂可能な坂であるか否か等の判定を行う。ここで、坂とは、例えば、車両の通行用の道が設けられている坂道に限定されるものではなく、例えば、道が設けられていない坂も含む。判別部302は、物体の判別結果を含む物体の検出結果を制御部61及び指令部303に供給する。
【0077】
指令部303は、判別部302から供給される物体の検出結果に応じて、自車両の発進、加速等に関する指令を走行制御部41に行う。また、指令部303は、判別部302から供給される物体の検出結果に応じて、運転者への警報等に関する指令を通知制御部42に行う。
【0078】
{監視処理}
次に、
図10のフローチャートを参照して、車載システム1により実行される発進時衝突防止制御処理について説明する。なお、この処理は、例えば、自車両の発進が可能な位置にスイッチ11が設定されたとき開始される。
【0079】
ステップS1において、レーザレーダ装置31は、監視を開始する。すなわち、レーザレーダ装置31は、以下の処理を開始することにより自車両の前方の監視領域内の監視を開始する。
【0080】
駆動回路101は、制御部61の制御の下に、発光素子102からパルス状の測定光を出射させる。発光素子102から出射された測定光は、投光光学系103を介して監視領域全体に投光される。
【0081】
各受光素子202は、受光光学系201を介して、測定光投光部62から投光された測定光に対する反射光のうち、それぞれ対応する方向の検出領域からの反射光を受光する。そして、各受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電気信号である受光信号に光電変換し、得られた受光信号を後段のTIA261に供給する。
【0082】
各TIA261は、制御部61の制御の下に、各受光素子202から供給された受光信号の電流−電圧変換を行うとともに、制御部61により設定されたゲインにより受光信号の電圧を増幅する。各TIA261は、増幅後の受光信号を後段のPGA262に供給する。
【0083】
各PGA262は、制御部61の制御の下に、各TIA261から供給される受光信号の電圧を、制御部61により設定されたゲインで増幅し、後段のADC263に供給する。
【0084】
各ADC263は、制御部61の制御の下に、各PGA262から供給される受光信号のサンプリングを行い、受光信号をA/D変換する。そして、各ADC263は、各サンプリング時刻におけるサンプリング値(受光値)を示すデジタルの受光信号をピーク検出部311に供給する。
【0085】
ピーク検出部311は、受光素子202毎に受光値がピークとなるサンプリング時刻を検出する。すなわち、ピーク検出部311は、各受光素子202に対応する水平方向の検出領域毎に受光値の時間方向のピークを検出する。ピーク検出部311は、検出結果を物体検出部312に供給する。
【0086】
物体検出部312は、例えば、測定光が投光されてから受光値がピークとなるまでの時間差に基づいて、各検出領域において測定光を反射する物体までの自車両からの距離(以下、検出距離と称する)を検出する。すなわち、物体検出部312は、監視領域内の各方向の物体までの検出距離を検出する。そして、物体検出部312は、今回の各検出領域における検出距離、及び、過去の各検出領域における検出距離等に基づいて、監視領域内の物体の有無、物体が存在する方向、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等の検出を行う。
【0087】
ここで、例えば、1つの物体が複数の検出領域にわたって存在する場合、当該物体に対して検出領域毎に複数の検出距離が検出される。この場合、例えば、当該物体に対して検出された複数の検出距離の最小値又は平均値等が、当該物体までの検出距離として求められる。
【0088】
物体検出部312は、監視領域内の物体の有無、物体が存在する方向、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等の検出結果を判別部302に供給する。また、物体検出部312は、検出領域毎の検出距離の検出結果を判別部302に供給する。
【0089】
なお、物体検出部312の物体検出方法には、任意の方法を採用することができる。また、物体検出部312が検出する物体には、例えば、他の車両、歩行者、道路付帯物、坂等が含まれる。
【0090】
ステップS2において、判別部302は、物体検出部312からの最新の検出結果に基づいて、物体が検出されたか否かを判定する。物体が検出されたと判定された場合、処理はステップS3に進む。
【0091】
ステップS3において、判別部302は、物体までの検出距離が危険距離以内であるか否かを判定する。なお、危険距離とは、自車両が誤って急発進すると衝突するおそれがある距離のことである。例えば、危険距離は、自車両の加速性能等に基づいて設定される。そして、物体までの検出距離が危険距離以内であると判定された場合、処理はステップS4に進む。
【0092】
ステップS4において、判別部302は、物体までの検出距離が坂検出最短距離未満であるか否かを判定する。なお、坂検出最短距離とは、自車両が登坂可能な坂に対してレーザレーダ装置31により検出されると想定される最短距離のことである。
【0093】
ここで、
図11を参照して、
図5を参照して上述した車両Cの坂検出最短距離の算出方法の例について説明する。
【0094】
車両Cが登坂可能な坂までの検出距離が最短になるのは、車両Cが登坂可能な坂のうち最も急勾配な坂S0に車両Cが最も接近したときである。このとき、
図11の上の図に示されるように、車両Cの前輪の下端P2が、坂S0の下端にほぼ接した状態となる。
【0095】
なお、以下、坂S0の勾配角をγ0とする。また、以下、
図11の上の図に示される状態において、坂S0と測定光LBの下端とが接する点を点P3とし、点P3の高さをhtとする。さらに、以下、この状態においてレーザレーダ装置31により検出される坂S0までの距離、すなわち、坂検出最短距離をLminとする。
【0096】
図11の下の図は、点P1乃至点P3の位置関係を模式的に示している。この図より、以下の式(1)及び式(2)が成り立つ。
【0097】
tanγ0=ht/(Lmin−d0) ・・・(1)
tanθ3=(h0−ht)/Lmin ・・・(2)
【0098】
式(1)より、高さhtは、次式(3)で表される。
【0099】
ht=tanγ0×(Lmin−d0) ・・・(3)
【0100】
そして、式(3)を式(2)に代入し、整理することにより、次式(4)に示されるように、坂検出最短距離Lminが求まる。
【0101】
Lmin=(h0+d0・tanγ0)/(tanγ0+tanθ3) ・・・(4)
【0102】
例えば、h0=1.42m、d0=0.56m、θ3=7.0度であるとし、γ0を日本で施工可能な上り坂の最大勾配角である6.8度とした場合、坂検出最短距離Lminは、6.143mとなる。
【0103】
また、例えば、h0=1.42m、d0=0.56m、θ3=7.0度であるとし、γ0を一般車が登坂可能な最大勾配角である17.7度とした場合、坂検出最短距離Lminは、3.618mになる。ここで、一般車が登坂可能な最大勾配角である17.7度は、国土技術政策総合研究所発行の国総研資料第667号の「3.縦断勾配の限界に関する検討」に基づいて設定した値である。
【0104】
なお、実際の勾配角γ0は、例えば、排気量や重量等の要因に基づいて車種毎に設定される。
【0105】
また、
図12の上の図は、
図11の上の図と同様に、車両Cが坂S0に最も接近した状態を示しており、
図12の下の図は、車両Cが坂S0を登り始めた状態を示している。この例に示されるように、車両Cが坂S0を登り始めると、レーザレーダ装置31の検出距離L1は、坂検出最短距離Lminより長くなる。従って、車両Cが登坂可能な坂までの検出距離が、坂検出最短距離Lmin未満になることはない。逆に、物体までの検出距離が坂検出最短距離Lmin未満である場合、その物体は、少なくとも車両Cが登坂可能な坂ではないと判定することができる。
【0106】
図13及び
図14は、物体までの検出距離が、坂検出最短距離Lmin未満となる例を示している。具体的には、
図13は、車両Cが障害物401に接近し、レーザレーダ装置31の検出距離L2が、坂検出最短距離Lminより短くなっている状態を示している。
図14は、車両Cが坂S0より急勾配な坂S2に接近し、レーザレーダ装置31の検出距離L3が、坂検出最短距離Lminより短くなっている状態を示している。
【0107】
このように、車両Cが、障害物401に接近した場合だけでなく、坂S0より急勾配な坂S1に接近した場合にも、物体までの検出距離が坂検出最短距離未満となることがある。
【0108】
そして、ステップS4において、物体までの検出距離が坂検出最短距離以上であると判定された場合、処理はステップS5に進む。
【0109】
ステップS5において、判別部302は、検出された物体が坂の可能性があるか否かを判定する。具体的には、判別部302は、検出領域毎(受光素子202毎)の検出距離の水平方向(車幅方向)の変化に基づいて、検出された物体が坂の可能性があるか否かを判定する。
【0110】
図15は、自車両が、坂の前方において、坂の斜面に対してほぼ垂直な方向(坂が延びる方向にほぼ平行な方向)を向くように停車している場合の検出距離の水平方向の分布の例を示している。グラフの横軸は、自車両の正面方向を0度とした場合の水平方向の角度を示し、自車両に対して右方向の角度が正の値で示され、左方向の角度が負の値で示されている。グラフの縦軸は、各方向の検出距離を示している。
【0111】
この例のように、自車両が前方の坂の斜面に対してほぼ垂直な方向を向くように停車している場合、水平方向の検出距離はほぼ一定になる。ただし、自車両の前方に車幅より広い範囲にわたり水平方向に広がる面を持つ物体(例えば、壁等)があり、自車両がその面に対してほぼ垂直な方向に向くように停車している場合も、水平方向の検出距離は、
図15と同様に変化する。もちろん、この自車両の車幅より広い範囲にわたり水平方向に広がる面を持つ物体には、坂も含まれる。従って、判別部302は、水平方向の検出距離がほぼ一定であっても、前方の物体が坂であると確定することはできない。
【0112】
図16は、自車両が、坂の前方において、坂の斜面に対してやや右斜め方向を向くように停車している場合の検出距離の水平方向の分布の例を示している。グラフの横軸及び縦軸は、
図15と同様である。
【0113】
この例のように、自車両が前方の坂の斜面に対してやや右斜め方向を向くように停車している場合、検出距離は、右に行くに従って徐々に長くなるようになだらかに変化する。また、この場合、検出距離は、理想的には水平方向の角度に対して線形に変化する。ただし、例えば、自車両の前方に車幅より広い範囲にわたり水平方向に広がる面を持つ物体があり、自車両がその面に対してやや右斜め方向を向くように停車している場合も、水平方向の検出距離は、
図16と同様に変化する。従って、判別部302は、検出距離が水平方向になだらかに変化していても、前方の物体が坂であると確定することはできない。
【0114】
一方、自車両の前方に、車幅より広い範囲にわたり水平方向に広がる面を持つ物体とは異なる物体が存在する場合、検出領域毎の検出距離は、水平方向になだらかに変化しなくなる。
【0115】
例えば、
図17は、自車両が、坂の前方において、坂の斜面に対してやや右斜め方向を向くように停車している場合に、坂の途中に物体が存在するときの検出距離の水平方向の分布の例を示している。グラフの横軸及び縦軸は、
図15と同様である。
【0116】
この例のように、坂の途中に物体が存在する場合、物体が存在する方向の検出距離が急激に変化し、検出距離は、水平方向になだらかに変化しなくなる。なお、例えば、自車両が、車幅より広い壁の前方において、壁面に対してやや右斜め方向を向くように停車している場合に、壁面の一部に突起がある場合も、水平方向の検出距離は、
図17と同様に変化する。
【0117】
図18は、自車両の前方左方向に大きな物体が存在する場合の検出距離の水平方向の分布の例を示している。グラフの横軸及び縦軸は、
図15と同様である。
【0118】
この例のように、自車両の前方に大きな物体が存在する場合、物体が存在する方向の検出距離が急激に変化し、検出距離は、水平方向になだらかに変化しなくなる。
【0119】
以上により、判別部302は、検出領域毎の検出距離が水平方向になだらかに変化している場合、物体検出部312により検出された物体が坂の可能性があると判定する。なお、検出領域毎の検出距離が水平方向になだらかに変化している場合には、
図15に示されるように、水平方向の検出距離がほぼ一定の場合も含まれる。
【0120】
ここで、
図19を参照して、検出距離が水平方向になだらかに変化しているか否かの判定方法の例について説明する。
図19は、検出領域毎の検出距離の例を示すグラフである。グラフの横軸は、検出領域の番号を示し、縦軸は各検出領域の検出距離を示している。
【0121】
例えば、判別部302は、
図19に示されるように、検出領域毎の検出距離の最大値と最小値の差が所定の閾値Dth以内である場合、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定する。或いは、例えば、判別部302は、水平方向に隣接する各検出領域間の検出距離の差が全て所定の閾値以内である場合、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定する。
【0122】
また、例えば、判別部302は、統計的な手法を用いて、検出距離が水平方向になだらかに変化しているか否かを判定することも可能である。例えば、判別部302は、検出領域毎の検出距離の分散が所定の閾値以内である場合、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定する。
【0123】
以上の判定方法により、自車両が前方の坂の斜面に対してほぼ垂直な方向を向くように停車している場合、判別部302は、検出距離が水平方向になだらかに変化していると確実に判定することができる。一方、自車両が前方の坂の斜面に対して斜め方向を向くように停車している場合、以上の判定方法では、判別部302が、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定できない場合が想定される。すなわち、自車両が坂の斜面に対して斜め方向を向く角度が大きくなるほど、
図16を参照して上述した検出距離の水平方向の分布のグラフの傾きが大きくなる。そのため、例えば、検出領域毎の検出距離の最大値と最小値の差が閾値Dthを超え、検出距離が水平方向になだらかに変化していないと判定される場合が想定される。
【0124】
そこで、例えば、判別部302は、水平方向に隣接する各検出領域間の検出距離の差について、さらに隣接する領域間毎に差分をとる。例えば、検出領域A1と検出領域A2の間の検出距離の差をD1、検出領域A2と検出領域A3の間の検出距離の差をD2、検出領域A3と検出領域A4の間の検出距離の差をD3とすると、判別部302は、差D1と差D2の差分値DD1、差D2と差D3の差分値DD2を算出する。そして、判別部302は、算出した検出距離の差の差分値に基づいて、検出距離が水平方向になめらかに変化しているか否かを判定する。
【0125】
例えば、判別部302は、検出距離の差の差分値が全て所定の閾値以内である場合、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定する。或いは、例えば、判別部302は、検出距離の差の差分値の最大値と最小値の差が所定の閾値以内である場合、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定する。或いは、例えば、判別部302は、検出距離の差の差分値の分散が所定の閾値以内である場合、検出距離が水平方向になだらかに変化していると判定する。
【0126】
上述したように、自車両が前方の坂の斜面に対して斜め方向を向くように停車している場合、検出距離は、理想的には水平方向の角度に対して線形に変化する。従って、検出距離の差の差分値は、誤差を加味したとしても、ほぼ一定になる。そこで、以上のように検出距離の差の差分値に基づいて判定処理を行うことにより、自車両が前方の坂の斜面に対して斜め方向を向くように停車していても、検出距離が水平方向になだらかに変化していると確実に判定されるようになる。
【0127】
そして、ステップS5において、判別部302は、検出領域毎の検出距離(監視領域内の各方向の検出距離)が水平方向になだらかに変化している場合、検出された物体が坂の可能性があると判定し、処理はステップS6に進む。
【0128】
ステップS6において、衝突防止制御装置16は、発進制限を行う。具体的には、判別部302は、自車両の前方に坂の可能性がある物体が検出されたことを指令部303に通知する。指令部303は、発進制限信号を衝突防止演算装置32に供給する。
【0129】
衝突防止演算装置32の走行制御部41は、アクセルペダル検出器14により検出されるアクセルペダルの踏込量に関わらず、自車両の加速を抑制するように原動機制御装置18を制御する。例えば、走行制御部41は、自車両の加速度が所定の制限値以上にならないように、アクセルペダルの踏込量に対するスロットル開度を制限する。或いは、例えば、走行制御部41は、自車両の加速度が所定の制限値以上にならないように、アクセルペダルの踏込量に対するモータの回転数を制限する。そして、走行制御部41は、制限したスロットル開度又はモータの回転数の指令を原動機制御装置18に与える。
【0130】
このように自車両の加速が抑制されるため、自車両が急発進し、危険距離の範囲内にある前方の物体に衝突することが防止される。
【0131】
なお、このとき、後述するステップS8の処理で、自車両の前進が禁止されている場合、前進の禁止が解除された上で、発進制限が行われる。これは、例えば、坂の途中や壁の前に物体が存在し、検出された物体が坂の可能性がないと一旦判定された後、その物体が移動することにより、検出された物体が坂の可能性があると改めて判定された場合等が想定される。
【0132】
ステップS7において、判別部302は、検出された物体が登坂可能な坂であるか否かを判定する。
【0133】
ここで、
図20及び
図21を参照して、前方の物体が登坂可能な坂であるか否かの判定方法の例について説明する。
図20及び
図21は、車両Cが坂S2に接近した場合と、壁411に接近した場合の検出距離の変化を比較した図である。
【0134】
図20は、車両Cが発進する前の状態の例を示している。上側の図においては、車両Cは、坂S2の前方に停車している。下側の図においては、車両Cは、壁411の前方に停車している。なお、車両Cから坂S2までの検出距離、及び、車両Cからの壁411までの検出距離とも、危険距離より短い距離L4であるものとする。また、坂S2の勾配角は、
図11の坂S0の勾配角γ0より小さいものとする。
【0135】
この例の場合、上述したように、ステップS5において、自車両の前方の物体(坂S2又は壁411)が坂の可能性があると判定され、発進制限が行われる。そして、車両Cは、前進を開始した後、徐行しながら坂S2及び壁411に接近する。
【0136】
図21は、
図20に示される状態から、車両Cが同じ距離だけ坂S2及び壁411に接近した状態の例を示している。上側の図においては、車両Cは坂S2を登り始めた状態であり、車両Cから坂S2までの検出距離L5は、
図20の検出距離L4より長くなる。一方、下側の図においては、車両Cから壁411までの検出距離L6は、
図20の検出距離L4より短くなり、最終的に、坂検出最短距離Lminより短くなる。
【0137】
例えば、走行制御部41は、車速センサ12による車速の検出結果、及び、シフト位置検出器13によるシフトレバー又はセレクトレバーのポジションの検出結果等に基づいて、自車両の移動方向を検出する。走行制御部41は、検出結果を判別部302に供給する。
【0138】
なお、自車両の移動方向の検出方法には、任意の方法を採用することができる。例えば、走行制御部41は、自車両の走行制御装置から供給される走行情報に基づいて、自車両の移動方向を検出するようにしてもよい。
【0139】
判別部302は、自車両の移動方向が物体に接近する方向であるにも関わらず(自車両の物体の方向への移動が検出されているにも関わらず)、物体までの検出距離が、坂検出最短距離Lmin未満になる前に長くなった場合、検出された物体が登坂可能な坂であると判定する。一方、判別部302は、物体までの検出距離が坂検出最短距離Lmin未満になった場合、検出された物体は登坂可能な坂でないと判定する。
【0140】
そして、ステップS7において、検出された物体が登坂可能な坂でないと判定された場合、処理はステップS8に進む。
【0141】
一方、ステップS5において、判別部302は、検出領域毎の検出距離が水平方向になだらかに変化していない場合、検出された物体が坂の可能性がないと判定し、ステップS6及びS7の処理はスキップされ、処理はステップS8に進む。
【0142】
また、ステップS4において、物体までの検出距離が坂検出最短距離未満であると判定された場合、すなわち、検出された物体が登坂可能な坂でない場合、ステップS5乃至S7の処理はスキップされ、処理はステップS8に進む。
【0143】
ステップS8において、衝突防止制御装置16は、前進を禁止する。具体的には、判別部302は、自車両の前方に衝突する可能性がある物体が検出されたことを指令部303に通知する。指令部303は、前進禁止信号を衝突防止演算装置32に供給する。
【0144】
衝突防止演算装置32の走行制御部41は、自車両が前進していない場合、シフトレバー又はセレクトレバーのポジション、及び、アクセルペダルの踏込量に関わらず、自車両が前方に発進しないように原動機制御装置18を制御する。また、走行制御部41は、自車両が前進している場合、まず自車両を停止させた後、自車両が前方に発進しないように原動機制御装置18を制御する。
【0145】
なお、ここで、自車両の後方への発進については、必ずしも禁止する必要はない。以下、自車両の後方への発進を禁止しない場合について説明する。
【0146】
その後、処理はステップS2に戻る。そして、ステップS2において、物体が検出されなかったと判定されるか、ステップS3において、物体までの検出距離が危険距離を超えていると判定されるか、ステップS7において、検出された物体が登坂可能な坂であると判定されるまで、ステップS2乃至S8の処理が繰り返し実行される。
【0147】
一方、ステップS7において、検出された物体が登坂可能な坂であると判定された場合、処理はステップS9に進む。
【0148】
ステップS9において、衝突防止制御装置16は、発進制限を解除する。具体的には、判別部302は、自車両の前方に登坂可能な坂が検出されたことを指令部303に通知する。指令部303は、発進制限解除信号を衝突防止演算装置32に供給する。衝突防止演算装置32の走行制御部41は、発進制限を解除する。例えば、走行制御部41は、アクセルペダルの踏込量に対するスロットル開度又はモータの回転数の制限を解除する。これにより、自車両の通常走行が可能になる。
【0149】
その後、発進時衝突防止制御処理は終了する。
【0150】
一方、ステップS2において、物体が検出されなかったと判定されるか、ステップS3において、物体までの検出距離が危険距離を超えていると判定された場合、処理はステップS10に進む。
【0151】
ステップS10において、指令部303は、前進が禁止されているか否かを判定する。具体的には、判別部302は、危険距離の範囲内に物体が存在しないことを指令部303に通知する。指令部303は、上述したステップS8の処理で自車両の前進を禁止した状態のまま解除していない場合、前進を禁止していると判定し、処理はステップS11に進む。
【0152】
これは、例えば、自車両の前方の危険距離以内に登坂可能な坂以外の物体が検出され、前進が禁止されている場合に、物体が移動したり、自車両が後方に移動したりして、危険距離以内に当該物体が存在しなくなった場合等が想定される。
【0153】
ステップS11において、衝突防止制御装置16は、前進の禁止を解除する。具体的には、指令部303は、前進禁止解除信号を衝突防止演算装置32に供給する。衝突防止演算装置32の走行制御部41は、前進の禁止を解除する。これにより、自車両の通常走行が可能になる。
【0154】
その後、発進時衝突防止制御処理は終了する。
【0155】
一方、ステップS10において、前進が禁止されていないと判定された場合、ステップS11の処理はスキップされ、発進時衝突防止制御処理は終了する。
【0156】
以上のようにして、自車両が急発進し、前方の物体に衝突することが防止される。
【0157】
また、自車両の前方における坂の検出精度が向上し、登坂可能な坂が障害物と誤検出されことが防止される。これにより、自車両の前方が登坂可能な坂であるにも関わらず、自車両の発進が禁止されたり、加速が過度に抑制され、自車両が坂を登れなくなったりすることが防止される。
【0158】
<2.変形例>
以下、上述した本発明の実施の形態の変形例について説明する。
【0159】
{衝突防止制御装置の構成の変形例}
衝突防止制御装置の構成は、
図1及び
図2に示される例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することが可能である。
【0160】
例えば、レーザレーダ装置31と衝突防止演算装置32を統合したり、機能の分担を変更したりすることが可能である。
【0161】
例えば、レーザレーダ装置31と衝突防止演算装置32を一体化するようにしてもよい。この場合、例えば、レーザレーダ装置31が、警報装置17、原動機制御装置18、及び、ブレーキ制御装置19を制御する。
【0162】
また、例えば、レーザレーダ装置31の指令部303の機能を、衝突防止演算装置32に設けるようにしてもよい。この場合、例えば、監視領域内の物体の有無、物体の種類、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等の検出結果が、レーザレーダ装置31から衝突防止演算装置32に供給される。そして、衝突防止演算装置32が、レーザレーダ装置31から供給される検出結果に基づいて、発進制限又は前進の禁止を行うか否かを判定する。
【0163】
或いは、例えば、レーザレーダ装置31の判別部302及び指令部303の機能を、衝突防止演算装置32に設けるようにしてもよい。この場合、例えば、監視領域内の物体の有無、物体までの距離、物体の相対距離、物体の方向、検出領域毎の検出距離等の検出結果が、レーザレーダ装置31から衝突防止演算装置32に供給される。そして、衝突防止演算装置32が、検出された物体の種類の判別を行い、その結果に基づいて、発進制限又は前進の禁止を行うか否かを判定する。
【0164】
また、例えば、レーザレーダ装置31の制御部61と演算部65を統合したり、機能の分担を変更したりすることが可能である。
【0165】
さらに、例えば、受光素子202、TIA261、PGA262、ADC263の数を、必要に応じて増減することが可能である。
【0166】
{坂の可能性があるか否かの判定方法の変形例}
以上の説明では、検出領域毎の検出距離が水平方向になだらかに変化している場合に、検出された物体が坂の可能性があると判定する例を示した。
【0167】
しかし、例えば、道端にガードレールが存在する場合、ガードレールは路面より高い位置にあるため、ガードレールの検出距離は、路面の検出距離より若干短くなる。従って、坂の道端にガードレールが存在する場合、検出距離が水平方向になだらかに変化せず、坂の可能性がないと判定される可能性がある。しかし、
図10のステップS3の処理で用いられる危険距離はせいぜい数m程度であり、危険距離の範囲内においてレーザ光の広がりは、せいぜい車幅程度である。そのため、危険距離の範囲内に坂が存在する場合、坂の道端にあるガードレールが検出される可能性は非常に低いと想定される。従って、危険距離の範囲内に坂があるにも関わらず、道端のガードレール等の物体により、坂の可能性がないと誤判定される可能性は非常に低いと考えられる。
【0168】
ただし、例えば、道端の物体による誤判定をより確実に防止する対策を施すようにしてもよい。例えば、判別部302が、監視領域の左右の端部の所定の範囲を除いた範囲内において、検出距離が水平方向になだらかに変化している場合に、坂の可能性があると判定するようにしてもよい。或いは、例えば、判別部302が、監視領域の左端及び右端の少なくとも一方において、ガードレールの高さに相当する距離だけ検出距離が短く、他の範囲において、検出領域が水平方向になだらかに変化している場合に、道端にガードレールが設置された坂であると判定するようにしてもよい。
【0169】
{その他の変形例}
また、例えば、発進制限や前進の禁止を行う場合に、レーザレーダ装置31の指令部303が、運転者への警報を通知制御部42に指令するようにしてもよい。そして、通知制御部42が、運転者への警報を警報装置17に実行させるようにしてもよい。例えば、通知制御部42が、ディスプレイに警告画面を表示させたり、インジケータランプを点灯又は点滅させたり、警告音やブザー等を鳴らしたりして、運転者への警報を行うようにしてもよい。
【0170】
{本発明の適用範囲等について}
本発明は、上述した例以外にも、車両に設けられ、所定の監視方向に測定光を投光し、測定光の反射光の強度に基づいて物体の検出を行う装置やシステムに適用することができる。
【0171】
例えば、本発明は、測定光を監視方向に同時に投光し、複数の受光素子により反射光を同時に受光する形式のレーザレーダ装置だけでなく、測定光を水平方向に走査しながら反射光を受光する走査型のレーザレーダ装置を用いる場合にも適用することができる。
【0172】
図22は、走査型のレーザレーダ装置501の構成例を示している。レーザレーダ装置501は、制御部511、駆動回路512、スキャナ513、走査位置検出部514、測定部515、及び、演算部516を含むように構成される。スキャナ513は、発光素子521、投光レンズ522、受光レンズ523、及び、受光素子524を含むように構成される。
【0173】
駆動回路512は、制御部511の制御の下に、発光素子521の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
【0174】
発光素子521は、例えば、レーザダイオードからなり、駆動回路512の制御の下に、測定光(レーザパルス)の発光を行う。発光素子521から発光された測定光は、投光レンズ522を介して、自車両の前方に投光される。このとき、スキャナ513は、制御部511の制御の下に、測定光を監視領域内において水平方向に走査する。
【0175】
走査位置検出部514は、スキャナ513における測定光の水平方向の走査位置を検出し、検出結果を制御部511及び演算部516に供給する。
【0176】
受光素子524は、例えば、フォトダイオードからなる。受光素子524は、受光レンズ523を介して、測定光の反射光を受光する。受光素子524は、受光した反射光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部515に供給する。
【0177】
測定部515は、
図8の測定部64と同様に、受光素子524から供給されるアナログの受光信号に基づいて、反射光に対する受光値の測定を行い、測定した受光値を示すデジタルの受光信号を演算部516に供給する。なお、受光素子524が1つのみなので、測定部515は、
図8の測定部64と異なり、TIA、PGA及びADC(いずれも不図示)は、それぞれ1つずつ設けられる。
【0178】
演算部516は、
図9の演算部65と同様に、測定部515から供給される受光信号に基づいて、監視領域内の物体の有無、物体の種類、物体までの距離、物体の方向、物体の相対速度等の検出を行う。演算部516は、検出結果を制御部511に供給する。また、演算部516は、検出結果に基づいて、自車両の発進、加速、運転者への警報等に関する指令を衝突防止演算装置32に行う。
【0179】
また、本発明は、レーザ以外の測定光やミリ波等を用いたレーダ装置を用いる場合にも適用することが可能である。
【0180】
さらに、以上の説明では、車両が前方に進む場合を例に挙げて説明したが、本発明は、車両が後方に進む場合にも適用することができる。例えば、車両の後方への発進時も同様に、
図10を参照して上述した処理と同様の処理により、車両の後方を監視して、後方の物体への衝突を防止するとともに、後方の坂を登れるようにすることができる。
【0181】
また、本発明を適用する車両の種類は、特に限定されるものではない。例えば、本発明は、二輪車、三輪トラック、小型トラック、小型乗用車、大型乗用車、大型バス、大型トラック、大型特殊車、小型特殊車等の車両に適用することができる。
【0182】
{コンピュータの構成例}
なお、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0183】
図23は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0184】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)601,ROM(Read Only Memory)602,RAM(Random Access Memory)603は、バス604により相互に接続されている。
【0185】
バス604には、さらに、入出力インタフェース605が接続されている。入出力インタフェース605には、入力部606、出力部607、記憶部608、通信部609、及びドライブ610が接続されている。
【0186】
入力部606は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部607は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部608は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部609は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ610は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア611を駆動する。
【0187】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU601が、例えば、記憶部608に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース605及びバス604を介して、RAM603にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0188】
コンピュータ(CPU601)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア611に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0189】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア611をドライブ610に装着することにより、入出力インタフェース605を介して、記憶部608にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部609で受信し、記憶部608にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM602や記憶部608に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0190】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0191】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。