(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路は、前記第1のフレームの撮像によって取得した第1の画像から得られる対象物の第1の輝度と、前記第2のフレームの撮像によって取得した第2の画像から得られる前記対象物の第2の輝度とに基づいて、前記対象物までの距離情報を生成するように構成されている、請求項1に記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1の光源の発光量および前記第2の光源の発光量に応じて、前記第1の輝度および前記第2の輝度の少なくとも一方を補正して前記距離情報を生成するように構成されている、請求項2または3に記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1の光源の発光量と前記第2の光源の発光量とを、前回以前の撮像によって得た前記第1および第2の画像のそれぞれにおけるS/N比に基づいて制御するように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1の光源の発光量と前記第2の光源の発光量とを、前回以前の撮像によって得た前記第1および前記第2の画像のそれぞれにおける輝度分布に基づいて制御するように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1の光源の発光量と前記第2の光源の発光量とを、前回以前の撮像によって得た前記第1および前記第2の画像のそれぞれにおける対象物の距離および運動量の少なくとも一方に基づいて制御するように構成されている、請求項1から6のいずれかに記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1および第2の画像の少なくとも一方に対象物の像が含まれていないとき、前記対象物の像を含まない画像を取得する際に発光していた前記第1および第2の光源の一方を消灯または低出力の状態に変更するように構成されている、請求項1から7のいずれかに記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1および第2の光源の一方を消灯または低出力状態に変更した状態で取得した前記第1および第2の画像の一方を、他方の画像から減算することにより、背景光の影響を低減させるように構成されている、請求項8に記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1から第3の画像の少なくとも1つに対象物の像が含まれていないとき、前記対象物の像を含まない前記第1から第3の画像の少なくとも1つを取得する際に発光していた前記第1から第3の光源の少なくとも1つを消灯または低出力の状態に変更するように構成されている、請求項11に記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1から第3の光源の少なくとも1つを消灯または低出力の状態に変更した後、その光源の発光時に取得されるフレームの撮像をスキップするように構成されている、請求項12に記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1から第3の光源の少なくとも1つを消灯または低出力の状態に変更した後、その光源に対応するフレームの撮像によって取得した画像を、出力が変更されていない他の光源に対応するフレームの撮像によって取得した画像から減算するように構成されている、請求項12に記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1から第3の光源の少なくとも1つを消灯または低出力の状態に変更した後、出力が変更されていない光源の発光時に取得される画像における対象物の距離および運動量の少なくとも1つの情報に基づいて、消灯または低出力の状態に変更した光源を通常の発光状態に復帰させるように構成されている、請求項12から14のいずれかに記載のモーションセンサ装置。
前記制御回路は、前記第1のフレームの撮像によって取得した前記第1の画像から得られる前記対象物の輝度、前記第2のフレームの撮像によって取得した第2の画像から得られる前記対象物の輝度、および前記第3のフレームの撮像によって取得した第3の画像から得られる前記対象物の輝度に基づいて、前記対象物までの距離情報を生成するように構成されている、請求項11から15のいずれかに記載のモーションセンサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本開示によるモーションセンサ装置によって対象物(被写体)までの距離を測定することができる基本原理を説明する。
【0022】
図1Aは、モーションセンサ装置の断面を模式的に示す図である。
図1Bは、
図1Aの上面図である。
【0023】
図1Aおよび
図1Bに示されている装置は、中央に位置するイメージセンサ101と、イメージセンサ101の両側に位置する2個の光源装置102、103とを備えている。図示されている例では、イメージセンサ101および光源装置102、103は、1個の基板100に搭載されている。イメージセンサ101は、多数の微細な光検知セル(フォトダイオード)が行および列状に配列された固体撮像素子である。イメージセンサ101は、典型的にはCCD(Charge Coupled Device)型またはCMOS型である。以下の説明では、光源装置を単に「光源」と称することがある。
【0024】
図1Aには、第1の光源102から出た光102aと第2の光源103から出た光103aとが模式的に示されている。この装置は、光源102、103を交互に点灯させながら、撮像を行うことにより、計測対象物体(対象物)までの距離を測定することができる。なお、「距離の測定」は、イメージセンサから対象物までの距離の推定値、あるいは、空間内の対象物の位置の推定値を求めることを含む。対象物には、例えば、人の手、指、人が持つペンなどが含まれ得る。対象物は移動してもよい。高速で移動しつつある人の指先までの距離、または指先の位置の推定値をリアルタイムで取得することができる3次元モーションセンサ装置は、コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、ゲーム機器、および家電機器を含む多様な電子機器の「入力デバイス」として使用され得る。
【0025】
図2は、光源102、103の各々から出た光の放射パターン(配光特性)を表すグラフである。グラフの横軸は、
図3に示されるように、放射の方向が基板100の法線方向Nに対して形成する角度θである。グラフの縦軸は、相対放射強度である。以下、放射の角度θを「放射角」と称する場合がある。なお、相対放射強度の値は、光源から特定角度の方向に離れた位置に置かれた対象物の照度(放射照度)に対応している。
【0026】
図2からわかるように、光源102、103の各々から出た放射は、角度θが0°のとき、最も高い強度を示す。
図2の例において、光源102、103は、その放射強度がI
0×cosθで近似できるような配光特性を示している。ただし、これは一例であり、光源102、103の配光特性は
図2の例に限定されない。また、光源102、103から出る放射は、可視光に限定されず、赤外線のように人間の視覚によって感じとれない波長域の電磁波であってもよい。本明細書では、簡単のため、光源から出る放射を単に「光」と称する場合がある。この「光」の用語は、可視光に限定されず、イメージセンサで検出可能な電磁波を広く含む。
【0027】
次に、上記の装置で対象物までの距離を測定する方法を説明する。
【0028】
まず、
図4Aおよび
図4Bを参照する。
図4Aには、第1の光源102から放射された光で対象物104が照射され、対象物104で反射された光の一部がイメージセンサ101に入射する様子が示されている。一方、
図4Bには、第2の光源103から放射された光で対象物104が照射され、対象物104で反射された光の一部がイメージセンサ101に入射する様子が示されている。対象物104の位置は、
図4Aおよび
図4Bで実質的に同じであるとする。
【0029】
この装置によれば、第1の時刻において、
図4Aに示すように、光源102を点灯し、光源103を消灯させた状態でイメージセンサ101による第1の撮像を行う。次に、第2の時刻において、
図4Bに示されるように、光源103を点灯し、光源102を消灯させた状態でイメージセンサ101による第2の撮像を行う。第1および第2の撮像の各々の期間(露光時間)は、対象物104が実質的に停止していると扱える程度に十分に短いと仮定する。
【0030】
第1の撮像を行うとき、光源102から出た光の一部が対象物104によって反射されてイメージセンサ101に入射するため、イメージセンサ101に入射する光の強度に応じた輝度画像が得られる。同様に、第2の撮像を行うときは、光源103から出た光の一部が対象物104によって反射されてイメージセンサ101に入射するため、イメージセンサ101に入射する光の強度に応じた輝度画像が得られる。
【0031】
第1および第2の撮像によって取得した2フレームの画像の各々に基づいて、対象物104の輝度(輝度分布または輝度像)を求めることができる。なお、本明細書における「輝度」とは、[カンデラ/m
2]の単位を有する心理物理量ではなく、イメージセンサの画素ごとに定まる「相対輝度」である。本明細書における「輝度」は、光量または放射量に相当する。各フレームの画像を構成する各画素は、受光量に応じた「輝度値」を有する。
【0032】
対象物104には大きさがあるため、各画像における対象物104の像は、通常、複数の画素によって構成される。対象物104の「輝度」は、対象物104の像を構成する複数の画素の輝度値から種々の方法によって決定することができる。対象物104の像のうち、最も明るい「画素」または「画素ブロック」の輝度を対象物104の輝度とすることも可能であるし、対象物104の像を構成する全ての画素の平均輝度を対象物104の輝度とすることもできる。
【0033】
図5は、上述の方法で取得した2フレームの画像の各々において、対象物104の像を横切る一本の水平ラインの輝度値を示すグラフである。横軸は画像内の特定の水平ライン上における画素位置であり、縦軸は相対輝度である。グラフ中の曲線301は光源102が点灯しているときの輝度であり、曲線302は光源103が点灯しているときの輝度である。ここで、「水平ライン」とは、画像の横方向のラインを意味する。この実施形態では、光源102、103の配列方向が、イメージセンサ101によって取得される画像の横方向に対応している。このため、画像内の対象物が存在する水平ライン上の相対輝度の分布を考える。光源102、103の配列方向が画像の横方向とは異なる方向に対応している場合は、その対応する方向についての相対輝度の分布を考慮すればよい。
【0034】
図5の例では、曲線301および曲線302は、それぞれ、単峰性のピークを有している。すなわち、曲線301は、ある画素位置で極値303を示し、曲線302は、他の画素位置で極値304を示している。
【0035】
前述したように、2フレームの間に対象物104は実質的に静止している。したがって、曲線301と曲線302との間にある相違は、光源102が作る放射のパターンと光源103が作る放射のパターンとが異なることに起因している。光源102から出た光が対象物104で反射されてイメージセンサ101に入射して取得される像の輝度と、光源103から出た光が対象物104で反射されてイメージセンサ101に入射して取得される像の輝度との比率は、光源102から対象物104までの距離と光源103から対象物104までの距離との関係に依存する。
【0036】
撮影した画像の輝度比から、物体の距離が計測できる。
図6は、イメージセンサ101の撮像面の法線から45度の角度の方向における距離と輝度比との関係の一例を示すグラフである。
図6のグラフの横軸は、
図2の特性を示す光源をイメージセンサ101から左右に所定の距離だけ離して配置した場合における対象物までの相対的な距離を示している。縦軸は、輝度比を示している。横軸の「距離」は、イメージセンサ101と光源との距離を基準としている。「1」の距離は、イメージセンサ101と光源との距離に等しい大きさを意味している。
【0037】
対象物の輝度(または照度)は、光源から対象物までの距離の二乗に反比例して減衰する。このため、距離に応じて輝度の比は変化する。
図2に示す放射特性が既知であるため、この放射特性に基づいて、精度の高い距離の検出または推定が可能である。
【0038】
図6は、放射角θが45度のときの距離と輝度比との関係の一例であるが、異なる複数の角度について、同様に距離と輝度比との関係を事前に得ることができる。対象物の角度は、イメージセンサで取得される対象物の撮像位置に基づいて求めることができる。
【0039】
図6からわかるように、対象物とイメージセンサとの距離が概ね1よりも離れている場合、極値303と極値304との比から距離を計測できる。
【0040】
対象物の輝度比の求め方には、多くの方法が存在する。最も簡単な方法は、
図5に示す輝度の極大値303と他の極大値304との比をそのまま輝度値とする方法である。極値303の座標と極値304の座標とが必ずしも一致しなくとも、対象物の材質が対象領域内で概ね均一であり、局所的な距離差を微小なものとして無視すれば、距離計算の輝度比としてこれらの極値303、304の比を輝度比として用いることが可能である。
【0041】
また、撮像における光ショットノイズなどのノイズを抑える観点から、画像上の対象物の領域内の輝度値を積分した値の比を輝度比としてもよい。
【0042】
さらに、被写体の局所的な材質の違いまで考慮に入れる場合、例えば非特許文献2、3に開示されている照度差ステレオ法などの技術を用いることもできる。照度差ステレオ法の計算量は多いが、物体表面の法線ベクトル、即ち表面の傾きや、反射率や粗さなどの材質パラメータをある程度類推することにより、より精度の高い輝度比を求めることが可能である。照度差ステレオ法では、局所的な領域内の光量が不変であると仮定したり、物体が連続体であると仮定したりするなど、固定するパラメータを変えることにより、計算方法は変化する。モーションセンサ装置の用途に応じてターゲットとする面形状を、例えば特定の方程式で表される形状として近似することで効率的に計算することも可能である。
【0043】
上記の例では、放射角に応じて相対放射強度が変化する光源を用いている。しかし、この測定方法は、このような特性を有しない光源を用いても可能である。平行光線を発する光源以外であれば、光強度は3次元空間内で何らかの配光特性を示すため、そのような光源も距離測定に利用可能である。例えば、配光が等方的な「点光源」でも、対象物上の照度および輝度は、光源からの距離の2乗に反比例して減衰するため、3次元空間的に異なる輻射パターンを持つ光源と言える。
【0044】
次に、
図7Aおよび
図7Bを参照する。これらの図は、
図4Aおよび
図4Bに示される位置から移動した対象物104に対する撮像を行う様子を示している。高速な撮像および距離の推定を行うことができれば、移動する対象物104に対しても、前述した方法で距離の測定が可能である。光源102、103による交互の照明とイメージセンサ101による撮像を繰り返すことにより、移動する対象物104の位置を検出することができる。その結果、対象物104の位置の変化、または運動を検知することが可能になる。
【0045】
本発明者によると、上述した装置では、2個の光源102、103の各々から対象物104までの距離が等しくなる領域において、距離の測定精度が低下することがわかった。本明細書では、このような領域を「低感度領域」と称する。また、
図6のグラフの横軸に示す距離が1以下のとき、距離が短くなるほど輝度比が上昇するため、輝度比だけでは、対象物体までの距離が1以下の「至近距離領域」にあるのか否かを判別できない。
【0046】
図8は、上記の装置による低感度領域を模式的に示す図である。
図8には、距離が短すぎて発生する低感度領域504と、距離に関わらず輝度比が1に近くなることによって発生する低感度領域505とが示されている。
【0047】
本発明者の検討によれば、このような低感度領域の発生を回避するためには、光源の数を3個以上に増やせばよい。
【0048】
図9は、3個の光源102、103、104を備えるモーションセンサ装置の一例を示す図である。第2の光源103は、第1の光源102および第3の光源104よりもイメージセンサ101の近くに配置されている。このように、
図9に示す例では、3つの光源102、103、104は、イメージセンサ101に対して非対称に配置されている。このような配置に限らず、光源102、103、104は、イメージセンサ101に対して対称的に配置されていてもよい。例えば、光源103がイメージセンサ101と同じ位置に設けられ、光源102、104がイメージセンサ101に対して対称的に配置されていてもよい。第1の光源102、第2の103、および第3の104を順次発光させながらイメージセンサ101でフレームの撮像を連続的に行うことにより、第1の画像、第2の画像、および第3の画像がそれぞれ取得される。
【0049】
図9には、第1および第2の画像から距離情報を求めた場合の低感度領域605と、第2および第3の画像から距離情報を求めた場合の低感度領域606とが模式的に示されている。第1および第2の画像に基づいて対象物の距離を算出する場合、光源102、103の各々からの距離が等しい領域を中心に低感度領域605が発生する。一方、第2および第3の画像に基づいて対象物の距離を算出する場合、光源103、104の各々から距離が等しい領域を中心に低感度領域606が発生する。この構成例では、光源103がイメージセンサ101の近傍に配置されているため、
図8に示すような至近距離における低感度領域504は発生しない。
【0050】
図9に示すような構成を採用し、対象物の位置に応じて距離計測に用いる画像のペアを適切に選択することにより、低感度領域を除去することができる。具体的には、対象物がイメージセンサ101よりも右側に位置するときには、第1および第2の画像を選択し、対象物がイメージセンサ101よりも左側に位置するときには、第2および第3の画像を選択すればよい。
【0051】
以上のような複数の光源を連続的に発光させるセンサシング方式は、電力消費が大きいという課題がある。電力消費を抑える従来技術には、上述のように、特許文献2、3の技術がある。
【0052】
特許文献2の技術は、TOF方式の距離計測に関している。この技術では、近距離に物体がある場合は、光源装置の発光を弱くすることにより、電力効率を高くすることができる。
【0053】
しかし、特許文献2の技術は、TOF方式には有効であるが、本開示が主に対象とする上記の方式には適合しない。TOF方式においては、出射光と反射光との時間差に基づいて距離を計測するため、発光装置の発光輝度レベルは計測範囲には大きく影響するが、計測精度にはそれほど影響しない。これに対し、本開示が主に対象とする、複数の画像における輝度の相互関係に基づいて距離計測を行う方式では、光源の発光輝度レベルの変動は、計測精度に大きく影響する。このため、発光輝度レベルの変動可能な範囲は、この計測精度に大きく制約を受ける。出力される複数の画像の輝度比を保ったまま輝度レベルを低下させた場合であっても、測定精度は対象物に最も遠い光源の出力に律速するので、その光源の発光量が低下すると、計測精度も低下する。
【0054】
また、待機時においても、対象物が再び計測可能範囲に入ることを監視するために、計測可能範囲全域の計測、即ち最大輝度での発光を続ける必要がある。
【0055】
特許文献3は、計測範囲内に対象被写体が存在しない場合に待機電力を低減する技術を開示している。特許文献3の装置は、測距センサに加えて、計測精度は低いが電力消費の少ない熱型赤外線センサ(焦電センサ)を備える。この装置は、対象被写体を見失った際に、電力の少ない焦電センサでの検知に切り替え、対象物が再び計測範囲に入るまで待機する。焦電センサで対象物が再び計測範囲内に入ったことを検知した場合、再び計測精度の高い測距センサによる計測を再開する。
【0056】
このような別のセンサを追加した構成であれば、待機時の電力消費を抑えることができる。しかし、追加したセンサの分だけコストが増加する。さらに、追加したセンサの検出範囲と距離計測用のセンサの検出範囲とが一致しない場合、期待しない動作を引き起こすという問題がある。この検出範囲不一致の問題は、モーションセンサ装置においては特に重大である。両センサの検出範囲が一致しない場合、計測可能な範囲内に対象物が入ったことを見過ごしたり、逆に、計測できない位置に対象物が存在するにも関わらず待機状態を終了したりすることがある。その結果、待機状態と動作検出状態との行き来を繰り返してしまうなどの期待しない動作を引き起こす。
【0057】
本願発明者は、上記の課題を見出し、本開示の技術を完成させた。本開示は、対象物の輝度比に基づく従来の距離計測方式を、リアルタイムに動作するモーションセンサ装置として構成した場合に好適な新たな発光制御方式を提案する。本開示の一態様に係るモーションセンサ装置は、複数の光源の発光量を、前回以前の撮像によって得た情報に基づいて個別に制御する。さらに、各光源の発光量に応じて、取得した複数の画像の輝度を補正した上で、距離情報を生成する。これにより、従来技術の単純な適用では回避できない課題を解決することができる。
【0058】
複数の画像における輝度比に基づいて対象物までの距離を求める場合、最終的な距離の計測精度は、輝度比の精度に強く依存する。輝度比は、2つの輝度の除算によって算出される。一般に、除算の結果の精度は、除数と非除数のうちの精度の低い方に律速される。このため、一方の輝度の精度が高くても他方の輝度の精度が低いと、輝度比の精度は低くなる。
【0059】
また、画像における輝度の精度は、主に光ショットノイズおよび暗電流によるノイズの影響を受ける。光ショットノイズは輝度の平方根に比例する。暗電流によるノイズは一定値である。これらのノイズの比率は事前に計測可能である。
【0060】
したがって、本開示のある実施形態におけるモーションセンサ装置は、これらのノイズを考慮して輝度の精度を逆算し、その結果に応じて各光源の発光量を個別に制御する。各光源の発光量は、輝度の精度を確保できる範囲で最低になるように調整され得る。このモーションセンサはさらに、複数の光源の発光量の変動に応じて、イメージセンサから出力される複数の画像の輝度を補正する。これにより、あたかも一定の輝度比率で複数の光源が発光したかのような輝度情報に基づいて距離計算を行うことができる。
【0061】
さらに、計測精度を高める上で必要性が低い光源に関しては個別に消灯したり、非常に弱い発光量の状態(低出力状態)に変更したりすることも可能である。消灯または低出力状態にした光源に対応するフレームの撮像に関しては、露光(すなわち撮像)そのものを取りやめることも可能である。露光を行った場合でも、その画像フレームを距離計算には用いずに、後述する背景光画像として利用することもできる。
【0062】
以上のような制御により、計測輝度を確保する上で最低限必要な発光量に抑えた最適化された動作が可能となる。
【0063】
本開示では、さらに、計測対象が存在しない場合に、最低限の発光のみで動作中の検出範囲と完全に一致する範囲を監視できる待機モードを実現できる。待機モードでは、最低限の発光によって対象物が検出範囲に入ったことを検知したときに待機モードを解除し、通常のモードに戻ることができる。
【0064】
また、本開示における条件依存で動的且つ選択的に利用可能になる背景光除去機能は、動作中に補助情報として利用することにより、検出精度のさらなる向上が可能である。特に、対象物の検出がなされていない待機状態で背景光除去機能を適用することは、ユーザーインターフェースとして利用されたときの利便性をさらに向上させる。
【0065】
以下、上記の検討に基づく本開示の具体的な実施形態を説明する。
【0066】
(実施形態1)
図10は、本開示の実施形態1に係るモーションセンサ装置の構成を示す図である。このモーションセンサ装置は、イメージセンサ501と、3個の光源(第1の光源502、第2の光源503、および第3の光源504)と、これらを制御する制御回路(演算ブロック)531とを備えるモーションセンサ装置の構成を模式的に示す図である。イメージセンサ501および光源502〜504は、基板500上に搭載されている。イメージセンサ501および光源502〜504をまとめて、「センサブロック530」と称することがある。
【0067】
制御回路531は、CPUもしくはその他の半導体集積回路、またはこれらの組み合わせによって構成され得る。制御回路531は、上述した3連続露光による3つの画像フレームの撮像の制御に加え、取得された3つの画像から背景光の成分を除去する処理、輝度を補正する処理、およびこれらの処理を経た3つの画像から選択した2つの画像に基づく距離算出処理を実行する。制御回路531は、これらの処理を実行するための機能ブロックとして、3つの発光制御部511、512、513と、露光制御部514と、画像入力部515と、背景画像選択部516と、背景画像除去部517、518、519と、輝度補正部520、521、522と、発光量記憶部523、524、525と、露光量記憶部526と、距離情報生成部527と、距離情報記憶部528と、センサ制御部529とを有する。制御回路531の少なくとも一部は、基板500上に実装されていてもよいし、他の基板上に実装されていてもよい。また、制御回路531の機能の一部が、離れた位置に置かれた電子装置によって実現されていてもよい。
【0068】
図11は、このモーションセンサ装置における光源とイメージセンサの制御タイミングを示すタイムチャートである。
図11に示される期間802、803、804は、それぞれ、光源502、503、504が点灯する期間に相当する。第1の露光期間805、第2の露光期間806、第3の露光期間807は、それぞれ、イメージセンサ701による第1フレーム、第2フレーム、および第3フレームの撮像に対応する。
図11に示すタイムチャートでは、光源702、703、704は、この順序で点灯しているが、点灯の順序は任意である。
【0069】
通常のイメージセンサは、1回の露光により1フレームの撮像を行い、得られた画像データを外部に読み出してから次のフレームの撮像を行う。すなわち、フレームごとに画像データの読み出し動作が実行される。そのようなイメージセンサによると、第nフレーム(nは整数)における露光が終了した後、第n+1のフレームの露光を開始するまでの間に、第nフレームの撮像によって得られた全部の電荷を転送して外部に出力する動作のための時間を要する。
【0070】
しかし、本実施形態では、
図11に示されるように、第1の露光期間805のあと、すぐに第2の露光期間806が始まり、その後、すぐに第3の露光期間807が始まる。第1の露光期間805において第1フレームの撮像が行われて生じた各画素の電荷は、第2の露光期間806が始まる前に記憶部に移され、その記憶部に蓄積される。第2の露光期間806において第2フレームの撮像が行われて生じた各画素の電荷は、第3の露光期間807が始まる前に記憶部に移され、その記憶部に蓄積される。その後、記憶部に蓄積されていた電荷および第3の露光期間807に発生した電荷の信号が期間Ttに読み出され、外部に出力される。
【0071】
本実施形態では、第1〜第3の露光期間の各長さを「Te」とするとき、「3×Te+Tt」に等しい長さTfの逆数(1/Tf)で決まるレートで、3枚のフレーム画像のデータが読み出される。
【0072】
時間Ttは、画素数にも依存するが、データ転送レートを考慮して、例えば30ミリ秒程度の大きさに設定され得る。一方、時間Teは、1ミリ秒以下の短い期間、例えば25マイクロ秒に設定され得る。3枚のフレームの撮像を短い期間内に連続して実行すれば、対象物が人の指先のように高速に移動する場合でも、距離計測を行うことが可能になる。例えば3×Teが75マイクロ秒の場合、対象物が1メートル/秒の速度で移動しても、第1〜第3の撮像中に対象物は0.075ミリメートルしか移動しない。一方、通常のフレームレート(例えば60フレーム/秒)で撮像を行えば、対象物は50ミリメートルも移動してしまう。仮に1000フレーム/秒の高速度撮影を行っても、対象物は3ミリメートルも移動する。本実施形態では、第1のフレームの開始時点から第2のフレームの終了時点までの期間を例えば3ミリ秒以下に短縮できるため、モーションセンサ装置として各種の用途に実用的である。
【0073】
本実施形態の構成では、第1から第3のフレームの撮像で取得された3枚の画像に基づいて対象物までの距離を算出することができる。十分に短い時間に強い発光条件の元で撮影されたフレームの輝度は、ほぼ反射光の強度に比例する。ここで、第1のフレームに写った対象物の輝度を「第1の輝度」、第2のフレームに写った対象物の輝度を「第2の輝度」、第3のフレームに写った対象物の輝度を「第3の輝度」と呼ぶことにする。対象物と各光源との位置関係によって定まる角度および距離に応じて各輝度が決定される。前述のように、これらの輝度の比から対象物の距離を推定できる。
【0074】
本実施形態では、連続して3フレームの撮像が可能な、やや高価なイメージセンサを使用することにより、高速で移動する対象物までの距離、または対象物の3次元的な運動を検出することができる。計測対象である物体の移動速度が十分に低いことが想定される場合は、通常の1フレーム露光のイメージセンサを用いても良い。
【0075】
次に、再び
図10を参照して、本実施形態に係るモーションセンサ装置の構成および動作をより詳しく説明する。
【0076】
光源502、503、504は、例えばLED光源などの、光強度が3次元空間的に異なる輻射パターンをもつ投射光を発光できる発光装置である。光源502、503、504は、可視光に限らず、近赤外線などの不可視光を発するように構成されていてもよい。光源502、503、504は、LED光源に限らず、点光源などの3次元的に強度分布に偏りのある光源であればどのような光源でも利用可能である。レーザー光源を利用することもできる。レーザー光源は平行光を出射するため、3次元的に光強度が変わらないが、拡散板と組み合わせて散乱光に変換することで利用可能になる。複数の発光デバイスを組み合わせて1つの光源装置としてもよい。
【0077】
イメージセンサ501は、例えば非特許文献1に開示されているような、フレーム読み出しを行うことなく複数枚の個別露光が行えるセンサであり得る。図示されていないが、イメージセンサ501には、撮像面に像を形成するようにレンズが対向して配置される。イメージセンサ501は、画素単位で電荷をいったん蓄積しておく記憶部を有している。従って、第nフレームの撮像によって得られた画像データの読み出しを待たずに第n+1フレームの撮像が行える。イメージセンサ501内の記憶部を増やすことにより、3フレーム以上の連続した露光が可能である。イメージセンサ501としては、偶数/奇数ラインで別々に露光できる特殊センサであってもよい。イメージセンサ501は、典型的にはCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサであるが、これらに限定されない。
【0078】
制御回路531は、センサブロック530の動作を制御するとともに、イメージセンサ501から出力された画像を示す信号(以下、単に「画像」と称する。)を処理して距離情報を生成する。以下、制御回路531の詳細な構成および動作を説明する。まず、通常のモーションセンシング動作中の制御回路531の各構成要素の動作を説明する。
【0079】
発光制御部511、512、513は、光源502、503、504を、発光量記憶部(メモリ)523、524、525に格納された発光量を示す情報(値)に基づいて駆動する。
【0080】
まず、第1の時間で、発光制御部511は、発光量記憶部523に格納された値が示す発光量で光源502を発光させる。同時にイメージセンサ501は露光を行い、第1のフレームの撮像を行う。
【0081】
続いて、第2の時間で、発光制御部512は、発光量記憶部524に格納された値が示す発光量で光源503を発光させる。同時にイメージセンサ501は露光を行い、第2のフレームの撮像を行う。
【0082】
第3の時間で、発光制御部513は、発光量記憶部525に格納された値が示す発光量で光源504を発光させる。同時にイメージセンサ501は露光を行い、第3のフレームの撮像を行う。
【0083】
ここで、「発光量」とは、イメージセンサ501の1回の露光時間中の発光エネルギの総量を意味する。発光量は、発光時間の増減や発光輝度の増減によって変化する。
【0084】
イメージセンサ501の露光時間は、露光量記憶部(メモリ)526に格納された露光量を示す情報にしたがって露光制御部514から送出される信号によって制御される。
【0085】
ここで「露光量」とは、1回の露光時間中にイメージセンサ501の撮像面に入射する光のエネルギの総量を意味する。露光量は、イメージセンサ501の露光時間と絞り量によって決定される。
【0086】
このようにして、センサブロック530で露光によって取得された第1、第2、第3のフレームは、制御回路531の画像入力部515に入力される。
【0087】
画像入力部515は、受け取った第1、第2、第3のフレームを、それぞれ背景画像除去部517、518、519と、背景画像選択部516とに送る。
【0088】
背景画像選択部516は、センサ制御部529からの信号に応じて、第1、第2、第3のフレームにおける輝度値、または固定値としての0を、背景画像フレームの輝度値として選択する機能を有する。この選択は、本実施形態では画像ごとに行われるが、画素ごとに行ってもよい。通常のモーションセンシング動作中の状態では、背景画像選択部516は、固定値としての0を選択する。これは、背景光の除去を行わないことを表す。一方、第1から第3のフレームのうち、いずれかを背景光画像として処理する場合には、センサ制御部529は、そのフレームの輝度値を選択するように背景画像選択部516に指示する。背景画像選択部516は、上記のように輝度値を選択することによって生成した背景光画像を示すフレームを、背景画像除去部517、518、519に送出する。
【0089】
背景画像除去部517、518、519は、画像入力部515から送られてきた撮影された画像のフレームから、背景画像選択部516から送られてきた背景画像フレームを減算する。ここで、第1のフレーム(または画像)から第2のフレームを減算するとは、第1のフレームの各画素の値から、第2のフレームの対応する画素の値を減算した値を輝度値とする新たなフレームを生成することを意味する。背景画像除去部517、518、519は、減算処理後のフレームをそれぞれ輝度補正部520、521、522へ送る。
【0090】
輝度補正部520、521、522は、背景画像除去部517、518、519からそれぞれ贈られてきた画像のフレームを、それぞれ発光量記憶部523、524、525に格納された情報が示す発光量に応じて補正する。具体的には、発光量の逆数を各画素の輝度値に乗じる。こうすることで光源502、503、504の発光量が異なる場合であっても、あたかも同じ発光量で撮影したかのような画像が得られる。
【0091】
しかし、この際に得られる輝度の信号精度は同一の発光量で撮影した場合とは異なるので注意が必要である。信号精度は、画像中の信号とノイズとの比(S/N比)で決定される。信号精度は、有効数字で表されるともいえる。画像中のノイズはさまざまな要因がある。特に大きい要因になり得るノイズには、センサデバイスの暗電流などに起因する常に一定量存在するノイズと、光ショットノイズと言われる輝度信号値の平方根に比例するノイズとがある。いずれのノイズもイメージセンサの特性によって決まるので、あらかじめ計測しておくことが可能である。
【0092】
輝度補正部520、521、522で処理された画像のフレームは距離情報生成部527に送られる。
【0093】
距離情報生成部527は、フレーム内から対象物が写っている領域を探索し、その領域のフレーム間の輝度の関係から対象物までの距離を算出する。算出された距離を示す情報は距離情報記録部(メモリ)528に格納される。この情報が、本実施の形態のモーションセンサ装置の出力となる。
【0094】
次に、
図12を参照しながら、本実施形態における制御のいくつかの例を説明する。
【0095】
図12は、撮像のある時点における対象物601の状態の例を示している。イメージセンサ501から見た対象物601の方向の角度θは、対象物601の像がイメージセンサ501のどの画素の位置に形成されるかという情報から求めることができる。
図12に示す例では、対象物601は、イメージセンサ501の右側に位置している。したがって、第1の画像と第2の画像との輝度比を求めることにより、イメージセンサ501から対象物601までの距離を一意に特定することができる。角度θと距離とが求まれば、対象物601の3次元的位置が定まる。
【0096】
ここで考察すべき点として、対象物601は光源502よりも光源503に近い位置に存在する。その為、もし輝度補正部520、521が存在せず、発光量記憶部523と発光量記憶部524に格納された値が同じであった場合、第2のフレームに含まれる対象物601の像の部分の精度は、第1のフレームにおける精度よりも高くなる。しかしながら、距離情報生成部527が対象物601の距離を求める輝度比の精度は、精度の低い第1のフレームの輝度の精度に律速してしまう。
【0097】
そこで、本実施形態では、このような状況をセンサ制御部529が適切に検知し、発光量記憶部524に格納されている発光量を示す値を書き替える。上記の例では、発光量記憶部524における値が発光量記憶部523における値よりも小さくなるように、各値を設定する。このような制御により、2つの画像の対象物の領域における輝度比の精度、即ち距離情報生成部527で求められる距離情報の精度を保ったまま、光源装置503の発光量を減らすことができる。その結果、消費電力を削減することが可能になる。
【0098】
ここで、センサ制御部529が状況を検知する方法の例を3つ説明する。
【0099】
第1の方法は、多くの撮像装置が自動露光制御などに用いる方法と同様、撮像によって取得した画像フレーム内の輝度を監視し、そのヒストグラム(輝度分布)や最大値に基づいて処理する方法である。この方法は、電力の点では最適ではないが、撮像装置が自動露光制御などをすでに備えていた場合には処理が共通化できるため、簡易な方法としてメリットがある。
【0100】
第2の方法は、距離情報生成部527の途中の計算結果を参照する方法である。この方法は、輝度比計算の段階の値から逆算する方法であるといえる。精度という点ではもっとも確実で正確な値を求めることが出来る。
【0101】
第3の方法は、距離情報記憶部528に記録された距離情報を利用する方法である。位置情報から距離を考慮して光量を求めることが出来る。この方法の最大のメリットは、位置情報の変化、即ち対象物の運動量を考慮して次の対象物の位置を事前予測して発光量を設定できる点である。
【0102】
上記の例では、対象物が1つの場合を想定したが、複数の対象物が検出される場合は、各対象物の継続した検知に必要な最低限の発光量のうち、最も大きい発光量に設定すればよい。すなわち、輝度が最も低い対象物に合わせて発光量を設定すればよい。
【0103】
この際、必要な距離情報の精度に対して信号精度が十分であれば、特許文献2のようにすべての光源の発光量を一律に下げてもよい。この場合、センサ制御部529から露光量記憶部526に露光量の変更を指示する信号をあわせて送ってもよい。特に発光量を発光時間で制御している場合、露光時間を減らすことによって露光量を減らせば、外部の光源由来の背景光を減らす事が出来、計測精度が向上する。
【0104】
図12に示すような対象物601の配置において特筆すべき点は、撮像装置501の左側に対象物が存在しておらず、光源504を利用しなくても計測が可能である点である。センサ制御部529は、距離情報記録部528の情報などから、このような状態を検知した場合、発光量記憶部525にゼロを書き込み、光源504を停止させることが出来る。
【0105】
さらに、この後に効果の異なる2種類の動作パターンが考えられる。
【0106】
第1の動作パターンは、第3のフレームの露光および読み出し転送を停止するパターンである。このパターンでは、画像転送に関する電力も削減することができる。
【0107】
第2の動作パターンは、光源504を停止させたまま、第3のフレームの画像を背景光画像として利用するパターンである。
【0108】
第3の時間で、モーションセンサ装置の光源をすべて消灯させた状態で露光を行うと、第3のフレームには外部光源による背景光のみが撮像される。これを第1のフレームおよび第2のフレームから減算すれば、第1のフレームおよび第2のフレームから背景光成分が除去されるため、計測精度が向上する。
【0109】
本実施形態のように3つの光源を有するモーションセンサ装置において、背景光除去を行うためには、従来技術によれば、全ての光源を消灯させた状態で4フレーム目の撮像を行う必要があった。これに対し、本実施形態では、3フレームの中から背景光除去用のフレームを選択的に割り当てることができる。連続して取得するフレーム数を増やす場合、撮像装置のコストも電力も増大することになる。本実施形態の制御は、これを不要にするという効果をもたらす。特に、被写体が遠方にあるなどの計測精度の低いシーンで背景光除去は高い効果を発揮する。そのようなケースですべての計測領域に個別の対象物が存在するというケースは多くないので、本実施形態の制御は高い効果をもたらす。
【0110】
次に、このまま動作を続けて、
図13に示すように、撮像装置501の左側に対象物が出現するケースを考える。
【0111】
このケースには2種類の場合がある。第1のケースは、対象物601とは異なる新たな対象物602が計測範囲内に進入するケースである。この場合、光源504は発光していない為、第3のフレームには新たな被写体はほとんど写らない、しかしながら第1のフレームと第2のフレームには、背景光を除去した形で対象物が写るため、検知できる。特にイメージセンサ501の左側の物体の距離計測には、光源503と504のペアに対応する画像の輝度比が重要である。このため、この場合には、第2のフレームに基づいて対象物を検知することが望ましい。
【0112】
このケースにおいて、第1のフレームおよび第2のフレームを直接的に画像解析しなくても、対象物602を検知することができる。例えば、対象物602の像をほとんど含まない第3のフレームをそのまま距離情報生成部527に送出した場合でも、第2のフレームと第3のフレームの対象物に該当する箇所の輝度比が約1:0となるため、零距離などの特殊ケースとして検知できる(逆に無限遠では1:1である)。新たな対象物602を検知した場合、センサ制御部529は、速やかに発光量記憶部524に有効な値を書き込み、次の撮像から発光制御部513の発光を復帰させることができる。
【0113】
第2のケースは、イメージセンサ501の右側にあった対象物601が左側に移動するケースである。この場合、対象物601が撮像装置501の左側に移動してから発光制御部513の発光を復帰させたのでは、対象物601の距離計測を少なくとも1回は行えないという問題が発生する。そこで、このようなケースにおいては、センサ制御部529は、対象物601が撮像装置501の右側に存在する間から、距離情報記録部528に格納された情報などを監視することが有効である。例えば、対象物601の距離および運動量の少なくとも一方を常時計算し、対象物601の左領域への接近を検知したときに、事前に発光量記憶部524に有効な値を書き込むことにより、発光制御部513による発光を復帰させておくことができる。
【0114】
このような動作により、対象物が計測期間において移動している途中で計測に失敗することなくシームレスな追跡が可能となる。
【0115】
次に、本実施の形態の特別なケースとして、第1から第3の全てのフレームにおける計測範囲外に対象物601が移動し、対象物が計測されなくなった場合の動作を説明する。
【0116】
このケースでは、例えば特許文献3のように別のセンサを設けるなどの対策をしなければ、発光量記憶部523、524、525、および露光量記憶部526は、それぞれ最大の値を設定して再び何らかの対象物が計測されるまで待機しなければならない。特に露光量記憶部526の値が最大値に設定されていると、イメージセンサ501で取得される外部光源による背景光画像の輝度も最大となり、対象物が存在しないにも関わらず存在すると誤検知する可能性が非常に高くなる。
【0117】
このような課題に対し、本実施形態のセンサ制御部529は、発光量記憶部524および露光量記憶部526にのみ最大値を書き込み、発光量記憶部523、525にはゼロ値を書き込む。このようにすることで、発光電力を抑えつつ、対象物が光源503の照射範囲に新たに出現した場合に、発光量記憶部523、525の値を元の値に戻し、距離計測を再開することができる。この場合、対象物の距離算出は初回のみできないが、多くのユースケースでこれは問題にならない。
【0118】
このケースでは、センサ制御部529は、さらに、背景画像選択部516に、第1のフレームまたは第3のフレームを背景光フレームとして選択するように指示することができる。これにより、光源503の照射範囲に物体が無い場合に、外部光源からの背景光で光源装置503の照射範囲に物体があると誤検知する可能性を低減させることができる。対象物が存在しないケースでの誤検知は、特にユーザーインターフェースとして利用する場合に非常に有害であり、大きな利便性の低下を招く。このため、既存のイメージセンサを用いながら、対象物が計測範囲内に存在しないときに、選択的に背景光除去機能が稼動を開始するという本実施形態の制御がもたらす効果は絶大である。
【0119】
本実施形態のモーションセンサ装置は、光源503(またはイメージセンサ501)よりも右の領域の検知には、光源502と503とのペアを用いて取得した画像を有力な情報として用いる。一方、左の領域の検知には光源503と504とのペアを用いて取得した画像を有力な情報として用いる。これらのいずれのペアにも光源503が含まれている。このため、対象物を検知できない待機状態のときに光源503の照射範囲のみを復帰のための検知に利用するのは非常に合理的である。
【0120】
このような制御により、再び計測範囲に対象物が進入するのを待機するときの検知範囲が、通常の動作状態における計測範囲と一致する。その為、特許文献3のような従来の技術で発生する、待機状態と動作状態を交互に行き来するような状態になりにくい。
【0121】
さらに、この待機状態においてセンサ制御部529は、イメージセンサ501に対して、3連続露光を2連続露光に切り替えたり、フレームレートを落としたり、動作を間欠的に行うように指示することもできる。このようにすることにより、さらなる電力の低減が可能である。
【0122】
なお、本実施形態では、3種類の撮像フレームの取得に第1の時刻から第3の時刻まで3回の露光を行っているが、このような形態に限定されない。非特許文献2の技術では、読み出し転送までの間にさらに順次の発光状態を繰り返しながら露光を行い、電荷を足しこむ技術も記載されている。このような繰り返し露光を行うことにより、動きによる像の残像が各露光で少なくなり、モーションセンサ装置として有効である。
【0123】
このような構成が取れない場合であっても、光源503の点灯を第2の時間に行う本実施形態の構成は、誤差を減らすために有効である。距離計測に用いる3種類の輝度比のうち、有効に利用しやすいのは、光源502と503とのペアの輝度比、および光源503と504とのペアの輝度比である。このため、光源503の点灯を第2の時間に行うことで、ペア内での時間誤差を減らすことができる。
【0124】
本実施形態における制御回路(演算ブロック)531は、例えば、CPUなどのプロセッサと、メモリに格納されたプログラム(ソフトウェア)との組み合わせによって実現することができる。しかし、
図10を参照して説明した動作を実行可能な専用の回路によって実現することにより、電力効率の向上や高速な処理が可能である。そのような回路は、例えば、前述した動作を実行可能な論理回路を実装した半導体集積回路や、FPGA(fieldprogrammable gate array)などの再構成可能ロジックで実現され得る。再構成可能ロジックでは、再構成可能ロジック自体に不揮発メモリを備えているものや、フラッシュメモリなどの記憶装置に格納された回路情報を電源投入時に読み込んで動作したりするものがある。
【0125】
(他の実施形態)
以上、本開示の技術の例示として、実施形態1を説明した。しかし、本開示の技術はこれらの実施形態に限定されない。以下、他の実施形態を例示する。
【0126】
図14は、実施形態1に係るモーションセンサ装置を搭載したディスプレイ1001を示している。このディスプレイ1001は、3つの光源502、503、504を搭載している。このため、ディスプレイ1001に向かってジェスチャー入力を行うことができる。
図14には、参考のため、ジェスチャー入力を行う手が模式的に示されている。図示されている手は、矢印の方向に移動しつつある。
図14に示されるディスプレイでは、このような手の動きを高い感度で検知してジェスチャー入力を行うことができる。
【0127】
本実施形態に係るモーションセンサ装置をディスプレイなどに利用すれば、ジェスチャー入力によるチャンネルの切り替えなどのユーザーインターフェースに用いることもできる。また、人間の各部の動きを認識したダンスゲームなどへの応用も可能である。
【0128】
このように、本開示は、上記の実施形態に係るモーションセンサ装置と、当該モーションセンサ装置によって検出された対象物の運動に応答して表示内容を変化させるディスプレイとを備える電子装置を含む。
【0129】
本開示によるモーションセンサ装置の各実施形態によれば、距離計測の対象物以外の背景光の影響を除去し、より高精度な検出が可能になる。本開示によれば、リアルタイムな検出が求められる3Dモーションセンサ装置を提供できる。
【0130】
なお、本開示によるモーションセンサ装置の少なくとも一部の機能が有線または無線のネットワークを介して接続された他の装置によって実現されていてもよい。
【0131】
以上の実施形態では、3つの光源を備えた例を説明したが、光源の数は2つでもよいし、4つ以上であってもよい。また、光源およびイメージセンサの配置関係は、図示されるものに限らず、多様な配置が可能である。また、以上の実施形態では、対象物までの距離情報を得る方法として、複数の画像における当該対象物の輝度の比に基づく方法を説明した。しかし、輝度比によらず、例えば米国特許出願公開第2013/0182077号明細書に開示されているように、像の輪郭情報に基づいて対象物までの距離情報を得てもよい。米国特許出願公開第2013/0182077号明細書の開示内容全体を本願明細書に援用する。